(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173878
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】歯ブラシの製造方法、歯ブラシ、情報処理方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A46D 3/00 20060101AFI20221115BHJP
A46B 5/00 20060101ALI20221115BHJP
A46D 1/04 20060101ALI20221115BHJP
A61C 17/22 20060101ALI20221115BHJP
A61C 17/34 20060101ALI20221115BHJP
A46B 13/02 20060101ALI20221115BHJP
A46B 11/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
A46D3/00
A46B5/00 A
A46D1/04
A61C17/22 G
A61C17/34 K
A46B13/02
A46B11/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079901
(22)【出願日】2021-05-10
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】521202640
【氏名又は名称】藤田 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和久
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA07
3B202AB19
3B202BA09
3B202BC08
3B202BE10
3B202FB01
3B202HA01
3B202HA03
(57)【要約】
【課題】個人差によるところが大きい歯の磨き残しがより少ない歯ブラシの製造方法、歯ブラシ、情報処理方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】歯ブラシの製造方法は、使用者の口腔内の印象を表す三次元データを取得する工程と、取得した三次元データに基づいて、前記口腔内の歯列に沿って該歯列に対向する複数のブラシ毛を備えるマウスピース状の歯ブラシの少なくとも一部を、3Dプリント、射出成形又は切削加工により一体的に形成する工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の口腔内の印象を表す三次元データを取得する工程と、
取得した三次元データに基づいて、前記口腔内の歯列に沿って該歯列に対向する複数のブラシ毛を備えるマウスピース状の歯ブラシの少なくとも一部を、3Dプリント、射出成形又は切削加工により一体的に形成する工程と
を含む歯ブラシの製造方法。
【請求項2】
前記一体的に形成する工程は、前記3Dプリントによるものであり、
前記歯ブラシの素材は、メタクリレート及びウレタンアクリレートを含む請求項1に記載の歯ブラシの製造方法。
【請求項3】
前記三次元データは、前記使用者の口腔内又は該口腔内の印象若しくは該印象に基づく前記口腔内の模型がスキャンされて生成されている請求項1又は請求項2に記載の歯ブラシの製造方法。
【請求項4】
取得した三次元データよって示される前記歯列の各部位の曲率に基づいて、前記歯列の法線情報を改変する工程と、
改変した法線情報に基づいて、前記ブラシ毛の密度、向き及び長さの少なくとも1つを決定する工程と
を更に含む請求項1から請求項3の何れか1項に記載の歯ブラシの製造方法。
【請求項5】
取得した三次元データに基づいて、前記ブラシ毛をシートに植毛して植毛シートを形成する工程を更に含み、
前記歯ブラシの少なくとも一部を形成する工程は、形成した植毛シートを保持するフレームを一体的に形成する工程を含み、
形成した植毛シート及び形成したフレームを接着する工程を更に含む
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の歯ブラシの製造方法。
【請求項6】
前記歯ブラシの少なくとも一部を形成する工程は、
前記ブラシ毛を有するブラシシートを一の素材で一体的に形成する工程と、
該ブラシシートを保持するフレームを他の素材で一体的に形成する工程と
を含み、
形成したブラシシート及び形成したフレームを接着する工程を更に含む
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の歯ブラシの製造方法。
【請求項7】
前記歯ブラシの少なくとも一部を形成する工程は、前記一部を上顎用と下顎用とで一体的に形成する
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の歯ブラシの製造方法。
【請求項8】
前記使用者の咬合状態が撮像されて生成された咬合状態を表す画像データ、又は咬合採得を行うための咬合印記材に印記された咬合状態をスキャンして生成されたスキャンデータを取得する工程と、
取得した画像データ又はスキャンデータに基づいて、前記歯ブラシを装着した前記使用者の顎間関係を推定する工程と
を更に含み、
前記歯ブラシの少なくとも一部を形成する工程は、取得した三次元データ及び推定した顎間関係に基づいて形成する
請求項7に記載の歯ブラシの製造方法。
【請求項9】
前記歯ブラシの少なくとも一部を形成する工程は、前記一部を上顎用と下顎用とで各別に形成する請求項1から請求項6の何れか1項に記載の歯ブラシの製造方法。
【請求項10】
使用者の口腔内の歯列に沿って該歯列に対向する複数のブラシ毛を備えるマウスピース状の歯ブラシであって、
前記歯ブラシの少なくとも一部は、前記使用者の口腔内の印象を表す三次元データに基づいて、3Dプリント、射出成形又は切削加工により一体的に形成されている歯ブラシ。
【請求項11】
前記歯ブラシの少なくとも一部は、3Dプリントにより一体的に形成されており、
前記歯ブラシの素材は、メタクリレート及びウレタンアクリレートを含む
請求項10に記載の歯ブラシ。
【請求項12】
前記ブラシ毛を振動させるためのモータ及び該モータの駆動を制御する制御部を更に備える請求項10又は請求項11に記載の歯ブラシ。
【請求項13】
外部と通信するための通信部を更に備える請求項12に記載の歯ブラシ。
【請求項14】
前記歯ブラシの少なくとも一部は、上顎用と下顎用とで各別に形成されており、
上顎用及び下顎用の前記歯ブラシを弾性的に連結する連結部を更に備える
請求項10から請求項13の何れか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項15】
前記歯列の曲率が所定値より大きい部位に向けて水流を噴出させるための噴出口を有する請求項10から請求項14の何れか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項16】
使用者を特定する使用者ID及び該使用者の口腔内の印象を表す三次元データを取得し、
取得した三次元データに基づき、前記口腔内の歯列に沿って該歯列に対向する複数のブラシ毛を備えるマウスピース状の歯ブラシの少なくとも一部を、3Dプリント、射出成形又は切削加工により一体的に形成させ、
形成させた歯ブラシを特定するブラシID、取得した三次元データ及び取得した使用者IDを対応付けて記憶する
情報処理方法。
【請求項17】
前記歯ブラシを形成させた後に、使用者ID及び該使用者IDによって特定される使用者の更新後の三次元データを取得し、
取得した使用者IDに対応付けて更新後の三次元データを記憶する
請求項16に記載の情報処理方法。
【請求項18】
記憶した更新後の三次元データに基づいて、前記歯ブラシの少なくとも一部を一体的に形成させ、
形成させた更新後の歯ブラシを特定するブラシID、更新後の三次元データ及び取得した使用者IDを対応付けて記憶する
請求項17に記載の情報処理方法。
【請求項19】
前記歯ブラシを形成させた後に、使用者ID及び該使用者IDによって特定される使用者の歯の磨き残し部位を示すデータを取得し、
取得した磨き残し部位を示すデータ及び取得した使用者IDを対応付けて記憶する
請求項16から請求項18の何れか1項に記載の情報処理方法。
【請求項20】
取得した使用者IDに対応付けて記憶した磨き残し部位を示すデータに更に基づいて、前記歯ブラシの少なくとも一部を一体的に形成させる
請求項19に記載の情報処理方法。
【請求項21】
前記歯ブラシと通信する情報処理端末から前記歯ブラシの使用に関する使用情報及びブラシIDを取得し、
取得した使用情報を取得したブラシIDに対応付けて記憶し、
記憶した使用情報に基づいて、交換時期に関する情報を前記使用者に通知する
請求項16から請求項20の何れか1項に記載の情報処理方法。
【請求項22】
専用歯磨剤
前記歯ブラシと通信する情報処理端末から前記歯ブラシの使用に関する使用情報及びブラシIDを取得し、
取得した使用情報を取得したブラシIDに対応付けて記憶し、
記憶した使用情報に基づいて、歯磨剤の追加購入に関する情報を前記使用者に通知する
請求項16から請求項20の何れか1項に記載の情報処理方法。
【請求項23】
前記使用者に通知する情報を、予め登録された前記使用者の関係者に更に通知する請求項21又は請求項22に記載の情報処理方法。
【請求項24】
使用者の口腔内の印象を表す三次元データに基づき、少なくとも一部が3Dプリント、射出成形又は切削加工により一体的に形成されており、前記口腔内の歯列に沿って該歯列に対向する複数のブラシ毛を備えるマウスピース状の歯ブラシの振動具から、前記歯ブラシの使用に関する使用情報を取得し、
取得した使用情報、前記使用者を特定する使用者ID、及び前記歯ブラシを特定するブラシIDをサーバコンピュータへ送信し、
前記サーバコンピュータから送信された前記歯ブラシの保守運用に関する情報を受信し、
受信した保守運用に関する情報に基づく表示を行う
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項25】
受信すべき保守運用に関する情報の選択を受け付け、
選択結果を前記サーバコンピュータへ送信する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項24に記載のコンピュータプログラム。
【請求項26】
前記保守運用に関する情報に基づく表示は、前記振動具の振動態様の選択を受け付けるためのものであり、
前記振動態様の選択を受け付け、
選択された振動態様を示すデータを前記振動具へ送信する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項25に記載のコンピュータプログラム。
【請求項27】
前記保守運用に関する情報に基づく表示は、前記使用者の歯の磨き残し部位の選択を受け付けるためのものであり、
前記磨き残し部位の選択を受け付け、
選択された磨き残し部位に基づくプラークコントロールレコード(PCR=Plaque Control Record )を表示し、
選択された磨き残し部位を示すデータを前記使用者IDに対応付けて前記サーバコンピュータへ送信する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項25に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の歯列の表面を一括的に磨くことが可能な歯ブラシの製造方法、歯ブラシ、情報処理方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、口腔ケアが認知症を含む全身の様々な病気の予防に繋がることが解明されており、口腔衛生の重要性が叫ばれている。人々は日々歯磨きを行っているが、必ずしも歯垢の除去や歯周病の予防が適切に行えていないのが実情である。そこで、歯磨きを補助するためのツールが種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上顎の歯列を装着する上顎用ピース及び下顎の歯列を装着する下顎用ピースの少なくとも1つからなるマウスピース型歯ブラシと、その製造方法とが開示されている。この歯ブラシは、上顎の歯列及び下顎の歯列の少なくとも1つの印象を採取して上顎用歯型及び下顎用歯型の少なくとも1つを作成し、作成した上顎用歯型及び下顎用歯型の少なくとも1つに、ブラシ部材を略馬蹄形に固定した軟質シートを圧接して、ブラシ部材が歯牙全体を包み込んで密着するように形成されている。
【0004】
また例えば、特許文献2には、使用者の歯列の三次元形状を取得し、取得した歯列の三次元形状に基づいて、ブラシ台の歯列挿入溝の内壁面又は外壁面を歯列の表面に倣った形状に形成し、形成したブラシ台に多数本の毛を植え付ける歯ブラシの製造方法が開示されている。この製造方法によれば、歯列挿入溝の内壁面に毛が植え付けられるか、又は外壁面から歯列挿入溝に突入するように毛が植え付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-122726号公報
