(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173914
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】風車制動制御装置および風車
(51)【国際特許分類】
F03D 7/04 20060101AFI20221115BHJP
F03D 15/10 20160101ALI20221115BHJP
【FI】
F03D7/04 K
F03D15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079969
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健太
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB35
3H178CC25
3H178DD03X
3H178DD06X
3H178DD43X
3H178DD52X
3H178EE06
3H178EE15
(57)【要約】
【課題】風車のリングギアに作用する負荷の急激な変動によるリングギアの破損を抑制すること。
【解決手段】風車の可動部分を構成する第1構造体および第2構造体のうちの第1構造体に設置されたピニオンギアと第2構造体に設置されたリングギアとの相対回転、および、ピニオンギアが取り付けられたモータの回転の少なくとも一方を制動する電磁ブレーキと、電磁ブレーキを動作させる電源と電磁ブレーキとの間の電源ライン上に配置され、電源ラインを開閉する無接点リレーとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車の可動部分を構成する第1構造体および第2構造体のうちの前記第1構造体に設置されたピニオンギアと前記第2構造体に設置されたリングギアとの相対回転、および、前記ピニオンギアが取り付けられたモータの回転の少なくとも一方を制動する電磁ブレーキと、
前記電磁ブレーキを動作させる電源と前記電磁ブレーキとの間の電源ライン上に配置され、前記電源ラインを開閉する無接点リレーと
を備える風車制動制御装置。
【請求項2】
風車の可動部分を構成する第1構造体および第2構造体のうちの前記第1構造体に設置されたピニオンギアと前記第2構造体に設置されたリングギアとの相対回転、および、前記ピニオンギアが取り付けられたモータの回転の少なくとも一方を制動する電磁ブレーキと、
前記電磁ブレーキを動作させる電源と前記電磁ブレーキとの間の電源ラインを100ms以下の応答速度で開放または閉鎖するリレーと
を備える風車制動制御装置。
【請求項3】
前記第1構造体はナセルである請求項1又は2に記載の風車制動制御装置。
【請求項4】
前記モータの回転軸に接続されており、前記モータの回転を減速させてトルクを増大させた動力を前記ピニオンギアに出力する減速機を更に備え、
前記電磁ブレーキは、前記モータの回転軸の回転を制動することで前記ピニオンギアの回転を制動する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の風車制動制御装置。
【請求項5】
前記モータ、前記減速機及び前記ピニオンギアを有する駆動装置と前記リングギアとの間に作用する負荷を検出するセンサと、
前記検出された負荷に応じて前記リレーに前記電源ラインの開閉を制御する制御信号を出力する制御部と
を更に備える請求項4に記載の風車制動制御装置。
【請求項6】
前記センサは前記駆動装置を前記可動部分に固定するボルトのひずみを検出することで前記負荷を検出するひずみセンサであり、
前記制御部は、前記検出された負荷が閾値以上となった場合に前記制御信号として前記電源ラインの開放または閉鎖を指令する信号を出力する
請求項5に記載の風車制動制御装置。
【請求項7】
前記リレーはフォトカプラを有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の風車制動制御装置。
【請求項8】
前記リレーはMOSFETを有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の風車制動制御装置。
【請求項9】
前記電源は三相電源であり、前記リレーは三相リレーである請求項1乃至8のいずれか1項に記載の風車制動制御装置。
【請求項10】
前記電源は三相電源であり、前記リレーは単相リレーである請求項1乃至8のいずれか1項に記載の風車制動制御装置。
【請求項11】
