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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173856
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】汚染土壌の浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/08 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
B09C1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079836
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩野 芳章
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 将文
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 拓也
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004CA09
4D004CA34
4D004CC11
4D004DA03
4D004DA10
(57)【要約】
【解決課題】磁着物中への土壌の巻込み量を低減するとともに、有害物質の不溶化の問題も生じることがない汚染土壌の浄化方法を提供する。
【解決手段】 汚染土壌の浄化方法は、汚染土壌の水分含有量を20質量%以下に調整する第1工程と、前記水分含有量を調整した前記汚染土壌に対して、150μm以上の粒度を有し且つ前記汚染土壌に対して2.5~11質量%の鉄粉と、紙粉と、を同時に添加して混合する第2工程と、前記汚染土壌から磁選により鉄粉を回収する第3工程と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染土壌の水分含有量を20質量%以下に調整する第1工程と、
前記水分含有量を調整した前記汚染土壌に対して、150μm以上の粒度を有し且つ前記汚染土壌に対して2.5~11質量%の鉄粉と、紙粉と、を同時に添加して混合する第2工程と、
前記汚染土壌から磁選により鉄粉を回収する第3工程と、
を備える汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記汚染土壌に対して2.5~7.5質量%の前記鉄粉を添加する請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁着物中への土壌の巻込み量を低減した汚染土壌の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚染土壌の無害化処理方法が存在する(特許文献1参照)。この方法は、汚染土壌に対して鉄粉を添加し、汚染土壌の水分含有量を36質量%以下に調整し、当該鉄粉に有害物質を吸着させ、当該水分含有量を調整した汚染土壌から鉄粉を乾式磁選により回収除去することで、汚染土壌を浄化土壌としている。また鉄粉とともに中性固化材を添加している。中性固化材としては、半水石膏を主成分とするものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5647371号公報
【特許文献2】特開2003-290757号公報
【特許文献3】特許第6692136号公報、段落[0028]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の方法では、乾式磁選時に鉄粉のみならず多量の土壌を鉄粉とともに回収してしまう問題がある。この場合に、鉄粉とともに回収された土壌は汚染土壌として扱う必要があるため、鉄粉とともに回収された土壌の増加は、処理コストの増大に直結する。また、上記従来の方法では中性固化材を用いているが、中性固化材には、有害物質を不溶化する効果がある(特許文献2、3参照)。このため、非磁着物である浄化土中に、有害物質が不溶化されて残留してしまう問題がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、磁着物中への土壌の巻込み量を低減するとともに、有害物質の不溶化の問題も生じることがない汚染土壌の浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明により解決される。すなわち、本発明(1)の汚染土壌の浄化方法は、汚染土壌の水分含有量を20質量%以下に調整する第1工程と、
