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特開2022-173982チタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173982
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】チタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 23/00 20060101AFI20221115BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20221115BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221115BHJP
C01G 33/00 20060101ALI20221115BHJP
C01G 41/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C01G23/00 B
H01M4/485
H01M4/36 C
H01M4/36 E
C01G33/00 A
C01G41/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124474
(22)【出願日】2021-07-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】110116768
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】500447978
【氏名又は名称】台灣中油股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】黄任賢
(72)【発明者】
【氏名】黄瑞雄
【テーマコード(参考)】
4G047
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G047CA06
4G047CB09
4G047CC03
4G047CD03
4G047CD07
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD02
4G048AD03
4G048AD06
4G048AE05
4G048AE06
4G048AE08
5H050AA02
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA17
5H050CB03
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】チタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料及びその製造方法の提供。
【解決手段】本発明のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料及びその製造方法は電池に応用することができ,当該チタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料は、チタン酸リチウムを含有するコアと、当該コアを被覆し、かつチタンニオブ酸化物を含有するシェルを含み、本発明のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法は、(A)チタン酸リチウム粉体とチタンニオブ酸化物粉体を混合する工程と、(B)工程(A)で得た混合物を噴霧造粒プロセスで造粒し、チタンニオブ酸化物でチタン酸リチウムを被覆したチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料を得る工程を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料であって、
チタン酸リチウムを含有するコアと、
チタンニオブ酸化物を含有し、当該コアを被覆するシェルと、
を含むことを特徴とする、チタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料。
【請求項2】
前記複合材料がさらに、ドープしたタングステン元素を含有する、ことを特徴とする、請求項1に記載のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料。
【請求項3】
前記チタン酸リチウム:前記チタンニオブ酸化物の重量比が5:5~9:1の間である、ことを特徴とする、請求項1または2に記載のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料。
【請求項4】
前記チタン酸リチウム:前記チタンニオブ酸化物の重量比が7:3である、ことを特徴とする、請求項3に記載のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料。
【請求項5】
チタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法であって、
(A)チタン酸リチウム粉体とチタンニオブ酸化物粉体を混合する工程と、
(B)工程(A)で得られた混合物を噴霧造粒プロセスで造粒し、チタンニオブ酸化物でチタン酸リチウムを被覆したチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料を得る工程と、
を含むことを特徴とする、チタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記工程(A)において、前記チタン酸リチウム粉体が、噴霧造粒、固相合成法、ゾルゲル法または共沈法で得られる、ことを特徴とする、請求項5に記載のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記工程(A)において、前記チタンニオブ酸化物粉体が、ゾルゲル法、共沈法または水熱法で得られる、ことを特徴とする、請求項5に記載のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法。
【請求項8】
