(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173912
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】液状化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/67 20060101AFI20221115BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20221115BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/64
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079965
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】カーリットホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 進
(72)【発明者】
【氏名】梅山 晃典
(72)【発明者】
【氏名】瀬野 勝之
(72)【発明者】
【氏名】高田 照久
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC532
4C083AD352
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD641
4C083AD642
4C083CC02
4C083CC04
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE16
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】5,6-ジアシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸を安定に配合し、経時での変色が生じにくく、かつ使用感の良好な液状化粧料を提供することを目的とするものである。
【解決手段】
[A]次の成分(a)、(b);
(a)5,6-ジアシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸
(b)塩基性ペプチド
を配合する液状化粧料。
[B]成分(b)が、N―β―アラニル―L―ヒスチジンであることを特徴とする[1]記載の液状化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)、(b);
(a)5,6-ジアシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸
(b)塩基性ペプチド
を配合する液状化粧料。
【請求項2】
成分(b)が、N―β―アラニル―L―ヒスチジンであることを特徴とする請求項1記載の液状化粧料。
【請求項3】
成分(a)と成分(b)の配合質量比が、5:1~1:5であることを特徴とする請求項1または2に記載の液状化粧料。
【請求項4】
成分(a)の配合量が1~5質量%であり、成分(b)の配合量が1~5質量%であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液状化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
L-アスコルビン酸(ビタミンC)は美白効果などが知られ化粧品材料として有用であるが、不安定で酸化されやすいため、種々のL-アスコルビン酸誘導体の研究開発がなされており、1990年代には安定でかつ体内で分解吸収される誘導体として2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸(L-アスコルビン酸-2-グルコシド)が開発された(特許文献1~3)。
【0003】
2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸はL-アスコルビン酸よりも酸化されにくく安定性に優れる一方で、体内では容易に加水分解されL-アスコルビン酸と同等の生理活性を有することが知られており(特許文献2及び3)、化粧品、食品及び医薬品など、広い応用が期待される。また、さらに保湿性を高めたL-アスコルビン酸誘導体として、2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸中のL-アスコルビン酸残基のヒドロキシル基にアシル基が導入された、アシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸が開発された(特許文献4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2832848号公報
【特許文献2】特開平03-135992号公報
【特許文献3】特開平03-183492号公報
【特許文献4】特開平11-286497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
油分や水溶性高分子を多量に配合しない液状化粧料においては、アシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸に由来する変色が生じることがあり、従来は変色を軽減させることは困難であった。また、油剤を多く配合する化粧料では、安定性向上のため、高級アルコールや水溶性高分子等を配合して化粧料の粘度を上げておく必要があるが、従来の液状化粧料は油剤や水溶性高分子をほとんど配合することができないため、アシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸に由来するべたつきを解消することができなかった。以上のような事情に鑑み、本発明では、アシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸配合化粧料の経時での変色を低減させ、また、良好な官能が得られる化粧料を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意研究の結果、5,6-ジアシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸と塩基性ペプチドを配合した液状化粧料が上記課題を解決することを見出した。
