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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174086
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】消毒システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20221115BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20221115BHJP
   A61L 2/18 20060101ALN20221115BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L9/20
A61L2/18
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132241
(22)【出願日】2022-08-23
(62)【分割の表示】P 2021573254の分割
【原出願日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】63/120,241
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000231198
【氏名又は名称】日本国土開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100136261
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 俊成
(72)【発明者】
【氏名】馬場 司
(72)【発明者】
【氏名】森本 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】小幡 博志
(72)【発明者】
【氏名】関口 政一
(57)【要約】
【課題】感染症の感染防止を可能にする。
【解決手段】消毒システムは、部屋の人の存在を感知する感知装置と、前記部屋に不可視光を照射する照射装置と、前記部屋に設けられ前記人を撮像する撮像装置と、前記感知装置が前記部屋の前記人の存在を感知しない際に、前記撮像装置が撮像した前記人の行動範囲に基づいて、前記照射装置により波長100~280nmの深紫外線(UV-C)を照射する制御装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の人の存在を感知する感知装置と、
前記部屋に不可視光を照射する照射装置と、
前記部屋に設けられ前記人を撮像する撮像装置と、
前記感知装置が前記部屋の前記人の存在を感知しない際に、前記撮像装置が撮像した前記人の行動範囲に基づいて、前記照射装置により波長100~280nmの深紫外線(UV-C)を照射する制御装置と、を備えた消毒システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記感知装置が前記部屋に人の存在を感知した際に、前記照射装置により波長205~230nmのC波紫外線を照射する請求項1に記載の消毒システム。
【請求項3】
前記照射装置は、前記部屋に設けられた什器に前記不可視光を照射する請求項1または請求項2に記載の消毒システム。
【請求項4】
前記人の咳またはくしゃみを検出する検出装置を備え、
前記制御装置は、前記感知装置が前記人の咳またはくしゃみを検出した際に、前記照射装置により波長205~230nmのC波紫外線を照射する請求項2に記載の消毒システム。
【請求項5】
前記照射装置の照射に関する表示を行う表示装置を備えた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の消毒システム。
【請求項6】
前記行動範囲を記憶するメモリを備えた請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の消毒システム。
【請求項7】
前記人の体温を非接触で検出する体温計を備えた請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の消毒システム。
【請求項8】
