(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173936
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】触媒再生制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 19/08 20060101AFI20221115BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20221115BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20221115BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20221115BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20221115BHJP
B60W 20/11 20160101ALI20221115BHJP
B60W 20/16 20160101ALI20221115BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20221115BHJP
F02M 26/14 20160101ALI20221115BHJP
F02M 26/36 20160101ALI20221115BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20221115BHJP
F02M 27/02 20060101ALI20221115BHJP
F02D 21/08 20060101ALI20221115BHJP
F02M 25/00 20060101ALI20221115BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20221115BHJP
C01B 3/38 20060101ALN20221115BHJP
【FI】
F02D19/08 B
B60K6/442 ZHV
B60K6/24
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/11
B60W20/16
B60W20/00
F02M26/14
F02M26/36
F02M21/02 K
F02M27/02 D
F02M27/02 J
F02D21/08 301A
F02M25/00 G
B60L50/16
C01B3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080000
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】嶋根 直人
【テーマコード(参考)】
3D202
3G062
3G092
4G140
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB06
3D202BB09
3D202BB11
3D202CC24
3D202CC37
3D202CC41
3D202CC45
3D202DD16
3D202DD22
3D202EE01
3G062BA06
3G062CA10
3G062ED09
3G062GA01
3G062GA02
3G062GA05
3G062GA06
3G062GA08
3G062GA09
3G062GA12
3G062GA17
3G062GA18
3G062GA24
3G092AA01
3G092AA17
3G092AB02
3G092AB09
3G092AB12
3G092AB15
3G092AC02
3G092BA02
3G092DC09
3G092FA24
3G092GA10
3G092HA01Z
3G092HA04Z
3G092HA05Z
3G092HC01Z
3G092HC05Z
3G092HD01Z
3G092HD06Z
3G092HE03Z
3G092HE06Z
3G092HE08Z
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB27
4G140EB43
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA09
(57)【要約】
【課題】改質触媒の再生処理の実施機会を確保するとともに改質触媒の熱劣化を抑制できる触媒再生制御装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両70は、改質用噴射弁41から噴射された改質用燃料を改質反応させて改質ガスを生成する改質触媒43を備える燃料改質システムを有している。燃料改質システムでは、改質触媒43に対して再生ガスを供給することで改質触媒43の再生処理が実施される。ECU60は、再生処理を実施した場合に上昇する改質触媒43の温度の最高値である再生時最高温度を予測する温度予測部と、ハイブリッド車両70の走行中において、再生時最高温度と改質触媒43の許容上限温度との比較に基づいて、エンジン20の燃焼が停止し且つクランク軸22が回転した状態で再生処理を実施する再生制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(20)の排気通路(30)と吸気通路(10)とを接続するEGR通路(40)内に改質用燃料を噴射する改質用噴射弁(41)と、前記EGR通路に設けられ、前記改質用噴射弁から噴射された改質用燃料を改質反応させて改質ガスを生成する改質触媒(43)と、を備え、前記改質触媒に対して再生ガスを供給することで当該改質触媒の再生処理が実施される燃料改質システムを有し、走行用モータ(MG2)の駆動による走行を可能とするハイブリッド車両(70)に適用され、
前記再生処理を実施した場合に上昇する前記改質触媒の温度の最高値である再生時最高温度を予測する温度予測部と、
前記ハイブリッド車両の走行中において、前記再生時最高温度と前記改質触媒の許容上限温度との比較に基づいて、前記エンジンの燃焼が停止し且つエンジン出力軸(22)が回転した状態で前記再生処理を実施する再生制御部と、を備える触媒再生制御装置。
【請求項2】
前記再生制御部は、前記走行用モータの駆動による前記ハイブリッド車両の走行中において、前記再生時最高温度が前記改質触媒の許容上限温度よりも低いことを条件に、前記走行用モータまたはエンジン始動に用いられる始動用モータ(MG1)の回転により前記エンジン出力軸を回転させて前記再生処理を実施する、請求項1に記載の触媒再生制御装置。
【請求項3】
前記再生制御部は、前記走行用モータの駆動による前記ハイブリッド車両の走行中であり且つ前記エンジンを燃焼停止の状態から燃焼状態へ移行させる場合において、前記再生時最高温度が前記改質触媒の許容上限温度よりも低いことを条件に、前記エンジンの燃焼を開始する直前に前記再生処理を実施する、請求項2に記載の触媒再生制御装置。
【請求項4】
前記再生制御部は、前記エンジンの燃焼運転中である場合において、前記再生時最高温度が前記許容上限温度より高いことを条件に、前記改質用燃料の噴射を停止した状態で、前記エンジンの排気を前記再生ガスとして前記改質触媒に供給して前記再生処理を実施する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の触媒再生制御装置。