【0007】
すなわち本発明は以下に示すとおりである。
[1] 次の成分(a)、(b);
(a)5,6-ジアシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸
(b)塩基性ペプチド
を配合する液状化粧料。
[2]成分(b)が、N―β―アラニル―L―ヒスチジンであることを特徴とする[1]記載の液状化粧料。
[3] 成分(a)と成分(b)の配合質量比が、5:1~1:5であることを特徴とする[1]または[2]に記載の液状化粧料。
[4]成分(a)の配合量が1~5質量%であり、成分(b)の配合量が1~5質量%であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の液状化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液状化粧料において、アスコルビン酸誘導体の経時での変色及びべたつきを低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の構成について説明する。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、5,6-ジアシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸は、2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸の6位にアシル基を有している下記一般式(1):
【0011】
【0012】
(式中、Rは炭化水素基を示す。nは前記と同じ。)
で示される化合物である。
【0013】
前記一般式(1)中のRで示される炭化水素基は、直鎖、分岐又は環状の、飽和又は不飽和の炭化水素基であってよく、好ましくはアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基であり、より好ましくは直鎖のアルキル基である。前記炭化水素基の炭素数は、アシル基すなわち-C(=O)R基の炭素数として数えたときに、炭素数が3~24、4~20、8~20、12~18であることが好ましく、14~16であることが特に好ましい。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、5,6-ジアシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸は、不純物として未アシル化体の2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸を含んでいてもよい。5,6-ジアシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸は90モル%以上、95モル%以上、98モル%以上、99モル%以上、99.5モル%以上、99.9モル%以上の純度であることが好ましい。不純物としての、未アシル化体である2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸は10モル%以下、5モル%以下、2モル%以下、1モル%以下、0.5モル%以下、0.1モル%以下であることが好ましく、実質的に含まないことが好ましい。
【0015】
5,6-ジアシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸は、2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸の6位にアシル基を置換させる方法によって製造することができ、6位にアシル基を置換させる方法としては、公知の方法によることができる。
5,6-ジアシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸の製造方法としては2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸に有機酸、酸ハライド、酸無水物、酸エステルなどのアシル化剤を用いて化学反応させる方法が挙げられる。前記アシル化剤としては、炭素数が3~24、4~20、8~20、12~18、好ましくは14~16である飽和若しくは不飽和の脂肪酸又はその無水物が好ましく、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリシノレイン酸並びにその無水物などが好ましい。
【0016】
本発明の一実施形態では、5,6-ジアシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸は遊離酸又は塩のいずれであってよく、塩は無機又は有機陽イオンの塩であってよい。無機陽イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオンのような第一族元素の金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオンのような第二族元素の金属イオン;鉄イオン、銅イオンのような遷移金属イオン;及び亜鉛イオン、アルミニウムイオンなどのその他の金属イオンからなる群より選ばれる金属イオン又はその組み合わせであってよい。5,6-ジアシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸を塩とすることにより、pHが中性となり、他の物質と混合したときに他の物質を分解しにくくすることができる。
【0017】
本発明に用いられる成分(a)の5,6-ジアシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸は美白効果を目的として配合されるものである。
【0018】
本発明に用いられる成分(a)の5,6-ジアシル-2-O-α-D-グルコシル-L-アスコルビン酸の配合量は、特に限定されるものではないが、0.01~10質量%(以下%と略す)が好ましく、さらに好ましくは1~5%である。この範囲にあると美白効果に優れ、良好な経時安定性が得られることから好ましい。
【0019】
