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特開2022-173959フィラー及び透明樹脂組成物、並びにその製造方法
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  • 特開-フィラー及び透明樹脂組成物、並びにその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173959
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】フィラー及び透明樹脂組成物、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20221115BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20221115BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20221115BHJP
   C01F 7/02 20220101ALI20221115BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20221115BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K9/06
C08K3/22
C01F7/02 D
H01L33/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080071
(22)【出願日】2021-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】501402730
【氏名又は名称】株式会社アドマテックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 喜隆
(72)【発明者】
【氏名】楊原 武
(72)【発明者】
【氏名】堀 健太
【テーマコード(参考)】
4G076
4J002
5F142
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AA10
4G076AB02
4G076AC04
4G076BA38
4G076BD02
4G076BF06
4G076CA26
4G076CA28
4G076CA40
4G076DA02
4G076DA30
4G076FA08
4J002CP042
4J002CP141
4J002DE146
4J002DJ016
4J002FB106
4J002FD016
4J002GP00
4J002GQ05
5F142AA51
5F142CG05
5F142CG14
5F142CG42
(57)【要約】
【課題】従来とは異なる機械的特性、光学的特性をもつ透明樹脂材料を提供すること。
【解決手段】二液型シリコーンを主成分とする透明樹脂材料と前記透明樹脂材料中に分散して用いられる粒子材料とを有し、前記粒子材料は、比表面積直径が0.8nm以上80nm以下、内部がベーマイト及びγアルミナの少なくとも一方、表面がシリカから構成された一次粒子の凝集体であって、その体積平均粒径は、0.1μm超であり、屈折率が1.50~1.60になるように二重結合を有する表面処理剤で表面処理されることで形成され、一次粒子の表面を被覆する改質層を有し、改質層は、前記一次粒子の表面に対して、共有結合するか又は分子間力結合するかにより結合している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二液型シリコーンを主成分とする透明樹脂材料中に分散して用いられる粒子材料を有するフィラーであって、
前記粒子材料は、
外部に連通する表面を基準とする比表面積直径が0.8nm以上80nm以下、表面の組成と内部の組成とが異なる無機物からなる一次粒子から構成され、脱水縮合により粒子間が結合・融着した凝集体と、
前記一次粒子の表面に共有結合するか又は分子間力結合するかにより結合して被覆する有機物からなる改質層と、をもち、
前記凝集体の体積平均粒径は、0.1μm超であり、
前記表面の組成は、前記内部の組成とは屈折率が相違しており、
前記表面の組成と前記内部の組成の存在比は、前記透明樹脂材料100質量部に前記凝集体10質量部を分散・硬化させて得られる厚み2mmの硬化物における透過率(波長400nm)が80%以上になる存在比であり、
前記一次粒子は、前記内部がベーマイト及びγアルミナの少なくとも一方、前記表面がシリカから構成され、
前記改質層は、前記粒子材料の屈折率が1.50~1.60になるように二重結合を有する表面処理剤で表面処理されることで形成される、
フィラー。
【請求項2】
前記粒子材料の体積平均粒径が0.2μm~5.0μmである請求項1に記載のフィラー。
【請求項3】
前記表面処理剤はシラン化合物であり、前記凝集体の外部と連通する表面を基準として、2.0~6.8μmol/mの量で表面処理されている請求項1又は2に記載のフィラー。
【請求項4】
前記表面処理剤は、メタクリル基をもつ請求項1~3の何れか1項に記載のフィラー。
【請求項5】
前記有機物は、シラン化合物の縮合物である請求項1~4の何れか1項に記載のフィラー。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のフィラーと、前記フィラーを分散する前記透明樹脂材料と、
