(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173889
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】遠心圧縮機のケーシング装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20221115BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
F04D29/44 X
F04D29/44 P
F04D29/66 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079933
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 由博
(72)【発明者】
【氏名】岩切 雄二
(72)【発明者】
【氏名】岩田 大武
(72)【発明者】
【氏名】田中 祥太
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB27
3H130AB47
3H130AC30
3H130BA03A
3H130BA66A
3H130CA02
3H130CA05
3H130DG02X
3H130DG04X
(57)【要約】
【課題】アクチュエータを用いることなく、サージの抑制と圧縮効率の確保を両立させる。
【解決手段】遠心圧縮機のケーシング装置10は、インペラ26を収容し、インペラ26の回転により吸い込まれる気体を圧縮するケーシング12と、ケーシング12のうち、気体の吸込口32を形成するシュラウド壁14と、シュラウド壁14内に設けられ、インペラ26の軸方向周りに円環状に形成されたトリートメント空洞部16と、トリートメント空洞部16の流入部18と、トリートメント空洞部16の流出部20と、トリートメント空洞部16に設けられ、流入部18を開閉可能なシャッタ22と、シャッタ22を閉方向Cに付勢し、サージから離れた運転状態では流入部18を閉塞し、サージに近い運転状態では流入部18での気体の圧力により弾性変形してシャッタ22の開方向Oへの変位を許容する圧縮ばね24(付勢部材)と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラを収容し、前記インペラの回転により吸い込まれる気体を圧縮するケーシングと、
前記ケーシングのうち、前記気体の吸込口を形成するシュラウド壁と、
前記シュラウド壁内に設けられ、前記インペラの軸方向周りに円環状に形成されたトリートメント空洞部と、
前記トリートメント空洞部と前記吸込口のインペラ設置位置側とを連通させる流入部と、
前記トリートメント空洞部と前記吸込口の前記流入部より上流側とを連通させる流出部と、
前記トリートメント空洞部に設けられ、前記インペラの軸方向周りに円環状に形成され、前記流入部を開閉可能なシャッタと、
前記シャッタを閉方向に付勢し、サージから離れた運転状態では前記流入部を閉塞し、サージに近い運転状態では前記流入部での気体の圧力により弾性変形して前記シャッタの開方向への変位を許容する付勢部材と、
を有する遠心圧縮機のケーシング装置。
【請求項2】
前記シャッタには、前記流入部での気体の圧力を前記シャッタの開方向に受ける圧力作用部が設けられている請求項1に記載の遠心圧縮機のケーシング装置。
【請求項3】
前記シャッタの外周部には、前記シャッタが開くことで前記トリートメント空洞部に流入した気体の圧力を前記シャッタの開方向に受けるフィンが設けられている請求項1又は請求項2に記載の遠心圧縮機のケーシング装置。
【請求項4】
前記シャッタの周方向における前記フィンの両側には、それぞれ前記フィンの開閉方向に延びる第1仕切り部及び第2仕切り部が設けられている請求項3に記載の遠心圧縮機のケーシング装置。
【請求項5】
前記第1仕切り部は、前記トリートメント空洞部の周方向における気体の流れの上流側に位置し、
前記第2仕切り部は、該流れの下流側に位置し、
