(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173829
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
F04B49/06 321B
F04B49/06 321A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079790
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章太
(72)【発明者】
【氏名】坂野 聖治
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA16
3H145AA23
3H145AA42
3H145BA38
3H145CA09
3H145DA07
3H145DA37
3H145EA17
3H145EA20
3H145EA26
3H145EA38
(57)【要約】
【課題】 従来と異なる観点から騒音を低減するポンプ装置の一例を開示する。
【解決手段】 駆動制御部7は、第1電動ポンプ3の駆動周波数Df1と第2電動ポンプ5の駆動周波数Df2との差が予め決められた条件を満たすように制御する。第1電動ポンプ3に起因する騒音周波数と第2電動ポンプ5に起因する騒音周波数とが異なる周波数であるので、第1電動ポンプ3に起因する騒音の一部と第2電動ポンプ5に起因する騒音の一部とが、周期的に相殺され得る。したがって、当該ポンプ装置では、電動ポンプの稼働に伴って発生する騒音を低減することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電動ポンプ及び第2電動ポンプと、
前記第1電動ポンプ及び前記第2電動ポンプを制御するインバータ方式の駆動制御部であって、駆動電流の周波数(以下、駆動周波数という。)を調整することによりそれら電動ポンプの回転速度を制御可能な駆動制御部とを備え、
前記駆動制御部は、前記第1電動ポンプの駆動周波数(以下、第1駆動周波数という。)と前記第2電動ポンプの駆動周波数(以下、第2駆動周波数という。)との差が予め決められた条件を満たすように制御する低騒音並列運転制御を実行可能であるポンプ装置。
【請求項2】
前記条件とは、前記第1駆動周波数と同じ周波数の音と前記第2駆動周波数と同じ周波数の音とが重なったときに、うなり現象が発生する条件である請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記条件とは、前記第1駆動周波数と前記第2駆動周波数との差が、可聴周波数の下限値以下である請求項1又は2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記第1駆動周波数及び前記第2駆動周波数のうち大きい方の駆動周波数を運転周波数としたとき、
前記条件とは、前記第1駆動周波数と前記第2駆動周波数との差が、前記運転周波数の1/100以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記条件とは、前記第1駆動周波数と前記第2駆動周波数との差が、1Hz以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項6】
第3電動ポンプを備え、当該第3電動ポンプの駆動周波数を第3駆動周波数とし、前記第1駆動周波数と前記第2駆動周波数との差を第1周波数差とし、前記第2駆動周波数と前記第3駆動周波数との差を第2周波数差としたとき、
前記駆動制御部は、前記低騒音並列運転制御の実行時においては、前記第1周波数差と前記第2周波数差とを同一とし、かつ、前記第1駆動周波数と前記第3駆動周波数とを異なる周波数とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の電動ポンプを有するポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明では、キャビネットの前面を覆う蓋のうちモータ部と対向する部位の質量を他の部位に比べて大きくすることにより、騒音がキャビネットの外に漏れ出ることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、モータ部と対向する部位に厚板を溶接することにより、質量を他の部位に比べて大きくした厚肉部を構成している。本開示は、当該点に鑑み、特許文献1に記載の発明と異なる技術的観点から騒音を低減するポンプ装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ポンプ装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0006】
すなわち、当該構成要件は、第1電動ポンプ(3)及び第2電動ポンプ(5)と、第1電動ポンプ(3)及び第2電動ポンプ(5)を制御するインバータ方式の駆動制御部(7)であって、駆動電流の周波数(以下、駆動周波数という。)を調整することによりそれら電動ポンプの回転速度を制御可能な駆動制御部(7)とを備え、駆動制御部(7)は、第1電動ポンプ(3)の駆動周波数(以下、第1駆動周波数(Df1)という。)と第2電動ポンプ(5)の駆動周波数(以下、第2駆動周波数(Df2)という。)との差が予め決められた条件を満たすように制御する低騒音並列運転制御を実行可能であることである。
