(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173944
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 15/00 20060101AFI20221115BHJP
F02C 6/16 20060101ALI20221115BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20221115BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20221115BHJP
H02J 3/28 20060101ALI20221115BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20221115BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H02J15/00 E
F02C6/16
H02J3/38 110
H02J3/46
H02J3/28
H02J3/00 130
H02J13/00 311R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080017
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G064DA02
5G064DA03
5G066AA02
5G066HA15
5G066HB02
5G066HB03
5G066HB08
5G066JA05
5G066JB10
(57)【要約】
【課題】発電機の回転速度の制御による出力制御の利点を維持しつつ、電力系統の安定化にも寄与し得るCAES発電装置を提供する
【解決手段】CAES発電装置は、複数のCAES発電ユニット5a~5hと制御部6を備える。CAES発電ユニット5a~5hは、発電機23を、発電機23の回転速度を制御するインバータ33を介して電力系統2に接続する変速運転と、電力系統2に直結する同期運転とに切り替え可能な切替部25を備える。制御部6は、電力系統2の安定度に応じて、CAES発電ユニット5a~5hの発電機23を、変速運転及び同期運転のいずれかに設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変動する入力電力により駆動される電動機と、
前記電動機によって駆動され、空気を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出された圧縮空気を蓄える蓄圧部と、
前記蓄圧部から供給される圧縮空気によって駆動される膨張機と、
前記膨張機によって駆動され、電力系統に出力電力を供給する同期機である発電機と、
前記発電機を、前記発電機の回転速度を制御するインバータを介して前記電力系統に接続する変速運転と、前記電力系統に直結する同期運転とに切り替え可能な切替部と
をそれぞれ備える複数の圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットと、
前記電力系統の安定度に応じて、前記複数の圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットの前記発電機を、前記変速運転及び前記同期運転のいずれかに設定する制御部と
を備える圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電力系統の前記安定度が高い程、前記発電機が前記変速運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数を増やして、前記発電機が前記同期運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数を減らし、
前記制御部は、前記電力系統の前記安定度が低い程、前記発電機が前記同期運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数を増やして、前記発電機が前記変速運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数を減らす、請求項1に記載の圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置。
【請求項3】
前記変動する入力電力は、再生可能エネルギー発電設備によって得られる電力を含み、
前記制御部は、前記再生可能エネルギー発電設備の発電に影響する自然条件の予測と、前記電力系統に接続させた需要負荷の電力供給要求の予測とに基づいて前記電力系統の前記安定度を予測し、この予測に基づいて、前記発電機が前記変速運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数と、前記発電機が前記同期運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数とを決定する、請求項2に記載の圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置。
【請求項4】
