(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173920
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 9/12 20060101AFI20221115BHJP
B29B 7/48 20060101ALI20221115BHJP
B29C 48/40 20190101ALI20221115BHJP
B29C 48/655 20190101ALI20221115BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B29B9/12
B29B7/48
B29C48/40
B29C48/655
C08J3/20 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079980
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】吉野 崇史
(72)【発明者】
【氏名】田尻 敏之
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4F207
【Fターム(参考)】
4F070AA08
4F070AA50
4F070AB08
4F070AB09
4F070AB11
4F070AB26
4F070AC55
4F070AC79
4F070AE07
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC06
4F201AA13
4F201AA28
4F201AA50
4F201AB05
4F201AC01
4F201AR07
4F201AR12
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC12
4F201BC33
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK26
4F201BK42
4F201BL31
4F207AA13
4F207AA28
4F207AA50
4F207AB05
4F207AC01
4F207AR07
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK13
4F207KL15
4F207KL43
4F207KL45
(57)【要約】 (修正有)
【課題】色相に優れ、均一で、優れた難燃性のポリカーボネート樹脂組成物ペレットを、高い吐出量で安定的に生産する製造方法を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂組成物を二軸押出機に入れ、第1混練部3は、ニーディングディスクとして3条偏心ニーディングディスクを使用し、長さが2.5D~6.5D(Dはシリンダー内径)の構成からなり、第2混練部6は、ニーディングディスクとして3条偏心ニーディングディスクを使用し、長さが1.5D~4.5Dの構成よりなることを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂をペレット中に40質量%超含む樹脂ペレット(A)30~95質量%、室温で液状のリン酸エステル難燃剤(B)5質量%以上40質量%未満、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)0~50質量%、ABS樹脂(D)0~30質量%、及び(B)以外の他の添加剤(E)0~15質量%[ただし、(A)~(E)の合計は100質量%]からなるポリカーボネート樹脂組成物ペレットを二軸押出機で製造する方法であって、
前記(A)、(C)、(D)及び(E)を二軸押出機に入れ、
第1混練部で混練する第1工程、第1混練部の下流部に前記(B)を添加し第2混練部で混練する第2工程、第2混練部の下流部でベントを減圧にして脱揮し押出する第3工程、を含み、
第1混練部は、ニーディングディスクとして3条偏心ニーディングディスクを使用し、長さが2.5D~6.5D(Dはシリンダー内径)の構成からなり、第2混練部は、ニーディングディスクとして3条偏心ニーディングディスクを使用し、長さが1.5D~4.5Dの構成よりなることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。
【請求項2】
樹脂ペレット(A)の量が、(A)~(E)の合計100質量%中、30~80質量%である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
室温で液状のリン酸エステル難燃剤(B)の量が、(A)~(E)の合計100質量%中、5質量%以上25質量%未満である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
樹脂ペレット(A)が樹脂リサイクルペレットを含む請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
樹脂成分として、ポリカーボネート樹脂を50~100質量%、ABS樹脂及び/又はポリエステル樹脂を50~0質量%(これらの合計は100質量%)を含有する請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1混練部の長さが3.5~5.5Dの範囲にあり、第2混練部の長さが2.0D~4.0Dの範囲にある請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
3条偏心ニーディングディスクが、各辺の中央部が膨出する略三角形状のディスクであり、スクリュー軸に偏心的に回転するように装着されている請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
偏心量が0.01D~0.07D(Dはシリンダー内径)で、スクリューに装着されている請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
3条偏心ニーディングディスクは、互いの角度間隔θが110°~130°である3つの頂部を有し、頂部における半径が0.4D~0.5D、各頂部間の中央部の半径が0.25D~0.38D(Dはシリンダー内径)の範囲にある請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性及び機械的物性に優れた樹脂であることから、例えば電気機器、電子機器、自動車等の車両、プリンターや複写機等のOA機器、住宅、建築、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用されている。
