(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173867
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】加工データ作成装置、及びレーザ切断加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20221115BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20221115BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079855
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】スバイア シバクマル
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168AD13
4E168CB03
4E168CB07
4E168GA01
4E168GA02
4E168GA06
4E168JA01
4E168KA18
(57)【要約】
【課題】製品の搬出時に、製品がワーク残材に対して引っ掛かることなく、製品を安定して搬出する。
【解決手段】加工データ作成装置21は、製品の形状を含む製品データを取得する取得部21aと、製品データに基づいて、ワークから製品の外形を切り出すための外形切断線を設定する切断線設定部21bと、外形切断線に対してレーザビームの切断経路を割り付けて製品の加工データを作成する割付設定部21cと、を備えている。割付設定部21cは、外形切断線においてX軸方向の左側に存在する線分のうち、Y軸方向と平行且つ判定長さ以上となる線分を基準線分として特定する。割付設定部21cは、外形切断線においてレーザビームが最後に切断する経路である最終切断経路を基準線分に割り付ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ切断加工を行う加工システムが板状のワークを切断して製品を作製するための加工データを作成する加工データ作成装置において、
前記加工システムは、
ワーク平面に沿った第1軸方向への前記ワークの移動と、前記第1軸方向に対して直交する、前記ワーク平面に沿った第2軸方向への加工ヘッドの移動とを組み合わせて前記加工ヘッドから出力されるレーザビームを前記ワークに対して2次元的に照射し、前記ワークを前記製品の形状に応じて切断する加工機と、
前記第1軸方向の一方の側である第1側へと移動して前記加工ヘッドに向かって進出することで、前記ワークから切断された前記製品を取り出す製品搬出装置と、を備え、
前記加工データ作成装置は、
前記製品の形状を含む製品データを取得する取得部と、
前記製品データに基づいて、前記ワークから前記製品の外形を切り出すための外形切断線を設定する切断線設定部と、
前記外形切断線に対して前記レーザビームの切断経路を割り付けて、前記製品の加工データを作成する割付設定部と、を備え、
前記割付設定部は、
前記外形切断線において前記第1軸方向の第1側にある線分のうち、前記第2軸方向と平行且つ判定長さ以上となる線分を基準線分として特定し、
前記外形切断線において前記レーザビームが最後に切断する経路である最終切断経路を、前記基準線分に割り付ける
加工データ作成装置。
【請求項2】
前記割付設定部は、
前記外形切断線の前記第1軸方向の第1側において最も外側となる位置を基準に、前記第1軸方向のうち前記第1側とは反対側の第2側に向かって基準距離となる範囲に検索範囲を設定し、
前記検索範囲の中で、前記基準線分を特定する
請求項1記載の加工データ作成装置。
【請求項3】
前記割付設定部は、
前記外形切断線において前記レーザビームが最後に切断を行う最終切断点から、前記第2軸方向に沿って逃げを設定する
請求項1又は2記載の加工データ作成装置。
【請求項4】
前記割付設定部は、
前記外形切断線に前記基準線分が存在しないと判断した場合、前記外形切断線において前記レーザビームが最後に切断を行う最終切断点が、前記外形切断線の前記第1軸方向の前記第1側において最も外側に位置するように、前記外形切断線に対して前記レーザビームの切断経路を割り付ける
請求項1から3いずれか一項記載の加工データ作成装置。
【請求項5】
レーザ切断加工を行う加工システムが、板状のワークを切断して製品を作製するレーザ切断加工方法において、
ワーク平面に沿った第1軸方向への前記ワークの移動と、前記第1軸方向に対して直交する、前記ワーク平面に沿った第2軸方向への加工ヘッドの移動とを組み合わせて前記加工ヘッドから出力されるレーザビームを前記ワークに対して2次元的に照射し、前記製品の外形を切り出すための外形切断線に沿って前記ワークを切断する切断工程と、