前記制御部は、リアルタイムで取得した前記電力系統の系統周波数に対する変動に基づいて、前記発電機が前記変速運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数と、前記発電機が前記同期運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数とを決定する、請求項2に記載の圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置。
【請求項5】
前記圧縮機と前記膨張機は別個の機器であり、
前記電動機と前記発電機は別個の機器である、請求項1から4のいずれか1項に記載の圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置。
【請求項6】
前記圧縮機と前記膨張機は同一の機器であり、
前記電動機と前記発電機は同一の同期機である、請求項1から5のいずれか1項に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項7】
変動する入力電力により駆動される電動機と、
前記電動機によって駆動され、空気を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出された圧縮空気を蓄える蓄圧部と、
前記蓄圧部から供給される圧縮空気によって駆動される膨張機と、
前記膨張機によって駆動され、電力系統に出力電力を供給する同期機である発電機と、
前記発電機を、前記発電機の回転速度を制御するインバータを介して前記電力系統に接続する変速運転と、前記電力系統に直結する同期運転とに切り替え可能な切替部と
をそれぞれ備える複数の圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットを有する圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置を準備し、
前記電力系統の安定度に応じて、前記複数の圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットの前記発電機を、前記変速運転及び前記同期運転のいずれかに設定する、圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、火力発電は、同期発電機の連携により、安定した電力系統の維持を担っているが、近年、太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーが電力供給に占める割合が急激に増加している。再生可能エネルギーは、需要に合わせた電力供給調整が難しいため、電気力系統安定化への負担を緩和し、需要変動を吸収する大規模電力貯蔵装置が必要となる。
【0003】
大規模電力貯蔵装置の一つとして、圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)発電装置が知られている。特許文献1に開示されたCAES発電装置では、圧縮空気を作動媒体する膨張機で駆動される発電機の回転速度をインバータによって制御することで、発電機の出力を制御できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のCAESは、特許文献1に開示されたものを含め、電力系統の安定化(特に、同期化力の不足に起因する、周波数移送変化に関わる短時間変化に対応した安定化)について、十分な検討が払われていない。
【0006】
本発明は、発電機の回転速度の制御による出力制御の利点を維持しつつ、電力系統の安定化にも寄与し得るCAES発電装置及びその制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、変動する入力電力により駆動される電動機と、前記電動機によって駆動され、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機から吐出された圧縮空気を蓄える蓄圧部と、前記蓄圧部から供給される圧縮空気によって駆動される膨張機と、前記膨張機によって駆動され、電力系統に出力電力を供給する同期機である発電機と、前記発電機を、前記発電機の回転速度を制御するインバータを介して前記電力系統に接続する変速運転と、前記電力系統に直結する同期運転とに切り替え可能な切替部とをそれぞれ備える複数の圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットと、前記電力系統の安定度に応じて、前記複数の圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットの前記発電機を、前記変速運転及び前記同期運転のいずれかに設定する制御部とを備える圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置を提供する。
【0008】
具体的には、前記制御部は、前記電力系統の前記安定度が高い程、前記発電機が前記変速運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数を増やして、前記発電機が前記同期運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数を減らす。また、前記制御部は、前記電力系統の前記安定度が低い程、前記発電機が前記同期運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数を増やして、前記発電機が前記変速運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数を減らす、請求項1に記載の圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置。
