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特開2022-173908抗炎症成分分泌促進剤、炎症抑制方法、乳酸菌及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173908
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】抗炎症成分分泌促進剤、炎症抑制方法、乳酸菌及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/744 20150101AFI20221115BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20221115BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20221115BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20221115BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20221115BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20221115BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221115BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20221115BHJP
   C12R 1/01 20060101ALN20221115BHJP
【FI】
A61K35/744
C12N1/00 L ZNA
C12N1/20 E
C12N1/20 A
C12N5/071
A23L33/135
A61K35/747
A61K47/36
A61K47/38
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P43/00 105
A23K10/16
C12R1:01
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079960
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】玉腰 優典
(72)【発明者】
【氏名】千濱 良太
(72)【発明者】
【氏名】杉本 淳
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AB10
2B150AC06
2B150DD12
2B150DD13
2B150DD26
4B018MD86
4B018ME07
4B018ME14
4B018MF03
4B018MF04
4B018MF06
4B065AA01X
4B065AA91X
4B065AC20
4B065BB40
4B065CA44
4B065CA46
4C076BB01
4C076CC04
4C076CC26
4C076CC29
4C076CC40
4C076DD67
4C076EE31
4C076EE38
4C076EE58
4C076FF04
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC55
4C087BC56
4C087CA09
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZB11
4C087ZB21
4C087ZC41
(57)【要約】
【課題】免疫過剰による体へのダメージを軽減することができる、抗炎症成分分泌促進剤、炎症抑制方法、乳酸菌及び組成物を提供する。
【解決手段】乳酸菌死菌体を含有する、抗炎症成分を細胞に分泌促進させる抗炎症成分分泌促進剤、当該抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させ、炎症を抑制する方法、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)LF-01株(受領番号:NITE AP-03459)である乳酸菌、及び当該抗炎症成分分泌促進剤又はLF-01株死菌体を含有する組成物。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌死菌体を含有する、抗炎症成分を細胞に分泌促進させる抗炎症成分分泌促進剤。
【請求項2】
前記乳酸菌死菌体は、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)に属する乳酸菌の死菌体である請求項1記載の抗炎症成分分泌促進剤。
【請求項3】
前記乳酸菌死菌体は、ラクトバチラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)に属する乳酸菌の死菌体である請求項1記載の抗炎症成分分泌促進剤。
【請求項4】
前記乳酸菌は、LF-01株(受領番号:NITE AP-03459)である請求項2記載の抗炎症成分分泌促進剤。
【請求項5】
前記乳酸菌は、M-1株である請求項3記載の抗炎症成分分泌促進剤。
【請求項6】
前記抗炎症成分は、抗炎症性サイトカインである請求項1~5のいずれか1項に記載の抗炎症成分分泌促進剤。
【請求項7】
前記抗炎症性サイトカインは、IL-1Ra及び/又はTGF-β1である請求項6記載の抗炎症成分分泌促進剤。
【請求項8】
デキストリン、セルロース、糖及び米粉から選ばれる少なくとも一つを含む請求項1~7のいずれか1項に記載の抗炎症成分分泌促進剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗炎症成分分泌促進剤を含有する抗炎症成分分泌促進用飲食品。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗炎症成分分泌促進剤を含有する抗炎症成分分泌促進用飼料。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗炎症成分分泌促進剤を含有する抗炎症成分分泌促進用医薬品。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させる方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させ、炎症を抑制する方法。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させ、線維芽細胞の肌質悪化因子の発現量を抑制する方法。
【請求項15】
前記肌質悪化因子が、MMP1、MMP2、MMP9及びSCFから選ばれる1つ以上である請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させ、細胞から生じた炎症誘導物質を阻害し、線維芽細胞の骨・軟骨悪化因子の発現量を抑制する方法。
【請求項17】