前記水分含有量を調整した前記汚染土壌に対して、150μm以上の粒度を有し且つ前記汚染土壌に対して2.5~11質量%の鉄粉と、紙粉と、を同時に添加して混合する第2工程と、
前記汚染土壌から磁選により鉄粉を回収する第3工程と、
を備える。
【0007】
また、本発明(2)の汚染土壌の浄化方法は、(1)記載の汚染土壌の浄化方法であって、
前記第2工程において、前記汚染土壌に対して2.5~7.5質量%の前記鉄粉を添加する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、磁着物中への土壌の巻込み量を低減するとともに、有害物質の不溶化の問題も生じることがない汚染土壌の浄化方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の汚染土壌の浄化方法を示すフローチャートである。
図2図1に示すフローチャート中の各工程を模式的に示す模式図である。
図3図1に示す模式図の鉄粉の一例を示す写真である。
図4図1に示す模式図の紙粉の一例を示す写真である。
図5】鉄粉に対する砒素の固定化メカニズムを模式的に示す模式図である。
図6】実施例1~6および比較例1~6の磁着物への土壌巻込み率を示すグラフである。
図7】実施例1~6および比較例1~6の砒素溶出量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、汚染土壌の水分含有量を20質量%以下に調整する第1工程と、前記水分含有量を調整した前記汚染土壌に対して、150μm以上の粒度を有し且つ前記汚染土壌に対して2.5~11質量%の鉄粉と、紙粉と、を同時に添加して混合する第2工程と、前記汚染土壌から磁選により鉄粉を回収する第3工程と、を備える汚染土壌の浄化方法に関するものである。
【0011】
図1に実施形態の汚染土壌の浄化方法のフローチャートを示す。図2に、実施形態の汚染土壌の浄化方法の各工程を模式的に示したフロー図を示す。本発明の汚染土壌の浄化方法は、大きく、汚染土壌中の水分含有量を調整する第1工程と、汚染土壌に鉄粉および紙粉を同時に添加して混合する第2工程と、磁石を用いた磁選によって汚染土壌から汚染物質を吸着した鉄粉を回収する第3工程と、を含む。
【0012】
第1工程は、汚染土壌に対して水を添加したり、或いは汚染土壌を乾燥させたりすることで、汚染土壌中の水分含有量を調整する。具体的には、汚染土壌に対して水分含有量を20質量%以下、例えば、1~20質量%に調整する。汚染土壌に対する水分含有量は、5~15質量%であることが好ましく、7~13質量%であることがさらに好ましい。汚染土壌に対して水分含有量が20質量%を超えると、汚染土壌の粘性が増大し、磁着物中に含まれる土壌の量(土壌巻込み率)が増加する。一方、汚染土壌に対する水分含有量を1%以下にすると、次に述べる第2工程において鉄粉に汚染物質を吸着させる反応が進まなくなる。
【0013】
第2工程は、汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を添加して混合する。第2工程において汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を添加する手順としては、汚染土壌に対してまず鉄粉および紙紛を添加して混合し、所定時間静置する。第2工程では、汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を添加した後、例えば、混合機を用いて汚染土壌を混合する。混合機としては、公知のものを使用することができ、具体的にはせん断式混合機、例えば、二軸式パドル混合機などを用いることができる。汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を同時に添加した後に、汚染土壌を混合することで、鉄粉に対して汚染物質を吸着させることができる。図5に、鉄粉に対する汚染物質(砒素)の吸着メカニズムを示す。図5の模式図は、藤浦貴保ほか:神戸製鋼技報,Vol.59 No.1(Apr. 2009)から一部改変して作成した。
【0014】
図5に示すように、鉄粉から鉄イオンFe2+が溶出し、水中の砒酸イオンと反応して、砒酸鉄の結晶を生成する。砒酸鉄の結晶は、鉄粉表面に強く吸着される。このため、磁選によって鉄粉を除去することで、汚染土壌を浄化土として浄化することができる。鉛についても同様に、鉛イオンを経由した反応によって鉄粉に吸着されうる。
【0015】