を有する電子機器用の透明樹脂組成物。
【請求項7】
前記電子機器は、LEDである請求項6に記載の透明樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~5のうちの何れか1項に記載のフィラーを製造する方法であって、
前記内部の組成をもつコア粒子を液体分散媒中に分散させて分散液とする分散工程と、
前記分散液に前記表面の組成の前駆体を溶解させた後、前記前駆体から前記表面の組成に変換して前記コア粒子を被覆して被覆粒子とする被覆工程と、
前記被覆粒子を加熱して脱水縮合することで粒子間を結合・融着して凝集体とする凝集工程と、
屈折率が1.50~1.60になるように二重結合を有する表面処理剤で表面処理されることで前記被覆粒子の表面を被覆する有機物からなり、前記被覆粒子の表面に対して、共有結合するか又は分子間力結合するかにより結合している改質層を形成する改質工程と、
を有するフィラーの製造方法。
【請求項9】
前記表面処理剤はシラン化合物であり、前記凝集体の外部と連通する表面を基準として、2.0~6.8μmol/mの量で表面処理されている請求項8に記載のフィラーの製造方法。
【請求項10】
前記表面処理剤は、メタクリル基をもつ請求項8又は9に記載のフィラーの製造方法。
【請求項11】
請求項8~10の何れか1項に記載のフィラーの製造方法により前記フィラーを製造する工程と、
前記フィラーを製造する工程により得られた前記粒子材料を前駆体である前記透明樹脂材料に混合して透明樹脂組成物を形成する混合工程と、
を有する電子機器用の透明樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項7に記載の透明樹脂組成物と、
前記透明樹脂組成物により封止されたLEDチップと、
を有するLEDデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDデバイスなどの電子機器用の透明樹脂組成物及びその製造方法に関し、特に詳しくは透明樹脂組成物に充填するフィラー及びその透明樹脂組成物並びにその製造方法、更にはその透明樹脂組成物を用いたLEDデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からLED封止材などの電子部品用の透明樹脂組成物は、透明性、機械的特性、電気的特性が長期間にわたって充分であることが求められ、脂環式エポキシ樹脂やシリコーン樹脂が使用されている。特にシリコーン樹脂は、耐黄変特性に優れるため透明樹脂組成物に汎用されている。透明樹脂材料には、無機材料からなる粒子材料を分散させた透明樹脂組成物を製造することが行われている(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-221350号公報
【特許文献2】特開2006-219356号公報
【特許文献3】特開2007-154159号公報
【特許文献4】特開2011-251906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、透明樹脂組成物は、傷により透明性に大きな影響を与えるため高い硬度をもつことが求められる。また、シリコーン樹脂は、ガス透過性が高いため、亜硫酸ガス、硫黄ガスなどが透過して封止している電子機器に影響を与えるおそれがあることから、ガス透過性を低くすることが求められる。
【0005】
本発明は実情に鑑み完成したものであり、従来とは異なる機械的特性、光学的特性をもつ透明樹脂組成物及びその透明樹脂組成物に充填するのに好適なフィラー、並びにその製造方法、更に透明樹脂組成物を利用したLEDデバイス提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討の結果、粒径が一定範囲である一次粒子の凝集体とすることで、フィラーに採用したときに、単純に粒径を大きくする場合と比べて光学的特性を保ったまま機械的特性を向上させることが出来、更に、その一次粒子は内部と表面とで無機材料の組成が異なるように構成し、二重結合を有する表面処理剤で表面処理することで、主に光学的特性以外の理由で採用することが困難であった無機材料についても含有させることが可能である事を見出した。表面処理によって、屈折率が1.50~1.60になるように二重結合をもつ表面処理剤を表面に導入することでシリコーンとの間で強固な結合を生成し、且つ透明性の高い透明樹脂組成物を得ることが可能になった。
【0007】
凝集体を構成する一次粒子は、内部の組成としてγアルミナまたはベーマイトを採用し、表面にシリカを有する構造のものを採用する。表面の組成と内部の組成とを独立して設定するため、原子レベルで両者を混合した無機物とは異なり得られる光学的特性の制御が容易になることを見出した。そして、脱水縮合により粒子間が結合・融着した凝集体とすることで粒子の強度を向上している。
【0008】
なお、一次粒子間を結合・融着していることから一次粒子の粒径を直接規定することに代えて外部に連通する表面を基準とする比表面積直径にて規定した。つまり、組成物を構成する場合にマトリックスを構成する透明樹脂材料が一次粒子の間隙を充填することが可能になっている。従って、光学的な特性としては一次粒子の大きさの影響が大きくなる。
【0009】