前記工程(A)において、前記チタンニオブ酸化物粉体がドープしたタングステン元素を含有する、ことを特徴とする、請求項5に記載のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法。
【請求項9】
前記工程(A)における前記チタン酸リチウム粉体と前記チタンニオブ酸化物粉体がそれぞれチタン酸リチウムの前駆体及びチタンニオブ酸化物の前駆体を500~1000℃下で1~10時間温度を維持して焼結した後得られることを特徴とする、請求項5に記載のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法。
【請求項10】
前記工程(A)において、前記チタン酸リチウム粉体:前記チタンニオブ酸化物粉体の重量比が5:5~9:1の間である、ことを特徴とする、請求項5乃至9のいずれかに記載のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料に関し、特に、チタン酸リチウムコアとチタンニオブ酸化物シェルを含む、コアシェル複合材料に関する。本発明はまたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法に関し、特に、噴霧造粒プロセスで造粒したチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池は、エネルギー密度が高いという利点があり、現在、モバイル電子製品のエネルギー貯蔵部品の主流となっている。電池の動作電圧や比容量を高めるための材料の選択や改良により、リチウム電池製品のエネルギー密度を高め、エネルギー貯蔵や電動車両に応用することができる。
【0003】
酸化物負極材料は、炭素材料に比べて構造が安定しており、急速充電に適している。中でもチタン酸リチウム(Li4Ti5O12, lithium titanate, LTO)負極材料は放電過程に「無歪み」という特性があり、長寿命で安全性が高いというメリットを有する。そのため、急速充電の高出力リチウム電池に応用することができる。チタン酸リチウムの充放電挙動は、リチウムの脱離時に誘導されるTi4+とTi3+の酸化還元反応によるものであるが、チタン酸リチウムの理論容量は175mAh/gに過ぎず、高エネルギー密度が要求される用途には適していない。
【0004】
チタンニオブ酸化物(TiNb2O7, titanium niobate, TNO)は別のチタン系負極材料であり、リチウム挿入時にTi4+/Ti3+、Nb5+/Nb4+、Nb4+/Nb3+の3組の酸化還元反応を発生できるため、その理論容量は387mAh/gに達する。また、チタン酸リチウムの作動電位は1.55V、チタンニオブ酸化物の作動電位は1.6V(vs.Li)であり、作動電位が近いことから、この2つの材料は複合材料として組み合わせることに非常に適している。しかしながら、チタンニオブ酸化物は導電性とイオン伝導性が低すぎるため、Cレートが低く、またチタンニオブ酸化物は製造コストが高いため、市場での競争力に劣る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12, lithium titanate, LTO)とチタンニオブ酸化物(TiNb2O7, titanium niobate, TNO)は負極材料の応用において、それぞれ利点と制限を有する。このため、チタン酸リチウムを主成分とし、部分的にチタンニオブ酸化物を取り入れて複合材料とする開発ができれば、高い単位質量当たりの容量とCレートを兼ね備えた新規的な負極材料を設計することができる。
【0006】
チタン酸リチウムとチタンニオブ酸化物の2種類の材料を含有するシステムにおいて、単純にチタン酸リチウムとチタンニオブ酸化物の2種類の材料ある割合で混合してリチウム電池の電極としただけの場合、チタン酸リチウムとチタンニオブ酸化物間の導電性の差異により、電子とリチウムイオンが導電性のより高い成分を優先的に選択して挿入を行うため、チタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物複合材料にその採長補短の目的を発揮させることができなくなる。チタン酸リチウムの低いエネルギー密度という欠点を改善するために、本発明はチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル(core-shell)複合材料を製作し、チタンニオブ酸化物の高エネルギー密度とチタン酸リチウムの高速充放電特性を利用して、エネルギー密度と出力を兼ね備えた新しい酸化物負極材料の製作に取り組んだものである。本発明の目的は、チタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的とその他の目的を達成するため、本発明のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料は、コアと、当該コアを被覆するシェルとを含み、
当該コアがチタン酸リチウムを含有し、
当該シェルがチタンニオブ酸化物を含有する。
【0008】
上述の複合材料のうち、チタン酸リチウム:チタンニオブ酸化物の重量比は5:5~9:1の間とすることができる。
【0009】
上述の複合材料のうち、チタン酸リチウム:チタンニオブ酸化物の重量比は7:3とすることができる。
【0010】
上述の目的及びその他目的を達成するため、本発明はチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法も提供する。本発明のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法は、
(A)チタン酸リチウム粉体とチタンニオブ酸化物粉体を混合する工程と、
(B)工程(A)で得られた混合物を噴霧造粒プロセスで造粒し、チタンニオブ酸化物でチタン酸リチウムを被覆したチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料を得る工程と、を含む。
【0011】
上述の製造方法のうち、当該工程(A)において、当該チタン酸リチウム粉体は、噴霧造粒、固相合成法、ゾルゲル法または共沈法で得ることができる。
【0012】
上述の製造方法のうち、当該工程(A)において、当該チタンニオブ酸化物粉体は、ゾルゲル法、共沈法または水熱法で得ることができる。
【0013】