【特許文献2】特開2020-81712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された技術による歯ブラシを用いて歯磨きを行った場合、奥歯の裏側、歯間及び歯と歯茎の間に毛が十分に届いているとは言えず、磨き残しが比較的多いという問題があった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、個人差によるところが大きい歯の磨き残しがより少ない歯ブラシの製造方法、歯ブラシ、情報処理方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る歯ラシの製造方法は、使用者の口腔内の印象を表す三次元データを取得する工程と、取得した三次元データに基づいて、前記口腔内の歯列に沿って該歯列に対向する複数のブラシ毛を備えるマウスピース状の歯ブラシの少なくとも一部を、3Dプリント、射出成形又は切削加工により一体的に形成する工程とを含む。
【0009】
本態様にあっては、使用者の口腔内の印象を表す三次元データに基づき、3Dプリント、射出成形又は切削加工により、使用者の歯列沿いに複数のブラシ毛が歯列に対向するマウスピース状の歯ブラシを少なくとも部分的に一体成形する。このため、使用者の口腔に合わせて歯ブラシを精密に製造してブラシ毛を使用者の歯列に好適に対向させることができる。
【0010】
本開示の一態様に係る歯ブラシの製造方法は、前記一体的に形成する工程は、前記3Dプリントによるものであり、前記歯ブラシの素材は、メタクリレート及びウレタンアクリレートを含む。
【0011】
本態様にあっては、歯ブラシの素材にメタクリレート及びウレタンアクリレートが含まれており、生体適合性に優れている。
【0012】
本開示の一態様に係る歯ブラシの製造方法は、前記三次元データは、前記使用者の口腔内又は該口腔内の印象若しくは該印象に基づく前記口腔内の模型がスキャンされて生成されている。
【0013】
本態様にあっては、使用者の口腔内を直接的にスキャンするか、口腔内から採得された印象をスキャンするか、又は印象から製作された模型をスキャンすることによって三次元データが生成される。これらのどの方法によって三次元データが生成された場合であっても、使用者の口腔に合わせて歯ブラシを精密に製造することができる。
【0014】
本開示の一態様に係る歯ブラシの製造方法は、取得した三次元データよって示される前記歯列の各部位の曲率に基づいて、前記歯列の法線情報を改変する工程と、改変した法線情報に基づいて、前記ブラシ毛の密度、向き及び長さの少なくとも1つを決定する工程とを更に含む。
【0015】
本態様にあっては、使用者の口腔内の印象を示す三次元データから導かれる歯列の各部位の曲率に基づき、歯列の法線情報を改変してブラシ毛の密度、向き及び長さの一部又は全部を決定する。これにより、歯間、歯と歯茎の間、歯の上面の凹み等にブラシ毛がよく届くようになる。
【0016】
本開示の一態様に係る歯ブラシの製造方法は、取得した三次元データに基づいて、前記ブラシ毛をシートに植毛して植毛シートを形成する工程を更に含み、前記歯ブラシの少なくとも一部を形成する工程は、形成した植毛シートを保持するフレームを一体的に形成する工程を含み、形成した植毛シート及び形成したフレームを接着する工程を更に含む。
【0017】
本態様にあっては、三次元データに基づいてシートにブラシ毛を精密に植毛した植毛シートと、三次元データに基づいて別途一体的に形成したフレームとを接着する。これにより、三次元データによる歯ブラシの設計及び製造が比較的容易となる。
【0018】
本開示の一態様に係る歯ブラシの製造方法は、前記歯ブラシの少なくとも一部を形成する工程は、前記ブラシ毛を有するブラシシートを一の素材で一体的に形成する工程と、該ブラシシートを保持するフレームを他の素材で一体的に形成する工程とを含み、形成したブラシシート及び形成したフレームを接着する工程を更に含む。
【0019】
本態様にあっては、ブラシ毛を有するブラシシートとフレームとを別々の素材でそれぞれ一体的に形成して接着する。これにより、ブラシ毛に適した素材とフレームに適した素材とを任意に選択することができる。
【0020】
本開示の一態様に係る歯ブラシの製造方法は、前記歯ブラシの少なくとも一部を形成する工程は、前記一部を上顎用と下顎用とで一体的に形成する。
【0021】
本態様にあっては、歯ブラシの一体的に成形する部分を上顎用と下顎用とで分けずに成形する。これにより、使用者は歯ブラシを口に咥えて噛み込むと、歯ブラシが歯の表面に均等に密着する。
【0022】
本開示の一態様に係る歯ブラシの製造方法は、前記使用者の咬合状態が撮像されて生成された咬合状態を表す画像データ、又は咬合採得を行うための咬合印記材に印記された咬合状態をスキャンして生成されたスキャンデータを取得する工程と、取得した画像データ又はスキャンデータに基づいて、前記歯ブラシを装着した前記使用者の顎間関係を推定する工程とを更に含み、前記歯ブラシの少なくとも一部を形成する工程は、取得した三次元データ及び推定した顎間関係に基づいて形成する。
【0023】
本態様にあっては、使用者の咬合状態を撮像するか、又は印記された咬合状態をスキャンすることによって、咬合状態を表す画像データ又はスキャンデータが予め生成されており、この画像データ又はスキャンデータに基づいて、歯ブラシを装着した使用者の顎間関係を推定する。その上で、取得した三次元データ及び推定した顎間関係に基づいて上下の顎の位置関係が最適化されるように、歯ブラシの少なくとも一部を一体的に形成する。これにより、歯ブラシ全体の装着具合が、使用者の噛み合わせに合わせて最適化される。
【0024】
本開示の一態様に係る歯ブラシの製造方法は、前記歯ブラシの少なくとも一部を形成する工程は、前記一部を上顎用と下顎用とで各別に形成する。
【0025】
本態様にあっては、歯ブラシの一体的に成形する部分を上顎用と下顎用とで別々に成形する。これにより、歯ブラシの設計、製造及び清掃が比較的容易となり、買い替えコストが低減される。
【0026】
本開示の一態様に係る歯ブラシは、使用者の口腔内の歯列に沿って該歯列に対向する複数のブラシ毛を備えるマウスピース状の歯ブラシであって、前記歯ブラシの少なくとも一部は、前記使用者の口腔内の印象を表す三次元データに基づいて、3Dプリント、射出成形又は切削加工により一体的に形成されている。
【0027】
本態様にあっては、使用者の歯列沿いに複数のブラシ毛が歯列に対向するマウスピース状の歯ブラシが、使用者の口腔内の印象を表す三次元データに基づいて、3Dプリント、射出成形又は切削加工により少なくとも部分的に一体成形されている。このため、使用者の口腔に合わせて歯ブラシを精密に製造してブラシ毛を使用者の歯列に好適に対向させることができる。
【0028】
本開示の一態様に係る歯ブラシは、前記歯ブラシの少なくとも一部は、3Dプリントにより一体的に形成されており、前記歯ブラシの素材は、メタクリレート及びウレタンアクリレートを含む。
【0029】
本態様にあっては、歯ブラシの素材にメタクリレート及びウレタンアクリレートが含まれており、生体適合性に優れている。
【0030】
本開示の一態様に係る歯ブラシは、前記ブラシ毛を振動させるためのモータ及び該モータの駆動を制御する制御部を更に備える。
【0031】
本態様にあっては、制御部によって駆動制御されるモータがブラシ毛を振動させるため、使用者が歯ブラシを咥えるだけで歯が磨ける。
【0032】
本開示の一態様に係る歯ブラシは、外部と通信するための通信部を更に備える。
【0033】
本態様にあっては、通信部を介して、例えば歯ブラシの使用に関する使用情報を外部に送信することができる。
【0034】
本開示の一態様に係る歯ブラシは、前記歯ブラシの少なくとも一部は、上顎用と下顎用とで各別に形成されており、上顎用及び下顎用の前記歯ブラシを弾性的に連結する連結部を更に備える。
【0035】
本態様にあっては、上顎用と下顎用とで各別に成形された歯ブラシのうち、例えばユーザの歯列の前歯側に対応する部位が連結部によって弾性的に連結されている。これにより、歯ブラシが上下から噛み込まれた場合に、噛み込み方向とは逆方向の反力が作用する。
【0036】
本開示の一態様に係る歯ブラシは、前記歯列の曲率が所定値より大きい部位に向けて水流を噴出させるための噴出口を有する。
【0037】
本態様にあっては、噴出口からユーザの歯列の曲率が所定値より大きい部位に向けて水流が噴出されるため、ブラシ毛での清掃が難しい部位の汚れが除去される。
【0038】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、使用者を特定する使用者ID及び該使用者の口腔内の印象を表す三次元データを取得し、取得した三次元データに基づき、前記口腔内の歯列に沿って該歯列に対向するブラシ毛を備えるマウスピース状の歯ブラシの少なくとも一部を、3Dプリント、射出成形又は切削加工により一体的に形成させ、形成させた歯ブラシを特定するブラシID、取得した三次元データ及び取得した使用者IDを対応付けて記憶する。
【0039】
本態様にあっては、使用者の口腔内の印象を表す三次元データに基づき、3Dプリント、射出成形又は切削加工により、使用者の歯列沿いに複数のブラシ毛が歯列に対向するマウスピース状の歯ブラシを少なくとも部分的に一体成形させる。その後、ブラシIDと、三次元データと、使用者IDとを対応付けて記憶する。これにより、使用者の口腔に合わせて精密に製造させた歯ブラシと、元データである三次元データと、歯ブラシの使用者とを関連付けることができる。
【0040】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、前記歯ブラシを形成させた後に、使用者ID及び該使用者IDによって特定される使用者の更新後の三次元データを取得し、取得した使用者IDに対応付けて更新後の三次元データを記憶する。
【0041】
本態様にあっては、三次元データに基づいて歯ブラシを形成させて製造させた後に、更新された使用者の三次元データを取得し、取得した更新後の三次元データを新たに使用者IDに対応付けて記憶する。これにより、使用者の三次元データが最新のデータに更新されて記憶される。
【0042】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、記憶した更新後の三次元データに基づいて、前記歯ブラシの少なくとも一部を一体的に形成させ、形成させた更新後の歯ブラシを特定するブラシID、更新後の三次元データ及び取得した使用者IDを対応付けて記憶する。
【0043】
本態様にあっては、使用者の三次元データを更新した場合、更新後の三次元データに基づいて歯ブラシを新たに製造させ、新たな歯ブラシのブラシIDを、新たに三次元データ及び使用者IDに対応付けて記憶する。これにより、使用者の歯ブラシのブラシIDが最新のIDに更新されて記憶される。
【0044】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、前記歯ブラシを形成させた後に、使用者ID及び該使用者IDによって特定される使用者の歯の磨き残し部位を示すデータを取得し、取得した磨き残し部位を示すデータ及び取得した使用者IDを対応付けて記憶する。
【0045】
本態様にあっては、形成させた歯ブラシを実際に使用した使用者の歯の磨き残し部位を示すデータを取得して使用者別に記憶する。これにより、使用者の歯ブラシを次回形成させる際に、従前の歯ブラシによる歯の磨き残し部位が参照される。
【0046】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、取得した使用者IDに対応付けて記憶した磨き残し部位を示すデータに更に基づいて、前記歯ブラシの少なくとも一部を一体的に形成させる。
【0047】
本態様にあっては、使用者の歯ブラシを次回形成させる際に、従前の歯ブラシによる磨き残し部位を参照して、例えばブラシ毛の密度、向き、長さ等を調整することにより、新たに形成させる歯ブラシによる歯の磨き残しが低減されるようにすることができる。
【0048】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、前記歯ブラシと通信する情報処理端末から前記歯ブラシの使用に関する使用情報及びブラシIDを取得し、取得した使用情報を取得したブラシIDに対応付けて記憶し、記憶した使用情報に基づいて、交換時期に関する情報を前記使用者に通知する。
【0049】
本態様にあっては、情報処理装置を介して歯ブラシの使用情報を取得の都度、取得した使用情報をユーザID及びブラシIDに対応付けて累積的に記憶し、累積された使用情報から導かれる歯ブラシの交換時期に関する情報を、ブラシIDに対応付けて記憶してある使用者IDで特定される使用者に通知する。これにより、使用者は、例えばブラシ毛が劣化する前に交換用の歯ブラシを注文することができる。
