(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173841
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】組成物セット、硬化性組成物、接着剤組成物、硬化物、土木補修・補強材、止水材、剥落防止材及び表面被覆材
(51)【国際特許分類】
C08G 18/69 20060101AFI20221115BHJP
C08G 18/62 20060101ALI20221115BHJP
C08G 18/58 20060101ALI20221115BHJP
C09J 109/00 20060101ALI20221115BHJP
C09J 129/04 20060101ALI20221115BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20221115BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C08G18/69
C08G18/62 012
C08G18/58 010
C09J109/00
C09J129/04
C09J163/00
C09J175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079809
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 実沙樹
(72)【発明者】
【氏名】藤間 誠司
【テーマコード(参考)】
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA15
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4J034CB03
4J034CB04
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4J034RA15
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4J040KA23
4J040LA02
4J040LA06
4J040MA06
4J040NA12
(57)【要約】
【課題】充分な機械的強度を有すると共に、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を有する硬化物を得ることが可能な組成物セットを提供する。
【解決手段】ジエン系重合体及びポリビニルアルコールを含有する組成物Aと、イソシアネート化合物を含有する組成物Bと、エポキシ樹脂を含有するエポキシ組成物と、を備え、前記エポキシ組成物の25℃における粘度が5000mPa・s以下である、組成物セット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系重合体及びポリビニルアルコールを含有する組成物Aと、
イソシアネート化合物を含有する組成物Bと、
エポキシ樹脂を含有するエポキシ組成物と、を備え、
前記エポキシ組成物の25℃における粘度が5000mPa・s以下である、組成物セット。
【請求項2】
前記組成物A及び前記エポキシ組成物の混合物と、前記組成物Bと、を備える、請求項1に記載の組成物セット。
【請求項3】
前記組成物Aと、前記組成物B及び前記エポキシ組成物の混合物と、を備える、請求項1に記載の組成物セット。
【請求項4】
前記ポリビニルアルコールの含有量が前記ジエン系重合体100質量部に対して固形分で10~100質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物セット。
【請求項5】
前記エポキシ組成物の25℃における粘度が30~2000mPa・sである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物セット。
【請求項6】
前記イソシアネート化合物の含有量が前記ジエン系重合体100質量部に対して10~200質量部である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物セット。
【請求項7】
前記ジエン系重合体のガラス転移温度が-10℃以下である、請求項1~6に記載のいずれか一項に記載の組成物セット。
【請求項8】
前記ジエン系重合体が、クロロプレン重合体、(メタ)アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、及び、天然ゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物セット。
【請求項9】
前記ポリビニルアルコールのケン化度が75.0~90.0mol%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物セット。
【請求項10】
金属水酸化物の含有量が前記ジエン系重合体100質量部に対して30質量部未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物セット。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂がビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物セット。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物セットにおける前記組成物A、前記組成物B及び前記エポキシ組成物の混合物である、硬化性組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の硬化性組成物である、接着剤組成物。
【請求項14】
請求項12に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項15】
請求項12に記載の硬化性組成物を含有する、土木補修・補強材。
【請求項16】
請求項12に記載の硬化性組成物を含有する、止水材。
【請求項17】
請求項12に記載の硬化性組成物を含有する、剥落防止材。
【請求項18】
