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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173980
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】半導体レーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/227 20060101AFI20221115BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H01S5/227
H01S5/343
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110929
(22)【出願日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2021079577
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横川 翔子
(72)【発明者】
【氏名】中村 厚
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA22
5F173AA41
5F173AB13
5F173AB23
5F173AG20
5F173AG22
5F173AH12
5F173AR33
5F173AR53
(57)【要約】
【課題】出力特性および信頼性の向上を目的とする。
【解決手段】半導体レーザは、メサ構造10に含まれる多重量子井戸層16と、メサ構造10の両側に接触する、半絶縁性半導体からなる埋め込み層18と、メサ構造10および埋め込み層18の下にあって、多重量子井戸層16よりも屈折率において低い、第1導電型の第1クラッド層20と、メサ構造10および埋め込み層18の下方で、第1クラッド層20の下にあって、第1クラッド層20よりも屈折率において高く、多重量子井戸層16で発振する光を吸収しない高屈折率層30と、高屈折率層30とは非接触で、多重量子井戸層16で発振する光を回折可能な回折格子を少なくとも部分的に構成する回折格子層24と、高屈折率層30の下にある、第1導電型の基板32と、多重量子井戸層16の上にある、第1導電型とは反対の第2導電型の第2クラッド層22と、を有する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メサ構造に含まれる多重量子井戸層と、
前記メサ構造の両側のそれぞれに接触する、半絶縁性半導体からなる埋め込み層と、
前記メサ構造および前記埋め込み層の下にあって、前記多重量子井戸層よりも屈折率において低い、第1導電型の第1クラッド層と、
前記メサ構造および前記埋め込み層の下方で、前記第1クラッド層の下にあって、前記第1クラッド層よりも前記屈折率において高く、前記多重量子井戸層で発振する光を吸収しない高屈折率層と、
前記高屈折率層とは非接触で、前記多重量子井戸層で発振する前記光を回折可能な回折格子を少なくとも部分的に構成する回折格子層と、
前記高屈折率層の下にある、前記第1導電型の基板と、
前記多重量子井戸層の上にある、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2クラッド層と、
を有する半導体レーザ。
【請求項2】
請求項1に記載された半導体レーザであって、
前記多重量子井戸層と前記第1クラッド層の間にあって、前記メサ構造に含まれる、前記第1導電型の第1光閉じ込め層と、
前記多重量子井戸層と前記第2クラッド層の間にあって、前記メサ構造に含まれる、前記第2導電型の第2光閉じ込め層と、
をさらに有する半導体レーザ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された半導体レーザであって、
前記第1クラッド層の厚さは、500nm以上である半導体レーザ。
【請求項4】
請求項3に記載された半導体レーザであって、
前記第1クラッド層の厚さは、1500nm以下である半導体レーザ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、
前記高屈折率層の厚さは、50nm以上である半導体レーザ。
【請求項6】
請求項5に記載された半導体レーザであって、
前記高屈折率層の厚さは、100nm以下である半導体レーザ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、
前記第1クラッド層は、複数の第1クラッド層のそれぞれであり、
前記高屈折率層は、複数の高屈折率層のそれぞれであり、
前記複数の第1クラッド層および前記複数の高屈折率層は、交互に積層されている半導体レーザ。
【請求項8】
請求項7に記載された半導体レーザであって、
前記複数の第1クラッド層は、厚さが異なり、前記多重量子井戸層に近いほど厚い半導体レーザ。
【請求項9】
請求項8に記載された半導体レーザであって、
前記複数の高屈折率層は、前記多重量子井戸層に近い上層と、前記多重量子井戸層から遠い下層の2層からなり、
前記上層は、前記下層よりも薄い半導体レーザ。
【請求項10】
請求項8に記載された半導体レーザであって、
前記複数の高屈折率層は、前記多重量子井戸層に最も近い最上層と、前記多重量子井戸層から最も遠い最下層と、前記最上層および前記最下層の間にある少なくとも1つの中間層と、を含み、
前記少なくとも1つの中間層は、前記最上層および前記最下層よりも薄い半導体レーザ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、
前記メサ構造は、光出力方向に直交する幅が漸減するスポットサイズ変換部を含み、
前記回折格子層は、前記スポットサイズ変換部では、前記多重量子井戸層で発振する前記光を回折しない格子を構成する半導体レーザ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、
前記第2クラッド層は、前記メサ構造に含まれる半導体レーザ。
【請求項13】
請求項12に記載された半導体レーザであって、