【請求項5】
前記吸気通路において前記EGR通路との接続部の上流側に絞り弁(12)が設けられており、
前記再生制御部は、前記エンジンを燃焼状態から燃焼停止の状態へ移行させる場合において、前記再生時最高温度が前記改質触媒の許容上限温度よりも低いことを条件に、前記エンジンの燃焼停止から前記エンジン出力軸の惰性回転の停止までの期間で、前記EGR通路を流通可能にするとともに前記絞り弁により前記吸気通路に負圧を発生させた状態にして前記再生処理を実施する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の触媒再生制御装置。
【請求項6】
噴射した前記改質用燃料の量に対する前記改質触媒で反応した前記改質用燃料の量の比である改質率と、前記EGR通路を流通した硫黄流通量とに基づいて、前記改質触媒に堆積した可燃物の堆積量を推定する堆積量推定部を備え、
前記温度予測部は、推定された前記堆積量に基づき前記再生時最高温度を予測する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の触媒再生制御装置。
【請求項7】
前記温度予測部は、
前記エンジンの燃焼が停止し且つエンジン出力軸が回転した状態で前記再生処理が実施されることを前提として、時間経過に伴う前記改質触媒での可燃物の堆積量の減少変化を予測するとともに、その堆積量の減少変化に応じた前記改質触媒の温度変化を予測し、
前記改質触媒の温度が上昇から下降に転じる際の温度を、前記再生時最高温度として予測する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の触媒再生制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒再生制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料と反応ガスとを改質触媒にて改質反応させて改質ガスを生成する燃料改質システムが知られている。改質ガスは、エンジンでの燃焼に用いられ、エンジンにおける熱効率の向上に寄与する。改質触媒は、炭素の堆積や硫黄被毒により劣化する。このような場合に、改質触媒の再生処理を実施する技術が知られている。例えば、特許文献1には、改質触媒が劣化している場合において、再生処理として、改質触媒の温度が所定温度以上で且つ内燃機関への燃料供給を停止する燃料カット時に所定量の空気を供給し、炭素や硫黄を燃焼除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、改質触媒上の炭素や硫黄の量が多い場合、再生処理により改質触媒が過昇温されて熱劣化することが懸念される。また、特許文献1に開示された技術では、燃料カットを実施する時間が不足すると、改質触媒の再生処理を十分に実施できないことが懸念される。例えば、モータの駆動による走行が可能なハイブリッド車両では、回生時間を確保するために燃料カットの時間が短縮される傾向にあることから、改質触媒の再生処理の実施機会が少なくなる虞がある。この点について、特許文献1では検討されていない。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、改質触媒の再生処理の実施機会を確保するとともに改質触媒の熱劣化を抑制できる触媒再生制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明の触媒再生制御装置は、エンジンの排気通路と吸気通路とを接続するEGR通路内に改質用燃料を噴射する改質用噴射弁と、前記EGR通路に設けられ、前記改質用噴射弁から噴射された改質用燃料を改質反応させて改質ガスを生成する改質触媒と、を備え、前記改質触媒に対して再生ガスを供給することで当該改質触媒の再生処理が実施される燃料改質システムを有し、走行用モータの駆動による走行を可能とするハイブリッド車両に適用され、前記再生処理を実施した場合に上昇する前記改質触媒の温度の最高値である再生時最高温度を予測する温度予測部と、前記ハイブリッド車両の走行中において、前記再生時最高温度と前記改質触媒の許容上限温度との比較に基づいて、前記エンジンの燃焼が停止し且つエンジン出力軸が回転した状態で前記再生処理を実施する再生制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
走行用モータの駆動による走行を可能とするハイブリッド車両では、車両走行中にエンジンの燃焼停止期間を比較的長い期間で確保することができる。上記構成の触媒再生制御装置では、その燃焼停止期間を利用することで、改質触媒の再生処理の実施機会を確保することができる。
【0008】
また、上記構成の触媒再生制御装置では、再生処理を実施した場合における改質触媒の再生時最高温度を予測し、その再生時最高温度と改質触媒の許容上限温度との比較に基づいて、エンジンの燃焼が停止し且つエンジン出力軸が回転した状態で再生処理を実施するようにした。この場合、エンジンの燃焼が停止し且つエンジン出力軸が回転した状態では、改質触媒に対して再生ガスとしての酸素が効率良く供給され、しかも再生時最高温度と改質触媒の許容上限温度との比較に基づいて再生処理が実施されることにより、改質触媒の再生を適切に行わせつつ、改質触媒の熱劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】堆積量推定制御の手順を示すフローチャート。
【
図6】単位時間ごとに変化する改質触媒の温度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の改質制御装置を具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本発明の触媒再生制御装置は、ハイブリッド車両に適用される。まず、
図1に基づいてハイブリッド車両70の概略構成を説明する。
【0011】
図1は、本実施形態のハイブリッド車両70を示す概略図である。ハイブリッド車両70は、吸気通路10とエンジン20と排気通路30とEGR通路40とを有する。エンジン20は、ガソリンを燃料とするガソリンエンジンである。
【0012】
吸気通路10には、上流側から順に、エアクリーナ11、絞り弁12、コンプレッサ13、インタークーラ14、スロットル弁15、吸気マニホールド16が設けられている。
【0013】
エアクリーナ11は、吸気通路10に流入した空気から埃等を取り除く。絞り弁12は、吸気通路10においてEGR通路40との接続部の上流側に設けられている。絞り弁12は、吸気通路10を絞ることにより、吸気通路10と後述するEGR通路40との合流部分付近に負圧を発生させる。コンプレッサ13は、ターボチャージャの一部を構成するホイールであり、後述するタービン32の回転に従い回転することにより、空気を下流側に送り込むことにより下流側を加圧する。
【0014】
インタークーラ14は、コンプレッサ13による加圧により温度上昇した空気を空冷等により冷却する。スロットル弁15は、空気の流量を調節する。吸気マニホールド16は、空気をエンジン20の各気筒24に向けて分岐させる。
【0015】
