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特開2022-174011スフィンゴモナス・パウシモビリス及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174011
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】スフィンゴモナス・パウシモビリス及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20221115BHJP
   C12P 19/04 20060101ALI20221115BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20221115BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20221115BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20221115BHJP
   C08B 37/00 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12P19/04 C
A23L29/269
A23G3/34 101
A23L2/00 E
A23L2/52
C08B37/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022073606
(22)【出願日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】202110504901.4
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(71)【出願人】
【識別番号】522171017
【氏名又は名称】ディーエスエム (チャイナ) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DSM (China) Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】チャオ, チエ
(72)【発明者】
【氏名】ユアン, チェンクゥオ
(72)【発明者】
【氏名】ソン, チェンセン
【テーマコード(参考)】
4B014
4B041
4B064
4B065
4B117
4C090
【Fターム(参考)】
4B014GB06
4B014GB07
4B014GG09
4B014GK08
4B014GL02
4B014GL04
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP14
4B041LC05
4B041LD01
4B041LD10
4B041LK42
4B041LP15
4B064AF11
4B064CA02
4B064CE03
4B064DA10
4B065AA01X
4B065AC14
4B065CA22
4B065CA41
4B117LK13
4C090AA04
4C090BA62
4C090BB12
4C090BB16
4C090BB22
4C090BC20
4C090BD12
4C090BD36
4C090CA42
4C090DA03
4C090DA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スフィンゴモナス・パウシモビリス及びそのジェランガム発酵への応用を提供する。
【解決手段】寄託番号がCCTCC NO:M 2020483であるスフィンゴモナス・パウシモビリスである。本発明は、さらに、当該菌株から生産される超高強度高アシルジェランガムを開示し、そのゲル強度は、900g/cm以上に達する。ゲルの応用におけるコロイドの用量は、従来の高アシルジェランガムの量よりも大幅に少なくなっている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄託番号がCCTCC NO:M 2020483である、スフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)。
【請求項2】
請求項1に記載のスフィンゴモナス・パウシモビリスを有するジェランガム発酵液であって、
前記ジェランガムは、高アシルジェランガムである、
発酵液。
【請求項3】