前記回折格子層は、前記第2クラッド層の内部にある半導体レーザ。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、
前記第2クラッド層は、前記多重量子井戸層および前記埋め込み層の上にある半導体レーザ。
【請求項15】
請求項14に記載された半導体レーザであって、
前記高屈折率層と前記基板の間に第3クラッド層をさらに有し、
前記回折格子層は、前記第3クラッド層と前記基板の間にある半導体レーザ。
【請求項16】
請求項14又は15に記載された半導体レーザであって、
前記メサ構造は、前記埋め込み層および前記第1クラッド層を経て前記基板に至る深さの一対の溝の間にある半導体レーザ。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、
前記第1導電型はn型であり、前記第2導電型はp型である半導体レーザ。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、
前記高屈折率層は、InGaAsP、InGaAsおよびInGaAlAsのいずれかを含有する半導体レーザ。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、
前記基板、前記埋め込み層、前記第1クラッド層および前記第2クラッド層の少なくとも1つは、InPを含有する半導体レーザ。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、
前記高屈折率層は、前記屈折率において前記多重量子井戸層よりも低い半導体レーザ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
埋め込みヘテロ構造(BH構造:Buried-Heterostructure)の半導体レーザは、出力特性および信頼性において優れている。BH構造は、メサ構造への光閉じ込め係数が大きいので、出力光の縦横比を1に近づけやすい。また、メサ幅を広げることで、多重量子井戸(MQW:Multi Quantum Well)の電流密度を低減し、さらに高出力化および高信頼性化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-212664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メサ構造への光閉じ込め係数が大きいと、NFP(Near Field Pattern)の面積が小さくなるので、FFP(Far Field Pattern)の広がり角が大きくなり、光結合トレランスの低下につながる。また、メサ幅が高次横モードカットオフ幅を超えると、横高次モードが現れ、光結合効率の低下につながり、出力が低下する。
【0005】
特許文献1には、メサ構造の下に、n-InPバッファ層4とn-InGaAsPガイド層3を配置することが開示されている。n-InGaAsPガイド層3は、回折格子を埋めるために配置されている。回折格子は、光学特性に非常に大きな影響を与える要素、具体的には、光の結合係数であるκを決める主たる要素である。そのため、κとの兼ね合いもあり、n-InGaAsPガイド層3の設計自由度は低い。また、n-InPバッファ層4は、30nmと薄いので、その下のn-InGaAsPガイド層3によって、メサ構造への光閉じ込め係数が大きくなると推測され、カットオフ幅は狭くなると推測される。
【0006】
本発明は、出力特性および信頼性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
半導体レーザは、メサ構造に含まれる多重量子井戸層と、前記メサ構造の両側のそれぞれに接触する、半絶縁性半導体からなる埋め込み層と、前記メサ構造および前記埋め込み層の下にあって、前記多重量子井戸層よりも屈折率において低い、第1導電型の第1クラッド層と、前記メサ構造および前記埋め込み層の下方で、前記第1クラッド層の下にあって、前記第1クラッド層よりも前記屈折率において高く、前記多重量子井戸層で発振する光を吸収しない高屈折率層と、前記高屈折率層とは非接触で、前記多重量子井戸層で発振する前記光を回折可能な回折格子を少なくとも部分的に構成する回折格子層と、前記高屈折率層の下にある、前記第1導電型の基板と、前記多重量子井戸層の上にある、前記第1導電型とは反対の第2導電型の第2クラッド層と、を有する。
【0008】
屈折率の高い高屈折率層があることで、光の分布が拡大する。これにより、高次横モードカットオフ幅が大きくなり、NFPの面積が大きくなり、FFPの広がり角が小さくなって、出力特性および信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
図2図1に示す半導体レーザのII-II線断面図である。
図3図1に示す半導体レーザのIII-III線断面図である。
図4】比較例に係る半導体レーザのレーザ発振部の断面図である。
図5A】第1クラッド層に対するカットオフ幅のシミュレーション結果を示す図である。
図5B】第1クラッド層に対する縦方向FFPのシミュレーション結果を示す図である。
図5C】第1クラッド層に対する横方向FFPのシミュレーション結果を示す図である。
図5D】第1クラッド層に対するアスペクト比のシミュレーション結果を示す図である。
図6A】高屈折率層に対するカットオフ幅のシミュレーション結果を示す図である。
図6B】高屈折率層に対する縦方向FFPのシミュレーション結果を示す図である。
図6C】高屈折率層に対する横方向FFPのシミュレーション結果を示す図である。
図6D】高屈折率層に対するアスペクト比のシミュレーション結果を示す図である。
図7】変形例1に係る半導体レーザの断面図である。
図8】変形例2に係る半導体レーザの断面図である。
図9】第2の実施形態に係る半導体レーザの平面図である。
図10図9に示す半導体レーザのX-X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。全図において同一の符号を付した部材は同一又は同等の機能を有するものであり、その繰り返しの説明を省略する。なお、図形の大きさは倍率に必ずしも一致するものではない。