上述の製造方法のうち、当該工程(A)において、当該チタンニオブ酸化物粉体は、ドープしたタングステン元素を含むことができる。
【0014】
上述の製造方法のうち、当該工程(A)におけるチタン酸リチウム粉体とチタンニオブ酸化物粉体は、それぞれチタン酸リチウムの前駆体とチタンニオブ酸化物の前駆体を500~1000℃下で1~10時間温度を維持して焼結した後得ることができる。
【0015】
上述の製造方法のうち、当該工程(A)において、チタン酸リチウム粉体:チタンニオブ酸化物粉体の重量比は、5:5~9:1の間とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料及びその製造方法は、特殊なコアシェル構造により、本発明のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料を応用した電池はより優れた充放電性質を具備することができ、当該電池の製造コストを減少することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の概略図である。
【
図2】実施例2のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法のフローチャートである。
【
図3】調製例1で得られたチタン酸リチウム粉体の走査電子顕微鏡画像である。
【
図4】調製例2-2のチタンニオブ酸化物粉体の透過型電子顕微鏡画像及び元素分析図である。
【
図5】調製例3-1のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の走査電子顕微鏡画像である。
【
図6】シェルが開口を有するチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の走査電子顕微鏡画像及び元素分析図である。
【
図7】調製例3-2のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の走査電子顕微鏡画像である。
【
図8】調製例3-3のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の走査電子顕微鏡画像である。
【
図9】調製例3-1のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料を応用した電池の充放電試験結果である。
【
図10】従来のブレンドしたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物材料の電池の充放電試験結果である。
【
図11】調製例3-1のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料、比較試験例1に記載された従来のブレンドしたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物材料及び調製例1で得られたチタン酸リチウム粉体等の異なる材料を含有する電池の電気特性試験結果である。
【
図12】従来のブレンドしたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物材料を電池に応用した場合の概略図である。
【
図13】調製例3-1のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料を電池に応用した場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、特定の具体的な実施例を挙げて本発明の実施方法を説明する。この技術分野を熟知した者であれば本明細書に開示された内容から本発明のその他利点と効果を理解できるであろう。本発明はその他の異なる具体的な実施例により施行または応用することもでき、本明細書中の各細部も異なる観点と応用に基づいて、本発明の要旨を逸脱することなく、各種の修飾及び変更が可能である。
【0019】
文中に別途説明がない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される単数形式の「一」及び「当該」は複数の含意を含む。
【0020】
文中に別途説明がない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される用語「または」は、「及び/または」の含意を含む。
【実施例0021】
(チタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料)
図1に示すように、実施例1のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料10は、チタン酸リチウムを含有するコア11と、当該コアを被覆し、かつチタンニオブ酸化物を含有するシェル12を含む。
【0022】
実施例1におけるチタン酸リチウムの化学式は、(Li4Ti5O12)であり、チタンニオブ酸化物の化学式は(TiNb2O7)である。
【0023】
実施例1におけるチタン酸リチウム:チタンニオブ酸化物の重量比は7:3であるが、本発明はこれに限定されず、発明の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば実際の必要に応じてその重量比を調整することができ、例えば、当該重量比は5:5~9:1の間とすることができる。
【0024】
別の一実施方式において、実施例1のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料10はさらにドープしたタングステン元素を含有することができる。
【実施例0025】
(チタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法)
図2に示すように、実施例2のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法は、(A)チタン酸リチウム粉体とチタンニオブ酸化物粉体を混合する工程S1と、(B)工程(A)で得られた混合物を噴霧造粒プロセスで造粒し、チタンニオブ酸化物でチタン酸リチウムを被覆したチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料を得る工程S2と、を含む。
【0026】
