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特開2022-173844紙製包装材料の製造方法、塗料組成物、及び紙製積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173844
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】紙製包装材料の製造方法、塗料組成物、及び紙製積層体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20221115BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20221115BHJP
   C09D 123/08 20060101ALI20221115BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20221115BHJP
【FI】
B65D65/40 D
C09D5/02
C09D123/08
C09D7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079817
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100145089
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 正太
(72)【発明者】
【氏名】山田 和輝
(72)【発明者】
【氏名】川取 康博
(72)【発明者】
【氏名】関根 元
【テーマコード(参考)】
3E086
4J038
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB02
3E086BB51
3E086CA01
3E086DA08
4J038CB061
4J038JA19
4J038MA07
4J038MA10
4J038NA27
4J038PB04
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】エチレン-アクリル酸共重合体水分散体を含む塗料組成物から、ヒートシール強度が向上した紙製包装材料を製造する方法、塗料組成物、及び、ヒートシール性を有する紙製積層体を提供する。
【解決手段】エチレン-アクリル酸共重合体水分散体の希釈剤として、イソプロピルアルコールを用いて塗料組成物を形成し、当該塗料組成物からヒートシール層を形成して、紙製積層体を得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、ヒートシール層と、を備える紙製包装材料の製造方法であって、
エチレン-アクリル酸共重合体の水分散体と、
イソプロピルアルコールと、
を含む塗料組成物を、前記紙基材に塗布することを含み、
前記塗料組成物の粘度は、前記エチレン-アクリル酸共重合体の水分散体の粘度以上である、
紙製包装材料の製造方法。
【請求項2】
前記エチレン-アクリル酸共重合体は、エチレン-メタクリル酸共重合体である、請求項1に記載の紙製包装材料の製造方法。
【請求項3】
前記紙基材は、クラフト紙である、請求項1又は2に記載の紙製包装材料の製造方法。
【請求項4】
前記塗料組成物における前記イソプロピルアルコールの割合は、前記塗料組成物を構成する水100質量部に対して、5~60質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の紙製包装材料の製造方法。
【請求項5】
前記塗料組成物における前記イソプロピルアルコールの割合は、前記塗料組成物を構成する水100質量部に対して、15~40質量部である、請求項4に記載の紙製包装材料の製造方法。
【請求項6】
紙基材にヒートシール層を形成するための塗料組成物であって、
エチレン-アクリル酸共重合体の水分散体と、
イソプロピルアルコールと、
を含み、
前記塗料組成物の粘度は、前記エチレン-アクリル酸共重合体の水分散体の粘度以上である、
塗料組成物。
【請求項7】
前記エチレン-アクリル酸共重合体は、エチレン-メタクリル酸共重合体である、請求項6に記載の塗料組成物。
【請求項8】
前記紙基材は、クラフト紙である、請求項6又は7に記載の塗料組成物。
【請求項9】
前記塗料組成物における前記イソプロピルアルコールの割合は、前記塗料組成物を構成する水100質量部に対して、5~60質量部である、請求項6~8のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項10】
前記塗料組成物における前記イソプロピルアルコールの割合は、前記塗料組成物を構成する水100質量部に対して、15~40質量部である、請求項9に記載の塗料組成物。
【請求項11】
紙基材と、
請求項6~10のいずれか一項に記載の塗料組成物から形成されたヒートシール層と、
を含む紙製積層体。
【請求項12】