搬出アームを前記第1軸方向のうち一方の側である第1側へと移動して前記加工ヘッドに向かって進出させることで、前記搬出アームを用いて前記ワークから切断された前記製品を取り出す搬出工程とを、備え、
前記切断工程は、
前記外形切断線において前記第1軸方向の前記第1側に存在する線分のうち、前記第2軸方向と平行且つ判定長さ以上となる線分を最後に切断して、前記ワークから前記製品を切り離す
レーザ切断加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工データ作成装置、及びレーザ切断加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加工ヘッドから照射されるレーザビームを用いてレーザ切断加工を行う加工機を備えた加工システムが開示されている。加工機は、製品の外形を切り出すための外形切断線に沿ってレーザビームをワークに照射することで、ワークから製品を切り出すことができる。この加工機は、第1軸方向に沿ったワークの移動と、第1軸方向と直交する第2軸方向に沿った加工ヘッドの移動とを組み合わせることで、レーザビームをワークに対して2次元的に照射することができる。
【0003】
ワークから切り出された製品は、製品搬出装置によって取り出され、所定の積載場所に搬出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような加工システムを用いたレーザ切断加工では、外形切断線のうちレーザビームが最後に切断する最終切断経路によっては、加工中に製品がずれてワークの下に潜ってしまう場合がある。また、最終切断経路の長さが短い場合には、最終切断経路の切断前における未切断部分の剛性が低いため、最終切断経路の切断時に波打ちなどの加工不良が発生する場合がある。このため、製品の搬出時に、製品がワーク残材に対して引っ掛かり、製品を安定して搬出することができないという問題が生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の加工データ作成装置は、レーザ切断加工を行う加工システムが板状のワークを切断して製品を作製するための加工データを作成する。加工システムは、ワーク平面に沿った第1軸方向へのワークの移動と、第1軸方向に対して直交する、ワーク平面に沿った第2軸方向への加工ヘッドの移動とを組み合わせて加工ヘッドから出力されるレーザビームをワークに対して2次元的に照射し、ワークを製品の形状に応じて切断する加工機と、第1軸方向の一方の側である第1側へと移動して加工ヘッドに向かって進出することで、ワークから切断された製品を取り出す製品搬出装置と、を備えている。加工データ作成装置は、製品の形状を含む製品データを取得する取得部と、製品データに基づいて、ワークから製品の外形を切り出すための外形切断線を設定する切断線設定部と、外形切断線に対してレーザビームの切断経路を割り付けて、製品の加工データを作成する割付設定部と、を備えている。割付設定部は、外形切断線において第1軸方向の第1側にある線分のうち、第2軸方向と平行且つ判定長さ以上となる線分を基準線分として特定し、外形切断線においてレーザビームが最後に切断する経路である最終切断経路を、基準線分に割り付ける。
【0007】
本発明の一態様の加工データ作成装置は、外形切断線において第1軸方向の第1側に存在する線分のうち、第2軸方向と平行、且つ長さの長い線分(基準線分)に対して最終切断経路を割り当てている。最終切断経路の長さが長くなるので、最終切断経路の切断前における未切断部分の剛性が高くなる。その結果、最終切断経路の切断時に波打ちなどの加工不良が発生することを抑制することができる。また、最終切断経路がY軸方向と平行となるので、最終切断経路の切断時には、加工ヘッドの第2軸方向への移動のみとなり、ワークの第1軸方向への移動を伴わない。したがって、加工中に製品がずれてワークの下に潜ってしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、製品がワーク残材に対して引っ掛かることなく、製品を安定して搬出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る加工データ作成装置及び加工システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、加工機が備えるレーザ加工部の構成を簡略的に示す説明図である。
【
図3】
図3は、加工システムが備える製品搬出装置の構成を簡略的に示す説明図である。
【
図5】