前記高アシルジェランガムは、ゲル強度が少なくとも900g/cmである、
請求項2に記載の発酵液。
【請求項4】
請求項1に記載のスフィンゴモナス・パウシモビリスを有するジェランガム粗生成物であって、
前記ジェランガムは、高アシルジェランガムである、
ジェランガム粗生成物。
【請求項5】
前記高アシルジェランガムは、ゲル強度が少なくとも900g/cmである、
請求項4に記載のジェランガム粗生成物。
【請求項6】
寄託番号がCCTCC NO:M 2020483のスフィンゴモナス・パウシモビリスを発酵する工程を含む、高アシルジェランガムの調製方法。
【請求項7】
スフィンゴモナス・パウシモビリス CCTCC NO:M 2020483に対して菌株の活性化を行う工程1)と、
スフィンゴモナス・パウシモビリスに適した発酵培地に、活性化後の菌株を接種する工程2)と、
ジェランガムを発酵生産する工程3)と、
オプションとして、発酵液からジェランガムを回収する工程4)と、
を含む高アシルジェランガムの調製方法。
【請求項8】
前記発酵は、バッチ式発酵又は供給式発酵である、
請求項6又は7に記載の調製方法。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の方法によって調製される高アシルジェランガムであって、
前記高アシルジェランガムは、ゲル強度が少なくとも900g/cmである、
ことを特徴とする高アシルジェランガム。
【請求項10】
前記高アシルジェランガムは、ゲル強度が900g/cm乃至2000g/cmである、
ことを特徴とする請求項9に記載の高アシルジェランガム。
【請求項11】
請求項9に記載の高アシルジェランガムを有する、
ことを特徴とする食品又は飲料。
【請求項12】
請求項9に記載の高アシルジェランガムを有する、
ことを特徴とする安定剤組成物。
【請求項13】
ジェランガムの発酵生産における寄託番号がCCTCC NO:M 2020483のスフィンゴモナス・パウシモビリスの応用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物によるジェランガムの発酵生産に関する。具体的に、本発明は、超高強度高アシルジェランガムを生産可能なスフィンゴモナス・パウシモビリス Spingomonas paucimobilis RG01に関する。本発明は、さらに、高アシルジェランガムの調製における前記スフィンゴモナス・パウシモビリスの応用、及び調製により得られる超高強度高アシルジェランガムに関する。
【背景技術】
【0002】
ジェランガムは、スフィンゴモナス・パウシモビリスから生産可能な微生物代謝多糖類である。ジェランガムは、一般的に、適切な炭素源、リン酸塩、窒素源、及び適切な微量元素を有する培地で微生物を培養することによって生成される細胞外生成物である。発酵が完了すると、生成された発酵液を処理してその中のジェランガムを回収する。発酵液から高アシル基形態のジェランガムを直接回収して、脱アシル化処理を行った後、低アシル基形態のジェランガムを得ることができる。ジェランガムは、グルコース、グルクロン酸及びラムノースをモル比 2:1:1で含有し、これらが相互接続されて、線状四糖繰り返し単位を有する主要構造を形成する。高アシルジェランガムにおいて、そのグルコース残基にはアセテート及びグリセリドのアシル置換基が存在するが、低アシルジェランガムにおいて、前記アシル基は実質的に除去されている。高アシルジェランガムによって形成されるゲルは柔らかく弾性があるが、低アシルジェランガムによって形成されるゲルはもろくて硬い。
【0003】
ジェランガムは、他の微生物多糖類に比べて、低い用量、高い透明性、良好な耐酸性、耐高温性、耐酵素性、相溶性などの優れた特性を有するため、食品、製薬、化学工業などの産業で幅広い用途がある。高アシルジェランガムは、優れたゲル特性を有するため、一般的に、増粘剤や安定剤として使用され、ゲル強度は、ジェランガムの特性を評価するための主要な基準である。従来の高アシルジェランガムは、製品のゲル強度が高くないという問題があり、従来、特定の菌株(CN107435036Aなど)又は発酵条件を制御する方法(CN109251950Aなど)を利用して比較的高い強度の高アシルジェランガムを調製して、そのゲル強度が約800g/mに達するようにする方法が知られている。しかしながら、如何に高アシルジェランガムのゲル強度をさらに向上させて、ゲルの応用におけるコロイドの用量を低減させるかは、依然として重要な実用上の意義がある。
[発明の概要]