【0050】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、前記歯ブラシと通信する情報処理端末から前記歯ブラシの使用に関する使用情報及びブラシIDを取得し、取得した使用情報を取得したブラシIDに対応付けて記憶し、記憶した使用情報に基づいて、歯磨剤の追加購入に関する情報を前記使用者に通知する。
【0051】
本態様にあっては、情報処理端末を介して歯ブラシの使用情報を取得の都度、取得した使用情報をユーザID及びブラシIDに対応付けて累積的に記憶する。そして、累積された使用情報から導かれる歯磨剤の残量に基づいて、追加購入に関する情報を、ブラシIDに対応付けて記憶してある使用者IDで特定される使用者に通知する。これにより、使用者は、例えば歯磨剤を使い切る前に、歯磨剤のリフィルを注文することができる。
【0052】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、前記使用者に通知する情報を、予め登録された前記使用者の関係者に更に通知する。
【0053】
本態様にあっては、使用者に通知する情報を、使用者の関係者にも通知するため、例えば、使用者の歯ブラシの保守を、関係者がサポートすることができる。
【0054】
本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、使用者の口腔内の印象を表す三次元データに基づき、少なくとも一部が3Dプリント、射出成形又は切削加工により一体的に形成されており、前記口腔内の歯列に沿って該歯列に対向する複数のブラシ毛を備えるマウスピース状の歯ブラシの振動具から、前記歯ブラシの使用に関する使用情報を取得し、取得した使用情報、前記使用者を特定する使用者ID、及び前記歯ブラシを特定するブラシIDをサーバコンピュータへ送信し、前記サーバコンピュータから送信された前記歯ブラシの保守運用に関する情報を受信し、受信した保守運用に関する情報に基づく表示を行う処理をコンピュータに実行させる。
【0055】
本態様にあっては、使用者の口腔内の印象を表す三次元データに基づき、3Dプリント、射出成形又は切削加工により、少なくとも部分的に一体成形された歯ブラシの振動具から、歯ブラシの使用情報を取得する都度、取得した使用情報を、使用者ID及びブラシIDと共にサーバコンピュータへ送信する。サーバコンピュータから歯ブラシの保守運用に関する情報を受信した場合、受信した情報に基づいて保守運用に関する表示を行う。これにより、例えば歯ブラシの交換時期、歯磨剤の追加購入の案内、歯ブラシの使用履歴等を歯ブラシの使用者に通知することができる。
【0056】
本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、受信すべき保守運用に関する情報の選択を受け付け、選択結果を前記サーバコンピュータへ送信する処理を前記コンピュータに実行させる。
【0057】
本態様にあっては、歯ブラシの保守運用に関してどの表示を行うかの選択を受け付け、選択結果をサーバコンピュータに送信する。これにより、選択された表示を行うための情報をサーバコンピュータから受信した場合は、選択に応じた表示が行える。
【0058】
本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、前記保守運用に関する情報に基づく表示は、前記振動具の振動態様の選択を受け付けるためのものであり、前記振動態様の選択を受け付け、選択された振動態様を示すデータを前記振動具へ送信する処理を前記コンピュータに実行させる。
【0059】
本態様にあっては、振動具をどのように振動させるかの選択を受け付け、選択結果を振動具に送信する。これにより、振動態様の設定が可能な振動具を、選択に応じて設定することができる。
【0060】
本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、前記保守運用に関する情報に基づく表示は、前記使用者の歯の磨き残し部位の選択を受け付けるためのものであり、前記磨き残し部位の選択を受け付け、選択された磨き残し部位に基づくプラークコントロールレコード(PCR=Plaque Control Record )を表示し、選択された磨き残し部位を示すデータを前記使用者IDに対応付けて前記サーバコンピュータへ送信する処理を前記コンピュータに実行させる。
【0061】
本態様にあっては、画面の表示に応じて選択された歯の磨き残し部位に基づいてPCRを表示すると共に、磨き残し部位を示すデータを当該使用者に対応付けてサーバコンピュータに送信する。これにより、使用者は、磨き残しの割合を数値で把握することができる。また、歯の磨き残し部位を示すデータが、次回の歯ブラシの形成に備えてサーバコンピュータに記憶される。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、個人差によるところが大きい歯の磨き残しをより少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】実施形態1に係る歯ブラシ製造システムの構成例を示す説明図である。
【
図2】情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態1に係る歯ブラシ製造システムで製造された歯ブラシの外観を示す斜視図である。
【
図6】ユーザから採得された印象及び該印象に基づいて作成された模型の外観を示す斜視図である。
【
図7】実施形態1に係る歯ブラシ製造システムで歯ブラシの3Dデータをサーバ装置にアップロードする手順を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態1に係る歯ブラシ製造システムで歯ブラシの3D形状データを生成して歯ブラシを造形する手順を示すフローチャートである。
【
図9】変形例1に係る歯ブラシの外観を模式的に示す側面図である。
【
図10】変形例2に係る歯ブラシの外観の一部を模式的に示す平面図である。
【
図11】歯列を表すポリゴンの数を削減してメッシュの一部を削除する様子を示す説明図である。
【
図12】歯列の曲率に応じてメッシュの細かさを調整する様子を示す説明図である。
【
図13】各ポリゴンの頂点から引いた法線の方向及び長さを調整する様子を示す説明図である。
【
図14】ブラシ台の形状及び厚みを調整する様子を示す説明図である。
【
図15】ブラシ毛の太さを調整してブラシ台と結合させる様子を示す説明図である。
【
図16】実施形態2に係る歯ブラシ製造システムで歯ブラシの3D形状データを生成して歯ブラシを造形する手順を示すフローチャートである。
【
図17】実施形態3に係る歯ブラシ製造システムの構成例を示す説明図である。
【
図18】植毛シートを用いた上顎用の歯ブラシの製造過程を示す説明図である。
【
図19】ブラシシートを用いた上顎用の歯ブラシの製造過程を示す説明図である。
【
図20】実施形態3に係る歯ブラシ製造システムで歯ブラシの3D形状データを生成して歯ブラシを造形する手順を示すフローチャートである。
【
図21】実施形態4に係る歯ブラシ製造システムの構成例を示す説明図である。
【
図22】撮像された咬合状態を表す画像を模式的に示す説明図である。
【
図23】実施形態4に係る歯ブラシ製造システムで咬合データをサーバ装置にアップロードする手順を示すフローチャートである。
【
図24】実施形態4に係る歯ブラシ製造システムで歯ブラシの3D形状データを生成して歯ブラシを造形する手順を示すフローチャートである。
【
図25】実施形態5に係る歯ブラシ製造システムの構成例を示す説明図である。
【
図26】歯ブラシの振動具の構成例を示すブロック図である。
【
図27】使用履歴DBの構成例を示す説明図である。
【
図28】実施形態5に係る歯ブラシ製造システムで歯ブラシの保守運用に関する情報を通知する手順を示すフローチャートである。
【
図29】実施形態5に係る歯ブラシ製造システムで各種設定を受け付ける手順を示すフローチャートである。
【
図30】歯磨き及び歯ブラシの履歴を示す画面の表示例である。
【
図31】振動具の振動態様の選択画面の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
本実施形態1以下の各実施形態では、使用者(以下ユーザという)から採得された印象を表す3Dデータに基づいて、マウスピース形状の歯ブラシを製造する歯ブラシ製造システムについて説明する。歯ブラシの保守や運用のサポートについても説明する。歯ブラシの製造では情報処理装置のサポートによって3Dデータがサーバ装置にアップロードされ、情報処理装置が歯ブラシの設計を行って3D形状データを生成する。生成された3D形状データは歯ブラシの製造工場に送られ、3Dプリンタによって歯ブラシが造形される。歯ブラシの製造には、口腔内での使用に問題がない歯科用樹脂素材が用いられる。
【0065】
図1は、実施形態1に係る歯ブラシ製造システム100aの構成例を示す説明図である。歯ブラシ製造システム100aは、インターネットを含むネットワークNi上に構築されて歯ブラシの製造及び保守に係るサービスを提供する情報処理装置1と、データベースのストレージとして用いられるサーバ装置2と、ネットワークNiに接続されたPC(Personal Computer )端末3及び5とを含む。サーバ装置2は複数あってもよい。ここでは、情報処理装置1とサーバ装置2とでクラウドの機能を実現する。
【0066】
PC端末3には、口腔内スキャナ又は卓上スキャナ(以下、何れも単にスキャナという)4が接続されている。PC端末5には、3Dプリンタ6が接続されている。ネットワークNiには、更に、携帯電話網Nrを介して歯ブラシのユーザの携帯端末7が接続されている。携帯端末7は、後述するWi-Fi(登録商標)通信部77(
図4参照)により、不図示のアクセスポイントを介してネットワークNiに接続されてもよい。
【0067】
図2は、情報処理装置10の構成例を示すブロック図である。情報処理装置10は、制御部11、記憶部12、通信部13及びサーバインタフェース14を備える。サーバ装置2がネットワークNiに接続されている場合、サーバインタフェース14は不要である。
【0068】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の1又は複数のプロセッサを含む。制御部11は、記憶部12に記憶されている情報処理プログラム12pに基づく処理を実行し、情報処理装置10をサーバコンピュータとして機能させる。
【0069】
記憶部12は、ハードディスク及びDRAM(Dynamic Random Access Memory )、SRAM(Static Random Access Memory )等の書き替え可能なメモリを含み、情報処理プログラム12pの他に、制御部11が参照する設定情報及び一時的に発生するデータを記憶する。情報処理プログラム12pは、記録媒体15に記録されたものを読み込んで記憶部12に記憶したものであってもよいし、制御部11が通信部13を介して外部の任意のサーバ装置から取得して記憶部12に複製したものであってもよい。
【0070】
通信部13は、ネットワークカードを含む。制御部11は、通信部13によりネットワークNiを介した通信が可能である。サーバインタフェース14は、例えば不図示のLAN(Local Area Network )を介してサーバ装置2と接続するためのものである。
【0071】
サーバ装置2は汎用のサーバであり、構成図の記載及びその説明を省略する。サーバ装置2には、ユーザに関する情報を互いに関連付けて記憶するデータベースであるユーザDB20が含まれている。
図3は、ユーザDB20の構成例を示す説明図である。ユーザDB20には、ユーザID、顧客情報、3Dデータ、咬合データ及びブラシIDが対応付けられている。
【0072】
ユーザIDは、ユーザに対して一意的に付される識別情報であり、User01,User02等が記憶される。顧客情報は、ユーザのパスワード、ユーザの関係者等の情報であり、Userinf01,Useinf02等が記憶される。ユーザの印象を表す3Dデータは、3Ddat01,3Ddat02等が記憶される。咬合データ(詳細は後述する実施形態4で説明する)は、OCCdat01,OCCdat02等が記憶される。ブラシIDは、製造した歯ブラシの識別情報であり、Brush01,Bruch02等が記憶される。
【0073】
PC端末3及び5は、ここでは汎用のパーソナルコンピュータであり、構成図の記載及びその説明を省略する。PC端末3及びスキャナ4は、例えばスキャンサービスを提供する店舗の店頭、ユーザの自宅又は歯科クリニックに設置されている。PC端末5及び3Dプリンタ6は、歯ブラシを造形する工場に設置されている。
【0074】
携帯端末7は、公衆無線通信が可能なスマートフォン、タブレット型PC等の可搬型の情報処理端末である。
図4は、携帯端末7の構成例を示すブロック図である。携帯端末7は、制御部71、記憶部72、表示部73、操作部74、撮像部75、公衆無線通信部76、Wi-Fi通信部77及びブルートゥース(登録商標)通信部78を備える。
【0075】