請求項12に記載の硬化性組成物を含有する、表面被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物セット、硬化性組成物、接着剤組成物、硬化物、土木補修・補強材、止水材、剥落防止材、表面被覆材等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着剤の分野においては、接着強度を向上させるための技術として複数液硬化型接着剤の検討が行われている。例えば、下記特許文献1では、エマルジョン型水性接着剤と、水溶性高分子、界面活性剤等を含有し得る接着促進剤とからなる2液硬化型接着剤が開示されている。下記特許文献2では、アニオン性クロロプレンラテックスに対して界面活性剤等を混合して得られる主剤成分と、多価金属塩を含有する硬化剤成分とからなる2液硬化型接着剤が開示されている。下記特許文献3では、クロロプレン系重合体と、ポリビニルアルコール等の界面活性剤成分とを含有するクロロプレン系重合体ラテックス組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56-59874号公報
【特許文献2】特開平9-188860号公報
【特許文献3】国際公開第2018/143159号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数液硬化型接着剤として用いることが可能な組成物セットに対しては、コンクリートのような硬質な被着体に対して充分な接着強度を有する硬化物を得ることが求められ、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を有する硬化物を得ることが求められる。また、このような硬化物に対しては、充分な接着強度に加えて充分な機械的強度を有することが求められる。
【0005】
本発明の一側面は、充分な機械的強度を有すると共に、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を有する硬化物を得ることが可能な組成物セットを提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、当該組成物セットを用いて得ることが可能な硬化性組成物、接着剤組成物、硬化物、土木補修・補強材、止水材、剥落防止材及び表面被覆材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、ジエン系重合体及びポリビニルアルコールを含有する組成物Aと、イソシアネート化合物を含有する組成物Bと、エポキシ樹脂を含有するエポキシ組成物と、を備え、前記エポキシ組成物の25℃における粘度が5000mPa・s以下である、組成物セットに関する。
【0007】
本発明の他の一側面は、上述の組成物セットにおける組成物A、組成物B及びエポキシ組成物の混合物である、硬化性組成物に関する。本発明の他の一側面は、上述の硬化性組成物である、接着剤組成物に関する。
【0008】
本発明の他の一側面は、上述の硬化性組成物の硬化物に関する。本発明の他の一側面は、上述の硬化性組成物を含有する、土木補修・補強材、止水材、剥落防止材、又は、表面被覆材に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、充分な機械的強度を有すると共に、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を有する硬化物を得ることが可能な組成物セットを提供することができる。本発明の他の一側面によれば、当該組成物セットを用いて得ることが可能な硬化性組成物、接着剤組成物、硬化物、土木補修・補強材、止水材、剥落防止材及び表面被覆材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0011】
本明細書において、数値範囲の「A以上」とは、A、及び、Aを超える範囲を意味する。数値範囲の「A以下」とは、A、及び、A未満の範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸、及び、それに対応するメタクリル酸の少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロニトリル」等の他の類似の表現においても同様である。「固形分」とは、組成物に含まれる揮発性物質(水、溶媒等)を除いた不揮発分のことであり、組成物を乾燥させた際に、揮発せずに残る成分を指す。
【0012】
本実施形態に係る組成物セット(液セット)は、ジエン系重合体及びポリビニルアルコールを含有する組成物Aと、イソシアネート化合物を含有する組成物B(例えば液体イソシアネート組成物)と、エポキシ樹脂を含有するエポキシ組成物と、を備え、エポキシ組成物の25℃における粘度が5000mPa・s以下である。本実施形態に係る組成物セットは、組成物A、組成物B及びエポキシ組成物を互いに混合することにより用いることが可能であり、複数液硬化型組成物セットとして用いることができる。本実施形態に係る組成物セットは、組成物A、組成物B及びエポキシ組成物の3種の組成物の態様であってよく、組成物A及びエポキシ組成物の混合物と、組成物Bと、を備える態様であってよく、組成物Aと、組成物B及びエポキシ組成物の混合物と、を備える態様であってよい。
【0013】
本実施形態に係る硬化性組成物は、本実施形態に係る組成物セットにおける組成物A、組成物B及びエポキシ組成物の混合物(混合組成物)であり、組成物A、組成物B及びエポキシ組成物を互いに混合することにより得ることができる。本実施形態に係る硬化性組成物は、常温硬化(23℃)させることができる。
【0014】
本実施形態に係る硬化物は、本実施形態に係る硬化性組成物の硬化物であり、本実施形態に係る硬化性組成物が硬化することにより得られる。本実施形態に係る積層体は、本実施形態に係る硬化物と、当該硬化物に接する基材とを備える。
【0015】
本実施形態によれば、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を有する硬化物を得ることができる。本実施形態によれば、土木学会基準JSCE-K 531に準拠して得られる引張接着強度として、湿潤状態のコンクリートに対して0.60N/m2以上を得ることができる。
【0016】
本実施形態によれば、充分な機械的強度を有する硬化物を得ることが可能であり、例えば、充分な引張破断強度を有する硬化物を得ることができる。本実施形態によれば、JIS K6251に準拠して得られる引張破断強度として2.00MPa以上(例えば2.50MPa以上)を得ることができる。
【0017】