これらの製品は、高温による火災防止を目的とした安全上の観点から難燃性が要求され、特に、難燃化されたポリカーボネート樹脂組成物は、プリンターや複写機等のOA機器、パソコン、各種携帯端末、バッテリー等の筐体等として好適に使用されている。
【0003】
一方、近年、環境保護意識の高まりから樹脂を再生利用することが社会的に強く要請されており、また、各種法制度により規制も強化されつつある。そして、例えばOA機器や電子機器等の外装、筐体等には特にリサイクル樹脂の使用要求があり、リサイクル樹脂を所定量配合したポリカーボネート樹脂組成物が要求されるケースが多くなってきている。
【0004】
使用済製品から熱可塑性プラスチックを再生するには、例えば特許文献1にあるように、機器部品から回収された熱可塑性プラスチック部材を粉砕し、洗浄液で洗浄し、粉砕混合物から熱可塑性プラスチック粉砕物を分離することが行われる。
【0005】
ポリカーボネート樹脂のリサイクル材(再生材)の原料としては、例えばCDやDVD等の光学ディスク、導光板、自動車ヘッドランプレンズ、自動車窓ガラスや風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材、シート等が挙げられ、これらを粉砕、洗浄、分離回収したものをペレット化されたペレットが利用されている。また、成形時のスプルーやランナー等の副生物もリペレットされて用いられる。
【0006】
このような再生材を特にOA機器等に採用するためには高い難燃性が必要である。
ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与する手段としては、従来、有機臭素化合物等のハロゲン系難燃剤をポリカーボネート樹脂に配合する手法が広く知られているが、近年はリン系難燃剤をポリカーボネート樹脂に配合することが提案され、現在ではリン系難燃剤が主体になりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
リン系難燃剤、例えばリン酸エステル系難燃剤には、室温で固体状のものと液状のものがあり、液状のものは押出機への液体添加が必要となる。しかしながら、押出機を使って、液状のリン系難燃剤と、上記した再生材のようなペレット状のポリカーボネート樹脂を溶融混練する場合、液状であるリン系難燃剤と混ざりにくく、ポリカーボネート樹脂の未溶融物が発生したり、ベント開口部にベントアップが発生したり、吐出量が上がらなかったり、ストランドの引き取りが出来なかったりしやすく、また、得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットの色相の低下が起きやすく、難燃性も不十分となりやすい。
本発明の目的(課題)は、液状リン酸エステル系難燃剤を用い、良好な色相や物性を発現する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物(ペレット)を、高い吐出量で生産する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂を含む樹脂ペレットに、室温で液状のリン酸エステル難燃剤を添加して二軸押出機で製造する際、最初の混練部の下流部で液状のリン酸エステルを添加し、次いで設けた次の混練部で混練し、その際、それぞれの混練部のスクリュー構成を3条偏心ニーディングディスクとして特定の構成と長さとすることにより、ペレットを切る(分配)効果が強く、伝熱で溶融が促進され、未溶融物の発生やベントアップが起こらず、高い吐出量で安定的に生産性良く、色相に優れ、均一で、優れた難燃性のポリカーボネート樹脂組成物ペレットが製造できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は以下のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法に関する。
【0010】
1.ポリカーボネート樹脂をペレット中に40質量%超含む樹脂ペレット(A)30~95質量%、室温で液状のリン酸エステル難燃剤(B)5質量%以上40質量%未満、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)0~50質量%、ABS樹脂(D)0~30質量%、及び(B)以外の他の添加剤(E)0~15質量%[ただし、(A)~(E)の合計は100質量%]からなるポリカーボネート樹脂組成物ペレットを二軸押出機で製造する方法であって、
前記(A)、(C)、(D)及び(E)を二軸押出機に入れ、
第1混練部で混練する第1工程、第1混練部の下流部に前記(B)を添加し第2混練部で混練する第2工程、第2混練部の下流部でベントを減圧にして脱揮し押出する第3工程、を含み、
第1混練部は、ニーディングディスクとして3条偏心ニーディングディスクを使用し、長さが2.5D~6.5D(Dはシリンダー内径)の構成からなり、第2混練部は、ニーディングディスクとして3条偏心ニーディングディスクを使用し、長さが1.5D~4.5Dの構成よりなることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法。2.樹脂ペレット(A)の量が、(A)~(E)の合計100質量%中、30~80質量%である上記1に記載の製造方法。
3.室温で液状のリン酸エステル難燃剤(B)の量が、(A)~(E)の合計100質量%中、5質量%以上25質量%未満である上記1または2に記載の製造方法。
4.樹脂ペレット(A)が樹脂リサイクルペレットを含む上記1~3のいずれかに記載の製造方法。
5.樹脂成分として、ポリカーボネート樹脂を50~100質量%、ABS樹脂及び/又はポリエステル樹脂を50~0質量%(これらの合計は100質量%)を含有する上記1~4のいずれかに記載の製造方法。
6.前記第1混練部の長さが3.5~5.5Dの範囲にあり、第2混練部の長さが2.0D~4.0Dの範囲にある上記1~5のいずれかに記載の製造方法。
7.3条偏心ニーディングディスクが、各辺の中央部が膨出する略三角形状のディスクであり、スクリュー軸に偏心的に回転するように装着されている上記1~6のいずれかに記載の製造方法。
8.偏心量が0.01D~0.07D(Dはシリンダー内径)で、スクリューに装着されている上記1~7のいずれかに記載の製造方法。
9.3条偏心ニーディングディスクは、互いの角度間隔θが110°~130°である3つの頂部を有し、頂部における半径が0.4D~0.5D、各頂部間の中央部の半径が0.25D~0.38D(Dはシリンダー内径)の範囲にある上記1~8のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、未溶融物やベントアップの発生がなく、高い吐出量で安定的に生産性よく、また押し出されるストランドの破断がなく、色相が極めて良好で、均一で優れた難燃性を有するポリカーボネート樹脂組成物ペレットを製造することができる。