包装材である、請求項11に記載の紙製積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製包装材料の製造方法、塗料組成物、及び紙製積層体に関する。更に詳しくは、ヒートシール性を有する紙製包装材料の製造方法、塗料組成物、及びヒートシール性を有する紙製積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、環境対応として脱プラスチックが求められる中で、食品包装分野においては、プラスチック製から紙製への転換が求められている。
【0003】
しかしながら、紙単独の包装材はヒートシール性を有さないことから、内容物の密閉や包装材の加工のために、紙製の基材にヒートシール性を付与する技術が検討されている。
【0004】
紙製の包装材にヒートシール性を付与する手段としては、例えば、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムや直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム等のヒートシール性を有するシーラントフィルムを、紙基材に貼合する方法が知られている。
【0005】
しかしながら、上記のようなシーラントフィルムは、フィルムとしての機能を持たせるために一定の厚さが必要であり、プラスチック製から紙製への転換が求められている状況下では、プラスチック量の削減への寄与も小さく、望ましい態様ではない。
【0006】
そこで、シーラントフィルムを貼合する方法よりもプラスチック使用量の削減が見込め、紙製の包装材にヒートシール性を付与する別の手段として、紙基材に塗料を塗工して、ヒートシール層を形成する方法が提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、無機層状化合物及びエチレン-アクリル共重合体を含有し、水蒸気バリア性及びヒートシール性を発現する塗工液を、基材となる紙に塗工してヒートシール層を形成した、防湿紙が記載されている。そして、実施例においては、無機層状化合物の水分散液に、エチレン-アクリル共重合体水分散体を加え、更に、変性ポリアミド樹脂、アンモニア水溶液、及び希釈水を加えて、塗工液が調製されている。
【0008】
なお、非特許文献1に開示されているように、アルコール水溶液は、アルコールのモル分率によって溶液の粘度が変化し、その粘度は、アルコールのモル分率に非線形に依存することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-190063号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】The microscopic viscosity of water-alcohol binary solvents studied by ultrafast spectroscopy utilizing diffusive phenyl ring rotation of malachite green as a probe,Y.Nagasawa,Y.Nakagawa,A.Nagafuji,T.Okada,and H. Miyasaka,Journal of Molecular Structure,735-736C,p.217-223(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載された方法によれば、プラスチック製のシーラントフィルムを用いることなく、ヒートシール性を有する紙製の包装材を作製することができる。しかしながら、より大きなヒートシール強度が必要となる製品に対しては、未だ満足できない場合があった。
【0012】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、エチレン-アクリル酸共重合体水分散体を含む塗料組成物から、ヒートシール強度が向上した紙製包装材料を製造する方法、塗料組成物、及び、ヒートシール性を有する紙製積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして、エチレン-アクリル酸共重合体水分散体の希釈剤として、イソプロピルアルコールを用いて塗料組成物を形成し、当該塗料組成物からヒートシール層を形成すれば、得られる紙製包装材料のヒートシール強度を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0014】
《態様1》
紙基材と、ヒートシール層と、を備える紙製包装材料の製造方法であって、
エチレン-アクリル酸共重合体の水分散体と、
イソプロピルアルコールと、
を含む塗料組成物を、前記紙基材に塗布することを含み、
前記塗料組成物の粘度は、前記イソプロピルアルコールを含有しないことを除いて前記塗料組成物と同一の組成物の粘度以上である、
紙製包装材料の製造方法。
《態様2》