本実施形態は、コンクリート以外の材質の被着体の接着に用いられてよい。コンクリート以外の材質としては、モルタル、木材、ガラス、セラミック、金属(鉄、亜鉛、銅等)、プラスチック(ポリプロピレン、ポリエチレン等)などが挙げられる。
【0018】
本実施形態は、地盤の空洞部への充填;表面被覆材;ひび割れ、背面への適用;止水材;防水材;剥落防止材;目地部、ジョイント部等の充填材;振動吸収などの目的で、土木補修・補強用途、建築用途等に好適に使用することができる。本実施形態に係る硬化性組成物は、被着体同士の接着に用いられる接着剤組成物として用いてよい。すなわち、本実施形態に係る接着剤組成物は、本実施形態に係る硬化性組成物である。本実施形態は、被着体同士の接着以外の用途においても好適に使用することができる。
【0019】
組成物Aは、イソシアネート化合物及びエポキシ樹脂を含有しなくてよい。組成物Bは、ジエン系重合体、ポリビニルアルコール及びエポキシ樹脂を含有しなくてよい。エポキシ組成物は、ジエン系重合体、ポリビニルアルコール及びイソシアネート化合物を含有しなくてよい。組成物Aは、ジエン系重合体ラテックスとポリビニルアルコールとを混合することにより得られてよい。ジエン系重合体ラテックスは、乳化剤(脂肪酸、界面活性剤等)の存在下で分散しているジエン系重合体を含有する組成物である。
【0020】
組成物Aは、ジエン系重合体(ジエン系ゴム重合体)を含有する。「ジエン系重合体」は、共役二重結合を有する共役ジエン系単量体を重合させることにより得ることが可能な重合体であり、当該重合体の水素添加物であってもよい。
【0021】
ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体を単量体単位として有する(共役ジエン系単量体に由来する単量体単位を有する)。共役ジエン系単量体としては、クロロプレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。組成物Aのジエン系重合体は、共役ジエン系単量体以外の単量体(例えば、ハロゲン元素を含まない単量体)を単量体単位として有してよい。このような単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、スチレン等が挙げられる。
【0022】
ジエン系重合体としては、クロロプレン重合体、ポリブタジエン、(メタ)アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)、水素化NBR、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、水素化SBR、スチレン-メチル(メタ)アクリレート-ブタジエン共重合体、メチル(メタ)アクリレート-ブタジエン共重合体、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、ポリイソプレン、天然ゴム等が挙げられる。
【0023】
クロロプレン重合体は、クロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)を単量体単位として有する(クロロプレンに由来する構造単位を有する)。クロロプレン重合体は、クロロプレンの単独重合体、及び、クロロプレンと他の単量体との共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。共重合体においてクロロプレンと共重合可能な単量体としては、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。クロロプレン重合体は、硫黄変性クロロプレン重合体又は非硫黄変性クロロプレン重合体であってよい。クロロプレン重合体は、メルカプタン変性クロロプレン重合体、キサントゲン変性クロロプレン重合体等であってよい。
【0024】
ジエン系重合体は、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を得やすい観点、及び、充分な機械的強度(例えば引張破断強度)を得やすい観点から、脂肪族共役ジエン重合体(クロロプレン重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン等)を含んでよく、芳香族ビニル・脂肪族共役ジエン共重合体(スチレン-ブタジエン共重合体等)を含んでよく、シアン化ビニル-共役ジエン共重合体((メタ)アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)等)を含んでよい。ジエン系重合体は、ハロゲン系のジエン系重合体を含んでよく、非ハロゲン系のジエン系重合体を含んでよい。ジエン系重合体は、エラストマーを含んでよい。
【0025】
ジエン系重合体は、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を得やすい観点、及び、充分な機械的強度(例えば引張破断強度)を得やすい観点から、クロロプレン重合体、(メタ)アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、及び、天然ゴムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。すなわち、ジエン系重合体は、クロロプレン重合体を含む態様、(メタ)アクリロニトリル-ブタジエン共重合体を含む態様、スチレン-ブタジエン共重合体を含む態様、又は、天然ゴムを含む態様であってよい。
【0026】
ジエン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を得やすい観点、及び、充分な機械的強度(例えば引張破断強度)を得やすい観点から、下記の範囲であってよい。ジエン系重合体のガラス転移温度は、-10℃以下であってよい。ジエン系重合体のガラス転移温度は、-80℃以上であってよい。これらの観点から、ジエン系重合体のガラス転移温度は、-80~-10℃であってよい。ジエン系重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定DSC(ブルカー・エイエックスエス株式会社、「DSC 3100SA」)により測定できる。
【0027】
組成物Aは、ポリビニルアルコール(ジエン系重合体に該当する化合物を除く)を含有する。ポリビニルアルコールは、界面活性剤(例えばノニオン系乳化剤)として用いることができる。ポリビニルアルコールは、ビニルエステルの単独重合体、又は、ビニルエステル及びビニルエステルと共重合可能な単量体の共重合体をケン化させることによって得ることができる。