前記リレーと前記電磁ブレーキとの間の前記電源ライン上に配置されたサージ保護素子を更に備える請求項1乃至10のいずれか1項に記載の風車制動制御装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の風車制動制御装置を備える風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車制動制御装置および風車に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置等に用いられる風車では、風車のブレードを効率的に回転させるために、風車のロータおよびナセルを風向きに応じて旋回させるヨー制御が行われる。ヨー制御においては、例えば、ナセル内に設けられた駆動装置からタワー内の上端部に設けられたリングギアに駆動力(すなわち、負荷)を伝達させることで、駆動装置をナセルとともに旋回させる。
【0003】
ヨー制御による旋回後の位置にナセルを保持するため、風車には、例えば特許文献1に示すように、駆動装置の駆動軸の回転を制動する電磁ブレーキが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
風向きや風速の急激な変化によって、駆動装置からリングギアに作用する負荷が急激に変動することがある。リングギアに作用する負荷の急激に変動によるリングギアの破損を抑制するため、電磁ブレーキをすみやかに開放することが求められる。
【0006】
しかしながら、従来は、電磁ブレーキの開閉に電磁接触器を用いていたため、電磁ブレーキを瞬時開放することが困難であった。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、風車のリングギアに作用する負荷の急激な変動によるリングギアの破損を抑制することができる風車制動制御装置および風車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、風車の可動部分を構成する第1構造体および第2構造体のうちの前記第1構造体に設置されたピニオンギアと前記第2構造体に設置されたリングギアとの相対回転、および、前記ピニオンギアが取り付けられたモータの回転の少なくとも一方を制動する電磁ブレーキと、
前記電磁ブレーキを動作させる電源と前記電磁ブレーキとの間の電源ライン上に配置され、前記電源ラインを開閉する無接点リレーと
を備える風車制動制御装置である。
【0009】
本発明は、風車の可動部分を構成する第1構造体および第2構造体のうちの前記第1構造体に設置されたピニオンギアと前記第2構造体に設置されたリングギアとの相対回転、および、前記ピニオンギアが取り付けられたモータの回転の少なくとも一方を制動する電磁ブレーキと、
前記電磁ブレーキを動作させる電源と前記電磁ブレーキとの間の電源ラインを100ms以下の応答速度で開放または閉鎖するリレーと
を備える風車制動制御装置である。
【0010】
本発明による風車制動制御装置において、前記第1構造体はナセルであってもよい。
【0011】
本発明による風車制動制御装置において、前記モータの回転軸に接続されており、前記モータの回転を減速させてトルクを増大させた動力を前記ピニオンギアに出力する減速機を更に備え、
前記電磁ブレーキは、前記モータの回転軸の回転を制動することで前記ピニオンギアの回転を制動してもよい。
【0012】
本発明による風車制動制御装置において、前記モータ、前記減速機及び前記ピニオンギアを有する駆動装置と前記リングギアとの間に作用する負荷を検出するセンサと、
前記検出された負荷に応じて前記リレーに前記電源ラインの開閉を制御する制御信号を出力する制御部と
を更に備えてもよい。
【0013】
本発明による風車制動制御装置において、前記センサは前記駆動装置を前記可動部分に固定するボルトのひずみを検出することで前記負荷を検出するひずみセンサであり、
前記制御部は、前記検出された負荷が閾値以上となった場合に前記制御信号として前記電源ラインの開放または閉鎖を指令する信号を出力してもよい。
【0014】
本発明による風車制動制御装置において、前記リレーはフォトカプラを有してもよい。
【0015】
本発明による風車制動制御装置において、前記リレーはMOSFETを有してもよい。
【0016】
本発明による風車制動制御装置において、前記電源は三相電源であり、前記リレーは三相リレーであってもよい。
【0017】
本発明による風車制動制御装置において、前記電源は三相電源であり、前記リレーは単相リレーであってもよい。
【0018】
本発明による風車制動制御装置において、前記リレーと前記電磁ブレーキとの間の前記電源ライン上に配置されたサージ保護素子を更に備えてもよい。
【0019】
本発明は、前記風車制動制御装置を備える風車である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、風車のリングギアに作用する負荷の急激な変動によるリングギアの破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施形態による風車制動制御装置を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態による風車を示す斜視図である。