前記体温計の近傍に前記人の顔を認識する顔認識装置を設けた請求項7記載の消毒システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばウイルスを消毒可能な消毒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスや教室の居室内や、バス、電車、飛行機等の移動体内の座席に対応して動き検出部及び音検出部を設けて、どの座席で咳をした人がいるかを検知する咳検知装置が特許文献1に開示されている。また、特許文献1では、咳検知装置の検知結果に基づいて感染症を検知することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-117708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、感染症を検知するまでに留まっており、感染症の感染防止などの対策については開示されていなかった。
【0005】
そこで、本発明では、感染症の感染防止が可能な消毒システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る消毒システムは、部屋の人の存在を感知する感知装置と、前記部屋に不可視光を照射する照射装置と、前記部屋に設けられ前記人を撮像する撮像装置と、前記感知装置が前記部屋の前記人の存在を感知しない際に、前記撮像装置が撮像した前記人の行動範囲に基づいて、前記照射装置により波長100~280nmの深紫外線(UV-C)を照射する制御装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の消毒システムによれば、撮像装置が撮像した人の行動範囲に基づいて、制御装置が照射装置を制御するので効率よく部屋を消毒することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の第1の部屋と、第2の部屋を示す概要図である。
図2】本発明の実施形態の第2の部屋を示す概要図(断面図)である。
図3】本発明の実施形態の第1の部屋の主要部のブロック図である。
図4】本発明の実施形態の第2の部屋の主要部のブロック図である。
図5】本発明の実施形態の第1の部屋の制御装置により実行されるフローチャートを示す図である。
図6】本発明の実施形態の第2の部屋の制御装置により実行されるフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、本実施形態の第1の部屋1と、第2の部屋20とを示す概要図である。図1に示すように、第1の部屋1は第2の部屋20と連結されており、第2の部屋20への出入りは、出入口12を用いて、第1の部屋1から行うものである。また、第1の部屋1は、第2の部屋20側の出入口12とは別に、出入口13を有している。本実施形態においては、第2の部屋20は工事現場などに設置される仮設事務所や休憩室としており、第1の部屋1は第2の部屋20の出入口に設置され、第2の部屋20へ入室する前に消毒を行う部屋としている。
第2の部屋20は、工事現場の規模により大小さまざまな広さの仮設事務所や休憩室が設置される。このため、第1の部屋1の広さは第2の部屋20に応じて変更されるものであり、また、第2の部屋20への入室前における消毒を目的としているため、第2の部屋20よりは狭いものとしている。
【0011】
第1の部屋1は、人の入室を感知する第1の感知装置2と、第1の部屋1内に不可視光を照射する第1の照射装置3と、第1の部屋1内に流体を供給する第1の流体供給装置5と、第1の撮像装置8と、を備えている。
【0012】
第1の感知装置2は、第1の部屋1への人の入室を感知するものであり、例えば赤外線や超音波、可視光によって人の存在を検知する人感センサーを用いることができる。第1の感知装置2は、第1の部屋1の大きさに応じて、例えば第1の部屋1の上方(例えば天井や、天井付近)に設置してもよく、第1の部屋1の出入口付近(出入口12と、出入口13との複数個所)に設置してもよい。
【0013】
第1の部屋1と、第2の部屋20との間の出入口12側付近にセンサー7(図3参照)として体温計を設置するようにし、併せて計時装置を設置するようにしてもよい。体温計としては、非接触式の体温計が好ましく、例えば赤外線を利用した体温計を用いることができるが、これに限定されるものではない。この場合、第1の部屋1から第2の部屋20へ入室する前に計測できるように、上記出入口12付近の側面の壁などに設置し、第2の部屋20の入室前に体温計に対向して測定するようにするとよい。
【0014】