【0028】
ビニルエステルとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等が挙げられる。ビニルエステルは、重合時の安定性に優れる観点から、酢酸ビニルを含んでよい。
【0029】
ビニルエステルと共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィン;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フタル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸;当該不飽和酸の塩;(メタ)アクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、2-(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩等の(メタ)アクリルアミド化合物;3,4-ジアセトキシ-1-ブテン;グリセリンモノアリルエーテル;炭素数1~18のアルキル鎖を有するアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン;酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール等のアリル化合物:ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。
【0030】
ポリビニルアルコールのケン化度は、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を得やすい観点、及び、充分な機械的強度(例えば引張破断強度)を得やすい観点から、下記の範囲であってよい。ケン化度は、50.0mol%以上、60.0mol%以上、70.0mol%以上、75.0mol%以上、80.0mol%以上、又は、85.0mol%以上であってよい。ケン化度は、99.0mol%以下、97.0mol%以下、96.5mol%以下、95.0mol%以下、90.0mol%以下、85.0mol%以下、又は、80.0mol%以下であってよい。これらの観点から、ケン化度は、50.0~99.0mol%、70.0~96.5mol%、又は、75.0~90.0mol%であってよい。
【0031】
ポリビニルアルコールの重合度は、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を得やすい観点、及び、充分な機械的強度(例えば引張破断強度)を得やすい観点から、下記の範囲であってよい。重合度は、100以上、150以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、又は、500以上であってよい。重合度は、5000以下、4500以下、4000以下、3000以下、2000以下、1000以下、800以下、600以下、500以下、450以下、400以下、350以下、又は、300以下であってよい。これらの観点から、重合度は、100~5000、200~4500、又は、300~1000であってよい。
【0032】
組成物A、組成物セット又は硬化性組成物におけるポリビニルアルコールの含有量は、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を得やすい観点、及び、充分な機械的強度(例えば引張破断強度)を得やすい観点から、界面活性剤成分の全量(ポリビニルアルコール及び他の界面活性剤の合計量。固形分)を基準として、固形分で、50質量%以上、50質量%超、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は、99質量%以上であってよい。組成物A、組成物セット又は硬化性組成物に含まれる界面活性剤成分が実質的にポリビニルアルコールからなる態様(ポリビニルアルコールの含有量が、組成物A、組成物セット又は硬化性組成物に含まれる界面活性剤成分の全質量を基準として実質的に100質量%である態様)であってよい。
【0033】
組成物A、組成物セット又は硬化性組成物におけるポリビニルアルコールの含有量は、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を得やすい観点、及び、充分な機械的強度(例えば引張破断強度)を得やすい観点から、ジエン系重合体100質量部に対して、固形分で下記の範囲であってよい。ポリビニルアルコールの含有量は、1質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、30質量部以上、50質量部以上、80質量部以上、又は、100質量部以上であってよい。ポリビニルアルコールの含有量は、1000質量部以下、800質量部以下、500質量部以下、300質量部以下、200質量部以下、100質量部以下、100質量部未満、80質量部以下、50質量部以下、30質量部以下、又は、10質量部以下であってよい。これらの観点から、ポリビニルアルコールの含有量は、1~1000質量部、5~500質量部、10~100質量部、10~50質量部、又は、50~100質量部であってよい。
【0034】
エポキシ組成物は、エポキシ樹脂を含有する。エポキシ樹脂としては、水溶性のエポキシ樹脂を用いることができる。水溶性のエポキシ樹脂は、23℃の水に0.5g以上溶解するエポキシ樹脂であってよい。エポキシ樹脂は、23℃において液状であってよい。エポキシ組成物は、分散剤(界面活性剤等)を用いて水中に分散したエポキシ樹脂を含有する水系エマルジョン(分散液)であってもよい。
【0035】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型のエポキシ樹脂;脂肪族系エポキシ樹脂;両末端にエポキシ基を有するエポキシ樹脂とアルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等)とを反応させて得られるエポキシポリオール化合物などが挙げられる。
【0036】