前記エチレン-アクリル酸共重合体は、エチレン-メタクリル酸共重合体である、態様1に記載の紙製包装材料の製造方法。
《態様3》
前記紙基材は、クラフト紙である、態様1又は2に記載の紙製包装材料の製造方法。
《態様4》
前記塗料組成物における前記イソプロピルアルコールの割合は、前記塗料組成物を構成する水100質量部に対して、5~60質量部である、態様1~3のいずれか一態様に記載の紙製包装材料の製造方法。
《態様5》
前記塗料組成物における前記イソプロピルアルコールの割合は、前記塗料組成物を構成する水100質量部に対して、15~40質量部である、態様4に記載の紙製包装材料の製造方法。
《態様6》
紙基材にヒートシール層を形成するための塗料組成物であって、
エチレン-アクリル酸共重合体の水分散体と、
イソプロピルアルコールと、
を含み、
前記塗料組成物の粘度は、前記イソプロピルアルコールを含有しないことを除いて前記塗料組成物と同一の組成物の粘度以上である、
塗料組成物。
《態様7》
前記エチレン-アクリル酸共重合体は、エチレン-メタクリル酸共重合体である、態様6に記載の塗料組成物。
《態様8》
前記紙基材は、クラフト紙である、態様6又は7に記載の塗料組成物。
《態様9》
前記塗料組成物における前記イソプロピルアルコールの割合は、前記塗料組成物を構成する水100質量部に対して、5~60質量部である、態様6~8のいずれか一態様に記載の塗料組成物。
《態様10》
前記塗料組成物における前記イソプロピルアルコールの割合は、前記塗料組成物を構成する水100質量部に対して、15~40質量部である、態様9に記載の塗料組成物。
《態様11》
紙基材と、
態様6~10のいずれか一態様に記載の塗料組成物から形成されたヒートシール層と、
を含む紙製積層体。
《態様12》
包装材である、態様11に記載の紙製積層体。
【発明の効果】
【0015】
本発明の紙製包装材料の製造方法によれば、ヒートシール強度に優れた紙製包装材料を製造することができる。
【0016】
また、本発明の紙製積層体は、ヒートシール強度に優れた紙基材の積層体となる。
【0017】
したがって、本発明の紙製包装材料の製造方法によって得られる紙製包装材料、及び本発明の紙製積層体は、ヒートシール層同士、又はヒートシール層と他の材料とを熱溶着させることにより、ヒートシール強度に優れた各種の包装体を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《塗料組成物》
本発明の塗料組成物は、紙基材にヒートシール層を形成するために用いられる塗料組成物であって、エチレン-アクリル酸共重合体の水分散体と、イソプロピルアルコールと、を含む。塗料組成物は、エチレン-アクリル酸共重合体、水、及びイソプロピルアルコールを、必須の成分として含んでいればよく、これら以外の成分を必要に応じて含んでいてもよい。
【0019】
本発明の塗料組成物の粘度は、イソプロピルアルコールを含有しないことを除いて塗料組成物と同一の組成物の粘度以上となっている。
【0020】
<エチレン-アクリル酸共重合体の水分散体>
エチレン-アクリル酸共重合体の水分散体は、媒体となる水に、エチレン-アクリル酸共重合体が分散したものである。エチレン-アクリル酸共重合体の分散形態は、特に限定されないが、例えば、エマルジョン状に分散したものであってよい。
【0021】
エチレン-アクリル酸共重合体は、エチレンと(メタ)アクリル単量体との共重合体である。ここで、(メタ)アクリルとは、メタクリル酸及びアクリル酸を意味する。なお、本発明に用いられるエチレン-アクリル酸共重合体は、エチレン及び(メタ)アクリル単量体と共重合可能な、その他の単量体が少量、共重合されていてもよい。
【0022】
モノマーとなる(メタ)アクリル酸としては、(メタ)アクリル酸及びそのアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのエステル部分のアルキル基の炭素数としては、1以上であってよく、8以下、6以下、4以下であってよい。
【0023】
本発明に用いられるエチレン-アクリル酸共重合体のアクリルモノマーとしては、アクリル酸、又はメタクリル酸が好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
【0024】
エチレン-アクリル酸共重合体としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体、及びエチレン-メタクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。本発明においては、これらの1種、又は2種以上であってよい。
【0025】
本発明に用いられるエチレン-アクリル酸共重合体としては、中でも、エチレン-アクリル酸共重合体、又はエチレン-メタクリル酸共重合体が好ましく、エチレン-メタクリル酸共重合体が特に好ましい。
【0026】
エチレン-メタクリル酸共重合体の水分散体としては、市販品を用いることができ、例えば、アクアテックス(登録商標)AC-3100(ジャパンコーティングレジン株式会社)が挙げられる。