前記第1仕切り部の前記シャッタの閉方向側の端縁と、前記トリートメント空洞部のうち前記シャッタの閉方向側の内壁との間隙は、前記第2仕切り部の前記シャッタの閉方向側の端縁と前記内壁との間隙よりも大きい請求項4に記載の遠心圧縮機のケーシング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心圧縮機のケーシング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機においては、圧縮する気体の流量が低下するとインペラが失速して過回転(サージ現象)が発生するため、作動流量(作動領域)に下限がある。このサージを抑制して作動領域を拡大するために、ケーシングにトリートメント空洞部を設け、インペラの下流側から上流側に気体を循環させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、サージから遠い作動領域においては、気体がトリートメント空洞部を通じて循環すると圧縮効率が低下するので、これを抑制するため、トリートメント空洞部の上流補助通路の開口部を運転状態に応じて開閉する技術が開示されている(特許文献2参照)。具体的には、遠心圧縮機の作動点がサージ近傍域にあるときに上流補助通路の開口部を開き、かつ遠心圧縮機の作動点が設計点近傍域(ピーク圧力比近傍域)にあるときに上流補助通路の開口部を閉じるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-289197号公報
【特許文献2】特開2009-209858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献2に記載の従来例では、上流補助通路の開口部を能動的に開閉するために、アクチュエータやセンサを備えたシャッター移動装置が用いられている。しかしながら、アクチュエータやセンサを用いると装置が複雑になり、製造コストが増加する。
【0006】
本発明は、アクチュエータを用いることなく、サージの抑制と圧縮効率の確保を両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る遠心圧縮機のケーシング装置は、インペラを収容し、前記インペラの回転により吸い込まれる気体を圧縮するケーシングと、前記ケーシングのうち、前記気体の吸込口を形成するシュラウド壁と、前記シュラウド壁内に設けられ、前記インペラの軸方向周りに円環状に形成されたトリートメント空洞部と、前記トリートメント空洞部と前記吸込口のインペラ設置位置側とを連通させる流入部と、前記トリートメント空洞部と前記吸込口の前記流入部より上流側とを連通させる流出部と、前記トリートメント空洞部に設けられ、前記インペラの軸方向周りに円環状に形成され、前記流入部を開閉可能なシャッタと、前記シャッタを閉方向に付勢し、サージから離れた運転状態では前記流入部を閉塞し、サージに近い運転状態では前記流入部での気体の圧力により弾性変形して前記シャッタの開方向への変位を許容する付勢部材と、を有する。
【0008】
この遠心圧縮機のケーシング装置では、トリートメント空洞部と吸込口とが流入部と流出部とにより連通しており、トリートメント空洞部における流入部には、流入部を開閉可能なシャッタが設けられている。このシャッタは付勢部材により閉方向に付勢されており、サージから離れた運転状態、換言すれば圧縮効率が高い領域では、流入部を閉塞している。この状態ではトリートメント空洞部を通じた気体の還流が生じないため、圧縮効率の低下が抑制される。
【0009】
一方、サージに近い運転状態では流入部での気体の圧力の増大に伴い付勢部材が弾性変形してシャッタの開方向への変位を許容する。シャッタが開くことで流入部からトリートメント空洞部に気体が流入し、流出部から流出して吸込口に還流する。これにより、サージが抑制される。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係る遠心圧縮機のケーシング装置において、前記シャッタには、前記流入部での気体の圧力を前記シャッタの開方向に受ける圧力作用部が設けられている。
【0011】
この遠心圧縮機のケーシング装置では、流入部での気体の圧力をシャッタの圧力作用部で受ける。圧力作用部に作用する力が付勢部材の付勢力を上回ったとき、付勢部材が弾性変形してシャッタが開き、気体が流入部からトリートメント空洞部に流入する。
【0012】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る遠心圧縮機のケーシング装置において、前記シャッタの外周部には、前記シャッタが開くことで前記トリートメント空洞部に流入した気体の圧力を前記シャッタの開方向に受けるフィンが設けられている。
【0013】
この遠心圧縮機のケーシング装置では、流入部での気体の圧力によりシャッタが開いたとき、トリートメント空洞部に流入した気体の圧力を、シャッタの外周部のフィンで受けることができる。このときフィンに作用する力により、シャッタの開方向への変位が促進される。
【0014】
第4の態様は、第3の態様に係る遠心圧縮機のケーシング装置において、前記シャッタの周方向における前記フィンの両側には、それぞれ前記フィンの開閉方向に延びる第1仕切り部及び第2仕切り部が設けられている。
