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特開2022-173956抗酸化活性を有するヤブレツボカビ類微生物の細胞破砕懸濁物
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  • 特開-抗酸化活性を有するヤブレツボカビ類微生物の細胞破砕懸濁物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173956
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】抗酸化活性を有するヤブレツボカビ類微生物の細胞破砕懸濁物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/68 20060101AFI20221115BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
A61K35/68
A61P39/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080062
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】521200266
【氏名又は名称】MoBiolテクノロジーズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】多田 清志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 順子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 翔
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 信
(72)【発明者】
【氏名】松井 裕史
(72)【発明者】
【氏名】黒川 宏美
【テーマコード(参考)】
4C087
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB01
4C087MA16
4C087MA34
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZC41
(57)【要約】
【課題】本発明は、ヤブレツボカビ類微生物の細胞破砕物を有効成分として含有する抗酸化組成物、及び当該細胞破砕懸濁物を生産する方法に関する。
【解決手段】本発明者らは、ヤブレツボカビ類微生物の細胞の破砕懸濁液が優れた抗酸化活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤブレツボカビ類(Thraustochytrids)微生物の細胞破砕物を有効成分として含有する、抗酸化活性を有する抗酸化組成物。
【請求項2】
生体内の活性酸素種(ROS)に関連する疾患若しくは症状、又は美容上の問題の治療及び予防及び/又は軽減のための、請求項1に記載の抗酸化組成物。
【請求項3】
生体内の抗酸化機能を補助、改善又は強化するための栄養補助組成物又は飼料用組成物である、請求項1に記載の抗酸化組成物。
【請求項4】
前記ヤブレツボカビ類微生物が、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属、シゾキトリウム(Schizochytrium)属、パリエチキトリウム属、ボトリオキトリウム(Botryochytrium)属、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)属又はシキオイドキトリウム(Sicyoidochytrium)属のいずれかに属する、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗酸化組成物。
【請求項5】
前記ヤブレツボカビ類微生物が、オーランチオキトリウム属又はシゾキトリウム属のいずれかに属する、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗酸化組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の抗酸化組成物に有効成分として配合されるヤブレツボカビ類微生物の細胞破砕物を生産する方法であって、以下の工程:
i)ヤブレツボカビ類微生物細胞を破砕する工程;及び
ii)当該破砕した細胞を水性媒体で懸濁する工程;
を含む、生産方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の抗酸化組成物に有効成分として配合されるヤブレツボカビ類微生物の細胞破砕物を生産する方法であって、以下の工程:
i)ヤブレツボカビ類微生物を水性媒体で懸濁する工程;及び
ii)当該懸濁した細胞を破砕する工程;