【
図3】第1の実施形態による風車制動制御装置を示す回路図である。
【
図4】第1の本実施形態による風車制動制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】第1の本実施形態の変形例による風車制動制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】第2の本実施形態による風車において、タワー及びナセルの一部を示す断面図である。
【
図7】第2の実施形態による風車において、可動部分における駆動装置の配置を示す平面図である。
【
図8】第2の実施形態による風車において、部分的な断面を含む駆動装置の側面図である。
【
図9】第2の実施形態による風車において、部分的な断面を含む駆動装置の据え付け部の側面図である。
【
図10】第2の実施形態による風車制動制御装置において、電磁ブレーキを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図面中には、図示と理解のしやすさの便宜上、縮尺及び寸法比等を、実物のそれらから適宜変更又は誇張されている部分がある。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による風車制動制御装置200を示すブロック図である。
図2は、第1の実施形態による風車101を示す斜視図である。
図3は、第1の実施形態による風車制動制御装置200を示す回路図である。
【0024】
風車制動制御装置200は、後述する電磁ブレーキ50による風車101の制動を制御する装置である。
図1に示すように、風車制動制御装置200は、電磁ブレーキ50と、無接点リレー210と、制御部220と、保護回路230とを備える。
【0025】
電磁ブレーキ50は、風車101の可動部分を構成する第1構造体および第2構造体のうちの第1構造体に設置されたピニオンギア24aと第2構造体に設置されたリングギア107との相対回転、および、ピニオンギア24aが取り付けられたモータ23の回転の少なくとも一方を制動する装置である。「制動」との用語は広義に解釈され、止まっているものの停止状態を保持すること、及び、動いているものを制止することの双方を含む。
【0026】
図2に示すように、風車101は、タワー102と、ナセル103と、ロータ104と、ブレード105とを備える。タワー102は、地上から鉛直方向上向きに延びている。ナセル103は、タワー102の上部に、タワー102に対して回転可能に設置されている。ナセル103の回転は、タワー102の長手方向を回転中心とするヨー回転である。ナセル103は、モータ23を有する駆動装置10によって駆動される。ナセル103の駆動装置10は、モータ23の回転を減速させてトルクを増大させた動力をピニオンギア24aに出力する減速機を更に有していてもよい。ナセル103の内部には、例えば、動力伝達軸や当該動力伝達軸に接続された発電機等の風力発電に必要な機器類が設置されている。ロータ104は、ナセル103内の動力伝達軸に接続され、ナセル103に対して回転可能である。ブレード105は、複数枚(
図2に示す例において3枚)設けられている。複数のブレード105は、ナセル103に対するロータ104の回転軸から放射状に延びている。これらのブレード105は、ロータ104の回転軸回りに等角度を空けて設けられている。
【0027】
各ブレード105は、その長手方向を中心としてロータ104に対してピッチ方向に回転可能である。各ブレード105のロータ104との接続箇所は可動部分となっており、各ブレード105及びロータ104は相対的に回転移動することができる。ブレード105は、モータ23を有する駆動装置10によって回転駆動される。ブレード105の駆動装置10は、モータ23の回転を減速させてトルクを増大させた動力をピニオンギア24aに出力する減速機を更に有していてもよい。
【0028】
例えば、風車101の第1構造体は、ナセル103であり、第2構造体は、タワー102である。この場合、電磁ブレーキ50は、ナセル103に設置されたピニオンギア24aと、ピニオンギア24aと噛み合うようにタワー102に設置されたリングギア107との相対回転、および、ピニオンギア24aが取り付けられたモータ23の回転の少なくとも一方を制動する。
【0029】
風車101の第1構造体は、タワー102であり、第2構造体は、ナセル103であってもよい。この場合、電磁ブレーキ50は、タワー102に設置されたピニオンギア24aと、ピニオンギア24aと噛み合うようにナセル103に設置されたリングギア107との相対回転、および、ピニオンギア24aが取り付けられたモータ23の回転の少なくとも一方を制動する。
【0030】