すなわち上記課題を解決する本発明のフィラーは、二液型シリコーンを主成分とする透明樹脂材料に分散して用いられる粒子材料を有するフィラーであって、
前記粒子材料は、
外部に連通する表面を基準とする比表面積直径が0.8nm以上80nm以下、表面の組成と内部の組成とが異なる無機物からなる一次粒子から構成され、
脱水縮合により粒子間が結合・融着した凝集体であって、
前記凝集体の体積平均粒径は、0.1μm超であり、
前記表面の組成は、前記内部の組成とは屈折率が相違しており、
前記表面の組成と前記内部の組成の存在比は、前記透明樹脂材料100質量部に前記凝集体10質量部を分散・硬化させて得られる厚み2mmの硬化物における透過率(波長400nm)が80%以上になる存在比であり、
前記一次粒子は、前記内部がベーマイト及びγアルミナの少なくとも一方、前記表面がシリカから構成され、
屈折率が1.50~1.60になるように二重結合を有する表面処理剤で表面処理されることで形成され、前記一次粒子の表面を被覆する有機物からなる改質層を有し、
前記改質層は、前記一次粒子の表面に対して、共有結合するか又は分子間力結合するかにより結合している。
【0010】
前記粒子材料の体積平均粒径が0.2μm~5.0μmであることが好ましい。前記表面処理剤はシラン化合物であり、前記凝集体の外部と連通する表面を基準として、2.0~6.8μmol/mの量で表面処理されていることが好ましい。前記表面処理剤は、ビニル基、メタクリル基、及びアクリル基から選択される二重結合含有官能基のうちの1つ以上をもつことが好ましい。
【0011】
前記粒子材料は、前記一次粒子の表面を被覆する有機物からなる改質層を有し、前記改質層は、前記一次粒子の表面に対して、共有結合するか又は分子間力結合するかにより結合していることが好ましい。前記有機物は、シラン化合物の縮合物であることが好ましい。特に、前記電子機器は、LEDであることが好ましい。
【0012】
上記課題を解決する透明樹脂組成物の製造方法は、本発明の透明樹脂組成物を製造する製造方法であって、
前記内部の組成をもつコア粒子を液体分散媒中に分散させて分散液とする分散工程と、
前記分散液に前記表面の組成の前駆体を溶解させた後、前記前駆体から前記表面の組成に変換して前記コア粒子を被覆して被覆粒子とする被覆工程と、
前記被覆粒子を加熱して脱水縮合することで粒子間を結合・融着して凝集体とする凝集工程と、
屈折率が1.50~1.60になるように二重結合を有する表面処理剤で表面処理されることで前記被覆粒子の表面を被覆する有機物からなり、前記被覆粒子の表面に対して、共有結合するか又は分子間力結合するかにより結合している改質層を形成する改質工程と、
前記凝集工程及び前記改質工程により得られた前記粒子材料を前記透明樹脂材料に混合して透明樹脂組成物を形成する混合工程と、
を有する。
【0013】
前記表面処理剤はシラン化合物であり、前記凝集体の外部と連通する表面を基準として、2.0~6.8μmol/mの量で表面処理されていることが好ましい。前記表面処理剤は、ビニル基、メタクリル基、及びアクリル基から選択される二重結合含有官能基のうちの1つ以上をもつことが好ましい。
【0014】
上記課題を解決する本発明のLEDデバイスは、本発明の透明樹脂組成物と、前記透明樹脂組成物により封止されたLEDチップとを有する。
【発明の効果】
【0015】
二重結合を有する表面処理剤にて表面処理されており、表面の組成と内部の組成とが異なる粒子材料を二液型シリコーンを主成分とする透明樹脂材料中に分散させることにより、透明樹脂材料と粒子材料との間で強固な結合が生成し、且つ透明性を保つことが可能になる。ここで用いられる粒子材料は、フィラーとして好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例における各試料の押込み硬さを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のフィラー及び透明樹脂組成物、並びにその製造方法、更にLEDデバイスについて実施形態に基づき以下詳細に説明を行う。
【0018】
(透明樹脂組成物及びフィラー)
本実施形態の透明樹脂組成物は、電子機器に用いるものである。採用できる電子機器としては、LEDデバイスや有機ELデバイスなどの発光デバイス、フォトトランジスタなどの受光デバイスが例示できる。発光デバイスの発光チップや受光チップを封止し、通過する光線の光路を形成するものであることが好ましい。本実施形態の透明樹脂組成物は、高い透明性、低い熱膨張係数(CTE)、高いガスバリア性、高い弾性率、高い表面硬度、高い圧縮強度、高いアンチブロッキング性が挙げられる。
【0019】
本実施形態の透明樹脂組成物は、フィラーとしての粒子材料とその粒子材料を分散する透明樹脂材料とその他必要に応じて含有する材料とを有する。本実施形態のフィラーは、この粒子材料を単独で用いても良いし、その他の粒子材料を含有するものであってもよい。フィラー中の他の粒子材料の割合は、フィラー全体の質量を基準として、上限が30%、20%、10%、2%、0%を採用することができる。
【0020】