を含む、生産方法。
【請求項8】
前記細胞の破砕が、機械的破砕、高圧破砕、ホモジナイズ、超音波破砕及び凍結融解からなる群から選択される、請求項6又は7のいずれかに記載の生産方法。
【請求項9】
前記水性媒体が、純水、塩水、培地及び緩衝液からなる群から選択される、請求項6~8のいずれか1項に記載の生産方法。
【請求項10】
iii)生産された細胞破砕懸濁物の抗酸化活性を評価する工程、及びiv)評価結果を参照して工程i)又はii)を改変する工程、を更に含む、請求項6~9のいずれか1項に記載の生産方法。
【請求項11】
前記抗酸化活性の評価が、活性酸素種の消去活性の測定、DDPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)ラジカル消去活性の測定、又はORAC(酸素ラジカル吸収能力)評価である、請求項10に記載の生産方法。
【請求項12】
経口摂取用のトローチ、ピル、カプセル、薬液又は錠剤の形態である、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗酸化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤブレツボカビ類微生物の細胞破砕物を有効成分として含有する抗酸化組成物、及び当該細胞破砕懸濁物を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の様々な代謝過程で生成される活性酸素種(ROS)は、様々な症状や疾患(例えば炎症、アレルギー反応、関節の障害、関節リウマチ、骨粗鬆症、心血管疾患、癌)の発症又は進行に関与することが知られている。例えば、ROSにより脂質分子が酸化されると、低密度リポタンパク質の過酸化が起こって動脈でプラークが形成されることがあり、これが心血管疾患やアテローム性動脈硬化症を引き起こし得る。また、ROSによりタンパク質分子が酸化的修飾を受けると、組織構造の変化や免疫異常が起こる可能性があり、関節リウマチや結合組織の損傷につながり、皮膚の外観や機能が変化することがある。
【0003】
特に、消化管は生体内で最大のROS発生組織であることが知られている。梗塞の予防において広く服用される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、副反応として消化管内でROSの発生を誘導する。消化管内、特に腸内に形成される腸内細菌叢は、ROSによって攪乱され、生体に対し有害に作用する種類の菌群、いわゆる悪玉菌が増殖し易くなる。悪玉菌はその代謝によりROSを発生し、また悪玉菌が産生する毒素によって傷害された消化管のミトコンドリアもROSを発生する。消化管内で発生するROSは、消化管自体の健康状態を悪化するだけでなく、大量に発生するROSを消去する仕組みが消化管に動員されることにより、他の自己免疫や各種臓器で発生したROSを十分消去できず、結果として様々な症状や疾患の発症が促進される。
【0004】
このような有害なROSを消去する仕組みとして、代表的なROSの消去酵素であるスーパオキシドジスムターゼ(SOD)は、活性酸素種のスーパーオキシドを酸素及び過酸化水素に変換する反応を触媒する。形成された過酸化水素も有害であるが、これは更にカタラーゼ及びグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)によって消去される。
【0005】
各種ビタミン、ポリフェノール、カテキン、グルタチオン、アスコルビン酸塩、トコフェロール、ユビキノン、ビリルビン、尿酸などの様々な低分子が、生体内の抗酸化機構と協調して、又は独立して、天然の抗酸化剤として機能し得る。例えばビタミンB2はGPxの補酵素として作用し、ポリフェノールはSOD様活性を有する。カロテノイドも抗酸化剤として機能し、酸化的ストレス及び関連する慢性疾患に対し防御的効果を発揮し得る。例えばCanfield, et al., (1992) Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 200:260は、冠状動脈心疾患、白内障及び癌等種々の慢性疾患とカロテノイドとの間の関係についての報告をまとめている。
【0006】
従って、そのような抗酸化活性を有する物質を有効成分とする医薬品は、ROSの作用に関連する疾患または症状の治療または予防のために好ましく利用され得る。実際に、抗酸化物質の服用による消化管傷害の予防(Sha S. et al.(2013),Biomaterials, Nov; Vol34 (33), pp8393-8400)や、腸内細菌叢の改善(Long BV. et al.,(2014), J. Gastroenterol, May; Vol49(5), pp806-813)も報告されている。
【0007】