【0015】
遠心圧縮機では、インペラの回転により気体が圧縮されることから、トリートメント空洞部に流入した気体はシャッタの周方向に流れる。この遠心圧縮機のケーシング装置では、シャッタの周方向におけるフィンの両側に第1仕切り部と第2仕切り部とが設けられているので、トリートメント空洞部に流入した気体の一部は、第1仕切り部と第2仕切り部の間へ流入する。したがって、この気体の圧力を、シャッタの外周部のフィンでより効率的に受けることができる。このときフィンに作用する力により、シャッタの開方向への変位が更に促進される。
【0016】
第5の態様は、第4の態様に係る遠心圧縮機のケーシング装置において、前記第1仕切り部が、前記トリートメント空洞部の周方向における気体の流れの上流側に位置し、前記第2仕切り部が、該流れの下流側に位置し、前記第1仕切り部の前記シャッタの閉方向側の端縁と、前記トリートメント空洞部のうち前記シャッタの閉方向側の内壁との間隙が、前記第2仕切り部の前記シャッタの閉方向側の端縁と前記内壁との間隙よりも大きい。
【0017】
この遠心圧縮機のケーシング装置では、第1仕切り部のシャッタの閉方向側の端縁とトリートメント空洞部の内壁との間隙が、第2仕切り部のシャッタの閉方向側の端縁と上記内壁との間隙よりも大きい。第1仕切り部は、トリートメント空洞部の周方向における気体の流れの上流側に位置し、第2仕切り部は、上記流れの下流側に位置する。したがって、トリートメント空洞部に流入した気体の一部は、シャッタの径方向からだけでなく、シャッタの周方向からも第1仕切り部と第2仕切り部の間へ流入する。フィンに作用する気体の力が増大するので、シャッタの開方向への変位がより一層促進される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アクチュエータを用いることなく、サージの抑制と圧縮効率の確保を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る遠心圧縮機のケーシング装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2】本実施形態に係る遠心圧縮機のケーシング装置の概略構成を示す拡大断面図である。
【
図3】シャッタのフィンとその周囲の構成を示す拡大平面図である。
【
図4】(A)は、シャッタを示す斜視図である。(B)は、シャッタの要部を示す部分破断斜視図である。
【
図5】ケーシングの本体部の要部を示す部分破断斜視図である。
【
図6】ケーシングの前部の要部を示す部分破断斜視図である。
【
図7】シャッタにより流入部が閉塞されている状態を示す、
図3における7-7矢視断面図である。
【
図8】
図7において、シャッタが開き始めた状態を示す断面図である。
【
図9】気体の圧力がフィンに作用した状態を示す、
図3における9-9矢視断面図である。
【
図10】シャッタにより流入部が閉塞されている状態を示す拡大斜視図である。
【
図11】
図10において、シャッタが開き始めた状態を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。
【0021】
図1、
図2において、本実施形態に係る遠心圧縮機1のケーシング装置10は、ケーシング12と、シュラウド壁14と、トリートメント空洞部16と、流入部18と、流出部20と、シャッタ22と、付勢部材の一例としての圧縮ばね24と、を有する。
【0022】
ケーシング12は、インペラ26を収容し、インペラ26の回転により吸い込まれる気体(例えば空気)を圧縮する部材である。このケーシング12は、インペラ26の外周部にデュフューザ部28を介してスクロール状の圧縮流路30を有している。シュラウド壁14は、ケーシング12のうち、気体の吸込口32を形成する部位であり、デュフューザ部28から前方へ延びている。ここで「前方」とは、気体の流入方向(矢印A方向)と逆方向である。トリートメント空洞部16は、シュラウド壁14内に設けられ、インペラ26の軸方向周りに円環状に形成されている。ケーシング12は、トリートメント空洞部16の位置でインペラ26側と吸込口32側とに二分割されている。以下、インペラ26側を本体部34と呼び、吸込口32側を前部36と呼ぶこととする。
【0023】
本体部34におけるトリートメント空洞部16とインペラ26との間には、インペラ26と同心の円筒状の壁部38が形成されている。壁部38は、シュラウド壁14の一部である。壁部38の外周面は、トリートメント空洞部16の径方向内側面を構成している。
【0024】