ビスフェノール型のエポキシ樹脂としては、ビスフェノール化合物とエピハロヒドリン(エピクロロヒドリン、β-メチルエピクロロヒドリン等)との反応生成物などが挙げられる。ビスフェノール化合物としては、フェノール化合物(フェノール、2,6-ジクロロフェノール等)とアルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等)との反応物;フェノール化合物(フェノール、2,6-ジクロロフェノール等)とケトン(アセトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との反応物などが挙げられる。エポキシ樹脂は、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を得やすい観点、及び、充分な機械的強度(例えば引張破断強度)を得やすい観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含んでよい。
【0037】
脂肪族系エポキシ樹脂としては、多価アルコールのグリシジルエーテル等が挙げられる。多価アルコールとしては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール、アルキレングリコール構造を有するポリアルキレングリコール等が挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。
【0038】
エポキシ組成物の25℃における粘度は、好適に硬化物を得る観点から、5000mPa・s以下である。エポキシ組成物の粘度は、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を得やすい観点、及び、充分な機械的強度(例えば引張破断強度)を得やすい観点から、下記の範囲であってよい。エポキシ組成物の粘度は、4000mPa・s以下、3000mPa・s以下、2000mPa・s以下、1600mPa・s以下、1500mPa・s以下、1200mPa・s以下、1000mPa・s以下、800mPa・s以下、500mPa・s以下、250mPa・s以下、200mPa・s以下、100mPa・s以下、50mPa・s以下、又は、35mPa・s以下であってよい。エポキシ組成物の粘度は、10mPa・s以上、30mPa・s以上、35mPa・s以上、50mPa・s以上、100mPa・s以上、200mPa・s以上、250mPa・s以上、500mPa・s以上、800mPa・s以上、1000mPa・s以上、1200mPa・s以上、1500mPa・s以上、又は、1600mPa・s以上であってよい。これらの観点から、エポキシ組成物の粘度は、10~5000mPa・s、10~2000mPa・s、30~2000mPa・s、50~2000mPa・s、又は、30~1500mPa・sであってよい。エポキシ組成物の粘度は、例えばB型粘度計(東機産業株式会社製TV-25 TM2ローター(粘度1000mPa・s以下)又はTM3ローター(粘度1000mPa・s以上)、ローター回転数30rpm)により測定できる。
【0039】
組成物セット又は硬化性組成物においてエポキシ樹脂の含有量は、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を得やすい観点、及び、充分な機械的強度(例えば引張破断強度)を得やすい観点から、ジエン系重合体100質量部に対して下記の範囲であってよい。エポキシ樹脂の含有量は、1質量部以上、10質量部以上、30質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、80質量部以上、100質量部以上、100質量部超、120質量部以上、又は、150質量部以上であってよい。エポキシ樹脂の含有量は、500質量部以下、300質量部以下、200質量部以下、180質量部以下、150質量部以下、120質量部以下、100質量部以下、100質量部未満、80質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、30質量部以下、又は、10質量部以下であってよい。これらの観点から、エポキシ樹脂の含有量は、1~500質量部、10~500質量部、10~150質量部、10~100質量部、又は、50~150質量部であってよい。
【0040】
組成物セット又は硬化性組成物においてエポキシ樹脂の含有量は、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を得やすい観点、及び、充分な機械的強度(例えば引張破断強度)を得やすい観点から、ポリビニルアルコール100質量部に対して下記の範囲であってよい。エポキシ樹脂の含有量は、10質量部以上、30質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、80質量部以上、100質量部以上、100質量部超、125質量部以上、150質量部以上、200質量部以上、300質量部以上、400質量部以上、500質量部以上、800質量部以上、1000質量部以上、1200質量部以上、又は、1500質量部以上であってよい。エポキシ樹脂の含有量は、2000質量部以下、1800質量部以下、1500質量部以下、1200質量部以下、1000質量部以下、800質量部以下、500質量部以下、400質量部以下、300質量部以下、200質量部以下、150質量部以下、125質量部以下、100質量部以下、100質量部未満、80質量部以下、60質量部以下、又は、50質量部以下であってよい。これらの観点から、エポキシ樹脂の含有量は、10~2000質量部、50~1500質量部、60~1000質量部、又は、50~1000質量部であってよい。
【0041】
組成物Bは、イソシアネート化合物(イソシアネート基を有する化合物。ジエン系重合体、ポリビニルアルコール又はエポキシ樹脂に該当する化合物を除く)を含有する。イソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物;トリイソシアネート化合物;ポリイソシアネート化合物(ジイソシアネート化合物及びトリイソシアネート化合物を除く);ポリウレタン化合物;これらの化合物と、ポリアミン化合物、多価アルコール等との反応物(末端に反応性イソシアネート基を有するプレポリマー)などが挙げられる。
【0042】
ジイソシアネート化合物としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。トリイソシアネート化合物としては、ビフェニルトリイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレントリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、上述のジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物等の重合物などが挙げられる。