抗酸化活性を有する物質は様々な食品にも含まれており、ROSの有害な作用及びそれに関連する疾患を予防するため、日常の食生活においてそれらを積極的に摂取することが好ましい。
【0008】
また、そのような抗酸化活性を有する物質を含有する生物材料、又はそれらを加工して得た高度な抗酸化活性を有する組成物は、食品の酸化防止剤として、食品を抗酸化成分によって栄養強化するための食品添加物として、又は栄養補助食品として利用され得、食品分野において高い需要が存在する。
【0009】
例えば、抽出物が高い抗酸化活性を有する生物材料として、アブラナ科ブラシカ属植物(特開2003-81848号公報)、ベンケイソウ科リュウキュウベンケイ属植物(特開2005-29483号公報)、ノウゼンカズラ科タマコチョウ種子(特開2006-321730号公報)、フトモモ科スイオウ(特開2007-8902号公報)などが挙げられる。ウコンに含まれるクルクミンは、抗酸化作用を有することが示されている。ウシ大動脈内皮細胞をクルクミンに曝露する試験において、内皮細胞におけるヘムオキシゲナーゼ-1の強力な誘導が認められた(Motterlinin R. et al., (2000) Free Radic. Biol. Med.、April 15; Vol. 28 (8) pp1303-1312)。ヒラメ練肉の加水分解物とこれから分離されたペプチドが、ROSの消去効果や酸化的トレスに対する保護効果を有し、ROS生成抑制、脂質過酸化、そして細胞死を抑制することが確認されており、ヒラメ練肉の加水分解物の分画物から分離されたペプチドを抗酸化用食品組成物として利用することが検討されている(特表2020-518572号公報)。スグリ科植物カシスの葉の抽出物に抗酸化活性を有する複数の新規化合物が含まれていることが示され、それらの化合物を有効成分として含む抗酸化剤やそれらの新規化合物の単離方法が開発されている(特開2014-084322号公報)。
【0010】
また、液化麹(特開2013-252125号公報)、酵母抽出液(特開2012-214393号公報)、酵母Candida tropicalis pK233の培養上清(Nishihara H. et al., (2009) Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi、Vol. 56 (5) pp255-260)など、抗酸化活性を有する微生物培養物も知られている。
【0011】
ヤブレツボカビ類微生物は、物質生産効率が高い上増殖速度が極めて速く、培養規模の拡張が容易であるため、従来から工業的規模での有用物質の大量生産に広く利用されている。特に、微生物が産生する炭化水素やトリアシルグリセロール等のオイル又は多糖類のような工業的利用価値の高い物質生産のための微生物の大規模培養技術は高度に発達しており(特許第2764572号公報、G. Chen. et al. New Biotechnology 27, 382-289 (2010))、微生物は低コストかつ高効率の生物資源として利用することが出来る。
【0012】
斯かる微生物から生理活性を有する生物材料を取得する先行技術として、特開2017-137265号公報は、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属微生物のエタノール抽出物が抗炎症活性を有することを示している。しかしながら、当該文献において、エタノール等溶媒に微生物を懸濁して長時間静置した後上清が回収されていることから、当該抽出物は専ら当該溶媒によって細胞から溶出されうる溶存成分のみを含有するものであり、後述のように細胞を水中でホモジナイズすることにより細胞の内容物を含有する本発明に係る細胞破砕懸濁物とは、物として峻別される。斯かる物としての実質的な相違は、当該文献の抽出物が抗炎症活性を有するのに対し、本発明に係る細胞破砕懸濁物が抗酸化活性を有するという、両者の間の生理活性の相違に表れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】:特開2003-81848号公報
【特許文献2】:特開2005-29483号公報
【特許文献3】:特開2006-321730号公報
【特許文献4】:特開2007-8902号公報
【特許文献5】:特表2020-518572号公報
【特許文献6】:特開2014-084322号公報
【特許文献7】:特開2013-252125号公報
【特許文献8】:特開2012-214393号公報
【特許文献9】:特開2017-137265号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】:Canfield, et al., (1992) Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 200:260