第2工程において、汚染土壌に対して、好ましくは15質量%以下の鉄粉が添加される。鉄粉は、汚染土壌に対して1質量%以上、好ましくは2.5質量%以上、さらに好ましくは3.75質量%以上、添加されることが好ましい。また、鉄粉は、汚染土壌に対して15質量%以下、好ましくは11質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、最も好ましくは7.5質量%以下、添加されることが好ましい。汚染土壌に対する鉄粉の添加量の範囲は、上記下限値および上限値を適宜に組み合わせて設定できる。汚染土壌に対する鉄粉の添加量を上記範囲とすることにより、鉄粉の使用量を削減しつつ、処理された処理土から溶出される汚染物質溶出量を十分に低減して、処理コストを低減できる点で好ましい。汚染土壌に対する鉄紛の添加量が15質量%を超えると、磁着物に巻き込まれる汚染土壌の量が大きくなる。汚染土壌に対する鉄紛の添加量が0.1質量%を下回ると、汚染物質の回収率が十分に上がらない。
【0016】
第2工程において汚染土壌に添加する鉄粉は、例えば、150μm~12.0mm、好ましくは180μm~10.0mm、さらに好ましくは250μm~5.6mmの粒径(粒度)を有し、それらの範囲内で適当な粒度分布を有する。鉄粉の粒径が150μm~12.0mmの場合、D50は、310μm~6.0mmが好ましく、粒径が180μm~10.0mmの場合、D50は、360μm~5.0mmが好ましく、粒径が250μm~5.6mmの場合、D50は、380μm~3.0mmが好ましい。この場合、D50は、JIS A 1204 土の粒度試験に準拠して測定されたものである。
【0017】
鉄粉の粒度分布は、正規分布のように中央値の存在比が大きい分布となっていてもよい。鉄粉の粒度(粒径)および粒度分布は、一例として、JIS Z 2510 金属粉―乾式ふるい分けによる粒度試験方法およびJIS Z 2510において引用されるJIS Z 8801-1 試験用ふるい-第1部:金属製網ふるいに記載の方法により測定することができる。
【0018】
鉄粉は、商業的に入手可能な鉄粉を使用することができる。鉄粉は、JFE製の識別名称K-3M、宝鋼集団有限公司製の識別名称B-3M、および莱蕪鋼鉄集団有限公司製の識別名称R-3Mをそのまま使用してもよい。図3に、鉄粉の一例であるJFE製の識別名称K-3Mの写真を示す。同図中のスケールの1目盛の単位は、mmである。或いは、鉄粉は、JFE製の識別名称K-3M、宝鋼集団有限公司製の識別名称B-3M、および莱蕪鋼鉄集団有限公司製の識別名称R-3M、の粒度分布を調整した鉄粉を使用してもよい。
【0019】
鉄粉は、150μm以上の粒度(粒径)を有する粒子からなる鉄粉を用いることが好ましい。例えば、鉄粉として、そのような粒度(粒径)を有するJFE製の識別名称K-3Mを用いることができる。鉄粉(K-3M)は、そのうちの91.2質量%を150μm以上の粒度(粒径)を有する粒子が占めている。このように、150μm以上の粒度(粒径)を有する鉄粉を用いることで、第2工程における混合の際に、当該鉄粉の粒子が土壌の団粒中に過度に入り込むことが防止され、磁着物の土壌巻込み率を低減することができるものと考えられる。
【0020】
一方、JFE製の識別名称300Rの鉄粉は、そのうちの90.3質量%を150μm未満の粒度(粒径)を有する微粒子が占めている。これを用いると、第2工程における混合の際に、当該鉄粉の微粒子が土壌の団粒中に入り込む可能性が増大し、磁着物の土壌巻込み率を向上してしまう。一方、鉄粉(K-3M)のように、そのほとんどが150μm以上の粒度(粒径)を有するものは、第2工程における混合の際に、土壌の団粒中に過度に入り込むことが防止される。その結果、磁着物に巻き込まれる土壌の量(土壌巻込み率)が低減される。
【0021】
第2工程において、汚染土壌に添加する紙粉は、商業的に入手可能な各種の紙粉を用いることができる。紙粉は、一例として、セルロースの紙状体を微細な粉状にするとともに、一部のセルロース繊維を毛羽立たせて綿状にしたものである。紙粉の一例として、日本紙通商株式会社製の識別名称:紙粉の写真を図4に示す。同図中のスケールの1目盛の単位は、mmである。紙粉は、粉砕古紙を原料にするものであってもよいし、粉末状の100%セルロースパルプを原料とするものであってもよい。紙粉の形態は種々の形態であってよく、上記綿状であってもよいし、或いは粉末状であってもよいし、或いは繊維状であってもよいし、或いはそれらが混合した形態であってもよい。
【0022】
紙粉は、日本紙通商株式会社製の紙粉、絵具屋三吉製の紙粉(細目)および紙粉(粗目)、ジャペット株式会社製の各種紙粉であってもよい。ここで、細目とは、紙粉を構成する粒子の粒径が比較的に小さいことを意味する。粗目とは、紙粉を構成する粒子の粒径が比較的に大きいことを意味する。
【0023】