【0004】
本発明は、スフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis RG01)を提供し、当該菌株は、出願日前に既に中国典型培養物寄託センター(CCTCCと略称、中国湖北省武漢市洪山区八一路、武漢大学)に寄託され、寄託日が2020年9月11日で、寄託番号がCCTCC NO:M 2020483である。本発明は、さらに、前記スフィンゴモナス・パウシモビリスを発酵させて超高強度高アシルジェランガムを調製する方法を提供し、調製された高アシルジェランガムは、ゲル強度が少なくとも900g/cmである。
【0005】
本発明において、前記スフィンゴモナス・パウシモビリス CCTCC NO:M 2020483は、原始スフィンゴモナス・パウシモビリスを開始菌とし、UV及びDESの複合突然変異誘発によって得られた安定的に継代することができる突然変異誘発されたスフィンゴモナス・パウシモビリスである。
【0006】
本発明において、前記スフィンゴモナス・パウシモビリス CCTCC NO:M 2020483は、以下の方法に従って突然変異誘発及び選別することにより得られる。
1)原始スフィンゴモナス・パウシモビリス菌株が活性化された後、液体培地に接種し、振蕩培養を行って対数増殖期の菌液を取得し、前記原始菌株は、中国江南大学から購入される。
2)培養して得られた菌液を遠心分離して菌体を取得し、同一体積の生理食塩水で菌懸濁液を構成する。
3)菌懸濁液2mlを取って75mmの滅菌ペトリ皿に入れ、30w紫外線ランプの下の30cmの箇所に置き、30、60、90、180s照射して、一次突然変異誘発菌液を取得する。
4)紫外線突然変異誘発により得られた一次突然変異誘発菌液に、15%硫酸ジエチル0.04mlを添加し、30℃、200rpmの条件で、揺動床を振蕩しながら90min培養し、25%チオ硫酸ナトリウム溶液を添加して反応を停止させて、二次突然変異誘発菌液を取得する。
5)処理液をPCAプレートに塗布し、単一のコロニーが成長するまで、30℃の恒温水インキュベーター内で培養する。
6)プレートから大きくて光沢があり完全なコロニーを持つ単一のコロニーを選択して、5L振とうフラスコ発酵を行う。
7)発酵生成物を90℃に加熱してゲルを溶かし、撹拌しながら4倍体積のアルコールを添加して沈殿させ、遠心分離して沈殿繊維を取得する。
8)繊維を55℃のブラスト乾燥オーブンに入れ、10時間乾燥させた後、粉砕してふるいにかけて、高アシルジェランガム試料を取得する。
9)試料の高アシルジェランガムゲル強度を測定し、選別によって、高ゲル強度のジェランガム生産菌株 Sphingomonas paucimobilis RG01を取得する。
【0007】
本発明の一態様は、スフィンゴモナス・パウシモビリス CCTCC NO:M 2020483の活性化培養方法を提供する。前記培養方法は、前記菌株を培地に接種し、25~35℃で、対数増殖期になるまで、回転速度180~250rpmのシェーカーで振蕩しながら16~24時間培養することを含み得る。好ましくは、30℃で、回転速度200rpmのシェーカーで振蕩しながら16時間培養する。前記培地は、スフィンゴモナス・パウシモビリスの増殖に適した培地であってもよい。
【0008】
本発明の一態様は、ジェランガムの発酵生産におけるスフィンゴモナス・パウシモビリス CCTCC NO:M 2020483の応用を提供する。
【0009】
本発明の一態様は、スフィンゴモナス・パウシモビリス CCTCC NO:M 2020483によってジェランガムを発酵生産する方法を提供する。具体的に、前記方法は、以下の工程を含み得る。
工程1)において、スフィンゴモナス・パウシモビリス CCTCC NO:M 2020483に対して菌株の活性化を行う。
工程2)において、スフィンゴモナス・パウシモビリスに適した発酵培地に、活性化後の菌株を接種する。
工程3)において、ジェランガムを発酵生産する。
工程4)において、オプションとして、発酵液からジェランガムを回収する。
【0010】
本発明において、前記発酵培地は、炭素源(例えば、グルコース、スクロース、フルクトースシロップ又はマルトースなどの1種類又は複数種類)、窒素源(例えば、大豆粉、大豆分離タンパク質)、リン酸塩及び/又は他の無機塩を含む。本発明において、発酵培地は、グルコース 10~40g/kg、大豆粉 2~5g/kg、KHPO 0.2~1.5g/kg、KHPO 0.2~1.5g/kg、MgSO・7HO 0.2~1.5g/kgの濃度で構成することができ、培地のpHはが約7.0である。本発明の一態様は、前記スフィンゴモナス・パウシモビリスを有するジェランガム発酵液を提供する。