【0043】
ポリアミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンヘキサミン、ペンタエチレンヘキサミン、シクロヘキシレンジアミン、ジシクロヘキサシルメタンジアミン、イソホロンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、トリフェニルメタンポリアミン、ピペラジン、アミノエチルピペラジン等が挙げられる。
【0044】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等のアルコール化合物;当該アルコール化合物とアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等)との付加重合により得られるポリエーテルポリオール化合物;当該アルコール化合物と多塩基酸(マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)との縮合反応により得られるポリエステルポリオール化合物;ラクトン類(ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン等)の開環重合により得られるポリエステルポリオール化合物;水酸基含有重合性モノマー(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸モノエステル等)の単独重合体又は共重合体;前記水酸基含有重合性モノマーと他の単量体((メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン等)との共重合体;ヒマシ又はその誘導体などが挙げられる。
【0045】
組成物セット又は硬化性組成物においてイソシアネート化合物の含有量は、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を得やすい観点、及び、充分な機械的強度(例えば引張破断強度)を得やすい観点から、ジエン系重合体100質量部に対して下記の範囲であってよい。イソシアネート化合物の含有量は、1質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、80質量部以上、100質量部以上、100質量部超、120質量部以上、150質量部以上、180質量部以上、又は、200質量部以上であってよい。イソシアネート化合物の含有量は、1000質量部以下、800質量部以下、500質量部以下、300質量部以下、200質量部以下、180質量部以下、150質量部以下、120質量部以下、100質量部以下、100質量部未満、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、又は、10質量部以下であってよい。これらの観点から、イソシアネート化合物の含有量は、1~1000質量部、5~500質量部、10~200質量部、40~200質量部、又は、50~200質量部であってよい。
【0046】
組成物セット又は硬化性組成物においてイソシアネート化合物の含有量は、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を得やすい観点、及び、充分な機械的強度(例えば引張破断強度)を得やすい観点から、ポリビニルアルコール100質量部に対して下記の範囲であってよい。イソシアネート化合物の含有量は、1質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、50質量部超、80質量部以上、100質量部以上、100質量部超、120質量部以上、200質量部以上、225質量部以上、300質量部以上、400質量部以上、500質量部以上、又は、600質量部以上であってよい。イソシアネート化合物の含有量は、1000質量部以下、800質量部以下、600質量部以下、500質量部以下、400質量部以下、300質量部以下、225質量部以下、200質量部以下、120質量部以下、100質量部以下、100質量部未満、80質量部以下、50質量部以下、50質量部未満、又は、40質量部以下であってよい。これらの観点から、イソシアネート化合物の含有量は、1~1000質量部、10~800質量部、50~500質量部、又は、50~200質量部であってよい。
【0047】
組成物セット又は硬化性組成物においてイソシアネート化合物の含有量は、コンクリートにおける湿潤状態の表面に対して充分な接着強度を得やすい観点、及び、充分な機械的強度(例えば引張破断強度)を得やすい観点から、エポキシ樹脂100質量部に対して下記の範囲であってよい。イソシアネート化合物の含有量は、1質量部以上、5質量部以上、8質量部以上、10質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、80質量部以上、90質量部以上、100質量部以上、100質量部超、120質量部以上、150質量部以上、170質量部以上、180質量部以上、200質量部以上、240質量部以上、300質量部以上、400質量部以上、又は、500質量部以上であってよい。イソシアネート化合物の含有量は、1000質量部以下、800質量部以下、500質量部以下、400質量部以下、300質量部以下、240質量部以下、200質量部以下、180質量部以下、170質量部以下、150質量部以下、120質量部以下、100質量部以下、100質量部未満、90質量部以下、80質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、又は、10質量部以下であってよい。これらの観点から、イソシアネート化合物の含有量は、1~1000質量部、10~500質量部、10~300質量部、又は、50~300質量部であってよい。
【0048】
