(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173897
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】ゴルフクラブセット
(51)【国際特許分類】
A63B 53/00 20150101AFI20221115BHJP
A63B 53/04 20150101ALI20221115BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20221115BHJP
【FI】
A63B53/00 A
A63B53/04 A
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079946
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】荒牧 知孝
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH01
2C002CH06
2C002MM04
2C002SS04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アドレス時の違和感を小さくすることができるゴルフクラブセットを提供する。
【解決手段】ゴルフクラブセットSであって、第1のゴルフクラブ101と、第1のゴルフクラブ101よりも大きいロフト角β2を有する第2のゴルフクラブ102のそれぞれは、ウッド型のゴルフクラブヘッド1と打撃フェース2aを含む。前記ゴルフクラブが水平面に基準状態で置かれたときに、打撃フェース2aは、フェース中心FCと、フェース中心を通るフェース垂直断面において、フェース中心に引いた接線と、水平面と直交する垂直線との間の角度であるロフト角β1、β2と、フェース垂直断面において、フェース中心FCと打撃フェース2aの下側の周縁Eとの間のフェース下部ロール2rとを備える。第2のゴルフクラブ102のフェース下部ロール2rの曲率半径R2が、第1のゴルフクラブ101のフェース下部ロール2rの曲率半径R1よりも小さい。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブセットであって、
第1のゴルフクラブと、前記第1のゴルフクラブよりも大きいロフト角を有する第2のゴルフクラブとを含む複数のゴルフクラブを含み、
前記複数のゴルフクラブのそれぞれは、ウッド型のゴルフクラブヘッドを含み、
前記ゴルフクラブヘッドのそれぞれは、ボールを打撃する打撃フェースを含み、
前記ゴルフクラブが水平面に基準状態で置かれたときに、前記打撃フェースは、
フェース中心と、
前記フェース中心を通るフェース垂直断面において、前記フェース中心に引いた接線と前記水平面と直交する垂直線との間の角度である前記ロフト角と、
前記フェース垂直断面において、前記フェース中心と前記打撃フェースの下側の周縁との間の輪郭線がヘッド外方に凸の円弧状をなすフェース下部ロールとを備え、
前記第2のゴルフクラブの前記フェース下部ロールの曲率半径が、前記第1のゴルフクラブの前記フェース下部ロールの曲率半径よりも小さい、
ゴルフクラブセット。
【請求項2】
前記フェース垂直断面において、前記第1のゴルフクラブ及び前記第2のゴルフクラブのそれぞれは、シャフト軸中心線からリーディングエッジまでのヘッド前後方向の距離である第1距離を備え、
前記第1のゴルフクラブの前記第1距離と、前記第2のゴルフクラブの前記第1距離との差が3.0mm以下である、請求項1に記載のゴルフクラブセット。
【請求項3】
前記フェース垂直断面において、前記第1のゴルフクラブ及び前記第2のゴルフクラブのそれぞれは、シャフト軸中心線から前記打撃フェースの上側の周縁までのヘッド前後方向の距離である第2距離を備え、
前記第1のゴルフクラブの前記第2距離と、前記第2のゴルフクラブの前記第2距離との差が5.0mm以下である、請求項1又は2に記載のゴルフクラブセット。
【請求項4】
前記ゴルフクラブヘッドが、フェアウエイウッド又はハイブリッドである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゴルフクラブセット。
【請求項5】