第1の部屋1と、第2の部屋20との間の出入口12側付近に第1の撮像装置8としてカメラなどを設置するようにしてもよい。第1の撮像装置8により撮像された静止画、もしくは動画などから、入退室した人物を特定するとともに、第1の撮像装置8に内蔵されている、もしくは別途設けられた計時装置を用いて、第1の部屋1へ入退室した時刻などを記録しておくとよい。これらの記録から、第1の部屋1および第2の部屋20へ在室していた人物とその時間帯を特定することができる。
【0015】
第1の照射装置3は、第1の部屋1の上方(例えば天井や、天井付近)に設けられ、第1の部屋1の上方から下方へ向けて紫外線などの不可視光を照射するものである。第1の照射装置3で照射する紫外線は、波長205~230nmの遠紫外線C波を照射している。波長205~230nmの遠紫外線C波は、ヒトの細胞には到達しないため人体に害を及ぼさないが、空気中や物体の表面にある細菌やウイルスには浸透し、消毒できるからである。波長205~230nmの遠紫外線C波を採用すれば、第1の部屋1内に人が在室している場合であっても第1の照射装置3から不可視光を安全に照射することができる。以下、本実施形態において、人に対しても無害な消毒のことを第1の消毒という。
【0016】
第1の部屋1内に人が在室していない場合において、第1の照射装置3で照射する紫外線は、波長100~280nmの深紫外線(UV-C)であってもよい。この深紫外線(UV-C)は波長205~230nmの遠紫外線C波よりも強い殺菌作用を示すので、より確実に、第1の部屋1内の消毒が可能である。ただし、ヒトの細胞に対してもDNA損傷を誘導し、人に対して有害なため、第1の部屋1内に人が在室していない場合に限り実施する。以下、本実施形態において、より強力な消毒を行えるが、人に対しては有害となる消毒のことを第2の消毒という。
【0017】
第1の照射装置3で照射する紫外線は、人体に影響の無い波長205~230nmの遠紫外線C波と、より強力な殺菌効果が期待できるが人に対しては有害となる波長100~280nmの深紫外線(UV-C)との2種類以上となる。そのため、第1の照射装置3として、波長205~230nmの遠紫外線C波を発する照射装置と、波長100~280nmの深紫外線(UV-C)を発する照射装置との2種類以上を第1の照射装置3として使用してもよいし、波長切替機能を有している照射装置を第1の照射装置3として使用してもよい。
【0018】
第1の照射装置3の不可視光による消毒は、第1の部屋1へ入室した人に限らず、第1の部屋1内部全体の消毒を実施するものであり、第1の部屋1へ入室した人が接触する場所や、人体に付着していたウイルスや細菌が拡散し、付着する恐れのある場所として、床と、壁と、ドアノブや取手などを対象に消毒を実施する。このような消毒対象に第1の照射装置3から不可視光を照射するために、第1の照射装置3を複数個設けたり、床や壁に第1の照射装置3を設けたりしてもよい。また、第1の照射角度調整装置4(図3参照)を設けて、第1の照射装置3の照射角度を調整するようにしてもよい。
【0019】
第1の流体供給装置5は第1の部屋1の上方(例えば天井や、天井付近)に設けられ、第1の部屋1の上方から下方に向けて流体を噴霧するものである。第1の流体供給装置5の一例は、消毒領域に消毒可能な液体を供給するものである。消毒可能な液体としては、アルコール系、アルデヒド系、塩素系、ヨウ素系、酸化剤系、第4級アンモニウム塩系などの各種を用いることができる。本実施形態では、第1の部屋1に人が在室している場合はアルコール系の消毒液を用いる(第1の消毒)。第1の部屋1に人が在室していない場合はアルコール系以外の消毒液を用いてもよい(第2の消毒)。これにより、第1の部屋1に在室している人に害が及ばないようにしている。この場合、第1の流体供給装置5に複数の容器を設け、一方の容器にはアルコール系の消毒液を入れ、他方の容器にはアルコール系以外の消毒液を選択するようにしてもよい。なお、容器の数は3つ以上でもよく、供給する消毒液は2種類以上でもよい。また、第1の部屋1内部の消毒領域を消毒するため、第1の流体供給装置5を複数個設けたり、床や壁に第1の流体供給装置5を設けたりしてもよい。また、第1の供給角度調整装置6(図3参照)を設けて、第1の流体供給装置5の供給角度を調整するようにしてもよい。
【0020】