エンジン20は、複数の気筒24(図示略)を有する。それら気筒24の各々に、吸気通路10が吸気弁を介して取り付けられているとともに、排気通路30が排気弁を介して取り付けられている。気筒24の各々には、蓄圧室29から供給される燃料を気筒24内に噴射する筒内用噴射弁25が設けられている。
【0016】
排気通路30には、上流側から順に、排気マニホールド31、タービン32、A/Fセンサ33、三元触媒槽34、O2センサ35が設けられている。排気マニホールド31は、各々の気筒24からの排ガスを合流させる。タービン32は、ターボチャージャの一部を構成するホイールであり、排ガスの流れにより回転してコンプレッサ13を回転させる。A/Fセンサ33は、排ガス中の酸素濃度に応じてリニアに出力値を増減させる。
【0017】
三元触媒槽34には、多孔質構造の三元触媒が格納されている。三元触媒は、例えば、モノリス型の基材と、基材の表面にコーティングされている担体と、担体に担持されている白金等の触媒とからなる。三元触媒は、炭化水素(HC)を減少させる化学反応と、一酸化炭素(CO)を減少させる化学反応と、窒素酸化物(NOx)を減少させる化学反応とを促進させる。O2センサ35は、排気中の酸素濃度に応じて2値的に出力値を変化させる。
【0018】
EGR通路40は、吸気通路10と排気通路30とを接続する。EGR通路40の上流側の端は、排気通路30のうち後述する改質器42内を通過する部分より上流側且つO2センサ35より下流側の位置に接続されている。EGR通路40の下流側の端は、吸気通路10のうち絞り弁12とコンプレッサ13との間の位置に接続されている。EGR通路40には、上流側から順に、改質用噴射弁41、改質器42、EGRクーラ44、水素センサ45、EGR弁46が設けられている。
【0019】
改質用噴射弁41は、蓄圧室29から減圧されて供給される燃料を、EGR通路40内に噴射する。これ以降、改質用噴射弁41から噴射される燃料を改質用燃料と呼ぶ。改質用噴射弁41は、例えば、直噴用のインジェクタやポート噴射用のインジェクタを転用したものであってもよいし、それ以外のインジェクタであってよい。それ以外のインジェクタの具体例としては、燃料気化器により気化された燃料を噴射するガスインジェクタが挙げられる。
【0020】
改質器42には、多孔質構造の改質触媒43が格納されている。改質触媒43は、改質器42のうちEGR通路40の内側に配置されている。改質触媒43は、改質用噴射弁41から噴射された改質用燃料を改質反応させて改質ガスを生成する。具体的には、改質触媒43は、燃料(CnHm)と水蒸気(H2O)とが混合された混合ガスから、改質反応により改質ガスとしての水素を生成する。この改質反応は吸熱反応である。
【0021】
改質触媒43は、例えば、モノリス型の基材と、基材の表面にコーティングされている担体と、担体に担持されている触媒とからなる。基材の具体例としては、アルミニウム、ステンレス、炭化ケイ素、コージェライト、酸化アルミニウム等が挙げられる。担体の具体例としては、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、シリコン等の酸化物が挙げられ、これらにランタノイド等が添加されていてもよい。触媒の具体例としては、ロジウム、白金、イリジウム、ルテニウム等の貴金属や、ニッケル、銅、鉄、モリブデン、コバルト等の金属が挙げられる。
【0022】
改質器42は、EGR通路40の一部を形成するとともに、当該EGR通路40の一部と排気通路30とが熱交換可能に形成されている。具体的には、改質器42はいわゆるクロスフロー構造であり、EGR通路40の一部を形成している層と排気通路30が改質器42を通過する層とが交互に重なり合っていることにより、EGR通路40と排気通路30とが熱交換可能に配置されている。
【0023】
EGRクーラ44は、水冷式等であり、ガスを冷却する。水素センサ45は、改質反応により生成された改質ガスである水素の生成量を検出する。EGR弁46は、EGR通路40を通過する排ガスの流量を調節する。なお、EGR通路40において、上流側から順に、EGR弁46、EGRクーラ44が設けられていてもよい。
【0024】
また、ハイブリッド車両70は、モータMG1とモータMG2とインバータ51とインバータ52とバッテリ54と車軸56とを有する。モータMG1は、エンジン20の出力軸であるクランク軸22に接続されている。モータMG1は、発電機としても電動機としても機能する周知の同期発電電動機である。エンジン始動の際、モータMG1は、電動機として機能し、インバータ51を介したバッテリ54からの電力供給により駆動されることで、クランク軸22に初期回転を付与する。また、モータMG1は、クランク軸22の回転エネルギによって駆動されて発電する機能を有している。モータMG1により発電された電力は、インバータ51を介してバッテリ54に充電される。
【0025】
モータMG2は、モータMG1と同様に、発電機としても電動機としても機能する周知の同期発電電動機である。モータMG2には、減速機構(不図示)を介して車軸56が取り付けられている。モータMG2は、インバータ52を介したバッテリ54からの電力供給により駆動されることで、車軸56に動力を伝達する。また、モータMG2は、車両の減速時に回生発電する機能を有している。モータMG2により発電された電力は、インバータ52を介してバッテリ54に充電される。なお本実施形態では、モータMG1が始動用モータに相当し、モータMG2が走行用モータに相当する。
【0026】
ハイブリッド車両70は、公知の各種センサを有する。具体的には、例えば、吸気通路10については、吸気空燃比センサ、吸気温センサ、吸気湿度センサ、吸気酸素濃度センサ、吸気圧センサ、エアフロセンサ等を有する。エンジン20については、例えば、筒内圧センサ、負荷センサ、クランク角センサ、カム角センサ、トルクセンサ、水温センサ、ノックセンサ等を有する。排気通路30については、例えば、排気空燃比センサ、排気温センサ等を有する。
【0027】
ハイブリッド車両70は、エンジン制御を実施するECU60を有する。ECU60は、CPU、RAM、ROM等を有する電子制御ユニットであり、各種センサからの情報に基づいて、絞り弁12、スロットル弁15、筒内用噴射弁25、改質用噴射弁41、EGR弁46等の装置を制御する。
【0028】
ハイブリッド車両70は、モータMG2の駆動により走行するモータモードと、エンジン20の燃焼運転により走行するエンジンモードとの切り替えが可能であり、車両走行状況に応じて、各モードの切り替えが行われるようになっている。モータモードでは、エンジン20での燃焼が停止され、モータMG2の駆動による生成トルクによりハイブリッド車両70が走行する。また、エンジンモードでは、エンジン20での燃焼による生成トルクによりハイブリッド車両70が走行する。エンジンモードでは、エンジン20において燃料改質により生成された改質ガスを含む燃料の燃焼が適宜行われる。なお、エンジンモードでの走行時には、ハイブリッド車両70の速度に応じてモータMG2が適宜駆動されてもよい。ハイブリッド車両70は、例えば、発進時もしくは低速走行時にモータモードで走行し、加速時もしくは高速走行時にエンジンモードで走行する。
【0029】