【非特許文献2】:Sha S. et al.(2013),Biomaterials, Nov; Vol34 (33), pp8393-8400)
【非特許文献3】:Long BV. et al.,(2014), J. Gastroenterol, May; Vol49(5), pp806-813)
【非特許文献4】:Motterlinin R. et al., (2000) Free Radic. Biol. Med.,April 15; Vol. 28 (8) pp1303-1312
【非特許文献5】:G. Chen. et al. New Biotechnology 27, 382-289 (2010)
【非特許文献6】:Nishihara H. et al., (2009) Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi、Vol. 56 (5) pp255-260
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、ヤブレツボカビ類微生物の細胞破砕物を有効成分として含有する抗酸化組成物、及び当該細胞破砕懸濁物を生産する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明者らは、従属栄養性微生物オーランチオキトリウムの細胞の破砕懸濁液が優れた抗酸化能を示すことを見出した。斯かる抗酸化能についてより詳細に調査したところ、当該細胞破砕懸濁液は、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素のいずれの活性酸素種に対しても高度な消去活性を有しており、優れた抗酸化生物材料であることが示された。
【0017】
また、オーランチオキトリウムに加えて、オーランチオキトリウムの属するヤブレツボカビ類(Thraustochytrids)の他の複数の属の微生物も同様に高度な抗酸化能を有することが確認され、この抗酸化能がヤブレツボカビ類の多くのものに備わっていることが示唆された。
【0018】
生体内でROSが種々の疾患又は症状に関与することが知られており、抗酸化物質の服用はそのような疾患または症状の予防又は抑制に有用である。下記実施例において示すように、オーランチオキトリウムの細胞の破砕懸濁液は、ラット胃粘膜正常細胞へのNSAIDs暴露により誘導されたROS産生の増加に伴う細胞傷害を抑制した。
【0019】
また、下記実施例において、オーランチオキトリウムの細胞の破砕懸濁液の経口摂取により、腸内細菌叢中のBifidobacteriaceaeの割合が増加することも示された。上記のように、消化管内に発生するROSは、腸内細菌叢を攪乱して悪玉菌の増殖を促進することにより、結果生体の免疫機構が破綻し種々の疾患を惹起する。実施例において示された腸内細菌叢の改善は、オーランチオキトリウムの細胞の破砕懸濁液が有する抗酸化能が、経口摂取によりROSが関与する健康状態の改善にまで及ぶことを示している。
【0020】
上記のように、微細藻類は、工業的規模での有用物質の大量生産に適しており、医薬品、栄養補助食品や飼料、食品添加物の生産に利用されている実績もあることから、本発明において見出された高度な抗酸化活性を有する微細藻類細胞破砕懸濁物は、安価かつ大量生産に適した新規の抗酸化生物材料として、医薬、食品、飼料、保健分野の市場における高い需要を大いに満たすものである。
【0021】
従って、本願は、以下の発明を提供する。
【0022】
1.ヤブレツボカビ類(Thraustochytrids)微生物の細胞破砕物を有効成分として含有する、抗酸化活性を有する抗酸化組成物。
2.生体内の活性酸素種(ROS)に関連する疾患若しくは症状、又は美容上の問題の治療及び予防及び/又は軽減のための、項目1に記載の抗酸化組成物。
3.生体内の抗酸化機能を補助、改善又は強化するための栄養補助組成物又は飼料用組成物である、項目1に記載の抗酸化組成物。
4.前記ヤブレツボカビ類微生物が、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属、シゾキトリウム(Schizochytrium)属、パリエチキトリウム属、ボトリオキトリウム(Botryochytrium)属、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)属又はシキオイドキトリウム(Sicyoidochytrium)属のいずれかに属する、項目1~3のいずれか1項に記載の抗酸化組成物。
5.前記ヤブレツボカビ類微生物が、オーランチオキトリウム属又はシゾキトリウム属のいずれかに属する、項目1~4のいずれか1項に記載の抗酸化組成物。
6.項目1~5のいずれか1項に記載の抗酸化組成物に有効成分として配合されるヤブレツボカビ類微生物の細胞破砕物を生産する方法であって、以下の工程:
i)ヤブレツボカビ類微生物細胞を破砕する工程;及び
ii)当該破砕した細胞を水性媒体で懸濁する工程;