【0009】
本発明に係る圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置では、電力系統の安定度が高い程、発電機が変速運転に設定される圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数が増える。発電機が変速運転に設定される圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットでは、発電機の回転速度の制御により電力系統に出力電力を制御できる。一方、電力系統の安定度が低い程、発電機が同期運転に設定される圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数が増える。発電機が同期運転に設定される圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットは、需要負荷の変動に対して発電機の負荷角が変化することで、電力系統における電力の需給バランスの調整に寄与する。このように、本発明に係る圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置によれば、発電機の回転速度の制御による出力制御の利点を維持しつつ、同期化力供給による電力系統の安定化にも寄与し得る。
【0010】
前記変動する入力電力は、再生可能エネルギー発電設備によって得られる電力を含み、前記制御部は、前記再生可能エネルギー発電設備の発電に影響する自然条件の予測と、前記電力系統に接続させた需要負荷の電力供給要求の予測とに基づいて前記電力系統の前記安定度を予測し、この予測に基づいて、前記発電機が前記変速運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数と、前記発電機が前記同期運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数とを決定してもよい。
【0011】
前記制御部は、リアルタイムで取得した前記電力系統の系統周波数に対する変動に基づいて、前記発電機が前記変速運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数と、前記発電機が前記同期運転に設定される前記圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットのユニット数とを決定してもよい。
【0012】
前記圧縮機と前記膨張機は別個の機器であり、前記電動機と前記発電機は別個の機器であってもよい。
【0013】
前記圧縮機と前記膨張機は同一の機器であり、前記電動機と前記発電機は同一の同期機であってもよい。
【0014】
本発明の第2の態様は、変動する入力電力により駆動される電動機と、前記電動機によって駆動され、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機から吐出された圧縮空気を蓄える蓄圧部と、前記蓄圧部から供給される圧縮空気によって駆動される膨張機と、前記膨張機によって駆動され、電力系統に出力電力を供給する同期機である発電機と、前記発電機を、前記発電機の回転速度を制御するインバータを介して前記電力系統に接続する変速運転と、前記電力系統に直結する同期運転とに切り替え可能な切替部とをそれぞれ備える複数の圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットを有する圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置を準備し、前記電力系統の安定度に応じて、前記複数の圧縮空気エネルギー貯蔵発電ユニットの前記発電機を、前記変速運転及び前記同期運転のいずれかに設定する、圧縮空気エネルギー貯蔵発電装置の制御方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のCAES発電装置及びその制御方法によれば、発電機の回転速度の制御による出力制御の利点を維持しつつ、電力系統の安定化にも寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るCAES発電装置が接続された電力系統の模式図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るCAES発電装置のブロック図。
【
図4A】個々のCAES発電ユニットの運転状態の一例を示す概念図。
【
図4B】個々のCAES発電ユニットの運転状態の他の一例を示す概念図。
【
図5】CAES発電ユニットの変形例の模式的な系統図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、各図面は本発明を説明するための単なる説明図であるため、装置構成は模式的あるいは概念的に示されている。そのため、個々のCAES発電ユニットにおける圧縮機13又は膨張機14について、台数や圧縮段数、及びそれらに応じた配管構成等については図示を省略している。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)発電装置1が接続された電力系統2を示す。この電力系統2には、CAES発電装置1以外に、発電機群、つまり発電機3a,3b,3c,3dと、需要負荷群、つまり需要負荷4a,4b,4c,4d,4eが接続されている。発電機3a~3cは、化石燃料を使用する従来型の発電設備の発電機であり、同期機で構成されている。一方、発電機3dは、再生可能エネルギー発電設備の発電機であり、インバータにより電力系統2との連携が行われている。
