(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022173997
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】アルコール類の製造方法、及び、組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 29/147 20060101AFI20221115BHJP
C07C 31/38 20060101ALI20221115BHJP
C07C 49/17 20060101ALI20221115BHJP
C07C 45/61 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C07C29/147
C07C31/38
C07C49/17 E
C07C45/61
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065236
(22)【出願日】2022-04-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2021079979
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠希
(72)【発明者】
【氏名】尾形 明俊
(72)【発明者】
【氏名】吉山 麻子
(72)【発明者】
【氏名】松浦 誠
(72)【発明者】
【氏名】黒木 克親
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC41
4H006BB14
4H006BB31
4H006BC10
4H006BE23
4H006FE11
4H006FE71
4H006FE74
4H006FG26
4H006FG28
4H006FG29
(57)【要約】
【課題】溶媒使用量を低減でき、環境負荷やコストを低減でき、高濃度、高収率でアルコール類を得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物(1)と水素化金属化合物とを、水及び炭素数3以上のプロトン性溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒の存在下かつ、化合物(1)の濃度が1.0mmol/g(化合物(1)物質量/全溶媒量)以上である条件下で反応させて、一般式(2)で表される化合物(2)を得る工程(1)を含むことを特徴とするアルコール類の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
(式中、A
1~D
1はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(A):
【化2】
(式中、R
1は一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は、水素である。)で表される置換基、又は、下記一般式(B):
【化3】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
2は一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は、水素である。)で表される置換基である。但し、A
1~D
1の全てが一般式(A)で表される置換基ではない。また、A
1~D
1のうち少なくとも一つは一般式(A)又は(B)で表される置換基であり、A
1~D
1のうち1~3個が一般式(A)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素であって、A
1~D
1のうち2又は3個が一般式(A)又は(B)で表される置換基である場合はR
1及びR
2は、それぞれ任意の位置の一つ以上の炭素において互いに結合していてもよい)で表される化合物(1)と
水素化金属化合物とを、
水及び炭素数3以上のプロトン性溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒の存在下かつ、化合物(1)の濃度が1.0mmol/g(化合物(1)物質量/全溶媒量)以上である条件下で反応させて、下記一般式(2):
【化4】
(式中、A
2~D
2はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(C):
【化5】
で表される置換基、又は、下記一般式(D):
【化6】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基である。)で表される置換基である。但し、A
2~D
2の全てが一般式(C)で表される置換基ではない。また、A
2~D
2のうち少なくとも一つは一般式(C)又は(D)で表される置換基であり、A
2~D
2のうち1~3個が一般式(C)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素である)で表される化合物(2)を得る工程(1)を含むことを特徴とするアルコール類の製造方法。
【請求項2】
炭素数3以上のプロトン性溶媒が、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、sec-ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、及び、ネオペンチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
水素化金属化合物が、水素化ホウ素化合物、及び、水素化アルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
水素化金属化合物が、水素化ホウ素リチウム、水素化アミノホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化ホウ素ニッケル、及び、ジボランからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項5】
水素化金属化合物が、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、及び、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項6】
水素化金属化合物の使用量が、前記化合物(1)中のエステル基に対して1.2当量以下である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項7】
X、Y、及び、Zがそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよい炭素数1~5の炭化水素基である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項8】
nが0~3であり、X、Y、及び、Zがそれぞれ独立して水素又はフッ素である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項9】
R1又はR2が、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよく、その構造中にエーテル結合を含んでもよい、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、sec-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基、又は、ヘプチル基である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項10】
更に、工程(1)で得られた前記化合物(2)を含む反応液に酸を加えてpH3以下にしてから抽出操作を行い、得られた抽出液を水洗して金属化合物を除く精製工程(2)、又は、工程(1)で得られた前記化合物(2)を含む反応液に酸を加えてpH3以下にしてから下層に沈降した溶液を水洗して金属化合物を除く精製工程(3)を含む請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項11】
一般式(2):
【化7】
(式中、A
2~D
2はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(C):
【化8】
で表される置換基、又は、下記一般式(D):
【化9】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基である。)で表される置換基である。但し、A
2~D
2の全てが一般式(C)で表される置換基ではない。また、A
2~D
2のうち少なくとも一つは一般式(C)又は(D)で表される置換基であり、A
2~D
2のうち1~3個が一般式(C)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素である)で表される化合物(2)と、
金属化合物と、
下記一般式(3):
【化10】
(式中、A
3~D
3はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(E):
【化11】
(式中、R
1は一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は、水素である。)で表される置換基、又は、下記一般式(F):
【化12】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
2は一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は、水素である。)で表される置換基である。但し、A
3~D
3の全てが一般式(E)で表される置換基ではない。また、A
3~D
3のうち少なくとも一つは一般式(E)又は(F)で表される置換基であり、A
3~D
3のうち1~3個が一般式(E)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素であって、A
3~D
3のうち2又は3個が一般式(E)又は(F)で表される置換基である場合はR
1及びR
2は、それぞれ任意の位置の一つ以上の炭素において互いに結合していてもよい)で表される化合物(3)、及び、下記一般式(4):
【化13】
(式中、A
4~D
4はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(G):
【化14】
で表される置換基、又は、下記一般式(H):
【化15】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基である。)で表される置換基である。但し、A
4~D
4の全てが一般式(G)で表される置換基ではない。また、A
4~D
4のうち少なくとも一つは一般式(G)又は(H)で表される置換基であり、A
4~D
4のうち1~3個が一般式(G)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素である)で表される化合物(4)からなる群より選択される少なくとも1種と、を含むことを特徴とする組成物。