【0011】
近年注目を集めているシリコンフォトニクスは、その性質から高出力の半導体光素子を必要としており、特に、高出力の半導体レーザが要求されている。半導体レーザの構造として、リッジ型と埋め込みヘテロ構造(BH構造:Buried-Heterostructure)が知られている。BH構造を有する半導体レーザは、BH型半導体レーザと呼ばれる。
【0012】
リッジ型半導体レーザでは、多重量子井戸(MQW:Multi Quantum Well)が基板上に広く配置され、その上の半導体層(主としてクラッド層)がリッジ部を備えている。リッジ部の側面は、絶縁膜や半導体層で覆われる。BH型半導体レーザでは、MQWを含む半導体層がメサ構造(ストライプ形状)になっており、そのメサ構造の両側に半絶縁性半導体からなる埋め込み層が隣接する。
【0013】
リッジ型半導体レーザとBH型半導体レーザを比較すると、MQWの両側が熱伝導率の高い埋め込み層で覆われているBH型半導体レーザが放熱性に優れる。
【0014】
BH型半導体レーザは、一般的に、MQWがほぼ同じ半導体材料(例えばInP)で上下左右から囲まれていることや、さらにリッジ型半導体レーザと比較して表面の凹凸が少ないことから、MQWへかかる応力は小さい。そのため応力起因による信頼性の観点では、BH型半導体レーザは、リッジ型半導体レーザより優れる。
【0015】
出力光の形状は、外部の光学部品との光結合特性に影響する。光結合効率が悪い場合は、半導体レーザの出力光強度が大きくてもそれを十分に生かすことができない。例えば半導体レーザをレンズに光結合させる場合、その光結合効率および光軸調整時のトレランスの観点から、半導体レーザの出力光のFFP(Far Field Pattern)の広がり角は小さいほうが好ましく、縦横比は1に近いほうが好ましい。BH型半導体レーザは、一般的に、リッジ型半導体レーザより出力光の縦横比が1に近く、光結合特性においては優位である。
【0016】
上記の理由により、高出力特性および高信頼性等を満たす半導体レーザとしてBH構造の半導体レーザは優れている。なお、上述した内容はあくまで比較した場合であって、リッジ型半導体レーザもBH型半導体レーザもそれぞれ最適化することで十分実用に耐える半導体レーザを提供することはできる。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る半導体レーザの平面図である。図2は、図1に示す半導体レーザのII-II線断面図である。図3は、図1に示す半導体レーザのIII-III線断面図である。半導体レーザは、BH型半導体レーザであり、連続発振レーザまたは直接変調レーザである。
【0018】
[メサ構造]
半導体レーザは、メサ構造10を有する。メサ構造10は、所定の波長の光をレーザ発振させるレーザ発振部12を有する。レーザ発振部12は、連続光を出力するようになっている。レーザ発振部12の発振波長は、1.3μm帯であるが、1.55μm帯など他の波長であっても構わない。レーザ発振部12は、DFB(Distributed Feedback)レーザである。メサ構造10は、レーザ発振部12では、1.7μmの幅(メサ幅)を有する。
【0019】
メサ構造10は、スポットサイズ変換部14を含む。スポットサイズ変換部14は、レーザ発振部12に隣接する。スポットサイズ変換部14は、光出力方向に直交する幅(メサ幅)が漸減する。メサ幅が細くなるにつれ、メサ構造10の光閉じ込め係数が減少する。スポットサイズ変換部14は、レーザ光の出射エリアを調整することで、NFPの面積を調整し、FFPの広がり角を調整するようになっている。
【0020】
レーザ発振部12およびスポットサイズ変換部14は、一の共通のp-i-n構造を有する。「一の共通のp-i-n構造」とは、本願においては、同一材料で構成され、かつ、同一プロセスで形成されたp-i-n構造を意味する。一の共通のp-i-n構造を有するため、レーザ発振部12からスポットサイズ変換部14にわたって利得帯域が変動しない。利得帯域とは、利得スペクトルの波長範囲である。メサ構造10は、p-i-n構造の複数層からなる。
【0021】
[多重量子井戸層]
半導体レーザは、多重量子井戸層16を有する。多重量子井戸層16はメサ構造10に含まれる。多重量子井戸層16は、複数の量子井戸層と複数の障壁層を交互に挟み込んだ多重構造になっており、合計層厚が100nmである。多重量子井戸層16は、InGaAsPで構成されているが、InGaAlAsで構成してもよい。
【0022】
[埋め込み層]
半導体レーザは、埋め込み層18を有する。メサ構造10の両側のそれぞれに、埋め込み層18が接触する。メサ構造10の両側面のそれぞれは、埋め込み層18で覆われている。埋め込み層18は、半絶縁性半導体からなる。埋め込み層18は、半絶縁性のInP(例えばFe-InP)を含有する。
【0023】
[第1クラッド層]
半導体レーザは、第1クラッド層20を有する。第1クラッド層20は、メサ構造10および埋め込み層18の下にある。第1クラッド層20の一部(例えば上面にある凸部)が、メサ構造10に含まれる。あるいは、第1クラッド層20がメサ構造10に含まれていなくてもよい。第1クラッド層20は、InPから構成されている。InPは、InGaAsP等と比較して熱伝導度が高いので、第1クラッド層20をInPで構成して、多重量子井戸層16からの放熱性を高くすることが好ましい。第1クラッド層20は第1導電型(例えばn型)である。第1クラッド層20は、多重量子井戸層16よりも屈折率において低い。第1クラッド層20の厚さは、500nm以上(例えば1000nm)であり、1500nm以下である。
【0024】
[第2クラッド層]
半導体レーザは、第2クラッド層22を有する。第2クラッド層22は多重量子井戸層16の上にある。第2クラッド層22は、第1導電型とは反対の第2導電型(例えばp型)である。第2クラッド層22は、メサ構造10に含まれる。第2クラッド層22は、InPから構成され、厚さは2000nmである。
【0025】
[回折格子層]