前記骨・軟骨悪化因子が、MMP1、MMP2及びMMP9から選ばれる1つ以上である請求項16記載の方法。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させ、炎症誘導による線維芽細胞の死滅を抑制する方法。
【請求項19】
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)LF-01株(受領番号:NITE AP-03459)である乳酸菌。
【請求項20】
死菌体である請求項19記載の乳酸菌。
【請求項21】
請求項20に記載の乳酸菌を含有する組成物。
【請求項22】
飲食品組成物である請求項21記載の組成物。
【請求項23】
飼料組成物である請求項21記載の組成物。
【請求項24】
医薬品組成物である請求項21記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症成分分泌促進剤、抗炎症成分分泌促進剤による炎症抑制方法、新規な乳酸菌及び当該抗炎症成分分泌促進剤又は当該乳酸菌を含有する組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
免疫とは、細菌やウイルスあるいは体内で発生する腫瘍等から生体を守るためのシステムである。細菌、ウイルス等の感染、腫瘍、細胞障害等に対して生体は免疫反応によって対応するが、その免疫応答は、免疫担当細胞間のさまざまな相互作用により調節されている。そして、免疫応答の調節にはリンパ球、マクロファージ等が産生するインターロイキン、腫瘍壊死因子α(TNF-α)等のサイトカインが重要な役割を演じている。
【0003】
一方で免疫機能による効果は正の効果だけでなく、負の側面を有している。過剰な免疫はアレルギー、アナフラキシーのような急性の炎症だけでなく、組織の損傷や老化を引き起こす要因として存在している。感染症においてもこの過剰な免疫反応の抑制が治療の第一候補として行われている。
【0004】
近年、この免疫システムを調節する食品成分が注目されている。このような成分として、乳酸菌、麹カビあるいは酵母等の食用微生物やそれらの細胞壁成分、また、シイタケやアガリクスに代表される担子菌類の多糖類等が知られている。
【0005】
免疫システムを調節する乳酸菌に関して、最近様々な研究が進められている。現在までに、ラクトバチルス・デルブリッキを主成分とする免疫賦活剤(特許文献1)、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属等の乳酸菌の菌体を有効成分とするIL-12産生促進剤(特許文献2)、植物由来のラクトバチルス属に属する乳酸菌及び植物由来のロイコノストック属に属する乳酸菌を有効成分とする免疫機能調節剤(特許文献3)、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属及びストレプトコッカス属に属する乳酸菌からなる群より選択された1種類以上の乳酸菌体の破砕物を有効成分とする、インターロイキン-10産生の維持又は促進作用と、IL-12産生の維持又は抑制作用を有するインターロイキン産生調節剤(特許文献4)、免疫調節作用を有するラクトバチルス・ペントーサスを含む組成物(特許文献5)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-228536号公報
【特許文献2】特開平10-139674号公報
【特許文献3】特開2007-70249号公報
【特許文献4】特開2007-269737号公報
【特許文献5】特表2008-501013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら特許文献1~5に記載の乳酸菌は、間接的な免疫調整を行うにすぎないため、より直接的な免疫過剰による体へのダメージを軽減する方法及びそのための乳酸菌が求められている。
【0008】
しかしながら、これまでに、乳酸菌が、細胞から生じた炎症誘導物質の機能を消去させる物質を細胞に作らせることは知られていなかった。
【0009】
従って、本発明の目的は、免疫過剰による体へのダメージを軽減することができる、抗炎症成分分泌促進剤、炎症抑制方法、乳酸菌及び組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、乳酸菌(死菌体)が、細胞から生じた炎症誘導物質の機能を消去させる物質を細胞に作らせるという新たな乳酸菌の用途を見出した。また、その用途に特に適した新規な乳酸菌を発見した。
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、下記の抗炎症成分分泌促進剤、炎症抑制方法、乳酸菌及び組成物を提供する。
【0012】
[1]乳酸菌死菌体を含有する、抗炎症成分を細胞に分泌促進させる抗炎症成分分泌促進剤。
[2]前記乳酸菌死菌体は、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)に属する乳酸菌の死菌体である前記[1]記載の抗炎症成分分泌促進剤。
[3]前記乳酸菌死菌体は、ラクトバチラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)に属する乳酸菌の死菌体である前記[1]記載の抗炎症成分分泌促進剤。
[4]前記乳酸菌は、LF-01株(受領番号:NITE AP-03459)である前記[2]記載の抗炎症成分分泌促進剤。
[5]前記乳酸菌は、M-1株である前記[3]記載の抗炎症成分分泌促進剤。
[6]前記抗炎症成分は、抗炎症性サイトカインである前記[1]~[5]のいずれか1つに記載の抗炎症成分分泌促進剤。
[7]前記抗炎症性サイトカインは、IL-1Ra及び/又はTGF-β1である前記[6]記載の抗炎症成分分泌促進剤。
[8]デキストリン、セルロース、糖及び米粉から選ばれる少なくとも一つを含む前記[1]~[7]のいずれか1つに記載の抗炎症成分分泌促進剤。
[9]前記[1]~[8]のいずれか1つに記載の抗炎症成分分泌促進剤を含有する抗炎症成分分泌促進用飲食品。
[10]前記[1]~[8]のいずれか1つに記載の抗炎症成分分泌促進剤を含有する抗炎症成分分泌促進用飼料。
[11]前記[1]~[8]のいずれか1つに記載の抗炎症成分分泌促進剤を含有する抗炎症成分分泌促進用医薬品。
[12]前記[1]~[8]のいずれか1つに記載の抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させる方法。
[13]前記[1]~[8]のいずれか1つに記載の抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させ、炎症を抑制する方法。
[14]前記[1]~[8]のいずれか1つに記載の抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させ、線維芽細胞の肌質悪化因子の発現量を抑制する方法。