【0007】
これにより、第1電動ポンプ(3)に起因する騒音の卓越周波数(以下、第1卓越周波数という。)は、概ね第1駆動周波数(Df1)の自然数倍となり、第2電動ポンプ(5)に起因する騒音の卓越周波数(以下、第2卓越周波数という。)は、概ね第2駆動周波数(Df2)の自然数倍となる。
【0008】
そして、発明者等は、第1駆動周波数(Df1)と第2駆動周波数(Df2)と差が予め決められた条件を満たす場合に、電動ポンプの稼働に伴って発生する騒音が低減されることを発見した。なお、騒音の低減理由は、現時点では、以下の通りであると推定される。
【0009】
すなわち、第1卓越周波数と第2卓越周波数とが異なる周波数であるので、第1電動ポンプ(3)に起因する騒音の一部と第2電動ポンプ(5)に起因する騒音の一部とが、周期的に相殺され得る。したがって、当該ポンプ装置では、電動ポンプの稼働に伴って発生する騒音を低減することが可能となる。
【0010】
なお、上記条件は、以下のいずれか条件のうち少なくとも1つの条件を満たすことが望ましい。
【0011】
第1の条件は、を第1駆動周波数(Df1)と同じ周波数の音と第2駆動周波数(Df2)と同じ周波数の音とが重なったときに、うなり現象が発生する条件である。
【0012】
第2の条件は、第1駆動周波数(Df1)と第2駆動周波数(Df2)との差が、可聴周波数の下限値以下であることである。
【0013】
第3の条件は、は、第1駆動周波数(Df1)と第2駆動周波数(Df2)との差が、運転周波数の1/100以下であることである。なお、運転周波数とは、第1駆動周波数(Df1)及び第2駆動周波数(Df2)のうち大きい方の駆動周波数をいう。
【0014】
第4の条件は、第1駆動周波数(Df1)と第2駆動周波数(Df2)との差が、1Hz以下であることである。
【0015】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る給水装置を示す図である。
【
図2】低騒音並列運転制御の一例を示すフローチャートである。
【
図3】低騒音並列運転制御の試験結果を示す図表である。
【
図4】第2実施形態に係る給水装置を示す図である。
【
図5】第3実施形態に係る給水装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0018】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された流量検出器は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0019】
(第1実施形態)
<1.給水装置の概要>
<1.1 給水装置の構成>
本実施形態は、例えば、マンションや商業ビル等の建物に適用される給水装置に本開示に係るポンプ装置の一例が適用されたものである。
図1に示されるように、当該給水装置1は、第1電動ポンプ3、第2電動ポンプ5、駆動制御部7及び蓄圧器9等を少なくとも有する。
【0020】
第1電動ポンプ3及び第2電動ポンプ5は、送水を行う非容積型のポンプである。具体的には、各電動ポンプ3、5は、ターボポンプ(タービンポンプ)及び当該ターボポンプを駆動する電動モータ等を有して構成されている。
【0021】
各電動ポンプ3、5は、受水槽(図示せず。)から供給される水を建物等の給水配管に送水する。なお、各電動ポンプ3、5の吸込口は、吸込配管6Aを介して受水槽側に接続されている。各電動ポンプ3、5の吐出し口は、吐出し配管6Bを介して給水配管側に接続されている。
【0022】
駆動制御部7は、第1電動ポンプ3及び第2電動ポンプ5それぞれの停止、起動及び回転速度を制御する。当該駆動制御部7は、駆動回路7A及び制御部7B等を有して構成されている。以下、第1電動ポンプ3及び第2電動ポンプ5を総称する場合には、電動ポンプ3、5と記す。
【0023】
駆動回路7Aは、駆動電流の周波数(以下、駆動周波数という。)を制御する。駆動電流は、電動ポンプ3、5(電動モータ)を駆動するための電流である。制御部7Bは、駆動回路7Aを制御する。
【0024】
つまり、駆動回路7Aは、制御部7Bからの指令信号に従った駆動周波数の駆動電流を電動ポンプ3、5に印加する。これにより、各電動ポンプ3、5は、当該指令信号に対応した回転速度にて稼働する。
【0025】
なお、制御部7Bは、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータにて構成されている。電動ポンプ3、5を制御するためのソフトウェアは、ROM等の不揮発性記憶部(図示せず。)に予め記憶されている。
【0026】
蓄圧器9は、全ての電動ポンプが停止している場合に、給水圧を保持するため装置(例えば、アキュムレータ)である。なお、蓄圧器9は、電動ポンプ3、5の吐出し側に接続されている。
【0027】
<1.2 駆動制御部による制御の概要>
駆動制御部7(本実施形態では、制御部7B)には、流量センサFs及び圧力センサPsの出力信号が入力されている。流量センサFsは、給水配管への給水量を検出する。圧力センサPsは、電動ポンプ3、5の吐出し側の圧力、つまり給水圧を検出する。
【0028】