風車101の第1構造体は、ブレード105であり、第2構造体は、ロータ104であってもよい。この場合、電磁ブレーキ50は、ブレード105に設置されたピニオンギア24aと当該ピニオンギア24aと噛み合うようにロータ104に設置されたリングギア107との相対回転、および、当該ピニオンギア24aが取り付けられたモータ23の回転の少なくとも一方を制動する。
【0031】
電磁ブレーキ50は、第1構造体に設置されたピニオンギア24aと第2構造体に設置されたリングギア107との相対回転、および、当該ピニオンギア24aが取り付けられたモータ23の回転の少なくとも一方を制動できるのであれば具体的な態様は特に限定されない。例えば、電磁ブレーキ50は、モータ23の回転軸の回転を制動することでモータ23に取り付けられたピニオンギア24aの回転を制動してもよい。この他にも、例えば、電磁ブレーキ50は、第1構造体と第2構造体との間に磁力による摩擦力を作用させることで、第1構造体に設置されたピニオンギア24aと第2構造体に設置されたリングギア107との相対回転を制動してもよい。
【0032】
図3に示すように、電磁ブレーキ50は、三相電源で駆動されてもよい。
図3に示す例において、電磁ブレーキ50は、三相電源に接続されたコイル51を有する。コイル51は、例えば、三相電源から電力を供給されることで、モータ23の回転の制動を解除する磁力を発生させる。コイル51は、三相電源から電力を供給されることで、モータ23の回転を制動する磁力を発生させてもよい。三相電源は、モータ23の回転駆動にも用いられてもよい。
【0033】
無接点リレー210は、電磁ブレーキ50を動作させる電源と電磁ブレーキ50との間の電源ライン上に配置され、機械的な接点を介さずに電源ラインを開閉する装置である。無接点リレー210は、半導体リレーとも呼ぶ。
図3に示す例において、無接点リレー210は、三相電源と電磁ブレーキ50との間の電源ライン上に、各相ごとに配置されている。すなわち、
図3に示す例において、無接点リレー210は、3つ配置されている。
図3に示す例において、電源は三相であるのに対して、無接点リレー210は単相である。各無接点リレー210は、後述する制御部220からの制御信号に応じて、対応する電源ラインを同時に開閉する。制御信号に応じて同時に三相電源の各相の電源ラインを開閉する3つの単相の無接点リレー210を設けることで、駆動装置10とリングギア107との間に作用する負荷の急激な変動に応じた電磁ブレーキ50の開閉制御を迅速に行うことができる。無接点リレー210は、例えば、フォトカプラを有する。無接点リレー210は、MOSFETを有していてもよい。また、単相の無接点リレー210を3つ配置する代わりに、三相回路を有する三相の無接点リレーを1つ配置してもよい。これにより、部品点数を削減することができる。
【0034】
制御部220は、電源ラインの開閉を制御する制御信号を無接点リレー210に出力することで、無接点リレー210による電源ラインの開閉を制御する装置である。制御部220は、駆動装置10とリングギア107との間に作用する負荷を検出するセンサ4で検出された負荷(すなわち、センサ出力)が閾値以上となった場合に、制御信号として電源ラインの閉鎖を指令するオン信号を無接点リレー210に出力する。オン信号に応じて、無接点リレー210は電源ラインを閉鎖する。電源ラインが閉鎖されることで、電源から電磁ブレーキ50に電力が供給される。電源から電力が供給されることで、電磁ブレーキ50は、モータ23の回転を制動するロック状態からモータ23の回転の制動を解除するフリー状態へと切り替わる。制御部220は、例えば、CPUや電気回路などのハードウェアで構成される。制御部220の一部をソフトウェアで構成してもよい。
【0035】
駆動装置10とリングギア107との間に作用する負荷の急激な変動に応じて電磁ブレーキ50を速やかにフリー状態に切り替えるため、オン信号に対する無接点リレー210の応答速度は短いほど好ましい。例えば、無接点リレー210は、電源ラインを100ms以下の応答速度で閉鎖する。好ましくは、無接点リレー210は、電源ラインを10ms以下の応答速度で閉鎖する。さらに好ましくは、無接点リレー210は、電源ラインを1ms以下の応答速度で閉鎖する。
【0036】
オン信号の持続時間は、例えばmsオーダーの短い時間である。したがって、電磁ブレーキ50は、モータ23の回転の制動を一時的(瞬時的)に解除し、その後は、再びモータ23の回転を制動する。
【0037】
なお、電磁ブレーキ50は、電源からの電力の供給が遮断されることでロック状態からフリー状態へと切り替わる構成であってもよい。この場合、制御部220は、センサ4で検出された負荷が閾値以上となった場合に、制御信号として電源ラインの開放を指令するオフ信号を無接点リレー210に出力すればよい。オフ信号に応じて、無接点リレー210は電源ラインを開放する。電源ラインが開放されることで、電源から電磁ブレーキ50への電力の供給が遮断される。電源からの電力の供給が遮断されることで、電磁ブレーキ50は、ロック状態からフリー状態へと切り替わる。この場合、オフ信号に対する無接点リレー210の応答速度は短いほど好ましい。例えば、無接点リレー210は、電源ラインを100ms以下の応答速度で開放する。好ましくは、無接点リレー210は、電源ラインを10ms以下の応答速度で開放する。さらに好ましくは、無接点リレー210は、電源ラインを1ms以下の応答速度で開放する。