【請求項12】
金属化合物を構成する金属元素の含有量が化合物(2)に対して10000ppm以下である請求項11記載の組成物。
【請求項13】
金属化合物を構成する金属元素の含有量が化合物(2)に対して3000ppm以下である請求項11又は12記載の組成物。
【請求項14】
化合物(3)の含有量が化合物(2)に対して10000ppm以下である請求項11又は12記載の組成物。
【請求項15】
化合物(3)の含有量が化合物(2)に対して1000ppm以下である請求項11又は12記載の組成物。
【請求項16】
化合物(3)の含有量が化合物(2)に対して300ppm以下である請求項11又は12記載の組成物。
【請求項17】
化合物(4)の含有量が化合物(2)に対して10000ppm以下である請求項11又は12記載の組成物。
【請求項18】
化合物(4)の含有量が化合物(2)に対して1000ppm以下である請求項11又は12記載の組成物。
【請求項19】
化合物(4)の含有量が化合物(2)に対して300ppm以下である請求項11又は12記載の組成物。
【請求項20】
一般式(2):
【化16】
(式中、A
2~D
2はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(C):
【化17】
で表される置換基、又は、下記一般式(D):
【化18】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基である。)で表される置換基である。但し、A
2~D
2の全てが一般式(C)で表される置換基ではない。また、A
2~D
2のうち少なくとも一つは一般式(C)又は(D)で表される置換基であり、A
2~D
2のうち1~3個が一般式(C)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素である)で表される化合物(2)と水を含む組成物であって、水の含有量が化合物(2)に対して1500ppm以下であることを特徴とする組成物。
【請求項21】
水の含有量が化合物(2)に対して500ppm以下である請求項20記載の組成物。
【請求項22】
水の含有量が化合物(2)に対して100ppm以下である請求項20又は21記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示には、アルコール類の製造方法に関する。本開示はまた、アルコール類を含む組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール類の製造方法としては、水素化ホウ素化合物や水素化アルミニウム化合物等の水素化金属化合物を用いたエステルの還元による合成が知られている(例えば、特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-20340号公報
【特許文献2】国際公開第2007/058852号
【特許文献3】特開2014-167596号公報
【特許文献4】米国特許第5969074号明細書
【特許文献5】特開2018-90492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、溶媒使用量を低減でき、環境負荷やコストを低減でき、高濃度、高収率でアルコール類を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示(1)は、一般式(1):
【化1】
(式中、A
1~D
1はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(A):
【化2】
(式中、R
1は一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は、水素である。)で表される置換基、又は、下記一般式(B):
【化3】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
2は一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は、水素である。)で表される置換基である。但し、A
1~D
1の全てが一般式(A)で表される置換基ではない。また、A
1~D
1のうち少なくとも一つは一般式(A)又は(B)で表される置換基であり、A
1~D
1のうち1~3個が一般式(A)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素であって、A
1~D
1のうち2又は3個が一般式(A)又は(B)で表される置換基である場合はR
1及びR
2は、それぞれ任意の位置の一つ以上の炭素において互いに結合していてもよい)で表される化合物(1)と
水素化金属化合物とを、
水及び炭素数3以上のプロトン性溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒の存在下かつ、化合物(1)の濃度が1.0mmol/g(化合物(1)物質量/全溶媒量)以上である条件下で反応させて、下記一般式(2):
【化4】
(式中、A
2~D
2はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(C):
【化5】
で表される置換基、又は、下記一般式(D):
【化6】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基である。)で表される置換基である。但し、A
2~D
2の全てが一般式(C)で表される置換基ではない。また、A
2~D
2のうち少なくとも一つは一般式(C)又は(D)で表される置換基であり、A
2~D
2のうち1~3個が一般式(C)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素である)で表される化合物(2)を得る工程(1)を含むことを特徴とするアルコール類の製造方法を提供する。
【0006】
本開示(2)は、上記炭素数3以上のプロトン性溶媒は、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、sec-ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、及び、ネオペンチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種である本開示(1)の製造方法である。
【0007】
本開示(3)は、上記水素化金属化合物は、水素化ホウ素化合物、及び、水素化アルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種である本開示(1)又は(2)の製造方法である。本開示(4)は、上記水素化金属化合物が、水素化ホウ素リチウム、水素化アミノホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化ホウ素ニッケル、及び、ジボランからなる群より選択される少なくとも1種である本開示(1)~(3)のいずれかとの任意の組み合わせの製造方法である。本開示(5)は、上記水素化金属化合物が、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、及び、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である本開示(1)~(4)のいずれかとの任意の組み合わせの製造方法である。
【0008】
本開示(6)は、上記水素化金属化合物の使用量は、上記化合物(1)中のエステル基に対して1.2当量以下である本開示(1)~(5)のいずれかとの任意の組み合わせの製造方法である。
【0009】
本開示(7)は、X、Y、及び、Zがそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよい炭素数1~5の炭化水素基である本開示(1)~(6)のいずれかとの任意の組み合わせの製造方法である。
【0010】
本開示(8)は、nが0~3であり、X、Y、及び、Zがそれぞれ独立して水素又はフッ素である本開示(1)~(7)のいずれかとの任意の組み合わせの製造方法である。
【0011】
本開示(9)は、R1又はR2が、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよく、その構造中にエーテル結合を含んでもよい、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、sec-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基、又は、ヘプチル基である本開示(1)~(8)のいずれかとの任意の組み合わせの製造方法である。
【0012】
本開示(10)は、更に、工程(1)で得られた上記化合物(2)を含む反応液に酸を加えてpH3以下にしてから抽出操作を行い、得られた抽出液を水洗して金属化合物を除く精製工程(2)、又は、工程(1)で得られた上記化合物(2)を含む反応液に酸を加えてpH3以下にしてから下層に沈降した溶液を水洗して金属化合物を除く精製工程(3)を含む本開示(1)~(9)のいずれかとの任意の組み合わせの製造方法である。
【0013】
本開示(11)は、一般式(2):
【化7】
(式中、A
2~D
2はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(C):
【化8】
で表される置換基、又は、下記一般式(D):
【化9】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基である。)で表される置換基である。但し、A
2~D
2の全てが一般式(C)で表される置換基ではない。また、A
2~D
2のうち少なくとも一つは一般式(C)又は(D)で表される置換基であり、A
2~D
2のうち1~3個が一般式(C)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素である)で表される化合物(2)と、
金属化合物と、
下記一般式(3):
【化10】
(式中、A
3~D
3はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(E):
【化11】
(式中、R
1は一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は、水素である。)で表される置換基、又は、下記一般式(F):
【化12】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
2は一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は、水素である。)で表される置換基である。但し、A
3~D
3の全てが一般式(E)で表される置換基ではない。また、A
3~D
3のうち少なくとも一つは一般式(E)又は(F)で表される置換基であり、A
3~D
3のうち1~3個が一般式(E)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素であって、A
3~D
3のうち2又は3個が一般式(E)又は(F)で表される置換基である場合はR