その他に含有させることができる他の粒子材料としては、可視光線に対してある程度以上の透明性を有することが求められるため、透明性を求められる光線の波長よりも十分に小さな粒径をもつことが好ましい。例えば、他の粒子材料の粒径の上限としては300nm、200nm、150nm、100nm、80nm、50nm、30nm、10nmが採用できる。他の粒子材料としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、これらの複合酸化物から構成することができ、表面処理をすることもできる。表面処理は、表面に結合する物(シラン化合物など)や、表面に付着する物(例えば酸性物質、アルカリ性物質などの有機物)が例示できる。
【0021】
本実施形態の透明樹脂組成物は、固体状であっても液体状であっても良い。液体状である場合には、用いる対象である電子機器に用いた状態で硬化させて固体状にすることが好ましい。
【0022】
本実施形態の透明樹脂組成物は、光透過率が80%以上であり、特に85%以上、90%以上にすることが好ましい。光透過率は、厚み2mmの試験試料を用いて波長400nmの光線を用いて測定を行う。フィラーと透明樹脂材料との混合比は、上述の光透過率が達成できる範囲内で決定する。フィラーの割合が多くすることが機械的特性向上の観点からは好ましい。フィラーと透明樹脂材料との混合比は特に限定しないが、透明樹脂組成物全体の質量を基準として、フィラーの下限値が、1%、3%、5%、上限値が、15%、25%、35%程度を任意に組み合わせて採用することができる。
【0023】
・透明樹脂材料
透明樹脂材料は、二液型シリコーンを主成分とする。「二液型シリコーンを主成分とする」とは、透明樹脂材料の質量を基準として二液型シリコーンを50%以上含有することを意味する。2液型シリコーンの含有量の下限値としては60%、70%、80%、90%、100%が挙げられる。
二液型シリコーンとは、異なる化学式をもつ2種のシリコーン前駆体を混合・反応させることにより、重合・固化する材料である。同時に硬化触媒を含有することもできる。本実施形態の透明樹脂組成物では、含有する二液型シリコーンは、反応前の前駆体の状態であっても、反応硬化後の状態であってもどちらでも良い。二液型シリコーンには、それ以外の添加物を含有していても良い。
【0024】
二液型シリコーンは、付加重合により高分子状のシリコーンを生成する材料であり、ビニル基をもつシロキサン単位をもつビニル基含有オルガノポリシロキサン(A剤)と、SiH基をもつシロキサン単位をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B剤)とを混合して硬化させるものである。A剤とB剤との混合比は特に限定しないが、通常は化学量論比で混合する。なお、二重結合を有する表面処理剤にて形成される改質層の存在により二液型シリコーンの重合反応に影響を与えるため、A剤及びB剤の混合比を変化させることが好ましい。透明樹脂材料は、二液型シリコーンが硬化した硬化物であっても良いし、硬化前の状態であっても良い。
【0025】
A剤を構成するビニル基含有オルガノポリシロキサンがもつシロキサン単位は、モノビニルシロキサン、モノメチルシロキサン、モノエチルシロキサン、モノフェニルシロキサン、ジビニルシロキサン、フェニルビニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサン、ジメチルシロキサン、トリビニルシロキサン、ジビニルメチルシロキサン、ジビニルフェニルシロキサン、ビニルジメチルシロキサン、ビニルフェニルメチルシロキサン、トリメチルシロキサン、ジメチルフェニルシロキサン、メチルジフェニルシロキサン、トリフェニルシロキサン、更にはこれらのシロキサンの有機基の水素原子がハロゲン等で置換されたシロキサンなどが挙げられる。これらのシロキサン単位に対応するハロシラン及び/又はアルコキシシランの2種以上の混合物を共加水分解縮合することでA剤を構成するビニル基含有オルガノポリシロキサンが得られる。
【0026】
B剤を構成するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CSiO3/2単位とからなる共重合体や、これらの例示化合物においてメチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基や3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基に置き換わったものなどが挙げられる。
【0027】
・フィラー中に含有される粒子材料
粒子材料は、凝集体と、凝集体の表面に形成された改質層とをもつ。凝集体は、一次粒子が脱水縮合により結合・融着して凝集したものである。改質層は、二重結合を有する表面処理剤にて表面処理することで形成されている。
【0028】
粒子材料の屈折率は、1.50~1.60である。屈折率の制御は、表面処理剤の種類及び処理量を変化させることで改質層の屈折率を制御することで行う。表面処理剤として、凝集体よりも屈折率が高いものを採用することにより、粒子材料の屈折率を凝集体よりも高くすることができ、反対に表面処理剤の屈折率を凝集体よりも低いものを採用することにより、粒子材料の屈折率を凝集体よりも低くすることができる。また、表面処理剤の量を多くすることで、屈折率を表面処理剤の値に近づけることが可能になる。
【0029】
粒子材料の屈折率は以下の方法で測定する。屈折率が既知の2種類の溶媒で配合比の異なる混合溶媒を複数水準用意し、これに粒子材料を100g/Lの濃度で分散させた際,透過率80%以上(589nm/10mm)かつ最も混合液が透明である点の混合液の屈折率を粒子材料の屈折率とする。
【0030】