【0038】
保護回路230は、無接点リレー210と電磁ブレーキ50との間の電源ライン上に配置され、無接点リレー210のオンオフにともなって生じるサージから風車制動制御装置200を保護する回路である。
図3に示す例において、保護回路230は、3つのサージ保護素子231を有する。サージ保護素子231は、例えば、バリスタであってもよい。
【0039】
次に、第1の実施形態による風車制動制御装置200の動作例について、
図4および
図5のフローチャートを参照して説明する。
図4は、第1の本実施形態による風車制動制御装置200の動作例を示すフローチャートである。
図4は、電磁ブレーキ50が電源からの電力供給によってロック状態からフリー状態へと切り替わる構成である場合の風車制動制御装置200の動作例を示している。
図5は、第1の本実施形態の変形例による風車制動制御装置200の動作例を示すフローチャートである。
図5は、電磁ブレーキ50が電源からの電力供給の遮断によってロック状態からフリー状態へと切り替わる構成である場合の風車制動制御装置200の動作例を示している。
【0040】
図4に示す例において、制御部220は、先ず、駆動装置10とリングギア107との間に作用する負荷の検出結果を示すセンサ出力をセンサ4から取得する(ステップS1)。
【0041】
センサ出力を取得した後、制御部220は、センサ出力が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0042】
センサ出力が閾値以上である場合(ステップS2:Yes)、制御部220は、無接点リレー210にオン信号を出力して電源と電磁ブレーキ50との間の電源ラインを閉鎖させる(ステップS3)。これにより、電源から電磁ブレーキ50に電力が供給され、電磁ブレーキ50がロック状態からフリー状態へと切り替わる。
【0043】
一方、センサ出力が閾値以上でない場合(ステップS2:No)、制御部220は、センサ出力の取得を繰り返す(ステップS1)。
【0044】
図5に示す例において、制御部220は、先ず、駆動装置10とリングギア107との間に作用する負荷の検出結果を示すセンサ出力をセンサ4から取得する(ステップS11)。
【0045】
センサ出力を取得した後、制御部220は、センサ出力が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0046】
センサ出力が閾値以上である場合(ステップS12:Yes)、制御部220は、無接点リレー210にオフ信号を出力して電源と電磁ブレーキ50との間の電源ラインを開放させる(ステップS13)。これにより、電源から電磁ブレーキ50への電力供給が遮断され、電磁ブレーキ50がロック状態からフリー状態へと切り替わる。
【0047】
一方、センサ出力が閾値以上でない場合(ステップS12:No)、制御部220は、センサ出力の取得を繰り返す(ステップS11)。
【0048】
以上述べたように、第1の実施形態によれば、駆動装置10とリングギア107との間に作用する負荷の急激な変動によって負荷が過大になった場合に、センサ出力が閾値以上になったことに応じて無接点リレー210が電源と電磁ブレーキ50との間の電源ラインをすみやかに閉鎖または開放することができる。電源ラインをすみやかに閉鎖または開放することで、ピニオンギア24aとリングギア107との相対回転の制動およびモータ23の回転の制動の少なくとも一方をすみやかに解除することができる。これにより、負荷によるリングギア107の破損を抑制することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、本発明のより具体的な適用例を示す第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の本実施形態による風車101において、タワー102及びナセル103の一部を示す断面図である。
図7は、第2の実施形態による風車101において、可動部分における駆動装置10の配置を示す平面図である。
図8は、第2の実施形態による風車101において、部分的な断面を含む駆動装置10の側面図である。
図9は、第2の実施形態による風車101において、部分的な断面を含む駆動装置10の据え付け部の側面図である。
図10は、第2の実施形態による風車制動制御装置200において、電磁ブレーキ50を示す断面図である。
【0050】