【0011】
本発明の一態様は、スフィンゴモナス・パウシモビリス CCTCC NO:M 2020483の発酵により得られた超高強度高アシルジェランガムを提供し、前記高アシルジェランガムは、ゲル強度が少なくとも900g/cmであり、例えば、少なくとも950g/cmであり、少なくとも1000g/cmであり、少なくとも1100g/cmであり、少なくとも1200g/cmであり、少なくとも1300g/cmであり、少なくとも1400g/cmであり、又は2000g/cmに達する。具体的に、前記高アシルジェランガムは、ゲル強度が900g/cm乃至2000g/cmであり、又は900g/cm乃至1500g/cmであり、又は950g/cm乃至1500g/cmであり、又は1000g/cm乃至2000g/cmであり、又は1000g/cm乃至1500g/cmである。本発明の一実施例において、前記高アシルジェランガムは、ゲル強度が1300g/cmである。本発明の一実施例において、前記高アシルジェランガムは、ゲル強度が1400g/cmである。本発明の一実施例において、前記高アシルジェランガムは、ゲル強度が1500g/cmである。本発明の一実施例において、前記高アシルジェランガムは、ゲル強度が1600g/cmである。
【0012】
本発明において、前記ゲル強度は、以下の方法に従って測定することができる。
【0013】
1.試薬及び試薬準備
1.1 脱イオン水
1.2 0.3Nカルシウムストック溶液
1L容量のフラスコに、CaCl・2HO(粒状)44.10gを添加し、脱イオン水500mLを入れる。塩が溶けるまでかき混ぜる。さらに、溶液の用量が1リットルに達するまで、脱イオン水を添加する。
【0014】
2.検出手順
2.1 室温(22~26℃)条件で、蒸留水295gを500mLビーカーに量り取り、さらに0.3Nカルシウムストック溶液2.0mLを添加する。
2.2 攪拌刃を取り付け、ビーカーの底から約2cm上に攪拌刃を設ける。
2.3 攪拌器の回転速度を1000±100rpmに設定する。
2.4 攪拌過程で、0.01gの精度で試料3gを添加する。20~30分間攪拌して、均一に攪拌する。
2.5 攪拌テーブルからビーカーを取り外す。ビーカーを軽くたたくか回転させて、プロペラの溶液をビーカーに流し込ませる。
2.6 プラスチック紙でビーカーを覆い、94~95℃の予熱した水に入れて、ビーカー内の溶液を完全に水に浸し、30分間正確に加熱する。
2.7 断熱手袋を着用し、プラスチック紙を取り除き、均一になるまで攪拌スプーンで15~30秒間手動でかき混ぜる。
2.8 プラスチック紙で覆い、ビーカーを95℃の水浴タンクに置き戻して5分間維持する。
2.9 絶縁手袋を着用し、水浴タンクからビーカーを取り出し、均一に揺動させ、プラスチック紙を取り除き、ゲル溶液を高さ約2cmの60×30mmのゲルカップにすばやく注ぐ。平行試料を準備するには、各試料を2つのゲルカップに注ぎ、温度低下によって生成されたゲルを廃棄して、水分ボトル内の材料が均一で表面が平らであるよう確保する。
2.10 ゲルカップを20℃の恒温箱に20~24時間入れた後、TAテクスチャアナライザでそのゲル強度を測定する。各ゲルカップは、3つの平行点を測定し、平均値を取る。
2.11 テクスチャアナライザの検出モード:SURIMI
数値は、以下のように設定される。
Trigger(トリガーポイント):5g
Correction(補正値):30g(実験の実情に応じて変更可能)
Speed(測定速度):1.0mm/s
【0015】
測定結果は、ジェランガム表層を破壊する力の大きさであり、TA-19(1cm断面)プローを用いる場合、測定結果が最終結果である。本発明において、前記ゲル強度は、1%水溶液中のジェランガムのゲル強度である。
【0016】
本発明において、他に特定されない限り、本分野の従来のジェランガム発酵方法を用いて発酵生産することができる。
【0017】
本発明の一実施例において、前記発酵は、培地が一度に補充されるバッチ式発酵である。本発明の一実施例において、前記発酵は、主要な栄養源が制限的に制御された供給式発酵である。本発明において、前記発酵過程では、風量及び/又は攪拌を段階的に制御することができる。
【0018】