流入部18は、トリートメント空洞部16と吸込口32のインペラ26設置位置側とを連通させる部位である。この流入部18は、壁部38と、シュラウド壁14のうち壁部38よりデュフューザ部28側の部分との間に形成されている。また、流入部18は、ケーシング12の周方向に断続的に形成されている。換言すれば、壁部38は、流入部18のない部分で、デュフューザ部28側のシュラウド壁14に支持されている。
【0025】
流出部20は、トリートメント空洞部16と吸込口32の流入部18より上流側とを連通させる部位である。ケーシング12の前部36におけるシュラウド壁14は、気体の流入方向(矢印A方向)において、本体部34の壁部38に対し、ケーシング12の周方向の全体にわたって離れている。この間隙が流出部20となっている。
【0026】
シャッタ22は、トリートメント空洞部16に設けられ、インペラ26の軸方向周りに円環状に形成され、流入部18を開閉可能な弁である。シャッタ22には、流入部18での気体の圧力をシャッタ22の開方向Oに受ける圧力作用部としての段差22Aが設けられている。
図1から
図4、
図9から
図11において、シャッタ22の外周部には、シャッタ22が開くことでトリートメント空洞部16に流入した気体の圧力をシャッタ22の開方向Oに受けるフィン22Bが設けられている。
【0027】
図4(B)、
図7に示されるように、シャッタ22におけるフィン22Bのない部分の断面形状は、厚肉部22Cと薄肉部22Dにより、略L字形とされている。厚肉部22Cは、壁部38に近接している。シャッタ22により流入部18が閉塞された状態において、薄肉部22Dは、流入部18よりシャッタ22の開方向Oの前方まで延び、薄肉部22Dと壁部38との間に間隙42が形成されている。段差22Aは、シャッタ22の内面側における厚肉部22Cと薄肉部22Dの境界に形成されている。
【0028】
ここで、インペラ26の回転に起因するトリートメント空洞部16の周方向における気体の流れをFとする。そうすると、薄肉部22Dにおけるフィン22Bの気体の流れFの下流側近傍には、切欠き22Eが形成されている。この切欠き22Eは、シャッタ22と後述する第2仕切り部52との干渉を避けるために設けられている。
【0029】
図4(A)に示されるように、フィン22Bは、シャッタ22の周方向の例えば3箇所に形成され、シャッタ22の径方向に対し、気体の流れFの下流側に傾斜して延びている。また、フィン22Bは、例えばシャッタ22の開方向Oの前方側端部に設けられている。フィン22Bの先端は、トリートメント空洞部16の径方向外側面に近接している。
【0030】
図3、
図5、
図10、
図11において、シャッタ22の周方向におけるフィン22Bの両側には、それぞれフィン22Bの開閉方向に延びる第1仕切り部51及び第2仕切り部52が、フィン22Bに近接して設けられている。第1仕切り部51及び第2仕切り部52は、ケーシング12の本体部34側と前部36側にそれぞれ板状に設けられ(
図5、
図6)、前部36が本体部34に組み付けられたときに端面同士が接して、例えば板状の第1仕切り部51及び第2仕切り部52を構成するようになっている。第1仕切り部51は、トリートメント空洞部16の周方向における気体の流れFの上流側に位置している。第2仕切り部52は、該流れFの下流側に位置している。
【0031】
図10、
図11に示されるように、第1仕切り部51のシャッタ22の閉方向C側の端縁51Aと、トリートメント空洞部16のうちシャッタ22の閉方向C側の内壁44との間隙は、第2仕切り部52のシャッタ22の閉方向C側の端縁52Aと内壁44との間隙よりも大きい。なお、本実施形態では、第2仕切り部52のシャッタ22の端縁52Aが内壁44に接近又は結合されており、端縁52Aと内壁44との間隙がほとんど存在しない。一方、第1仕切り部51の端縁51Aと内壁44との間に、間隙が明確に形成されている。したがって、トリートメント空洞部16に入った気体が、第1仕切り部51の端縁51Aと内壁44との間隙を通じて、第1仕切り部51、第2仕切り部52、フィン22Bの間に流入するようになっている。
【0032】
図1、
図7から
図9において、圧縮ばね24は、シャッタ22を閉方向Cに付勢する部材であり、サージから離れた運転状態では流入部18を閉塞し、サージに近い運転状態では流入部18での気体の圧力により弾性変形してシャッタ22の開方向Oへの変位を許容するようになっている。この圧縮ばね24は、シャッタ22と、ケーシング12の前部36に設けられた柱状の台座46(
図6も参照)との間で伸縮するように取り付けられている。また、シャッタ22と台座46の間には、圧縮ばね24と並列にダンパ40が取り付けられている。このダンパ40は、シャッタ22の振動を抑制するための部材である。なお、