そして、駆動制御部7は、電動ポンプ3、5の制御として、「起動制御」、「目標圧力制御」、「小水量停止制御」及び「低騒音並列運転制御」等を少なくとも実行可能である。なお、「目標圧力制御」と「低騒音並列運転制御」とは互いに並列作動可能である。
【0029】
<起動制御>
起動制御は、駆動制御部7で実行されるポンプ制御の一例であって、第1電動ポンプ3及び第2電動ポンプ5が停止している場合において、少なくとも一方の電動ポンプを起動させるための制御である。
【0030】
具体的には、第1電動ポンプ3及び第2電動ポンプ5が停止している場合において、圧力センサPsにより検出された圧力(以下、検出圧力という。)が予め決められた閾値(以下、起動圧力という。)以下となったときに、第1電動ポンプ3又は第2電動ポンプ5を起動させる。
【0031】
なお、駆動制御部7は、起動制御時には1台の電動ポンプを起動させる。そして、後述されるように、当該1台の電動ポンプでは、十分な給水量を確保できない状態になったときに、駆動制御部7は、停止している他の電動ポンプを起動させる。
【0032】
以下、最初に起動する電動ポンプを先発ポンプといい、先発ポンプの起動後に起動する電動ポンプを後発ポンプという。因みに、本実施形態に係る駆動制御部7は、先発ポンプとして起動させる電動ポンプを予め決められたルールに従って変更する。
【0033】
<目標圧力制御>
目標圧力制御は、駆動制御部7で実行されるポンプ制御の一例であって、給水圧、つまり検出圧力が目標とする圧力(以下、目標圧力という。)となるように電動ポンプ3、5作動させるための制御である。
【0034】
具体的には、駆動制御部7は、検出圧力と目標圧力とを比較し、検出圧力が目標圧力を上回ったときには先発ポンプの回転速度を低下させ、検出圧力が目標圧力を下回ったときには先発ポンプの回転速度を上昇させる。
【0035】
目標圧力制御には、「増台制御」、「減台制御」及び「低騒音並列運転制御」が含まれる。増台制御は、先発ポンプの回転速度が予め決められた上限回転速度まで上昇したとき、駆後発ポンプを起動させる制御である。
【0036】
そして、増台制御が実行されて複数の電動ポンプが稼働状態となると、駆動制御部7は、低騒音並列運転制御を実行する。なお、低騒音並列運転制御の実行時においても、給水圧が目標圧力となるように各電動ポンプ3、5が制御される。
【0037】
減台制御は、複数の電動ポンプが稼働している状態において、いずれかの電動ポンプの回転速度が予め決められた下限回転速度まで低下したときに、いずれかの電動ポンプを停止させる制御である。
【0038】
なお、本実施形態に係る駆動制御部7は、「駆動周波数が予め決められた上限駆動周波数又は予め決められた下限駆動周波数になったか否か」を利用して「上限回転速度まで上昇したか否か」及び「下限回転速度まで低下したか否か」を判断する。
【0039】
<小水量停止制御>
小水量停止制御は、給水量、つまり流量センサFsにより検出された吐出し量が予め設定された流量(以下、停止流量という。)以下となったときに電動ポンプ3、5を停止させる制御である。
【0040】
<低騒音並列運転制御>
低騒音並列運転制御は、第1電動ポンプ3の駆動周波数(以下、第1駆動周波数Df1という。)と第2電動ポンプ5の駆動周波数(以下、第2駆動周波数Df2という。)との差が予め決められた条件を満たすように各駆動周波数を調整する制御である。
【0041】
本実施形態に係る条件とは、第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2との差が第1の所定値(本実施形態では、1Hz)以下となることである。以下は、第1電動ポンプ3を先発ポンプとし、第2電動ポンプ5を後発ポンプとした場合の説明である。
【0042】
すなわち、例えば、
図2に示されるように、駆動制御部7は、第1駆動周波数Df1が上限駆動周波数に到達した時(S1:YES)に後発ポンプを起動するとともに、当該後発ポンプを最大加速度に増速する(S3)。このとき、駆動制御部7は、検出圧力を目標圧力に維持すべく、第1駆動周波数Df1を低下させる。
【0043】
そして、第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2との差が第1の所定値より大きい第2の所定値(例えば、2Hz)以下となった時(S5:YES)、駆動制御部7は、その時の第1駆動周波数Df1から第1の所定値(1Hz)を減算した値を第2駆動周波数Df2とする(S7)。
【0044】
その後、駆動制御部7は、第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2との差を第1の所定値に維持した状態で、検出圧力が目標圧力となるように第1駆動周波数Df1及び第2駆動周波数Df2を連動させて変更する。
【0045】
<3.本実施形態に係る給水装置の特徴>
第1電動ポンプ3に起因する騒音の卓越周波数(以下、第1卓越周波数という。)は、概ね第1駆動周波数Df1の自然数倍となり、第2電動ポンプ5に起因する騒音の卓越周波数(以下、第2卓越周波数という。)は、概ね第2駆動周波数Df2の自然数倍となる。
【0046】
図3は、第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2と差と騒音との関係を示す試験結果である。そして、