[15]前記肌質悪化因子が、MMP1、MMP2、MMP9及びSCFから選ばれる1つ以上である前記[14]記載の方法。
[16]前記[1]~[8]のいずれか1つに記載の抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させ、細胞から生じた炎症誘導物質を阻害し、線維芽細胞の骨・軟骨悪化因子の発現量を抑制する方法。
[17]前記骨・軟骨悪化因子が、MMP1、MMP2及びMMP9から選ばれる1つ以上である前記[16]記載の方法。
[18]前記[1]~[8]のいずれか1つに記載の抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させ、炎症誘導による線維芽細胞の死滅を抑制する方法。
[19]エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)LF-01株(受領番号:NITE AP-03459)である乳酸菌。
[20]死菌体である前記[19]記載の乳酸菌。
[21]前記[20]に記載の乳酸菌を含有する組成物。
[22]飲食品組成物である前記[21]記載の組成物。
[23]飼料組成物である前記[21]記載の組成物。
[24]医薬品組成物である前記[21]記載の組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、免疫過剰による体へのダメージを軽減することができる、抗炎症成分分泌促進剤、炎症抑制方法、乳酸菌及び組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実験1(マウス脾臓細胞を用いた抗炎症性サイトカイン発現促進能の評価)の概念図である。
図2】実験1の手法フローである。
図3】実験1の結果(IL-1Ra発現量)をグラフで示したものである。
図4】実験1の結果(TGF-β1発現量)をグラフで示したものである。
図5】実験2(線維芽細胞3T3L1株への炎症ダメージの評価)の概念図である。
図6】実験2の手法フローである。
図7】実験2の結果(MMP1発現量)をグラフで示したものである。
図8】実験2の結果(MMP2発現量)をグラフで示したものである。
図9】実験2の結果(MMP9発現量)をグラフで示したものである。
図10】実験2の結果(SCF発現量)をグラフで示したものである。
図11】実験3(線維芽細胞3T3L1株の生存率確認)の概念図である。
図12】実験3の手法フローである。
図13】実験3の結果(線維芽細胞3T3L1株の生存率)をグラフで示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔抗炎症成分分泌促進剤〕
本発明の実施の形態に係る抗炎症成分分泌促進剤は、乳酸菌死菌体を含有するものであり、抗炎症成分を細胞に分泌促進させることができるものである。
【0016】
本発明の実施形態において、乳酸菌は、死菌体として使用する。死菌体は、コロニー生産能がない状態で使用できるため、様々な物質と混合させても変質させることがない。
【0017】
死菌体は通常、菌体を加熱することにより得ることができる。加熱条件は菌体が死滅する条件であれば特に限定されないが、一般的には90℃、30分程度の加熱で十分な結果を得ることができる。
【0018】
ここで、死菌体とする乳酸菌は、菌体として純粋に分離された菌体を使用することが好ましいが、培養物、懸濁物、その他の菌体含有物や、菌体を酵素や物理的手段を用いて処理した細胞質や細胞壁画分として使用してもよく、本発明の実施形態における乳酸菌にはこれらの種々の形態の乳酸菌も含まれる。
【0019】
乳酸菌としては、種々の属種の乳酸菌を使用することができる。例えば、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ラクトバチラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチラス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバチラス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチラス・ブレヴィス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチラス・サケイ(Lactobacillus sakei)などが挙げられるが、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ラクトバチラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)が好ましく、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)が更に好ましい。特に好ましいものとしては、後述するエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)に属するLF-01株(受領番号:NITE AP-03459)が挙げられる。ラクトバチラス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)に属するM-1株(市販品、森永乳業製)も好ましいものとして挙げられる。
【0020】
本発明の実施形態において、乳酸菌は、1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には、そのうちの1種はエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)に属する乳酸菌を使用することが好ましく、特にLF-01株を使用することが好ましい。
【0021】
本発明の実施の形態に係る抗炎症成分分泌促進剤によって分泌促進される抗炎症成分としては、限定されるものではないが、例えば、抗炎症性サイトカインが挙げられる。分泌される抗炎症性サイトカインとしては、例えば、IL-1Ra、TGF-β1が挙げられる。IL-1Ra、TGF-β1のいずれか一方が顕著に分泌促進される場合もあれば、その両方が顕著に分泌促進される場合もある。LF-01株は、IL-1RaとTGF-β1の両方を細胞に分泌促進させる機能を有している。
【0022】
例えば、分泌されたIL-1RaはIL-1受容体に結合することで、IL-1の働きを阻害する。IL-1Raは特に感染及び炎症の急性期において様々な免疫反応や炎症反応を調節する。
【0023】
そのため炎症性ストレスに晒された際に分泌されるサイトカイン類(炎症性のサイトカイン類)を抑えることができる。これによって誘導される炎症によるダメージを抑制し、健康に貢献する。
【0024】
ここで、抗炎症とは炎症を抑制する効果である。炎症によって引き起こされるのは、感染した際の熱、くしゃみ、アレルギー、肌質悪化(シミ・シワ)や骨・軟骨の分解、歯肉炎、そしてがん細胞の易転移化等である。本発明の実施の形態に係る抗炎症成分分泌促進剤によれば、これらを抑制できることから、感染時の免疫過剰による体へのダメージを軽減する効果があり、また、美肌の効果も期待できる。