【0027】
エチレン-メタクリル酸共重合体は、ヒートシール性を発現する樹脂である。また、紙との密着性にも優れる。したがって、本発明においては、紙基材とヒートシール層との間の密着性に優れた紙製包装体を実現することができる。
【0028】
<イソプロピルアルコール>
塗料組成物を構成するイソプロピルアルコールは、炭素原子数が3の第二級アルコールであり、2-プロパノールと呼ばれることもあるアルコールである。
【0029】
本発明の塗料組成物の粘度は、イソプロピルアルコールを含有しないことを除いて塗料組成物と同一の組成物の粘度以上である。すなわち、本発明の塗料組成物は、イソプロピルアルコールが塗料組成物の構成要素として添加されることにより、その粘度が上昇しているものである。
【0030】
非特許文献1に開示されているように、アルコール水溶液は、アルコールのモル分率によって溶液の粘度が変化し、その粘度は、アルコールのモル分率に非線形に依存することが知られている。
【0031】
そして、エタノール(EtOH)やプロパノール(1-PrOH)、イソプロピルアルコール(2-PrOH)の水溶液の粘度は、アルコールのモル分率が0.2~0.3の辺りで極大値となる。これは、「疎水性水和」、すなわち、アルコールが水溶液中でクラスターを形成し、疎水性相互作用により集まったアルコール分子の回りを、水分子が水素結合してカゴ状構造を形成するためと考えられている。
【0032】
モル分率0.2~0.3を超えてアルコール濃度が高くなると、アルコール水溶液の粘度は低下する。
【0033】
本発明の塗料組成物は、エチレン-アクリル酸共重合体の水分散体の媒体である水に、イソプロピルアルコールが添加されることで、上記した現象により、イソプロピルアルコールの濃度に依って、その粘度を変化させる。そして、添加量を増加させていくにつれて粘度は上層して極大値を向かえ、極大値を超えてイソプロピルアルコールの濃度が高くなると、塗料組成物の粘度は低下していく。
【0034】
本発明の塗料組成物は、その粘度が、イソプロピルアルコールを含有しないことを除いて塗料組成物と同一の組成物の粘度以上であることにより、塗料組成物を紙基材の上に適用して形成するヒートシール層の、ヒートシール強度を向上させることができる。これは、塗料組成物の粘度が上昇したことにより、紙基材、すなわち塗料組成物が浸透しやすい基材への塗料組成物の浸透が抑制され、その結果、紙基材上に適度な厚みのヒートシール層を形成できるためと考えている。また、粘度を増加させるために用いられるイソプロパノールは、塗料組成物の塗布後に、気化によって水とともに容易に除去できる点でも好ましい。
【0035】
(塗料組成物におけるイソプロピルアルコールと水の組成)
塗料組成物を構成する媒体において、イソプロピルアルコールと水の組成は、塗料組成物の粘度が、イソプロピルアルコールを含有しないことを除いて塗料組成物と同一の組成物の粘度よりも大きくなる比率であれば、特に限定されるものではない。
【0036】
塗料組成物におけるイソプロピルアルコールの割合は、例えば、塗料組成物を構成する水100質量部に対して、5~60質量部であってよい。
【0037】
塗料組成物におけるイソプロピルアルコールの割合は、塗料組成物を構成する水100質量部に対して、8質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、15質量%以上、18質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上であってよく、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、37質量%以下、35質量%以下、33質量%以下、30質量%以下であってよい。
【0038】
特には、塗料組成物におけるイソプロピルアルコールの割合は、塗料組成物を構成する水100質量部に対して、15~40質量部であってよい。
【0039】
(塗料組成物におけるエチレン-メタクリル酸共重合体の組成)
塗料組成物におけるエチレン-メタクリル酸共重合体の組成は、塗料組成物が紙基材の上に均等に塗布できる量が含まれていれば、特に限定されるものではない。例えば、固形分濃度として、30~50質量%であってよい。
【0040】
《紙製包装材料の製造方法》
本発明の紙製包装材料の製造方法は、紙基材と、ヒートシール層と、を備える紙製包装材料の製造方法である。ヒートシール層は、上記した塗料組成物を紙基材に塗布することで形成する。本発明において塗料組成物は、エチレン-アクリル酸共重合体の水分散体と、イソプロピルアルコールとを含み、塗料組成物の粘度を、イソプロピルアルコールを含有しないことを除いて塗料組成物と同一の組成物の粘度よりも大きくする。
【0041】
<紙基材>
本発明に用いられる紙基材は、植物繊維その他の繊維を膠着させて製造したものであればよく、特に限定されるものではない。中では、植物由来のパルプを主成分とするものであれば、環境対応の要請を満足することができる。