を含む、生産方法。
7.項目1~5のいずれか1項に記載の抗酸化組成物に有効成分として配合されるヤブレツボカビ類微生物の細胞破砕物を生産する方法であって、以下の工程:
i)ヤブレツボカビ類微生物を水性媒体で懸濁する工程;及び
ii)当該懸濁した細胞を破砕する工程;
を含む、生産方法。
8.前記細胞の破砕が、機械的破砕、高圧破砕、ホモジナイズ、超音波破砕及び凍結融解からなる群から選択される、項目6又は7のいずれかに記載の生産方法。
9.前記水性媒体が、純水、塩水、培地及び緩衝液からなる群から選択される、項目6~8のいずれか1項に記載の生産方法。
10.iii)生産された細胞破砕懸濁物の抗酸化活性を評価する工程、及びiv)評価結果を参照して工程i)又はii)を改変する工程、を更に含む、項目6~9のいずれか1項に記載の生産方法。
11.前記抗酸化活性の評価が、活性酸素種の消去活性の測定、DDPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)ラジカル消去活性の測定、又はORAC(酸素ラジカル吸収能力)評価である、項目10に記載の生産方法。
12.経口摂取用のトローチ、ピル、カプセル、薬液又は錠剤の形態である、項目1~5のいずれか1項に記載の抗酸化組成物。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ヤブレツボカビ類微生物の系統樹を示す。系統樹はラビリンチュラ類全体の系統を示し、点線の四角形で囲まれたグループがヤブレツボカビ類の系統である。株名を表記したものは抗酸化能を評価した株である。
【0024】
図2】電子スピン共鳴(Electron Spin Resonance; ESR)による本発明に係る微生物細胞破砕懸濁液の抗酸化活性評価の結果を示す。各グラフ横軸は磁場、縦軸は信号強度を示す。MilliQ、室温で5年間保存したオーランチオキトリウム、及びスピルリナを陰性対照とした。試験されたオーランチオキトリウムの4つの株全てにおいて、それらの細胞破砕懸濁物が活性酸素種ヒドロキシルラジカル(OH-)の顕著な消去活性を有することが示された。
【0025】
図3】電子スピン共鳴による本発明に係る微生物細胞破砕懸濁液の抗酸化活性評価の結果を示す。微生物試料としてHondaea(AR-4a)、Schizochytrium(SSK10-5)、Parietichytrium(6F-10b)及びUlkenia(Ota1-10)、活性酸素種として一重項酸素(1O2)及びヒドロキシルラジカル(OH-)を用いた。Hondaea、SchizochytriumおよびUlkeniaは一重項酸素、ヒドロキシルラジカルに対する強力な活性酸素消去能を示した。一方Parietichytriumは、一重項酸素に対する有効性は評価できたがヒドロキシラジカルに対する有効性は見られなかった。
【0026】
図4】微生物細胞の保存方法と、微生物細胞破砕懸濁液の抗酸化活性との関係を示す。微生物試料として、収穫後1ヶ月経過したオーランチオキトリウム(old)、収穫して間もないオーランチオキトリウム(new)、それぞれを冷蔵及び冷凍したもの、及び収穫後に乾燥したシゾキトリウムを用いた。活性酸素種として一重項酸素(1O2)、スーパーオキシド(O2-)及びヒドロキシルラジカル(OH-)が用いられた。全ての形態のオーランチオキトリウム及びシゾキトリウムは、収穫後の保存方法に依らず、いずれの活性酸素種に対しても強力な消去活性を示した。
【0027】
図5】NSAIDsのひとつであるインドメタシン(IND)による細胞傷害に対する微生物細胞破砕懸濁液の保護効果を示す。250μMのIND曝露により細胞生存率は低下したが、微生物細胞破砕懸濁液により生存率は濃度依存的かつ有意に回復した。
【0028】
図6】本発明に係る微生物細胞破砕懸濁液を経口投与した雄ICRマウスから採取した糞便のメタゲノム解析の結果を示す。懸濁液を高用量で投与したマウスにおいて、Bifidobacteriaceaeの割合が有意に増加した。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明において、細胞破砕懸濁物の材料とし得る微生物は、ヤブレツボカビ類に属する微生物である。当該微生物の例として、限定されないが、オーランチオキトリウム属、シゾキトリウム属、パリエチキトリウム属、ボトリオキトリウム(Botryochytrium)属、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)属、シキオイドキトリウム(Sicyoidochytrium)属の微生物種、又はこれらを起源とする変異体若しくは微生物株が挙げられる。好ましくは、本発明において細胞破砕懸濁物の材料とし得る微生物は、オーランチオキトリウム属又はシゾキトリウム属の微生物である。
【0030】