図5は、外形切断線に対してレーザビームの切断経路を割り付ける方法を示す説明図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るレーザ切断加工方法を示す説明図である。
【
図8】
図8は、外形切断線に基準線分が存在しない製品の形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本実施形態に係る加工データ作成装置、及びレーザ切断加工方法について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る加工データ作成装置及び加工システムの構成を示すブロック図である。
図2は、加工機が備えるレーザ加工部の構成を簡略的に示す説明図である。
図3は、加工機が備える製品搬出装置の構成を簡略的に示す説明図である。以下の説明では、方向の定義として、水平方向において直交するX軸方向(第1軸方向)及びY軸方向(第2軸方向)と、X軸方向及びY軸方向に対してそれぞれ直交するZ軸方向を用いる。X軸方向は、左右方向に対応し、一方の側が左側(第1側)、一方の側に対して反対となる他方の側が右側(第2側)となる。Y軸方向は、前後方向に対応し、一方の側が前側、他方の側が後側となる。Z軸方向は、上下方向に対応し、一方の側が上側、他方の側が下後側となる。なお、これらの方向は説明の便宜のために用いられるに過ぎない。
【0012】
本実施形態に係る加工データ作成装置21は、レーザ切断加工を行う加工システム40が板状のワーク(例えば板金)Wを切断して製品Pを作製するための加工データを作成する。加工システム40は、ワーク平面に沿ったX軸方向へのワークWの移動と、X軸方向に対して直交する、ワーク平面に沿ったY軸方向への加工ヘッド52aの移動とを組み合わせて加工ヘッド52aから出力されるレーザビームをワークWに対して2次元的に照射し、ワークWを製品Pの形状に応じて切断する加工機50と、X軸方向の左側へと移動して加工ヘッド52aに向かって進出することで、ワークWから切断された製品Pを取り出す製品搬出装置60と、を備えている。
【0013】
加工データ作成装置21は、製品Pの形状を含む製品データを取得する取得部21aと、製品データに基づいて、ワークWから製品Pの外形を切り出すための外形切断線CLを設定する切断線設定部21bと、外形切断線CLに対してレーザビームの切断経路を割り付けて、製品Pの加工データを作成する割付設定部21cと、を備えている。割付設定部21cは、外形切断線CLにおいてX軸方向の左側にある線分のうち、Y軸方向と平行且つ判定長さ以上となる線分を基準線分CLsとして特定する。割付設定部21cは、外形切断線CLにおいてレーザビームが最後に切断する経路である最終切断経路Rcfを、基準線分CLsに割り付ける。
【0014】
以下、加工データ作成装置及び加工システムを包括する全体システムについて説明する。全体システムは、CAD(Computer Aided Design)10、CAM(Computer Aided Manufacturing)20、制御装置30及び加工機50を主体に構成されている。
【0015】
CAD10は、CADの機能を搭載するコンピュータである。CAD10は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサと、メモリと、各種のインターフェースとを有するコンピュータによって構成されている。メモリ、各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。ハードウェアプロセッサによってメモリに格納されたプログラムを実行させることにより、CAD10が備える種々の機能が実現される。
【0016】
CAD10は、コンピュータプログラムを実行させることによって、製品データ作成装置11として機能する。製品データ作成装置11は、ワークWから切り出す製品Pに関するデータである製品データを作成する。製品データには、製品Pの形状、大きさ、及び重量などの情報が含まれている。製品データ作成装置11によって作成された製品データは、CAM20に入力される。
【0017】
CAM20は、CAMの機能を搭載するコンピュータである。CAM20は、CPUなどのハードウェアプロセッサと、メモリと、各種のインターフェースとを有するコンピュータによって構成されている。メモリ、各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。ハードウェアプロセッサによってメモリに格納されたプログラムを実行させることにより、CAM20が備える種々の機能が実現される。
【0018】