特に、ポリカーボネート樹脂原料としてリサイクル材を使用または併用する場合、リサイクル材は熱履歴を受けているので熱により高温で変色しやすいため、バージン原料の場合に比べ樹脂温度をより下げる必要があるが、本発明の製造方法は、溶融特性が良好で高吐出量での溶融が促進され樹脂温度の上昇を抑制できるので、リサイクル材を使用または併用する場合にも特に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の方法で使用する押出機のスクリュー構成の一例を示す横断面図である。
【
図2】本発明の方法で使用する押出機のスクリュー構成の他の例を示す横断面図である。
【
図3】二軸押出機のシリンダーと、スクリューに装着された偏心ニーディングディスクの断面形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明するが、本発明は当該実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
【0014】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法で用いる原料は、(A)~(E)の合計100質量%基準で、ポリカーボネート樹脂をペレット中に40質量%超含む樹脂ペレット(A)30~95質量%、室温で液状のリン酸エステル難燃剤(B)5質量%以上40質量%未満、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)0~50質量%、ABS樹脂(D)0~30質量%、及び(B)以外の他の添加剤(E)0~15質量%である。
【0015】
[樹脂ペレット(A)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法は、ポリカーボネート樹脂をペレット中に40質量%超含む樹脂ペレット(A)を使用する。樹脂ペレット(A)としては、ポリカーボネート樹脂が、樹脂ペレット(A)として、40質量%超含まれていればよく、ポリカーボネート樹脂以外の他の樹脂、例えばABS樹脂、熱可塑性ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート樹脂、あるいはポリエチレンテレフタレート樹脂等)等を含んでいる混合物やアロイも好ましく使用できる。
【0016】
樹脂ペレット(A)は、未使用のいわゆるバージンのペレットであってもよいし、リサイクル材(再生材)ペレット、あるいはリサイクル材ペレットを含むものであってもよい。リサイクル材ペレットの原料としては、例えばCDやDVD等の光学ディスク、導光板、自動車窓ガラスや自動車ヘッドランプレンズ、風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材などが好ましく挙げられる。また、成形時の不適合品、スプルーまたはランナーなどから得られた粉砕品、これらを粉砕、洗浄、分離回収したものをリペレットしたものであってもよい。以下、これらリサイクル材、再生材、リペレット等を併せて、リサイクル材あるいはリサイクルペレットともいう。
【0017】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造方法は、特にリサイクル材のペレットを使用することが好ましい。リサイクル材のペレットの使用はLCA(ライフサイクルアセスメント)が低くなるので好ましい。
リサイクル材には、ポリカーボネート樹脂以外の他の樹脂、各種の添加剤を含んでいることが多いが、ポリカーボネート樹脂が、樹脂ペレット(A)として、40質量%超となっていればいずれも使用できる。ポリカーボネート樹脂のリサイクル材のペレットは、リサイクル材の製造者から購入して使用することも可能である。
【0018】
[ポリカーボネート樹脂]
ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族-脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂であり、具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体が用いられる。
【0019】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールC)、テトラメチルビスフェノールA、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。
【0020】
ポリカーボネート樹脂の好ましい例としては、ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールA又はビスフェノールAと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とを併用したポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC又はビスフェノールCと他の芳香族ジヒドロキシ化合物(特にビスフェノールA)とを併用したポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0021】
ポリカーボネート樹脂は、1種の繰り返し単位からなる単独重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等の従来法によることができる。
【0022】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、制限はないが、粘度平均分子量(Mv)は、通常は10,000~100,000程度であり、好ましくは12,000~35,000程度である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより、ポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることによりポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて薄肉成形も容易に行うこともできる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
【0023】
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、25℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し極限粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値である。
[η]=1.23×10-4Mv0.83