制御部71は、CPU、GPU等のプロセッサを含む。制御部71は、プロセッサ、記憶部72、公衆無線通信部76、Wi-Fi通信部77及びブルートゥース通信部78を集積した1つのハードウェア(SoC:System On a Chip )として構成してもよい。制御部71は、記憶部72に記憶されているアプリプログラム72pに基づく制御を行う。
【0076】
記憶部72は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ及びDRAM、SRAM等の書き替え可能なメモリを含む。記憶部72が記憶するアプリプログラム72pが、Webブラウザ機能を含んでもよいし、汎用のWebブラウザプログラムが別途記憶部72に記憶されていてもよい。アプリプログラム72pは、記録媒体79に記録されたものを読み込んで記憶部72に記憶したものであってもよいし、制御部71が公衆無線通信部76又はWi-Fi通信部77を介して情報処理装置1から取得して記憶部72に複製したものであってもよい。
【0077】
表示部73は、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence )ディスプレイを用いた表示器であり、制御部71に制御されて各種の情報を表示する。操作部74は、ユーザによる操作を受け付けるためのインタフェースであり、例えばタッチパネルを含んで構成されている。
【0078】
撮像部75は、例えばCCD(Charge Coupled Device )カメラ等を含み、画像又は映像の撮像を行う。撮像部75により撮像された画像又は映像は図示しない処理回路によって処理され、記憶部72に記憶される。
【0079】
公衆無線通信部76は、移動通信システムの規格に準拠する無線通信により、携帯電話網Nrを介して無線通信を行うためのインタフェースである。Wi-Fi通信部77は、Wi-Fi規格に準拠する無線通信によって、不図示の無線LANのアクセスポイントに接続するためのインタフェースである。ブルートゥース通信部78は、ブルートゥースの通信規格に準拠する無線通信によって、ブルートゥースのスレーブと接続するためのインタフェースである。
【0080】
図1には、本実施形態1における主なデータの流れを破線で示してある。以下、時系列的にデータの流れを説明する。
【0081】
スキャナ4が例えばユーザの口腔内をスキャンして生成したスキャンデータは、PC端末3にてスキャナ4に対応するソフトウェアにより、STL形式、PLY形式等のデータ形式による三次元データ(以下、3Dデータという)に変換される。変換された3Dデータは、PC端末3にて利用される情報処理装置1の情報処理プログラム12pにより、サーバ装置2にアップロードされる。ここでアップロードされる3Dデータは、例えば、ユーザがかかりつけの歯科クリニック等から既に入手してPC端末3に記憶させたものであってもよい。サーバ装置2上の3Dデータは、情報処理プログラム12pを介してユーザの携帯端末7にダウンロードすることにより、その内容を確認することができる。
【0082】
ユーザは歯ブラシの注文の際に、情報処理プログラム12pを利用して携帯端末7から情報処理装置1に各種指示を行う。具体的には、情報処理装置1に、ユーザの3Dデータをサーバ装置2から取得させ、ユーザが好みによって選択したブラシ毛の長さ、太さ、密度、形状、材料の硬さ、色、ブラシ台部の厚み等のパラメータを受け付けさせ、マウスピース形状の歯ブラシの3D形状データを生成させる。上記パラメータの受け付け及び3D形状データの生成は、情報処理プログラム12pに含まれる3Dモデリングソフトによる。特に、ブラシ毛の硬さについては、材料の配合を変えることによって、ユーザの好みの硬さに調整することができる。
【0083】
例えば、ユーザによるパラメータの選択が無い場合であっても、情報処理プログラム12pに含まれる独自のアルゴリズムにより、事前に用意された3D形状データの中から、ユーザの3Dデータが表す印象に最も適した形状を表す3D形状データを選択することができる。即ち、ユーザの歯列に最も合致するブラシ毛の成形パターンと、ブラシ台の形状及び大きさとが自動的に選択される。
【0084】
工場に歯ブラシが注文される場合、歯ブラシの造形に必要なデータとして、情報処理装置1から3D形状データ+α(αは、例えば材料及び色の指定)がPC端末5に送信される。PC端末5は、受信した3D形状データ+αに基づいて、注文された歯ブラシを3Dプリンタ6に造形させる。PC端末5に送信される3D形状データ+αは、情報処理装置1によって生成されたときに一旦サーバ装置2に記憶されたものであってもよい。本実施形態1では、3Dプリンタ6は、例えばSLA(Stereo Lithography Apparatus )方式でブラシ毛及びブラシ台を一体的に造形する。
【0085】
図5は、実施形態1に係る歯ブラシ製造システム100aで製造された歯ブラシの外観を示す斜視図である。
図5Aには上顎用と下顎用とで一体化されたマウスピース状の歯ブラシ8aを示し、
図5Bには、上顎用のマウスピース状の歯ブラシ8bを示す。下顎用の歯ブラシについては、概ね歯ブラシ8bの上下を反転した形状となる(不図示)。歯ブラシ8a及び8bの素材は、何れもメタクリレート(Methacrylate )及びウレタンアクリレート(Urethane acrylate )を含んでおり、生体適合性が高い。より詳細には、素材に、架橋開始剤(Initiator )、顔料(Pigments )及び焼成珪酸(Pyrogenic silicic acid )を更に含む。メタクリレート及びウレタンアクリレートに代えて、又はこれらに加えて、他のメタクリレート化合物が含まれていてもよい。
【0086】
歯ブラシ8aは、ユーザの上顎の歯列に装着される溝を有するブラシ台81aと、ユーザの下顎の歯列に装着される溝を有するブラシ台82aと、ブラシ台81a及び82aそれぞれから溝の内壁面から延びる複数のブラシ毛80とを備える。ブラシ台82aの溝の内壁面から延びるブラシ毛80は不図示である。ブラシ台81a及び82aそれぞれとブラシ毛80とは一体的に形成されている。各ブラシ台の溝は、断面が略U字状をなしており、ユーザの歯列を包むようになっている。また、各ブラシ台は、唾液や喀痰の吸引器、水を噴射して歯間部を洗浄する噴射器等の機器に接続可能とすることができる。
【0087】
歯ブラシ8bは、ユーザの上顎の歯列に装着される溝を有するブラシ台81bと、ブラシ台81bから溝の内壁面から延びる複数のブラシ毛80とを備える。ブラシ台81bとブラシ毛80とは一体的に形成されている。歯ブラシ8a及び8bの何れについても、ブラシ毛80がユーザの歯列に沿って該歯列と適当な距離を取って対向するように形成されている。
【0088】
次に、ユーザの口腔内の印象の採得方法について説明する。
図6は、ユーザから採得された印象9a及び該印象に基づいて作成された模型9bの外観を示す斜視図である。
図6Aでは上顎又は下顎の印象9aを示し、
図6Bでは印象9aから作成された模型9bを上下反転して示す。
【0089】
印象9aは、シリコン印象材等の歯科用の印象材をユーザの歯列に押し当てて一定時間保持させることによって歯列を型取りしたものである。印象9aにおける歯列に対応する部位は凹部となっており、該凹部の周囲を硬化した印象材が取り囲んでいる。模型9bは、印象9aに石膏等の材料を流し込んでユーザの歯列の形状を再現したものである。
【0090】
PC端末3は、口腔内の印象を表す3Dデータを生成する際に、スキャナ4にユーザの口腔内をスキャンさせるか、印象9aをスキャンさせるか、又は模型9bをスキャンさせてスキャンデータを取得する。スキャナ4の操作又は準備は、上記店舗の店員、ユーザ自身、又は歯科クリニックの歯科医(以下、これらを総称して人という)が行う。なお、ユーザの口腔内の複数の二次元画像に基づいて3Dデータを合成することが可能である。
【0091】
スキャナ4が印象9aをスキャンした場合と、口腔内又は模型9bをスキャンした場合とでは、スキャンデータが表す形状の凹凸が逆転するが、PC端末3は、スキャナ4に対応するソフトウェアにより上記の凹凸を反転させて統一してもよい。一方、情報処理装置1は、取得する3Dデータが表す形状の凹凸が何れであっても、上記の凹凸を凸に統一した後に歯ブラシ8a及び8bの3D形状データを生成することが可能である。
【0092】
以下では、上述した歯ブラシ8a及び8bの製造の流れを、それを示すフローチャートを用いて説明する。
図7は、実施形態1に係る歯ブラシ製造システム100aで歯ブラシ8a又は8bの3Dデータをサーバ装置2にアップロードする手順を示すフローチャートである。
図8は、実施形態1に係る歯ブラシ製造システム100aで歯ブラシ8a又は8bの3D形状データを生成して歯ブラシ8a又は8bを造形する手順を示すフローチャートである。
【0093】
図7では、PC端末3、情報処理装置1及びサーバ装置2における処理と、これらの間での信号/データの流れとを示す。PC端末3の処理は、ユーザからの印象採得前に開始される。情報処理装置1及びサーバ装置2は、常時処理待ちの状態にあるものとする。
図8では、携帯端末7、情報処理装置1、サーバ装置2及びPC端末5における処理と、これらの間での信号/データの流れとを示す。携帯端末7の処理は、情報処理装置1にアクセスする前に開始される。情報処理装置1、サーバ装置2及びPC端末5は、常時処理待ちの状態にあるものとする。
【0094】
図7にて、PC端末3は、先ずスキャナ4により印象を採得する(S1)。具体的には、人がスキャナ4を操作又は準備して、ユーザの口腔内の印象を表すスキャンデータが生成された場合、PC端末3がスキャンデータを変換して、印象を表す3Dデータを生成する。その後、PC端末3は、人の操作を受け付けて情報処理装置1にログインし(S2)、情報処理装置1がログインを受け付ける(S11)。この場合、ユーザを特定するユーザIDをログインIDとすることが好ましい(以下のログイン場面についても同様)。以後、信号/データの受け渡し時にユーザIDが付加されるものとする(図示せず)。
【0095】
ログイン中に、PC端末3は、データアップロード指示を情報処理装置1に送った(S3)後、先に生成した印象を表す3Dデータを情報処理装置1に送信する(S4)。情報処理装置1は、送信された3Dデータをサーバ装置2にアップロードする(S12)。サーバ装置2は、アップロードされた3DデータとユーザIDとを対応付けてユーザDB20(
図3参照)に記憶する(S21)。その後、PC端末3は、人の操作を受け付けてログアウトし(S5)、処理を終了する。
【0096】
図8にて、携帯端末7は、ユーザの操作を受け付けて情報処理装置1にログインし(S31)、情報処理装置1がログインを受け付ける(S41)。次いで、携帯端末7は、ユーザの3Dデータの取得指示を情報処理装置1に送信し(S32)、これを受信した情報処理装置1が3Dデータをサーバ装置2に要求する(S42)。サーバ装置2は、要求に応じてユーザの3Dデータを送信し(S51)、これを情報処理装置1が取得する(S43)。
【0097】
一方、携帯端末7は、ユーザに歯ブラシ8a又は8bの選択メニューを提示して(S33)ユーザの選択を受け付け(S34)、ユーザの選択結果を情報処理装置1に送信する(S35)。情報処理装置1はユーザの選択結果を受け付ける(S44)。ここでの選択メニューは、上述したブラシ毛80の長さ、太さ、密度、形状、材料の硬さ、色、ブラシ台81a,81b,82aの厚み等のパラメータを選択させるためのものである。
【0098】
その後、携帯端末7は、情報処理装置1に歯ブラシ8a又は8bの設計を指示する(S36)。設計を指示された情報処理装置1は、既に取得済みの3Dデータ及びユーザの選択結果に基づいて、歯ブラシ8a又は8bの3D形状データを生成し(S45)、生成した3D形状データによって造形される歯ブラシ8a又は8bのブラシIDをサーバ装置2に送信する(S46)。サーバ装置2は、既に対応付けて記憶しているユーザの3Dデータ及びユーザIDに、ブラシIDを更に対応付けてユーザDB20に記憶する(S52)。
【0099】
その後、携帯端末7が、ユーザの操作を受け付けて注文を指示した(S37)場合、情報処理装置1は、PC端末5に対して注文を送信し(S47)、PC端末5は注文を受け付ける(S61)。次いで、情報処理装置1は、歯ブラシ8a又は8bの造形に必要なデータ、即ち3D形状データ+α(αは、ユーザが選択した材料及び色の指定)をPC端末5に送信する(S48)。一方の携帯端末7は、ユーザの操作を受け付けてログアウトし(S38)、処理を終了する。
【0100】
PC端末5は、送信された所要のデータを受け付け(S62)、3Dプリンタ6に対して3D形状データ+αに基づく歯ブラシ8a又は8bの造形を指示する(S63)。これにより、歯ブラシ8a又は8bが一体的に形成される。
【0101】
なお、
図7及び
図8に示す処理手順によってユーザの歯ブラシ8a又は8bが形成された後に、新たにユーザから印象が採得された場合は、再び
図7に示す処理手順を用いて、サーバ装置2に記憶される3Dデータを更新することができる。加えて