CAM20は、コンピュータプログラムを実行することにより、加工データ作成装置21として機能する。加工データ作成装置21は、加工システム40を制御する制御装置30によって用いられるデータを作成する。CAM20には、CAM20に対して情報を入力するための入力装置22、及びCAM20によって作成された情報を表示するための表示装置23が接続されている。
【0019】
加工データ作成装置21には、製品データ作成装置11で作成された製品データが入力される。加工データ作成装置21には、入力装置22から、ワークWの大きさ、板厚、材質などを含むワークデータなどが入力される。加工データ作成装置21には、加工システム40の加工機50の情報を含む装置データが入力される。装置データは、加工機50又は制御装置30から取得してもよいし、加工機50の情報を保有する外部の装置から取得してもよい。
【0020】
加工データ作成装置21は、製品Pの加工データを作成する。製品Pの加工データは、ワークWから製品Pの外形を切り出すための外形切断線CLに対して、レーザビームの切断経路を割り付けたデータである。加工データ作成装置21は、加工データに基づいて加工プログラムを作成する。加工プログラムは、制御装置30が加工システム40を制御する機械制御コードによって構成される。
【0021】
加工データ作成装置21によって作成された加工プログラムは、制御装置30内に格納される。なお、加工データ作成装置21は、作成した加工プログラムを、図示しないデータ管理サーバ内のデータベースに格納してもよい。この場合、制御装置30は、データ管理サーバのデータベースに格納された加工プログラムを読み出してもよい。
【0022】
本実施形態との関係において、加工データ作成装置21は、取得部21aと、切断線設定部21bと、割付設定部21cとを備えている。取得部21aは、例えば製品データ作成装置11から製品データを取得する。切断線設定部21bは、製品データに基づいて、ワークWから製品Pの外形を切り出すための外形切断線CLを設定する。割付設定部21cは、外形切断線CLに対してレーザビームの切断経路を割り付けて、製品Pの加工データを作成する。
【0023】
制御装置30は、加工プログラムに基づいて加工システム40を制御する装置であり、例えばNC装置(数値制御(Numerical Control)装置)である。制御装置30は、CPUなどのハードウェアプロセッサと、メモリと、各種のインターフェースとを有するコンピュータによって構成されている。メモリ、各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。ハードウェアプロセッサによってメモリに格納されたプログラムを実行させることにより、制御装置30が備える種々の機能が実現される。
【0024】
例えば、制御装置30は、加工プログラムに基づいて、ワークWから製品Pを切り出すように加工機50を制御する。加工機50がワークWから製品Pを切り出すと、製品Pが作製される。また、制御装置30は、加工プログラムに基づいて、ワークWから切断された製品Pを取り出して搬出するように製品搬出装置60を制御する。製品搬出装置60が製品Pを搬出すると、製品Pが集積パレット(図示せず)に集積される。
【0025】
加工システム40は、加工機50と、製品搬出装置60とを備えている。
【0026】
加工機50は、パンチ加工部51と、レーザ加工部52とを備えている。パンチ加工部51は、パンチとダイとからなる金型により、ワークWに対してパンチ加工を行う。レーザ加工部52は、レーザビームにより、ワークWに対してレーザ切断加工を行う。本実施形態の加工機50は、パンチ加工部51と、レーザ加工部52とを備える複合加工機を前提しているが、主たる特徴はレーザ加工部52にあるために、レーザ加工部52を中心に説明を行う。
【0027】
加工機50のベース上には、Y軸方向に移動自在に構成されたテーブルが配置されており、テーブル上には、ワーク平面が上下を向くようにワークWが水平に載置される。テーブルの近傍には、X軸方向へ移動自在なキャレッジ50aが設けられ、キャレッジ50aにはワークWを保持する複数のクランプ部材50bが設けられている。キャレッジ50aがX軸方向へと移動することで、ワークWをX軸方向に沿って移動させることができる。
【0028】
レーザ加工部52は、レーザ切断加工によって、ワークWより製品Pを切り出す。レーザ加工部52は、ワークWに対してレーザビームを照射する加工ヘッド52aを備えている。加工ヘッド52aは、Y軸方向、及びZ軸方向へ移動自在に構成されている。レーザ切断加工を行う際には、制御装置30の制御のもと、加工機50は、X軸方向へのワークWの移動と、Y軸方向への加工ヘッド52aの移動とを組み合わせて、加工ヘッド52aから出力されるレーザビームをワークWに対して2次元的に照射する。これにより、レーザ加工部52は、製品Pの外形に応じてワークWを切断する。