駆動装置10は、風車101のタワー102に対して回転可能に設置されたナセル103を駆動することができる。または、駆動装置10は、ナセル103に取り付けられたロータ104に対してピッチ方向に揺動可能に設置されたブレード105を駆動することができる。すなわち、駆動装置10は、タワー102に対してナセル103を回転させるようにヨー駆動を行うヨー駆動装置として用いることができ、または、ロータ104に対してブレード105の軸部を回転させるようにピッチ駆動を行うピッチ駆動装置として用いることもできる。以下の説明では、駆動装置10をヨー駆動装置として用いる場合について例示するが、駆動装置10をピッチ駆動装置として用いる場合についても同様に本発明を適用することが可能である。
【0051】
図6に示すように、ナセル103は、その底部103aに設けられた軸受106を介して、タワー102の上部に対して回転可能に設置されている。タワー102の上部には、内周に内歯が形成されたリングギア107が固定されている。リングギア107の歯は、その内周に設けられた内歯に限らず、その外周に設けられた外歯であってもよい。各図面において、リングギア107の各歯の図示は省略されている。
【0052】
図7に示すように、リングギア107は、円周状に形成され、中心軸線Cmを有する。ナセル103は、リングギア107の中心軸線Cmを中心として回転する。図示された例において、リングギア107の中心軸線Cmは、タワー102の長手方向と一致している。以下では、リングギア107の中心軸線Cmと平行な方向を、単に、「軸方向dl」とも呼ぶ。
【0053】
図示された風車101では、
図7に示すように、リングギア107の中心軸線Cmを中心として回転対称に配置された一対の風車駆動システム5が設けられている。各風車駆動システム5は、3つの駆動装置10を含む。一対の風車駆動システム5に含まれる合計6つの駆動装置本体20は、リングギア107の中心軸線Cmを中心とする円周cl1(
図7参照)に沿って配置される。各風車駆動システム5に含まれる3つの駆動装置10は、円周cl1に沿って、一定の間隔をあけて配列されている。
【0054】
図6及び
図7に示すように、駆動装置10は、相対的に回転移動するナセル103(第1構造体)及びタワー102(第2構造体)のうち、ナセル103に設けられている。
【0055】
図8及び
図9に示すように、各駆動装置10は、ナセル103に固定された駆動装置本体20と、駆動装置本体20をナセル103に固定するボルト30aのひずみを検出するひずみセンサ40とを備える。
【0056】
駆動装置本体20は、モータ23と、減速機25と、ピニオンギア24aとを有する。モータ23は、電源から電力が供給されることで駆動軸48a(すなわち、回転軸)から動力(すなわち、回転力)を出力するモータ駆動部48と、駆動軸48aの回転を制動する電磁ブレーキ50とを有する。減速機25は、モータ23の駆動軸48aおよび出力軸24に接続されている。減速機25は、駆動軸48aから入力されたモータ23の回転を減速させてトルクを増大させた動力を出力軸24に出力する。ピニオンギア24aは、減速機25に接続された出力軸24上に設けられている。ピニオンギア24aは、タワー102に設けられたリングギア107の歯と噛み合っている。ピニオンギア24aは、減速機25によってトルクが増大された動力をリングギア107に伝達させることで、リングギア107の内周方向に沿って回転しながら移動する。これにより、ピニオンギア24aを有する駆動装置本体20がリングギア107の内周方向に沿って移動し、駆動装置本体20が固定されたナセル103がリングギア107の中心軸線Cm回りに旋回する。
【0057】
このような構成を有する各駆動装置10の駆動により、風車101の可動部分の一方であるナセル103(第1構造体)を、風車101の可動部分の他方であるタワー102(第2構造体)に対して回転させることができる。特に上述の風車駆動システム5に含まれる複数の駆動装置10を同期して動作させることで十分な大きさの駆動力が確保され、重量物であるナセル103をタワー102に対して適切に回動させることができる。
【0058】
より具体的には、駆動装置10は、
図9に示すように、駆動装置本体20のフランジ22に形成された貫通孔22aを通過するようにして配置される締結具30を介してナセル103に固定されている。締結具30は、ボルト30a及びナット30bを有する。ひずみセンサ40は、治具49を用いてナセル103に固定されている。ひずみセンサ40は、ボルト30aのひずみを検出することで、モータ23、減速機25及びピニオンギア24aを有する駆動装置10とリングギア107との間に作用する負荷を検出する。すなわち、ひずみセンサ40は、第1の実施形態で説明したセンサ4の具体的な適用例である。ひずみセンサ40の取り付け位置としては、ピニオンギア24aとリングギア107との間における負荷以外の外乱が作用しない場所或いは作用し難い場所が好ましく、具体的には、例えば、ケース21がより好ましい。