粒子材料を構成する凝集体は、一次粒子の間が結合・融着されていることから一次粒子間が強固に結合され、粒子材料の機械的強度が向上できる。粒径が大きいほど強度を向上することができるため、混合できる限度で粒径を大きくすることが好ましく、その体積平均粒径は、0.1μm超である。例えば薄膜などのように物理的に粒子材料が侵入できない可能性があるような形態に適用する場合には、適用する部分の形態に物理的に侵入できるように、粒子材料の適正な粒度分布が決定される。
【0031】
体積平均粒径の好ましい下限値としては、0.2μm、0.5μm、1.0μmなどが例示できる。体積平均粒径の好ましい上限値としては、5.0μm、4.0μm、3.0μm、2.0μmなどが例示できる。更に、大きな粒径と小さな粒径とのように複数の粒径にピークをもつようにすることができる。
【0032】
そして、本実施形態のフィラーに含有される粒子材料は、外気に連通する表面を基準とする比表面積直径が0.8nm以上80nm以下である。比表面積直径は、比表面積(単位質量あたりの表面積)と粒子材料を構成する材料の比重とから算出される値であり、一次粒子の凝集体として構成される2次粒子では、2次粒子を構成する一次粒子の粒径に近い値が算出される。
【0033】
比表面積直径は、下限値としては1nm、5nm、10nmを採用することができ、上限値としては30nm、50nm、70nmを採用することができる。
【0034】
凝集体を構成する一次粒子(以下、適宜「構成一次粒子」と称する)は、表面の組成と内部の組成とが異なる無機物からなる。表面の組成と内部の組成とを異なるものにすることにより、構成一次粒子内において内部を構成する材料が外部に影響を及ぼし難くなる。また、外部からの影響が内部に及び難くなる。そして表面の組成と内部の組成とが相互作用を起こすことで予期できない効果を発揮できることがある。予期できない効果としては、内部の組成としてγアルミナを採用したときに表面をシリカにすることによりγアルミナの結晶の相転移の態様に影響を与えることが例示できる。γアルミナは、加熱により相転移することが知られているが、表面を別の材料にて構成した構成一次粒子中に存在するγアルミナは、γアルミナ単独では相転移が生じる温度にまで加熱しても相転移しないことを確認している。従って、脱水縮合による凝集体の製造を900℃以上(好ましくは950℃以上、1000℃以上)で行うことができる。
【0035】
また、内部の組成としてベーマイトを採用し、表面としてシリカを採用すると、加熱によるベーマイトからアルミナ(特にγアルミナ)への転移が抑制できる。従って、脱水縮合による凝集体の製造を250℃超で行うことができる。
【0036】
このように表面の組成として採用するシリカは種々の表面処理を行うことが容易であり、物理的安定性、化学的安定性共に高いほか、合成が容易である。光学的な特性向上の観点からは非晶質シリカを採用することが好ましい。
【0037】
このような構成一次粒子を主成分とするものであれば、その他の組成(例えば全体が単一の組成からなるもの)をもつ一次粒子を含有することも可能である。ここで「主成分とする」とは、50質量%以上含有することを意味し、好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上含有する。構成一次粒子以外に一次粒子として含有することが可能な粒子としては、シリカやアルミナなどの単一組成の酸化物からなる第2粒子が例示できる。構成一次粒子の粒子形状としては特に限定しない。
【0038】
表面と内部との比率については特に限定しない。表面については内部を概ね隙間無く被覆することが好ましい。
【0039】
本実施形態の粒子材料は、二重結合をもつ有機物からなる改質層を表面にもつ。二重結合は、ビニル基、メタクリル基、アクリル基などとして導入されることが好ましく、メタクリル基として導入されることがより好ましい。
【0040】
改質層は構成一次粒子の表面を被覆する層であり、二重結合をもつ表面処理剤にて凝集体を表面処理することで、凝集体の表面に形成されている。改質層の厚みは特に限定しないが粒子材料の表面を概ね隙間無く被覆することが好ましい。改質層は、凝集した構成一次粒子の間に介在させることもできるほか、構成一次粒子が凝集した状態でその表面を被覆して構成一次粒子同士が直接凝集した状態になった上で被覆されていることもできる。
【0041】
改質層は構成一次粒子の表面に対して共有結合されているか分子間力結合などにより物理的に結合されているかの何れかが望ましい。改質層を構成する有機物としては、二重結合をもつシラン化合物を表面処理剤として採用し、表面処理することで生成するシラン化合物の縮合物であることが好ましい。シラン化合物としてはSiORを1分子中に2つ以上もつ化合物とすると縮合物からなる改質層が形成できる。メタクリル基をもつシラン化合物の市販品としては、信越化学工業製のKBM-502(3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン)、KBM-503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、KBE-502(3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン)、KBE-503(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、KBM-5803(8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン)、ダウ・東レ株式会社製のメタクリルシラン:DOWSIL Z-6030 Silaneなどが挙げられる。