第2工程では、汚染土壌に対して適宜の質量%で紙粉を添加する。汚染土壌に対する水分の含有量を1~20質量%とした場合には、汚染土壌に対して10質量%以下、好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~10質量%の紙粉を添加する。当該量の紙粉を汚染土壌に添加することによって、汚染土壌を磁選に適するように粘度が低く、流動性が高いサラサラな状態にすることができる。また、紙粉は、水溶性であるために、汚染物質を土壌に対して不溶化して閉じ込めてしまうことがない。このため、本方法によって浄化された土壌を「土壌汚染対策法に基づく調査および措置に関するガイドライン 改定第3版 環境省」上の不溶化処理土壌ではなく、浄化土壌(オンサイト浄化土壌、浄化等済土壌)として扱うことができる。
【0024】
第3工程では、汚染物質を吸着した鉄粉を汚染土壌から磁石を用いて回収(乾式磁選)する。磁石としては、商業的に入手可能な各種の磁石(永久磁石、電磁石)を用いることができる。
【0025】
上記実施形態および下記した実施例によれば、以下のことがいえる。
【0026】
汚染土壌の浄化方法は、汚染土壌の水分含有量を20質量%以下に調整する第1工程と、前記水分含有量を調整した前記汚染土壌に対して、150μm以上の粒度を有し且つ前記汚染土壌に対して2.5~11質量%の鉄粉と、紙粉と、を同時に添加して混合する第2工程と、前記汚染土壌から磁選により鉄粉を回収する第3工程と、を備える。
【0027】
汚染土壌に対して鉄粉および紙紛を同時に投入して汚染土壌を浄化することとすると、紙紛によって水分を除去することで汚染土壌をサラサラにすることができるものの、水中における鉄粉と汚染物質との反応前に、紙紛によって水分が除去されてしまうのではないかという点が懸念される。
【0028】
上記構成によれば、汚染土壌に対して鉄粉と紙紛とを同時に投入できるため、鉄粉と紙紛とを時間差で汚染土壌に投入する場合に比して、現場での時間差をつけた投入管理を不要として、作業性を著しく向上できる。また、実際に上記のように鉄粉と汚染物質との反応がうまく進まないという問題を生じることなく、処理された処理土から溶出される汚染物質の量を、概ね土壌汚染対策法に規定される溶出量基準値以下に抑えることができる。これによって、作業性の向上と、汚染物質の十分な除去の両立を図ることができる。
【0029】
また、150μm未満の粒度を有する鉄粉は、水分を含む土壌中に混合された際に、土壌の団粒中に入り込み易くなり、それによって磁選時に磁着物に巻き込まれる土壌の量が増加する傾向がある。上記の構成によれば、汚染土壌に対して鉄粉を添加することで、汚染物質を鉄粉に吸着させ、当該鉄粉を磁選で除去することで、土壌を浄化することができる。その際、鉄粉は、150μm以上の粒度を有するために、土壌の団粒中に過度に鉄粉が入り込んでしまうことがない。これによって、磁選時に鉄粉に巻き込まれて回収される土壌の量を低減できる。また、鉄粉に加えて、汚染土壌に対して紙粉を添加することによって、汚染土壌中の粘性を低く(流動性を高く)調整して、汚染土壌をサラサラな状態にすることができる。これによって、磁選時に鉄粉に付着して、鉄粉に巻き込まれてしまう土壌の量を低減することができる。磁選時に鉄粉に巻き込まれた土壌は、汚染土壌として処理する必要があるために、鉄粉に巻き込まれる土壌の量を低減することは、そのまま処理コストの低減につながる。したがって、上記のように鉄粉に巻き込まれてしまう土壌の量を低減することで、汚染土壌の処理コストを低下することができる。さらに、紙粉には、汚染物質を不溶化する性質がない。このため、磁選で鉄粉が除去された浄化土壌中に、不溶化された汚染物質が残留してしまう可能性を低減できる。よって、本方法で浄化された土壌を「土壌汚染対策法に基づく調査および措置に関するガイドライン 改定第3版 環境省」上の不溶化処理土壌ではなく、浄化土壌(オンサイト浄化土壌、浄化等済土壌)として扱うことができる。
【0030】
この場合、前記第2工程において、前記汚染土壌に対して2.5~7.5質量%の前記鉄粉を添加する。この構成によれば、鉄粉の添加量を上記範囲とすることで、鉄粉の量を過剰とすることなく、磁選時に鉄粉に付着して鉄粉に巻き込まれてしまう土壌の量を低減することができる。
【実施例0031】
使用する汚染土壌として、以下の条件の模擬汚染土壌を用いた。汚染土壌は、珪砂(宇部サンド工業製、新特5号A)に砒素標準液(ナカライテスク製、1000ppm)を添加し、混合して作成した。
【0032】
【表1】
第1工程として、上記表1の汚染土壌の試料を風乾または蒸留水を添加し、水分含有量を9.1~9.5%に調整した。汚染土壌に添加する紙粉としては以下を用いた。使用する汚染土壌の砒素溶出量の初期値は、0.059であった。