【0059】
図8に示すように、駆動装置10の出力軸24は、ケース21内に回転可能に保持されている。モータ23は、ケース21の上部に固定されている。減速機25は、ケース21内に収容されている。減速機25は、モータ23の回転を減速させてトルクを増大させた動力を出力する構成であれば具体的な態様は特に限定されない。例えば、偏心揺動歯車型の減速機構、遊星歯車型の減速機構、或いは偏心揺動歯車型と遊星歯車型とが組み合わされた減速機構を減速機25に採用することができる。
【0060】
減速機25から離間する側となる出力軸24の端部はケース21から延出し、出力軸24のこの延出部分にピニオンギア24aが形成されている。
図6及び
図9に示すように、出力軸24は、ナセル103の底部103aに形成された貫通穴103bを貫通しており、これにより、ピニオンギア24aがリングギア107と噛み合うことができる。ピニオンギア24aは、リングギア107の内歯と噛み合う外歯を有する。駆動装置10は、出力軸24の回転軸線Crと一致する長手方向軸線を有する。駆動装置10がナセル103に固定された状態において、出力軸24の回転軸線Crは風車101の軸方向dlと平行となる。
【0061】
図8及び
図9に示すように、ケース21は筒状に形成され、その長手方向軸線が回転軸線Cr上に位置するように配置されている。ケース21は、回転軸線Crに沿った両端が開口している。出力軸24のピニオンギア24aは、タワー102側のケース21の開口から露出している。タワー102とは反対側のケース21の開口に、モータ23が取り付けられている。また、ケース21はフランジ22を有している。
図7に示す例において、フランジ22は出力軸24の回転軸線Crを中心とする円周cl3に沿って環状に形成されている。
図8及び
図9に示すように、フランジ22には、軸方向dlに延びるように既述した貫通孔22aが形成されている。貫通孔22aは、出力軸24の回転軸線Crを中心とする円周上に多数形成されており、図示された例では12個の貫通孔22aが形成されている。そして、締結具30は、駆動装置本体20のフランジ22に形成された貫通孔22aを通過して、フランジ22を貫通している。
図9に示す例において、ボルト30aは、駆動装置本体20のフランジ22及びナセル103の底部103aを貫通する。ナット30bは、ナセル103の側からボルト30aと噛み合う。ボルト30a及びナット30bの組み合わせによって構成される締結具30は、駆動装置本体20の貫通孔22a毎に設けられている。図示の例では、各駆動装置本体20が、12個の締結具30によって、12箇所でナセル103に取り付けられている。
【0062】
なお、締結具30は図示された例に限られず、ナット30bを用いることに代えて、ボルト30aの雄ねじが螺合可能な雌ねじが、ナセル103の貫通穴に形成されていてもよい。この場合、締結具30はボルト30aによって構成され、ボルト30aの雄ねじがナセル103の貫通穴の雌ねじに噛み合うことで、駆動装置本体20をナセル103に固定することができる。
【0063】
ひずみセンサ40は、第1の実施形態で説明した制御部220(
図1参照)に電気的に接続されている。ボルト30aのひずみの検出結果を示すひずみセンサ40の出力は、電気信号として制御部220に入力される。制御部220は、ひずみセンサ40の出力に基づいて電磁ブレーキ50によるモータ23の回転の制動を制御する。
【0064】
例えば、電磁ブレーキ50は、
図10に示すように構成されていてもよい。
図10に示す例において、電磁ブレーキ50は、モータ駆動部48のカバー72のうち減速部25と反対側の上端部に取り付けられている。電磁ブレーキ50は、ハウジング50aと、摩擦板56と、アーマチャ57と、弾性部材55と、電磁石53と、第1摩擦板連結部77とを有する。
【0065】
ハウジング50aは、摩擦板56、アーマチャ57、弾性部材55、電磁石53及び第1摩擦板連結部77を収納する構造体である。ハウジング50aは、モータ駆動部48のカバー72に固定されている。
【0066】
摩擦板56は、第1摩擦板連結部77を介してモータ駆動部48の駆動軸48aに連結されている。摩擦板56の貫通孔には、駆動軸48aの上端部が貫通した状態で配置されている。
【0067】
第1摩擦板連結部77は、スプライン軸77a及びスライド軸77bを有する。スプライン軸77aは、キー部材(図示省略)によるキー結合とストッパリング77cによる係合とによって、駆動軸48aの上端部の外周に固定されている。スライド軸77bは軸方向へスライド移動可能にスプライン軸77aに取り付けられている。また第1摩擦板連結部77には、スプライン軸77aに対するスライド軸77bの軸方向の位置を所定の位置に位置決めするバネ機構(図示省略)が設けられている。スライド軸77bにおけるフランジ状の部分の外周の縁部には摩擦板56の内周が固定されており、摩擦板56はスライド軸77bと一体に結合されている。