【0042】
シラン化合物の縮合物を製造する方法としては、前述のシラン化合物を表面処理剤として採用し、構成一次粒子(凝集体を形成する前後を問わない)の表面に接触させた状態で縮合させることにより行うことができる。構成一次粒子は、無機材料から構成され、その表面にはOH基を有することが通常である。そのため前述のシラン化合物は、構成一次粒子の表面に存在するOH基と反応して共有結合を形成することができる。
【0043】
また、本実施形態の粒子材料は、表面又は内部の組成としてAlを採用する場合に、X線回折での2θが45°~49°と64°~67°とにそれぞれ存在するピークの半値幅が0.5°以上であることが好ましい。2θが45°~49°の範囲にあるピーク(第1ピーク)は、γアルミナであり、2θが64°~67°の範囲にあるピーク(第2ピーク)は、γアルミナである。この範囲に存在するピークの半値幅が0.5°以上になるとαアルミナが生成していないため好ましい。
【0044】
更に、本実施形態の粒子材料は、表面又は内部の組成としてベーマイトを採用する場合に、X線回折での2θが37°~39°と71°~73°とにそれぞれ存在するピークの半値幅が2.5°以下であるか、及び/又は、45°~49°と64°~67°とにそれぞれ存在するピークの半値幅が2.5°以下であることが好ましい。2θがこれらの範囲にあるピークは、ベーマイトであり、この範囲に存在するピークの半値幅が2.5°以下になるとベーマイトが残存しているため好ましい。
【0045】
(透明樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の透明樹脂組成物の製造方法は、分散工程と被覆工程と凝集工程と改質工程と混合工程と必要に応じて採用するその他の工程とを有する。本実施形態の透明樹脂組成物の製造方法は、前述した本実施形態の透明樹脂組成物を好適に製造できる製造方法であるため、その説明中に用いる用語については特に限定が無い限り本実施形態の透明樹脂組成物にて説明した内容がそのまま利用できる。
【0046】
・分散工程
分散工程は、内部の組成をもつ粒子(コア粒子)を液体分散媒中に分散させて分散液とする工程である。コア粒子は、常法により得ることができる。例えば、内部の組成の前駆体となる化合物を反応させて製造できる。例えば内部の組成としてベーマイトを採用する場合には、粉砕などにより適正な粒径とした水酸化アルミニウムを前駆体として採用し、水熱処理することでベーマイトからなるコア粒子を得ることができる。また、適正な粒径とした酸化アルミニウムを前駆体として採用し、酸やアルカリ水溶液中で加熱することでコア粒子を得ることができる。
【0047】
・被覆工程
被覆工程は、得られた分散液に対して、反応により表面の組成になる化合物である前駆体又はコロイダルシリカを添加し表面の組成を生成することによってコア粒子の表面を表面の組成にて被覆・形成した被覆粒子とする工程である。内部の組成と表面の組成との比率は、添加する前駆体の量により制御できる。前駆体としては、どのような化合物を採用しても良い。
【0048】
表面の組成としてシリカを採用する場合は、前駆体としてテトラエトキシシランを採用することができる。テトラエトキシシランは、水の存在下で容易にシリカを生成する。例えば、テトラエトキシシランを酸性若しくは塩基性の雰囲気下で加水分解するいわゆるゾルゲル法が採用できる。コロイダルシリカはコア粒子の表面に付着した状態で後述する凝集工程にて凝集することにより「表面の組成」としてのシリカを構成することになる。
【0049】
・凝集工程
凝集工程は、被覆工程の後に行う工程であり、被覆工程にて得られた被覆粒子を加熱して凝集させる工程である。得られた凝集体は、必要な粒度分布になるように粉砕操作や分級操作を行うことができる。凝集工程における加熱温度は被覆粒子間において脱水縮合が生じる温度である。例えば250℃超の温度、450℃以上、500℃以上が例示できる。この温度範囲にて加熱することで得られた粒子材料の強度が向上できる。
【0050】
・改質工程
改質工程は、被覆工程後に行う工程であり、被覆工程により得られた被覆粒子に対して二重結合をもつシラン化合物からなる表面処理剤を表面に接触させて改質する工程である。改質工程は、凝集工程の前後いずれでも行うことができる。つまり、凝集工程にて被覆粒子から得られた凝集体に改質工程を行うことで、凝集体に含まれる被覆粒子に表面処理を行うこともできるし、凝集工程に供される前の凝集する前の被覆粒子に対して表面処理を行った後に凝集工程を行って表面処理された被覆粒子から凝集体を形成することもできる。
【0051】
改質工程において、表面処理剤にて表面処理を行う方法は特に限定しないが、表面処理剤をそのまま被覆粒子中に投入して撹拌などで混合を行う方法、表面処理剤を何らかの溶媒中に溶解乃至は分散させた状態で被覆粒子中に投入して撹拌などで混合を行う方法、表面処理剤を加熱して気化した状態で被覆粒子に供給して接触させる方法などが挙げられる。
【0052】