前記ゴルフクラブヘッドのそれぞれは、ヘッド上下方向の厚さが40mm以下である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のゴルフクラブセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブセットに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ロフト角が異なる複数の番手により構成されたゴルフクラブを有するゴルフクラブセットが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴルフプレー中、ゴルファは、各ショットの状況に応じて、複数のゴルフクラブの中から最適なロフト角のゴルフクラブを順次選択してボールを打撃する。また、ゴルフクラブをアドレスする際、ゴルファは、ボールを直接打撃することになる打撃フェースを上方から注視するが、打撃フェースの見え方はロフト角によって異なる。すなわち、ロフト角が小さいゴルフクラブでは、打撃フェースのヘッド前後方向の長さが小さく見える一方、ロフト角が大きいゴルフクラブでは、打撃フェースのヘッド前後方向の長さが大きく見える。このように、ゴルフクラブ毎に打撃フェースの見え方が異なると、ゴルファは、アドレス時に違和感を覚え、構えにくいという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、アドレス時の違和感を軽減して構えやすいゴルフクラブセットを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ゴルフクラブセットであって、第1のゴルフクラブと、前記第1のゴルフクラブよりも大きいロフト角を有する第2のゴルフクラブとを含む複数のゴルフクラブを含み、前記複数のゴルフクラブのそれぞれは、ウッド型のゴルフクラブヘッドを含み、前記ゴルフクラブヘッドのそれぞれは、ボールを打撃する打撃フェースを含み、前記ゴルフクラブヘッドが水平面に基準状態で置かれたときに、前記打撃フェースは、フェース中心と、 前記フェース中心を通るフェース垂直断面において、前記フェース中心に引いた接線と前記水平面と直交する垂直線との間の角度である前記ロフト角と、前記フェース垂直断面において、前記フェース中心と前記打撃フェースの下側の周縁との間の輪郭線がヘッド外方に凸の円弧状をなすフェース下部ロールとを備え、前記第2のゴルフクラブの前記フェース下部ロールの曲率半径が、前記第1のゴルフクラブの前記フェース下部ロールの曲率半径よりも小さい、ゴルフクラブセットである。
【0007】
本発明の他の態様では、前記フェース垂直断面において、前記第1のゴルフクラブ及び前記第2のゴルフクラブのそれぞれは、シャフト軸中心線からリーディングエッジまでのヘッド前後方向の距離である第1距離を備え、前記第1のゴルフクラブの前記第1距離と、前記第2のゴルフクラブの前記第1距離との差が3.0mm以下とされても良い。
【0008】
本発明の他の態様では、前記フェース垂直断面において、前記第1のゴルフクラブ及び前記第2のゴルフクラブのそれぞれは、シャフト軸中心線から前記打撃フェースの上側の周縁までのヘッド前後方向の距離である第2距離を備え、前記第1のゴルフクラブの前記第2距離と、前記第2のゴルフクラブの前記第2距離との差が5.0mm以下とされても良い。
【0009】
本発明の他の態様では、前記ゴルフクラブヘッドが、フェアウエイウッド又はハイブリッドであっても良い。
【0010】
本発明の他の態様では、前記ゴルフクラブヘッドのそれぞれは、ヘッド上下方向の厚さが40mm以下であっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴルフクラブセットは、上記の構成を採用したことにより、ロフト角が異なるゴルフクラブであっても、アドレス時の違和感が軽減され、ひいては構えやすい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態のゴルフクラブセットに含まれるゴルフクラブの一例を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態のゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図3】本実施形態のゴルフクラブヘッドの平面図である。
【
図4】フェース垂直断面図を示す
図3のIV-IV線断面図である。
【
図5】打撃フェースの周縁を説明するためのゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図6】打撃フェースの周縁を説明するための