半導体レーザは、回折格子層24を有する。回折格子層24は、InGaAsPから構成され、厚さは10nmである。回折格子層24は、第2クラッド層22の内部にある。回折格子層24は、メサ構造10に含まれる。回折格子層24は、多重量子井戸層16で発振する光を回折可能な回折格子を少なくとも部分的に構成する。例えば、回折格子層24は、多重量子井戸層16の組成に対応して、レーザ発振部12が1.3μm帯で発光するように形成されている。
【0026】
回折格子層24は、スポットサイズ変換部14では、多重量子井戸層16で発振する光を回折しない格子を構成する。例えば、回折格子層24は、スポットサイズ変換部14では、1.3μm帯に対して屈折・反射が起きない間隔の格子が形成されている。つまり、回折格子層24には、実効的には回折格子として機能しない間隔で格子が形成されている。あるいは、回折格子層24は、スポットサイズ変換部14では格子が形成されていなくても構わない。スポットサイズ変換部14とレーザ発振部12の構造的な違いはメサ幅と回折格子だけである。
【0027】
[第1光閉じ込め層]
半導体レーザは、第1光閉じ込め(SCH:Separate Confinement Heterostructure)層26を有する。第1光閉じ込め層26は、多重量子井戸層16と第1クラッド層20の間にある。第1光閉じ込め層26は、メサ構造10に含まれる。第1光閉じ込め層26は第1導電型である。第1光閉じ込め層26は、InGaAsPから構成され、厚さは50nmである。あるいは、第1光閉じ込め層26は、InGaAlAsで構成してもよい。
【0028】
[第2光閉じ込め層]
半導体レーザは、第2光閉じ込め層28を有する。第2光閉じ込め層28は、多重量子井戸層16と第2クラッド層22の間にある。第2光閉じ込め層28は、メサ構造10に含まれる。第2光閉じ込め層28は第2導電型である。第2光閉じ込め層28は、InGaAsPから構成され、厚さは50nmである。あるいは、第2光閉じ込め層28はInGaAlAsで構成してもよい。第2光閉じ込め層28は、組成波長において、第1光閉じ込め層26と同一であるが異なっても構わない。
【0029】
[高屈折率層]
半導体レーザは、高屈折率層30を有する。高屈折率層30は、メサ構造10および埋め込み層18の下方にある。高屈折率層30は、メサ構造10に含まれない。回折格子層24は、高屈折率層30とは非接触である。回折格子層24は、高屈折率層30とは別に設けられているので、設計の自由度が高い。高屈折率層30は、メサ構造10より幅広で埋め込み層18の少なくとも一部に重なっていればよく、埋め込み層18の全体に重ならなくてもよい。
【0030】
高屈折率層30は、第1クラッド層20の下にある。高屈折率層30は、第1クラッド層20よりも屈折率において高い。高屈折率層30は、屈折率において多重量子井戸層16よりも低い。高屈折率層30は、半導体レーザで発振する光を吸収しないように、組成波長が設定されている。ここで光を吸収しないとは、半導体レーザの発振波長の中心より、高屈折率層30の組成波長が短波であることを意味しており、半導体レーザの光スペクトルに含まれる全ての波長を吸収しないことは意味していない。高屈折率層30の厚さは、50nm以上である。高屈折率層30の厚さは、100nm以下である。高屈折率層30は、InGaAsP、InGaAsおよびInGaAlAsのいずれかを含有する。高屈折率層30は、第1導電型である。屈折率の高い高屈折率層30があることで、光Lの分布が拡大する。ただし、十分な厚さの第1クラッド層20があることで、光Lの分布の拡大は、多重量子井戸層16の光閉じ込め係数を大きくしないようになっている。
【0031】
[基板]
半導体レーザは、基板32を有する。基板32は高屈折率層30の下にある。基板32は第1導電型である。基板32は、InPから構成されている。
【0032】
[その他]
半導体レーザは、レーザ出射面に、低反射コーティング膜34を有する。半導体レーザは、レーザ出射面とは反対側の面に、高反射コーティング膜36を有する。埋め込み層18の上面には、メサ構造10の近傍を除いて、絶縁膜38が配置されている。
【0033】
半導体レーザは、裏面側に裏面電極40を有する。半導体レーザは、第2クラッド層22の上に表面電極42を有する。第2クラッド層22と表面電極42との間に図示しないコンタクト層が介在する。裏面電極40および表面電極42は、外部電源(不図示)からの電流を半導体レーザへ注入するのに用いられる。
【0034】
裏面電極40および表面電極42は、レーザ発振部12のみならず、スポットサイズ変換部14にも設けられている。これは、レーザ発振部12を駆動するとともにスポットサイズ変換部14も増幅器としても活用するためである。あるいは、表面電極42は、スポットサイズ変換部14の上になくてもよい。あるいは、レーザ発振部12の表面電極42とは別体の、図示しない表面電極をスポットサイズ変換部14の上配置しても構わない。また、スポットサイズ変換部14の先端に例えばFe-InPで構成された、図示しない窓構造を設けてもよい。
【0035】
[比較例]
図4は、比較例に係る半導体レーザのレーザ発振部の断面図である。レーザ発振部は、第1クラッド層20と高屈折率層30を有しない点で、第1の実施形態のレーザ発振部12と異なる。その他の特徴(材料、組成波長等)において、両者は同一である。
【0036】
比較例では、レーザ発振部で発振する光L´は、第1光閉じ込め層26、多重量子井戸層16および第2光閉じ込め層28から、屈折率の低い、第2クラッド層22、埋め込み層18および基板32に染み出す。そのため、光L´は、第1光閉じ込め層26、多重量子井戸層16および第2光閉じ込め層28を中心として導波する。メサ構造10およびその直下の、光L´が強く集まる領域の両側の領域(埋め込み層18および基板32)は、屈折率の低い材料(例えばInP)から構成される。なお光Lおよび光L´の分布は、第1の実施形態と比較例の違いを説明するために模式的に示しただけであり、必ずしもNFPと一致するわけではない。
【0037】
第1の実施形態と比較例について、レーザ発振部12のカットオフ幅、縦方向FFP、横方向FFPおよびアスペクト比(縦/横)についてシミュレーションを行った。メサ幅は1.7μmとした。アスペクト比は、縦方向FFP/横方向FFPである。その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