図8に示す処理手順を用いれば、歯ブラシ8a又は8bを更新し、サーバ装置2のユーザDB20に記憶される3DデータとユーザIDとブラシIDの対応付けも更新することができる。
【0102】
以上のように本実施形態1によれば、ユーザの口腔内の印象を表す3Dデータに基づき、3Dプリンタ6により、ユーザの歯列沿いに複数のブラシ毛80が歯列に対向するマウスピース状の歯ブラシ8a又は8bを一体成形する。このため、ユーザの口腔に合わせて歯ブラシ8a又は8bを精密に製造してブラシ毛80をユーザの歯列に好適に対向させることができる。より具体的には、ユーザの年齢、歯並び、歯の大きさ及び本数並びに顎の形状の違いにも柔軟に対応できる。従って、個人差によるところが大きい歯の磨き残しがより少ない歯ブラシ8a又は8bを製造することができる。
【0103】
また、実施形態1によれば、歯ブラシ8a及び8bの素材にメタクリレート及びウレタンアクリレートが含まれており、生体適合性に優れている。
【0104】
更に、実施形態1によれば、ユーザの口腔内を直接的にスキャンするか、口腔内から採得された印象9aをスキャンするか、又は印象9aから製作された模型9bをスキャンすることによって3Dデータが生成される。これらのどの方法によって3Dデータが生成された場合であっても、ユーザの口腔に合わせて歯ブラシ8a又は8bを精密に製造することができる。
【0105】
更に、実施形態1によれば、歯ブラシ8aの一体的に成形する部分を上顎用と下顎用とで分けずに成形する。従って、ユーザは歯ブラシ8aを口に咥えて噛み込むと、歯ブラシ8aが歯の表面に均等に密着する。
【0106】
更に、実施形態1によれば、歯ブラシ8bの一体的に成形する部分を上顎用として成形する。従って、歯ブラシ8bの設計、製造及び清掃が比較的容易となり、買い替えコストを低減することができる。下顎用の歯ブラシについても同様である。
【0107】
更に、実施形態1によれば、ユーザの歯列沿いに複数のブラシ毛80が歯列に対向するマウスピース状の歯ブラシ8a又は8bが一体成形されているため、ブラシ毛80をユーザの歯列に好適に対向させることができる。また、歯ブラシ8a及び8bの素材にメタクリレート及びウレタンアクリレートが含まれており、生体適合性に優れている。
【0108】
更に、実施形態1によれば、ユーザの口腔内の印象を表す3Dデータに基づいて一体成形されているため、ユーザの口腔に合わせて歯ブラシ8a又は8bを精密に製造することができる。
【0109】
更に、実施形態1によれば、ユーザの口腔内の印象を表す3Dデータに基づき、メタクリレート及びウレタンアクリレートを含む素材を用いて3Dプリンタ6により、ユーザの歯列沿いに複数のブラシ毛80が歯列に対向するマウスピース状の歯ブラシ8a又は8bを一体成形させる。その後、ブラシIDと、3Dデータと、ユーザIDとを対応付けてサーバ装置2のユーザDB20に記憶する。従って、ユーザの口腔に合わせて精密に製造させた歯ブラシ8a又は8bと、元データである3Dデータと、歯ブラシ8a又は8bのユーザとを関連付けることができる。このため、ユーザの3Dデータを一度サーバ装置2に登録すれば、何度でも当該ユーザ向けの歯ブラシ8a又は8bを製造させることができる。
【0110】
更に、実施形態1によれば、3Dデータに基づいて歯ブラシ8a又は8bを形成させて製造させた後に、更新されたユーザの3Dデータを取得し、取得した更新後の3Dデータを新たにユーザIDに対応付けてサーバ装置2のユーザDB20に記憶する。従って、ユーザの3Dデータを最新のデータに更新して記憶することができる。
【0111】
更に、実施形態1によれば、ユーザの3Dデータを更新した場合、更新後の3Dデータに基づいて歯ブラシ8a又は8bを新たに製造させ、新たな歯ブラシ8a又は8bのブラシIDを、新たに3Dデータ及びユーザIDに対応付けてサーバ装置2のユーザDB20に記憶する。従って、ユーザの歯ブラシ8a又は8bのブラシIDを最新のIDに更新して記憶することができる。
【0112】
なお、実施形態1にあっては、歯ブラシ8a又は8bを3Dプリントにより一体的に形成したが、射出成形により一体的に成形してもよい。この場合の素材としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン共重合体、高密度ポリエチレン、リキッド・クリスタル・ポリマー、低密度ポリエチレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリカ/エービーエス、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ポリエステル系エラストマー及びスチレン系エラストマーのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0113】
(変形例1)
実施形態1が、上下一体型の歯ブラシ8a又は上顎用の歯ブラシ8bを形成する形態であるのに対し、変形例1は、上顎用の歯ブラシ及び下顎用の歯ブラシを各別に生成し、生成した各歯ブラシを連結して相対的に上下に動かすことが可能な歯ブラシとする形態である。変形例1に係る歯ブラシ製造システムの構成は、実施形態1の場合と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して図示及びその説明を省略する。
【0114】
図9は、変形例1に係る歯ブラシ8aaの外観を模式的に示す側面図である。歯ブラシ8aaは、上顎用の歯ブラシ8a1と、下顎用の歯ブラシ8a2と、歯ブラシ8a1及び8a2を連結する連結部810とを備える。歯ブラシ8a1は、ブラシ台81aa及び複数のブラシ毛80を有する。歯ブラシ8a2は、ブラシ台82aa及び複数のブラシ毛80を有する。連結部810は、球状をなし、バネ、ゴム等の弾性部材を含んで構成されている。
図9では、ブラシ台81aa及び82aaの輪郭の大部分を直線で近似する。
【0115】
ブラシ台81aa及び82aaは、実施形態1のブラシ台81a(
図5参照)と同様に平面視が馬蹄形状をなしている。即ち、ブラシ台81aa及び82aaは、ユーザの歯列の奥歯側に対応する一端部及び他端部を有する。歯ブラシ8a1及び8a2は、ユーザの歯列の前歯側に対応する部位が連結部810によって弾性的に連結されている。連結部810は、ヒンジ等の可動構造体を有してもよく、直方体状をなしていてもよい。上記一端部及び他端部は、固定的に又は半固定的に連結されている。連結部810が歯ブラシ8a1及び8a2を連結する部位は、上記前歯側に対応する部位に限定されず、例えばユーザの歯列の奥歯側に対応する部位であってもよい。
【0116】
本変形例1によれば、上下のブラシ台81aa及び82aaが、ユーザの歯列の前歯側に対応する部位にて、バネ、ゴム等の弾性部材を含む連結部810で連結されている。従って、歯ブラシ8aaが上下から噛み込まれた場合に、噛み込み方向とは逆方向の反力が作用する。ユーザは、上下の歯に歯ブラシ8aaを装着し、噛み込む動作や歯軋りのように歯を左右に動かす動作を繰り返すことによって、ガムを噛むような感覚で歯の汚れを落とすことができる。
【0117】
(変形例2)
実施形態1が、主にブラシ毛80によって歯を磨くための歯ブラシ8a又は8bを形成する形態であるのに対し、変形例2は、水が噴き出す噴出口を有する歯ブラシを形成する形態である。変形例2に係る歯ブラシ製造システムの構成は、実施形態1の場合と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して図示及びその説明を省略する。
【0118】
図10は、変形例2に係る下顎用の歯ブラシ8bbの外観の一部を模式的に示す平面図である。歯ブラシ8bbは、ブラシ台81bb及び複数のブラシ毛80に加えて、複数の噴出口813を有する。
【0119】
噴出口813は、ブラシ台81bbの内側の曲面、即ち複数のブラシ毛80が形成された側の内面から突出するように開口している。各噴出口813は、対向する上顎の歯列のうち、曲率が所定値より大きい部位、即ち曲率が比較的高い部位に向けて水が噴出するようになっている。曲率が高い部位とは、例えば、対向する歯列に含まれる各歯冠と歯茎との間の隙間であるが、歯冠と歯冠の隙間であってもよい。外部の噴射機器から接続チューブ及びブラシ台81bb内部の水路(何れも不図示)を介して注入された高圧の水が、各噴出口813から噴き出して歯列の汚れを効率的に洗浄する。
【0120】
本変形例2によれば、各噴出口813からユーザの歯列の曲率が所定値より大きい部位に向けて水流が噴出されるため、ブラシ毛80での清掃が難しい部位の汚れを除去することができる。
【0121】
(実施形態2)
実施形態1が、ユーザにブラシ毛80の長さ、太さ及び密度と、ブラシ台81a,81b,82aの厚み等とを選択させる形態であるのに対し、実施形態2は、情報処理装置1がユーザの3Dデータに基づいてブラシ毛80の形状(向き,長さ)及び/又は密度と、ブラシ台82aの形状とを自動的に決定する形態である。実施形態2に係る歯ブラシ製造システムの構成は、実施形態1の場合と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して図示及びその説明を省略する。
【0122】
本実施形態2では、3Dデータによって示される歯列の曲率を用いて法線情報を改変することにより、ブラシ毛80の形状及び/又は密度を決定する。
図11から
図15により、歯列の法線情報を改変するイメージを説明する。
図11は、歯列を表すポリゴンの数を削減してメッシュの一部を削除する様子を示す説明図である。
図12は、歯列の曲率に応じてメッシュの細かさを調整する様子を示す説明図である。
図13は、各ポリゴンの頂点から引いた法線の方向及び長さを調整する様子を示す説明図である。
図14は、ブラシ台82aの形状及び厚みを調整する様子を示す説明図である。
図15は、ブラシ毛80の太さを調整してブラシ台82aと結合させる様子を示す説明図である。
【0123】
図11Aでは、情報処理装置1が、サーバ装置2から取得したユーザの3Dデータについて必要最小限の解像度となるまでポリゴン数を削減する。各ポリゴンの頂点には、ポリゴンが表す曲面の法線を示す法線情報が対応付けられている。隣り合うポリゴンは、頂点の一部を共有する。例えば三角ポリゴンの場合、3つの頂点のうちの2つを隣り合うポリゴンが共有し、共有される頂点に対応する法線も共有される。
図11Bでは、情報処理装置1は、設定された閾値を上回る曲率を有する箇所(曲率半径が比較的小さい箇所)を抽出して当該箇所のメッシュを削除し(歯列の曲率に基づいて法線情報を改変する工程の一部に相当)、更に歯茎の部分に相当する面積が大きいメッシュを削除する。
図11Bでは、メッシュが削除された部分が、背景と同じ黒塗りで表されている。
【0124】
図12Aでは、情報処理装置1は、各歯冠の小窩裂溝の部分と歯冠同士の隙間とにおける黒塗り部分を比較的細かいメッシュで埋める(法線情報を改変する工程の他の一部に相当)。
図12Bでは、情報処理装置1は、歯列を表すメッシュについて、曲率がより高い箇所がより細かくなるように、指定した閾値でリメッシュする。これにより、
図13で生成される法線の密度が調整される(法線情報を改変する工程の他の一部に相当)。
【0125】
図13Aでは、情報処理装置1は、リメッシュしたメッシュを構成する各ポリゴンの頂点から、ポリゴンが表す曲面に対する法線を引き出し、引き出した法線の方向を近傍のポリゴンの頂点から引き出された法線の方向に応じてスムーズ化する(法線情報を改変する工程の他の一部に相当)。具体的には、着目する一の法線の近傍における極小範囲内で、互いに隣り合う法線同士の方向ができるだけ揃うように調整される。
図13Bでは、情報処理装置1は、各法線の方向にブラシ毛80の元となる線を延ばす。この場合、延ばした線の端点が概ね揃うようにする。これにより、例えば後の工程で形成されるブラシ毛80の長さを、歯冠同士の隙間に対してより長くすることができる。
【0126】
図14Aでは、情報処理装置1は、
図13Bのとおりに延ばした各線の端点に基づいてメッシュを作り直す。作り直されたメッシュは、下顎の歯列と対向するブラシ台82aの内側の曲面を外側から透視したものである。
図14Bでは、情報処理装置1は、
図14Aで作り直したメッシュを指定の厚さで膨らませる。これによりブラシ台82aの外形が決定される。
【0127】
図15Aでは、情報処理装置1は、
図13Bで各法線の方向に延ばした線の太さを調整する。これにより、ブラシ毛80の太さが決定される。
図15Bでは、情報処理装置1は、
図14Bで形成したブラシ台82aの内側に、
図15Aで調整した線の端点を結合させて下顎用の歯ブラシの形状を決定し、3D形状データを生成する。なお、
図15Bに示す下顎用の歯ブラシは、実施形態1の
図5Aに示す上下一体型の歯ブラシ8aのうちの下顎用の部分を上下反転したものに相当する。
【0128】
図16は、実施形態2に係る歯ブラシ製造システム100aで歯ブラシ8a又は8bの3D形状データを生成して歯ブラシ8a又は8bを造形する手順を示すフローチャートである。3Dデータをサーバ装置2にアップロードする手順は、実施形態1の