図6のs1断面図である。
【
図8】第1及び第2のゴルフクラブのそれぞれのゴルフクラブヘッドのフェース垂直断面図である。
【
図9】第1及び第2のゴルフクラブの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態のゴルフクラブセットは、複数のゴルフクラブを含む。これらのゴルフクラブは、例えば、共通のブランド名及び/又はコンセプトの下で商品展開された一連のゴルフクラブ群を構成する。ゴルフクラブセットの販売形態は、特に制限されるものではない。したがって、複数のゴルフクラブが、必ずしも同時に販売される必要はなく、個別に販売されるものであってもよい。
【0014】
図9に示されるように、本実施形態のゴルフクラブセットSは、少なくとも、第1のゴルフクラブ101と、第1のゴルフクラブ101よりも大きいロフト角を有する第2のゴルフクラブ102とを含む。
【0015】
図1~
図3は、ゴルフクラブの構造を説明する例として、第1のゴルフクラブ101の斜視図、正面図及び平面図をそれぞれ示す。ただし、第2のゴルフクラブ102も、本質的には、第1のゴルフクラブ101と同様の構造を備えるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0016】
図1~3に示されるように、第1のゴルフクラブ101は、ウッド型のゴルフクラブヘッド(以下、単に、「ヘッド」ということがある。)1と、シャフト10とを含む。
【0017】
[基準状態]
図1~
図3において、第1のゴルフクラブ101は、基準状態に置かれている。本明細書において、ゴルフクラブの「基準状態」とは、ヘッド1が、当該ヘッド1に設定されたライ角α(
図2)及びロフト角で水平面HPに置かれた状態である。
図3に示されるように、基準状態では、シャフト10のシャフト軸中心線CLが、水平面HPと直角な基準垂直面VP内に配された状態で、ヘッド1がライ角α及びロフト角に保持される。本明細書において、特に言及されていない場合、ヘッド1は、この基準状態に置かれているものとされる。
【0018】
[ヘッドの方向]
図3に示されるように、ヘッド1の基準状態において、基準垂直面VPに直交する方向xがヘッド前後方向とされる。ヘッド前後方向に関して、ボールを打撃するフェース2の側が前側とされ、その反対側が後側とされる。また、基準垂直面VP及び水平面HPにともに平行な方向yは、ヘッド1のトウ・ヒール方向とされる。さらに、水平面HPに直交する方向zが、ヘッド1の上下方向として定義される。
【0019】
[ヘッドの基本構造]
図4は、
図3のIV-IV線の部分断面図を示す。
図1~
図4に示されるように、ヘッド1は、フェース2、クラウン3、ソール4、ホーゼル5、トウT、及び、ヒールHを含み、例えば、内部に中空部iが設けられている。
【0020】
本実施形態のヘッド1は、例えば、金属材料を用いて構成されている。金属材料としては、特に限定されないが、例えば、純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、タングステン-ニッケル合金等が採用され得る。ヘッド1の一部(例えば、クラウン3)が、繊維強化樹脂等の非金属材料で作られても良い。
【0021】
本実施形態のヘッド1は、例えば、フェアウエイウッド又はハイブリッドとして構成される。これらのヘッド1は、例えば、13~35度のロフト角、200g以上のヘッド重量、200cc以下のヘッド体積、及び、40mm以下のヘッド上下方向の厚さ2H(
図4参照)を備えるのが好ましい。なお、
図1~
図4のヘッド1は、好ましい態様として、ハイブリッドが例示されている。
【0022】
[フェース]
図4に示されるように、フェース2は、ボールを打撃するための表面である打撃フェース2aと、中空部iに面するフェース内面2iとを備える。
【0023】
[クラウン]
クラウン3は、ヘッド上面を形成するように、フェース2からヘッド後方に延びている。クラウン3は、例えば、ヘッド平面図で見える部分からフェース2を除いた部分である。クラウン3のヒール側には、ホーゼル5が設けられている。ホーゼル5には、クラブシャフト(図示省略)を固定するためのシャフト差込孔5aが形成されている。
【0024】
[ソール]
ソール4は、ヘッド底面を形成するように、フェース2からヘッド後方に延びている。ソール4は、例えば、ヘッド底面図で見える部分である。
【0025】
[打撃フェースの周縁]