【0025】
本発明の実施の形態に係る抗炎症成分分泌促進剤は、乳酸菌死菌体のみから構成されていてもよいが、菌体を希釈剤と混合して取り扱いやすくして提供することが好ましい。また、抗炎症成分分泌促進効果に悪影響を及ぼさない限り、その他の添加剤を配合することもできる。
【0026】
希釈剤としては、例えば、デキストリン、セルロース、糖及び米粉から選ばれる少なくとも一つを使用することができる。デキストリンは含水物、分解率等は特に制限されない。また、シクロデキストリン、難消化性デキストリン等も使用できる。
【0027】
抗炎症成分分泌促進剤における、希釈剤の含有量としては、限定されるものではないが、0.1~99.9質量%が好ましく(この場合、乳酸菌死菌体の含有量は99.9~0.1質量%)、1.0~95.0質量%がより好ましい(この場合、乳酸菌死菌体の含有量は5.0~99.0質量%)。
【0028】
本発明の実施の形態に係る抗炎症成分分泌促進剤は、その機能を発揮させるために、成人の場合、乳酸菌死菌体を好ましくは0.1~10g/1日、より好ましくは0.5~5g/1日を摂取できるように配合量等を調整すれば良い。乳酸菌死菌体の含有割合は特に限定されず、製造の容易性や体重差に基づく好ましい一日投与量等に合わせて適宜調節すれば良い。
【0029】
〔抗炎症成分分泌促進剤を含有する組成物〕
本発明の実施の形態に係る抗炎症成分分泌促進剤は、これを含有する組成物として提供することができる。
【0030】
組成物としては、例えば、飲食品、飼料、医薬品が挙げられる。これらは、抗炎症成分分泌促進用組成物として使用できる。
【0031】
飲食品としては、どのような飲食品にも適用できる。例えば、乳飲料、発酵乳、果汁飲料、ゼリー、キャンディー、乳製品、発酵食品、マヨネーズ等の卵加工品、バターケーキ等の菓子・パン類、サプリメント等を挙げることができる。抗炎症成分分泌促進剤は、飲食品の製造工程中に原料に添加しても良いし、飲食品が出来上がった後に添加しても良い。
【0032】
飼料としては、家畜用飼料として好適に使用することができ、どのような飼料に配合しても良い。抗炎症成分分泌促進剤は、飼料の製造工程中に原料に添加しても良いし、飼料が出来上がった後に添加しても良い。
【0033】
医薬品としては、本発明の実施の形態に係る抗炎症成分分泌促進剤を有効成分とする経口投与医薬品として好適に使用することができる。製剤化に際しては、製剤上許可されている賦形剤、安定剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、懸濁剤、コーティング剤等を適宜混合して定法どおり製剤化することができる。また、抗炎症成分分泌促進剤の作用を妨げない範囲で、その他の任意の薬剤を混合して製剤化することもできる。剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤等が可能である。
【0034】
〔炎症抑制方法〕
本発明の実施の形態に係る方法は、前記の本発明の実施の形態に係る抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させる方法であり、抗炎症成分を分泌させることによって炎症を抑制する方法である。
【0035】
抑制できる炎症としては、前述の通り、炎症によって引き起こされる、感染した際の熱、くしゃみ、アレルギー、肌質悪化(シミ・シワ)や骨・軟骨の分解、歯肉炎、そしてがん細胞の易転移化等である。本発明の実施の形態に係る方法によれば、これらを抑制できることから、感染時の免疫過剰による体へのダメージを軽減する効果があり、また、美肌の効果も期待できる。
【0036】
具体的には、例えば、以下の方法を提供できる。
(1)前記の本発明の実施の形態に係る抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させ、線維芽細胞の肌質悪化因子の発現量を抑制する方法。
ここで、肌質悪化因子としては、コラゲナーゼであるMMP1、MMP2、MMP9及びメラニン合成を促進するSCFから選ばれる1つ以上が挙げられる。
【0037】
(2)前記の本発明の実施の形態に係る抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させ、細胞から生じた炎症誘導物質を阻害し、線維芽細胞の骨・軟骨悪化因子の発現量を抑制する方法。
ここで、骨・軟骨悪化因子としては、コラゲナーゼであるMMP1、MMP2及びMMP9から選ばれる1つ以上が挙げられる。
【0038】
(3)前記の本発明の実施の形態に係る抗炎症成分分泌促進剤によって細胞に抗炎症成分を分泌させ、炎症誘導による線維芽細胞の死滅を抑制する方法。
【0039】
〔乳酸菌〕
本発明者らは、前記抗炎症成分分泌促進剤等に使用できる、新規な乳酸菌として、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)に属するLF-01株を発見した。LF-01株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに2021年4月14日に寄託された受領番号NITE AP-03459の乳酸菌(属種:Enterococcus faecalis)である。LF-01株は、食品に適用した際に香味や物性も優れている菌株である。
【0040】
前記抗炎症成分分泌促進剤に使用する場合、LF-01株は死菌体として用いる。
【0041】
LF-01株を培養する培地には、乳培地又は乳成分を含む培地、これを含まない半合成培地等、種々の培地を用いることができる。このような培地としては、脱脂乳を還元して加熱殺菌した還元脱脂乳培地を例示することができる。
【0042】
これらLF-01株の培養法は、静置培養あるいはpHを一定にコントロールした中和培養で行うが、菌が良好に生育する条件であれば特に培養法に制限はない。菌体は、乳酸菌培養の常法に従って培養し、得られた培養物から遠心分離等の集菌手段によって分離されたものをそのまま用いることができる。
【0043】
〔組成物〕
LF-01株は、これを含有する組成物として提供することができる。
【0044】
組成物としては、例えば、飲食品、飼料、医薬品が挙げられる。これらは、抗炎症成分分泌促進用組成物として使用できる。飲食品、飼料及び医薬品の具体的説明は前述の通りである。
【0045】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例0046】
〔乳酸菌LF-01株の培養〕
(培養例1)
乳酸菌LF-01株のストック液30μlを「市販のMRS培地粉末(de Man,Rogosa and Sharpe、Difuco & BBD社製)を蒸留水に5.5%の濃度で溶解し、121℃、20分間加熱殺菌した培地3ml」に植菌した。30℃で1日静置した後、遠心分離して上澄みを除去した。上澄みを除去して得られた残部に蒸留水3mlを加えて懸濁した後、オートクレーブして乳酸菌死菌体懸濁液を得た。
なお、LF-01株のストック液の配合は、以下の表1の通りである。