図3に示される試験結果に基づき、発明者等は、第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2と差が上記の条件を満たす場合に、電動ポンプの稼働に伴って発生する騒音が低減されることを発見した。
【0047】
なお、騒音の低減理由は、現時点では、以下の通りであると推定される。
【0048】
すなわち、第1卓越周波数と第2卓越周波数とが異なる周波数であるので、第1電動ポンプ3に起因する騒音の一部と第2電動ポンプ5に起因する騒音の一部とが、周期的に相殺され得る。したがって、当該給水装置1では、電動ポンプ3、5の稼働に伴って発生する騒音を低減することが可能となる。
【0049】
なお、
図3から明らかなように、上記の条件に代えて、第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2との差が、運転周波数の1/100以下となるように第1駆動周波数Df1及び第2駆動周波数Df2を制御した場合も、上記と同様に電動ポンプ3、5の稼働に伴って発生する騒音を低減することが可能となる。
【0050】
運転周波数とは、第1駆動周波数Df1及び第2駆動周波数Df2のうち大きい方の駆動周波数(
図3では、第1駆動周波数Df1)をいう。因みに、運転周波数は、給水負荷に応じて変化する。
【0051】
このため、現実の設計においては、上限駆動周波数を運転周波数とすることが望ましい。さらに、第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2との差の下限値は、運転周波数の1/1000以上とすることが望ましい。
【0052】
(第2実施形態)
本実施形態に係る給水装置は、3台以上の電動ポンプを備える給水装置である。具体的には、本実施形態に係る給水装置10は、
図4に示されるように、第3電動ポンプ6を備える。
【0053】
なお、以下の説明は、上述の実施形態に係る給水装置1との相違点に関する説明である。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。
【0054】
すなわち、本実施形態に係る駆動制御部7は、低騒音並列運転制御の実行時においては、第1周波数差Δf1と第2周波数差Δf2とを同一とし、かつ、第1駆動周波数Df1と第3駆動周波数Df3とを異なる周波数とした状態で目標圧力制御を実行する。
【0055】
第1周波数差Δf1は、第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2との差である。第2周波数差Δf2は、第2駆動周波数Df2と第3駆動周波数Df3との差である。第3駆動周波数Df3は第3電動ポンプ6の駆動周波数である。
【0056】
因みに、本実施形態では、Df1>Df2>Df3、かつ、Δf1=Δf2である。なお、本実施形態に係る目標圧力制御及び増台制御の概要は、以下の通りである。
【0057】
先発ポンプ(例えば、第1電動ポンプ3)が起動し、第1駆動周波数Df1が上限駆動周波数に到達すると、次発ポンプ(例えば、第2電動ポンプ5)が起動する。
【0058】
2台の電動ポンプ3、5が起動すると、第1実施形態に係る低騒音並列運転制御が実行される。つまり、第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2との差が第1周波数差Δf1に維持された状態で目標圧力制御が実行される。
【0059】
そして、第1駆動周波数Df1及び第2駆動周波数Df2のうち大きい方の駆動周波数(例えば、第1駆動周波数Df1)が上限駆動周波数に到達すると、最後発ポンプ(例えば、第3電動ポンプ6)が起動する。
【0060】
最後発ポンプが起動すると、駆動制御部7は、最後発ポンプを最大加速度に増速する。このとき、駆動制御部7は、検出圧力を目標圧力に維持すべく、第1周波数差Δf1を維持した状態で第1駆動周波数Df1及び第2駆動周波数Df2を低下させる。
【0061】
そして、第2周波数差Δf2が第1の所定値より大きい第2の所定値(例えば、2Hz)以下となった時、駆動制御部7は、その時の第2駆動周波数Df2から第1の所定値(1Hz)を減算した値を第3駆動周波数Df3とする。
【0062】
その後、駆動制御部7は、第1周波数差Δf1及び第2周波数差Δf2を第1の所定値に維持した状態で、検出圧力が目標圧力となるように第1駆動周波数Df1、第2駆動周波数Df2及び第3駆動周波数Df3を連動させて変更する。
【0063】
(第3実施形態)
上述の実施形態に係る低騒音並列運転制御では、駆動周波数の差が予め決められ値となるように複数の電動ポンプを制御する構成であった。これに対して、本実施形態に係る給水装置20では、最適な周波数差Δfを給水装置20(駆動制御部7)が自ら探索する探索機能を備える。
【0064】
以下の説明は、上述の実施形態に係る給水装置1との相違点に関する説明である。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0065】
本実施形態に係る給水装置20は、例えば
図5に示されるように、マイクロフォンMpを備えている。マイクロフォンMpは、給水装置20から発する音を検出する。当該マイクロフォンMpの検出信号は、駆動制御部7(制御部7B)に入力されている。
【0066】
駆動制御部7は、マイクロフォンMpの検出信号を利用して音圧レベルを演算する機能、及び当該音圧レベルが予め決められた条件を満たすような第1周波数差Δf1を探索する探索機能を有している。