本結果より明らかなように、カットオフ幅の拡大およびFFPの縮小の効果が得られた。
【0040】
第1の実施形態では、メサ構造10の下方で、高屈折率層30(例えばInGaAsP)は、第1クラッド層20(例えばInP)より屈折率が高い。そのため、比較例と比べて、高屈折率層30によって光Lの分布が全体的に下方向に広がる。しかも、高屈折率層30は、埋め込み層18の下方に広がっているために、光Lの分布は横方向にも広がる。
【0041】
第1の実施形態においては、比較例よりも、光Lが強く集まる領域の両側の領域の屈折率が大きくなる。その結果、光Lが強く集まる領域とその両側の領域との間で、屈折率差は小さくなる。屈折率差が小さくなると、高次横モードカットオフ幅(以下、カットオフ幅)が広がる。カットオフ幅が広がれば、横方向の高次モードを発生させずにメサ幅を広げることが可能になり、多重量子井戸層16の電流密度を下げることが可能となる。その結果、信頼性を向上させ、より多くの電流を注入できることより高出力化を図ることができる。
【0042】
[レーザ発振部12のシミュレーション]
第1クラッド層20の厚さの依存性について検討した。詳しくは、第1クラッド層20の厚さを変えると特性がどのように変化するかについてシミュレーションを行った。メサ幅を1.7μmとし、高屈折率層30の厚さを50nmとした。
【0043】
図5Aは、第1クラッド層20に対するカットオフ幅のシミュレーション結果を示す図である。破線は、表1に示す比較例のカットオフ幅の値を示す。第1クラッド層20の厚さが500nm未満の場合は、カットオフ幅は比較例より狭くなっている。これは、高屈折率層30がメサ構造10に近いために、光をメサ構造10に集める効果が強く出ているためであると推測される。したがって、第1クラッド層20の厚さは500nm以上が好ましいことが分かる。さらに、1000nmを超えるとカットオフ幅は概ね一定となり、1000nm以上とすることで安定した特性とすることが可能となる。
【0044】
図5Bは、第1クラッド層20に対する縦方向FFPのシミュレーション結果を示す図である。破線は、表1に示す比較例の縦方向FFPの値を示す。第1クラッド層20の厚さが500nm未満の場合は、縦方向FFPは比較例より大きくなっている。したがって、第1クラッド層20の厚さは500nm以上が好ましい。
【0045】
図5Cは、第1クラッド層20に対する横方向FFPのシミュレーション結果を示す図である。破線は、表1に示す比較例の横方向FFPの値を示す。第1クラッド層20の厚さが500nm未満の場合は、横方向FFPは比較例より大きくなっている。したがって、第1クラッド層20の厚さは500nm以上が好ましい。
【0046】
図5Dは、第1クラッド層20に対するアスペクト比のシミュレーション結果を示す図である。破線は、表1に示す比較例のアスペクト比の値を示す。なお、アスペクト比は、縦方向FFP/横方向FFPである。アスペクト比は、第1クラッド層20の厚さが1000nm付近で最小となり、1500nmを超えると大きくなる傾向が見られた。要求されるアスペクト比は、使用するレンズによって異なるので、第1クラッド層20の厚さを適宜設定すればよい。
【0047】
次に、高屈折率層30の厚さの依存性について検討した。詳しくは、高屈折率層30の厚さを変えると特性がどのように変化するかについてシミュレーションを行った。メサ幅を1.7μmとし、第1クラッド層20の厚さを1000nmとした。
【0048】
図6Aは、高屈折率層30に対するカットオフ幅のシミュレーション結果を示す図である。破線は、表1に示す比較例のカットオフ幅の値を示す。高屈折率層30の厚さが30nm以下では、カットオフ幅は、比較例とほとんど変わらず効果が小さいことがわかる。高屈折率層30の厚さが50nm以上であれば、カットオフ幅は広がっていく。
【0049】
図6Bは、高屈折率層30に対する縦方向FFPのシミュレーション結果を示す図である。破線は、表1に示す比較例の縦方向FFPの値を示す。高屈折率層30が厚くなるにつれて、縦方向FFPの値は小さくなっていく。ただし、高屈折率層30の厚さが150nmを超えると、縦方向FFPの値が急激に大きくなる傾向が見られた。
【0050】
図6Cは、高屈折率層30に対する横方向FFPのシミュレーション結果を示す図である。破線は、表1に示す比較例の横方向FFPの値を示す。高屈折率層30が厚くなるにつれて、FFPの値は小さくなっていく。横方向FFPは、単調減少の傾向であった。
【0051】
図6Dは、高屈折率層30に対するアスペクト比のシミュレーション結果を示す図である。破線は、表1に示す比較例のアスペクト比の値を示す。なお、アスペクト比は、縦方向FFP/横方向FFPである。アスペクト比は、高屈折率層30が100nmを超えたあたりから、大幅に増加する傾向が見られる。
【0052】
以上のことから、カットオフ幅の観点では高屈折率層30の厚さは50nm以上であれば、より大きくても構わない。一方、FFP、特にアスペクト比も考慮するのであれば、高屈折率層30は100nm以下が好ましい。
【0053】
なお、本実施形態の数値は一例に過ぎない。必要とする特性に応じて、第1クラッド層20の厚さや高屈折率層30の厚さは適宜選択すればよい。ただし、図5Aより明らかなように、十分な効果を得るためには、第1クラッド層20は500nm以上が好ましい。これより薄い場合は、多重量子井戸層16の光閉じ込め係数を大きくしてしまう懸念がある。また高屈折率層30の厚さは、50nm以上が好ましい。
【0054】
[スポットサイズ変換部14のシミュレーション]
高屈折率層30は幅が変わらないため、レーザ発振部12と比べて幅が狭くなるスポットサイズ変換部14では、全体として高屈折率層30に光Lの分布が寄る。高屈折率層30は、メサ構造10の一部となっておらず、広く広がっているため、光Lは横方向にも広がる。結果として、縦方向および横方向のFFPを大きくすることが可能となる。例えば、スポットサイズ変換部14の先端のメサ幅を0.9μmとすると、縦方向のFFPは22.3°、横方向のFFPは16.1°、アスペクト比は1.38となる。表1で示したレーザ発振部12の光分布と比べて、アスペクト比をそれほど変えずにFFPを小さくすることが可能である。その結果、レンズまたは導波路との光結合のトレランスを向上させることができる。