【0047】
【表1】
【0048】
(培養例2)
スケールアップして培養した。培養例1と同様に培養した後、遠心分離により集菌した。集菌した菌体に水を加えて再懸濁し、遠心分離して濃縮菌体溶液を得た。これを105℃以上30分間で殺菌処理した後、噴霧乾燥して乳酸菌死菌体粉末Aを得た。この粉末とデキストリン(サンエイ糖化社製、商品名:NSD300)を混合して、死菌体含量が25質量%の乳酸菌死菌体粉末Bを得た。
【0049】
この乳酸菌死菌体粉末Aに含まれる細胞数を以下の方法で測定した。
菌体をサイバーグリーンで染色して蛍光顕微鏡で観察した。菌体を血球計算盤に入れて、細胞数を数えて算出した。2兆個/gであった。
【0050】
〔安全性試験〕
培養例1で得た乳酸菌死菌体懸濁液(以下、培養例1サンプルという)と、培養例2で得た乳酸菌死菌体粉末B(以下、培養例2サンプルという)を使用して以下の2つの安全性試験を行った。
【0051】
(安全性試験1:経口急性毒性試験)
6週齢のCrlCD(SD)ラット・雌雄各5匹ずつに、培養例1サンプル又は培養例2サンプルを注射用水に20%濃度で懸濁した状態で、乳酸菌死菌体量2000mg/g(ラット体重1g当たり)の量を強制経口投与した。投与後、30分~8日後まで、乳酸菌死菌体を投与していないラットとの比較で体重を観察した。その結果、培養例1サンプル及び培養例2サンプルのいずれの投与群でも死亡例はなく、かつすべての個体において体重減少等の異常所見は何ら認められなかった。8日目にチオペンタールナトリウムの腹腔内投与による麻酔下で放血致死させ、速やかに解剖してすべての器官及び組織について異常の有無を肉眼的に観察したが、培養例1サンプル及び培養例2サンプルのいずれの投与群でもすべての個体において何ら異常所見は認められなかった。
【0052】
(安全性試験2:変異原性試験)
メスチャイニーズハムスター肺由来細胞株CHL/IUを用い、日本製薬工業協会・医薬品評価委員会・基礎研究部会・第3分科会・遺伝毒性ワーキンググループ編「医薬品のための遺伝毒性試験Q&A」記載の手法で変異原性試験を行った。その結果、培養例1サンプル及び培養例2サンプルの変異原性は認められなかった。
【0053】
以上の結果から、乳酸菌LF-01株には毒性はなく、安全であることが分かった。したがって、LF-01株を使用した安全な抗炎症剤等を提供することができる。
【0054】
〔アッセイ準備〕
(乳酸菌の培養及び乳酸菌死菌体懸濁液の調製)
後記の実施例1で使用の乳酸菌死菌体懸濁液を以下の方法により調製した。
乳酸菌LF-01株の凍結ストック液(配合は前記表1と同じ)を「市販のMRS培地粉末(de Man,Rogosa and Sharpe、Difuco & BBD社製)を蒸留水に5.5%の濃度で溶解し、121℃、20分間加熱殺菌した培地1L」に植菌し、37℃、24時間静置培養した。培養終了後、7000rpmの遠心分離により菌体を分離し、上清を廃棄した後、分離した菌体に蒸留水を1L入れ、再度7000rpmの遠心分離を行い、上清を廃棄することにより菌体を洗浄した。そこに、菌濃度1%となるよう蒸留水を加えて濃度調節し、121℃、20分間殺菌処理し、乳酸菌死菌体懸濁液を得た。さらに、乳酸菌の重量濃度が200μg/mlになるよう、「RPMI1640培地(Gibco社製)に10%FBS(Fetal Bovine Serum、Gibco社製)、100U/mlペニシリン、0.1mg/ml ストレプトマイシンを混合した培地」を添加して希釈し、これを後述の実施例1にて使用した。
【0055】
(菌体濃度の測定)
上記希釈前の乳酸菌死菌体懸濁液の菌体重量濃度は、懸濁液を5ml遠沈管に取り、15000rpmで10分遠心分離して上清を除去したのち、105℃で1夜乾燥させ、その乾燥重量から求めた。
また、個数ベースの乳酸菌濃度は、乳酸菌死菌体懸濁液を10ng/ml相当になるまで水で希釈したのち、血球計算板と顕微鏡を用いて計数することで求めた。
【0056】
(マウス脾臓細胞の培養)
後記の実験1~3で使用のマウス脾臓細胞を以下の方法により培養した。
実験動物には6週齢のオスBALB/cマウス(日本チャールス・リバーより入手)を用いた。11週齢時に解剖し脾臓を採取した。採取した脾臓より脾臓細胞を採取し、赤血球溶血液(0.75%塩化アンモニウム、17mMトリスヒドロキシメチルアミノメタン)9mlにて室温で5分間処理してから1000rpmで10分遠心分離し、上清を除くことで赤血球画分を除去した脾臓細胞を調製した。これに5mlの緩衝液(7.2g/L塩化ナトリウム+0.32g/L塩化カリウム+1.15g/Lリン酸水素ナトリウム+0.2g/Lリン酸に水素カリウム+0.14g/L塩化カルシウム+0.2g/L塩化マグネシウム+0.2g/L硫酸マグネシウム+1g/Lグルコース+0.01g/Lフェノールレッド+1g/L牛血清アルブミン)を加え、懸濁した。懸濁液を1000rpmで10分遠心分離し、上清を除去した後、残部に「RPMI1640培地(Gibco社製)に10%FBS(Fetal Bovine Serum、Gibco社製)、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンを混合した培地」を加えて懸濁して、脾臓細胞数が2×106個細胞/mlになるようにし、細胞培養用96ウェルプレート(IWAKI)に100μlずつ播種した。37℃、相対湿度100%、二酸化炭素濃度5%の環境で24時間静置培養した。
【0057】
(リアルタイムPCRによる遺伝子発現量の定量)
マウス脾臓細胞等における各遺伝子の発現量はリアルタイムPCR(RT-PCR)によって定量した。
(1)リアルタイムPCR用のプライマーの設計
リアルタイムPCR用のプライマーは、公開されている遺伝子配列情報をもとに設計した。配列は以下の表2の通りである。
【0058】
【表2】
【0059】
(2)遺伝子発現量の定量
One Step TB Green PrimeScript RT-PCR Kit II(タカラバイオ社製)を用い、キット添付のプロトコルに従って遺伝子発現量の定量をした。
後述の実施例1(実験1において)又は比較例2(実験2において)のRNA溶解液サンプルの等倍濃度、5分の1倍濃度、25分の1倍濃度のRNA溶解液を各遺伝子につきリアルタイムPCRした時の蛍光強度をPCRサイクル数で二次微分した時の極大値(SDM値)と、RNA溶解液サンプルの希釈倍率をプロットし、検量線を得た。相関係数の2乗はいずれの遺伝子解析においても0.99を上回っていた。この検量線を用いて、各サンプルにおける各測定対象物(実験1ではIL-1RaとTGF-β1、実験2ではMMP1、MMP2、MMP9及びSCF)のmRNA量(遺伝子発現量)を計算した。
【0060】
〔実験1:マウス脾臓細胞を用いた抗炎症性サイトカイン発現促進能の評価:抗炎症性サイトカインIL-1RaとTGF-β1の発現量〕
図1は、実験1の概念図であり、図2は、実験1の手法フローである。
(実施例1)
図1を参照しつつ、実施例1を説明する。