図10、
図11では、圧縮ばね24及びダンパ40の図示を省略している。また、ダンパ40を省略した構成であってもよい。
【0033】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。
図1、
図2において、本実施形態に係る遠心圧縮機のケーシング装置10では、トリートメント空洞部16と吸込口32とが流入部18と流出部20とにより連通している。トリートメント空洞部16における流入部18には、流入部18を開閉可能なシャッタ22が設けられている。
図7にも示されるように、シャッタ22は圧縮ばね24により閉方向Cに付勢されており、サージから離れた運転状態では流入部18を閉塞している。この状態ではトリートメント空洞部16を通じた気体の還流が生じないため、圧縮効率の低下が抑制される。
【0034】
一方、
図8に示されるように、サージに近い運転状態では流入部18での気体の圧力の増大に伴い圧縮ばね24が弾性変形してシャッタ22の開方向Oへの変位を許容する。具体的には、流入部18での気体の圧力をシャッタ22の段差22Aで受ける。段差22Aに作用する力が圧縮ばね24の付勢力を上回ったとき、圧縮ばね24が弾性変形してシャッタ22が開き、気体が流入部18からトリートメント空洞部16に流入する(矢印B方向)。この気体は、流出部20から流出して吸込口32に還流する。これにより、サージが抑制される。
【0035】
更に、
図9、
図11に示されるように、流入部18での気体の圧力によりシャッタ22が開いたとき、トリートメント空洞部16に流入した気体の圧力を、シャッタ22の外周部のフィン22Bで受けることができる。ここで、シャッタ22の周方向におけるフィン22Bの両側に第1仕切り部51と第2仕切り部52とが設けられているので、トリートメント空洞部16に流入した気体の一部は、第1仕切り部51と第2仕切り部52の間へ矢印B方向に流入する。
【0036】
また、遠心圧縮機1では、インペラ26の回転により気体が圧縮されることから、トリートメント空洞部16に流入した気体はシャッタ22の周方向に流れる(気体の流れF)。第1仕切り部51のシャッタ22の閉方向C側の端縁51Aとトリートメント空洞部16の内壁44との間隙が、第2仕切り部52のシャッタ22の閉方向C側の端縁52Aと上記内壁44との間隙よりも大きい。第1仕切り部51は、トリートメント空洞部16の周方向における気体の流れFの上流側に位置し、第2仕切り部52は、上記流れFの下流側に位置する。
【0037】
したがって、トリートメント空洞部16に流入した気体の一部は、シャッタ22の径方向から(矢印B方向)だけでなく、シャッタ22の周方向からも第1仕切り部51と第2仕切り部52の間へ流入する(気体の流れF)。これにより、気体の圧力を、シャッタ22の外周部のフィン22Bで効率的に受けることができる。またこれによって、フィン22Bに作用する気体の力(揚力)が増大するので、シャッタ22の開方向Oへの変位が促進される。また、第1仕切り部51と第2仕切り部52を設けることで小さなフィン22Bで大きな揚力を発生させることができる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、アクチュエータを用いることなく、サージの抑制と圧縮効率の確保を両立させることができる。
【0039】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0040】
圧力作用部の例として段差22Aを挙げたが、圧力作用部はこれに限られず、流入部18での気体の圧力をシャッタ22の開方向に受けることができる構造であれば、他の構成であってもよい。
【0041】
シャッタ22がフィン22Bを有するものとしたが、フィン22Bを有しない構成であってもよい。また、第1仕切り部51の端縁51Aと内壁44との間隙が、第2仕切り部52の端縁52Aと内壁44との間隙と同等以下であってもよい。更に、第2仕切り部52を設け、第1仕切り部51を設けない構成でもよい。また、第1仕切り部51及び第2仕切り部52の双方を設けない構成でもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 遠心圧縮機のケーシング装置
12 ケーシング
16 トリートメント空洞部
18 流入部
20 流出部
22 シャッタ
22A 段差(圧力作用部)
22B フィン
24 圧縮ばね(付勢部材)
26 インペラ
32 吸込口
44 内壁
51 第1仕切り部
52 第2仕切り部
C 閉方向
F 気体の流れ
O 開方向