1及びR
2は、それぞれ任意の位置の一つ以上の炭素において互いに結合していてもよい)で表される化合物(3)、及び、下記一般式(4):
【化13】
(式中、A
4~D
4はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(G):
【化14】
で表される置換基、又は、下記一般式(H):
【化15】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基である。)で表される置換基である。但し、A
4~D
4の全てが一般式(G)で表される置換基ではない。また、A
4~D
4のうち少なくとも一つは一般式(G)又は(H)で表される置換基であり、A
4~D
4のうち1~3個が一般式(G)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素である)で表される化合物(4)からなる群より選択される少なくとも1種と、を含むことを特徴とする組成物を提供する。
【0014】
本開示(12)は、上記金属化合物を構成する金属元素の含有量が上記化合物(2)に対して10000ppm以下である本開示(11)の組成物である。本開示(13)は、金属化合物を構成する金属元素の含有量が上記化合物(2)に対して3000ppm以下である本開示(11)又は(12)の組成物である。
【0015】
本開示(14)は、上記化合物(3)の含有量が上記化合物(2)に対して10000ppm以下である本開示(11)~(13)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。本開示(15)は、上記化合物(3)の含有量が上記化合物(2)に対して1000ppm以下である本開示(11)~(14)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。本開示(16)は、上記化合物(3)の含有量が上記化合物(2)に対して300ppm以下である本開示(11)~(15)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。
【0016】
本開示(17)は、上記化合物(4)の含有量が上記化合物(2)に対して10000ppm以下である本開示(11)~(16)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。本開示(18)は、上記化合物(4)の含有量が上記化合物(2)に対して1000ppm以下である本開示(11)~(17)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。本開示(19)は、上記化合物(4)の含有量が上記化合物(2)に対して300ppm以下である本開示(11)~(18)のいずれかとの任意の組み合わせの組成物である。
【0017】
本開示(20)は、一般式(2):
【化16】
(式中、A
2~D
2はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(C):
【化17】
で表される置換基、又は、下記一般式(D):
【化18】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基である。)で表される置換基である。但し、A
2~D
2の全てが一般式(C)で表される置換基ではない。また、A
2~D
2のうち少なくとも一つは一般式(C)又は(D)で表される置換基であり、A
2~D
2のうち1~3個が一般式(C)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素である)で表される化合物(2)と水を含む組成物であって、水の含有量が化合物(2)に対して1500ppm以下であることを特徴とする組成物を提供する。
【0018】
本開示(21)は、上記水の含有量が上記化合物(2)に対して500ppm以下である本開示(20)の組成物である。本開示(22)は、上記水の含有量が上記化合物(2)に対して100ppm以下である本開示(20)又は(21)の組成物である。
【発明の効果】
【0019】
本開示の製造方法で得られるアルコール類を医農薬や高機能材料として使用する際には機能影響が生じることがないように不純物を減らすことも求められているため、上記構成を有することにより、高純度で溶媒使用量を低減でき、環境負荷やコストを低減でき、高濃度、高収率でアルコール類を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
従来、エステルからの還元によってアルコール類を製造する際には、反応暴走を抑制するために原料を希釈した条件で実施する必要があったため、低濃度でしかアルコール類を得ることができなかった。また反応中間体であるヘミアセタールやアルデヒドとの混合物が得られ、分離が困難になるという課題があった。本発明者等が鋭意検討したところ、溶媒として嵩高いプロトン性溶媒又は水及びその混合溶媒を用い、安全性が高く工業的にも利用可能な水素化金属化合物を少量で使用することで、短い反応時間により、原料を希釈することなく、高濃度、高収率でアルコール類を合成できることを見出し、本開示の製造方法の開発に至った。
以下に、本開示のアルコール類の製造方法を詳細に説明する。
【0021】
本開示のアルコール類の製造方法は、一般式(1)で表される化合物(1)と水素化金属化合物とを、水及び炭素数3以上のプロトン性溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒の存在下かつ、化合物(1)の濃度が1.0mmol/g(化合物(1)物質量/全溶媒量)以上である条件下で反応させて、下記一般式(2)で表される化合物(2)を得る工程(1)を含む。
【0022】
上記化合物(1)は、一般式(1):
【化19】
(式中、A
1~D
1はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(A):
【化20】
(式中、R
1は一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は、水素である。)で表される置換基、又は、下記一般式(B):
【化21】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
2は一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は、水素である。)で表される置換基である。但し、A
1~D
1の全てが一般式(A)で表される置換基ではない。また、A
1~D
1のうち少なくとも一つは一般式(A)又は(B)で表される置換基であり、A
1~D
1のうち1~3個が一般式(A)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素であって、A
1~D
1のうち2又は3個が一般式(A)又は(B)で表される置換基である場合はR
1及びR
2は、それぞれ任意の位置の一つ以上の炭素において互いに結合していてもよい)で表される。
【0023】
上記環状構造としては、ベンゼン環等の芳香族環やシクロヘキサン等の非芳香族環等が挙げられる。上記多重結合としては、二重結合又は三重結合が挙げられる。上記一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基としては、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよく、その構造中にカルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、sec-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基及び、ヘプチル基等が挙げられる。
【0024】
nは0~5であり、より高濃度、高収率でアルコール類を得ることができることから、0~3が好ましい。
【0025】
より高濃度、高収率でアルコール類を得ることができることから、X、Y、及び、Zは、それぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよい炭素数1~5の炭化水素基であることが好ましく、水素、又は、フッ素であることがより好ましい。
【0026】
より高濃度、高収率でアルコール類を得ることができることから、nは0~3であり、X、Y、及び、Zはそれぞれ独立して水素、又は、フッ素であることが好ましい。
【0027】
R1又はR2は、より高濃度、高収率でアルコール類を得ることができることから、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよく、その構造中にエーテル結合を含んでもよい、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、sec-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基、又は、ヘプチル基であることが好ましく、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよく、その構造中にエーテル結合を含んでもよい、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、2-メチルペンチル基、又は、ヘプチル基がより好ましく、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよく、その構造中にエーテル結合を含んでもよい、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、又は、2-メチルペンチル基が更に好ましい。
【0028】
上記一般式(A)で表される置換基は、より高濃度、高収率でアルコール類を得ることができることから、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n-ペントキシカルボニル基、sec-ペントキシカルボニル基、イソペントキシカルボニル基、ネオペントキシカルボニル基、ヘキトキシカルボニル基、ヘプトキシカルボニル基、2-メトキシエトキシカルボニル基、2-(2-メトキシエトキシ)エトキシカルボニル基、2-プロポキシプロポキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロ-n-プロポキシカルボニル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロポキシカルボニル基、パーフルオロイソプロポキシカルボニル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシカルボニル基、パーフルオロ-2-エトキシプロポキシカルボニル基、パーフルオロ-2-プロポキシプロポキシカルボニル基、パーフルオロ-2-ブトキシプロポキシカルボニル基、パーフルオロ-2-エトキシブトキシカルボニル基、パーフルオロ-2-プロポキシブトキシカルボニル基、又は、パーフルオロ-2-ブトキシブトキシカルボニル基が好ましく、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、2-メトキシエトキシカルボニル基、2-プロポキシプロポキシカルボニル基、2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロポキシカルボニル基、パーフルオロ-2-エトキシプロポキシカルボニル基、又は、パーフルオロ-2-プロポキシプロポキシカルボニル基がより好ましい。