【0042】
本発明に用いられる紙基材としては、例えば、上質紙、中質紙、微塗工紙、塗工紙、片艶紙、晒又は未晒クラフト紙等を挙げることができる。中では、クラフト紙は、包装用途として用いた場合に十分な強度を有し、かつエチレン-アクリル酸共重合体の水分散体とイソプロピルアルコールとを含む塗料組成物を、適度に含侵させるため好ましい。
【0043】
<塗料組成物の塗布方法>
本発明の紙製包装材料の製造方法は、塗料組成物を紙基材に塗布することを含み、これにより、紙基材とヒートシール層とを備える紙製包装材料を製造する。
【0044】
塗料組成物を紙基材に塗布する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、スプレーコーター等の塗布装置を用いて塗布する方法が挙げられる。
【0045】
塗料組成物を紙基材に塗布する塗布量は、特に限定されるものではなく、用いる用途に応じて適宜設定することができる。十分なヒートシール性を付与するためには、例えば、塗膜としたときの乾燥質量で、2g/m以上であってもよい。塗布量は、塗膜としたときの乾燥重量で、3g/m以上、4g/m以上、5g/m以上、8g/m以上、10g/m以上であってもよい。
【0046】
《紙製積層体》
本発明の紙製積層体は、紙基材と、本発明の塗料組成物から形成されたヒートシール層と、を含む。そして、ヒートシール層は、上記した本発明の塗料組成物を紙基材に塗布することにより形成され、エチレン-アクリル酸共重体を含む。
【0047】
<紙基材>
本発明の紙製積層体を構成する紙基材は、上記した本発明の紙製包装材料の製造方法に適用できる紙基材と同様である。
【0048】
<ヒートシール層>
本発明の紙製積層体におけるヒートシール層は、本発明の塗料組成物から形成され、エチレン-アクリル酸共重体を含む。
【0049】
<その他の層>
本発明の紙製積層体は、紙基材と本発明の塗料組成物から形成されたヒートシール層とを必須の層として含んでいれば、その他の層を任意に備えていてもよい。その他の層としては、特に限定されるものではなく、例えば、酸素や水蒸気に対するバリア性を付与するためのバリア層、強度を補強するための補強層、あるいは、層と層との間を接着するための接着層等が挙げられる。
【0050】
本発明の紙製積層体において、必須の構成層となる紙基材とエチレン-アクリル酸共重体を含むヒートシール層以外の任意の層は、例えば、紙基材とヒートシール層の間、紙基材の外側に、配置することができる。
【0051】
バリア層としては、例えば、酸素や水蒸気等のガスを遮断する機能を発現する、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ナイロン(NY)、又はポリアクリロニトリル(PAN)からなる層等が挙げられる。
【0052】
補強層の材料としては、例えば、紙、合成紙、不織布等が挙げられる。これらには、隣接する層との接着性を付与するための接着剤が塗布されていてもよい。
【0053】
層と層との間を接着するための接着層としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマーからなる層等が挙げられる。
【0054】
その他の層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよい。また、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0055】
(印刷層)
本発明の紙製積層体は、紙基材の、ヒートシール層とは反対側の面に、印刷層を有していてもよい。印刷層は、公知の構成であってよく、例えば、樹脂と顔料とを含む層であってよい。
【0056】
(その他の層の積層方法)
本発明の紙製積層体において、紙基材とヒートシール層以外のその他の層の積層方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、ドライラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、エクストルージョンラミネーション法、及びサンドイッチラミネーション方法等が挙げられる。
【0057】
<紙製積層体の用途>
本発明の紙製積層体の用途は、特に限定されるものではない。ヒートシール性が必要となる各種の用途に用いることができ、例えば、包装材として用いることができる。中でも、ヒートシール性が必要となる食品包装に適用した場合には、紙製の包装材であることから、環境への要請を満足させることができる。
【実施例0058】
以下、実施例及び比較例等により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
<材料>
実施例及び比較例においては、層を構成する材料として、以下を準備した。
【0060】
(1)紙基材
・片艶晒クラフト紙(OKブリザード 60g/m、王子マテリア(株)製)