打撃フェース2aは、例えば、ヘッド外側に向かって滑らかに凸となるような三次元曲面で構成される。打撃フェース2aには、フェースラインと呼ばれるトウ・ヒール方向に延びる複数本の溝が設けられているが、本実施形態の図面からは省略されている。
【0026】
打撃フェース2aは、その周縁Eによって囲まれた領域として画定される。本明細書において、打撃フェース2aの周縁Eは、次のように定義される。まず、
図5に示されるように、ヘッド重心CGとスイートスポットSSとを結ぶ法線Nを含む各断面s1、s2、s3…が特定される。なお、スイートスポットSSは、ヘッド重心CGから打撃フェース2aに引いた法線Nが打撃フェース2aと交差する点である。
【0027】
次に、
図6に示されるように、前記各断面s1、s2、s3…において、ヘッド外面側の輪郭線Lfの曲率半径rがスイートスポットSS側からフェース外側に向かって初めて200mmとなる位置Peを求め、これらの位置Peを連ねたものが打撃フェース2aの周縁Eとされる。また、本明細書において、ある曲線上の任意の点の「曲率半径」は、その点と、その点の一方側に1mmを隔てた曲線上の点と、その点の他方側に1mmを隔てた曲線上の点との、3点を通る単一円の半径として求められる。これらの「1mm」は、当該曲線に沿った道のり距離である。
【0028】
[フェース中心]
打撃フェース2aは、フェース中心FC(
図2等参照)を備える。本明細書において、フェース中心FCは次のように決定される。まず、ヘッド1の上下方向及びトウ・ヒール方向において、打撃フェース2aの概ね中央付近の任意の点Pが選択される。
【0029】
次に、この点Pを通り、当該点Pにおける打撃フェース2aの法線方向に沿って延び、かつ、トウ・ヒール方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェース2aとの交線を引き、その中点Pxが決定される。
【0030】
次に、この中点Pxを通り、当該中点Pxにおける打撃フェース2aの法線方向に沿って延び、かつ、上下方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェース2aとの交線を引き、その中点Pyが決定される。
【0031】
次に、この中点Pyを通り、当該点Pyにおける打撃フェース2aの法線方向に沿って延び、かつ、トウ・ヒール方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェース2aとの交線を引き、その中点Pxが新たに決定される。
【0032】
次に、この新たな中点Pxを通り、当該点Pxにおける打撃フェース2aの法線方向に沿って延び、かつ、上下方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェース2aとの交線を引き、その中点Pyが新たに決定される。
【0033】
上記の工程を繰り返し、Px及びPyが順次決定される。この工程の繰り返しの中で、新たな中点Pyとその直前の中点Pyとの間の距離が最初に0.5mm以下となったときの当該新たな位置Py(最後の位置Py)が、フェース中心FCとされる。
【0034】
フェース中心FCは、ゴルファがボールの打撃を試みる好ましい打撃位置である。
【0035】
[ロフト角]
図7は、フェース中心FCを通るフェース垂直断面における打撃フェース2aの輪郭線を示す。本明細書において、打撃フェース2aのロフト角βは、フェース中心FCで測定される。すなわち、ロフト角βは、
図7に示されるように、フェース垂直断面において、フェース中心FCを通る打撃フェース2aの輪郭線に引いた接線200と、水平面HP(
図2)と直交する垂直線300との間の角度として定義される。
【0036】
本実施形態のゴルフクラブセットSに含まれる複数のゴルフクラブは、上述のような測定方法で得られたロフト角βが互いに異なる。したがって、相対的にロフト角βが小さい第1のゴルフクラブ101は、より大きな飛距離かつより低い弾道の打球を得ることができる。一方、相対的にロフト角βが大きい第2のゴルフクラブ102は、より短い飛距離かつより高い弾道の打球を得ることができる。このように、本実施形態のゴルフクラブセットSは、ショットの状況に応じて、打球の飛距離及び/又は高さを打ち分けることができる。
【0037】
[フェース下部ロール]