【0029】
製品搬出装置60は、ワークWから切り出された製品Pを取り出して搬出する。製品搬出装置60による製品Pの搬出は、レーザ加工部52によってワークWから製品Pが切り出される度に行われる。製品搬出装置60は、ワークWから切断された製品Pをワーク残材から分離して取り出す一対の搬出アーム61を備えている。個々の搬出アーム61におけるワークWと対向する面には、製品Pを吸着するための複数の吸着パッド61aが設けられている。製品Pの搬出を行う際には、制御装置30の制御のもと、製品搬出装置60は、一対の搬出アーム61をX軸方向の左側へと移動させ、一対の搬出アーム61を加工ヘッド52aに向かって進出させる。一対の搬出アーム61が製品Pまで到達すると、製品搬出装置60は、一対の搬出アーム61を用いて製品Pを吸着し、製品Pをワーク残材から分離して取り出す。製品搬出装置60は、取り出した製品Pを集積パレット(図示せず)へと搬出して集積する。
【0030】
つぎに、加工データ作成装置21が加工データを作成する手順を説明する。
図4は、外形切断線の説明図である。
図5は、外形切断線に対してレーザビームの切断経路を割り付ける方法を示す説明図である。
【0031】
まず、切断線設定部21bは、取得部21aが取得した製品データに基づいて、外形切断線CLを設定する。外形切断線CLは、ワークWから製品Pの外形を切り出すための切断線であり、製品Pの外形の形状と対応している。切断線設定部21bは、製品データから製品Pの外形形状を特定し、製品Pの外形形状に応じた外形切断線CLを設定する。外形切断線CLは、複数の線分から構成されており、複数の線分が一続きに連なって閉じた1つの図形を構成している。外形切断線CLを構成する個々の線分は、直線又は円弧(曲線)から構成されている。
【0032】
割付設定部21cは、外形切断線CLに対してレーザビームの切断経路を割り付ける。レーザビームの切断経路は、ワークWを切断するときにレーザビームが通る経路である。レーザビームの切断経路には、外形切断線CLを切断する切断経路と、ピアスPaから外形切断線CLに向かって切断する切断経路であるアプローチRaとが含まれる。
【0033】
具体的には、割付設定部21cは、外形切断線CLのX軸方向の左側にかけて最も外側となる位置、すなわち外形切断線CLの左端を基準に、右側に向かって基準距離となる範囲に検索範囲Rsを設定する。割付設定部21cは、検索範囲Rsの中で、Y軸方向と平行、且つ、判定長さLth以上という要件を満たす線分を基準線分CLsとして特定する。このようにして、外形切断線CLにおいてX軸方向の左側にある線分の中から、基準線分CLsが特定される。
【0034】
検索範囲Rsの中に要件を満たす線分が複数存在する場合、割付設定部21cは、複数の線分のうち、最も長い線分を基準線分CLsとして特定する。最も長い線分が複数存在する場合、割付設定部21cは、それらの線分のうち、最も左側に位置する線分を基準線分CLsとして特定する。
【0035】
基準線分CLsを検索するための検索範囲Rsを定義する基準距離及び判定長さLthは、予め設定された固定値を用いることができる。しかしながら、割付設定部21cは、オペレータが入力装置22を用いて入力した値を、検索範囲Rsの基準距離及び判定長さLthとして用いてもよい。
【0036】
基準線分CLsが特定されると、割付設定部21cは、基準線分CLsが最終切断経路Rcfとなるように、外形切断線CLに対してレーザビームの切断経路を割り付ける。最終切断経路Rcfは、外形切断線CLを切断する切断経路のうちレーザビームが最後に通る経路であり、製品PがワークWから切り離される経路である。
図5に示すように、割付設定部21cは、切断開始点Psを出発して外形切断線CLを周回して、最終切断経路Rcfを経て切断開始点Psへと戻る経路を、レーザビームの切断経路として割り付ける。すなわち、最終切断経路Rcfとは、最終切断経路Rcfの終端が、切断開始点Psと到達する経路である。
【0037】
本実施形態に係る加工システム40では、レーザ加工部52が製品Pを一つ切り出す度に、製品搬出装置60が製品Pを搬出する。製品搬出装置60の搬出アーム61は、レーザ加工部52によるレーザ切断加工中、加工ヘッド52aから一定距離だけ右側に離れた位置に待機する。ワークWから製品Pが切り出されて加工ヘッド52aが上昇すると、搬出アーム61は、待機位置から左側へと移動する。これにより、搬出アーム61は、加工ヘッド52aの下方へと進出し、切り出された製品Pを取り出す。本実施形態では、このような搬出アーム61による製品Pの取り出し形態を考慮して、外形切断線CLにおいて左側にある線分に対して、基準線分CLs及び最終切断経路Rcfが設定される。