ECU60は、ハイブリッド車両70の走行状態を制御する不図示のハイブリッドECUとの間で情報の受け渡しが可能になっており、例えばハイブリッド車両70の走行モードに関する情報が入力される。
【0030】
エンジンモードにおいて、燃料改質が行われる場合には、改質反応により生成された改質ガスである水素がエンジン20での燃焼に用いられる。それによって、エンジン20における燃焼速度が上昇し、熱効率が向上する。一方、改質触媒43の水素生成能は、炭素の堆積や硫黄被毒によって低下する。このような場合、改質触媒43に対して再生ガスを供給して炭素や硫黄を燃焼除去する再生処理を実施することで、改質触媒43の水素生成能は回復する。
【0031】
改質触媒43の再生処理として、エンジン20の燃焼が停止し且つエンジン出力軸であるクランク軸22が回転した状態で、EGR通路40に大気を流通させ、その大気中の酸素により触媒再生を行うことが想定される。しかしながら、改質触媒43上の炭素や硫黄の量が多い場合には、再生処理により改質触媒43が過昇温されて熱劣化することが懸念される。そこで、本実施形態のハイブリッド車両70では、再生処理を実施した場合における改質触媒43の再生時最高温度Tmaxを予測し、その再生時最高温度Tmaxと改質触媒43の許容上限温度Tlimとの比較に基づいて、エンジン20の燃焼が停止し且つクランク軸22が回転した状態で再生処理を実施するようにしている。
【0032】
再生時最高温度Tmaxは、再生処理を実施した場合に上昇する改質触媒43の温度の最高値のことである。本実施形態では特に、改質触媒43に対して大気を供給して触媒再生を実施する場合の触媒温度の最高値を、再生時最高温度Tmaxとしている。ECU60は、温度予測部として機能することにより、この再生時最高温度Tmaxを予測する。本実施形態では、ECU60は、堆積量推定部として機能することにより改質触媒43に堆積した可燃物の堆積量を推定し、その堆積量に基づき再生時最高温度Tmaxを予測する。ここでいう可燃物には、改質触媒43の水素生成能を劣化させる炭素や硫黄が含まれる。また、許容上限温度Tlimとは、改質触媒43が熱劣化するおそれのない上限の温度のことである。
【0033】
ECU60は、再生制御部として機能することにより、予測した再生時最高温度Tmaxと改質触媒43の許容上限温度Tlimとの温度比較に基づいて、改質触媒43の再生処理を実施する。ECU60は、モータモードでの車両走行時と、エンジンモードでの車両走行時とにおいて、それぞれ温度比較に基づいて再生処理を実施する。
【0034】
モータモードでの車両走行時には、ECU60は、モータモードからエンジンモードへの移行要求が生じる場合、すなわちエンジン20が燃焼停止の状態から燃焼状態へ移行する場合に、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低いことを条件に、エンジン20をモータリング状態にして再生処理を実施する。この場合、エンジン20の燃焼停止状態のまま、モータMG1の回転によりエンジン20のクランク軸22が回転状態とされることで、エンジン20がモータリング状態とされる。これにより、改質触媒43に再生ガスとして酸素(大気)が供給され、その酸素により触媒再生が行われる。
【0035】
また、エンジンモードでの車両走行時には、ECU60は、エンジン20での燃焼が行われている状態下で再生処理を実施する。この場合、改質触媒43に対して再生ガスとしてエンジン20の排気が供給され、その排気中の酸素により触媒再生が行われる。ECU60は、エンジンモードでの車両走行時において、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimより高いことを条件に、改質用燃料の噴射を停止した状態で、エンジン20の排気を再生ガスとして改質触媒43に供給して再生処理を実施する。
【0036】
ここで、エンジン20の排気が再生ガスとして改質触媒43に供給される場合には、大気が再生ガスとして改質触媒43に供給される場合と比べて、再生ガスに含まれる酸素量が少量となり、触媒再生時において改質触媒43の温度上昇の速度が小さい。したがって、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimより高い場合にエンジン20の排気による触媒再生を実施しても、触媒温度が過剰上昇することが生じないものとなっている。また、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimより高いことを触媒再生の実施条件としているため、現時点以降のモータモードへの移行後において、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimより高いためにモータモードでの触媒再生が実施できないといった不都合が抑制されるようになっている。
【0037】
図2は、ECU60が実行する触媒再生制御の手順を示すフローチャートである。本制御は、ECU60により所定周期で繰り返し実行される。
【0038】
触媒再生制御が開始されると、まず初めに、ECU60は、今現在、モータモードでの車両走行中であるか否かを判定する(ステップS11)。モータモードである場合(ステップS11:YES)、ECU60は、エンジンモードへの移行要求が生じたか否か、すなわちエンジン20を燃焼停止の状態から燃焼状態へ移行させるか否かを判定する(ステップS12)。例えば、ドライバによるアクセル操作によるハイブリッド車両70の加速の有無や、ハイブリッド車両70の速度に基づいて、エンジンモードへの移行要求が生じたか否かが判定されるとよい。
【0039】
エンジンモードへの移行要求が生じていない場合(ステップS12:NO)、ECU60は、本制御を終了する。一方、エンジンモードへの移行要求が生じている場合(ステップS12:YES)、ECU60は、再生時最高温度Tmaxを取得する(ステップS13)。この再生時最高温度Tmaxは、改質触媒43における都度の可燃物堆積量に基づいて算出される温度予測値であり、その算出手順については後述する。
【0040】
次に、ECU60は、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低いか否かを判定する(ステップS14)。再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低くない場合(ステップS14:NO)、すなわち、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlim以上である場合、ECU60は、本制御を終了する。この場合、モータモードでの改質触媒43の再生処理は実施されない。
【0041】
一方、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低い場合(ステップS14:YES)、ECU60は、モータモードでの改質触媒43の再生処理を実施する(ステップS15~S17)。すなわち、ECU60は、EGR弁46を開弁状態としてEGR通路40を流通可能にする(ステップS15)。次に、ECU60は、絞り弁12の開度を、全閉よりも小さい所定開度(半閉じ状態の開度)とし、吸気通路10における絞り弁下流側に負圧が発生する状態とする(ステップS16)。次に、ECU60は、モータMG1を駆動させ、エンジン20を燃焼停止状態のまま回転状態とする(ステップS17)。その後、ECU60は、本制御を終了する。これにより、エンジン20のモータリング動作により改質触媒43に大気が供給され、触媒再生が行われる。なお、本実施形態において、モータモードでの改質触媒43の再生処理は、エンジンモードへの移行要求が生じてから、エンジン20の燃焼を開始する直前に実施される。