以下の通り、図2で示したフローにしたがって、評価試験を行うためのRNA溶解液サンプルを作製した。
前記方法により準備したマウス脾臓細胞培養プレートの各ウェル10に、乳酸菌LF-01株(乳酸菌検体3)を使用して前記方法により調製した乳酸菌死菌体懸濁液を100μl加え、37℃、相対湿度100%、二酸化炭素濃度5%の環境で120時間静置培養した。その後、培養液1Aの上清を取って別途保存したうえで、底面にマウス脾臓細胞2A~2D(様々な免疫関連細胞のミックス)が接着した各ウェル10にPBS(-)(Gibco社製)100μlを加え、速やかにPBSを除去することで、細胞2A~2Dを洗浄した。そこにRNAisoキット(タカラバイオ社製)を用いて、キット添付のマニュアルに従い操作し、脾臓細胞のRNAを抽出し、RNA溶解液サンプルを得た。RNA溶解に使用したRNaseフリー水は10μlとした。
なお、上記培養液1Aの上清は、後述の実験2及び3で使用するべく、-80℃で保管した。
【0061】
(実施例2)
市販の乳酸菌死菌体(コンビ社製のEC-12株、属種はEnterococcus faecalis)につき、菌体濃度が200μg/mlとなるように、「RPMI1640培地(Gibco社製)に10%FBS(Fetal Bovine Serum、Gibco社製)、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンを混合した培地」で懸濁し、実施例1と同様にマウス脾臓細胞に与えて培養したのち、RNAを抽出し、RNA溶解液サンプルを得た。市販の乳酸菌はデキストリンなどの賦形剤が含まれていることがあるため、あらかじめ、粉体重量濃度と乳酸菌個数ベースの濃度の相関を調べたうえで、菌体濃度の調整を行った。
【0062】
(実施例3)
市販の乳酸菌死菌体(森永乳業製のM-1株、属種はLactobacillus paracasei)につき、菌体濃度が200μg/mlとなるように、「RPMI1640培地(Gibco社製)に10%FBS(Fetal Bovine Serum、Gibco社製)、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンを混合した培地」で懸濁し、実施例1と同様にマウス脾臓細胞に与えて培養したのち、RNAを抽出し、RNA溶解液サンプルを得た。市販の乳酸菌はデキストリンなどの賦形剤が含まれていることがあるため、あらかじめ、粉体重量濃度と乳酸菌個数ベースの濃度の相関を調べたうえで、菌体濃度の調整を行った。
【0063】
(実施例4)
市販の乳酸菌死菌体(キティ社製のKT-11株、属種はLactobacillus crispatus)につき、菌体濃度が200μg/mlとなるように、「RPMI1640培地(Gibco社製)に10%FBS(Fetal Bovine Serum、Gibco社製)、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンを混合した培地」で懸濁し、実施例1と同様にマウス脾臓細胞に与えて培養したのち、RNAを抽出し、RNA溶解液サンプルを得た。市販の乳酸菌はデキストリンなどの賦形剤が含まれていることがあるため、あらかじめ、粉体重量濃度と乳酸菌個数ベースの濃度の相関を調べたうえで、菌体濃度の調整を行った。
【0064】
(比較例1)
前記方法により準備したマウス脾臓細胞培養プレートの各ウェルに、「RPMI1640培地(Gibco社製)に10%FBS(Fetal Bovine Serum、Gibco社製)、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンを混合した培地」を100μl加え、37℃、相対湿度100%、二酸化炭素濃度5%の環境で120時間静置培養した。その後、培養液の上清を取って別途保存したうえで、底面にマウス脾臓細胞が接着した各ウェルにPBS(-)(Gibco社製)100μlを加え、速やかにPBSを除去することで、細胞を洗浄した。そこにRNAisoキット(タカラバイオ社製)を用いて、キット添付のマニュアルに従い操作し、脾臓細胞のRNAを抽出し、RNA溶解液サンプルを得た。RNA溶解に使用したRNaseフリー水は10μlとした。
【0065】
(抗炎症性サイトカイン発現促進能の評価)
実施例1~4及び比較例1のマウス脾臓細胞における、抗炎症性サイトカインIL-1RaとTGF-β1の発現量を比較するため、リアルタイムPCRを行った。その結果、発現量は下表の通りであった。また、図3及び図4は、結果をグラフで示したものである。なお、発現量は、SDM値から求め、各遺伝子のmRNA量をハウスキーピング遺伝子であるGAPDHのmRNA量で割った値で評価した。また、下表及び図3~4では、比較例1での各遺伝子発現量をそれぞれ1とした。
【0066】
【表3】
【0067】
乳酸菌死菌体を与えた実施例1~4は、与えなかった比較例1に比べ、抗炎症性サイトカインの発現量が増加する傾向にあった。中でも、実施例1で用いたLF-01株は最も顕著に脾臓細胞の抗炎症性サイトカイン(IL-1Ra及びTGF-β1)の発現量を増大させ、比較例1に比べてIR-1Raは8.5倍、TGF-β1は5.6倍となった。また、実施例1で用いたLF-01株と同じ属種(Enterococcus faecalis)である実施例2のEC-12株も、実施例1と同程度までには及ばなかったが、他の属種の乳酸菌死菌体を用いた実施例4に比べて1.5~2倍程度、抗炎症性サイトカイン発現促進能力が高かった。また、IL-1Raの発現量のみを見れば、実施例3のM-1株(属種:Lactobacillus paracasei)は、実施例1と近いレベルまで発現促進させた。
【0068】
これまで、乳酸菌が免疫関連細胞と触れることでIL-1RaやTGF-β1といった抗炎症性サイトカインの発現量が増すという報告は無かった。特に、本発明により、IL-1RaやTGF-β1の発現量を大きく増加させる乳酸菌株LF-01株を得ることに成功した。
【0069】
〔アッセイ準備〕
(マウスマクロファージ様細胞J774.1株の培養及び炎症誘導)
後記の実験2~3で使用のマウスマクロファージ様細胞J774.1株を以下の方法により培養した。また、炎症誘導剤により炎症誘導を行った。
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 JCRB細胞バンクより購入したマウスマクロファージ様細胞J774.1株を、細胞濃度5×105個細胞/mlになるよう、「RPMI1640培地(Gibco社製)に10%FBS(Fetal Bovine Serum、Gibco社製)、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンを混合した培地」に浮遊状態で懸濁した培養液を、細胞培養用24ウェルプレート(IWAKI)の各ウェルに500μlずつ分注した。これを37℃、相対湿度100%、二酸化炭素濃度5%の環境で2時間培養した。その後、炎症誘導剤としてリポポリサッカライド(LPS)を、終濃度40μg/mlになるよう、「RPMI1640培地(Gibco社製)に10%FBS(Fetal Bovine Serum、Gibco社製)、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンを混合した培地」に溶解した液を各ウェルに500μlずつ加え、さらに培養を1日継続した。