組成物A、組成物B、エポキシ組成物、組成物セット又は硬化性組成物は、水を含有してよい。組成物A、組成物B、エポキシ組成物、組成物セット又は硬化性組成物は、ジエン系重合体、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物及び水以外の成分を含有してよい。このような成分としては、界面活性剤(ポリビニルアルコールを除く)、金属水酸化物、金属酸化物、粘着付与樹脂、粘着防止剤、安定剤、pH調整剤、可塑剤、老化防止剤、着色剤、増粘剤、減粘剤、消泡剤、シランカップリング剤、無機系フィラー等が挙げられる。組成物A、組成物B、エポキシ組成物、組成物セット又は硬化性組成物は、これらの成分の少なくとも一つを含有しなくてよく、金属水酸化物を含有しなくてよい。
【0049】
組成物A、組成物B、エポキシ組成物、組成物セット又は硬化性組成物において界面活性剤成分の含有量(ポリビニルアルコール及び他の界面活性剤の合計量。固形分)は、ジエン系重合体100質量部、ジエン系重合体及びポリビニルアルコールの合計100質量部、ジエン系重合体及びエポキシ樹脂の合計100質量部、又は、ジエン系重合体、ポリビニルアルコール及びエポキシ樹脂の合計100質量部に対して、0質量部を超えており、下記の範囲であってよい。界面活性剤成分の含有量は、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20.5質量部未満、20質量部以下、15質量部以下、15質量部未満、又は、10質量部以下であってよい。
【0050】
組成物A、組成物B、エポキシ組成物、組成物セット又は硬化性組成物において金属水酸化物の含有量は、ジエン系重合体100質量部、ジエン系重合体及びポリビニルアルコールの合計100質量部、ジエン系重合体及びエポキシ樹脂の合計100質量部、又は、ジエン系重合体、ポリビニルアルコール及びエポキシ樹脂の合計100質量部に対して下記の範囲であってよい。金属水酸化物の含有量は、50質量部以下、30質量部以下、30質量部未満、又は、10質量部以下であってよい。金属水酸化物の含有量は、0質量部であってよく、0質量部を超えてよい。
【0051】
組成物Aの固形分濃度は、良好な生産性及び粘度が得られやすい観点から、10~30質量%であってよい。
【0052】
本実施形態に係る処理方法(例えば土木処理方法)は、本実施形態に係る硬化性組成物を処理対象物(被着体。例えばコンクリート部材)に接触させる処理工程を備える。処理工程は、本実施形態に係る組成物セットの組成物A、組成物B及びエポキシ組成物を処理対象物上で混合することにより硬化性組成物を得てもよい。処理工程では、硬化性組成物、又は、組成物セットにおける組成物A、組成物B及びエポキシ組成物を処理対象物に塗布、注入又は吹き付けてよく、刷毛で塗布する方法、コーキングガンで注入する方法等を用いることができる。
【0053】
本実施形態に係る処理方法は、処理工程の前に、本実施形態に係る組成物セットの組成物A、組成物B及びエポキシ組成物の混合物として硬化性組成物を得る混合工程を備えてよい。混合工程は、組成物A、組成物B及びエポキシ組成物を互いに混合する工程であってよく、組成物A及びエポキシ組成物の混合物と、組成物Bと、を混合する工程であってよく、組成物Aと、組成物B及びエポキシ組成物の混合物と、を混合する工程であってよい。
【0054】
本実施形態に係る処理方法は、処理工程の後に、硬化性組成物を硬化させる硬化工程を備えてよい。硬化工程では、処理工程の後に、硬化性組成物を放置することにより自然硬化(常温硬化)させてよい。本実施形態に係る処理方法は、処理工程の後に、成形又は施工する工程を備えてよい。
【0055】
本実施形態に係る組成物セット、硬化性組成物、硬化物及び積層体は、土木処理方法として、土木補修・補強工法に用いることができる。土木補修・補強工法としては、止水工法(例えば注入止水工法)、剥落防止工法、表面被覆工法、断面修復工法、表面含浸工法、プレバックド工法、ひび割れ注入工法、RC巻き立て工法、鋼板巻き立て工法、炭素繊維補強工法、炭素繊維シート現場接着工法、アラミド繊維シート接着工法、導水工法、鋼板接着工法、縦桁増設工法、裏込め注入工法、埋設ジョイント工法、ポーラスコンクリート舗装、早期交通開放型コンクリート舗装等が挙げられる。本実施形態に係る土木補修・補強材(土木補修材又は補強材)は、本実施形態に係る硬化性組成物を含有する。
【0056】
止水工法とは、農水路の配管、コルゲート管、コンクリート構造物等のひび割れ部又は隙間から生じる漏水を止水する工法である。本実施形態に係る硬化物は、止水工法の止水材として使用することができる。本実施形態に係る止水材は、本実施形態に係る硬化性組成物を含有する。
【0057】
剥落防止工法とは、コンクリート構造物の施工時に発生するひび割れ等の欠陥;地震、衝突等によるひび割れ、剥離等の損傷;中性化、塩害、アルカリ骨材反応等に由来する劣化によるコンクリート塊の剥落などを防止する工法である。本実施形態に係る硬化物は、剥落防止工法の剥落防止材として使用することができる。本実施形態に係る剥落防止材は、本実施形態に係る硬化性組成物を含有する。
【0058】
表面被覆工法とは、コンクリート中の鋼材の腐食現象を外部から保護する目的、コンクリートを保護する目的等で塗布する工法である。本実施形態に係る硬化物は、表面被覆工法の表面被覆材として使用することができる。本実施形態に係る表面被覆材は、本実施形態に係る硬化性組成物を含有する。
【実施例0059】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0060】
<接着剤組成物の調製>
(実施例1~18)
表1又は表2のポリビニルアルコールを50~70℃の温水に溶解させることによりポリビニルアルコール水溶液を得た。次に、内容積3Lの容器に、表1又は表2のジエン系重合体ラテックスと、上述のポリビニルアルコール水溶液と、エマルジョン系エポキシ樹脂を含有する表1又は表2のエポキシエマルジョン組成物と、を添加した後、マグネティックスターラー(回転数:300rpm)を用いて20℃で30分間攪拌して混合することにより組成物Aを得た。次に、ハンドミキサーを用いて、この組成物Aと、表1又は表2の組成物B(イソシアネート組成物)とを1分間混合することにより接着剤組成物を得た。
【0061】
表1及び表2のジエン系重合体ラテックスa11~a15、ポリビニルアルコールa21,a22、エポキシエマルジョン組成物e1~e3、及び、イソシアネート組成物b1,b2としては、下記の成分を用いた。表1及び表2のポリビニルアルコール、エポキシエマルジョン組成物及びイソシアネート組成物の混合量は、ジエン系重合体ラテックスの固形分100質量部に対するポリビニルアルコール、エポキシ樹脂及びイソシアネート化合物の固形分の混合量を示す。