本発明の一態様は、前記超高強度高アシルジェランガムを有する発酵液を提供する。本発明の一態様は、ジェランガム粗生成物を提供し、前記ジェランガム粗生成物は、スフィンゴモナス・パウシモビリス CCTCC NO:M 2020483によってジェランガムを発酵生産した後、発酵液に対して固液分離、有機溶媒沈殿を行って得られたものであり、前記ジェランガム粗生成物は、前記超高強度高アシルジェランガム及びスフィンゴモナス・パウシモビリス CCTCC NO:M 2020483を含む。
【0019】
本発明の一態様は、前記超高強度の高アシルジェランガムを有する増粘剤、安定剤及び/又はゲル化剤組成物を提供する。本発明の一態様は、食品及び/又は或飲料において増粘剤、安定剤及び/又はゲル化剤として前記超高強度高アシルジェランガムを使用する方法を提供する。本発明の一態様は、前記超高強度高アシルジェランガムを有する食品及び/又は飲料を提供する。具体的に、前記食品は、ジャム、キャンディー、調味料、パン詰め物、乳製品、高齢者向け食品などであってもよく、前記飲料は、フルーツジュース、植物性タンパク質飲料、乳飲料などであってもよい。本発明の一実施例において、前記超高強度高アシルジェランガムは、ゲルキャンディーの調製に用いられる。
【0020】
本発明において、「高アシルジェランガム」とは、ジェランガム発酵液から直接回収された脱アシル化処理が行われていない高アシル形態のジェランガムを指し、本願において、「天然ジェランガム」と交換可能に使用することができる。
【0021】
本発明において、「発酵液」とは、ジェランガムを生産することができる菌株が接種された培地を指す。
【0022】
本発明において、「培地」は、ジェランガム生産菌株を培養してジェランガムを発酵生産するのに適した任意の培地であり、本分野で周知のように、当該培地は、前記菌株を有する以外にも、炭素源(グルコース、スクロース、フルクトースシロップ又はマルトースなどの一般的な糖類の1種類又は複数種類)、窒素源、リン酸塩及びたの無機塩(Ioannis Giavasis etc.,Critical Reviews in Biotechnology,20(3):177-211(2000)を参照)も含み得る。
【0023】
本発明において、「菌株の活性化」とは、保存されたグリセロールチューブ又は傾斜面培地菌株を種子培地に接種し、特定の条件で培養して菌株のバイオマスを増加させるプロセスを指す。活性化された菌株は、発酵タンクに移されて、ジェランガムを発酵生産することができる。
【0024】
本発明において、前記高アシルジェランガムが発酵生産された後、さらに、ジェランガムの分離及び/又は精製工程を含み得る。前記分離や精製は、本分野で周知の方法で行うことができ、例えば、Ioannis Giavasis etc., Critical Reviews in Biotechnology,20(3):177-211(2000)に開示の方法で行うことができる。
【0025】
本発明において、同じ条件で、スフィンゴモナス・パウシモビリス CCTCC NO:M 2020483の発酵生産から得られた超高強度高アシルジェランガムは、突然変異誘発なしのスフィンゴモナス・パウシモビリスから得られた高アシルジェランガムに比べて、ゲル強度が100%高かった。本発明に係る超高強度高アシルジェランガムは、そのゲル強度が通常の市販の高アシルジェランガムのゲル強度よりもはるかに高く、キャンディーなどの食品に応用される場合、調製された食品は、ゲル強度がはるかに高いため、同じ目標強度を達成しようとする場合、食品中のジェランガムの添加量を大幅に減らすことができ、予想外の技術的効果が得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで、実施例を用いて本発明を例示的に説明する。特に明記されていない限り、すべての部は、重量を基に計算したものである。
【0027】
実施例1 スフィンゴモナス・パウシモビリス CCTCC NO:M 2020483の突然変異誘発及び選別
1)スフィンゴモナス・パウシモビリスの原始菌株を活性化傾斜面に移し、30℃の一定温度で18時間培養した後、液体培地に移し、30℃、200rpmの条件で16時間培養して、菌液を取得する。
2)当該菌液を3000rpmで20分間遠心分離して、菌体を取得する。
3)同一体積の生理食塩水を添加して、菌懸濁液を取得する。
4)菌懸濁液2mlを取って75mmの滅菌ペトリ皿に入れ、30w紫外線ランプの下の30cm箇所に置き、30、60、90、180s照射して、一次突然変異誘発菌液を取得する。