【0055】
[効果]
屈折率の高い高屈折率層30があることで、縦方向および横方向に、光Lの分布が拡大する。これにより、NFPの面積が大きくなり、FFPの広がり角が小さくなって、レンズ等の光学部品との光結合のトレランスが大きくなるなど信頼性が向上する。
【0056】
屈折率の高い高屈折率層30があることで、高次横モードカットオフ幅が大きくなる。したがって、メサ幅を広げることができる。メサ幅が広いと、メサ構造10の電流密度が下がるので、より多くの電流を注入することができ、これにより高出力化を図ることができる。
【0057】
屈折率の高い高屈折率層30があることで、光Lの分布が下側(基板32への方向)に拡大する。これにより、材料によっては高出力化を図ることができる。例えば、第1クラッド層20および高屈折率層30などの下側にあるn型の半導体層は、第2クラッド層22などの上側にあるp型の半導体層よりも、光吸収量が小さい。そのため、上側にある半導体層の光閉じ込め係数が小さくなり、光吸収による内部ロスが小さくなり、出力強度が大きくなる。
【0058】
第1の実施形態の効果を十分に得るためには、高屈折率層30は、多重量子井戸層16が発振する光を吸収しない組成波長であることに加えて、第1クラッド層20より屈折率が高いことが好ましく、具体的には、InGaAsP、InGaAlAs、またはInGaAsから構成されることが好ましい。
【0059】
第1クラッド層20は、高屈折率層30および第1光閉じ込め層26よりも、屈折率において小さい材料(具体的にはInP)からなる。第1クラッド層20が、屈折率においてInPよりも大きい材料から構成されると、光Lの分布をより多重量子井戸層16に寄せてしまうことがある。厚さや組成を調整することで、上述した効果を得ることができるかもしれないが、設計の自由度を低減させる。さらに、高出力化の観点として、多重量子井戸層16で発生した熱をできるだけ多く他の領域に逃がすことが好ましい。
【0060】
なお、上述した実施形態では第1導電型はn型、第2導電型はp型としたが逆であっても構わない。第1導電型がp型であれば、高屈折率層30がp型であるため、内部ロスが増加して高出力化が十分に得られない可能性があるが、カットオフ幅を広げることが可能であるため、より多くの電流を注入することで、高出力化を達成することができる。またFFPの広がり角を小さくする効果は十分に得られる。
【0061】
[変形例1]
図7は、変形例1に係る半導体レーザの断面図である。複数の第1クラッド層20A,20Bおよび複数の高屈折率層30A,30Bは、交互に積層されている。基板32の上に、高屈折率層30A、第1クラッド層20A、高屈折率層30Bおよび第1クラッド層20Bが配置されている。第1クラッド層20Bには、メサ構造10の下端部となる凸部が形成されている。
【0062】
複数の第1クラッド層20A,20Bは、厚さが異なり、多重量子井戸層16に近いほど厚い。第1クラッド層20Aは、n-InPから構成され、厚さは750nmである。第1クラッド層20Bは、n-InPから構成され、厚さは1000nmである。
【0063】
複数の高屈折率層30A,30Bは、多重量子井戸層16に近い上層と、多重量子井戸層16から遠い下層の2層からなる。上層は、下層よりも薄い。下層である高屈折率層30Aは、n-InGaAsPから構成され、厚さは75nmである。上層である高屈折率層30Bは、n-InGaAsPから構成され、厚さは50nmである。
【0064】
本変形例の構造を採用すると、カットオフ幅は2.07μmになり、第1の実施形態のレーザ発振部12の1.74μmと比較して、大幅に広くすることができた。また、メサ幅1.7μmにおける縦方向FFPは22.4°になり、横方向FFPは15.9°になり、第1の実施形態のレーザ発振部12より小さくなった。ただし、縦横比は1.41と若干劣化する。
【0065】
本変形例でも、スポットサイズ変換部14を適用し、メサ幅を0.9μmとすると、縦方向FFPは18.1°、横方向FFPは12.3°とさらに小さくすることができた。アスペクト比は1.47と劣化したが、絶対値としてはそれほど大きいわけではなく、カットオフ幅の増加による高出力化の恩恵が大きいので、トータルとしては高出力化を実現することができる。
【0066】
[変形例2]
図8は、変形例2に係る半導体レーザの断面図である。複数の第1クラッド層20C,20D,20E,20Fおよび複数の高屈折率層30C,30D,30E,30Fは、交互に積層されている。基板32の上に、高屈折率層30C、第1クラッド層20C、高屈折率層30D、第1クラッド層20D、高屈折率層30E、第1クラッド層20E、高屈折率層30Fおよび第1クラッド層20Fが配置されている。第1クラッド層20Fには、メサ構造10の下端部となる凸部が形成されている。
【0067】
複数の第1クラッド層20C,20D,20E,20Fは、厚さが異なり、多重量子井戸層16に近いほど厚い。複数の第1クラッド層20C,20D,20E,20Fは、いずれもn-InPでから構成され、厚さにおいて、最下層から順に、600nm、800nm、1000nm、1200nmである。
【0068】
複数の高屈折率層30C,30D,30E,30Fは、多重量子井戸層16に最も近い最上層と、多重量子井戸層16から最も遠い最下層と、最上層および最下層の間にある少なくとも1つの中間層を含む。少なくとも1つの中間層は、最上層および最下層よりも薄い。複数の高屈折率層30C,30D,30E,30Fは、いずれもn-InGaAsPから構成されている。厚さにおいて、最下層および最上層である高屈折率層30C,30Fが70nm、中間層である高屈折率層30D,30Eが50nmである。
【0069】
本変形例の構造を採用すると、カットオフ幅は2.23μmになり、第1実施形態のレーザ発振部12および変形例1のレーザ発振部12と比較して、大幅に広くすることができた。また、メサ幅1.7μmにおける縦方向FFPは21.9°になり、横方向FFPは14.5°になり、第1の実施形態のレーザ発振部12より小さくなった。アスペクト比は1.51と大きくなった。