本発明に用いられる成分(b)の塩基性ペプチドに関しては、水溶液中で塩基性を示すのであれば、構成するアミノ酸、結合様式、結合数は特に限定されない。中でも溶解性、安定性の面からアミノ酸が2分子結合したジペプチドが好ましく、例えば、N―β―アラニル―L―アルギニン、N―β―アラニル―L―リジン、N―β―アラニル―L―チロシン、N―β―アラニル―L―ヒスチジン、N―β―アルギニル―L―アルギニン、N―β―フェニルアラニル―L―ヒスチジン、N―β―グリシル―L―リジン、N―β―グリシル―L―アルギニン、N―β―イソロイシル―L―アルギニン、N―β―チロシル―L―アルギニン、N―β―ロイシル―L―アルギニン、N―β―ロイシル―L―ヒスチジン、N―β―リジル―L―アルギニン、N―β―フェニルアラニル―L―アルギニン、N―β―アラニル―L―アルギニン、N―β―グリシル―L―アルギニン、N―β―グリシル―L―ヒスチジン、N―β―アラニル―L―ヒスチジンが挙げられ、中でも特に代表的なものとしてN―β―アラニル―L―ヒスチジンが挙げられ、例えば、フラマ社よりカルノシンの商品名で市販されているものを使用することができる。
【0020】
本発明に用いられる成分(a)の感触と安定性の観点から、成分(a)と成分(b)の配合量の比が、5:1~1:5であることが好ましく、この範囲であれば、べたつきが抑制され、良好な経時安定性が得られることから好ましい。
【0021】
本発明に用いられる成分(b)の塩基性ペプチドは成分(a)の部分中和または完全中和を目的とし配合するものであり、成分(a)を配合した化粧料の経時安定性を良好なものとし、べたつきを軽減するために本願において必須の成分である。成分(b)の配合量は0.01~10%が好ましく、さらに好ましくは1~5%である。この範囲にあると、べたつきが軽減され、良好な経時安定性が得られることから好ましい。
【0022】
本発明において、経時安定性の観点から、液状化粧料のpHが25℃で5~8であることが好ましい。
【0023】
本発明の液状化粧料の剤型は、特に限定されるものではなく、水系、可溶化系、水中油系、油中水系のいずれの剤型においても適用できる。なかでも本発明の効果を顕著に得られるのは、水系、可溶化系の水性剤型である。
【0024】
また、本発明の液状化粧料に各種油剤を配合することは可能であるが、本発明においては油剤の配合量が2%以下、好ましくは1%以下であると、本発明の効果が顕著に発揮され、べたつきのない液状化粧料が得られることから好ましい。
【0025】
本発明における液状とは、ブルックフィールド型回転粘度計による測定値で25℃における粘度が1~2000mPa・sのものを指す。この範囲の粘度であると、本発明の効果が顕著に発揮され、べたつきのないみずみずしい使用感を得ることができる。
【0026】
また、本発明の液状化粧料に各種水溶性高分子を上記記載の粘度内において配合することは可能であるが、本発明においては水溶性高分子が0.05%未満であると、本発明の効果が顕著に発揮され、べたつきのない液状化粧料が得られることから好ましい。
【0027】
本発明の液状化粧料には、上記必須成分の他に、成分(b)以外の中和剤、油剤、界面活性剤、水溶性高分子、酸化防止剤、pH調整剤、香料、抗菌剤、防腐剤、美容成分等を、本発明の効果を損なわない範囲にて配合することができる。
【0028】
本発明の液状化粧料の用途は、化粧水、美容液、ボディローション、乳液、パック、クレンジング料、メーキャップ化粧料を例示することができ、その使用法は、手で使用する方法、不織布に含浸させて使用する方法、エアゾールに充填して使用する方法等が挙げられる。
【0029】
実施例1
:液状化粧料1(化粧水)
(成分) (%)
1.ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.3
2.セスキオレイン酸ソルビタン 0.1
3.テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 0.6
4.エタノール 10.0
5.香料 適量
6.精製水 残量
7.クエン酸 0.1
8.クエン酸ナトリウム 0.1
9.5,6-ジパルミトイル-2Oα-D-グルコシル-L-アスコルビン酸2.5
10.N―β―アラニル―L―ヒスチジン (注2) 0.6
11.水酸化カリウム 0.04
12.エデト酸二ナトリウム 0.1
13.グリセリン 10.0
(注2):フラマ社製
【0030】
(製造方法)
A:成分(1)~(5)を均一に溶解する。
【0031】
B:成分(6)~(13)を均一に溶解する。
【0032】
C:AをBに添加し、化粧水を得た。
【0033】
実施例1の液状化粧料は、25℃でpH7であり、美白効果が高く、経時安定性に優れたべたつきのない液状化粧料であった。なお、実施例1の液状化粧料の粘度は25℃で450mPa・sであった。
【0034】
実施例2
:液状化粧料2(液状美容液)
(成分) (%)
1.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 1.0
2.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
3.トリオクタン酸グリセリル 0.5
4.ホホバ油 0.5
5.スクワラン 0.5
6.精製水 残量
7.エデト酸二ナトリウム 0.1
8.メチルパラベン 0.2
9.フェノキシエタノール 0.5
10.グリセリン 5.0
11.乳酸ナトリウム 0.5
12.5,6-ジパルミトイル-2Oα-D-グルコシル-L-アスコルビン酸1.5
13.N―β―アラニル―L―ヒスチジン (注1) 0.3
14.キサンタンガム 0.05
15.精製水 10.0
16.エタノール 3.0
17.香料 適量
(注1):フラマ社製
【0035】
(製造方法)
A:成分(14)を70℃に加熱した成分(15)で膨潤する。
【0036】
B:成分(1)~(5)を70℃で加熱混合する。
【0037】
C:成分(6)~(13)を70℃で加熱溶解後、Bに添加し、乳化する。
【0038】
D:Cを室温まで冷却後、成分(16)、(17)とAを添加し、美容液を得た。
【0039】
実施例2の液状化粧料は、25℃でpH6.5であり、美白効果が高く、経時安定性に優れたべたつきのない液状化粧料であった。なお、実施例2の化粧水の粘度は25℃で1400mPa・sであった。