【0038】
また、割付設定部21cは、外形切断線CLを切断する切断経路に加え、ピアスPa、及びこのピアスPaから外形切断線CLに向かって切断するアプローチRaを割り付ける。アプローチRaは、ピアスPaから外形切断線CLの切断開始点Psへと至るように設定される。
【0039】
図6は、逃げの設定を示す説明図である。割付設定部21cは、外形切断線CLを切断する切断経路、ピアスPa、及びアプローチRaに加え、逃げCLrを割り付けることができる。この場合、割付設定部21cは、最終切断経路Rcfの終点からY軸方向に沿って直進するように、逃げCLrを設定することが好ましい。なお、Y軸方向に沿って逃げCLrを設定することができない場合、割付設定部21cは、製品Pと干渉しない範囲で、任意の方向に逃げCLrを設定することが好ましい。
【0040】
このようにして、割付設定部21cは、外形切断線CLに対してレーザビームの切断経路を割り付けることで、製品Pの加工データを作成する。また、割付設定部21cは、ワークWから切断された製品Pを製品搬出装置60が取り出すために、製品Pに対して一対の搬出アーム61の吸着位置を割り付けた加工データを作成する。割付設定部21cは、最終切断経路Rcf及び製品データに基づいて、製品Pに対して一対の搬出アーム61の吸着位置を割り付ける。加工データ作成装置21は、これらの加工データに基づいて加工プログラムを作成する。作製された加工プログラムは、制御装置30によって利用される。
【0041】
図7は、本実施形態に係るレーザ切断加工方法を示す説明図である。制御装置30は、加工プログラムに基づいて、加工機50及び製品搬出装置60を制御する。まず、加工機50は、レーザ加工部52のレーザ切断加工により、製品Pの外形形状に応じてワークWを切断する。具体的には、レーザ加工部52は、ピアス位置で加工ヘッド52aからレーザビームの射出を開始してピアスPaを開け、外形切断線CL上の切断開始点Psに到達するまで切断してアプローチRaを形成する。レーザ加工部52は、切断開始点Psから加工ヘッド52aを外形切断線CLに沿って時計回りに移動させる。そして、レーザ加工部52は、最終切断経路Rcfの終端である最終切断点(切断開始点Ps)を切断してレーザビームの射出を停止し、加工ヘッド52aを上昇させる。
【0042】
レーザビームによって最終切断経路Rcfが切断されると、製品PがワークWから完全に切り離される。製品搬出装置60は、搬出アーム61をX軸方向の左側へと移動して、加工ヘッド52aに向かって進出させる。製品搬出装置60は、個々の搬出アーム61を所定の吸着位置まで進出させると、吸着パッド61aによる吸着動作を開始し、製品Pをワーク残材から分離して取り出す。製品搬出装置60は、取り出された製品Pを集積パレット(図示せず)へと搬出して集積する。
【0043】
このような一連の工程を経て、本実施形態に係るレーザ切断加工方法が実現される。このレーザ切断加工方法は、ワークWに割り付けられた製品Pを切断する毎に行われる。
【0044】
このように本実施形態によれば、割付設定部21cは、外形切断線CLにおいてX軸方向の左側に存在する線分のうち、Y軸方向と平行且つ判定長さLth以上となる線分を基準線分CLsとして特定する。そして、割付設定部21cは、外形切断線CLにおいてレーザビームが最後に切断する経路である最終切断経路Rcfを、基準線分CLsに割り付けている。
【0045】
このように、本実施形態に係る加工データ作成装置21によれば、外形切断線CLの左側に存在する線分のうち、なるべく長い線分、且つ、Y軸方向と平行する線分が最終切断経路Rcfとして割り当てられる。最終切断経路Rcfの長さが長くなるので、最終切断経路Rcfを切断する前の未切断部分の剛性が高くなる。その結果、最終切断経路Rcfの切断時に波打ちなどの加工不良が発生することを抑制することができる。また、最終切断経路RcfがY軸方向と平行となるので、最終切断経路Rcfの切断時には、加工ヘッド52aのY軸方向の移動のみとなり、ワークWのX軸方向への移動を伴わない。したがって、加工中に製品PがずれてワークWの下に潜ってしまうことを抑制することができる。これにより、製品Pの搬出時に、製品Pがワーク残材に対して引っ掛かることを抑制することができるので、製品Pを安定して搬出することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る加工データ作成装置21によれば、上述の如く、所定の要件を満たす基準線分CLsに対して最終切断経路Rcfが自動的に割り付けられることとなる。