当該工程(A)において、当該チタン酸リチウム粉体の製造方法は特に限定されず、例えば、当該チタン酸リチウム粉体は、噴霧造粒、固相合成法、ゾルゲル法または共沈法で得ることができる。
【0027】
当該工程(A)において、当該チタンニオブ酸化物粉体の製造方法は特に限定されず、例えば、当該チタン酸リチウム粉体はゾルゲル法、共沈法または水熱法で得ることができる。
【0028】
当該工程(A)において、当該チタンニオブ酸化物粉体は選択的にドープしたタングステン元素を含有することができる。
【0029】
当該工程(A)において、チタン酸リチウム粉体とチタンニオブ酸化物粉体は好ましくは、それぞれチタン酸リチウムの前駆体とチタンニオブ酸化物の前駆体を500~1000℃下で1~10時間温度を維持して焼結した後に得られるが、本発明はこれに限定されない。
【0030】
当該工程(A)において、チタン酸リチウム粉体:チタンニオブ酸化物粉体の重量比は5:5~9:1の間とすることができるが、本発明はこれに限定されず、発明の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば実際の必要に応じてその重量比を調整することができる。
【0031】
実施例2のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法は、以下の調製例により実施することができるが、本発明はこれに限定されない。
【0032】
調製例1:(チタン酸リチウムの製造方法)
411.34gの二酸化チタン(TiO2)、155.2gの炭酸リチウム(Li2CO3)、11.34gの酢酸マグネシウム四水和物(Mg(CH3COO)2・4H2O)、24.33gの酢酸クロム(Cr(CH3COO)3・nH2O)、14.91gのリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)と60mlの10%ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol, PVA)水溶液を1360mlの脱イオン水に配置し、研磨分散を経た後、噴霧造粒プロセスによりチタン酸リチウム(Li4Ti5O12, lithium titanate, LTO)の前駆体を製作し、さらに800℃の窒素ガス雰囲気下で2時間温度を維持する焼結を経て、スピネル(spinel)型構造を備えた急速充電型チタン酸リチウム粉体を得ることができる。発明の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、状況に応じて調製例1の焼結温度と温度維持時間を調整することができ、例えば、好ましい焼結温度は500~1000℃の間であり、好ましい温度維持時間は1~10時間の間である。
【0033】
調製例1で得られたチタン酸リチウム粉体の走査電子顕微鏡画像を
図3に示す。
【0034】
調製例2-1:(タングステンドープを経ていないチタンニオブ酸化物粉体の製造方法)
五塩化ニオブ(NbCl5)とオルトチタン酸テトライソプロピル(Ti[OCH(CH3)2]4)をエタノールに溶解させた後、180℃の温度下で水熱反応を1時間行い、得られた生成物がエタノール及び脱イオン水の洗浄と乾燥を経た後、得られる粉体が即ちチタンニオブ酸化物(TiNb2O7, titanium niobate, TNO)の前駆体であり、さらに当該チタンニオブ酸化物の前駆体を800℃下で2時間温度を維持して焼結を行い、単斜晶系(monoclinic)構造を有するチタンニオブ酸化物粉体を得ることができる。発明の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、状況に応じて調製例2-1の焼結温度と温度維持時間を調整することができ、例えば、好ましい焼結温度は500~1000℃の間であり、好ましい温度維持時間は1~10時間の間である。
調製例2-2:(タングステンドープを経たチタンニオブ酸化物粉体の製造方法)
五塩化ニオブ(NbCl5)とオルトチタン酸テトライソプロピル(Ti[OCH(CH3)2]4)をエタノールに溶解させた後、アンモニア水中に溶解させたタングステン酸(H2WO4)を上述の溶液に加え、その後180℃の温度下で水熱反応を1時間行い、得られた生成物がエタノール及び脱イオン水の洗浄と乾燥を経た後、得られる粉体が即ちチタンニオブ酸化物(TiNb2O7, titanium niobate, TNO)の前駆体であり、さらに当該チタンニオブ酸化物の前駆体を800℃下で2時間温度を維持して焼結を行い、単斜晶系(monoclinic)構造を有するチタンニオブ酸化物粉体を得ることができる。発明の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、状況に応じて調製例2-2の焼結温度と温度維持時間を調整することができ、例えば、好ましい焼結温度は500~1000℃の間であり、好ましい温度維持時間は1~10時間の間である。
【0035】
調製例2-2の800℃下で焼結して得られたチタンニオブ酸化物粉体の透過型電子顕微鏡画像及び元素分析図を
図4に示す。
図4の左側が調製例2-2のチタンニオブ酸化物粉体の透過型電子顕微鏡画像であり、右側左上がチタン(Ti)元素の分布図、右側右上がニオブ(Nb)元素の分布図、右側左下が酸素(O)元素の分布図である。
図4から分かるように、
図3と比較して、調製例2-2の800℃下で焼結して得られたチタンニオブ酸化物粉体の粒径は調製例1で得られたチタン酸リチウム粉体より小さく、かつ右下隅の元素分布分析図から分かるように、チタン、ニオブ、酸素等の元素はいずれも調製例2-2で得られたチタンニオブ酸化物粉体中に分布しており、かつタングステン元素が調製例2-2で得られたチタンニオブ酸化物粉体中に均一にドープされている。
【0036】
調製例3-1:(タングステンドープを経ていないチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法、チタン酸リチウム:チタンニオブ酸化物の重量比7:3)
焼結を経た製造例1で得られたチタン酸リチウム粉体と調製例2-1で得られたチタンニオブ酸化物粉体を7:3の重量比(本発明はこれに限定されず、発明の属する技術分野で通常の知識を有する者は必要に応じて両者の混合割合を変更することができる)で混合した後、噴霧造粒によりチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料を製作することができる。