【0024】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
【0025】
ポリカーボネート樹脂のリサイクル材の元となる製品としては、光学ディスク(CD、DVD)などの光記録媒体、導光板、自動車窓ガラスや自動車ヘッドランプレンズ、風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材などが好ましく挙げられる。また、ポリカーボネート樹脂のリサイクル材としては、成形時の不適合品、スプルー、またはランナーなどから得られた粉砕品、またはそれらを溶融して得たペレット化したもの等も使用可能である。
【0026】
[リン酸エステル難燃剤(B)]
本発明に用いるリン酸エステル難燃剤は、室温で液状のリン酸エステル難燃剤である。
ここで「室温で液状」とは、温度23℃において液体であることをいう。
リン酸エステル難燃剤としては、ホスフェート系化合物、縮合リン酸エステル等が挙げられ、縮合リン酸エステルが好ましい。
【0027】
縮合リン酸エステルとしては、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物で、室温で液状のものが特に好ましい。
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、炭素数1~6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、0または1であり、kは1から5の整数であり、X
1はアリーレン基を示す。)
【0028】
上記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物は、kが異なる数を有する化合物の混合物であってもよく、かかるkが異なるリン酸エステルの混合物の場合は、kはそれらの混合物の平均値となる。異なるk数を有する化合物の混合物の場合は、平均のk数は好ましくは1~2、より好ましくは1~1.5、さらに好ましくは1~1.2、特に好ましくは1~1.15の範囲である。
【0029】
また、X1は、二価のアリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、2,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシ化合物から誘導される二価の基である。これらのうち、特に、ビスフェノールA、3,3’-ジヒドロキシビフェニルから誘導される二価の基が好ましい。
【0030】
また、一般式(1)におけるp、q、rおよびsは、それぞれ0または1を表し、中でも1であることが好ましい。
また、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、炭素数1~6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基を示す。このようなアリール基としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ジ-tert-ブチルフェニル基、p-クミルフェニル基等が挙げられるが、フェニル基、クレジル基、キシリル基がより好ましい。
【0031】
一般式(1)で表される縮合リン酸エステルのうち、室温で液状である具体例としては、ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート等が好ましく挙げられる。市販品としては、例えば、ADEKA社製「FP-600」、大八化学工業社製「CR-741」等が挙げられる。
【0032】
[ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造]
本発明の製造方法は、上記した樹脂ペレット(A)及びその他成分を二軸押出機に入れ、第1混練部で混練する第1工程、第1混練部の下流部に前記(B)を添加し第2混練部で混練する第2工程、第2混練部の下流部でベントを減圧にして脱揮し押出する第3工程を含む。
【0033】
本発明の製造方法には二軸押出機が使用される。二軸押出機は各種のものを使用することが出来、スクリューの回転方式は、同方向回転式でも、逆方向回転式でもよいが、同方向噛み合い型二軸押出機が好ましい。また、二軸押出機には、減圧或いは大気に開放されたベント口を設ける。
【0034】
以下、
図1~3を参照しながら、本発明の製造方法を説明する。
図1及び
図2は、本発明の方法で使用する押出機のスクリュー構成の一例を示す横断面図である。
図1、2に示す様に説明上、押出機の上流の供給口1側から下流の吐出口9に向かって、シリンダーにC1~C11と記号を付してある。
【0035】
原料の樹脂ペレット(A)及びその他成分(C)~(E)は、二軸押出機の根元C1にある供給口1から押出機に供給され、樹脂ペレット(A)は、押出機バレルの加熱およびスクリューの回転により、
図1、2で右方向にある吐出口9の方に、溶融混練されながら運ばれ、吐出口9から吐出されたストランドは造粒機にてペレット化される。
【0036】
供給口1から供給された樹脂ペレット(A)等は、供給・搬送・予熱部2において、供給、搬送、予熱される。搬送用のスクリューとしては、通常のフライト状スクリューエレメントから構成されることが好ましい。
【0037】
次いで、第1混練部3にて樹脂ペレット(A)は溶融されるが、第1混練部3は、ニーディングディスクとして3条偏心ニーディングディスクからなり、混練部の長さが2.5D~6.5D(Dはシリンダー内径)の構成からなる。
【0038】
なお、第1混練部とは、液状のリン酸エステル難燃剤が入る前までの混練を行う混練領域を意味し、この第1混練部は、3条偏心ニーディングディスクが連続していてもよいし、複数に分割されていてもよい。3条偏心ニーディングディスクの合計の長さが2.5D~6.5D(Dはシリンダー内径)であればよく、混練作用を有しない通常の送り用フライトは、第1混練部の長さに含めない。例えば、
図2の第1混練部3のように、複数のニーディングディスクの間に通常の送り用のフライト状エレメント(
図2中の3における斜めハッチングが付されたエレメント)を入れてもよく、このような送り用フライト状エレメントは2.5D~6.5Dの長さには含めない。
【0039】
図3は、二軸押出機のシリンダーと、スクリューに装着された3条偏心ニーディングディスクの断面形状を説明するための断面図である。
二軸押出機は、一対のスクリュー2、2’が内部に並列して配置される2つの筒状部を有するシリンダー1を備えている。シリンダー1内の筒状部は軸垂直方向の断面が2つの円が重なるように形成されている。
【0040】