【0070】
本変形例でも、スポットサイズ変換部14を適用し、メサ幅を0.9μmとすると、縦方向FFPは14.7°、横方向FFPは10.9°とさらに小さくすることができた。さらに、アスペクト比は1.34となり、第1実施形態のレーザ発振部12と同等にすることができた。
【0071】
このように、複数の高屈折率層30C,30D,30E,30Fと複数の第1クラッド層20C,20D,20E,20Fを組み合わせることで、カットオフ幅の増加およびFFPの縮小を実現しつつ、スポットサイズ変換部14を利用することでアスペクト比も調整することが可能となる。
【0072】
[第2の実施形態]
図9は、第2の実施形態に係る半導体レーザの平面図である。図10は、図9に示す半導体レーザのX-X線断面図である。半導体レーザは、直接変調型の半導体レーザであり、1.3μm帯または1.55μm帯で発振するDFBレーザである。半導体レーザは、PBH(Planer BH)構造を備えている。
【0073】
メサ構造210は、第1光閉じ込め層226、多重量子井戸層216および第2光閉じ込め層228を含む。第1光閉じ込め層226は第1導電型であり、第2光閉じ込め層228は、第2導電型である。PBH構造では、メサ構造210は、第2クラッド層222を含まないので、BH構造よりも低くなる。
【0074】
メサ構造210の両側のそれぞれに、埋め込み層218が配置されている。PBH構造では、図3に示すBH構造と比較して、メサ構造210が低いことから、埋め込み層218が薄くなっており、そのために製造性に優れている。メサ構造210は、スポットサイズ変換部を有していない。
【0075】
第2クラッド層222は、多重量子井戸層216および埋め込み層218の上にある。あるいは、メサ構造210および埋め込み層218の上に、第2クラッド層222がある。第2クラッド層222は、第2導電型(例えばp型)であり、InP層から構成されている。第2クラッド層222の上にはコンタクト層244が配置されている。コンタクト層244は、第2導電型であり、InGaAsから構成されている。PBH構造は、メサ構造210の上に広く第2クラッド層222およびコンタクト層244が配置された構造である。
【0076】
高屈折率層230と基板232の間に第3クラッド層246がある。第3クラッド層246の上に、高屈折率層230および第1クラッド層220が積層されている。第3クラッド層246は、第1導電型(例えばn型)であり、InPから構成されている。
【0077】
回折格子層224は、第3クラッド層246と基板232の間にある。回折格子層224の上に第3クラッド層246が配置されている。基板232の上に回折格子層224が設けられている。回折格子層224は、高屈折率層230よりも基板232に近いが、第3クラッド層246の厚さの調整によって回折格子として機能し、半導体レーザはDFBレーザとして駆動される。
【0078】
半導体レーザは、一対の溝248を有する。一対の溝248は、メサ構造210が延びる方向に沿って、二つの端面(低反射コーティング膜234が形成された端面と高反射コーティング膜236が形成された端面)に及ぶように形成されている。一対の溝248は、半導体積層体の最上層(例えばコンタクト層244)の表面から基板232に及ぶ深さで形成されている。一対の溝248は、埋め込み層218および第1クラッド層220を経て基板232に至る深さを有する。
【0079】
絶縁膜238が、メサ構造210の上方領域を除いて、半導体積層体の最上層の表面に配置され、一対の溝248の内面にも配置されている。表面電極242は、メサ構造210に沿って延びるメサ上電極250と、メサ構造210の片側のみに配置されたパッド電極252と、これらの間を接続する引き出し電極254を含む。引き出し電極254は、一対の溝248の一方の内面に接触している。
【0080】
メサ構造210は、一対の溝248の間にある。メサ構造210は、パッド電極252から離れる方向に、半導体レーザの中央からずれた位置にある。光は、メサ構造210を中心に、図10の横方向に広がって導波する。一対の溝248は、実質的にFFPの値に影響しない領域に配置されている。つまり、実質的に外部のレンズと結合する光は、一対の溝248で挟まれた領域内に留まる。
【0081】
PBH構造では、コンタクト層244が広く配置されているために、BH構造と比較して寄生容量が大きくなる。しかし、一対の溝248を配置することで、第2クラッド層222に直接導通するコンタクト層244の面積を小さくすることができ、これにより寄生容量を低減することが可能となる。
【0082】
一対の溝248により、高屈折率層230および第1クラッド層220が分断される。これにより、一対の溝248を超えた領域には光は広がらないが、第1の実施形態と同様に、高次横モードカットオフ幅を広げることができ、高出力のシングルモード伝送が可能になる。
【0083】
高屈折率層230は、多重量子井戸層216が含まれるメサ構造210には含まれず、メサ構造210より幅広で、メサ構造210の全体および埋め込み層218の少なくとも一部(一対の溝248の間の部分)に連続的に重なっている。
【0084】
[実施形態の概要]
(1)メサ構造10に含まれる多重量子井戸層16と、メサ構造10の両側のそれぞれに接触する、半絶縁性半導体からなる埋め込み層18と、メサ構造10および埋め込み層18の下にあって、多重量子井戸層16よりも屈折率において低い、第1導電型の第1クラッド層20と、メサ構造10および埋め込み層18の下方で、第1クラッド層20の下にあって、第1クラッド層20よりも屈折率において高く、多重量子井戸層16で発振する光を吸収しない高屈折率層30と、高屈折率層30とは非接触で、多重量子井戸層16で発振する光を回折可能な回折格子を少なくとも部分的に構成する回折格子層24と、高屈折率層30の下にある、第1導電型の基板32と、多重量子井戸層16の上にある、第1導電型とは反対の第2導電型の第2クラッド層22と、を有する半導体レーザ。
【0085】