第1の流体供給装置5は、流体として圧縮された空気を供給するようにしてもよい。この場合、第1の流体供給装置5は出入口12や出入口13付近の上方(例えば天井や天井付近)に設置し、第1の部屋1への入室者の衣服などに付着していた細菌やウイルスを取り除くようにしてもよい。また、エアシャワーを形成するようにして、第1の部屋1の空気が第2の部屋20へ流入しないようにしてもよい。
【0021】
以下、図3のブロック図を用いて、第1の部屋1内で使用する機器構成の説明を行う。第1のメモリ9は、不揮発性のメモリ(例えばフラッシュメモリ)であり、前述した第1の部屋1の消毒履歴(第1の照射装置3の照射履歴や第1の流体供給装置5の供給履歴)や、第1の部屋1へ出入りする人の顔のデータや、体温計で計測したデータや時刻などを記憶している。
【0022】
第1の通信装置10は、ホストコンピュータやインターネット等の広域ネットワークにアクセスする無線通信ユニットである。本実施形態では、第1の通信装置10は第1の感知装置2の感知結果や、第1の照射装置3の照射履歴や、第1の流体供給装置5の供給履歴などをホストコンピュータに送信する。
【0023】
第1のメモリ9は、第1の感知装置2の感知結果や、第1の照射装置3の照射履歴や、第1の流体供給装置5の供給履歴などを記憶させてもよい。また、第1のメモリ9は、第1の撮像装置8による撮像記録とその時刻や、センサー7による検出結果などを記憶させてもよい。
【0024】
第1の制御装置11は、CPUを有し、第1の部屋1内の細菌やウイルスを消毒するための制御を行う。なお、第1の制御装置11による第1の部屋1内の細菌やウイルスを消毒するための制御については後述する。
【0025】
図2は、第2の部屋20の内部を示す概略図である。第2の部屋20は建設現場における仮設事務所や休憩室としており、机40や椅子41、棚42などの什器類と、人の入室や在室を感知する第2の感知装置21と、第2の部屋20内に不可視光を照射する第2の照射装置22と、第2の部屋20内に流体を供給する第2の流体供給装置24と、在室中の人の咳またはくしゃみを検出する検出装置26(図4参照)と、第2の撮像装置27と、を備えている。なお、什器類のレイアウトは一例であり、各種の変更が可能である。
【0026】
第2の感知装置21は、第2の部屋20への人の入室を感知するものであり、第1の感知装置2と同じく、例えば赤外線や超音波、可視光によって人の存在を検知する人感センサーを用いることができる。第2の感知装置21は、例えば第2の部屋20の上方(天井や、天井付近の壁など)に設置する。図2では第2の感知装置21は第2の部屋20の天井の角のうち、対角となる2箇所への設置としているが、第2の感知装置21は、天井の中央付近に1箇所の設置でもよいし、3つ以上設置してもよく、第2の部屋20の大きさに応じて設置するものである。
【0027】
また、第2の部屋20内全体を撮影出来るような場所(たとえば、天井や天井付近の壁)に、第2の撮像装置27としてカメラなどを設置するようにしてもよい。第2の部屋20に人が在室していない時に消毒を実施する場合(第2の消毒)、第2の撮像装置27により撮像された写真、もしくは動画などから、第2の部屋20に入室した人の行動を認識し、そのデータを元に消毒領域を決定することができる。
【0028】
検出装置26は、特開2018-117708号公報に記載されているような、マイクロフォンのような音検出部であり、在室している人の咳やくしゃみを検出するものである。検出装置26の出力に基づき、音信号の周波数分析により検出装置26が検出した音信号が咳やくしゃみかどうかを検出することができる。この場合、検出装置26が検出した音信号を無線によりホストコンピュータに送信して、このホストコンピュータにより周波数分析を行ってもよく、第2の制御装置30(図4参照)により周波数分析を行ってもよい。
【0029】
検出装置26として、特開2018-117708号公報に記載されているような加速度センサーを有した動き検出部を設けて、在室している人の咳やくしゃみを検出するようにしてもよい。ホストコンピュータのメモリ、または第2のメモリ28(図4参照)に人がくしゃみをした時の加速度の数値やパターンをリファレンスとして記憶させておき、加速度センサーが検出した結果との比較により在室している人が咳やくしゃみをしたかどうかを検出することができる。
【0030】
検出装置26としてマイクロフォンと加速度センサーとの両方を備えることにより、精度よく在室している人の咳やくしゃみを検出することができる。なお、マイクロフォンと加速度センサーはそれぞれ1つでも複数でもよく、その配置場所は任意に設定することができるが、在席中の咳やくしゃみを検出するために、在室者の座席に対向する形で机40の上などに設けることが好ましい。