図7のフェース垂直断面に示されるように、打撃フェース2aは、フェース下部ロール2rを備える。フェース下部ロール2rは、フェース中心FCと打撃フェース2aの下側の周縁Eとの間の打撃フェース2a(以下、「下側打撃フェース」ということがある。)の輪郭線がヘッド外方に凸の円弧状とされた膨らみである。
【0038】
フェース下部ロール2rの膨らみの程度は、下側打撃フェースの曲率半径Rによって規定される。本明細書において、フェース下部ロール2rの曲率半径Rは、
図7のフェース垂直断面において、フェース中心FC、打撃フェース2aの下方(ソール4側)の周縁E、及び、下側打撃フェースの輪郭線の中点CPの3つの点を通る単一の円弧の曲率半径として測定される。
【0039】
ただし、フェース中心FC、打撃フェース2aの周縁E、ロフト角β及びフェース下部ロール2rの曲率半径Rは、それぞれ、フェース2に形成されたフェースライン等の凹部を埋めて平滑とした仮想の打撃フェース2aに基づいて測定される。
【0040】
図8は、本実施形態のゴルフクラブセットSに含まれる、第1のゴルフクラブ101及び第2のゴルフクラブ102のそれぞれのヘッド1のフェース垂直断面図である。また、
図8では、第1のゴルフクラブ101及び第2のゴルフクラブ102のそれぞれのヘッド1のシャフト軸中心線CLは、互いに揃えられている。
【0041】
図8に示されるように、ゴルフクラブセットSは、ロフト角β1の第1のゴルフクラブ101と、ロフト角β2(>β1)の第2のゴルフクラブ102とのペアを含む。これらの第1のゴルフクラブ101及び第2のゴルフクラブ102は、ゴルフクラブセットSの中で、番手が連続するペアを構成している。すなわち、ゴルフクラブセットS内において、第2のゴルフクラブ102は、第1のゴルフクラブ101のロフト角β1よりも大きく、かつ、ロフト角βに最も近いロフト角β2を備えている。上記ペアにおいて、ロフト角の差(β2-β1)は、例えば、2~4度の範囲とされるのが望ましい。
【0042】
本実施形態のゴルフクラブセットSでは、上記ペアにおいて、第2のゴルフクラブ102のフェース下部ロール2rの曲率半径R2が、第1のゴルフクラブ101のフェース下部ロール2rの曲率半径R1よりも小さく構成されている。
【0043】
[本実施形態の作用]
第2のゴルフクラブ102は、下側打撃フェースのヘッド前後方向の長さが小さくなる。したがって、第1のゴルフクラブ101及び第2のゴルフクラブ102は、アドレス時にゴルファが特に注視する打撃フェース2aのヘッド前後方向の長さが互いに近似する。このように、本実施形態のゴルフクラブセットSは、ロフト角が異なる第1のゴルフクラブ101及び第2のゴルフクラブ102の間では、ゴルフクラブを取り変えても違和感が小さく、同じ感覚でアドレスでき、構えやすくなるという利点が得られる。
【0044】
上述の効果をさらに高めるために、
図9に示されるように、第1のゴルフクラブ101のフェース中心FCでの打撃フェース2aのヘッド前後方向の長さW1と、第2のゴルフクラブ102のフェース中心FCでの打撃フェース2aのヘッド前後方向の長さW2との差|W1-W2|は、7.0mm以下とされ、より好ましくは5.0mm以下とされ、さらに好ましくは3.0mm以下、最も好ましくは0mmとされる。換言すると、望ましい態様では、第2のゴルフクラブ102のフェース下部ロール2rの曲率半径R2は、上記差|W1-W2|を満たすように、適宜設定されれば良い。
【0045】
また、上述のフェース下部ロール2rの曲率半径の関係性(R2<R1)は、フェース中心FCを通るフェース垂直断面で満たされていればよい。ただし、より好ましい態様では、上記関係性(R2<R1)は、
図9に示されるように、フェース中心FCを中心としたトウ・ヒール方向のある範囲Xに亘って満たされても良い。この範囲Xは、例えば、10mm以上、より好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上とされ得る。これにより、アドレス時の違和感がより一層軽減される。
【0046】
また、本実施形態の第2のゴルフクラブ102は、フェース下部ロール2rの曲率半径R2が小さく形成されていることから、下側打撃フェースの垂直面に対する傾斜角度(例えば、
図7の中点CPに引いた接線の垂直面に対する角度に相当)が、従来構造よりも小さくなる。この傾斜角度は、「下側打撃フェースのロフト角」と把握することができる。一般に、ロフト角が大きいゴルフクラブは、打球の飛距離は相対的に短い。しかし、第2のゴルフクラブ102では、「下側打撃フェースのロフト角」が小さいため、下側打撃フェースで打球した場合、打球の飛距離を伸ばすことが可能である。したがって、地面に直接置かれたボールを打撃する機会が多いハイブリッドとして構成された本実施形態の第2のゴルフクラブ102は、アドレス時の違和感を軽減しながら打球の飛距離を向上させるという新たな課題を解決し得る。