【0019】
電力系統2に接続される発電機が同期機である発電機3a~3cのみであれば、需要負荷4a~4eの変動に対して、個々の発電機3a~3cは同期化力(慣性力)による負荷角の自律的な変化により電力系統2の安定化に寄与する。
【0020】
しかし、発電機3dのようにインバータにより電力系統2と連携している場合、同期機のような同期安定化機能は得られない。そのため、電力系統2に接続される再生可能エネルギー発電設備が増えると、相対的に同期化力を供給できる発電機が減少するので、需要負荷4a~4eの急変時や、再生可能エネルギー発電設備の発電機3dの出力変動時に電力系統2が不安定となる。
【0021】
本実施形態のCAES発電装置1は、発電機23(
図3参照)の回転速度のインバータ制御による出力制御の利点を維持しつつ、需要負荷4a~4eの急変時や、再生可能エネルギー発電設備の発電機3dの出力変動時における電力系統2の安定化にも寄与し得る。
【0022】
図2を参照すると、本実施形態のCAES発電装置1は、8個の圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)発電ユニット5a,5b,5c,5d,5e,5f,5g,5hと、コントローラ(制御部)6とを備える。本実施形態では、CAES発電ユニット5a~5hの構成は同一である。
【0023】
図3を参照して、本実施形態における個々のCAES発電ユニット5a~5hを説明する。まず、CAES発電ユニット5a~5hの全体的な構成と機能を説明する。
【0024】
CAES発電ユニット5a~5hは、空気配管系11と熱媒配管系12とを備える。
【0025】
空気配管系11には、圧縮機13と、蓄圧タンク(蓄圧部)14と、膨張機15が設けられており、これらが空気配管16a,16b,16c,16dにより接続されている。
【0026】
圧縮機13は、本実施形態では雌雄一対のスクリュロータを備えるスクリュー圧縮機である。圧縮機13は、スクリュー圧縮機以外の容量型の圧縮機であってもよいし、ターボ型の圧縮機であってもよい。
【0027】
圧縮機13のスクリュロータには、電動機17が機械的に接続されている。電動機17は再生可能エネルギー発電設備18で発電された電力、つまり変動する入力電力により作動して、圧縮機13を回転駆動する。圧縮機13は電力系統2からも電力供給を受けることができる。再生可能エネルギー発電設備18の例としては、風力発電設備と太陽光発電設備があるが、これらに限定されない。
【0028】
圧縮機13内では、雌雄一対のスクリュロータが回転駆動され、噛合することで、空気を圧縮する。圧縮機13の吸込口13aは空気配管16aを介して大気と連通しており、吐出口13bは空気配管16bを介して蓄圧タンク14と流体的に接続されている。空気配管16bには圧縮側熱交換器19が介設されている。圧縮機13は、電動機17によって回転駆動されると、空気配管16aを通じて吸気口13aから空気を吸気し、内部で圧縮し、圧縮空気を吐出口13bから吐出し、空気配管16bを通じて蓄圧タンク14に圧縮空気を圧送する。
【0029】
以上のように、個々のCAES発電ユニット5a~5hでは、再生可能エネルギー発電設備18からの変動する入力電力によって電動機17を作動させて圧縮機13を回転駆動し、圧縮機13で生成された圧縮空気を蓄圧タンク14に蓄える(充電運転)。
【0030】
蓄圧タンク14の例としては、鋼製タンクがあるが、これに限定されない。蓄圧タンク14は、圧縮機13から圧送された圧縮空気を貯蔵する。つまり、蓄圧タンク14には、圧縮空気としてエネルギーが貯蔵される。蓄圧タンクタンク12は空気配管16cを通じて膨張機15の給気口15aに流体的に接続されており、蓄圧タンク12で貯蔵された圧縮空気は空気配管16cを介して膨張機15に供給される。空気配管16cには、圧縮空気の流れを許容または遮断するためのバルブ21と、膨張側熱交換器22とが設けられている。バルブ21を開閉することにより、蓄圧タンク14から膨張機15に圧縮空気を供給するか否かを変更できる。
【0031】
膨張機15は、本実施形態では、雌雄一対のスクリュロータを備えるスクリュー膨張機である。膨張機15は、スクリュー膨張機以外の容量型の膨張機であってもよいし、ターボ型の膨張機であってもよい。
【0032】
膨張機15のスクリュロータには、発電機23が機械的に接続されている。発電機23は膨張機15によって回転駆動されることで発電する。給気口15aから圧縮空気を給気された膨張機15は、圧縮空気により作動し、発電機23を駆動する。膨張機15で膨張した空気は、排気口15bから空気配管16dを通じて外部に排気される。発電機23は、後に詳述する切替部25と、遮断器26とを介して電力系統2に電気的に接続されている。発電機23で発電された電力は、切替部25と遮断器26を介して、電力系統2に出力される。
【0033】