(2)エチレン-アクリル酸共重合体の水分散体
・水分散系エチレン-アクリル酸共重合体エマルジョン(アクアテックス(登録商標)AC-3100、ジャパンコーティングレジン(株)製、固形分量=44.5質量%、粘度=220mPa・s、pH=4.7)
(3)イソプロピルアルコール
・イソプロピルアルコール(大伸化学(株)製)
(4)メタノール 100%(大伸化学(株)製)
【0061】
<実施例1>
(塗料組成物の作製)
水分散系エチレン-アクリル酸共重合体エマルジョン(アクアテックス(登録商標)AC-3100、ジャパンコーティングレジン(株)製)100質量部に対して、イソプロピルアルコール(大伸化学(株)製)10質量部を加え、攪拌機を使用して十分に攪拌させて、塗料組成物を調製した。
【0062】
得られた塗料組成物の粘度は、280mPa・sであった。また、エチレン-アクリル酸共重合体の固形分量は、40.5質量%であり、塗料組成物を構成する水100質量部に対するイソプロピルアルコールの割合は、18.0質量部であった。
【0063】
(紙製積層体の作製)
片艶晒クラフト紙(OKブリザード 60g/m、王子マテリア(株)製)に、上記で得られた塗料組成物を塗布し、乾燥させることで、紙基材とヒートシール層とを備える紙製積層体を得た。なお、塗料組成物の塗工量は、乾燥質量で3.5g/mとした。塗工は、グラビア印刷マルチ校正機(グラボープルーフマルチ、日商グラビア)に130線38μのグラビア版をセッティングし、運転速度40m/minにて実施した。
【0064】
<実施例2>
水分散系エチレン-アクリル酸共重合体エマルジョン(アクアテックス(登録商標)AC-3100、ジャパンコーティングレジン)100質量部に対して、イソプロピルアルコール(東洋インキ製)を、20質量部として塗料組成物を作製し、塗料組成物の塗工量を乾燥質量で3.6g/mとした以外は、実施例1と同様に塗料組成物を形成し、紙製積層体を作製した。
【0065】
得られた塗料組成物の粘度は、460mPa・sであった。また、エチレン-アクリル酸共重合体の固形分量は、37.1質量%であり、塗料組成物を構成する水100質量部に対するイソプロピルアルコールの割合は、36.0質量部であった。
【0066】
<実施例3>
水分散系エチレン-アクリル酸共重合体エマルジョン(アクアテックス(登録商標)AC-3100、ジャパンコーティングレジン)100質量部に対して、イソプロピルアルコール(東洋インキ製)を、30質量部として塗料組成物を作製し、塗料組成物の塗工量を乾燥質量で3.5g/mとした以外は、実施例1と同様に塗料組成物を形成し、紙製積層体を作製した。
【0067】
得られた塗料組成物の粘度は、840mPa・sであった。また、エチレン-アクリル酸共重合体の固形分量は、34.2質量%であり、塗料組成物を構成する水100質量部に対するイソプロピルアルコールの割合は、54.1質量部であった。
【0068】
<評価>
(ヒートシール強度の測定)
上記で得られた紙製積層体のヒートシール層同士を向かい合わせて、以下の条件で互いにヒートシールした。
使用設備 : シール試験機TP-701-B(テスター産業)
シール幅 : 20mm
バー厚み : 10mm
シール圧力: 0.23MPa
シール温度: 120℃、及び140℃
シール秒数: 0.5秒
【0069】
次いで、ヒートシールしたサンプルについて層間剥離を実施し、剥離面の層間強度を測定した。測定には、ストログラフ VGS05E(東洋精機)を測定機として用い、300mm/min、剥離長さ10mmの条件で180°剥離させたときの、剥離長さ10mmにおける最大剥離強度を算出した。なお、測定は、23℃、60RH%の環境下で実施した。測定結果を表1に示す。
【0070】
<比較例1>
水分散系エチレン-アクリル酸共重合体エマルジョン(アクアテックス(登録商標)AC-3100、ジャパンコーティングレジン)を、希釈することなくそのまま用いて塗料組成物とし、塗料組成物の塗工量を乾燥質量で4.8g/mとした以外は、実施例1と同様に紙製積層体を作製し、ヒートシール強度を測定した。
【0071】
塗料組成物の粘度は、220mPa・sであり、エチレン-アクリル酸共重合体の固形分量は、44.5質量%であった。結果を表1に示す。
【0072】
<比較例2~4>
(塗料組成物の作製)
水分散系エチレン-アクリル酸共重合体エマルジョン(アクアテックス(登録商標)AC-3100、ジャパンコーティングレジン)100質量部に対して、表1に示す量の水を加え、攪拌機を使用して十分に攪拌させて、塗料組成物を調製した。
【0073】
(紙製積層体の作製)
得られた塗料組成物を、実施例1と同様にして、片艶晒クラフト紙(OKブリザード 60g/m、王子マテリア(株)製)に、表1に示す塗工量で塗布し、乾燥させることで、紙製積層体を得た。続いて、実施例1と同様にして、得られた紙製積層体のヒートシール強度を測定した。
【0074】
得られた塗料組成物の粘度、塗料組成物の塗工量、ヒートシール強度を、表1に示す。
【0075】
【表1】