本発明の微生物は、増殖能力の優れた株を用いるのが好ましい。そのような株は、天然に採取及び分離されたものであっても、突然変異誘導及びスクリーニングを経てクローニングされたものであっても、あるいは遺伝子組み換え技術を利用して樹立されたものであってもよい。当該微生物株において改善され得る特性は、増殖効率、最適ではない培養条件(高密度培養、日照、栄養、温度、pH、成分組成等)に対する耐性、又は細胞懸濁物の抗酸化活性等、本発明において所望の抗酸化活性を有する産物を調製するのに有利な任意の特性である。
【0031】
前記微生物の培養は、当該技術分野において確立された方法を基礎とする。即ち、通常の維持培養は、適切に成分調製した培地に藻類を播種し、定法に従い行われる。
【0032】
前記微生物を培養するための培地は、本質的に、塩分、炭素供給源及び窒素供給源を含有する。一般的に、ヤブレツボカビ類微生物の培養には、いわゆるGTY培地(人工海水塩10-40g/L、D(+)グルコース20-200g/L、トリプトン10-60g/L、酵母抽出物5-40g/L)が用いられる。本発明に関する培地も、基本的にはこれらの3つの要素を組み合わせて構成される。
【0033】
炭素源としてはグルコース、フルクトース、スクロース等の糖類、及びグリセロール等のアルコールがある。これらの炭素源を、例えば、培地1リットル当たり20~200gの濃度で添加する。
【0034】
前記微生物の培養培地には、グルタミン酸ナトリウム、尿素等の有機窒素、又は酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の無機窒素、又は酵母抽出物、コーンスチープリカー、ポリペプトン、ペプトン、トリプトン等の生物由来消化物等の、様々な窒素源が添加され得る。
【0035】
微生物の培養は、培養温度5~40℃、好ましくは10~35℃、より好ましくは15~30℃にて行われる。継代は、微生物株の増殖速度に応じて、通常1~10日間、好ましくは3~7日間置きに行われる。培養は通気攪拌培養、振とう培養又は静置培養で行うことができるが、好ましくは通気攪拌培養又は振とう培養で培養する。微生物株の長期の保存には、液体培地に1.0~3.0%濃度の寒天を加えて凝固させた寒天培地を用いてもよく、より長期の保存に際しては、微生物株は定法に従い凍結保存されてもよい。
【0036】
培養によって取得された前記微生物から、本発明に係る細胞破砕懸濁物が調製される。細胞破砕に供される微生物細胞は、濾過濃縮物、遠心分離濃縮物、スラリー、ペースト、湿式若しくは乾燥ペレット、凍結若しくはスプレー乾燥物など、細胞破砕処理に適した形態で用いられる。それらの細胞破砕前の細胞材料は、冷蔵又は冷凍保存されてもよい。
【0037】
前記微生物細胞材料の破砕する手段は任意の適切な方法が採用され、例えばビーズミル等機械的破砕、高圧破砕、水性媒体中でのホモジナイズ、超音波破砕、凍結融解、凍結粉砕等が挙げられる。如何なる手段を用いて細胞材料を破砕するべきであるかは、生産規模、産物に要求される品質、生産設備の構成等に関連して、当業者が適宜選択し得る。好ましくは、破砕手段として、超音波破砕又は高圧破砕が用いられ得る。
【0038】
前記微生物細胞材料の破砕産物は、適切な水性媒体中に懸濁され得る。又は、前記破砕が水性媒体中で行われる場合、当該水性媒体は、最終的な破砕懸濁物の懸濁媒体と同一のものであっても異なるものであってもよい。当該水性媒体は純水であってもよく、海水や生理食塩水などの塩水、培地、緩衝液など、用途に応じて、当業者が適宜選択し得る。
【0039】
前記細胞破砕懸濁物は、高度な抗酸化活性を有している。本発明中、「抗酸化活性」とは、一重項酸素(1O2)、ヒドロキシラジカル(OH-)及びスーパーオキシドアニオン(O2-)等の活性酸素種(ROS)を除去する作用のこと、又は生体内でROSによって引き起こされる細胞若しくは組織の障害やROSに関連する疾患若しくは症状、又は美容上の問題を防止又は抑制する作用を意味する。
【0040】
本発明に係る細胞破砕懸濁物が有するべき高度な抗酸化活性は、微生物細胞が破砕されて細胞内容物が水性媒体中に露出し、又は溶解していることによりもたらされると考えられる。実際に、上記特開2017-137265号公報のオーランチオキトリウム属微生物を破砕せずにエタノール抽出したものは、斯かる抗酸化活性を有しない。本発明所望の抗酸化活性がヤブレツボカビ類微生物の細胞内容物のいずれによってもたらされるかは明らかではないが、後述の実施例に示すように微生物種によって活性に差があることや、古くなった試料において活性が低下することから、微生物種に特有の変性し得る生理活性物質群が関与していると考えられる。従って、前記細胞懸濁物の抗酸化活性を最大化するため、細胞内容物が望ましい抗酸化活性を有する微生物種の選択及び培養条件、細胞内容物が高度に露出する破砕条件、細胞内容物が抗酸化活性を発揮出来る水性媒体などが検討され得るが、それらは、生産された細胞破砕懸濁物の抗酸化活性を評価することにより過度の試行錯誤を要さずに実施することが出来る。