【0037】
調製例3-1で得られたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の走査電子顕微鏡画像を
図5に示す。
図3と照合すると分かるように、チタン酸リチウム粉体飲みを含有する
図3と比較して、
図5の粒径がより小さいチタンニオブ酸化物粉体はシェルを形成しており、かつチタンニオブ酸化物粉体により形成されるシェルが、より大きな粒径のチタン酸リチウム粉体により形成されるコアを均一に被覆している。
調製例3-1で得られたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料がチタン酸リチウム粉体で形成されたコアと、チタンニオブ酸化物粉体で形成されたシェルを含むことを実証するため、シェルが開口を有するチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料で元素分析を実施した。その結果を
図6に示す。
図6の左側上方がシェルが開口を有するチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の走査電子顕微鏡画像であり、左側左下がニオブ(Nb)元素の分布図、左側右下がチタン(Ti)元素の分布図、右側上方が開口部分を拡大した走査電子顕微鏡画像、右側下方が右側上方の開口部分を拡大した走査電子顕微鏡画像中の線で実施したニオブ元素、チタン元素の距離に対する信号強度の分析図である。
図6から分かるように、その他部分と比較して、開口箇所のニオブ元素の分布量は顕著に低下しており、かつチタン元素の分布量が顕著に上昇しているため、調製例3-1で得られたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料のコアはチタン含有量が比較的高いチタン酸リチウムで構成され、そのシェルはニオブ元素を含有するチタンニオブ酸化物で構成されていることを実証することができる。
【0038】
調製例3-2:(タングステンドープを経ていないチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法、チタン酸リチウム:チタンニオブ酸化物の重量比9:1)
調製例3-2は調製例3-1とほぼ同じであり、調製例3-2は焼結を経た製造例1で得られたチタン酸リチウム粉体と調製例2-1で得られたチタンニオブ酸化物粉体を9:1の割合で混合した後、噴霧造粒を実施していることのみが異なる。
【0039】
調製例3-2で得られたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の走査電子顕微鏡画像を
図7に示す。
図3と照合すると分かるように、チタン酸リチウム粉体飲みを含有する
図3と比較して、
図7の粒径がより小さいチタンニオブ酸化物粉体はシェルを形成しており、かつチタンニオブ酸化物粉体により形成されるシェルが、より大きな粒径のチタン酸リチウム粉体により形成されるコアを均一に被覆している。
【0040】
調製例3-3:(タングステンドープを経ていないチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法、チタン酸リチウム:チタンニオブ酸化物の重量比5:5)
調製例3-3は調製例3-1とほぼ同じであり、調製例3-3は焼結を経た製造例1で得られたチタン酸リチウム粉体と調製例2-1で得られたチタンニオブ酸化物粉体を5:5の割合で混合した後、噴霧造粒を実施していることのみが異なる。
調製例3-3で得られたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の走査電子顕微鏡画像を
図8に示す。
図3と照合すると分かるように、チタン酸リチウム粉体飲みを含有する
図3と比較して、
図8の粒径がより小さいチタンニオブ酸化物粉体はシェルを形成しており、かつチタンニオブ酸化物粉体により形成されるシェルが、より大きな粒径のチタン酸リチウム粉体により形成されるコアを均一に被覆している。
調製例3-4:(タングステンドープを経たチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法)
調製例3-4は調製例3-1とほぼ同じであり、調製例3-4は焼結を経た製造例1で得られたチタン酸リチウム粉体と調製例2-2得られたタングステンドープを経たチタンニオブ酸化物粉体を7:3の割合で混合した後、噴霧造粒を実施していることのみが異なる。
上述をまとめると、実施例2のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法において、チタン酸リチウム:チタンニオブ酸化物の重量比は特に限定されず、発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が実際の必要に応じて適宜調整することができる。このほか、タングステン元素のドープは必須ではなく、発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が実際の必要に応じてタングステン元素をドープするか否かを選択することができる。
(試験例1)
本発明のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料を電池に応用したとき、電池の充放電性能に対して生じる影響を理解するため、以下の方法で電池を製造し、それに対して充放電試験を実施した。
【0041】
まず、1.5gのポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride)を24.75gのN-メチルピロリドン(NMP)に加えて混合し、ポリフッ化ビニリデンが完全に溶解した後、12gの調製例3-1のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料(タングステンドープを経ておらず、チタン酸リチウム:チタンニオブ酸化物の重量比が7:3)、1.5gの導電性カーボンを順に加えて十分に混合した後、このペーストを120マイクロメートルのナイフで18マイクロメートルのアルミ箔上に塗布し、120℃のオーブンでベーキングを行い、電池極板の製造が完了する。そのうち活性物質:導電性カーボン:接着剤の重量比は80:10:10である。電池を組み立てる前に、まず極板を120℃の真空環境下で12時間ベーキングした後、極板をグローブボックス内に入れて、リチウム金属を対電極とし、電解液は1M LiPF6に炭酸エチレン(ethylene carbonate,EC)と炭酸ジエチル(diethyl carbonate,DEC)を組み合わせ、そのうち炭酸エチレンと炭酸ジエチルは1:1の体積比で混合し、リチウム金属、セパレータ、電解液、極板を通じてボタン型半電池の組み立てと後続の電気性能試験を行った。