図7に示す手順と同様である。
図16に示すフローチャートは、実施形態1の
図8に示すフローチャートと比較して、情報処理装置1におけるステップS44b及びS44cが追加されている。その他のステップについては、実施形態1の場合と同様であるため、説明の大部分を省略する。
【0129】
図16にて、携帯端末7が情報処理装置1にログインした(S31)後に、ユーザの選択を受け付ける(S34)場合、実施形態1の場合よりも選択の幅を狭めることが好ましい。即ち、ブラシ毛80の長さ及び密度については、上述したように情報処理装置1で設計されるため、ユーザの選択が不要である。
【0130】
一方、情報処理装置1は、ユーザの選択結果を受け付けた(S44)後に、歯ブラシ8a又は8bの設計を携帯端末7から指示された場合、
図11から
図15を用いて説明したように法線情報を改変して(S44b)、ブラシ毛80の形状及び/又は密度について詳細設計を行う(S44c)。次いで、情報処理装置1は、ブラシ毛80を含めた歯ブラシ8a又は8bの3D形状データを生成する(S46)。以後の手順は、実施形態1の場合と同様である。
【0131】
以上のように本実施形態2によれば、ユーザの口腔内の印象を示す3Dデータから導かれる歯列の各部位の曲率に基づき、歯列の法線情報を改変してブラシ毛80の密度、向き及び長さの一部又は全部を決定する。従って、歯間、歯と歯茎の間、歯の上面の凹み等にブラシ毛80がよく届くようにすることができる。
【0132】
(実施形態3)
実施形態1が、ブラシ毛80を含めて歯ブラシ8a又は8b全体を一体的に形成する形態であるのに対し、実施形態3は、ブラシ毛を植毛した植毛シート又はブラシ毛を有する一体成形のブラシシートと、一体成形のフレームとを組み合わせる形態である。
図17は、実施形態3に係る歯ブラシ製造システム100bの構成例を示す説明図である。
【0133】
歯ブラシ製造システム100bは、実施形態1の歯ブラシ製造システム100aと比較して、PC端末5に接続された植毛機6bを更に含む。その他の構成は、実施形態1の場合と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。植毛機6bには、情報処理装置1からネットワークNi及びPC端末5を介して、後述する植毛データが送られる。
【0134】
本実施形態3では、ブラシ毛を植毛して形成した植毛シート又は一体成形したブラシシートと、一体的に形成したフレームとを接着して歯ブラシを製造する。ここでの接着は、接着剤によるものに限定されず、粘着剤によるものであってもよいし、接着剤及び粘着剤を用いずに圧接、圧着又は係合するものであってもよい。
図18は、植毛シート83aを用いた上顎用の歯ブラシ8cの製造過程を示す説明図であり、
図19は、ブラシシート83bを用いた上顎用の歯ブラシ8dの製造過程を示す説明図である。
【0135】
図18Aは、平面状のシート830に複数のブラシ毛80bを植毛して形成された植毛シート83aを示す。ブラシ毛80bの向き、長さ及び密度は、植毛シート83aがフレームに接着された状態の三次元的な位置関係から逆算されている。ブラシ毛80bは、例えばナイロンを含み、植毛の際に最適な長さに調整されていてもよいし、植毛シート83aが形成された後にカットされてもよい。
図18Bは、フレーム84の溝の形状に合わせて湾曲させた植毛シート83aをフレーム84の溝に接着して歯ブラシ8cが製造される様子を示す。
【0136】
図19Aは、複数のブラシ毛80cを含めて一体成形された平面状のブラシシート83bを示す。
図19Bは、フレーム84の溝の形状に合わせて湾曲させたブラシシート83bをフレーム84の溝に接着して歯ブラシ8dが製造される様子を示す。ブラシシート83b及びフレーム84には、それぞれに適した異なる素材が含まれていてもよい。例えば、メタクリレート及びウレタンアクリレートを含む素材の配合を変えてもよい。なお、後述する振動具800(
図25参照)を用いて歯ブラシ8c又は8dを振動させる場合、フレーム84には、振動伝導率が高い素材を用いることが好ましい。
【0137】
図20は、実施形態3に係る歯ブラシ製造システム100bで歯ブラシ8c又は8dの3D形状データを生成して歯ブラシ8c又は8dを造形する手順を示すフローチャートである。3Dデータをサーバ装置2にアップロードする手順は、実施形態1の
図7に示す手順と同様である。
図20に示すフローチャートは、実施形態1の
図8に示すフローチャートと比較して、情報処理装置1におけるステップS44d及びS44eが追加され、PC端末5におけるステップS63がステップS64~S66に置き換わっている。その他のステップについては、実施形態1の場合と同様であるため、説明の大部分を省略する。
【0138】
図20にて、携帯端末7は、情報処理装置1にログインした(S31)後に、情報処理装置1に歯ブラシ8c又は8dの設計を指示する(S36)。この場合、植毛シート83a及びブラシシート83bの何れかを指定する。設計を指示された情報処理装置1は、指示の内容に応じて、植毛シート83aにブラシ毛80bを植毛するための植毛データ、又はブラシシート83bの3D形状データを生成し(S44d)、更にフレーム84の3D形状データを生成する(S44e)。
【0139】
その後、携帯端末7が、ユーザの操作を受け付けて注文を指示した(S37)場合、情報処理装置1は、PC端末5に対して注文を送信し(S47)、PC端末5は注文を受け付ける(S61)。次いで、情報処理装置1は、歯ブラシ8c又は8dの造形に必要なデータ、即ち植毛シート83aの植毛データ又はブラシシート83bの3D形状データと、フレーム84の3D形状データ+α(αは、ユーザが選択した材料及び色の指定)をPC端末5に送信する(S48)。
【0140】
PC端末5は、送信された所要のデータを受け付け(S62)、植毛機6bに対して植毛データに基づくブラシ毛80bの植毛を指示するか、又は3Dプリンタ6に対して3D形状データに基づくブラシシート83bの造形を指示する(S64)。次いで、PC端末5は、3D形状データ+αに基づくフレーム84の造形を指示する(S65)。
【0141】
その後、PC端末5は、植毛シート83a又はブラシシート83bとフレーム84の接着を指示する(S66)。この指示が、例えばPC端末5の画面に表示された場合、画面を見た操作者が手作業で接着を行うことができる。
【0142】
以上のように本実施形態3によれば、3Dデータに基づいてシート830に複数のブラシ毛80bを精密に植毛した植毛シート83aと、3Dデータに基づいて別途一体的に形成したフレーム84とを接着する。従って、3Dデータによる歯ブラシ8cの設計及び製造を比較的容易に行うことができる。
【0143】
また、実施形態3によれば、複数のブラシ毛80cを有するブラシシート83bとフレーム84とを別々の素材でそれぞれ一体的に形成して接着する。従って、ブラシ毛80cに適した素材とフレーム84に適した素材とを任意に選択することができる。
【0144】
なお、実施形態3にあっては、歯ブラシ8c又は8dを3Dプリントにより少なくとも一部を一体的に形成したが、射出成形及び/又は切削加工(フライス加工;ミーリング)により少なくとも一部を一体的に成形してもよい。切削加工による場合の素材としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、高密度ポリエチレン、モノマーキャストナイロン、ポリアミド(ナイロン)、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリカ/エービーエス、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、アクリル、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド及びポリテトラフルオロエチレンのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0145】
例えば、歯ブラシ8dについて、フレーム84を3Dプリントにより形成し、ブラシシート83bを射出成形により形成してもよいし、その逆にフレーム84を射出成形により形成し、ブラシシート83bを3Dプリントにより形成してもよい。また、フレーム84及びブラシシート83bを共に射出成形により形成してもよい。更に、フレーム84を切削加工により形成し、ブラシシート83bを3Dプリント又は射出成形により形成してもよい。
【0146】
例えば、歯ブラシ8cについて、フレーム84を3Dプリント、射出成形又は切削加工により形成し、植毛シート83aのベースとなるシート830を射出成形により形成してもよい。また、シート830として既存のシートを用いてもよい。何れの場合であっても、ブラシ毛80bは実施形態3と同様に植毛することができる。
【0147】
(実施形態4)
実施形態1が、ユーザの口腔内の印象を表す3Dデータに基づいて歯ブラシ8aを一体的に形成する形態であるのに対し、実施形態4は、ユーザの歯列の咬合状態を表す咬合データに更に基づいて歯ブラシ8aを一体的に形成する形態である。
図21は、実施形態4に係る歯ブラシ製造システム100cの構成例を示す説明図である。歯ブラシ製造システム100cは、実施形態1の歯ブラシ製造システム100aと比較して、ハードウェアの構成が同一であるが、システム内で授受されるデータの一部が異なる。実施形態1に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0148】
本実施形態4では、携帯端末7の撮像部75(
図4参照)を用いてユーザの咬合状態を撮像して複数の画像を得る。具体的には、例えば携帯端末7の画面上のサムネイルをタップするとカメラが起動して自撮り画面になる。自撮り画面には、歯を噛み合わせた状態又は口を開けて歯を見せた状態のガイドのようなものが映し出されており、ユーザはガイドに自分の歯を合わせて撮影ボタンをタップする。撮像された画像を表す画像データを咬合データという。携帯端末7で生成された咬合データは、携帯端末7にて利用される情報処理装置1の情報処理プログラム12pにより、サーバ装置2にアップロードされる。情報処理装置1は、サーバ装置2から3Dデータ及び咬合データを取得し、取得したこれらのデータに基づいて3D形状データを生成して、3Dデータ形状データ+α(αは、例えば材料及び色の指定)をPC端末5に送信する。
【0149】
図22は、撮像された咬合状態を表す画像を模式的に示す説明図である。
図22Aは、ユーザの正面から見た上下の歯列の模式的な画像である。また、
図22Bはユーザの左側方から見た上下の歯列の模式的な画像であり、
図22Cはユーザの右側方から見た上下の歯列の模式的な画像である。何れの図についても、上段にはユーザが噛み合わせた歯を見せるように口を開けている状態の画像を示し、下段にはユーザが歯を噛み合わせずに口角鈎(不図示)などを用いて口角を引いて口を開けている状態の画像を示す。
【0150】
3D形状データの生成に際し、情報処理装置1は、取得した咬合データ(
図22の画像を表す画像データ)に基づき、ユーザの下顎の上下運動を再現して顎間関係(下顎の開き具合、開く方向などを含む上下の顎の空間的な位置関係)を推定し、製造する歯ブラシ8aが歯列に装着された場合の最適な顎間関係を確定する。そして、確定した顎間関係となるように、歯ブラシ8aの3D形状データを生成する。
【0151】
図23は、実施形態4に係る歯ブラシ製造システム100cで咬合データをサーバ装置2にアップロードする手順を示すフローチャートである。
図24は、実施形態4に係る歯ブラシ製造システム100cで歯ブラシ8aの3D形状データを生成して歯ブラシ8aを造形する手順を示すフローチャートである。3Dデータをサーバ装置2にアップロードする手順は、実施形態1の
図7に示す手順と同様であり、図示及び説明を省略する。
【0152】
図23では、携帯端末7、情報処理装置1及びサーバ装置2における処理と、これらの間での信号/データの流れとを示す。携帯端末7の処理は、歯列の撮像前に開始される。
図24に示すフローチャートは、実施形態1の
図8に示すフローチャートと比較して、情報処理装置1におけるステップS43b及びS44fが追加されており、サーバ装置2におけるステップS51及びS52それぞれがS51b及びS52bに置き換わっている。その他のステップについては、実施形態1の場合と同様であるため、説明の大部分を省略する。
【0153】
図23にて、携帯端末7は、先ず歯列を撮像する(S71)。具体的には、操作者が携帯端末7(図ではスマホと記載する)のアプリによって、
図22に示すような複数の態様の歯列を撮像する。撮像された歯列の画像を表す画像データは、一時的に記憶部72に記憶される。その後、携帯端末7は、操作者の操作を受け付けて情報処理装置1にログインし(S72)、情報処理装置1がログインを受け付ける(S11)。その後、ユーザの個人情報を入力して登録することにより、写真撮影が可能となる。
【0154】