【0041】
好ましくは、前記抗酸化活性が任意の適切な方法を用いて評価されてもよく、利用可能な評価方法として、例えば、実施例で用いられている活性酸素種の消去活性の測定、DDPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)ラジカル消去活性の測定、又はORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)評価などが挙げられる。当該評価結果は、微生物材料の調製条件、破砕処理条件、水性媒体の組成、懸濁濃度などの細胞破砕懸濁物の製造プロセスを最適化するのに、又は所望の抗酸化活性を生じるのに必要な懸濁物の用量を決定するのに利用され得る。
【0042】
また、前記細胞破砕懸濁物には、調製過程での変性を防止する、抗酸化活性を強化する、保存安定性を改善する、物理化学的特性を変化させる、あるいは他の栄養特性を付与するため様々な添加物が添加されてもよく、そのような添加物として、脂質、炭水化物、有機酸、ビタミン、ミネラル、抗生物質、香料、着色料、保存料、賦形剤、増量剤、増粘剤、接着剤、水和剤、崩壊剤、乳化剤、pH調整剤等、最終製品の属する分野で許容される任意の添加物が挙げられる。
【0043】
前記細胞破砕懸濁物は、身体内のROSに関連する様々な疾患又は症状の治療及び予防及び/又は軽減のための抗酸化医薬組成物又は抗酸化美容組成物に有効成分として配合され得る。あるいは、前記細胞破砕懸濁物は、抗酸化活性を有する栄養補助組成物又は飼料用組成物に有効成分として配合され得る。それら各用途の組成物の形態、組成、物理化学的特性、用量、用法等諸条件は、各分野の当業者が具体的用途に応じて適宜選択し得る設計事項である。
【0044】
本発明の更なる態様において、前記細胞破砕懸濁物は、単独で、又は当該懸濁物と同じく抗酸化作用を有する、又は他の生理活性を有する他の物質と組み合わせて使用され得る。
【0045】
好ましくは、前記細胞破砕懸濁物は経口製剤として調製され得る。当該経口製剤は、医薬として通常許容される1又は2以上の任意の賦形剤を更に含み得る。
【0046】
好ましくは、前記細胞破砕懸濁物は、トローチ、ピル、カプセル、薬液、錠剤などとして処方される。
【0047】
前記経口製剤は、好ましくは、酸化ストレスに関連する疾患又は身体の不調の治療又は予防のために栄養サプリメントとして摂取され得る。
【0048】
前記経口製剤は、所望の効能を発揮するのに有用な1又は2以上のさらなる物質、化合物、薬物又は組成物と組み合わせて摂取され得る。
【実施例0049】
実施例1:細胞破砕懸濁物の調製
1.細胞調製
ヤブレツボカビ類の培養
オーランチオキトリウム・リマシナム(Aurantiochytrium limacinum)4W-ib株およびNYH2株、オーランチオキトリウム・マングローベイ(Aurantiochytrium mangrovei)18W-13a株およびNYH1株、ホンダエア(Hondaea)AR-4a株、シゾキトリウム(Schizochytrium)SSK-10-5株、パリエチキトリウム(Parietichytrium)6F-10b株、ウルケニア(Ulkenia)Ota1-10株の寒天培養品を、500ml三角フラスコの中のGTY培地に植菌し、100rpm、25℃で7日間振盪培養した。培養中、各培養には4日目と6日目に50%グルコース水溶液を10ml添加した。これらの培養物を、3200rpm、20分の遠心分離で回収し、1.7%食塩水で2回洗浄した後、-80℃で凍結、凍結状態のまま減圧して凍結乾燥をおこなった。
【0050】
2.細胞破砕処理
1.で得られた細胞は0.1g/mLの濃度になるようMilliQ水で調製した。調整後、超音波ホモジナイザーを用いて5分間懸濁液を破砕した。
【0051】
実施例2:抗酸化能試験
実施例1で得られた細胞破砕懸濁物の抗酸化能を、以下3つの活性酸素種測定方法を用いて試験した。
【0052】
一重項酸素(1O2)測定方法:Acid red、TEMPOをMilliQ水で溶解し、それぞれ2mM、100mMの終濃度になるよう調製した。100μL Acid red、100μL TEMPO、30μL サンプルと70μL MilliQ水を混合し、波長540nmの光を30秒間照射した。照射後の試料溶液をパスツールピペットにロードし、電子スピン共鳴装置(JEOdL-TE、日本電子株式会社、東京)を用いて電子スピン共鳴(ESR)を測定した。測定条件は下記の通りである。
sweep width: 7.5 mT, gain: 50-500, modulation width: 0.2 mT, time contrast: 0.1 s, center field: 335.5 mT, sweep time: 0.5 min.