【0029】
上記一般式(B)で表される置換基は、より高濃度、高収率でアルコール類を得ることができることから、
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
が好ましい。
【0030】
上記A1~D1の全てが、上記一般式(A)で表される置換基ではない。また、上記A1~D1のうち少なくとも一つは、上記一般式(A)又は(B)で表される置換基であり、上記A1~D1のうち1~3個が、上記一般式(A)で表される置換基である場合は、残りの置換基のうち一つ以上がフッ素であって、上記A1~D1のうち2又は3個が、上記一般式(A)又は(B)で表される置換基である場合は、上記R1及びR2はそれぞれ任意の位置の一つ以上の炭素において互いに結合していてもよい。
【0031】
上記A1~D1のうち1~2個が、上記一般式(A)で表される置換基であり、上記A1~D1のうち1~2個が、フッ素であることが好ましい。上記A1~D1の好適な組み合わせとしては、上記A1~D1のうち1個が上記一般式(A)で表される置換基であり、上記A1~D1のうち1個が上記一般式(B)で表される置換基であり、残りの2つの置換基がフッ素である組み合わせ、上記A1~D1のうち2個が上記一般式(A)で表される置換基であり、上記A1~D1のうち1個がフッ素であり、残りの1つの置換基が水素である組み合わせ、又は、上記A1~D1のうち1個が上記一般式(A)で表される置換基であり、上記A1~D1のうち1個がフッ素であり、残りの2つの置換基が一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基である組み合わせが好ましい。
【0032】
上記化合物(1)としては、具体的には、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン酸メチル、トリフルオロ酢酸-2,2,2-トリフルオロエチル、2-フルオロ-3-オキソブタン酸-2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-トリフルオロメチルプロパン酸メチル、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2-トリフルオロアリロキシ)プロパン酸メチル、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2-テトラフルオロ-2-(1,2,2-トリフルオロビニロキシ)エトキシ)プロパン酸メチル、フルオロマロン酸ジメチル、フルオロマロン酸ジエチル、テトラフルオロコハク酸ジメチル、テトラフルオロコハク酸ジエチル、ヘキサフルオログルタル酸ジメチル、ヘキサフルオログルタル酸ジエチル、オクタフルオロアジピン酸ジメチル、オクタフルオロアジピン酸ジエチル等が挙げられる。
【0033】
上記水素化金属化合物は、より高濃度、高収率でアルコール類を得ることができることから、水素化ホウ素化合物、及び、水素化アルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、水素化ホウ素リチウム、水素化アミノホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化ホウ素ニッケル、及び、ジボランからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、及び、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。
【0034】
より高濃度、高収率でアルコール類を得ることができることから、上記水素化金属化合物の使用量は、化合物(1)中のエステル基に対して2.5当量未満であることが好ましく、1.5当量以下であることがより好ましく、1.2当量以下であることが更に好ましい。
【0035】
工程(1)は、水及び炭素数3以上のプロトン性溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒の存在下かつ、化合物(1)の濃度が1.0mmol/g(化合物(1)物質量/全溶媒量)以上である条件下で行われる。
【0036】
上記プロトン性溶媒は、炭素数が3以上である。上記プロトン性溶媒の炭素数が上記範囲内であることにより、アルコール類を製造する際に、原料が高濃度であっても反応暴走を抑制することができる。炭素数は15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることが更に好ましい。また、より高濃度、高収率でアルコール類を得ることができることから、上記プロトン性溶媒は、2級又は3級アルコールが好ましい。
上記プロトン性溶媒としては、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、sec-ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、及び、ネオペンチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、より高濃度、高収率でアルコール類を得ることができることから、イソプロピルアルコール、及び、tert-ブチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0037】
上記工程(1)においては、水や上記炭素数3以上のプロトン性溶媒以外に、他の溶媒を含んでいてもよい。上記他の溶媒としては、ジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ヘプタフルオロメチルエーテル、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル等の直鎖状モノエーテル類、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル類、フッ素化オイル類等が挙げられる。
【0038】
上記化合物(1)の濃度は、全溶媒量に対して、1.0mmol/g以上である。ここで、全溶媒量とは、水、炭素数が3以上のプロトン性溶媒、及び、他の溶媒の質量の合計である。上記化合物(1)の濃度が、上記範囲内であることにより、溶媒使用量を低減でき、環境負荷やコストを低減でき、高濃度、高収率でアルコール類を得ることができる。より高濃度、高収率でアルコール類を得ることができることから、上記化合物(1)の濃度は、全溶媒量に対して、1.2mmol/g以上であることが好ましく、1.4mmol/g以上であることがより好ましい。また、反応液の高粘度化を防ぐために、10mmol/g以下であることが好ましく、5mmol/g以下であることがより好ましい。
【0039】
上記工程(1)において、全溶媒量の80質量%以上が上記水及び炭素数が3以上のプロトン性溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒であることが好ましく、90質量%以上が上記水及び炭素数が3以上のプロトン性溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒であることがより好ましく、95質量%以上が上記水及び炭素数が3以上のプロトン性溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒であることが更に好ましい。また、全溶媒量の80質量%以上が上記炭素数が3以上のプロトン性溶媒であることが好ましく、90質量%以上が上記炭素数が3以上のプロトン性溶媒であることがより好ましく、95質量%以上が上記炭素数が3以上のプロトン性溶媒であることが更に好ましい。
【0040】
上記化合物(2)は、下記一般式(2):
【化29】
(式中、A
2~D
2はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(C):
【化30】
で表される置換基、又は、下記一般式(D):
【化31】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基である。)で表される置換基である。但し、A
2~D
2の全てが一般式(C)で表される置換基ではない。また、A
2~D
2のうち少なくとも一つは一般式(C)又は(D)で表される置換基であり、A
2~D
2のうち1~3個が一般式(C)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素である)で表される。
【0041】
n、X、Y、及び、Zは、上記一般式(B)において説明したとおりである。
【0042】
上記一般式(D)で表される置換基は、
【化32】
が好ましい。
【0043】
上記A2~D2の全てが、上記一般式(C)で表される置換基ではない。また、上記A2~D2のうち少なくとも一つは、上記一般式(C)又は(D)で表される置換基であり、上記A2~D2のうち1~3個が一般式(C)で表される置換基である場合は、残りの置換基のうち一つ以上がフッ素である。
【0044】
上記A2~D2のうち1~2個が、上記一般式(C)で表される置換基であり、上記A2~D2のうち1~2個が、フッ素であることが好ましい。上記A2~D2の好適な組み合わせとして、上記A2~D2のうち1個が上記一般式(C)で表される置換基であり、上記A2~D2のうち1個が上記一般式(D)で表される置換基であり、残りの2つの置換基がフッ素である組み合わせ、上記A2~D2のうち2個が上記一般式(C)で表される置換基であり、上記A2~D2のうち1個がフッ素であり、残りの1つの置換基が水素である組み合わせ、又は、上記A2~D2のうち1個が上記一般式(A)で表される置換基であり、上記A2~D2のうち1個がフッ素であり、残りの2つの置換基が一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基である組み合わせが好ましい。
【0045】
上記化合物(2)としては、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロエチル)プロパン-1-オール、2,2,2-トリフルオロエタノール、3-フルオロ-4-ヒドロキシブタン-2-オン、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2-トリフルオロアリロキシ)プロパン-1-オール、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2-テトラフルオロ-2-(1,2,2-トリフルオロビニロキシ)エトキシ)プロパン-1-オール、3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-1,2-ジオール、2-フルオロプロパン-1,3-ジオール、2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオール、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロペンタン-1,5-ジオール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン-1,6-ジオール等が挙げられる。