【0042】
また、モータモードでなくエンジンモードである場合(ステップS11:NO)、ECU60は、再生時最高温度Tmaxを取得する(ステップS21)。次に、ECU60は、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも高いか否かを判定する(ステップS22)。再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも高くない場合(ステップS22:NO)、すなわち、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlim以下である場合、ECU60は、本制御を終了する。この場合、エンジンモードでの改質触媒43の再生処理は実施されない。
【0043】
一方、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも高い場合(ステップS22:YES)、ECU60は、エンジンモードでの改質触媒43の再生処理を実施すべく、改質用噴射弁41による燃料噴射を停止する(ステップS23)。この場合、筒内用噴射弁25による燃料噴射は継続され、エンジン20は燃焼状態のままとなる。また、燃料改質の実施時にはEGR弁46が開弁されており、EGR弁46が開弁状態のまま保持される。その後、ECU60は、本制御を終了する。これにより、エンジン20から排出される排気により触媒再生が行われる。
【0044】
エンジンモードにおいて、エンジンモードからモータモードへの移行要求が生じる場合、すなわちエンジン20が燃焼状態から燃焼停止の状態へ移行する場合に、エンジン20の燃焼停止からクランク軸22の回転が停止するまでの惰性回転区間で、改質触媒43の再生処理を実施する構成とすることも可能である。ECU60は、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低いことを条件に、エンジン20の燃焼停止からクランク軸22の惰性回転の停止までの期間で、EGR通路40を流通可能にするとともに絞り弁12により吸気通路10に負圧を発生させた状態にして再生処理を実施する。この場合、エンジンモードからモータモードへ移行する際において、エンジン20の燃焼停止直後にはクランク軸22が惰性回転する。その惰性回転により、改質触媒43に再生ガスとして酸素(大気)が供給され、その酸素により触媒再生が行われる。
【0045】
図3は、ECU60が実行する触媒再生制御の手順を示すフローチャートであり、本制御は、
図2に置き換えてECU60により実行される。
【0046】
触媒再生制御が開始されると、まず初めに、ECU60は、今現在、エンジンモードでの車両走行中であるか否かを判定する(ステップS31)。エンジンモードでない場合(ステップS31:NO)、ECU60は、本制御を終了する。
【0047】
また、エンジンモードである場合(ステップS31:YES)、ECU60は、モータモードへの移行要求が生じたか否か、すなわちエンジン20を燃焼状態から燃焼停止の状態へ移行させるか否かを判定する(ステップS32)。例えば、ドライバによるアクセル操作量やハイブリッド車両70の速度に基づいて、モータモードへの移行要求が生じたか否かが判定されるとよい。
【0048】
モータモードへの移行要求が生じている場合(ステップS32:YES)、ECU60は、再生時最高温度Tmaxを取得する(ステップS33)。次に、ECU60は、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低いか否かを判定する(ステップS34)。再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低くない場合(ステップS34:NO)、すなわち、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlim以上である場合、ECU60は、本制御を終了する。この場合、エンジンモードからモータモードへの移行時における改質触媒43の再生処理は実施されない。
【0049】
一方、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低い場合(ステップS34:YES)、ECU60は、エンジンモードからモータモードへの移行時における改質触媒43の再生処理を実施する(ステップS35~S36)。すなわち、ECU60は、EGR弁46を開弁状態としてEGR通路40を流通可能にする(ステップS35)。次に、ECU60は、絞り弁12の開度を、全閉よりも小さい所定開度(半閉じ状態の開度)とし、吸気通路10における絞り弁下流側に負圧が発生する状態とする(ステップS36)。その後、ECU60は、本制御を終了する。これにより、エンジン20の惰性回転により改質触媒43に大気が供給され、触媒再生が行われる。
【0050】
また、モータモードへの移行要求が生じていない場合(ステップS32:NO)、ECU60は、エンジン20から排出される排気を用いた再生処理を実施する(ステップS41~S43)。なお、ステップS41~S43の処理は、
図2のステップS21~S23と同じ処理であり、ここでは簡略して説明する。ECU60は、再生時最高温度Tmaxを取得し(ステップS41)、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも高い場合(ステップS42:YES)、改質用噴射弁41による燃料噴射を停止する(ステップS23)。これにより、エンジン20から排出される排気により触媒再生が行われる。
【0051】
図4には、
図2、
図3の各制御をより具体的に示すタイミングチャートを示す。なお、
図4において、再生処理1は、
図2の触媒再生制御に対応するタイミングチャートであり、再生処理2は、
図3の触媒再生制御に対応するタイミングチャートである。
【0052】
まずは再生処理1について説明する。
図4では、タイミングt1においてモータモードでの車両走行が開始され、その後、タイミングt2では、例えばハイブリッド車両70の加速に伴い、エンジンモードへの移行要求が生じる。このとき、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低ければ、モータモードでの改質触媒43の再生処理が実施される。この再生処理では、EGR弁46を開弁させ、かつ絞り弁12を半閉じ状態とするとともに、モータMG1の駆動によりエンジン20をモータリング状態として、改質触媒43への大気供給により触媒再生が実施される。
図4においては、エンジンモードへの移行要求が生じた時点が、既にエンジン20の燃焼を開始する直前であったことから、当該時点から再生処理が実施される。
【0053】