【0031】
第2の部屋20は、ある程度の広さを有し、かつ在室している人が複数人いることが考えられる。そのため、検出装置26を各座席の机40の上に複数個設けることで、在室している人のうち、咳やくしゃみを行った人がどの領域にいるのかを特定でき、咳やくしゃみを検出した領域をピンポイントに消毒することが可能である。また、検出装置26に係るコストを抑えるために、騒音計などの音の大きさを検出できる機器を複数個所(例えば壁側など)に設置して、より大きい音を検出した機器の近くの領域を咳やくしゃみが発生した領域と特定するようにしてもよい。
【0032】
検出装置26が在室している人の咳やくしゃみを検出したタイミングで、第2の照射装置22と第2の流体供給装置24の少なくとも一方を駆動すれば、咳やくしゃみに細菌やウイルスが含まれていた場合でも、この細菌やウイルスを即座に消毒することができる。
【0033】
第2の照射装置22は、第2の部屋20の上方(例えば天井や、天井付近)に設けられ、第2の部屋20の上方から下方へ向けて紫外線などの不可視光を照射するものである。第2の照射装置22は、第1の照射装置3と同じく、本実施形態においては、紫外線として波長205~230nmの遠紫外線C波を照射している。これは、波長205~230nmの遠紫外線C波は、ヒトの細胞には到達しないため人体に害を及ぼさないが、空気中や物体の表面にある細菌やウイルスには浸透し、消毒できると考えられているからである。波長205~230nmの遠紫外線C波を採用すれば、第2の部屋20内に人が入室している場合であっても第2の照射装置22から不可視光を安全に照射することができる(第1の消毒)。
【0034】
第2の照射装置22は、第2の部屋20へ入室した際に入室した人が接触する領域と第2の部屋20に入室した人が咳またはくしゃみをした際に、咳またはくしゃみが飛散付着した可能性がある領域として、出入口12のドアノブや取手と、机40、椅子41、棚42などの什器類とに、遠紫外線C波を照射する。このような消毒領域に遠紫外線C波を照射するために、第2の照射装置22を複数個設けたり、床側や壁に第2の照射装置22を設けたりしてもよい。また、第2の照射角度調整装置23を設けて、第2の照射装置22の照射角度を調整するようにしてもよい。第2の照射装置22による遠紫外線C波の照射により、第2の部屋20に浮遊している細菌やウイルスを消毒することも可能である。
【0035】
また、第2の照射装置22は、第2の部屋20への人の在室を感知していない際には、在室していた人の手が触れたり、咳またはくしゃみをした際に咳またはくしゃみが飛散付着した可能性がある場所として、出入口12のドアノブや取手と、机40、椅子41、棚42などの什器類と、床と、壁とを対象に、第2の照射装置22から波長100~280nmの深紫外線(UV-C)を照射するようにしてもよい(第2の消毒)。この深紫外線(UV-C)は波長205~230nmの遠紫外線C波よりも強い殺菌作用を示すが、ヒトの細胞に対してもDNA損傷を誘導し、人に対して有害であるため、第2の部屋20への人の在室を感知していない場合に、第2の照射装置22から深紫外線(UV-C)の照射を実施する。なお、第2の照射装置22から深紫外線(UV-C)を照射している時に、第2の部屋20へ人が入室してきた場合には即座に深紫外線(UV-C)の照射を停止する。
【0036】
第2の流体供給装置24は第2の部屋20の上方(例えば天井や、天井付近)に設けられ、第2の部屋20の上方から下方に向けて流体を噴霧するものである。第2の流体供給装置24の一例は、在室していた人の手が触れたり、咳またはくしゃみをした際に咳またはくしゃみが飛散付着した可能性がある場所として、机40や椅子41や棚42などの什器類と、床と、壁とを対象に、消毒可能な液体を供給するものである。消毒可能な液体としては、第1の流体供給装置5と同じく、アルコール系、アルデヒド系、塩素系、ヨウ素系、酸化剤系、第4級アンモニウム塩系などの各種を用いることができる。本実施形態では、第2の部屋20に人が在室している場合はアルコール系の消毒液を用いる(第1の消毒)。消毒室に人が在室していない場合はアルコール系以外の消毒液を用いてもよい(第2の消毒)。これにより、第2の部屋20に在室している人に害が及ばないようにしている。この場合、第2の流体供給装置24に複数の容器を設け、一方の容器にはアルコール系の消毒液を入れ、他方の容器にはアルコール系以外の消毒液を選択するようにしてもよい。なお、容器の数は3つ以上でもよく、供給する消毒液は2種類以上でもよい。また、第2の部屋20の消毒領域を消毒するため、流体供給装置を複数個設けたり、床側や壁に流体供給装置を設けたりしてもよい。