【0033】
【表2】
汚染土壌に添加する鉄粉(K-3M、JFEスチール製)の粒度分布を下記に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
上記表3の粒度分布は、JIS Z 2510 金属粉―乾式ふるい分けによる粒度試験方法およびJIS Z 2510において引用されるJIS Z 8801-1 試験用ふるい-第1部:金属製網ふるいに記載の方法により測定した。表2中において、+2.8mmは、2.8mmよりも粒径が大きい(粗い)ことを示し、2.8mm以上で5.6mm未満の粒度を示す。-0.15mmは、0.15mmよりも粒径が小さい(細かい)ことを示す。鉄粉(K-3M、JFEスチール製)のD50(50%粒子径)は、1.2mmである。
【0036】
水分含有量9.1~9.5%に調整された汚染土壌を実施例1~6、比較例1~6のそれぞれに対応するように、100gずつに小分けした。実施例1~6のサンプルでは、第2工程として、100gずつに小分けされた土壌に、鉄粉(K-3M、JFEスチール製)1~10gおよび紙紛(日本紙通商製)1gを同時添加し、卓上ミキサー(KPL9000S、愛工舎製作所製)で10分間混合した。その後、それを10分間静置した。
【0037】
比較例1~6のサンプルでは、第2工程として、100gずつに小分けされた土壌に、鉄粉(K-3M、JFEスチール製)1~10gを添加し、卓上ミキサー(KPL9000S、愛工舎製作所製)で10分間混合した。10分間静置した後、紙粉(日本紙通商製)1gを添加して、薬さじで5分間程度混合した。その後、それを10分間静置した。
【0038】
その後、第3工程として、静置した実施例1~6および比較例1~6の土壌をプラスチックバットに薄く広げ、土壌表面上に表面磁力1000Gの磁石棒(KGM-HM13-S18476、カネテック製)を走査して磁着物と非磁着物に磁性分離した。得られた磁着物は汚染物質含有量分析(底質調査法)を実施し、非磁着物は汚染物質含有量分析と汚染物質溶出量分析(環境告示18号)とを実施した。結果を表4~表9に示す。
【0039】
【表4】
ここで土壌巻込み率(%)は、以下の式1により算出した。
【0040】
土壌巻込み率(%)=(磁着物質量-投入鉄粉質量)/(投入土壌質量+投入紙粉質量)×100 … 式1
また、汚染物質回収率(%)は以下の式2より算出した。
【0041】
汚染物質回収率(%)=(磁着物の汚染物質含有量×磁着物質量)/(磁着物の汚染物質含有量×投入土壌質量)×100 … 式2
なお、磁着物の汚染物質含有量は、実施例1のみ測定し、それ以外の実施例2~6および比較例1~6の磁着物の汚染物質含有量は、それをもとにした想定値である。汚染物質回収率についても同様である。
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
【表7】
【0045】
【表8】
【0046】
【表9】
表4~表9に示す結果を図6図7のグラフに示す。図7のグラフには、基準値(0.01mg/L)および使用した汚染土壌に本発明の汚染土壌の浄化方法を適用する前の砒素溶出量の初期値を併記している。
【0047】
図6に示すように、土壌捲き込み率に関しては、汚染土壌に対する鉄粉の添加量が多くなればなるほど上昇した。実施例1~5および比較例1~5の土壌捲き込み率は、いずれも1%を下回った。土壌捲き込み率に関して、鉄粉と紙紛とを同時に添加した実施例と、鉄分と紙紛とを時間差で添加した比較例との間で、有意な差は出なかった。したがって、鉄分と紙紛とを時間差で添加した比較例に対して、鉄粉と紙紛とを同時に添加した実施例の土壌捲き込み率が極端に悪化することはなかった。
【0048】
図7に示すように、砒素溶出量に関し、実施例1および比較例1を除く実施例2~6および比較例2~6のすべてが、土壌汚染対策法に規定される溶出量基準値(0.01mg/L)とほぼ同等かそれ以下であった。また、汚染土壌に対する鉄粉の添加量を増加させるにつれて、砒素溶出量が低下する傾向が見られた。砒素溶出量に関して、鉄粉と紙紛とを同時に添加した実施例と、鉄分と紙紛とを時間差で添加した比較例との間で、有意な差は出なかった。したがって、鉄分と紙紛とを時間差で添加した比較例に対して、鉄粉と紙紛とを同時に添加した実施例の砒素溶出量が極端に悪化することはなかった。このため、鉄粉と紙紛とを同時に添加した実施例1~6は、鉄分と紙紛とを時間差で添加した比較例1~6と比して、同等の汚染物質の回収効果があった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7