【0042】
調製例3-1のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料を応用した電池の充放電試験結果を
図9に示す。
【0043】
(比較試験例1)
調製例3-1のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料が電池の充放電性能を改善する効果の対照とするため、別途上述の試験例1で述べた方法で電池を製造し、電気性能試験を行ったが、調製例3-1のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料を従来のブレンドしたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物材料で置換した。上述の従来のブレンドしたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物材料は、調製例1で得られたチタン酸リチウム粉体と調製例2-1で得られたチタンニオブ酸化物粉体を7:3の重量比で混合して得たものである。
【0044】
上述に基づき、試験例1と比較試験例1のチタン酸リチウム:チタンニオブ酸化物の重量比は同様に7:3であり、かつ同様にタングステンドープを経ておらず、両者の違いはチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物材料がコアシェル構造を有するか否かのみである。
【0045】
従来のブレンドしたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物材料の電池の充放電試験結果を
図10に示す。
【0046】
図9と
図10を照合すると分かるように、従来のブレンドしたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物材料と比較して、本発明のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料はそれを応用した電池により優れた充放電性能を具備させることができ、これは本発明のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の特殊なコアシェル構造によるものである。
【0047】
(試験例2)
上述の試験例1で述べた方法に基づき、それぞれ同じ重量(12g)の製造例3-1のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料(タングステンドープを経ておらず、チタン酸リチウム:チタンニオブ酸化物の重量比が7:3)、比較試験例1で述べた従来のブレンドしたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物材料(タングステンドープを経ておらず、チタン酸リチウム:チタンニオブ酸化物の重量比が7:3)、調製例1で得られたチタン酸リチウム粉体を用い、それぞれ異なる材料を含有する3種類の個別の電池を製造して、電気性能試験を実施した。試験後放電速度対比容量でグラフを作成し、その結果を
図11に示す。
図11から分かるように、同じ放電速度下で、従来のブレンドしたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物材料及びチタン酸リチウム粉体と比較して、本発明のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料はそれを応用した電池により優れた充放電性能を具備させることができ、これは本発明のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の特殊なコアシェル構造によるものである。
図12から分かるように、従来のブレンドしたチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物材料20は、チタン酸リチウム粉体21とチタンニオブ酸化物粉体22を混合しただけであるため、チタン酸リチウム粉体21の間に電気的接触がまだあり、電池に応用したとき、導電性がより高いチタン酸リチウム粉体の間の経路に沿って電子が流動し、導電性を均一化させるため、その充放電特性を効果的に向上することができない。一方で、
図13から分かるように、本発明のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料30はコアシェル構造を備えており、チタン酸リチウム粉体31の外層をチタンニオブ酸化物粉体32で被覆することで、導電性がより高いチタン酸リチウム粉体の間の経路に沿って電子が流動することを回避することができ、電池に応用したとき、チタンニオブ酸化物粉体32の理論容量がより高いという特性を充分に発揮させ、その充放電特性を向上することができ、同時に、チタンニオブ酸化物粉体32の使用量を減少し、生産コストを抑えることができる。
上述の実施例は例示的に本発明の製法を説明したのみであり、本発明を限定するものではない。関連技術を熟知する者であれば本発明の要旨と範疇を逸脱せずに、上述の実施例に対して修飾と変更が可能であろう。このため、本発明の権利保護範囲は、後述の実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりである。
前記工程(A)における前記チタン酸リチウム粉体と前記チタンニオブ酸化物粉体がそれぞれチタン酸リチウムの前駆体及びチタンニオブ酸化物の前駆体を500~1000℃下で1~10時間温度を維持して焼結した後得られることを特徴とする、請求項2に記載のチタン酸リチウム/チタンニオブ酸化物コアシェル複合材料の製造方法。