【0070】
(マウス線維芽細胞3T3L1株の培養)
後記の実験2~3で使用のマウス線維芽細胞3T3L1株を以下の方法により培養した。
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 JCRB細胞バンクより購入したマウス線維芽細胞3T3L1株を、細胞濃度2.5×105個細胞/mlになるよう、「DMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)(Gibco社製)に10%FBS(Fetal Bovine Serum、Gibco社製)、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンを混合した培地」に浮遊状態で懸濁した培養液を、細胞培養用24ウェルプレート(IWAKI)の各ウェルに250μlずつ分注した。
【0071】
〔実験2:マウス線維芽細胞3T3L1株への炎症ダメージの評価:コラゲナーゼMMP1、MMP2、MMP9及びメラニン合成促進因子SCFの発現量〕
図5は、実験2の概念図であり、図6は、実験2の手法フローである。
(実施例5)
図5を参照しつつ、実施例5を説明する。
以下の通り、図6で示したフローにしたがって、評価試験を行うためのRNA溶解液サンプルを作製の上、リアルタイムPCRを行った。
前記の通り準備した、線維芽細胞3T3L1株6を分注した各ウェル10に、実施例1で得た脾臓細胞培養液1Aの上清A(抑制因子(IL-1Ra(符号11)及びTGF-β1(符号12))を含有する上清21)(図6(a)のフロー)を250μl、さらに、前記の通り準備した、マウスマクロファージ様細胞J774.1株4の培養液1Bの上清B(炎症誘導剤5により誘導された炎症性サイトカイン13を含有する上清22)(図6(b)のフロー)を250μl加え、37℃、相対湿度100%、二酸化炭素濃度5%の環境で1晩培養した。培養後、RNAisoキット(タカラバイオ社製)を用いて、キットを添付のマニュアルに従い操作し、培養液1C中の線維芽細胞3T3L1株6のRNAを抽出し、RNA溶解液サンプルを得た。RNA溶解に使用したRNaseフリー水は50μlとした。線維芽細胞3T3L1株6におけるコラゲナーゼMMP1、MMP2、MMP9及びメラニン合成を促進するSCFの発現量を確認するため、リアルタイムPCRを行った(図6(c)のフロー)。
【0072】
(実施例6)
前記の通り準備した、線維芽細胞3T3L1株を分注した各ウェルに、実施例3で得た脾臓細胞培養液の上清を250μl、さらに、前記の通り準備した、マウスマクロファージ様細胞J774.1株の培養液の上清を250μl加え、37℃、相対湿度100%、二酸化炭素濃度5%の環境で1晩培養した。培養後、RNAisoキット(タカラバイオ社製)を用いて、キット添付のマニュアルに従い操作し、培養液中の線維芽細胞3T3L1株のRNAを抽出し、RNA溶解液サンプルを得た。RNA溶解に使用したRNaseフリー水は50μlとした。線維芽細胞3T3L1株におけるコラゲナーゼMMP1、MMP2、MMP9及びメラニン合成を促進するSCFの発現量を確認するため、リアルタイムPCRを行った。
【0073】
(比較例2)
前記の通り準備した、線維芽細胞3T3L1株を分注した各ウェルに、比較例1で得た脾臓細胞培養液の上清を250μl、さらに、前記の通り準備した、マウスマクロファージ様細胞J774.1株の培養液の上清を250μl加え、37℃、相対湿度100%、二酸化炭素濃度5%の環境で1晩培養した。培養後、RNAisoキット(タカラバイオ社製)を用いて、キット添付のマニュアルに従い操作し、培養液中の線維芽細胞3T3L1株のRNAを抽出し、RNA溶解液サンプルを得た。RNA溶解に使用したRNaseフリー水は50μlとした。線維芽細胞3T3L1株におけるコラゲナーゼMMP1、MMP2、MMP9及びメラニン合成を促進するSCFの発現量を確認するため、リアルタイムPCRを行った。
【0074】
(参考例1)
前述のマウスマクロファージ様細胞J774.1株の培養において、播種2時間後に、LPSを含まない「RPMI1640培地(Gibco社製)に10%FBS(Fetal Bovine Serum、Gibco社製)、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンを混合した培地」を500μl加え、さらに培養を1日継続した。その培養上清を、前記の通り準備したマウス線維芽細胞3T3L1株の培養液に250μl混合した。さらに、比較例1で得た脾臓細胞培養液の上清を250μl混合し、37℃、相対湿度100%、二酸化炭素濃度5%の環境で1晩培養した。培養後、RNAisoキット(タカラバイオ社製)を用いて、キット添付のマニュアルに従い操作し、培養液中の線維芽細胞3T3L1株のRNAを抽出し、RNA溶解液サンプルを得た。RNA溶解に使用したRNaseフリー水は50μlとした。線維芽細胞3T3L1株におけるコラゲナーゼMMP1、MMP2、MMP9及びメラニン合成を促進するSCFの発現量を確認するため、リアルタイムPCRを行った。
【0075】
(3T3L1細胞への炎症ダメージの評価)
実施例5~6、比較例2及び参考例1の3T3L1細胞における、コラゲナーゼMMP1、MMP2、MMP9及びメラニン合成促進因子SCFの発現量を比較するため、リアルタイムPCRを行った結果を下記の表4に示す。また、図7~10は、結果をグラフで示したものである。各遺伝子の発現量が大きいほど、炎症によるダメージは大きい。なお、発現量は、SDM値から求め、各遺伝子のmRNA量をハウスキーピング遺伝子であるGAPDHのmRNA量で割った値で評価した。また、下表及び図7~10では、比較例2での各遺伝子発現量をそれぞれ1とした。
【0076】
【表4】
【0077】
実施例5は、線維芽細胞3T3L1株に炎症ダメージを与えるべく炎症性サイトカインを豊富に含んだJ774.1細胞上清を添加したうえで、乳酸菌LF-01株を脾臓細胞に与えることにより抗炎症性サイトカインが発現誘導された脾臓細胞の培養上清を線維芽細胞3T3L1株に与えたものである。実施例5の各遺伝子の発現量は、線維芽細胞3T3L1株に炎症ダメージを与えていない参考例1の結果と近い結果になっており、炎症ダメージを非常に抑制していることがわかる。また、この実験結果から、乳酸菌LF-01株を脾臓細胞に与えることで発現誘導された抗炎症性サイトカインは、脾臓細胞の外に分泌され、その上清が線維芽細胞の炎症ダメージを抑制していることが示された。
実験1で脾臓細胞の抗炎症性サイトカイン発現促進能が比較的高いことが示された乳酸菌M-1株を用いた実験が実施例6であるが、MMP1とMMP9の発現量を抑制しており、一定の効果が認められたものの、SCFの発現量が実施例5や比較例2よりも高く出ており、SCFも含めた炎症ダメージ抑制能はM-1株よりもLF-01株のほうが高いことが示された。