【0047】
上で述べたように、本実施形態のゴルフクラブセットSでは、第1のゴルフクラブ101及び第2のゴルフクラブ102において、打撃フェース2aのヘッド前後方向の長さW1、W2の差がこれまでよりも小さい。このような特徴は、第1のゴルフクラブ101及び第2のゴルフクラブ102において、ホーゼル5に対する打撃フェース2aのヘッド前後方向の位置が互いに同一又は近似するような設計を可能にする。このような設計は、アドレス時の違和感をさらに小さくするのに役立つ。
【0048】
例えば、
図8に示されるように、第1のゴルフクラブ101及び第2のゴルフクラブ102は、シャフト軸中心線CLからリーディングエッジLeまでのヘッド前後方向の距離である第1距離F1及びF2をそれぞれ備える。ここで、リーディングエッジLeは、フェース中心FCを通るフェース垂直断面の輪郭線において、ヘッド1の最も前側の位置として特定される。好ましい態様では、第1のゴルフクラブ101の第1距離F1と、第2のゴルフクラブ102の第1距離F2との差(絶対値)|F1-F2|が、例えば、3.0mm以下、より好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下、最も好ましくは0mmとされる。
図8の態様では、F2<F1とされた態様が示されている。
【0049】
以上のように、第1距離F1及びF2の差を一定の範囲に制限することにより、上方から見たときのヘッド形状の違いがより一層小さくなり、ひいては、アドレス時の違和感をさらに軽減することができる。
【0050】
また、
図8に示されるフェース垂直断面において、第1のゴルフクラブ101及び第2のゴルフクラブ102は、シャフト軸中心線CLから打撃フェース2aの上側の周縁E(クラウン3側の周縁E)までのヘッド前後方向の距離である第2距離D1及びD2をそれぞれ備える。好ましい態様では、第1のゴルフクラブ101の第2距離D1と、第2のゴルフクラブ102の第2距離D2との差(絶対値)|D1-D2|が、例えば、5.0mm以下、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下、最も好ましくは0mmとされる。
図8の態様では、第1のゴルフクラブ101では、打撃フェース2aの上側の周縁Eは、シャフト軸中心線CLよりも前方に位置する。一方、第2のゴルフクラブ102では、打撃フェース2aの上側の周縁Eは、シャフト軸中心線CLよりも後方に位置する。
【0051】
以上のように、第2距離D1及びD2の差を小さく制限することにより、上方から見たときのヘッド形状の違いがより一層小さくなり、ひいては、アドレス時の違和感をさらに軽減することができる。
【0052】
なお、上記実施形態は、ゴルフクラブセットSとして、2本のゴルフクラブを示した。他の形態では、ゴルフクラブセットは、さらに、第2のゴルフクラブ102よりもロフト角が大きい第3のゴルフクラブ(図示省略)を含む3本以上のゴルフクラブを含んで構成されても良い。この場合、第3のゴルフクラブのフェース下部ロールの曲率半径は、第2のゴルフクラブ102の前記フェース下部ロール2rの曲率半径R2よりも小さく構成されるのが良い。
【0053】
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な開示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々変更して実施することができる。
【実施例0054】
以下、本発明のより具体的な例示的な実施例が説明される。
図1~
図4の基本構造を有するゴルフクラブヘッドが、表1の使用に基づき試作され、アドレスしたときの違和感が、15名のゴルファへのアンケート調査によって評価された。アンケート調査では、各ゴルファが、第1のゴルフクラブ及び第2のゴルフクラブでそれぞれアドレスし、その構えやすさが評価された。評価は、「5」を殆ど違和感がなくアドレスしやすいもの、「1」を違和感がありアドレスしにくいものとし、5段階評価とされた。テストの結果が表1に示される。
【表1】
【0055】
テストの結果、実施例のゴルフクラブセットは、比較例に比べて、構えやすさが向上していることが確認できた。