2つのスクリュー2、2’は、互いに非接触で回転駆動するためのモーター等の駆動装置(図示せず)を備え、スクリュー2、2’はシリンダー1の筒状部内で回転し、スクリュー2、2’のスクリュー軸の軸心xは、シリンダー1の筒状部の円中心と軸心が一致している。スクリュー軸の回転方向は同方向または逆方向のいずれでもよいが、同方向回転の方が好ましい。
【0041】
スクリュー2、2’には、3条のニーディングディスク3、3’が装着されている。
3条偏心ニーディングディスク3、3’は、
図3に示すように、3つの頂部(チップ)T
1、T
2、T
3を有する略三角形状をしている。3つの頂部(チップ)T
1、T
2、T
3の互いの角度間隔θが110°~130°となっていることが好ましく、115°~125°であることがより好ましく、θが略120°の等角度間隔である略三角形状であることが特に好ましい。
そして、3条偏心ニーディングディスク3、3’は、その3つの頂部T
1、T
2、T
3を結ぶ各辺(フランク)が外向きの弧を描いて中央部が膨出する略三角形状であることが好ましい。
【0042】
3条偏心ニーディングディスク3、3’は、頂部における半径Da(3条ニーディングディスクの幾何中心yから頂部Tまでの距離)が0.4D~0.5D(Dはシリンダー内径)の範囲にあることが好ましく、また、各頂部T1、T2、T3間のフランクの中央部kにおける半径Dk(3条偏心ニーディングディスクの幾何中心yから中央部kまでの距離。yから最も短い距離)が0.25D~0.38Dの範囲にあることが好ましい。
頂部(チップ)Tのチップ巾dTは、0.02D~0.08Dであることが好ましい。
【0043】
そして、3条ニーディングディスク3、3’は、スクリュー2、2’のスクリュー軸に偏心的に回転するように装着されている。その偏心量e(スクリューの回転中心xからニーディングディスクの幾何中心yまでの距離)は、0.01D~0.07D(Dはシリンダー内径)であることが好ましい。偏心は3条偏心ニーディングディスク3と3’が2つのスクリュー軸を結ぶ方向に同方向に偏心していることが好ましい。
【0044】
3条偏心ニーディングディスクは、通常パドルの複数を軸方向に沿って装着してニーディングゾーンが構成される。パドルの枚数は、3~15枚であることが好ましく、5~11枚がより好ましく、特に7~9枚が好ましい。隣り合うパドルの間は隙間を設けることが好ましく、隙間は0.2mm~2mmであることが好ましい。
【0045】
3条偏心ニーディングディスクの厚みは、軸方向のディスク1枚(以下、パドルともいう。)の厚みが0.1D以下であることが好ましい。
【0046】
3条偏心ニーディングディスクは、複数のパドルがずれることなく重なったNディスク、複数のパドルが右方向にずれて重なって順方向に流を起こすRディスク、複数のパドルが左方向にずれて重なって逆方向の流れを起こすLディスク等として使用され、スクリュー構成としては、これらを組み合わせて用いられる。
【0047】
本発明の製造方法は、3条偏心ニーディングディスクを使用し、その頂点は、偏心により1つ(あるいは2つ)の頂点だけがシリンダー内面に近接する。このような3条偏心ニーディングディスクを用いることで、低い温度で樹脂を溶融でき、吐出量を大きくすることができ、またシリンダー原料の樹脂ペレット(A)を小さく切断できるので、高吐出条件での樹脂の溶融特性が優れ、速やかな熱伝導により、原料樹脂ペレットを速く溶融でき、樹脂温度をより下げることができる。
【0048】
第1混練部3は、上記した3条偏心ニーディングディスクにより組み合わせるが、好ましくは、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスクを組み合わせたものが好ましく、例えば、Rの後に複数のNを配置してLの構成、特にRNL、RRNL、RNNL、RRNNL、RNNNL、RRNNNL等が好ましい。
【0049】
また、第1混練部3のディスク構成は長さが2.5D~6.5Dの構成からなるが、3.5~5.5Dの範囲にあることが特に好ましい。
【0050】
上記のように構成された第1混練部3により、樹脂ペレット(A)は十分な溶融が達成され、次いで搬送部4により第2混練部6に搬送されるが、その際、第1混練部の下流に設けた液体添加装置5(液体供給ポンプ等)により、液状のリン酸エステル難燃剤(B)が添加される。
【0051】
液状リン酸エステル難燃剤(B)の添加量は、得られるポリカーボネート樹脂組成物ペレット100質量%に対し、5質量%以上40質量%未満であり、このような添加量とすることで、高い難燃性と耐熱性を両立することができる。40質量%以上になると、耐熱性が低下する。添加量は、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは35質量%未満、より好ましくは30質量%未満、中でも25質量%未満、23質量%以下、特に好ましくは22質量%以下である。
【0052】
第2混練部6では、溶融した樹脂ペレット(A)等と液状リン酸エステル難燃剤(B)が溶融混練される。
【0053】
第2混練部6は、3条偏心ニーディングディスクの長さが1.5D~4.5D(Dはシリンダー内径)の構成からなる。第2混練部6のスクリュー構成を上記のようにすることにより、第1混練部3の前記スクリュー構成と組み合わせることにより、樹脂ペレット(A)と液状リン酸エステル難燃剤(B)の均質な溶融混練が低い樹脂温度で高吐出で出来、安定的に生産性よく、色相に優れ、難燃性に優れたポリカーボネート樹脂組成物ペレットを製造することができる。
【0054】
なお、第2混練部とは、リン酸エステル難燃剤(B)が入り真空ベント7に至るまでに混練を行う混練領域を意味し、この第2混練部は、3条偏心ニーディングディスクの合計の長さが1.5D~4.5D(Dはシリンダー内径)となればよく、混練作用を有しない通常の送り用フライトは、第2混練部の長さに含めない。例えば、
図2の第2混練部6のように、複数のニーディングディスクの間に通常の送り用のフライト状エレメント(
図2中の6における斜めハッチングが付されたエレメント)を入れて分割してもよく、このような送り用フライト状エレメントは1.5D~4.5Dの長さには含めない。
【0055】
第2混練部6は上記したものを組み合わせるが、好ましくは、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスクを組み合わせたものが好ましく、例えば、Rの後に複数のNを配置し、その後にLの構成とすることが好ましく、特にRNL、RRNL、RNNL等が好ましい。
【0056】
また、第2混練部6のディスク構成は長さが1.5D~4.5Dの構成からなるが、2.0D~4.0Dの範囲にあることが好ましい。
【0057】
第2混練部6の後、第2混練部の下流部でベント7を減圧にして脱揮し、押出部8により、ポリカーボネート樹脂組成物は押出機先端の吐出部9にある押出ダイからストランド状に押し出される。