改質工程において表面処理剤を接触させる量は屈折率が1.50~1.60になるように決定する。表面処理剤の量としては、凝集体の外部と連通する表面を基準として、2.0~6.8μmol/mの量を採用することが好ましく、下限値及び上限値として、6.0μmol/m、5.0μmol/m、4.0μmol/m、2.67μmol/mをそれぞれ独立して採用することができる。また、凝集体の質量を基準として、15%~50%程度を採用することも好ましく、下限値及び上限値として、45%、40%、35%、30%、25%、20%をそれぞれ独立して採用することができる。更に、表面処理剤の投入は、全量を一度に投入しても良いし、全量を複数回に分けて投入することも良い。
【0053】
・混合工程
混合工程は、凝集工程及び改質工程の両工程を経て形成されたフィラーとしての粒子材料を前駆体としての透明樹脂材料に混合・分散して透明樹脂組成物にする工程である。本工程に供される粒子材料は、これまでの工程により製造される。粒子材料は単独又はその他の粒子材料を加えてフィラーとなる。
【0054】
混合工程では、同時に硬化触媒を添加することもできる。得られた透明樹脂組成物は、含有する透明樹脂材料を硬化させることで硬化した透明樹脂組成物になる。硬化する際に粒子材料の表面に導入された表面処理剤由来の二重結合が反応して強固に結合することが予測される。
【0055】
透明樹脂材料中に粒子材料を分散させる方法としては特に限定しない。例えば、前駆体としての透明樹脂材料を構成するA剤及びB剤の一方に粒子材料を混合した後に、A剤及びB剤の他方を混合したり、A剤及びB剤を予め混合した混合物に対して粒子材料を混合したりすることができる。
【0056】
・その他の工程
上述の工程以外にも必要に応じて適正な工程を有することができる。例えば、粒度分布調整工程を採用することができる。粒度分布調整工程は、被覆工程により得られる被覆粒子、被覆工程に供されるコア粒子、凝集工程にて得られる凝集体、改質工程にて得られる粒子材料のうちの一つ以上の粒子に対して分級操作、粉砕操作などにより粒度分布を制御する工程である。
【0057】
(LEDデバイス)
本実施形態のLEDデバイスは、封止材を形成する先述した本実施形態の透明樹脂組成物と、その透明樹脂組成物により封止されたLEDチップとを有する。透明樹脂組成物により形成された封止材は、LEDチップから生成する光線の光路になる。
【実施例0058】
本発明のフィラーに含有される粒子材料及びその製造方法並びに透明樹脂組成物について実施例に基づき以下詳細に説明を行う。
【0059】
(粒子材料の調製)
・表面の組成としてシリカ、内部の組成としてベーマイトを採用した一次粒子からなる凝集体の製造:分散工程、被覆工程、凝集工程
川研ファインケミカル株式会社製のアルミゾル10A(Alを10質量%含有:短径×長径は10nm×50nm:コア粒子に相当)100質量部にイソプロパノール(IPA)40質量部を加えて(分散工程)、テトラエトキシシラン(TEOS:表面の組成であるシリカの前駆体)10質量部を添加した。この混合比を採用することで最終的に得られる粒子材料中のベーマイトとシリカとの質量比は理論上78:22である。
【0060】
室温で24時間反応(被覆工程)したのちアンモニア水で中和して構成一次粒子からなるゲル状の沈殿物を得た(凝集工程)。沈殿物を純水で洗浄し、160℃、2時間乾燥し、ジェットミルで平均粒子径を2μm以下に粉砕した後、850℃2時間熱処理して本実施例の凝集体を得た。
【0061】
得られた凝集体は、体積平均粒径が3.0μm、比表面積が280m/g、屈折率が1.564であった。体積平均粒径はレーザー回折式粒度測定装置を用いて行った。比表面積は、窒素を用いたBET法にて測定した。
【0062】
・改質工程
製造した凝集体の質量(フィラーの質量)を基準として以下の量の表面処理剤を用いて表面処理を行い改質層を形成して各試験例の粒子材料を製造した。表面処理剤としては、メタクリル基を有するシラン化合物(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業製、KBM-503)を用いて、試験例1-1が処理量15%、試験例1-2が処理量20%、試験例1-3が処理量30%、試験例1-4が処理量40%、試験例1-5が処理量50%とした。
【0063】
ビニル基を有するシラン化合物(ビニルトリメトキシシラン、信越化学工業製、KBM-1003)を用いて、処理量15%とした(試験例1-6)。フェニル基を有するシラン化合物(フェニルトリメトキシシラン、信越化学工業製、KBM-103)を用いて、処理量30%とした(試験例1-7)。アクリル基を有するシラン化合物(3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業製、KBM-5103)を用いて、処理量30%とした(試験例1-8)。これらを表1にまとめた。
【0064】
メタクリルシランの処理量は、凝集体の質量を基準として、15%(2μmol/m)~50%(6.67μmol/m)の範囲で検討を行った。ビニルシランの処理量は、凝集体の質量を基準として、15%(2μmol/m)~50%(6.67μmol/m)の範囲で検討を行った。
【0065】
シリカ粒子にメタクリルシランにて表面処理を行った一次粒子にまで分散している粒子材料、フェニルシラン、ビニルシラン、及び前述の凝集体であって表面処理を行っていないものを試験例2-1~2-7の粒子材料とした。
【0066】