基準線分CLsに対して最終切断経路Rcfを自動的に割り付ける機能がない場合には、オペレータ自身が最終切断経路Rcfを修正する必要が生じる。最終切断経路Rcfの割り付けには、製品搬出装置60による製品Pの搬出に関する知識といったように、それ相応の知識及び経験が必要となる。また、最終切断経路Rcfを修正した場合には、搬出アーム61の吸着位置を修正する必要があり、加工データの作成に多くの時間を要する。しかしながら、本実施形態によれば、手動による修正を必要としないので、このような不都合を解消することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るレーザ切断加工方法によれば、外形切断線CLの左側に存在する線分のうち、なるべく長い線分、且つ、Y軸方向と平行する線分が最後に切断される。このため、最終切断経路Rcfの長さが長くなるので、最終切断経路Rcfを切断する前の未切断部分の剛性が高くなる。その結果、最終切断経路Rcfの切断時に波打ちなどの加工不良が発生することを抑制することができる。また、最終切断経路RcfがY軸方向と平行となるので、最終切断経路Rcfの切断時には、加工ヘッド52aのY軸方向の移動のみとなり、ワークWのX軸方向への移動を伴わない。したがって、加工中に製品PがずれてワークWの下に潜ってしまうことを抑制することができる。これにより、製品Pの搬出時に、製品Pがワーク残材に対して引っ掛かることを抑制することができるので、製品Pを安定して搬出することができる。
【0048】
本実施形態に係る加工データ作成装置21によれば、割付設定部21cが、外形切断線CLの左側において最も外側となる位置を基準に、X軸方向のうち右側に向かって基準距離となる範囲に検索範囲Rsを設定している。そして、割付設定部21cは、検索範囲Rsの中で基準線分CLsを特定している。
【0049】
この構成によれば、割付設定部21cは、外形切断線CLを構成する複数の線分のうち、検索範囲Rsに存在する線分に限定して、基準線分CLsを特定する処理を行うこととなる。割付設定部21cが、外形切断線CLを構成する全ての線分を対象として基準線分CLsに該当するか否かを判断する必要がないので、演算負荷を軽減することができる。また、検索範囲Rsを設定することで、外形切断線CLのうち左側に存在する線分が抽出されるので、外形切断線CLの左側で基準線分CLsを特定することができる。
【0050】
本実施形態に係る加工データ作成装置21によれば、割付設定部21cが、外形切断線CLにおいてレーザビームが最後に切断を行う最終切断点(切断開始点Ps)から、Y軸方向に沿って逃げCLrを設定している。
【0051】
この構成によれば、逃げCLrの切断は、加工ヘッド52aのY軸方向の移動のみとなり、ワークWのX軸方向への移動を伴わない。したがって、逃げCLrの切断に製品PがずれてワークWの下に潜ってしまうことを抑制することができる。これにより、製品Pの搬出時に、製品Pがワーク残材に対して引っ掛かることを抑制することができるので、製品Pを安定して搬出することができる。
【0052】
なお、上述した実施形態によれば、製品Pの外形形状に、Y軸方向と平行、且つ判定長さLth以上となる線分があることが前提となっている。ただし、製品Pの外形形状によっては、Y軸方向と平行な線分があるものの、判定長さLth以上とならないことがある。このような場合には、Y軸方向と平行な線分に対して、基準線分CLsを設定すればよい。これにより、製品搬出装置60の製品搬出を考慮して、最終切断経路Rcfを設定することができる。
【0053】
図8は、外形切断線に基準線分が存在しない製品の形状を示す説明図である。円、三角形、台形といったように製品Pの外形形状によっては、Y軸方向と平行な線分が存在しないこともある。この場合、割付設定部21cは、外形切断線CLにおいてレーザビームが最後に切断を行う最終切断点(切断開始点Ps)が、外形切断線CLの左側において最も外側に位置するように、レーザビームの切断経路を割り付けることが好ましい。
【0054】
この構成によれば、製品搬出装置60の製品搬出を考慮して、レーザビームの切断経路を割り当てることができる。
【0055】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0056】
10 CAD
11 製品データ作成装置
20 CAM
21 加工データ作成装置
21a 取得部
21b 切断線設定部
21c 割付設定部
22 入力装置
23 表示装置
30 制御装置
40 加工システム
50 加工機
50a キャレッジ
50b クランプ部材
51 パンチ加工部
52 レーザ加工部
52a 加工ヘッド
60 製品搬出装置
61 搬出アーム
61a 吸着パッド