その後、タイミングt3では、エンジンモードでの車両走行に切り替えられ、エンジン20の燃焼が開始される。なお、タイミングt3では、エンジン20のモータリング状態で燃料噴射が開始されることによりエンジン20が始動されるとよい。タイミングt2~t3の期間、すなわちエンジン20のモータリングによる触媒再生が実施される期間は、予め定められた時間であるとよい。
【0054】
エンジンモードへの移行後には、タイミングt4で、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも高くなることに基づいて、エンジン燃焼状態下で排気による触媒再生が実施される。このとき、筒内用噴射弁25による燃料噴射を継続し、かつ改質用噴射弁41による燃料噴射を停止した状態で、改質触媒43に対して排気が供給され、その排気により触媒再生が行われる。なお、タイミングt4では、予め定められた所定期間において排気による触媒再生が行われるとよい。
【0055】
次に、再生処理2について説明する。エンジンモードへの移行後には、再生処理1の場合と同様に、タイミングt4で、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも高くなることに基づいて、エンジン燃焼状態下で排気による触媒再生が実施される。
【0056】
その後、タイミングt5では、例えばハイブリッド車両70の減速に伴い、モータモードへの移行要求が生じる。このとき、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低ければ、エンジン20の燃焼停止から惰性回転停止までの期間において改質触媒43の再生処理が実施される。この再生処理では、EGR弁46を開弁させ、かつ絞り弁12を半閉じ状態とするとともに、エンジン20の惰性回転に伴う改質触媒43への大気供給により再生処理が実施される。
【0057】
なお、ECU60が再生処理1および再生処理2の両方を実施する構成としてもよい。この場合、改質触媒43の再生処理として、モータモードからエンジンモードへの移行時の再生処理(タイミングt2の処理)と、エンジンモードでの再生処理(タイミングt4の処理)と、エンジンモードからモータモードへの移行時の再生処理(タイミングt5の処理)とが実施される。
【0058】
次に、再生時最高温度Tmaxの予測について説明する。ECU60は、再生時最高温度Tmaxの予測に関して、改質触媒43に堆積した可燃物の堆積量を推定する堆積量推定制御と、その堆積量に基づき再生時最高温度Tmaxを予測する温度予測制御とを実施する。ECU60は、噴射した改質用燃料の量に対する改質触媒43で反応した改質用燃料の量の比である改質率と、EGR通路40を流通した硫黄流通量とに基づいて、改質触媒43に堆積した可燃物の堆積量を推定する。
【0059】
可燃物の堆積量を推定する際、詳細には、水素センサ45により検出された実際の水素の生成量から算出される実改質率と、改質触媒43の水素生成能が劣化していない場合の改質率である理想改質率と、の差が用いられる。この差を算出する際に用いられる理想改質率は、改質触媒43の温度、改質触媒43に流通する排ガスの流量および改質用噴射弁41から噴射された改質用燃料の量などのパラメータが、実改質率が算出されたときと同条件である場合の理想改質率である。この差が大きいほど、可燃物の堆積量は多いと推定される。
【0060】
また、可燃物の堆積量を推定する際、EGR通路40を流通する硫黄流通量が用いられる。この硫黄流通量は、改質触媒43に流通した排ガス中の硫黄量および改質用噴射弁41から噴射された改質用燃料中の硫黄量を積算した数値に基づいて推定される。硫黄流通量が多いほど、可燃物の堆積量は多いと推定される。
【0061】
図5は、ECU60が実行する堆積量推定制御の手順を示すフローチャートである。本制御は、ECU60により所定周期で繰り返し実行される。
【0062】
堆積量推定制御が開始されると、まず初めに、ECU60は、実改質率と理想改質率とを取得する(ステップS51)。次に、ECU60は、EGR通路40を流通した硫黄流通量を取得する(ステップS52)。そして、ECU60は、実改質率と理想改質率との差および硫黄流通量に基づいて、改質触媒43に堆積した可燃物の堆積量を推定する(ステップS53)。その後、ECU60は、本制御を終了する。
【0063】
ECU60は、推定された可燃物の堆積量に基づいて再生時最高温度Tmaxを予測する。詳細には、ECU60は、エンジン20の燃焼が停止し且つクランク軸22が回転した状態、すなわち再生ガスとして大気を用いた状態で再生処理が実施されることを前提として、時間経過に伴う改質触媒43での可燃物の堆積量の減少変化を予測するとともに、その堆積量の減少変化に応じた改質触媒43の温度変化を予測する。換言すれば、ECU60は、再生処理が開始されてから単位時間ごとに燃焼されて減少する可燃物の量を予測し、その量に応じた単位時間ごとの改質触媒43の温度変化を予測するということである。そして、ECU60は、予測した温度変化において、改質触媒43の温度が上昇から下降に転じる際の温度を、再生時最高温度Tmaxとして予測する。
【0064】
単位時間ごとに燃焼されて減少する可燃物の量は、改質触媒43の温度、エンジン20の回転数および推定された可燃物の堆積量に基づいて予測される。単位時間ごとの改質触媒43の温度変化は、単位時間ごとに燃焼されて減少する可燃物の量の他に、1つ前の単位時間における改質触媒43の温度、触媒パラメータおよび触媒燃焼パラメータに基づいて予測される。触媒パラメータとは、改質触媒43における熱の伝導性を示すパラメータのことである。触媒燃焼パラメータとは、再生処理を実施した際の改質触媒43の温度上昇の傾向を示すパラメータである。触媒パラメータおよび触媒燃焼パラメータの各々には、改質触媒43の温度やその金属構成、膜厚のうちの少なくともいずれかが用いられる。
【0065】
図6は、再生処理が開始されてから単位時間ごとに変化する改質触媒43の温度を示している。縦軸は、改質触媒43の温度を示す。横軸は、時間を示す。横軸に示された目盛の間隔は、単位時間を表している。タイミングt10は、再生処理が開始された時点であり、このときの温度は、再生処理による燃焼で温度が上昇する前の改質触媒43の温度である。再生処理が開始された当初は、可燃物の燃焼により発熱量が放熱量を上回っているため、改質触媒43の温度は、単位時間ごとに上昇していく。
図6においては、タイミングt10からタイミングt16までの間は、改質触媒43の温度は上昇し続けている。
【0066】
その後、改質触媒43の再生が進んで可燃物の堆積量が減っていくのに伴い改質触媒43での発熱量が次第に減り、その発熱量が大気流通による放熱量よりも少なくなると、改質触媒43の温度が上昇から下降に転じる。そして、改質触媒43の温度は、単位時間ごとに下降していく。
図6においては、タイミングt16以降、改質触媒43の温度は下降していく。ECU60は、改質触媒43の温度が上昇から下降に転じる際の温度を、再生時最高温度Tmaxとして予測する。
図6においては、再生時最高温度Tmaxは、タイミングt16における改質触媒43の温度である。
【0067】
図7は、ECU60が実行する温度予測制御の手順を示すフローチャートである。本制御は、ECU60により所定周期で繰り返し実行される。