【0046】
上記工程(1)における温度は特に限定されないが、100℃以下であってもよく、85~0℃であることが好ましい。
【0047】
上記工程(1)に要する時間は特に限定されないが、通常、0.1~120分であり、15~90分であることが好ましい。
【0048】
本開示の製造方法は、更に、工程(1)で得られた上記化合物(2)を含む反応液に酸を加えてpH3以下にしてから抽出操作を行い、得られた抽出液を水洗して金属化合物を除く精製工程(2)、又は、工程(1)で得られた上記化合物(2)を含む反応液に酸を加えてpH3以下にしてから下層に沈降した溶液を水洗して金属化合物を除く精製工程(3)を含むことが好ましい。
【0049】
上記酸としては、塩酸、フッ酸、臭酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。
【0050】
上記金属化合物は、上記工程(1)において、上記水素化金属化合物が酸化されたものであり、ホウ素化合物及びアルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ホウ酸、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0051】
上記工程(2)及び(3)における温度は特に限定されないが、50℃以下であってもよく、30~0℃であることが好ましい。
【0052】
上記工程(2)及び(3)に要する時間は特に限定されないが、通常、0.1~120分であり、10~60分であることが好ましい。
【0053】
本開示の製造方法は、化合物(2)の収率が30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。上記収率は、化合物(2)の物質量/化合物(1)の物質量で算出する。
【0054】
本開示はまた、上記製造方法により得られる組成物を提供する。本開示はまた、上記化合物(2)と、上記金属化合物と、一般式(3)で表される化合物(3)、及び、一般式(4)で表される化合物(4)からなる群より選択される少なくとも1種と、を含むことを特徴とする組成物(以下「本開示の第1の組成物」ともいう)を提供する。本開示の第1の組成物は、上記製造方法により得ることができる。
【0055】
本開示の第1の組成物において、上記化合物(2)及び上記金属化合物は、上記製造方法において説明したとおりである。
【0056】
本開示の第1の組成物において、上記化合物(3)は、下記一般式(3):
【化33】
(式中、A
3~D
3はそれぞれ独立して、水素、フッ素、ヒドロキシ基、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(E):
【化34】
(式中、R
1は一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は、水素である。)で表される置換基、又は、下記一般式(F):
【化35】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
2は一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は、水素である。)で表される置換基である。但し、A
3~D
3の全てが一般式(E)で表される置換基ではない。また、A
3~D
3のうち少なくとも一つは一般式(E)又は(F)で表される置換基であり、A
3~D
3のうち1~3個が一般式(E)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素であって、A
3~D
3のうち2又は3個が一般式(E)又は(F)で表される置換基である場合は、R
1及びR
2は、それぞれ任意の位置の一つ以上の炭素において互いに結合していてもよい)で表される。
【0057】
R1、R2、n、X、Y、及び、Zは、上記一般式(A)及び(B)において説明したとおりである。
【0058】
上記一般式(E)で表される置換基は、
【化36】
【化37】
が好ましく、
【化38】
がより好ましい。
【0059】
上記一般式(F)で表される置換基は、
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
が好ましく、
【化45】
【化46】
【化47】
がより好ましい。
【0060】
上記A3~D3の全てが、上記一般式(E)で表される置換基ではない。また、上記A3~D3のうち少なくとも一つは、上記一般式(E)又は(F)で表される置換基であり、上記A3~D3のうち1~3個が、上記一般式(E)で表される置換基である場合は、残りの置換基のうち一つ以上がフッ素であって、上記A3~D3のうち2又は3個が、上記一般式(E)又は(F)で表される置換基である場合は、上記R1及びR2は、それぞれ任意の位置の一つ以上の炭素において互いに結合していてもよい。
【0061】
上記化合物(3)としては、具体的には、
【化48】
等が挙げられる。
【0062】
本開示の第1の組成物において、上記化合物(4)は、下記一般式(4):
【化49】
(式中、A
4~D
4はそれぞれ独立して、水素、フッ素、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、下記一般式(G):
【化50】
で表される置換基、又は、下記一般式(H):
【化51】
(式中、nは0~5であり、X、Y及びZはそれぞれ独立して水素、フッ素、又は、一つ以上の水素がフッ素に置換されていてもよくその構造中に環状構造、多重結合、カルボニル基、又は、エーテル結合を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基である。)で表される置換基である。但し、A
4~D
4の全てが一般式(G)で表される置換基ではない。また、A
4~D
4のうち少なくとも一つは一般式(G)又は(H)で表される置換基であり、A
4~D
4のうち1~3個が一般式(G)で表される置換基である場合は残りの置換基のうち一つ以上がフッ素である)で表される。
【0063】
n、X、Y、及び、Zは、上記一般式(B)において説明したとおりである。
【0064】
上記一般式(H)で表される置換基は、
【化52】
が好ましい。
【0065】
上記A4~D4の全てが、上記一般式(G)で表される置換基ではない。また、上記A4~D4のうち少なくとも一つは、上記一般式(G)又は(H)で表される置換基であり、上記A4~D4のうち1~3個が、上記一般式(G)で表される置換基である場合は、残りの置換基のうち一つ以上がフッ素である。
【0066】
上記化合物(4)としては、具体的には、
【化53】
等が挙げられる。
【0067】
本開示の第1の組成物において、上記金属化合物を構成する金属元素の含有量が、上記化合物(2)に対して10000ppm以下であることが好ましく、3000ppm以下であることがより好ましく、2000ppm以下であることが更に好ましい。上記金属化合物を構成する金属元素の含有量の下限は、特に限定されないが、0.001ppmであってよい。上記金属化合物を構成する金属元素の含有量は、元素分析により測定できる。
【0068】
本開示の第1の組成物において、上記化合物(3)の含有量が、上記化合物(2)に対して10000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましく、300ppm以下であることが更に好ましい。上記化合物(3)の含有量の下限は、特に限定されないが、0.001ppmであってよい。上記化合物(3)の含有量は、19F―NMR、1H―NMR、GC又はLCにより測定できる。
【0069】
本開示の第1の組成物において、上記化合物(4)の含有量が、上記化合物(2)に対して10000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましく、300ppm以下であることが更に好ましい。上記化合物(4)の含有量の下限は、特に限定されないが、0.001ppmであってよい。上記化合物(4)の含有量は、19F―NMR、1H―NMR、GC又はLCにより測定できる。
【0070】
本開示の第1の組成物は、更に水を含んでいてもよい。本開示の第1の組成物において、水の含有量は、上記化合物(2)に対して1500ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることが更に好ましい。上記水の含有量の下限は、特に限定されないが、0.1ppmであってよい。上記水の含有量は、カールフィッシャー法により測定できる。
【0071】
本開示はまた、上記化合物(2)と水を含み、水の含有量が上記化合物(2)に対して1500ppm以下であることを特徴とする組成物(以下「本開示の第2の組成物」ともいう)を提供する。本開示の第2の組成物は、上記製造方法により得ることができる。
【0072】
本開示の第2の組成物において、上記化合物(2)は、上記製造方法において説明したとおりである。
【0073】
本開示の第2の組成物において、上記水の含有量は、上記化合物(2)に対して500ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。上記水の含有量の下限は、特に限定されないが、0.1ppmであってよい。上記水の含有量は、カールフィッシャー法により測定できる。
【0074】
本開示の第2の組成物は、上記化合物(2)と水以外に、上記金属化合物、上記化合物(3)及び上記化合物(4)を含んでいてもよい。本開示の第2の組成物において、上記金属化合物は、上記製造方法において説明したとおりであり、上記化合物(3)及び上記化合物(4)は、本開示の第1の組成物において説明したとおりである。
【0075】
本開示の第2の組成物において、上記金属化合物を構成する金属元素の含有量が、上記化合物(2)に対して10000ppm以下であることが好ましく、3000ppm以下であることがより好ましく、2000ppm以下であることが更に好ましい。上記金属化合物を構成する金属元素の含有量の下限は、特に限定されないが、0.001ppmであってよい。上記金属化合物を構成する金属元素の含有量は、元素分析により測定できる。
【0076】
本開示の第2の組成物において、上記化合物(3)の含有量が、上記化合物(2)に対して10000ppm以下であることが好ましく、3000ppm以下であることがより好ましく、1000ppm以下であることが更に好ましく、300ppm以下であることが更により好ましい。上記化合物(3)の含有量の下限は、特に限定されないが、0.001ppmであってよい。上記化合物(3)の含有量は、19F―NMR、1H―NMR、GC又はLCにより測定できる。
【0077】