以上のように、個々のCAES発電ユニット5a~5hでは、蓄圧タンク14から供給される圧縮空気で膨張機15を作動させて発電機23を回転駆動し、発電機23で発電された電力を電力系統2に出力する(放電運転)。
【0034】
熱媒配管系12には、圧縮側熱交換器19と、低温熱媒タンク27と、膨張側熱交換器22と、高温熱媒タンク28とが設けられており、これらが熱媒配管29a,29bにより流体的に循環接続されている。熱媒配管系12の内部には、熱媒(例えば水)が流れている。熱媒配管29aに設けられた熱媒ポンプ31aは、低温熱媒タンク27から圧縮側熱交換器19へ熱媒を送る。熱媒配管29bに設けられた熱媒ポンプ31bは、高温熱媒タンク28から膨張側熱交換器22へ熱媒を送る。
【0035】
圧縮側熱交換器19では、圧縮機13から吐出された圧縮空気と、低温熱媒タンク27から供給される熱媒との熱交換が行われ、前者が降温し、後者が昇温する。降温した圧縮空気は蓄圧タンク14に圧送され、昇温した熱媒は高温熱媒タンク28に送られる。圧縮空気を降温させることで、蓄圧タンク14における圧縮空気エネルギー貯蔵効率を高められる。
【0036】
膨張側熱交換器22では、蓄圧タンク14から膨張機15に供給される圧縮空気と、高温熱媒タンク28から供給される熱媒との熱交換が行われ、前者が昇温し、後者が降温する。昇温した圧縮空気が膨張機15に供給されることで、膨張機15と発電機23によるエネルギー変換効率が高められる。降温した熱媒は低温熱媒タンク27に送られる。
【0037】
次に、
図3を引き続き参照して、CAES発電ユニット5a~5hの発電機23の電力系統2との連携に関する構成と機能を説明する。
【0038】
発電機23は同期機(同期発電機)である。発電機23として、例えば埋込型永久磁石発電機を採用できる。発電機23として、埋込型永久磁石発電機以外の同期発電機を採用してもよい。発電機23は、起動時に誘導機として作動できるよう構成されている。
【0039】
前述のように、発電機23は、切替部25と遮断器26とを介して電力系統2に電気的に接続されている。切替部25は、並列の導電経路32a,32bを備える。一方の導電経路32aには、発電機23の回転数を制御するためのインバータ33が設けられている。また、導電経路32aには、インバータ33よりも発電機23側に第1スイッチ34が設けられている。他方の導電路32bには、第2スイッチ35が設けられている。
【0040】
遮断器26は、発電機23から電力系統2に流れる電流が正常状態のときは閉成され、発電機23から電力系統2への電力出力を許容する。一方、遮断器26は、発電機23から電力系統2に流れる電流に異常が生じたときは開成され、発電機23から電力系統への電力出力を遮断する。
【0041】
遮断器26が閉成しているとき、切替部25は、発電機23がインバータ33を介して電力系統2に接続された状態と、発電機23がインバータ33を介さずに電力系統に直結された状態とに切り替えることができる。具体的には、第1スイッチ34が閉成され、第2スイッチ35が開成されると、発電機23はインバータ33が設けられた導電経路32aを介して電力系統2に接続され、インバータ33による回転数制御により発電機23から電力系統2への出力電力が制御される(変速運転)。一方、第1スイッチ34が開成され、第2スイッチ35が閉成されると、発電機23はインバータ33をバイパスする導電路32aを介して電力系統2に接続される。この状態では、発電機23は通常の同期発電機として機能する(同期運転)。
【0042】
コントローラ6は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)のような記憶装置を含むハードウェアと、それに実装されたソフトウェアにより構築できる。コントローラ6は単一の機器である必要はなく、ネットワーク上に分散配置された機器によって構成されてもよい。
【0043】
コンローラ6は、個々のCAES発電ユニット5a~5hを構成する要素を制御する。特に、コントローラは、放電運転の際に、切替部25を構成するインバータ33、第1スイッチ34、及び第2スイッチ35を制御する。
【0044】
放電運転の際、コントローラ6は、電力系統2の安定度に応じて、CAES発電ユニット5a~5hのそれぞれについて、切替部25の第1及び第2スイッチ34,35を切り替えて、CAES発電ユニット5a~5hのそれぞれについて、発電機23を変速運転と同期運転のいずれかに設定する。
【0045】
具体的には、コンローラ6は、電力系統2の安定度が高い程、発電機23が変速運転に設定されるCAES発電ユニット5a~5hのユニット数を増やし、発電機23が同期運転に設定されるCAES発電ユニット5a~5hのユニット数を減らす。コントローラ6は、電力系統2の安定度が低い程、発電機23が同期運転に設定されるCAES発電ユニット5a~5hのユニット数を増やし、発電機23が変速運転に設定されるCAES発電ユニット5a~5hのユニット数を減らす。
【0046】
例えば、コントローラ6は、電力系統2の安定度が高い場合には、
図4Aに示すように、合計8ユニットのCAES発電ユニット5a~5hのうち、5ユニット(CAES発電ユニット5a~5e)の発電機23を変速運転に設定し、残りの3ユニット(CAES発電ユニット5f~5h)の発電機23を同期運転に設定する。また、例えば、コントローラ6は、電力系統2の安定度が低い場合には、