二軸押出機のスクリューの回転数は500~900rpm程度であることが好ましい。
本発明の方法では、吐出量は、好ましくは350kg/hr以上、より好ましくは380kg/hr以上、さらに好ましくは400kg/hr以上、中でも450kg/hr以上、500kg/hr以上、特に好ましくは550kg/hr以上を達成することが可能となる。
【0058】
そして、押し出されたポリカーボネート樹脂組成物のストランド状の溶融物は、水中冷却してカッティングされペレットとなる。
押出ダイの形状は特に制限はなく、公知のものが使用される。吐出ノズルのダイの直径は、押出し圧、所望するペレットの寸法にもよるが、通常2~5mm程度である。押し出された直後のポリカーボネート樹脂の温度は、通常より低くすることが可能であり、好ましくは270~300℃、より好ましくは270~290℃程度とすることができる。
【0059】
本発明の方法において、樹脂ペレット(A)、液状リン酸エステル難燃剤(B)以外に、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)、ABS樹脂(D)、及び(B)以外の他の添加剤(E)を配合することも好ましい。各成分の配合量は、(A)~(E)の合計100質量%基準で、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)0~50質量%、ABS樹脂(D)0~30質量%、及び.(B)以外の他の添加剤(E)0~15質量%である。
このような(C)~(E)成分は、特にサイドフィードすることが好ましい場合を除き、樹脂ペレット(A)と一緒にまたは別フィードにて、二軸押出機の根元の供給口1から供給される。
【0060】
ポリカーボネート樹脂フレーク(C)は、平均粒径は2mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましい。フレーク状のポリカーボネート樹脂を供給することにより、未溶融物の発生や添加剤の凝集等を抑制し、均質なポリカーボネート樹脂組成物ペレットが得られやすくなる。
ポリカーボネート樹脂フレーク(C)を使用する場合の配合量は、5~45質量%であることが好ましい。
【0061】
ABS樹脂(D)は、芳香族ビニル単量体成分、シアン化ビニル単量体成分、ジエン系ゴム質重合体成分からなることが好ましく、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体が好ましい。ABS樹脂(D)はペレット状のものを、樹脂ペレット(A)と共に二軸押出機の根元の供給口1から供給することが好ましい。ABS樹脂(D)を使用する場合の配合量は、5~25質量%であることが好ましい。
【0062】
液状リン酸エステル難燃剤(B)以外の他の添加剤(E)としては、フッ素樹脂(PTFE)等の難燃助剤、各種エラストマー(耐衝撃性改良剤)、離型剤、安定剤、フィラー(充填材)、強化剤、他の樹脂成分、他の難燃剤、着色剤(染顔料)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が好ましく挙げられる。(B)以外の他の添加剤(E)を使用する場合の配合量は、15質量%以下であり、好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下、中でも11質量%以下、とりわけ10質量%以下であることが好ましい。
【0063】
本発明の製造方法で得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットは、樹脂ペレット(A)由来の樹脂30~95質量%、好ましくは30~80質量%、リン酸エステル難燃剤(B)5質量%以上40質量%未満、好ましくは5質量%以上25質量%未満、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)由来のポリカーボネート樹脂0~50質量%、ABS樹脂(D)0~30質量%、及び(B)以外の他の添加剤(E)0~15質量%[ただし、(A)~(E)の合計は100質量%]からなる。
【0064】
得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットから成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、ポリカーボネート樹脂について一般に採用されている成形法、すなわち、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、多色射出成形法、ガスアシスト射出成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱冷却金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などを採用することができる。
【0065】
得られた成形品は、プリンターや複写機等のOA機器、電気機器、電子機器、自動車等の車両、プリンターや複写機等のOA機器、住宅、建築、その他の部品として好適に使用でき、特に、プリンターや複写機等のOA機器、コンピューター、パソコン、各種携帯端末、バッテリー等の筐体等として好適に使用できる。
【実施例0066】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0067】
実施例および比較例に使用した押出機のスクリュー構成は、以下の通りである。
<第1混練部の構成例>
下記した構成例1~4の3条偏心ニーディングディスクの各ニーディングディスクは9枚で、ディスク長さは1Dである。ニーディングディスクの各1枚のパドルとして、3つの頂部(チップ)Tがディスクの幾何偏心yから角度θが120°の等角度の位置に配置された3条のパドルを使用した。頂部(チップ)Tにおける半径Daは21.0mm(0.447D)であり、頂部T間には外向きの弧を描くフランクkがあり、その中央部kにおける半径Dkは15.5mm(0.330D)である。そして、パドルの偏心量eは1.8mm=0.038Dであり、左右スクリュー2、2’上のパドルは同方向に偏心している。頂部(チップ部)Tのチップ幅dTは2.2mm(0.047D)、チップ部の弧の半径は21mm(0.447D)である。各1枚のパドルの厚みは4.1mm(0.087D)であり、隣り合うパドル間には、左右のニーディングディスクの接触をなくすため、0.5mmの隙間が空いている。
Rの3条偏心ニーディングディスクは、パドルを下向きにスクリュー軸の中心xに対して時計方向に45°ずらした9枚のパドルから構成されている。Nの3条偏心ニーディングディスクは、パドルをスクリュー軸中心xに対して180°ずらした9枚のパドルから構成されている。Lの3条偏心ニーディングディスクは、パドルを下向きにスクリュー軸中心xに対して半時計方向に45°ずらした9枚のパドルから構成されているものを使用した。なお、押出機のシリンダー内径Dは47.0mm、スクリュー中心間距離Aは38.7mm(0.823D)である。