【0068】
温度予測制御が開始されると、まず初めに、ECU60は、現在の改質触媒43の温度を取得する(ステップS61)。この温度は、改質触媒43に備えられた触媒温度センサ(不図示)により取得される。次に、ECU60は、エンジン20の回転数を取得する(ステップS62)。エンジン20の回転数は、回転数センサ(不図示)により取得される。次に、ECU60は、可燃物の堆積量を取得する(ステップS63)。ECU60は、改質率および硫黄流通量に基づいて推定した可燃物の堆積量を取得する。
【0069】
次に、ECU60は、単位時間あたりの可燃物の減少量を計算する(ステップS64)。本制御が開始されてから最初のステップS64では、再生処理が開始されてから最初の単位時間あたりの可燃物の減少量が計算される。次に、ECU60は、ステップS64において計算された可燃物の減少量に応じて、改質触媒43の温度T(n)を予測する(ステップS65)。
【0070】
次に、ECU60は、前回予測した温度T(n-1)が今回予測した温度T(n)より大きいか否か判定する(ステップS66)。本制御が開始されてから最初のステップS56では、温度T(n-1)が存在せず、この場合、ECU60は、否定判定(ステップS66:NO)をする。本制御が開始されてから2回目以降のステップS56では、温度T(n-1)は存在することから、温度T(n-1)と温度T(n)との比較により判定が行われる(ステップS66)。
【0071】
温度T(n-1)が温度T(n)より大きくない場合(ステップS66:NO)、ECU60は、次の単位時間あたりの可燃物の減少量を計算する(ステップS64)。その後、ECU60は、ステップS66において肯定判定がされるまで、ステップS64からステップS66までの処理を繰り返す。この繰り返しにより、再生処理が開始されてから単位時間ごとの改質触媒43の温度変化が予測される。
【0072】
ステップS64からステップS66までの処理が繰り返されたのち、前回予測した温度T(n-1)が今回予測した温度T(n)より大きい場合(ステップS66:YES)、ECU60は、当該温度T(n)を再生時最高温度Tmaxとして予測する(ステップS67)。ステップS66において肯定判定された際の温度T(n)は、再生処理の開始以降で改質触媒43の温度が上昇から下降に転じる際の温度である。
【0073】
以上説明した実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0074】
再生時最高温度Tmaxを予測した上で、ハイブリッド車両70の走行中において、再生時最高温度Tmaxと許容上限温度Tlimとの比較に基づいて、エンジン20の燃焼が停止し且つクランク軸22が回転した状態で再生処理を実施するようにした。ハイブリッド車両70では、走行中にエンジン20の燃焼停止期間を比較的長い期間で確保することができる。その燃焼停止期間を利用することで、改質触媒43の再生処理の実施機会を確保することができる。さらに、エンジン20の燃焼が停止し且つクランク軸22が回転した状態では、改質触媒43に対して再生ガスとしての酸素が効率良く供給される。また、再生時最高温度Tmaxと許容上限温度Tlimとの比較に基づいて再生処理が実施されることにより、改質触媒43の再生を適切に行わせつつ、改質触媒43の熱劣化を抑制することができる。
【0075】
また、モータモードでの車両走行時において、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低いことを条件に、モータMG1の回転によりクランク軸22を回転させて再生処理を実施するようにした。ハイブリッド車両70においては、モータモードでの車両走行時にはエンジン20の燃焼停止中であっても、モータMG1の回転によりクランク軸22を回転させることによって、改質触媒43に対して再生ガスを供給する再生処理の実施が可能となる。また、モータモードで車両走行が行われている状態では、エンジン20の燃焼が停止していることから、改質触媒43の温度は低くなっている可能性が高い。そのような状態において、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低い場合にモータMG1の回転によりクランク軸22を回転させる再生処理を実施することから、改質触媒43の熱劣化を抑制することができる。
【0076】
また、モータモードでの車両走行時にエンジン20を燃焼停止の状態から燃焼状態へ移行させる場合において、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低いことを条件に、エンジン20の燃焼を開始する直前に再生処理を実施するようにした。エンジン20の燃焼を停止してから次にエンジン20の燃焼を開始するまでの間のうち、改質触媒43の温度は、エンジン20の燃焼を開始する直前の時点において最も低くなっている。そのような時点において、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低い場合に再生処理を実施することから、改質触媒43の熱劣化を抑制することができる。
【0077】
また、エンジンモードでの車両走行時において、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimより高いことを条件に、改質用燃料の噴射を停止した状態で、エンジン20の排気を再生ガスとして改質触媒43に供給して再生処理を実施するようにした。エンジンモードでの車両走行時において、改質用燃料の噴射を停止した状態では、エンジン20の排気に含まれる酸素を用いることで、この排気を再生ガスとして改質触媒43に供給する再生処理の実施が可能となる。また、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimより高いことを理由に、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低い場合にモータMG1の回転によりクランク軸22を回転させる再生処理が実施できないという状況を回避することができる。
【0078】
エンジンモードでの車両走行時に再生ガスとしてエンジン20の排気が改質触媒43に供給される場合、エンジン20の燃焼が停止された状態で再生ガスが供給される場合と比べて、改質触媒43の温度は上昇しにくい。したがって、少なくとも一部が改質触媒43で燃焼される改質用燃料の噴射を停止した状態で、燃焼運転中のエンジン20の排気を改質触媒43に供給する再生処理を実施した場合には、改質触媒43の温度が許容上限温度Tlimより高くなる可能性は低い。よって、当該再生処理は、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimより高い場合であっても、改質触媒43の許容上限温度Tlimを超えない温度上昇の範囲内で実施することができる。
【0079】