5)紫外線突然変異誘発により得られた一次突然変異誘発菌液に、15%硫酸ジエチル0.04mlを添加し、30℃、200rpmの条件で、揺動床を振蕩しながら90min培養し、25%チオ硫酸ナトリウム溶液を添加して反応を停止させて、二次突然変異誘発菌液を取得する。
6)二次突然変異誘発菌液をPCAプレートに塗布し、30℃で32時間培養する。
7)大きくて光沢があり完全なコロニーを持つ単一のコロニーを選択して、5L振とうフラスコ発酵を行う。
8)発酵生成物を90℃に加熱してゲルを溶かし、撹拌しながら4倍体積のアルコールを添加して沈殿させ、遠心分離して沈殿繊維を取得する。
9)得られた高アシルジェランガムを55℃のブラスト乾燥オーブンに入れ、10時間乾燥させた後、粉砕してふるいにかける。
10)試料の高アシルジェランガムゲル強度を測定し、選別によって、高ゲル強度が1384のジェランガム生産菌株 Sphingomonas paucimobilis RG01を取得する。
【0028】
実施例2 スフィンゴモナス・パウシモビリス CCTCC NO:M 2020483によるジェランガムの発酵生産
1)菌株の活性化:突然変異誘発により得られたスフィンゴモナス・パウシモビリス Sphingomonas paucimobilis RG01を、滅菌種子培地60mlを有する500ml三角フラスコに接種し、30℃、200RPMで揺動床を振蕩しながら一晩培養した後、5%の接種量で二つの滅菌種子培地2kgを有する5L三角フラスコに接種し、16時間培養した後に、主要発酵接種に使用する。
【0029】
2)主要発酵培地の準備:50L発酵タンクにおいて、グルコース 30g/kg、大豆粉 4.2g/kg、KHPO 1g/kg、KHPO 1g/kg、MgSO・7HO 0.8g/kg、消泡剤 0.3g/kgの濃度、pH7.0±0.1で主要培養培地37.5kgを準備し、高温滅菌後に主要発酵培地とする。
【0030】
3)発酵プロセス制御:準備された上記培地を121℃で30分間滅菌し、ここで、グルコース溶液を個別に高温で滅菌し、30℃に降温した後、滅菌後のグルコース溶液を割合に従って滅菌の状態で発酵タンクに移し、次に換気及び攪拌の条件で、培養された種子液8%(3kg)を接種し、表1のプロセス条件に従って発酵させる。
【0031】
【表1】
【0032】
48時間の発酵後、グルコース濃度を0.2%以下まで低減させ、発酵を停止し、ゲルの収量と粘度を測定する。
【0033】
4)発酵結果:48時間の発酵後、ゲル含有量は、17.6g/kg(本分野又は従来のエタノール沈殿法で測定)に達し、粘度は、9975CPに達する。
【0034】
5)発酵液粘度の測定:新鮮な発酵液を取り、Brookfiled RVDV-II T粘度計を使用し、RV-6ローターを選択して、回転速度60rpmで測定する。
【0035】
6)高アシルジェランガムの抽出及び強度測定
提取:5kg上記ジェランガム発酵液を90℃に加熱してゲルを溶かし、攪拌状態で4倍体積のアルコールを添加して沈殿させ、遠心分離して沈殿繊維を取得し、沸騰、乾燥、粉砕し、ふるいにかけて、ジェランガム試料を取得する。
強度測定:上記高アシルジェランガム試料を取り、ゲル強度を測定し、それと二つの従来の高アシルジェランガム試料と比較し、ここで、前記従来試料は、同じ発酵条件で原始菌株から生産される。結果は、表2に示す通りである。
【0036】
【表2】
【0037】
実施例3:キャンディーの調製
1)高アシルジェランガム及び白糖Iを均一に乾式混合し、攪拌しながら水に添加し、水浴で90℃に加熱して5min溶解させる。
2)白糖II、シロップ、フルーツジュース、リン酸水素二カリウム、クエン酸カリウム、グリセリンをジャケット付き釜に入れ、沸騰になるまで加熱して、白糖を充分に溶解させる。
3)まだ熱いうちに溶かしたゲルを鍋に添加し、加熱し続ける。
4)シロップが目標固形分に近づいたら、クエン酸を加えてpHを調整し、均一に攪拌する。
5)ホットフィル後にキャンディーの強度測定を行い、測定結果は表3に示す通りである。
【0038】
【表3】
【0039】
上述試料の添加量は、重量パーセント含有量である。
【0040】
上記結果から分かるように、キャンディーにおいて、超高強度高アシルジェランガムは、通常の強度の試料に比べて、調製されたキャンディーの強度がはるかに高いため、同じキャンディー強度を実現しようとする場合、その中のコロイドの添加量を大幅に減らすことができる。

【外国語明細書】