(2)(1)に記載された半導体レーザであって、多重量子井戸層16と第1クラッド層20の間にあって、メサ構造10に含まれる、第1導電型の第1光閉じ込め層26と、多重量子井戸層16と第2クラッド層22の間にあって、メサ構造10に含まれる、第2導電型の第2光閉じ込め層28と、をさらに有する半導体レーザ。
【0086】
(3)(1)又は(2)に記載された半導体レーザであって、第1クラッド層20の厚さは、500nm以上である半導体レーザ。
【0087】
(4)(3)に記載された半導体レーザであって、第1クラッド層20の厚さは、1500nm以下である半導体レーザ。
【0088】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、高屈折率層30の厚さは、50nm以上である半導体レーザ。
【0089】
(6)(5)に記載された半導体レーザであって、高屈折率層30の厚さは、100nm以下である半導体レーザ。
【0090】
(7)(1)から(6)のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、第1クラッド層は、複数の第1クラッド層20A~20Fのそれぞれであり、高屈折率層は、複数の高屈折率層30A~30Fのそれぞれであり、複数の第1クラッド層20A~20Fおよび複数の高屈折率層30A~30Fは、交互に積層されている半導体レーザ。
【0091】
(8)(7)に記載された半導体レーザであって、複数の第1クラッド層20A~20Fは、厚さが異なり、多重量子井戸層16に近いほど厚い半導体レーザ。
【0092】
(9)(8)に記載された半導体レーザであって、複数の高屈折率層30A~30Bは、多重量子井戸層16に近い上層と、多重量子井戸層16から遠い下層の2層からなり、上層は、下層よりも薄い半導体レーザ。
【0093】
(10)(8)に記載された半導体レーザであって、複数の高屈折率層30C~30Fは、多重量子井戸層16に最も近い最上層と、多重量子井戸層16から最も遠い最下層と、最上層および最下層の間にある少なくとも1つの中間層と、を含み、少なくとも1つの中間層は、最上層および最下層よりも薄い半導体レーザ。
【0094】
(11)(1)から(10)のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、メサ構造10は、光出力方向に直交する幅が漸減するスポットサイズ変換部14を含み、回折格子層24は、スポットサイズ変換部14では、多重量子井戸層16で発振する光を回折しない格子を構成する半導体レーザ。
【0095】
(12)(1)から(11)のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、第2クラッド層22は、メサ構造10に含まれる半導体レーザ。
【0096】
(13)(12)に記載された半導体レーザであって、回折格子層24は、第2クラッド層22の内部にある半導体レーザ。
【0097】
(14)(1)から(11)のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、第2クラッド層222は、多重量子井戸層216および埋め込み層218の上にある半導体レーザ。
【0098】
(15)(14)に記載された半導体レーザであって、高屈折率層230と基板232の間に第3クラッド層246をさらに有し、回折格子層224は、第3クラッド層246と基板232の間にある半導体レーザ。
【0099】
(16)(14)又は(15)に記載された半導体レーザであって、メサ構造210は、埋め込み層218および第1クラッド層220を経て基板232に至る深さの一対の溝248の間にある半導体レーザ。
【0100】
(17)(1)から(16)のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、第1導電型はn型であり、第2導電型はp型である半導体レーザ。
【0101】
(18)(1)から(17)のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、高屈折率層30は、InGaAsP、InGaAsおよびInGaAlAsのいずれかを含有する半導体レーザ。
【0102】
(19)(1)から(18)のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、基板32、埋め込み層18、第1クラッド層20および第2クラッド層22の少なくとも1つは、InPを含有する半導体レーザ。
【0103】
(20)(1)から(19)のいずれか1項に記載された半導体レーザであって、高屈折率層30は、屈折率において多重量子井戸層16よりも低い半導体レーザ。
【0104】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態を説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0105】
10 メサ構造、12 レーザ発振部、14 スポットサイズ変換部、16 多重量子井戸層、18 埋め込み層、20 第1クラッド層、20A 第1クラッド層、20B 第1クラッド層、20C 第1クラッド層、20D 第1クラッド層、20E 第1クラッド層、20F 第1クラッド層、22 第2クラッド層、24 回折格子層、26 第1光閉じ込め層、28 第2光閉じ込め層、30 高屈折率層、30A 高屈折率層、30B 高屈折率層、30C 高屈折率層、30D 高屈折率層、30E 高屈折率層、30F 高屈折率層、32 基板、34 低反射コーティング膜、36 高反射コーティング膜、38 絶縁膜、40 裏面電極、42 表面電極、210 メサ構造、216 多重量子井戸層、218 埋め込み層、220 第1クラッド層、222 第2クラッド層、224 回折格子層、226 第1光閉じ込め層、228 第2光閉じ込め層、230 高屈折率層、232 基板、234 低反射コーティング膜、236 高反射コーティング膜、238 絶縁膜、242 表面電極、244 コンタクト層、246 第3クラッド層、248 溝、250 メサ上電極、252 パッド電極、254 引き出し電極。

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10