また、エンジンモードでの車両走行時にエンジン20を燃焼状態から燃焼停止の状態へ移行させる場合において、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低いことを条件に、エンジン20の燃焼停止からクランク軸22の惰性回転の停止までの期間で、EGR通路40を流通可能にするとともに絞り弁12により吸気通路10に負圧を発生させた状態で再生処理を実施するようにした。すなわち、エンジン20が燃焼状態から燃焼停止の状態へ移行する場合に、その燃焼停止直後にクランク軸22の惰性回転による再生処理を実施するとした。この構成によれば、EGR通路40に対して、再生ガスとしての大気を積極的に流すことができる。また、改質触媒43の再生処理を実施する機会を増やすことができる。
【0080】
また、噴射した改質用燃料の量に対する改質触媒43で反応した改質用燃料の量の比である改質率と、EGR通路40を流通した硫黄流通量とに基づいて、改質触媒43に堆積した可燃物の堆積量を推定し、当該堆積量に基づき再生時最高温度Tmaxを予測するようにした。改質触媒43では、改質反応に伴い炭素が堆積し、炭素の堆積量が増えるほど、改質用燃料の量に対する改質触媒43で反応した改質用燃料の量の比である改質率が低下する。また、改質触媒43では、改質用燃料に含まれる硫黄や、EGR通路40を流れる排気中の硫黄が堆積することによる硫黄被毒が生じる。そして、改質触媒43の再生処理では、炭素の酸化反応による発熱だけでなく、硫黄の酸化反応による発熱が生じる。この場合、改質率と、EGR通路40を流通する硫黄流通量とに基づいて、改質触媒43に堆積した可燃物の堆積量を推定することにより、再生処理を実施する際の改質触媒43の再生時最高温度Tmaxを適正に予測することができる。
【0081】
また、エンジン20の燃焼が停止し且つクランク軸22が回転した状態で再生処理が実施されることを前提として、時間経過に伴う改質触媒43での可燃物の堆積量の減少変化を予測するとともに、その堆積量の減少変化に応じた改質触媒43の温度変化を予測し、改質触媒43の温度が上昇から下降に転じる際の温度を、再生時最高温度Tmaxとして予測するようにした。エンジン20の燃焼が停止し且つクランク軸22が回転した状態で再生処理が実施される場合には、時間経過に伴い、可燃物が燃焼して発熱することにより改質触媒43の温度が上昇する一方、非燃焼の状態で大気が改質触媒43に供給されることによる放熱が生じる。この再生処理を実施した際に変動する改質触媒43の温度のうち上昇から下降に転じる際の改質触媒43の温度は、最高温度である可能性が高いことから、そのときの温度を再生時最高温度Tmaxとして予測するようにした。これにより、再生時最高温度Tmaxを適正に予測することができる。
【0082】
上記実施形態は、例えば、次のように変更してもよい。
【0083】
・上述した実施形態では、改質器42は、EGR通路40の一部を形成している層と排気通路30が改質器42を通過する層とを交互に重ね合わせたクロスフロー構造であったが、これに限られない。例えば、改質器42は、EGR通路40の一部を形成しているとともに排気通路30とは重ならないストレートフロー構造であってもよい。
【0084】
・上記実施形態では、EGR通路40の上流側の端は、排気通路30のうち改質器42内を通過する部分より上流側且つO2センサ35より下流側の位置に接続されており、EGR通路40の下流側の端は、吸気通路10のうち絞り弁12とコンプレッサ13との間の位置に接続されていたが、これに限られない。例えば、EGR通路40の上流側の端は、排気通路30のうちタービン32と改質器42との熱交換位置との間の任意の部分に接続されていてもよい。また、EGR通路40の下流側の端は、コンプレッサ13より下流側の部分に接続されていてもよい。
【0085】
・上記実施形態では、モータモードでの車両走行中において、エンジンモードへの移行時であり、かつ再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低い場合に、エンジン20のモータリングによる触媒再生を実施する構成としていたが、これに限られない。モータモードでの車両走行中において、エンジンモードへの移行要求の有無にかかわらず、再生時最高温度Tmaxが許容上限温度Tlimよりも低いことを条件に、エンジン20のモータリングによる触媒再生を実施する構成としてもよい。例えば、モータモードでの車両走行の開始後において、所定時間の経過時点でエンジン20のモータリングによる触媒再生を実施する構成であるとよい。その所定時間は、エンジン20の燃焼停止後における触媒温度の低下を加味して定められているとよい。
【0086】
・上記実施形態では、ECU60は、改質率と硫黄流通量とに基づいて、改質触媒43に堆積した可燃物の堆積量を推定していたが、これに限られない。例えば、ECU60は、最後に再生処理が実施されてから現時点までの期間に経過した時間の長さ、当該期間における走行距離、最後に再生処理が実施された際の可燃物の残存量などに基づいて、可燃物の堆積量を推定してもよい。可燃物の残存量は、最後の再生処理が開始された際の可燃物の堆積量、最後の再生処理が実施された際の処理時間の長さなどに応じて推定される。
【0087】
・上記実施形態では、
図7の温度予測制御において、ECU60は、ステップS64からステップS66までの処理を繰り返し、前回予測した温度T(n-1)が今回予測した温度T(n)より大きい場合(ステップS66:YES)に、当該温度T(n)を再生時最高温度Tmaxとして予測していたが(ステップS67)、これに限られない。例えば、ECU60は、ステップS63で可燃物の堆積量を取得したのち、再生処理が開始されてから当該堆積量のすべてが燃焼されるまでの間の各単位時間あたりの減少量を計算し、その減少量に応じた各単位時間の改質触媒43の温度T(n)に基づいて、再生時最高温度Tmaxを予測してもよい。このとき、温度T(n)より1つ前の単位時間の温度T(n-1)が大きくなるような温度T(n)が複数存在する場合には、当該温度T(n)のうち最も高い温度を示すものを再生時最高温度Tmaxとして予測する。
【0088】
・上記実施形態では、モータモードでの車両走行中において、モータMG1の回転によりクランク軸22を回転させることにより、改質触媒43に再生ガスが供給されていたが、これに限られない。例えば、モータモードでの車両走行中において、モータMG2の回転によりクランク軸22を回転させることにより、改質触媒43に再生ガスが供給されてもよい。また、モータMG1もしくはモータMG2の回転によりクランク軸22を回転させて再生ガスを供給する際、その回転数は、再生時最高温度Tmaxと許容上限温度Tlimとの温度差に応じて設定されてもよい。例えば、当該温度差が大きいほどクランク軸22の回転数が高くなるよう設定されてもよい。
【0089】
・上記実施形態では、ハイブリッド車両70は、車両走行状況に応じてモータモードでの走行とエンジンモードでの走行とを切り替える車両であったが、これに限られない。例えば、ハイブリッド車両70は、発電専用のエンジンによって発電機を駆動してバッテリを充電するとともに、当該バッテリからモータに電力を供給して走行する、いわゆるレンジエクステンダタイプの車両であってもよい。
【0090】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10…吸気通路、20…エンジン、30…排気通路、40…EGR通路、41…改質用噴射弁、43…改質触媒、60…ECU、70…ハイブリッド車両