【0062】
[ジエン系重合体ラテックス]
ジエン系重合体ラテックスa11:ポリクロロプレンラテックス、デンカ株式会社製、商品名「LM-61」、重合体のガラス転移温度-40℃
ジエン系重合体ラテックスa12:(メタ)アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ラテックス(NBR)、日本ゼオン株式会社製、商品名「NipoL 1562」、重合体のガラス転移温度-26℃
ジエン系重合体ラテックスa13:(メタ)アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ラテックス(NBR)、日本ゼオン株式会社製、商品名「NipoL Lx511A」、重合体のガラス転移温度-22℃
ジエン系重合体ラテックスa14:スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス(SBR)、日本ゼオン株式会社製、商品名「Lx421」、重合体のガラス転移温度-18℃
ジエン系重合体ラテックスa15:天然ゴム(NR)、レヂテックス株式会社製、商品名「ET-Z」、重合体のガラス転移温度-72℃
【0063】
[ポリビニルアルコール]
ポリビニルアルコールa21:デンカ株式会社製、商品名「B-05」、ケン化度86.5~89.5mol%、重合度500
ポリビニルアルコールa22:クラレ株式会社製、商品名「403」、ケン化度78.5~81.5mol%、重合度300
【0064】
[イソシアネート組成物]
イソシアネート組成物b1:IPDI(イソホロンジイソシアネート)を含有するイソシアネート組成物、東邦化学工業株式会社製、商品名「ハイセルOH-822N」
イソシアネート組成物b2:MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)を含有するイソシアネート組成物、第一工業株式会社製、商品名「ポリグラウトM-2」
【0065】
[エポキシエマルジョン組成物]
エポキシエマルジョン組成物e1:特殊変性エポキシ樹脂・常温硬化型・酸化重合性・ノ二オン系、株式会社ADEKA製、商品名「EM-0464」、粘度(25℃)250mPa・s
エポキシエマルジョン組成物e2:特殊変性エポキシ樹脂・常温硬化型・アニオン系、株式会社ADEKA製、商品名「EM-0180」、粘度(25℃)35mPa・s
エポキシエマルジョン組成物e3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂・ノ二オン系、株式会社ADEKA製、商品名「EM-0425C」、粘度(25℃)1600mPa・s
【0066】
(実施例19~20)
表2のポリビニルアルコールを50~70℃の温水に溶解させることによりポリビニルアルコール水溶液を得た。次に、内容積3Lの容器において、表2のジエン系重合体ラテックスと、上述のポリビニルアルコール水溶液と、を添加した後、マグネティックスターラー(回転数:300rpm)を用いて20℃で30分間攪拌して混合することにより組成物Aを得た。次に、ハンドミキサーを用いて、表2のイソシアネート組成物と、エマルジョン系エポキシ樹脂を含有する表2のエポキシエマルジョン組成物と、を混合することにより組成物Bを得た。続いて、ハンドミキサーを用いて、上述の組成物A及び組成物Bを1分間混合することにより接着剤組成物を得た。
【0067】
(比較例1)
ジエン系重合体ラテックスを用いることなく組成物Aを調製したこと以外は実施例1と同様に行うことにより接着剤組成物を得た。
【0068】
(比較例2)
ポリビニルアルコールを用いることなく組成物Aを調製したこと以外は実施例1と同様に行うことにより接着剤組成物を得た。
【0069】
(比較例3)
エポキシエマルジョン組成物を用いることなく組成物Aを調製したこと以外は実施例1と同様に行うことにより接着剤組成物を得た。
【0070】
(比較例4)
エポキシエマルジョン組成物e1に代えてエポキシエマルジョン組成物e4(ビスフェノールA型エポキシ樹脂・ノ二オン系、株式会社ADEKA製、商品名「EM-101-50」、粘度(25℃)5800mPa・s)を用いたこと以外は実施例1と同様に行うことにより接着剤組成物を得た。
【0071】
<評価>
(引張接着強度)
土木学会基準JSCE-K 531に準拠して次の手順で引張接着強度(引張接着性)を評価した。まず、JIS A5371に準拠したコンクリート平板(寸法:300mm×300mm×60mm)の全体を水槽内で水(23℃)に3時間浸漬させることにより湿潤状態のコンクリート平板を得た。コンクリート平板を水槽から取り出した後の10分以内に、上述の接着剤組成物を得てから速やかに、湿潤状態のコンクリート平板の一方面の全体に接着剤組成物150g/m2を塗布することにより接着剤層を得た後、温度23℃、湿度50%RHで24時間放置した。これにより、実施例1~20及び比較例1~3では、接着剤層における硬化反応が進行することにより硬化物層を得た。比較例4では、硬化反応が進行せず、以降の操作を行わなかった。実施例1~20及び比較例1~3について、エポキシ系接着剤(ボンドクイックメンダー、コニシ株式会社製)を用いて硬化物層上に40mm×40mmの金属製治具を接着した後、温度23℃、湿度50%RHで約1時間放置した。建研式接着剥離試験機(株式会社井谷衡機製作所製、商品名「BA-450D」)を用いて硬化物層とコンクリート平板との引張接着強度(温度23℃、湿度50%RH、引張速度300mm/min)を測定した。測定結果を表1及び表2に示す。引張接着強度が0.60N/m2以上である場合を良好であると評価した。
【0072】
(引張破断強度)
JIS K6251に準拠して次の手順で引張破断強度(材料破断強度)を評価した。まず、上述の接着剤組成物を得てから速やかに、接着剤組成物を型枠に流し込んだ後、コテを用いて表面を平滑に調整した。次に、ギアオーブンを用いて40℃で16時間放置した。これにより、上述の引張接着強度と同様に、実施例1~20及び比較例1~3において硬化物(硬化物シート)を得た。打ち抜き刃を用いて、この硬化物を3号ダンベルサイズに裁断した。引張試験機(株式会社島津製作所製、商品名:AGS-X)を用いて、温度23℃、湿度50%RH、引張速度500mm/minで引張破断強度(切断時引張強さ)を測定した。測定結果を表1及び表2に示す。引張破断強度が2.00MPa以上である場合を良好であると評価した。
【0073】
【0074】