【0068】
上記の構成を有する電磁ブレーキ50において、駆動軸48aが回転すると、スプライン軸77a、スライド軸77b及び摩擦板56も駆動軸48aとともに回転する。電磁石53が励磁された状態では、駆動軸48a及びスプライン軸77aに対して軸方向にスライド移動可能に保持されたスライド軸77b及び摩擦板56は、バネ機構により、スプライン軸77aの軸方向に関して所定位置に位置決めされている。この所定位置に配置されている摩擦板56は、後述のアーマチャ57及び摩擦板58から離間している。
【0069】
アーマチャ57は、摩擦板56に当接可能に設けられている。摩擦板56に当接することで、アーマチャ57は、駆動軸48aの回転を制動する制動力を発生させる。
【0070】
モータ駆動部48のカバー72の上端部のうち摩擦板56に対向する箇所には、摩擦板58が設けられている。摩擦板58は、摩擦板56と当接可能な位置に設置されている。
【0071】
弾性部材55は、後述する電磁石53の電磁石本体53aに保持されている。弾性部材55は、電磁石53側から摩擦板56側に向かってアーマチャ57を押圧する。
図8に示す例において、弾性部材55は、電磁石本体53aにおいて、駆動軸48aを中心とした同心円状に内周側及び外周側の2つの配列で周方向に配置されている。なお、上述の弾性部材55の配置形態は例示に過ぎず、弾性部材55は他の配置形態をとってもよい。
【0072】
電磁石53は、電磁石本体53a及びコイル51を含み、アーマチャ57を磁力によって引き付けることによりアーマチャ57を摩擦板56から離間させる。
【0073】
電磁石本体53aは、アーマチャ57に対向する側とは反対側の上端部において、ハウジング51に固定されている。電磁石本体53aには、アーマチャ57に向かって開口する複数の弾性部材保持穴53cが設けられており、これらの弾性部材保持穴53cの各々に弾性部材55が配置される。コイル51は、電磁石本体53aの内部に設置されている。
【0074】
電磁ブレーキ50による駆動軸48aの回転の制動の解除が行われる際には、制御部220のオン信号に応じて電源からコイル51に電力(すなわち、電流)が供給されて電磁石53が通電される。電磁石53が通電されて励磁された状態になると、電磁石53において発生した磁力によって、アーマチャ57がコイル51に引き付けられる。このときアーマチャ57は、弾性部材55の弾性力(バネ力)に抗して、電磁石53に引き付けられる。これにより、アーマチャ57が摩擦板56から離間し、駆動軸48aの回転の制動が解除される。したがって、電磁石53が励磁されて駆動軸48aの回転の制動が解除された状態では、アーマチャ57は電磁石本体53aに当接した状態となる。
【0075】
一方、電磁ブレーキ50による駆動軸48aの回転の制動が行われる際には、制御部2220のオン信号が出力されないことで、電源からコイル51への電源の供給が遮断される。電源の供給が遮断されることで、電磁石53は消磁される。電磁石53が消磁されることで、弾性部材55の弾性力によってアーマチャ57が摩擦板56に向かって押圧され、アーマチャ57が摩擦板56に当接する。これにより、アーマチャ57と摩擦板56との間で摩擦力が生じ、駆動軸48aの回転が制動される。なお、
図10は、電磁石53が消磁された状態であり、駆動軸48aの回転が制動されている状態を示す。
【0076】
また、電磁石53が消磁されて駆動軸48aが制動された状態では、摩擦板56は、アーマチャ57から作用する弾性力によって、摩擦板58にも当接している。したがって電磁石53が消磁されると、摩擦板56は、弾性部材55からの弾性力によって、アーマチャ57と摩擦板58との間で挟み込まれた状態となる。これにより、アーマチャ57と摩擦板56との間で生じる摩擦力と、摩擦板56と摩擦板58との間で生じる摩擦力とによって、駆動軸48aの回転が非常に強く制動される。
【0077】
第2の実施形態によれば、電磁ブレーキ50によって出力軸24よりもトルクが小さい減速機25の上流の駆動軸48aの回転を制動することで、駆動軸48aを電磁ブレーキ50による少ない制動力で適切に制動することができる。
【0078】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【0079】
また、上述した変形例を含む実施の形態で説明した構成の一部を組み合わせたり、置き換えたりすることも可能である。更に、上述した変形例を含む実施の形態で説明した構成の一部のみを適用することも可能である。これらの場合、本明細書に明示されたものの他、それぞれの構成から導かれる特有の構成を有する。
【符号の説明】
【0080】
101 風車
102 タワー
103 ナセル
24a ピニオンギア
50 電磁ブレーキ
107 リングギア
210 無接点リレー