【0037】
第2の流体供給装置24は、流体として圧縮された空気を供給するようにしてもよい。この場合、第2の流体供給装置24は第2の部屋20のうち出入口12付近の上方(例えば天井や天井付近)に設置し、第2の部屋20への入室者の衣服などに付着していた細菌やウイルスを取り除くようにしてもよい。また、エアシャワーを形成するようにして、第1の部屋1の空気が第2の部屋20へ流入しないようにしてもよい。
【0038】
以下、図4のブロック図を用いて、第2の部屋20内で使用する機器構成の説明を行う。第2のメモリ28は、不揮発性のメモリ(例えばフラッシュメモリ)であり、前述した加速度の数値パターンや、第2の部屋20の消毒履歴(第2の照射装置22の照射履歴や第2の流体供給装置24の供給履歴)や、第2の部屋20へ出入りする人の顔のデータ、第2の部屋20へ入室した人の行動範囲などを記憶している。
【0039】
第2の通信装置29は、ホストコンピュータやインターネット等の広域ネットワークにアクセスする無線通信ユニットである。本実施形態では、第2の通信装置29は第2の感知装置21の感知結果や、第2の照射装置22の照射履歴や、第2の流体供給装置24の供給履歴などをホストコンピュータに送信する。
【0040】
第2のメモリ28は、第2の感知装置21の感知結果や第2の照射装置22の照射履歴や、第2の流体供給装置24の供給履歴などを記憶させてもよい。また、第2のメモリ28は、第2の撮像装置27による撮像記録などを記憶させてもよい。
【0041】
第2の制御装置30は、CPUを有し、第2の部屋20内の細菌やウイルスを消毒するための制御を行う。なお、第2の制御装置30による第2の部屋20内の細菌やウイルスを消毒するための制御については後述する。
【0042】
(フローチャートの説明)
以上のように構成された、本実施形態の制御装置による第1の部屋1内の細菌やウイルスを消毒するための制御について、図5のフローチャートに沿って説明を続ける。なお、本フローチャートは、人が第1の部屋1に入室した時から実施されるものとする。なお、第1の部屋1への入室は、第2の部屋20と連結された出入口12からの入室(第2の部屋20からの退出)と、第2の部屋20側とは別の出入口13からの入室が考えられるが、今回は出入口13から第1の部屋1へ入室するものとして説明を行う。
【0043】
第1の制御装置11は、第1の感知装置2による検出を行い、人が第1の部屋1へ入ったかどうかを検出する(ステップS1)。
【0044】
第1の制御装置11は、人が第1の部屋1への入室を検出した場合に、第1の照射装置3や第1の流体供給装置5による第1の消毒(人体に無害な消毒)を実施する(ステップS2)。第1の照射装置3は、人が在室中なので人体に影響のない波長205~230nm、好ましくは波長222nm付近の遠紫外線C波を照射する。第1の照射装置3による遠紫外線C波の照射時間は、遠紫外線C波の強度に応じて数秒から数分の間で設定することができる。第1の流体供給装置5は人体に影響のないアルコール系の消毒液を用いて消毒を行う。
【0045】
なお、ステップS2において、第1の制御装置11が人の入室を検知した際に、前述した体温計による体温測定を行うようにしてもよい。複数の人が入室することが考えられるので、体温計設置場所付近に顔認識装置を設けて、入室者の顔を認識し、入室者と測定した体温やその時刻とを紐づけるようにしてもよい。この場合、第1のメモリ9に入室者の顔のデータを登録しておけばよい。
【0046】
第1の制御装置11は、第1の感知装置2により第1の部屋1に人が在室しているかどうかを確認する(ステップS3)。ここで、人が第1の部屋1に在室中であれば、第1の消毒を継続して行い(ステップS2)。人が第1の部屋1から退出し、第1の部屋1に人が在室していない場合には、第1の照射装置3や第1の流体供給装置5による第2の消毒を実施する(ステップS4)。これは、第1の部屋1は、第2の部屋20への入室前に消毒を実施する部屋であり、第1の部屋1への人の滞在時間は短く、第1の消毒であるステップS2での消毒では十分な消毒を実施出来ない可能性があるため、人が第1の部屋1から退室した後も消毒を実施する。ここでは、人が第1の部屋1から退室したとしてステップS4へ進むものとする。