本開示の第2の組成物において、上記化合物(4)の含有量が、上記化合物(2)に対して10000ppm以下であることが好ましく、3000ppm以下であることがより好ましく、1000ppm以下であることが更に好ましく、300ppm以下であることが更により好ましい。上記化合物(4)の含有量の下限は、特に限定されないが、0.001ppmであってよい。上記化合物(4)の含有量は、19F―NMR、1H―NMR、GC又はLCにより測定できる。
【0078】
本開示の第1及び第2の組成物は、レンズ、プリズム、ディスプレイ材料、光ファイバー、光導波路材、コーティング材、反射防止用塗料、光応答性塗料、接着剤、3次元造形材料、レジスト材、基盤回路用封止剤、被覆材、シーラント、包装材、キャパシタ・電池用バインダー、キャパシタ・電池用添加剤、インキ、エアゾール製剤、分散剤、酸発生剤等の含フッ素材料、又は、その原材料として好適に用いることができる。
【実施例0079】
つぎに本開示を実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0080】
比較例1:2-フルオロプロパン-1,3-ジオールの製造
反応器に水素化ホウ素ナトリウム(0.42g)、メタノール(MeOH)(1.0g)を入れ、化合物(1-1)フルオロマロン酸ジエチル(1.0g)を滴下した。その後反応熱による還流条件下で0.5時間攪拌した。0.5時間後、1N塩酸(9mL)を加えてpHを3以下とした。この溶液へ酢酸エチル(2g)を加えて抽出し、さらに分液した水層を酢酸エチル(2g×2回)にて抽出し、蒸留水(2g)を加えて洗浄、分液した。得られた酢酸エチル溶液は硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮したが目的の化合物(2-1)2-フルオロプロパン-1,3-ジオールは得られなかった。結果を表1に示す。
【0081】
実施例1:2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオールの製造
反応器に水素化ホウ素ナトリウム(0.35g)、tert-ブチルアルコール(t-BuOH)(1.0g)を入れ、化合物(1-2)テトラフルオロコハク酸ジメチル(1.0g)を滴下した。その後反応熱による還流条件下で0.5時間攪拌した。0.5時間後、1N塩酸(9mL)を加えてpHを3以下とした。この溶液へ酢酸エチル(2g)を加えて抽出し、さらに分液した水層を酢酸エチル(2g×2回)にて抽出し、蒸留水(2g)を加えて洗浄、分液した。得られた酢酸エチル溶液は硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮することで化合物(2-2)2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオール(0.65g、収率87%)、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ジメトキシブタン-1,4-ジオール+2,2,3,3-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ-4-メトキシブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して合計142ppm)、2,2,3,3-テトラフルオロ-4-オキソブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して40ppm)、水(化合物(2-2)に対して433ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0082】
実施例2:2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオールの製造
実施例1の反応熱を氷水浴で冷却し、内温を50℃以下に制御した以外は実施例1と同様にして実験を行い、化合物(2-2)2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオール(0.64g、収率86%)、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ジメトキシブタン-1,4-ジオール+2,2,3,3-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ-4-メトキシブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して合計125ppm)、2,2,3,3-テトラフルオロ-4-オキソブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して102ppm)、ホウ素化合物(ホウ素化合物を構成するホウ素は化合物(2-2)に対して1600ppm)、水(化合物(2-2)に対して211ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0083】
実施例3:2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオールの製造
実施例2のt-BuOHの使用量を1.5gに変更した以外は実施例2と同様にして実験を行い、化合物(2-2)2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオール(0.63g、収率85%)、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ジメトキシブタン-1,4-ジオール+2,2,3,3-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ-4-メトキシブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して合計98ppm)、2,2,3,3-テトラフルオロ-4-オキソブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して91ppm)、水(化合物(2-2)に対して226ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0084】
実施例4:2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオールの製造
実施例2のt-BuOHの使用量を3.0gに変更した以外は実施例2と同様にして実験を行い、化合物(2-2)2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオール(0.64g、収率86%)、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ジメトキシブタン-1,4-ジオール+2,2,3,3-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ-4-メトキシブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して合計169ppm)、2,2,3,3-テトラフルオロ-4-オキソブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して30ppm)、水(化合物(2-2)に対して75ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0085】
実施例5:2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオールの製造
実施例1のt-BuOH(1.0g)をイソプロピルアルコール(IPA)(1.0g)に変更した以外は実施例1と同様にして実験を行い、化合物(2-2)2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオール(0.64g、収率85%)、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ジメトキシブタン-1,4-ジオール+2,2,3,3-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ-4-メトキシブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して合計190ppm)、2,2,3,3-テトラフルオロ-4-オキソブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して70ppm)、水(化合物(2-2)に対して204ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0086】
実施例6:2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオールの製造
実施例1のt-BuOH(1.0g)をn-ブチルアルコール(n-BuOH)(1.0g)に変更した以外は実施例1と同様にして実験を行い、化合物(2-2)2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオール(0.53g、収率71%)、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ジメトキシブタン-1,4-ジオール+2,2,3,3-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ-4-メトキシブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して合計221ppm)、2,2,3,3-テトラフルオロ-4-オキソブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して34ppm)、水(化合物(2-2)に対して127ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0087】
実施例7:2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオールの製造
実施例2のt-BuOH(1.0g)をt-BuOH(0.9g)+水(0.1g)に変更した以外は実施例2と同様にして実験を行い、化合物(2-2)2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオール(0.56g、収率75%)、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ジメトキシブタン-1,4-ジオール+2,2,3,3-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ-4-メトキシブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して合計70ppm)、2,2,3,3-テトラフルオロ-4-オキソブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して12ppm)、水(化合物(2-2)に対して246ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0088】