【0078】
これまで、乳酸菌が免疫関連細胞と触れることで、炎症誘導による線維芽細胞のコラゲナーゼやメラニン合成促進因子の発現を抑制する因子を分泌させるという報告は無かった。特に、本発明により、炎症誘導による線維芽細胞のコラゲナーゼ及びメラニン合成促進因子の発現を減少させる乳酸菌LF-01株を得ることに成功した。
【0079】
〔実験3:線維芽細胞3T3L1株の生存率〕
図11は、実験3の概念図であり、図12は、実験3の手法フローである。
(実施例7)
図11を参照しつつ、実施例7を説明する。
以下の通り、図12で示したフローにしたがって、細胞培養した上で、生細胞数(生存率)を確認した。
実施例5と同様に、前記の通り準備した、線維芽細胞3T3L1株6を分注した(ただし、細胞培養用96ウェルプレート(IWAKI)の各ウェル内で100μl分注とした)各ウェル10に、実施例1で得た脾臓細胞培養液1Aの上清A(抑制因子(IL-1Ra(符号11)及びTGF-β1(符号12))を含有する上清21)(図12(a)のフロー)を50μl、さらに、前記の通り準備した、マウスマクロファージ様細胞J774.1株4の培養液1Bの上清B(炎症誘導剤5により誘導された炎症性サイトカイン13を含有する上清22)(図12(b)のフロー)を50μl加え、37℃、相対湿度100%、二酸化炭素濃度5%の環境で1晩培養した。培養後、同人化学のCell Counting Kit 8を用いて、キット添付のマニュアルに従い操作し、培養液1D中の線維芽細胞3T3L1株6の生細胞数(生存率)を確認した(図12(c)のフロー)。この実験は3連で行った。
【0080】
(実施例8)
実施例6と同様に、前記の通り準備した、線維芽細胞3T3L1株を分注した(ただし、細胞培養用96ウェルプレート(IWAKI)の各ウェル内で100μl分注とした)各ウェルに、実施例3で得た脾臓細胞培養液の上清を50μl、さらに、前記の通り準備した、マウスマクロファージ様細胞J774.1株の培養液の上清を50μl加え、37℃、相対湿度100%、二酸化炭素濃度5%の環境で1晩培養した。培養後、同人化学のCell Counting Kit 8を用いて、キット添付のマニュアルに従い操作し、線維芽細胞3T3L1株の生細胞数(生存率)を確認した。この実験は3連で行った。
【0081】
(比較例3)
比較例2と同様に、前記の通り準備した、線維芽細胞3T3L1株を分注した(ただし、細胞培養用96ウェルプレート(IWAKI)の各ウェル内で100μl分注とした)各ウェルに、比較例1で得た脾臓細胞培養液の上清を50μl、さらに、前記の通り準備した、マウスマクロファージ様細胞J774.1株の培養液の上清を50μl加え、37℃、相対湿度100%、二酸化炭素濃度5%の環境で1晩培養した。培養後、同人化学のCell Counting Kit 8を用いて、キット添付のマニュアルに従い操作し、線維芽細胞3T3L1株の生細胞数(生存率)を確認した。この実験は3連で行った。
【0082】
(参考例2)
参考例1と同様に、前述のマウスマクロファージ様細胞J774.1株の培養において、播種2時間後に、LPSを含まない「RPMI1640培地(Gibco社製)に10%FBS(Fetal Bovine Serum、Gibco社製)、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシンを混合した培地」を500μl加え、さらに培養を1日継続した。その培養上清を、前記の通り準備した、線維芽細胞3T3L1株を分注した(ただし、細胞培養用96ウェルプレート(IWAKI)の各ウェル内で100μl分注とした)各ウェルに50μl混合した。さらに、比較例1で得た脾臓細胞培養液の上清を50μl混合し、37℃、相対湿度100%、二酸化炭素濃度5%の環境で1晩培養した。培養後、同人化学のCell Counting Kit 8を用いて、キット添付のマニュアルに従い操作し、線維芽細胞3T3L1株の生細胞数(生存率)を確認した。この実験は3連で行った。
【0083】
炎症誘導されたマクロファージ様細胞の上清を線維芽細胞3T3L1株に与えると、炎症ダメージにより線維芽細胞3T3L1株が一部死滅する。実施例7、実施例8、比較例3及び参考例2の線維芽細胞3T3L1株の生存率を下記の表5に示す。また、図13は、結果をグラフで示したものである。
各実施例又は比較例の生細胞数を、炎症誘導を行っていない参考例2での生細胞数で割り、%単位にすることで生存率[%]とした。
【0084】
【表5】
【0085】
実施例7は、線維芽細胞3T3L1株に炎症ダメージを与えるべく炎症性サイトカインを豊富に含んだJ774.1細胞上清を添加したうえで、乳酸菌LF-01株を脾臓細胞に与えることにより分泌される抗炎症性サイトカインを多く含む脾臓細胞上清を線維芽細胞3T3L1株に与えたものである。実施例7での線維芽細胞3T3L1株の生存率は、炎症ダメージを与えていない参考例2の結果と近い結果になっており、炎症ダメージを非常に抑制していることがわかる。
実験1で脾臓細胞の抗炎症性サイトカイン発現促進能が比較的高いことが示された乳酸菌M-1株を用いた実験が実施例8であるが、こちらも比較例3(乳酸菌非投与)に比べれば一定の効果が認められたものの、実施例7よりも生存率は低く、炎症ダメージ抑制能はM-1株よりもLF-01株のほうが高いことが示された。
【0086】
これまで、乳酸菌が免疫関連細胞と触れることで、炎症誘導による線維芽細胞の死滅を抑制する因子を分泌させるという報告は無かった。特に、本発明により、炎症誘導による線維芽細胞の死滅を大きく防止させる乳酸菌LF-01株を得ることに成功した。
【符号の説明】
【0087】
1A~1D:培養液
2A~2D:マウス脾臓細胞
3:乳酸菌検体
4:マウスマクロファージ様細胞J774.1株
5:炎症誘導剤
6:線維芽細胞3T3L1株
10:細胞培養プレートの各ウェル
11:IL-1Ra
12:TGF-β1
13:炎症性サイトカイン
21:上清A(IL-1Ra及びTGF-β1を含有する上清)
22:上清B(炎症性サイトカインを含有する上清)
【配列表フリーテキスト】
【0088】
配列番号1:GAPDHフォワード
配列番号2:GAPDHリバース
配列番号3:IL-1Raフォワード
配列番号4:IL-1Raリバース
配列番号5:TGF-β1フォワード
配列番号6:TGF-β1リバース
配列番号7:MMP1フォワード
配列番号8:MMP1リバース
配列番号9:MMP2フォワード
配列番号10:MMP2リバース
配列番号11:MMP9フォワード
配列番号12:MMP9リバース
配列番号13:SCFフォワード
配列番号14:SCFリバース
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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