【0047】
第1の部屋1から退室した場合、第1の制御装置11は、第2の消毒として、第1の照射装置3からより殺菌効果の強い波長100~280nmの深紫外線(UV-C)を照射する。第1の照射装置3による深紫外線(UV-C)の照射時間は、深紫外線(UV-C)の強度に応じて数秒から数分の間で設定することができる。また、第1の流体供給装置5による消毒では、アルコール系以外の消毒液を用いることができる。なお、第1の照射装置3や第1の流体供給装置5による第2の消毒を実施している際に、第1の部屋1へ人が入室してくる可能性があるため、第1の部屋1への人の入室の有無を感知してフィードバックする必要がある(ステップS5)。ここでは、第2の消毒を実施中に第1の部屋1へ人が入室したとしてステップS6に進むものとする。
【0048】
第1の制御装置11は、第2の消毒を実施中に第1の部屋1への人の入室を感知した場合には、第1の照射装置3や第1の流体供給装置5による第2の消毒を即座に停止して(ステップS6)、ステップS2へと戻り(ステップS7)、人体に影響の無い第1の消毒の実施に切り替え、前述したステップS3~ステップS5までを繰り返す。ここで、ステップS5において、第2の消毒を実施中に第1の部屋1への人の入室が無いものとして説明を続ける。
【0049】
ステップS5において、第2の消毒を実施中に、第1の部屋1への人の入室が無かった場合、第1の制御装置11は、第1の照射装置3や第1の流体供給装置5の稼働が一定時間経過したとして第2の消毒を完了し(ステップS8)、すべての動作を完了する。
【0050】
続けて、本実施形態の制御装置による第2の部屋20内の細菌やウイルスを消毒するための制御について、図6のフローチャートに沿って説明を続ける。なお、本フローチャートは、人が第2の部屋20に入室した時に実施されるものとする。
【0051】
第2の制御装置30は、第2の感知装置21による検出を行い、人が第2の部屋20へ入ったかどうかを検出する(ステップS11)。ここでは、人が第2の部屋20へ入室したものと判断してステップS12に進むものとする。
【0052】
第2の制御装置30が第2の部屋20への人の入室を感知した場合、第2の制御装置30は、第2の照射装置22と第2の流体供給装置24との少なくとも一方を駆動して出入口12付近(ドアノブ、扉の取手など)の消毒(第1の消毒)を実施する(ステップS12)。第1の消毒においては、人が在室している状況であることから、第2の照射装置22による消毒では、波長205~230nm、好ましくは波長222nm付近の遠紫外線C波の照射を実施し、第2の流体供給装置24では、アルコール系の消毒液を用いた消毒を実施する。
【0053】
次に、第2の部屋20へ人が在室中である状態では、第2の制御装置30は、検出装置26により、在室者が咳やくしゃみを行ったかどうかの検出を行い(ステップS13)、検出結果に基づいて消毒を実施するかどうかを判断する。ここでは在室者の咳やくしゃみを検出したとしてステップS14へと進む。
【0054】
第2の制御装置30は、第2の照射装置22と第2の流体供給装置24との少なくとも一方を駆動して、咳やくしゃみを検知した箇所周りの消毒(第1の消毒)を実施する(ステップS14)。咳やくしゃみを検知した際の消毒では、人が在室している状態であることから、第2の制御装置30は、第2の照射装置22による消毒では、波長205~230nm、好ましくは波長222nm付近の遠紫外線C波の照射を実施し、第2の流体供給装置24では、アルコール系の消毒液を用いた消毒を実施する。
【0055】
第2の部屋20に在室している人の咳やくしゃみとして、同一の人が連続で発する可能性や、在室している人の複数人が同時または連続して咳やくしゃみを発する可能性がある。そのため、第2の制御装置30は、連続した咳やくしゃみを感知した際には、第2の照射装置22と第2の流体供給装置24の両方を駆動するようにしてもよい。第2の照射装置22と第2の流体供給装置24の消毒対象として、第2の制御装置30は、第2の照射装置22は咳やくしゃみを発した人やその周辺を対象に照射して消毒を実施するようにし、第2の流体供給装置24は机などの什器類を対象に消毒を実施するようにしてもよい。また、第2の制御装置30は、咳やくしゃみを連続して感知した場合には、第2の照射装置22による不可視光の照射時間を長くするようにしてもよいし、第2の流体供給装置24からの流体の噴霧時間を長く(噴霧量を多く)するようにしてもよい。