実施例8:2-フルオロプロパン-1,3-ジオールの製造
反応器に水素化ホウ素ナトリウム(0.42g)、IPA(1.0g)を入れ、化合物(1-1)フルオロマロン酸ジエチル(1.0g)を滴下した。その後反応熱による還流条件下で0.5時間攪拌した。0.5時間後、1N塩酸(9mL)を加えてpHを3以下とした。この溶液へ酢酸エチル(2g)を加えて抽出し、さらに分液した水層を酢酸エチル(2g×2回)にて抽出し、蒸留水(2g)を加えて洗浄、分液した。得られた酢酸エチル溶液は硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮することで化合物(2-1)2-フルオロプロパン-1,3-ジオール(0.18g、収率34%)、1,3-ジメトキシ-2-フルオロプロパン-1,3-ジオール+3-エトキシ-2-フルオロ-3-ヒドロキシプロパン酸エチル(化合物(2-1)に対して合計209ppm)、2-フルオロ-3-オキソプロパン酸エチル(化合物(2-1)に対して98ppm)、水(化合物(2-1)に対して125ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0089】
実施例9:2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロペンタン-1,5-ジオールの製造
反応器に水素化ホウ素ナトリウム(0.28g)、IPA(1.0g)を入れ、化合物(1-3)ヘキサフルオログルタル酸ジメチル(1.0g)を滴下した。その後反応熱による還流条件下で0.5時間攪拌した。0.5時間後、1N塩酸(9mL)を加えてpHを3以下とした。この溶液へ酢酸エチル(2g)を加えて抽出し、さらに分液した水層を酢酸エチル(2g×2回)にて抽出し、蒸留水(2g)を加えて洗浄、分液した。得られた酢酸エチル溶液は硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮することで化合物(2-3)2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロペンタン-1,5-ジオール(0.76g、収率97%)、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-1,5-ジメトキシブタン-1,5-ジオール+2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-5-ヒドロキシ-5-メトキシブタン酸メチル(化合物(2-3)に対して合計270ppm)、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-5-オキソブタン酸メチル(化合物(2-3)に対して98ppm)、水(化合物(2-3)に対して176ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0090】
実施例10:2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロペンタン-1,5-ジオールの製造
反応器に水素化ホウ素ナトリウム(0.26g)、IPA(1.0g)を入れ、化合物(1-4)ヘキサフルオログルタル酸ジエチル(1.0g)を滴下した。その後反応熱による還流条件下で0.5時間攪拌した。0.5時間後、1N塩酸(9mL)を加えてpHを3以下とした。この溶液へ酢酸エチル(2g)を加えて抽出し、さらに分液した水層を酢酸エチル(2g×2回)にて抽出し、蒸留水(2g)を加えて洗浄、分液した。得られた酢酸エチル溶液は硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮することで化合物(2-4)2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロペンタン-1,5-ジオール(0.62g、収率86%)、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-1,5-ジメトキシブタン-1,5-ジオール+2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-5-ヒドロキシ-5-メトキシブタン酸メチル(化合物(2-4)に対して合計131ppm)、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-5-オキソブタン酸メチル(化合物(2-4)に対して16ppm)、水(化合物(2-4)に対して238ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0091】
実施例11:2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン-1,6-ジオールの製造
反応器に水素化ホウ素ナトリウム(0.24g)、IPA(1.0g)を入れ、化合物(1-5)オクタフルオロアジピン酸ジメチル(1.0g)を滴下した。その後反応熱による還流条件下で0.5時間攪拌した。0.5時間後、1N塩酸(9mL)を加えてpHを3以下とした。この溶液へ酢酸エチル(2g)を加えて抽出し、さらに分液した水層を酢酸エチル(2g×2回)にて抽出し、蒸留水(2g)を加えて洗浄、分液した。得られた酢酸エチル溶液は硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮することで化合物(2-5)2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン-1,6-ジオール(0.76g、収率93%)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ジメトキシブタン-1,6-ジオール+2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-6-ヒドロキシ-6-メトキシブタン酸メチル(化合物(2-5)に対して合計184ppm)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-6-オキソブタン酸メチル(化合物(2-5)に対して111ppm)、水(化合物(2-5)に対して314ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0092】
実施例12:2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロエチル)プロパン-1-オールの製造
反応器に水素化ホウ素ナトリウム(0.17g)、IPA(1.0g)を入れ、化合物(1-6)2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン酸メチル(1.0g)を滴下した。その後反応熱による還流条件下で0.5時間攪拌した。0.5時間後、1N塩酸(9mL)を加えてpHを3以下とした。この溶液へ酢酸エチル(2g)を加えて抽出し、さらに分液した水層を酢酸エチル(2g×2回)にて抽出し、蒸留水(2g)を加えて洗浄、分液した。得られた酢酸エチル溶液は硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮することで化合物(2-6)2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロエチル)プロパン-1-オール(0.76g、収率87%)、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-1-オール(化合物(2-6)に対して114ppm)、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパナール(化合物(2-6)に対して41ppm)、水(化合物(2-6)に対して67ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0093】
実施例13:2,2,2-トリフルオロエタノールの製造
反応器に水素化ホウ素ナトリウム(0.19g)、IPA(1.0g)を入れ、化合物(1-7)トリフルオロ酢酸-2,2,2-トリフルオロエチル(1.0g)を滴下した。その後反応熱による還流条件下で0.5時間攪拌した。0.5時間後、1N塩酸(9mL)を加えてpHを3以下とした。この溶液へ酢酸エチル(2g)を加えて抽出し、さらに分液した水層を酢酸エチル(2g×2回)にて抽出し、蒸留水(2g)を加えて洗浄、分液した。得られた酢酸エチル溶液は硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、得られた酢酸エチル溶液をGC分析し、化合物(2-7)2,2,2-トリフルオロエタノール(0.45g、収率88%)、2,2,2-トリフルオロ-1-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン-1-オール(化合物(2-7)に対して286ppm)、2,2,2-トリフルオロアセトアルデヒド(化合物(2-7)に対して192ppm)、水(化合物(2-7)に対して24ppm)を含む組成物が得られたことを確認した。結果を表1に示す。
【0094】
実施例14:3-フルオロ-4-ヒドロキシブタン-2-オンの製造
反応器に水素化ホウ素ナトリウム(0.19g)、IPA(1.0g)を入れ、化合物(1-8)2-フルオロ-3-オキソブタン酸-2,2,2-トリフルオロエチル(1.0g)を滴下した。その後反応熱による還流条件下で0.5時間攪拌した。0.5時間後、1N塩酸(9mL)を加えてpHを3以下とした。この溶液へ酢酸エチル(2g)を加えて抽出し、さらに分液した水層を酢酸エチル(2g×2回)にて抽出し、蒸留水(2g)を加えて洗浄、分液した。得られた酢酸エチル溶液は硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮することで化合物(2-8)3-フルオロ-4-ヒドロキシブタン-2-オン(0.30g、収率57%)、3-フルオロ-4-ヒドロキシ-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ブタン-2-オン(化合物(2-8)に対して267ppm)、2-フルオロ-3-オキソブタナール(化合物(2-8)に対して176ppm)、水(化合物(2-8)に対して84ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0095】
実施例15:3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-1,2-ジオールの製造