試験例2-1~2-4はメタクリルシランにて表面処理を行った粒子材料である。試験例2-1は、体積平均粒径が10nm(株式会社アドマテックス製、YA010C-SM1)、試験例2-2は、体積平均粒径が50nm(株式会社アドマテックス製、YA050C-SM1)、試験例2-3は、体積平均粒径が100nm(株式会社アドマテックス製、YA100C-SM2)を用いた。試験例2-4は、体積平均粒径が0.5μm(株式会社アドマテックス製、SC2500-SMJ)を用いた。
【0067】
試験例2-5はフェニルシランにて表面処理を行った粒子材料であり、体積平均粒径が50nm(株式会社アドマテックス製、YA050C-SP3)である。試験例2-6はビニルシランにて表面処理を行った粒子材料であり、体積平均粒径が50nm(株式会社アドマテックス製、YA050C-SV6)である。
【0068】
試験例2-7は、表面処理を行っていない凝集体を粒子材料として用いた。これらも表1にまとめた。
【0069】
【表1】
【0070】
・混合工程
二液型シリコーン(信越化学工業製、ASP-1120)65質量部に対して、各試験例の粒子材料35質量部を自転公転ミキサーで混合して透明樹脂組成物を得た。表面処理を行っていない試験例2-7については、粒子材料を均一に混合することができなかったため二液型シリコーン70質量部に粒子材料30質量部を混合して各試験例の透明樹脂組成物を得た(混合工程)。また、その他の評価用の硬化物を得るため、試験例1-6の粒子材料を25質量部を二液型シリコーン(信越化学工業製:ASP-1120)75質量部と混合した透明樹脂組成物(その他評価用)を得た。これらの透明樹脂組成物を厚さ5mmの金型に入れて、150℃で4時間加熱して硬化させた。
【0071】
(評価)
・屈折率及び透明性
試験例1-1~1-7及び2-1~2-4について屈折率を測定した。凝集体にメタクリルシラン処理を行った試験例1-1は屈折率1.562(処理量15%)、試験例1-2は屈折率1.537(処理量20%)、試験例1-3は屈折率1.575(処理量30%)、試験例1-4は屈折率1.550(処理量40%)、試験例1-5は屈折率1.530(処理量50%)であった。凝集体にビニルシラン処理を行った試験例1-6は屈折率1.562(処理量15%)であった。凝集体にフェニルシラン処理を行った試験例1-7は屈折率1.572(処理量30%)であった。
【0072】
メタクリルシラン処理を行った試験例2-1~2-4、フェニルシラン処理(試験例2-5)、並びにビニルシラン処理(試験例2-6)を行った粒子材料の屈折率は、すべて1.45であった。結果を表1に示す。
【0073】
凝集体(試験例2-7)の屈折率は1.564であり、メタクリルシランから形成される改質層の屈折率も同程度の屈折率をもち、メタクリルシランの処理量に対して一定の傾向は認められなかった。メタクリルシラン処理により黄色に着色する傾向があるが、メタクリルシランの処理量を凝集体の質量を基準として30%以下にすることで、着色の影響は殆どなくすことができた。
なお、樹脂材料の屈折率は1.570であった。
【0074】
・押込み硬さ
各試験例の硬化物について押込み硬さを測定した。押し込む硬さの測定は、デュロメータA及びDにて行った。結果を表1及び図1に示す。
【0075】
メタクリルシラン処理を行った試験例1-1~1-5及び処理を行っていない試験例2-7について検討を行うと、図1より明らかなように、凝集体の質量を基準として15%(2μmol/m)で処理した試験例1-1が最も高い押込み硬さをもち、50%(6.67μmol/m)までは、確実に未処理の硬化物(試験例2-7)よりも高い押込み硬さを示すことが分かった。また、15%から50%までの間では、処理量が少ない方が好ましいことが分かった。
【0076】
メタクリルシラン処理(試験例1-3)、ビニルシラン処理(試験例1-6)、フェニルシラン処理(試験例1-7)、アクリルシラン処理(試験例1-8)の押込み硬さを比較すると、メタクリルシラン処理の硬化物が一番高く、ビニルシラン処理及びアクリルシラン処理がそれに次いで、フェニルシラン処理の硬化物の順になることがわかった。
【0077】
・その他の評価
その他の評価用の硬化物(表面処理剤としてのメタクリルシランをフィラーの質量基準で35質量%の量で表面処理を行った試料:試験例1-1と同様の方法にて調製)と対照の硬化物とについて、全光線透過率(%)、線膨張係数(ppm/K)、引張弾性率(MPa)、硬化収縮率(%)、硫化抑制を評価した。結果を表2に示す。全光線透過率は、厚み0.5mmにした試験試料に対して測定を行った。線膨張係数は、JIS K7197-1991に準じて測定を行った。引張弾性率は、JIS K7161-1:2014に準じて測定を行った。硫化抑制は、銀箔を入れ硬化した硬化物をHSが2ppm、NOが4ppm含まれており、40℃、相対湿度75%の空気流通下で96時間暴露試験を行い、銀箔に銀色から黒色に変化した場合に「並」変色しない場合に「優」と評価した。耐候性は、0.5mmに成形したシートをスガ試験機製スーパーキセノンウェザーメーターを用い3~4ヶ月相当の暴露試験を行い、紫外・可視透過スペクトルが暴露前のスペクトルが波長350~650nmの領域で2%以上低下している場合に「並」、1%以上変化がない場合に「優」と評価した。
【0078】
【表2】
【0079】
表2より明らかなように、検討した全ての評価値において対照よりも優れた性能を発揮できることが分かった。
図1