【0056】
第2の制御装置30は、ステップS14の第1の消毒を実施した後に、ステップS13へと戻り(ステップS15)、引き続き第2の部屋20に在室している人が咳やくしゃみを行ったかどうかの検出を行う(ステップS13)。ここでは第2の部屋20に在室している人の咳やくしゃみを検出していないとしてステップS16へと進む。
【0057】
第2の制御装置30は、第2の感知装置21により第2の部屋20への在室者の有無を確認する。第2の部屋20に人が在室している場合には、第2の制御装置30は上記ステップS13からステップS16を繰り返す。ここで、第2の部屋20から人が退出した(第2の部屋20への在室者無し)として、ステップS17へと進む。
【0058】
第2の制御装置30は、第2の部屋20に設置された第2の撮像装置27により在室者の行動範囲を撮影して、その行動記録を第2のメモリ28に記憶させておく。第2の制御装置30は、第2の部屋20の在室者の行動範囲について、第2のメモリ28に記録された情報を読み取って確認を行う(ステップS17)。
【0059】
第2の制御装置30は、第2のメモリ28から読み取った第2の部屋20内の在室者の行動範囲を元に、第2の照射装置22と第2の流体供給装置24との少なくとも一方を駆動して第2の消毒を実施する(ステップS18)。第2の消毒においては、人が在室していない状態であることから、第2の照射装置22では、強い殺菌作用を示す波長100~280nmの深紫外線(UV-C)を照射して消毒を実施することができる。第2の流体供給装置24ではアルコール系以外の消毒液を用いた消毒を実施することができる。
【0060】
第2の照射装置22による消毒の効果(紫外線殺菌の効果)は、光の強さ(照度)と、光を当てる時間(照射時間)の積算(積算光量または紫外線照射量)で決まる。そのため、第2の照射装置22よる照射時間は、第2の照射装置22に用いる照度にもよるが、数分から数十分程度の時間が必要である。在室者の行動範囲における消毒が完了すると、フローチャートが終了となる。
【0061】
第1の照射装置3や第2の照射装置22(以下、照射装置)および、第1の流体供給装置5や第2の流体供給装置24(以下、流体供給装置)による消毒においては、人が目視では認識できないものであるため、消毒を実施している状態なのかどうかを認識出来るようにすることが望ましい。例えば、照射装置による消毒を実施している場合には、照射している種類を表示するモニターを設置したり、照射している波長毎に(人体に有害な波長かどうかで)、予め決められた色のランプ等を点灯させたりして、消毒状況を明示することができる。さらに、人体に有害な深紫外線(UV-C)を用いた消毒を実施している場合には、警告音を鳴らすようにして、入室するのが危険な事を認知しやすくすることが望ましく、照射を実施する前から警告音を鳴らすようにするとよい。
【0062】
以上で説明した実施形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加えることは可能である。第2の部屋20として建設現場などの仮設事務所や休憩室としているが、これ以外にも様々な建物として、学校、病院、オフィス、商業施設などで実施することができる。
【0063】
また、第1の部屋1および第2の部屋20へ入退室した人とその入退室の時刻とを第1のメモリ9もしくは第2のメモリ28に記録しておくことにより、入退室した人の中に感染者の発生が確認された際には、感染者と濃厚接触の状態となった人を割り出すことも可能となる。
【符号の説明】
【0064】
1 第1の部屋(消毒室) 2 第1の感知装置
3 第1の照射装置 4 第1の照射角度調整装置
5 第1の流体供給装置 6 第1の流体供給角度調整装置
7 センサー 8 第1の撮像装置
9 第1のメモリ 10 第1の通信装置
11 第1の制御装置 12 出入口(第1の部屋と第2の部屋間)
13 出入口(外側) 20 第2の部屋
21 第2の感知装置 22 第2の照射装置
23 第2の照射角度調整装置 24 第2の流体供給装置
25 第2の流体供給角度調整装置 26 検出装置
27 第2の撮像装置 28 第2のメモリ
29 第2の通信装置 30 第2の制御装置
40 机 41 イス
42 棚
図1
図2
図3
図4
図5
図6