反応器に水素化ホウ素ナトリウム(0.12g)、水(3.0g)を入れ、化合物(1-9)3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-トリフルオロメチルプロパン酸メチル(1.0g)を30℃以下で滴下した。その後室温下(RT)で3時間攪拌した。3時間後、1N塩酸(9mL)を加えてpHを3以下とした。この溶液へジイソプロピルエーテル(2g)を加えて抽出し、さらに分液した水層をジイソプロピルエーテル(2g×2回)にて抽出し、蒸留水(2g)を加えて洗浄、分液した。得られたジイソプロピルエーテル溶液は硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、得られたジイソプロピルエーテル溶液を濃縮することで化合物(2-9)3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-1,2-ジオール(0.71g、収率81%)、3,3,3-トリフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチルプロパン-1,2-ジオール(化合物(2-9)に対して167ppm)、3,3,3-トリフルオロ-2ーヒドロキシ-2-トリフルオロメチルプロパナール(化合物(2-9)に対して119ppm)、水(化合物(2-9)に対して260ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0096】
実施例16:3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-1,2-ジオールの製造
反応器に水素化ホウ素ナトリウム(0.14g)、IPA(1.0g)を入れ、化合物(1-10)2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2-トリフルオロアリロキシ)プロパン酸メチル(1.0g)を滴下した。その後反応熱による還流条件下で0.5時間攪拌した。0.5時間後、1N塩酸(9mL)を加えてpHを3以下とした。この溶液へ酢酸エチル(2g)を加えて抽出し、さらに分液した水層を酢酸エチル(2g×2回)にて抽出し、蒸留水(2g)を加えて洗浄、分液した。得られた酢酸エチル溶液は硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮することで化合物(2-10)2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2-トリフルオロアリロキシ)プロパン-1-オール(0.70g、収率78%)、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(1,1,2-トリフルオロアリロキシ)プロパン-1-オール(化合物(2-10)に対して76ppm)、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2-トリフルオロアリロキシ)プロパナール(化合物(2-10)に対して211ppm)、水(化合物(2-10)に対して309ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0097】
実施例17:2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2-テトラフルオロ-2-(1,2,2-トリフルオロビニロキシ)エトキシ)プロパン-1-オールの製造
反応器に水素化ホウ素ナトリウム(0.10g)、IPA(1.0g)を入れ、化合物(1-11)2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2-テトラフルオロ-2-(1,2,2-トリフルオロビニロキシ)エトキシ)プロパン酸メチル(1.0g)を滴下した。その後反応熱による還流条件下で0.5時間攪拌した。0.5時間後、1N塩酸(9mL)を加えてpHを3以下とした。この溶液へ酢酸エチル(2g)を加えて抽出し、さらに分液した水層を酢酸エチル(2g×2回)にて抽出し、蒸留水(2g)を加えて洗浄、分液した。得られた酢酸エチル溶液は硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、得られた酢酸エチル溶液を濃縮することで化合物(2-11)2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2-テトラフルオロ-2-(1,2,2-トリフルオロビニロキシ)エトキシ)プロパン-1-オール(0.72g、収率78%)、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(1,1,2,2-テトラフルオロ-2-(1,2,2-トリフルオロビニロキシ)エトキシ)プロパン-1-オール(化合物(2-11)に対して135ppm)、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2-テトラフルオロ-2-(1,2,2-トリフルオロビニロキシ)エトキシ)プロパナール(化合物(2-11)に対して14ppm)、水(化合物(2-11)に対して93ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0098】
実施例18:2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオールの製造
実施例2のスケールを100倍にし、攪拌時間を1.5時間に変更した以外は実施例2と同様にして実験を行い、化合物(2-2)2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオール(64.7g、収率87%)、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ジメトキシブタン-1,4-ジオール+2,2,3,3-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ-4-メトキシブタン酸メチル(化合物(2-1)に対して合計84ppm)、2,2,3,3-テトラフルオロ-4-オキソブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して31ppm)、ホウ素化合物(ホウ素化合物を構成するホウ素は化合物(2-2)に対して2600ppm)、水(化合物(2-2)に対して89ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0099】
実施例19:3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-1,2-ジオールの製造
実施例15のスケールを150倍にし、攪拌時間を18.0時間に変更した以外は実施例15と同様にして実験を行い、化合物(2-9)3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-1,2-ジオール(112g、収率85%)、3,3,3-トリフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチルプロパン-1,2-ジオール(化合物(2-9)に対して19ppm)、3,3,3-トリフルオロ-2ーヒドロキシ-2-トリフルオロメチルプロパナール(化合物(2-9)に対して13ppm)、水(化合物(2-9)に対して28ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0100】
実施例20:2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオールの製造
実施例1の水素化ホウ素ナトリウム(0.35g)をシアノ水素化ホウ素ナトリウム(0.69g)に変更した以外は実施例1と同様にして実験を行い、化合物(2-2)2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオール(0.60g、収率81%)、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ジメトキシブタン-1,4-ジオール+2,2,3,3-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ-4-メトキシブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して合計156ppm)、2,2,3,3-テトラフルオロ-4-オキソブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して28ppm)、水(化合物(2-2)に対して100ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0101】
実施例21:2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオールの製造
実施例1の水素化ホウ素ナトリウム(0.35g)を水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(2.33g)に変更した以外は実施例1と同様にして実験を行い、化合物(2-2)2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオール(0.52g、収率70%)、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ジメトキシブタン-1,4-ジオール+2,2,3,3-テトラフルオロ-4-ヒドロキシ-4-メトキシブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して合計207ppm)、2,2,3,3-テトラフルオロ-4-オキソブタン酸メチル(化合物(2-2)に対して52ppm)、水(化合物(2-2)に対して163ppm)を含む組成物を得た。結果を表1に示す。
【0102】
炭素数3以上のプロトン性溶媒が、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、sec-ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、及び、ネオペンチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の製造方法。
水素化金属化合物が、水素化ホウ素リチウム、水素化アミノホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化ホウ素ニッケル、及び、ジボランからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の製造方法。
水素化金属化合物が、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、及び、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載の製造方法。
更に、工程(1)で得られた前記化合物(2)を含む反応液に酸を加えてpH3以下にしてから抽出操作を行い、得られた抽出液を水洗して金属化合物を除く精製工程(2)、又は、工程(1)で得られた前記化合物(2)を含む反応液に酸を加えてpH3以下にしてから下層に沈降した溶液を水洗して金属化合物を除く精製工程(3)を含む請求項1又は2記載の製造方法。