【0053】
ヒドロキシラジカル(OH-)測定方法:スピントラップ剤CYPMPOをMilliQ水で溶解し、100mMの終濃度になるよう調製した。16μL過酸化水素、20μL CYPMPO、20μL サンプルと144μL MilliQ水を混合し、波長405nmの光を10秒間照射した。照射後の試料溶液のESRを一重項酸素測定と同様に測定した。
【0054】
スーパーオキシドアニオン(O2-)測定方法:スピントラップ剤CYPMPOをMilliQ水で溶解し、100mMの終濃度になるよう調製した。ヒポキサンチンをNaOHで溶解し、20mMの終濃度になるよう調製した。20μLヒポキサンチンと10μL CYPMPOの混合溶液をA溶液、1.6μLキサンチンオキシダーゼ(25U/mL)と10μL CYPMPOの混合溶液をB溶液、20μLサンプルと138.4μL MilliQ水をC溶液とし、これらA、BおよびC溶液を混和した試料溶液のESRを一重項酸素測定と同様に測定した。
【0055】
抗酸化能試験1:オーランチオキトリウム細胞破砕懸濁物の抗酸化活性評価
上記実施例1に示したように調製されたオーランチオキトリウム株4W-1b、NYH2、18W-13a及びNYH1の細胞破砕懸濁物の抗酸化活性を、上記ヒドロキシラジカル測定により試験した。当該試験の結果を図2に示す。試験されたオーランチオキトリウムの4つの株全てにおいて、それらの細胞破砕懸濁物が活性酸素種ヒドロキシルラジカル(OH-)の顕著な消去活性を有することが示された。
【0056】
抗酸化能試験2:ヤブレツボカビ類微生物細胞破砕懸濁物の抗酸化活性評価
上記実施例1に示したように調製されたHondaea(AR-4a)、Schizochytrium(SSK10-5)、Parietichytrium(6F-10b)及びUlkenia(Ota1-10)の細胞破砕懸濁物の抗酸化活性を、上記ヒドロキシラジカル測定及び一重項酸素測定により試験した。当該試験の結果を図3に示す。Hondaea、SchizochytriumおよびUlkeniaは、一重項酸素、ヒドロキシルラジカルに対する強力な活性酸素消去能を示した。一方Parietichytriumは、一重項酸素に対する有効性は評価できたがヒドロキシラジカルに対する有効性は見られなかった。
【0057】
抗酸化能試験3:保存条件の異なる本発明の微生物細胞破砕懸濁物の抗酸化活性評価
オーランチオキトリウム細胞の収穫直後(new)、収穫1ヶ月後(old)の試料を冷蔵又は冷凍したもの、及びシゾキトリウム細胞の収穫後に乾燥したものを微生物細胞材料として、破砕懸濁物が上記実施例1に示したように調製され、それらの抗酸化活性を、上記ヒドロキシラジカル測定、スーパーオキシドアニオン及び一重項酸素測定により試験した。当該試験の結果を図4に示す。全ての形態のオーランチオキトリウム及びシゾキトリウムは、収穫後の保存方法に依らず、いずれの活性酸素種に対しても強力な消去活性を示した。
【0058】
実施例3:IND起因性細胞傷害に対する細胞破砕懸濁物の保護効果
実施例1で得られたオーランチオキトリウム細胞破砕懸濁物を用いて、IND起因性細胞傷害に対する細胞破砕懸濁物の保護効果を評価した。INDを含むNSAIDsは胃粘膜傷害を誘導することが知られており、またNSAIDs服用による消化管傷害が腸内細菌叢の悪化に繋がることも報告されている。ラット胃粘膜正常細胞を96ウェルプレートに2x10細胞/ウェルで播種し、2日間培養した。培養後、濾過滅菌した0、1、10μg/mLの細胞破砕懸濁物を添加し、更に1時間培養した。培養後上清を除去し、250μMのINDに24時間曝露した。曝露後、細胞生存率をCCK8を用いて測定した。
【0059】
当該試験結果を図5に示す。IND曝露により細胞生存率は48%まで減少したが、細胞破砕懸濁物の前処理により細胞生存率の減少は有意に抑えられた(p<0.01)。従って、本発明に係る細胞破砕懸濁物の前処理によってIND起因性細胞傷害を抑制できることが示された。
【0060】
実施例4:腸内細菌叢評価試験
実施例1で得られたオーランチオキトリウム細胞破砕懸濁物を用いて、マウス腸内細菌叢に及ぼす影響を検証した。消化管は生体内で最も大量にROSを産生する器官であり、ROSの増加は腸内細菌叢の悪化とそれに続く種々の疾患の発症に関与する。ICRマウス(雄)に対して0、1、10、100mg/mLのオーランチオキトリウム細胞破砕懸濁液を、マウスの体重10gあたり0.1mLの用量で、30日間連日経口投与した。31日目にマウスを個体ごとにケージに収納し、24時間後各個体の糞便を回収して、マイナス20℃で保存した。この糞便を用いてメタゲノム解析を行った。
【0061】
当該試験の結果を、図6に示す。メタゲノム解析の結果、用量100mg/mLのグループにおいて、Bifidobacteriaceaeの割合が他のグループに比べ有意に増加していた。当該試験により、本発明に係る細胞破砕懸濁物の服用が、善玉菌の一種であるビフィズス菌の割合を有意に増加させることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6