【0067】
具体的には、駆動制御部7は、先発ポンプ(例えば、第1電動ポンプ3)の起動後、後発ポンプ(例えば、第2電動ポンプ5)が起動した時に、第2電動ポンプ5を最大加速度に増速する。
【0068】
これにより、検出圧力を目標圧力に維持すべく、駆動制御部7は、第1駆動周波数Df1が低下するとともに、第2駆動周波数Df2が上昇するため、第1周波数差Δf1が次第に小さくなる。
【0069】
そして、駆動制御部7は、第1周波数差Δf1が0となったとき、つまり第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2とが同一になったときの音圧レベルを基準音圧レベルとして記憶する。
【0070】
基準音圧レベルが記憶された後、駆動制御部7は、第1駆動周波数Df1及び第2駆動周波数Df2のうちいずれか一方に対して他方を変化させることにより第1周波数差Δf1を増加させるとともに、音圧レベルを検出する。
【0071】
そして、駆動制御部7は、検出した音圧レベルが基準音圧レベルに対して予め決められた音圧レベル(例えば、3dB)以上低下したときの第1周波数差Δf1を最適な周波数差Δfとして記憶する。
【0072】
次に、駆動制御部7は、第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2との周波数差を上記最適な周波数差Δfに維持した状態で、検出圧力が目標圧力となるように第1駆動周波数Df1及び第2駆動周波数Df2を連動させて変更する。
【0073】
なお、
図5は、2台の電動ポンプ2、5を備える給水装置であった。しかし、本実施形態は、3台以上の電動ポンプを備える給水装置にも適用可能である。因みに、3台目の電動ポンプが起動した場合には、駆動制御部7は、第2周波数差Δf2として、上記の「最適な周波数差Δf」を用いる。
【0074】
(その他の実施形態)
第1実施形態に係る低騒音並列運転制御では、第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2との差が、1Hz以下、又は運転周波数の1/100以下となるように複数の電動ポンプを制御する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0075】
すなわち、当該開示は、例えば、第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2との差が「うなり発生周波数差」以下となるような制御であってもよい。「うなり発生周波数差」とは、例えば、可聴周波数の下限値(20Hz)以下の値である。
【0076】
また、「うなり発生周波数差」とは、仮に、第1駆動周波数Df1と同じ周波数の音と第2駆動周波数Df2と同じ周波数の音とが重なったときに、うなり現象が発生するような周波数差をいう。
【0077】
換言すれば、「うなり発生周波数差」とは、仮に、第1駆動周波数Df1の交流電流と第2駆動周波数Df2の交流電流とが混合した場合に、電気的な「うなり現象」が発生する周波数差ともいえる。
【0078】
上述の実施形態に係る給水装置は、受水槽方式の給水装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、水道圧を利用して給水可能な直結式給水装置に適用可能である。
【0079】
上述の実施形態では、給水装置にポンプ装置が適用された例であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ビル用空調装置の冷温水循環用ポンプ装置等にも適用可能である。
【0080】
上述の第2実施形態では、第1周波数差Δf1と第2周波数差Δf2とが同一の値であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1周波数差Δf1と第2周波数差Δf2とが異なる値であってもよい。
【0081】
上述の実施形態では、先発ポンプの駆動周波数が後発ポンプの駆動周波数より大きくなる構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、先発ポンプの駆動周波数が後発ポンプの駆動周波数より小さくなる構成であってもよい。
【0082】
上述の実施形態では、第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2との周波数差が第2の所定値以下となったときに低騒音並列運転制御を実行する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1駆動周波数Df1と第2駆動周波数Df2とが同一の駆動周波数となったときに低騒音並列運転制御を実行する構成であってよい。
【0083】
また、当該開示は、第1駆動周波数Df1が上限駆動周波数に到達したときに、第1駆動周波数Df1を予め決められた所定の駆動周波数(例えば、上限駆動周波数の1/2)とし、第2駆動周波数Df2を当該所定の駆動周波数に対して第1周波数差Δf1だけずれた駆動周波数とする構成であってもよい。
【0084】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1… 給水装置 3…第1電動ポンプ 5… 第2電動ポンプ
7… 駆動制御部 7A…駆動回路 7B… 制御部