構成例1: 3条偏心RL 長さ2D
構成例2: 3条偏心RRNL 長さ4D
構成例3: 3条偏心RRNNL 長さ5D
構成例4: 3条偏心RRNNNNL 長さ7D
【0068】
下記した構成例5~6のニーディングディスクは通常の2条ニーディングディスクである。各々の2条ニーディングディスクスクリューのパドルは5枚であり、1枚のパドルの厚みは8.0mm(0.170D)のものを使用した。2つある頂部(チップ)のチップ間角度は180°で、頂部での半径Daが46.1mm(0.981D)であり、2つの頂部間で外向きの弧を描くフランクの中央部k(yから最も近い距離)における半径Dkは28.8mm(0.613D)である。パドルの偏心はなく、偏心量eは0mmである。頂部(チップ部)Tのチップ幅dTは5.2mm(0.11D)、チップ部の弧(フランク)の半径は46.1mm(0.981D)である。Rの2条ニーディングディスクはパドルを下向きにスクリュー軸の中心xに対して時計方向に45°ずらした5枚のパドルから構成されている。Nの2条ニーディングディスクはパドルをスクリュー軸中心xに対して90°ずらした5枚のパドルから構成されている。Lの2条ニーディングディスクはパドルを下向きにスクリュー軸中心xに対して反時計方向に45°ずらしたパドル5枚から構成されている。各パドル間には0.5mmの隙間があるものを使用した。
構成例5: 通常の2条RRNL 長さ4D
構成例6: 通常の2条RRNNL 長さ5D
【0069】
<第2混練部の構成例>
下記した構成例1~4の3条偏心ニーディングディスクの各ニーディングディスクは9枚で、ディスク長さは1Dである。R,N,Lそれぞれの3条偏心ニーディングディスクの仕様は、第1混練部の3条偏心ニーディングディスクとして記載したものと同様である。
構成例1: 3条偏心L 長さ1D
構成例2: 3条偏心RNL 長さ3D
構成例3: 3条偏心RRNL 長さ4D
構成例4: 3条偏心RRNNNL 長さ6D
【0070】
下記した構成例5~6のニーディングディスクは、通常の2条のニーディングディスクであり、各ニーディングディスクは5枚で、ディスク長さは1Dである。R,N,Lそれぞれの通常2条のニーディングディスクの仕様は、第1混練部の2条ニーディングディスクに記載したものと同様である。
構成例5: 通常の2条RNL 長さ3D
構成例6: 通常の2条RRNL 長さ4D
【0071】
実施例および比較例に使用した原料は、以下の通りである。
・樹脂ペレット(A)
(A-1)ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット
ОS TECH社製「PC-15NP」
MFR=14g/10min(300℃、1.2kg荷重)
(A-2)ポリカーボネート樹脂ペレット
三菱エンジニアリングプラスチックス社製、「S3000N」
粘度平均分子量Mv=22000
(A-3)ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂ペレット
ポリカーボネート樹脂フレーク(三菱エンジニアリングプラスチックス社製「S3000F」、粘度平均分子量Mv=22000)80質量%と、ABS樹脂ペレット(日本エイアンドエル社製「SXH-330」)20質量%を、予めコンパウンドしたペレット
・液状リン酸エステル系難燃剤(B)
ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート
ADEKA社製、「アデカスタブFP-600」
・ポリカーボネート樹脂フレーク(C)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製「7022PJ」、Mv=22000
・ABS樹脂(D)
ABS樹脂ペレット、日本エイアンドエル社製「SXH-330」
・(B)以外の他の添加剤(E)
PTFE ダイキン工業社製「FA500H」
【0072】
<製造例A1>
ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット(A-1)を240kg/h(60質量%)、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)を80kg/h(20質量%)を、同方向二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX44αIII」)に供給口1から供給し、スクリュー構成例3の第1混練部で混練し、その後に液状リン酸エステル系難燃剤(B)を液体供給ポンプ5から80kg/h(20質量%)で添加し、スクリュー構成例3の第2混練部で混練し、その後、ベントで減圧に引き、吐出口から押し出してストランド化し、水槽で冷却後にペレタイザーによりポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。スクリュー回転数は700rpmとし、シリンダー設定温度は260℃とした。
得られたペレットを射出成形し、厚さ3mmのプレートを成形した。
日本電色社製SPECTROPHOTOMETER「SE6000」を用い、透過光でYIを測定した。
結果を表1に記す。なお、表1、及び表2以下における「樹脂温度」は吐出口から出てくるストランドの温度である。市販の樹脂用温度計で計測した。
【0073】
<製造例A2~A6>
製造例A1において、第1混練部と第2混練部のスクリュー構成を表1に記載の構成例とし、スクリュー回転数を表1に記載の吐出量と回転数にした以外は同様にして、行った。
【0074】
<比較製造例A1>
第1混練部のスクリュー構成を構成例1、第2混練部を構成例2とした以外は製造例A1と同様にして、コンパウンドした。然しながら、原料ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット(A-1)の未溶融物が出来、ストランドが破断して引き取り不能となり、ベントアップも発生した。製品ペレットのサンプリングは困難であった。第1混練部のスクリュー構成が短すぎ、原料ペレットが完全に溶融しなかったと考えられた。
【0075】
<比較製造例A2~A4>
製造例A1において、第1混練部と第2混練部のスクリュー構成を表2に記載の構成例とし、吐出量とスクリュー回転数を表2に示すよう変更した以外は同様にして、行った。
結果は表2に示した。
比較製造例A3ではベントには液状物が観察されベントアップが発生した。ストランドも頻繁に破断し、製品ペレットのサンプリングは困難であった。第2混練部の構成が短すぎ液状のリン酸エステル系難燃剤が分散しなかったことが原因と考えられた。