写真撮影に際し、ユーザにブラシ台81a及び82aと同等の厚みの部材を噛ませて、歯ブラシ8aが歯列に装着された状態での位置関係が保たれるようにすることが好ましい。更に、アンドラゲージ(トレードマーク)のような咬合採得装置を用いて正確な顎間関係が画像に記録されるようにしてもよい。
【0155】
上述の咬合状態での撮像に代えて、シリコンやワックスシート等の咬合印記材に印記された印記状態をスキャナでスキャンした三次元のスキャンデータ(咬合データに含まれる)を生成してもよい。
【0156】
ログイン中に、携帯端末7は、データアップロード指示を情報処理装置1に送った(S73)後、先に撮像した画像の画像データ又は印記状態をスキャンしたスキャンデータ(何れも咬合データ)を情報処理装置1に送信する(S74)。情報処理装置1は、送信された咬合データをサーバ装置2にアップロードする(S13)。サーバ装置2は、先にアップロードされた3Dデータ及び新たにアップロードされた咬合データとユーザIDとを対応付けてユーザDB20(
図3参照)に記憶する(S22)。その後、携帯端末7は、操作者の操作を受け付けてログアウトし(S75)、処理を終了する。
【0157】
図24にて、携帯端末7は、情報処理装置1にログインした(S31)後に、情報処理装置1に3Dデータの取得指示を情報処理装置1に送信する(S32)。これを受信した情報処理装置1は、3Dデータをサーバ装置2に要求する(S42)。サーバ装置2は、要求に応じて、ユーザの3Dデータ及び該3Dデータに対応付けされた咬合データを送信し(S51b)、これらを情報処理装置1が取得する(S43b)。
【0158】
その後、携帯端末7が情報処理装置1に歯ブラシ8aの設計を指示した(S36)場合、情報処理装置1は、取得した咬合データに基づいてユーザの顎間関係を推定する(S44f)。情報処理装置1は、更に、取得した3Dデータ及び推定した顎間関係に基づいて、上下の顎の位置関係が最適となるように3D形状データを生成し(S45)、生成した3D形状データによって造形される歯ブラシ8aのブラシIDをサーバ装置2に送信する(S46)。
【0159】
サーバ装置2は、既に対応付けて記憶しているユーザの3Dデータ、咬合データ及びユーザIDに、ブラシIDを更に対応付けてユーザDB20に記憶する(S52b)。注文の指示(S37)以降の手順は、実施形態1の場合と同様である。
【0160】
以上のように本実施形態4によれば、ユーザの咬合状態を撮像することによって、咬合状態を表す画像データが予め生成されており、この咬合状態を表す画像データに基づいて、歯ブラシ8aを装着したユーザの顎間関係を推定する。その上で、取得した3Dデータ及び推定した顎間関係に基づいて上下の顎の位置関係が最適化されるように、歯ブラシ8aを一体的に形成する。従って、歯ブラシ8a全体の装着具合を、ユーザの噛み合わせに合わせて最適化することができる。
【0161】
なお、実施形態1及び4にあっては、少なくともユーザの3Dデータに基づいて歯ブラシ8aの3D形状データを生成したが、深層学習(ディープラーニング)によって学習された学習モデルを用いて、生成すべき3D形状データを決定するようにしてもよい。学習モデルは、歯列の3Dデータが入力された場合に、予め準備された複数パターン(Aパターン、Bパターン等の類型)の3D形状データのそれぞれにマッチする確率を出力するように学習されたものである。
【0162】
学習モデルを学習させるには、3Dデータと該3Dデータがマッチするパターンを示す情報とを含む訓練用の教師データを多数用意し、各教師データが学習モデルに入力された場合に、それぞれの3Dデータがマッチする3D形状データのパターンについて出力される確率が1に近づくように繰り返す。実際のユーザの3Dデータを学習済みの学習モデルに入力した場合、学習モデルが出力する各パターンについての確率のうち、最も確率が高いパターンを、生成すべき3D形状データのパターンとして決定することができる。
【0163】
学習モデルの入力に咬合データを更に加えて学習すれば、3Dデータ及び咬合データを学習済みの学習モデルに入力することにより、生成すべき3D形状データのパターンを更に的確に決定することができる。なお、3Dデータ(又は3Dデータと咬合データ)を入力した場合に、歯ブラシ8eのボクセルデータを出力する学習モデルを用いた場合は、出力されたボクセルデータを例えばSTL形式のデータに変換することにより、歯ブラシ8eのより精密な3D形状データを生成することができる。
【0164】
(実施形態5)
実施形態1から4が、歯ブラシ8aから8dの製造を行う形態であるのに対し、実施形態5は、歯ブラシの製造システムの一部を利用して、ユーザに歯ブラシの保守運用に関する情報の通知を行う形態である。通知された情報を受信した携帯端末7は、受信した情報に基づいて保守運用に関する表示を行う。
図25は、実施形態5に係る歯ブラシ製造システム100dの構成例を示す説明図である。
【0165】
歯ブラシ製造システム100dは、実施形態1の歯ブラシ製造システム100aと比較して、振動具800を備える歯ブラシ8eを更に含む。また、サーバ装置2には、歯ブラシ8eの使用履歴をユーザに対応付けて記憶するデータベースである使用履歴DB21が更に含まれている。その他の構成は、実施形態1の場合と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。歯ブラシ8eは、実施形態1の歯ブラシ8a若しくは8b、又は実施形態3の歯ブラシ8c若しくは8dと同等であり、ブラシ台81a、82a若しくは81b又はフレーム84と振動具800との機械的な接続が可能であるという違いがある。
【0166】
図26は、歯ブラシ8eの振動具800の構成例を示すブロック図である。振動具800は、制御部801、記憶部802、モータドライバ803及びブルートゥース通信部804と、モータドライバ803で駆動されるモータ805と、振動機構806とを備える。振動具800は、ブラシ台81a、82a若しくは81b又はフレーム84の外部に着脱可能に接続されていてもよいし、これらに内蔵されていてもよい。バッテリについては図示を省略する。
【0167】
制御部801は、CPU等のプロセッサを含む。制御部801は、例えばプロセッサ、記憶部802及びモータドライバ803を集積したワンチップのマイクロコンピュータとして構成してもよい。制御部801は、記憶部802に記憶されている制御プログラム802pに基づく制御を行う。
【0168】
記憶部802は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ及びSRAM等の書き替え可能なメモリを含む。ブルートゥース通信部804は、ブルートゥースの通信規格に準拠する無線通信によって、ブルートゥースのマスタと接続するためのインタフェースである。本実施形態5では、携帯端末7が備えるブルートゥース通信部78がマスタとなる。
【0169】
振動機構806は、モータ805の回転運動を変換して振動具800全体を振動させるものである。振動具800が振動することにより、該振動具800と機械的に接続されたブラシ台81a、82a若しくは81b又はフレーム84が振動し、これによってブラシ毛80又はブラシ毛80b若しくは80cが振動して、ユーザの歯列が磨ける。振動機構806による振動がユーザの歯列の奥まで届くように、ブラシ台81a、82a及び81bは、厚みが4mm程度確保されている。
【0170】
図27は、使用履歴DB21の構成例を示す説明図である。使用履歴DB21には、ユーザIDに対応付けて、使用開始日時、使用終了日時、累積使用回数及び累積使用時間が記憶される。日時には「年/月/日」に加えて「時:分」が含まれる。使用履歴DB21には、使用した時の振動具800の振動態様の設定値等が更に記憶されてもよい。
【0171】
図25に戻って、本実施形態5では、携帯端末7が、振動具800と無線通信を行って歯ブラシ8eの使用に関する使用情報を取得する。携帯端末7が使用情報を取得する都度、情報処理装置1の情報処理プログラム12pにより、使用情報がサーバ装置2にアップロードされて使用履歴DB21に累積的に記憶される。情報処理装置1は、例えば使用情報のアップロードの都度、サーバ装置2のユーザDB20から累積的な使用情報を取得して歯ブラシ8eの運用保守に関する分析を行い、歯ブラシ8eの交換時期に関する情報、歯磨剤のリフィルに関する情報等を携帯端末7に通知する。
【0172】
図28は、実施形態5に係る歯ブラシ製造システム100dで歯ブラシ8eの保守運用に関する情報を通知する手順を示すフローチャートである。
図28では、歯ブラシ8e、携帯端末7、情報処理装置1及びサーバ装置2における処理と、これらの間での信号/データの流れとを示す。歯ブラシ8eの処理は、不図示の電源スイッチによって振動具800の電源がオンされたときに開始され、電源がオフされたときに終了する。携帯端末7の処理は、情報処理装置1にアクセスする前に開始される。情報処理装置1及びサーバ装置2は、常時処理待ちの状態にあるものとする。
【0173】
図28にて、携帯端末7は歯ブラシ8eと通信接続し(S91)、これと同期して歯ブラシ8eが携帯端末7と通信接続する(S81)。その後、携帯端末7は、ユーザの操作を受け付けて情報処理装置1にログインし(S92)、情報処理装置1がログインを受け付ける(S101)。次いで、携帯端末7は、稼動分析を情報処理装置1に指示し(S93)、指示された情報処理装置1が、ユーザの顧客情報をサーバ装置2に要求する(S102)。サーバ装置2は、要求に応じてユーザの顧客情報をユーザDB20から読み出して送信する(S111)。顧客情報には、例えばユーザの関係者の情報が含まれている。
【0174】
一方、モータ805のオン・オフに応じて、歯ブラシ8eは、モータ・オン(S82)及びモータ・オフ(S83)の情報を携帯端末7に送信する。これらの情報には、モータ805を特定するモータIDが付加されている。以後、信号/データの受け渡し時にユーザID及びモータIDが付加されるものとする(図示せず)。これらの情報を受けて携帯端末7は、使用情報を情報処理装置1に送信する(S94)。使用情報には、歯ブラシ8eの使用期間(使用開始及び終了時刻)、累積使用回数及び累積使用時間が含まれる。情報処理装置1は、受信した使用情報をサーバ装置2にアップロードする(S103)。
【0175】
サーバ装置2は、アップロードされた使用情報を、ユーザIDに対応付けて使用履歴DB21(
図27参照)に累積的に記憶し(S112)、その時点の累積的な使用情報を情報処理装置1に送信する(S113)。情報処理装置1は、受信した累積的な使用情報に基づいて、歯ブラシ8eの交換時期に近いか否かを判定し(S104)、交換時期に近い場合(S104:YES)、交換時期に関する情報を携帯端末7に通知し(S105)、加えてユーザの関係者にもその旨を通知する(S106)。
【0176】
関係者への通知は、例えばネットワークNiを介してメールで通知すればよい。携帯端末7は、通知を受けて交換時期に関する表示を行う(S95)。歯ブラシ8eの交換時期に近いか否かは、累積的な使用情報から読み出した歯ブラシ8eの累積使用回数及び累積使用時間に基づいて判定すればよい。具体的には、累積使用回数が第1閾値以上である場合に交換時期に近いと判定するか、又は累積使用時間が第2閾値以上である場合に交換時期に近いと判定する。累積使用回数び累積使用時間それぞれに重みを付けて加算した加算値が第3閾値以上である場合に交換時期に近いと判定してもよい。
【0177】
なお、実施形態5にあっては、累積使用回数び/又は累積使用時間が所定の閾値以上であるか否かによって歯ブラシ8eの交換時期が近いと判定したが、深層学習(ディープラーニング)によって学習された学習モデルを用いて、交換時期に近いと判定してもよい。ここでの学習モデルは、ユーザが撮像した歯ブラシ8eの画像が入力された場合に、歯ブラシ8eの劣化度を出力するように学習されたものである。
【0178】
学習モデルを学習させるには、使用中の歯ブラシ8eの画像と該歯ブラシ8eの劣化度とを含む訓練用の教師データを多数用意し、各教師データが学習モデルに入力された場合に、それぞれの画像について出力される劣化度が教師データの劣化度に近づくように繰り返す。実際にユーザが撮像して情報処理装置1にアップロードされた歯ブラシ8eの画像を学習済みの学習モデルに入力した場合、学習モデルが出力する劣化度が第4閾値以上である場合に、歯ブラシ8eの交換時期が近いと判定することができる。学習モデルの入力に、教師データ用の歯ブラシ8eの累積使用時間を更に加えて学習すれば、ユーザの歯ブラシ8eの画像と、使用履歴DB21から取得した累積使用時間とを学習済みの学習モデルに入力することにより、交換時期が近いか否かを更に的確に判定することができる。
【0179】
歯ブラシ8eの交換時期に近くない場合(S104:NO)、情報処理装置1は、歯ブラシ8eの歯磨剤が残り少ない時期であるか否かを判定し(S107)、残り少ない場合(S107:YES)、歯磨剤のリフィル(追加購入)に関する情報を携帯端末7に通知し(S108)、加えてユーザの関係者にもその旨を通知する(S109)。歯磨剤が残り少なくない場合(S109:NO)、情報処理装置1は、上述の通知を行わない。携帯端末7は、通知を受けて歯磨剤のリフィルに関する表示を行う(S96)。その後、携帯端末7は、ユーザの操作を受け付けてログアウトし(S97)、処理を終了する。