図4Bに示すように、5ユニット(CAES発電ユニット5a~5e)の発電機23を同期運転に設定し、残りの3ユニット(CAES発電ユニット5f~5h)の発電機23を変速運転に設定する。
【0047】
発電機23が変速運転に設定されるCAES発電ユニット5a~5hでは、発電機23の回転速度の制御により電力系統2に出力電力を制御できる。発電機23が同期運転に設定されるCAES発電ユニット5a~5hでは、需要負荷の変動に対して発電機23の負荷角が変化することで、電力系統2における電力の需給バランスの調整に寄与する。電力系統の安定度に応じて、CAES発電ユニット5a~5hのうち、発電機23が変速運転に設定されるもののユニット数と、発電機23が同期運転に設定されるもののユニット数とを増減することで、発電機23の回転速度の制御による出力制御の利点を維持しつつ、電力系統2の安定化にも寄与し得る。
【0048】
本実施形態では、コントローラ6は、
図2おいて矢印A1で概念的に示す再生可能エネルギー発電設備18の発電に影響する自然条件の予測と、同じく
図2において矢印yで概念的に示す電力系統2に接続させた需要負荷4a~4bの電力供給要求の予測とを取得し、これらの予測に基づいて、電力系統2の安定度を予測する。そして、コントローラ6は、かかる電力系統2の安定度の予測に基づいて、発電機23が変速運転に設定されるCAES発電ユニット5a~5hのユニット数と、発電機23が同期運転に設定されるCAESユニット5a~5hのユニット数とを決定する。
【0049】
再生可能エネルギー発電設備18の発電に影響する自然条件の予測には、例えば風力発電の場合の風況予測や、太陽光発電の場合の日照強度の時間推移の予測がある。
【0050】
例えば、コントローラ6は、上述のように予測した電力系統2の安定度に基づいて、1日又は1日のうちの個々の時間帯について、発電機23が変速運転に設定されるCAES発電ユニット5a~5hのユニット数と、発電機23が同期運転に設定されるCAESユニット5a~5hのユニット数とを決定する。
【0051】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態では、コントローラ6は、
図2において矢印A3で概念的に示すように、電力系統2の系統周波数(例えば、60Hz又は50Hz)に対する変動をリアルタイムで取得する。そして、コントローラ6は取得した系統周波数に対する変動に基づいて、発電機23が変速運転に設定されるCAES発電ユニット5a~5hのユニット数と、発電機23が同期運転に設定されるCAESユニット5a~5hのユニット数とを決定する。
【0052】
図5は、CAES発電ユニット5a~5hの代案を示す。この代案では、圧縮機13と膨張機15(
図3参照)に代えて圧縮機兼膨張機41を採用している。つまり、圧縮機と膨張機が同一の機器で構成されている。また、この代案では、電動機17と発電機23(
図3参照)に代えて、同期機42を採用している。つまり、電動機と発電機が同一の同期機で構成されている。さらに、この代案では、圧縮側熱交換器19と膨張側熱交換器22に代えて、熱交換器44を採用している。つまり、圧縮側熱交換器19と膨張側熱交換器22が同一の熱交換器で構成されている。
【0053】
充電運転時には、再生可能エネルギー発電設備18からの変動する入力電力によって同期機42を作動させて圧縮機兼膨張機41を回転駆動し、それによって生成された圧縮空気を蓄圧タンク14に蓄える。また、蓄圧タンク14に送られる圧縮空気は、熱媒ポンプ44によって低温熱媒タンク27から高温熱媒タンク28に送られる熱媒と熱交換器43において熱交換することで降温する。
【0054】
放電運転時には、蓄圧タンク14から供給される圧縮空気で圧縮機兼膨張機41を作動させて同期機42を回転駆動し、同期機42で発電された電力を電力系統2に出力する。また、圧縮機兼膨張機41に送られる圧縮空気は、熱媒ポンプ44によって高温熱媒タンク28から低温熱媒タンク27に送られる熱媒と熱交換器43において熱交換することで昇温する。
【0055】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0056】
例えば、上記実施形態においては、各CAES発電ユニットにおける圧縮機13または膨張機としてスクリュー式の場合を例示したが、スクリュー式とターボ式との多段機として構成してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)発電装置
2 電力系統
3a,3b,3c,3d 発電機
4a,4b,4c,4d,4e 需要負荷
5a,5b,5c,5d,5e,5f,5g,5h 圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)発電ユニット
6 コントローラ(制御部)
11 空気配管系
12 熱媒配管系
13 圧縮機
13a 吸込口
13b 吐出口
14 蓄圧タンク
15 膨張機
15a 給気口
15b 排気口
16a,16b,16c,16d 空気配管
17 電動機
18 再生可能エネルギー発電設備
19 圧縮側熱交換器
21 バルブ
22 膨張側熱交換器
23 発電機
25 切替部
26 遮断器
27 低温熱媒タンク
28 高温熱媒タンク
29a,29b 熱媒配管
31a,31b 熱媒ポンプ
32a,32b 導電経路
33 インバータ
34 第1スイッチ
35 第2スイッチ
41 圧縮機兼膨張機
42 同期機
43 熱交換器
44 熱媒ポンプ