【0076】
<比較製造例A5~A8>
製造例A1において、第1混練部と第2混練部のスクリュー構成を表2に記載の2条ニーディングディスクの構成例とし、吐出量とスクリュー回転数を表2に示すように変更した以外は同様にして、行った。結果は表2に示した。
比較製造例A5、A6では製造例A4、A5と比較して樹脂温度が高く、YIも製造例A4、A5よりも上昇していた。
比較製造例A7では、原料ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット(A-1)の未溶融物が出来、ストランドが破断して引き取り不能となり、ベントアップも発生した。製品ペレットのサンプリングは困難であった。原因として、製造例A6と比較した場合、吐出量を上げた際に第1混練部でのペレットの溶融が不十分になってしまったためと考えられた。
【0077】
<比較製造例A9>
液状リン酸エステル系難燃剤(B)を他の原料と同じ押出機根本の供給口1から添加した以外は製造例A4と同様にして、行った。しかし、激しくベントアップし、未溶融があり、ストランドの引き取りは不能であった。液状リン酸エステル系難燃剤が潤滑剤として作用し、ポリカーボネート樹脂ペレット(A-1)に第1混練部で剪断がかからずに溶融せず、第2混練部でも完全に溶融せず、ベントアップしコンパウンドできなかったと考えられる。
【0078】
<比較製造例A10>
比較製造例A9の状態で全ての原料の率を一定で下げていき、吐出量を300Kg/hとしたが、状況は改善されなかった。
【0079】
<比較製造例A11>
比較製造例A10の状態から徐々に、全ての原料の率は一定にして、供給量を下げていった。その結果、ベントアップなくストランド引き取り可能とするためには、全体で150kg/hまで大幅にフィード量を下げる必要があった。フィード量が少なくなったことから、滞留時間が長くなり、十分な剪断がかかり、ポリカーボネート樹脂ペレット(A-1)が溶融したと考えられる。しかしながら、YIは高い値を示した。
以上の結果を表1-2に記す。
【0080】
【0081】
【0082】
<製造例B1~B6、比較製造例B1~B8>
ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット(A-1)を50質量%(例えば、製造例B1では200kg/h)、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)を35質量%(例えば、製造例B1では140kg/h)、液状リン酸エステル系難燃剤(B)を15質量%(例えば、製造例B1では60kg/h)とし、スクリュー構成と吐出量、およびスクリュー回転数を表3に記載の回転数とした以外は、製造例A1と同様にして行った。
結果を表3に示す。
【0083】
【0084】
<製造例C1~C6、比較製造例C1~C8>
ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット(A-1)を80質量%(例えば、製造例C1では320kg/h)、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)を0質量%(例えば、製造例C1では0kg/h)、液状リン酸エステル系難燃剤(B)を20質量%(例えば、製造例C1では80kg/h)とし、スクリュー構成と吐出量、およびスクリュー回転数を表4に示すようにした以外は、製造例A1と同様にして行った。
結果を表4に示す。
【0085】
【0086】
<製造例D1~D6、比較製造例D1~D8>
ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット(A-1)を50質量%(例えば、製造例D1では200kg/h)、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)を10質量%(例えば、製造例D1では40kg/h)、液状リン酸エステル系難燃剤(B)を20質量%(例えば、製造例D1では80kg/h)、ABS樹脂ペレット(D)を20質量%(例えば、製造例D1では80kg/h)とし、スクリュー構成と吐出量、およびスクリュー回転数を表5に示すようにした以外は、製造例A1と同様にして行った。
なお、色調YIは反射光で測定した。結果を表5に示す。
【0087】
【0088】
<製造例E1~E6、比較製造例E1~E8>
ポリカーボネート樹脂リサイクルペレット(A-1)を50質量%(例えば、製造例E1では200kg/h)、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)を10質量%(例えば、製造例E1では40kg/h)、ABS樹脂ペレット(D)を19.5質量%(例えば、製造例E1では78kg/h)、他の添加剤(E)としてPTFEを0.5質量%(2kg/h)供給し、液状リン酸エステル系難燃剤(B)を20質量%(例えば、製造例E1では80kg/h)とし、スクリュー構成と吐出量、およびスクリュー回転数を表6に示すようにした以外は、製造例A1と同様にして行った。
なお、色調YIは反射光で測定した。結果を表6に示す。
【0089】
【0090】
<製造例F1~F6、比較製造例F1~F8>
ポリカーボネート樹脂ペレット「S3000N」(A-2)を80質量%(例えば、製造例F1では320kg/h)、液状リン酸エステル系難燃剤(B)を20質量%(例えば、製造例F1では80kg/h)とし、スクリュー構成と吐出量、およびスクリュー回転数を表7に示すようにした以外は、製造例A1と同様にして行った。
色調YIは透過光で測定した。結果を表7に示す。
【0091】
【0092】
<製造例G1~G6、比較製造例G1~G8>
ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂ペレット(A-3)を60質量%(例えば、製造例G1では240kg/h)、ポリカーボネート樹脂フレーク(C)を10質量%(例えば、製造例G1では40kg/h)、ABS樹脂ペレット(D)を10質量%(例えば、製造例G1では40kg/h)、液状リン酸エステル系難燃剤(B)を20質量%(例えば、製造例G1では80kg/h)とし、スクリュー構成と吐出量、およびスクリュー回転数を表8に示すようにした以外は、製造例A1と同様にして行った。
色調YIは反射光で測定した。結果を表8に示す。
【0093】
本発明の方法によれば、色相が極めて良好で、均一で優れた難燃性を有するポリカーボネート樹脂組成物ペレットを製造することができ、得られたペレットは、プリンターや複写機等のOA、電気機器、電子機器、自動車等の車両、住宅、建築、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用でき、産業上の利用性は非常に高い。