【0180】
以上のように本実施形態5によれば、制御部801によって駆動制御されるモータ805がブラシ毛80又はブラシ毛80b若しくは80cを振動させるため、ユーザが歯ブラシ8eを咥えるだけで歯が磨ける。
【0181】
また、実施形態5によれば、ブルートゥース通信部804を介して、歯ブラシ8eの使用に関する使用情報を外部に送信することができる。
【0182】
更に、実施形態5によれば、情報処理装置1が携帯端末7を介して歯ブラシ8eの使用情報を取得の都度、取得した使用情報をユーザID及びブラシIDに対応付けてサーバ装置2のユーザDB20に累積的に記憶させ、累積された使用情報から導かれる歯ブラシ8eの交換時期に関する情報を、ブラシIDに対応付けて記憶してあるユーザIDで特定されるユーザに通知する。従って、ユーザは、ブラシ毛80又はブラシ毛80b若しくは80cが劣化する前に交換用の歯ブラシ8eを注文することができる。必要な場合は、ユーザが自ら注文することもできる。
【0183】
更に、実施形態5によれば、情報処理装置1が携帯端末7を介して歯ブラシ8eの使用情報を取得の都度、取得した使用情報をユーザID及びブラシIDに対応付けてサーバ装置2のユーザDB20に累積的に記憶させる。そして、累積された使用情報から導かれる歯磨剤の残量に基づいて、追加購入に関する情報を、ブラシIDに対応付けて記憶してあるユーザIDで特定されるユーザに通知する。これにより、ユーザは、歯磨剤を使い切る前に、歯磨剤のリフィルを注文することができる。
【0184】
更に、実施形態5によれば、ユーザに通知する情報を、ユーザの関係者にも通知するため、例えば、ユーザの歯ブラシ8eの保守を、関係者がサポートすることができる。
【0185】
更に、実施形態5によれば、ユーザの口腔内の印象を表す3Dデータに基づき、メタクリレート及びウレタンアクリレートを含む素材を用いて3Dプリンタ6により、少なくとも部分的に一体成形された歯ブラシ8eの振動具800から、歯ブラシ8eの使用情報を取得する都度、取得した使用情報を、ユーザID及びブラシIDと共に情報処理装置1へ送信する。情報処理装置1から歯ブラシ8eの保守運用に関する情報を受信した場合、受信した情報に基づいて保守運用に関する表示を行う。従って、例えば歯ブラシ8eの交換時期、歯磨剤の追加購入の案内、歯ブラシ8eの使用履歴等を歯ブラシ8eのユーザに通知することができる。
【0186】
(実施形態6)
本実施形態6は、ユーザが希望する保守運用に関する表示(以下、単に保守運用の表示ともいう)の選択が行え、更に、選択結果に基づく表示の中で振動具800の振動態様の選択及び歯の磨き残し部位の選択が行える形態である。実施形態6に係る歯ブラシ製造システムの構成は、実施形態5の場合と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して図示及びその説明を省略する。
【0187】
本実施形態6では、情報処理装置1から予めアプリプログラム72pがダウンロードされた携帯端末7と情報処理装置1とが協調して処理が行われる。ユーザが希望する保守運用の表示の選択画面(不図示)と、振動具800の振動態様の選択画面及び磨き残し部位の選択画面とは、ユーザの操作に応じて携帯端末7の表示部73に表示される。
【0188】
図29は、実施形態5に係る歯ブラシ製造システム100dで各種設定を受け付ける手順を示すフローチャートである。
図29では、歯ブラシ8e、携帯端末7、情報処理装置1及びサーバ装置2における処理と、これらの間での信号/データの流れとを示す。歯ブラシ8eは電源がオンであり、携帯端末7は、情報処理装置1にログインしているものとする。
【0189】
図29にて、携帯端末7は、ユーザの操作に応じて保守運用の表示の選択メニューを表示し(S121)、ユーザの選択、即ち、受信すべき保守運用に関する情報の選択を受け付ける(S122)。携帯端末7は、選択結果を情報処理装置1に送信し、これを受けた情報処理装置1は、使用情報をサーバ装置2に要求する(S131)。サーバ装置2は、要求に応じ、ユーザIDに対応付けて使用履歴DB21(
図27参照)に記憶した歯ブラシ8eの累積的な使用情報を送信する(S141)。
【0190】
使用情報を受信した情報処理装置1は、選択結果に応じた表示を行うための情報を生成し(S132)、生成した情報を携帯端末7に送信する(S133)。携帯端末7は、受信した情報に応じて、ユーザに選択された保守運用に関する表示、即ち、受信した保守運用に関する情報に基づく表示を行う(S124)。具体的には、例えば後述する
図30及び
図32に示す表示を行う。
【0191】
ステップS122でのユーザの選択に応じ、ステップS124での表示に代えて、携帯端末7は、例えば振動具800の振動態様の選択メニューを表示し(S125)、ユーザの更なる選択を受け付ける(S126)。携帯端末7は、選択結果を振動具800に送信し(S127)、これを受けた振動具800は、ユーザの選択結果に応じて振動態様を設定する(S84)。
【0192】
図30は、歯磨き及び歯ブラシ8eの履歴を示す画面の表示例である。
図30Aでは、歯磨きの履歴として歯磨き状況が表示される。歯磨き状況は、本日の状況、最近1週間の状況、又は過去25日間の状況を選択することができる。ここでは、今月分の日々の歯磨き回数が滑らかな線グラフで表示される。カーソルを任意の日に移動すればその日の回数が数値で表示される。
【0193】
図30Aの線グラフの表示が行われる際に、情報処理装置1は、例えばHTML(HyperText Markup Language )データとして、グラフの横軸及び1ヶ月分の日にちの数値を記述し、縦軸及び使用回数の数値を記述する。HTMLデータに代えて、React(JavaScriptのライブラリ)を用いてもよい。情報処理装置1は、更に、サーバ装置2によって使用履歴DB21から読み出された当該ユーザの累積的な使用情報に含まれる今月分のデータから1日毎の使用回数(使用開始日時及び使用終了日時のペアの個数)を抽出してグラフ上にプロットする点を記述する。情報処理装置1は、プロットした点を滑らかな曲線で結び、生成した全てのHTMLデータを携帯端末7に送信する。
【0194】
この場合、携帯端末7は、情報処理装置1で生成されたHTMLデータをブラウザで表示することにより、
図30Aのグラフを表示できる。別の方法として、
図30Aの線グラフの表示を行うための日々の使用回数を示す情報を情報処理装置1で生成し、これを受信した携帯端末7が
図30Aの線グラフの画像を生成するようにしてもよい。
【0195】
図30Bでは、歯ブラシ8eの履歴として、歯ブラシ8eの積算使用日数(~日目)及び使用回数(磨き回数)と、ブラシ毛80又はブラシ毛80b若しくは80cの劣化度(%値)が表示される。画面のボタンをクリックすることにより、交換ブラシの注文が可能である。使用日数は、当該ユーザについて使用履歴DB21から取得した使用開始日時及び使用終了日時のペアのうち、最古のペアと最新のペアの日にちの差から算出できる。使用回数は、当該ユーザについて使用履歴DB21から取得した累積使用回数そのものである。
【0196】
劣化度は、当該ユーザについて使用履歴DB21から取得した累積使用回数を所定の寿命使用回数で除した数値により算出される。使用履歴DB21から取得した累積使用時間を所定の寿命使用時間で除した数値により算出してもよい。この場合、画面に表示する歯ブラシ8eのブラシ毛80又はブラシ毛80b若しくは80cの毛先を、算出した劣化度に応じた表示にしてもよい。情報処理装置1は、これらの表示内容をHTMLデータとして記述し、これを受信した携帯端末7が
図30Bの表示を行う。
【0197】
図31は、振動具800の振動態様の選択画面の表示例である。歯磨き設定によって選択可能な振動態様は、振動パターン、上顎の(振動)強さ及び下顎の強さである。振動パターン及び振動の強さはそれぞれ複数段階の選択が可能である。選択された振動態様を示すデータは、歯ブラシ8eの振動具800に送信される。選択された振動態様を示すデータが情報処理装置1に送信されて使用履歴DB21に記憶されるようにした場合は、情報処理装置1が
図30Bに示す劣化度を算出する際に、例えば振動の強さの強/弱に応じて劣化度が大小となるようにしてもよい。
【0198】
図32は、磨き残し部位の選択画面の表示例である。画面の上部には、サーバ装置2に記憶されている歯ブラシ8eのユーザの3Dデータに基づく歯形が表示される。歯形の画像の生成は情報処理装置1で行ってよいし、携帯端末7で行ってもよい。画面の中央部には、上位の選択画面(不図示)で選択された上顎又は下顎の歯列のうちの連続する複数個の歯冠が表示される。
【0199】
これらの歯冠のうちの磨き残し部位が、上記ユーザ、歯科衛生士又は歯科医によって選択された場合、プラークコントロールレコード(プラークの付着部位の占有率を示す値)のチェック結果としてPCRが%値で表示される。PCRの算出は、携帯端末7にて行われるが、サーバ装置2にて算出されてもよい。その後、画面の下部に表示された「カルテを共有して歯ブラシの精度をアップする」ボタンが押下された場合、選択された磨き残し部位を示すデータが情報処理装置1に送信されてサーバ装置2に記憶される(フローの図示は省略)。この場合、記録されるデータは、上記のユーザを特定するユーザIDに対応付けられている。
【0200】
その後、例えば実施形態2の
図16に示すフローチャートに従って歯ブラシ8eが形成される場合、ステップS51にてユーザの3Dデータが情報処理装置1に送信されるときに、送信データに上述の磨き残し部位を示すデータを含まれるようにしてもよい。この場合、情報処理装置1は、ステップS44bで法線情報を改変する際に、サーバ装置2から取得した磨き残し部位を示すデータに基づいて、新たに形成する歯ブラシ8eによる歯の磨き残しが低減されるように改変することができる。
【0201】
以上のように本実施形態6によれば、歯ブラシ8eの保守運用に関してどの表示を行うかの選択を受け付け、選択結果を情報処理装置1に送信する。従って、選択された表示を行うための情報を情報処理装置1から受信して、選択に応じた表示を行うことができる。
【0202】
また、実施形態6によれば、振動具800をどのように振動させるかの選択を受け付け、選択結果を振動具800に送信する。従って、振動態様の設定が可能な振動具800を、選択に応じて設定することができる。
【0203】
更に、実施形態6によれば、画面の表示に応じて選択された歯の磨き残し部位に基づいてPCRを表示すると共に、磨き残し部位を示すデータを当該ユーザのユーザIDに対応付けて情報処理装置1に送信する。従って、ユーザは、磨き残しの割合を数値で把握することができる。また、歯の磨き残し部位を示すデータを、次回の歯ブラシ8eの形成に備えて情報処置装置1に接続されたサーバ装置2に記憶することができる。
【0204】
更に、実施形態6によれば、形成させた歯ブラシ8eを実際に使用したユーザの歯の磨き残し部位を示すデータを取得してユーザ別に記憶する。従って、ユーザの歯ブラシ8eを次回形成させる際に、従前の歯ブラシ8eによる歯の磨き残し部位を参照して設計に役立てることができる。
【0205】
更に、実施形態6によれば、ユーザの歯ブラシ8eを次回形成させる際に、従前の歯ブラシ8eによる磨き残し部位を参照して、例えばブラシ毛80の密度、向き、長さ等を調整することにより、新たに形成させる歯ブラシ8eによる歯の磨き残しが低減されるようにすることができる。
【0206】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0207】
100a、100b、100c、100d 歯ブラシ製造システム
1 情報処理装置
11 制御部
12 記憶部
12p 情報処理プログラム
13 通信部
14 サーバインタフェース
15 記録媒体
2 サーバ装置
20 ユーザDB
21 使用履歴DB
3、5 PC端末
4 スキャナ
6 3Dプリンタ
6b 植毛機
7 携帯端末
71 制御部
72 記憶部
72p アプリプログラム
73 表示部
74 操作部
75 撮像部
76 公衆無線通信部
77 Wi-Fi通信部
78 ブルートゥース通信部
79 記録媒体
8a、8b、8aa、8a1、8a2、8bb、8c、8d 歯ブラシ
80、80b、80c ブラシ毛
81a、81b、82a、81aa、82aa、81bb ブラシ台
810 連結部
813 噴出口
83a 植毛シート
830 シート
83b ブラシシート
84 フレーム
800 振動具
801 制御部
802 記憶部
802p 制御プログラム
803 モータドライバ
804 ブルートゥース通信部
805 モータ
806 振動機構
810 連結部
811 ヒンジ
812 弾性部材
9a 印象
9b 模型
Ni ネットワーク
Nr 携帯電話網