(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174144
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】チクングニヤウイルスの抗体媒介性中和
(51)【国際特許分類】
C07K 16/10 20060101AFI20221115BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20221115BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221115BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221115BHJP
C12N 5/12 20060101ALI20221115BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221115BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221115BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221115BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221115BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20221115BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20221115BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221115BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221115BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20221115BHJP
【FI】
C07K16/10
G01N33/569 L ZNA
C07K16/46
C07K19/00
C12N5/12
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P31/14
A61K39/395 S
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022137389
(22)【出願日】2022-08-31
(62)【分割の表示】P 2021092090の分割
【原出願日】2016-04-14
(31)【優先権主張番号】62/147,354
(32)【優先日】2015-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】512072577
【氏名又は名称】ヴァンダービルト ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・イー・クロウ
(72)【発明者】
【氏名】スコット・エー・スミス
(72)【発明者】
【氏名】テレンス・ダーモディ
(72)【発明者】
【氏名】ローリー・シルヴァ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】チクングニヤウイルス(CHIKV)に結合し中和する抗体、およびそれを使用するための方法を提供する。
【解決手段】単離および/または組換えモノクローナル抗体であって、該抗体または抗体フラグメントは、特定配列のクローン対重鎖および軽鎖CDR配列を含む、前記単離および/または組換えモノクローナル抗体を提供する。また、対象におけるチクングニヤウイルス感染を検出する方法であって:(a)前記対象由来のサンプルを、前記単離および/または組換え抗体または抗体フラグメントと接触させること;および(b)前記サンプル中のE2に前記抗体または抗体フラグメントを結合させることによって、前記サンプル中のチクングニヤウイルス糖タンパク質E2を検出すること;を含む、前記方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるチクングニヤウイルス感染を検出する方法であって:
(a)前記対象由来のサンプルを、それぞれ表3および表4に記載のクローン対重鎖および軽鎖CDR配列を有する抗体または抗体フラグメントと接触させること;および
(b)前記サンプル中のE2に前記抗体または抗体フラグメントを結合させることによって、前記サンプル中のチクングニヤウイルス糖タンパク質E2を検出すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記サンプルは体液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルは血液、痰、涙、唾液、粘液または血清、尿または糞便である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
検出は、ELISA、RIA、またはウェスタンブロットを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
2回目の工程(a)および(b)を実行すること、ならびに、1回目のアッセイと比較して、E2レベルの変化量を測定することをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
抗体または抗体フラグメントは、表1に記載のクローン対可変配列によってコードされる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体または抗体フラグメントは、表1に記載のクローン対可変配列に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体または抗体フラグメントは、表1に記載のクローン対配列に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体または抗体フラグメントは、表2に記載のクローン対配列に記載の軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体または抗体フラグメントは、表2に記載のクローン対配列に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体または抗体フラグメントは、表2に記載のクローン対配列に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
抗体フラグメントは、組換えScFv(一本鎖可変フラグメント)抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、またはFvフラグメントである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
チクングニヤウイルスに感染した対象を処置するか、またはチクングニヤウイルスに罹患するリスクのある対象の感染の可能性を低減させる方法であって、
前記対象に、それぞれ表3および表4に記載のクローン対重鎖および軽鎖CDR配列を有
する抗体または抗体フラグメントを送達することを含む、前記方法。
【請求項14】
抗体または抗体フラグメントは、表1に記載のクローン対軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
抗体または抗体フラグメントは、表1に記載のものに対して95%の同一性を有するクローン対軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体または抗体フラグメントは、表1に記載のクローン対配列に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体または抗体フラグメントは、表2に記載のクローン対配列に記載の軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体または抗体フラグメントは、表2に記載のクローン対配列に対して70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
表2に記載のクローン対配列に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
抗体フラグメントは、組換えScFv(一本鎖可変フラグメント)抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、またはFvフラグメントである、請求項13~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体はIgGである、請求項13~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体はキメラ抗体である、請求項13~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体または抗体フラグメントは感染前に投与される、請求項13~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体または抗体フラグメントは感染後に投与される、請求項13~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
送達は、抗体もしくは抗体フラグメントの投与、または該抗体もしくは抗体フラグメントをコードするRNAもしくはDNA配列もしくはベクターによる遺伝子送達を含む、請求項13~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
モノクローナル抗体であって、該抗体または抗体フラグメントは、それぞれ表3および4に記載のクローン対重鎖および軽鎖CDR配列によって特徴付けられる、前記モノクローナル抗体。
【請求項27】
前記抗体または抗体フラグメントは、表1に記載のクローン対配列に記載の軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる、請求項26に記載のモノクローナル抗体。
【請求項28】
前記抗体または抗体フラグメントは、表1に記載のクローン対配列に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコード
される、請求項26に記載のモノクローナル抗体。
【請求項29】
前記抗体または抗体フラグメントは、表1に記載のクローン対配列に対して少なくとも95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる、請求項26に記載のモノクローナル抗体。
【請求項30】
前記抗体または抗体フラグメントは、表2に記載のクローン対配列に記載の軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項26に記載のモノクローナル抗体。
【請求項31】
前記抗体または抗体フラグメントは、表2に記載のクローン対配列に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項26に記載のモノクローナル抗体。
【請求項32】
抗体フラグメントは、組換えScFv(一本鎖可変フラグメント)抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、またはFvフラグメントである、請求項26~31のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項33】
前記抗体はキメラ抗体であるか、または糖タンパク質以外のチクングニヤウイルス抗原を標的とする二重特異性抗体である、請求項26~31のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項34】
前記抗体はIgGである、請求項26~33のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項35】
前記抗体または抗体フラグメントは細胞浸透性ペプチドをさらに含み、かつ/またはイントラボディである、請求項26~34のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項36】
抗体または抗体フラグメントをコードするハイブリドーマまたは改変細胞であって、該抗体または抗体フラグメントは、それぞれ表3および表4に記載のクローン対重鎖および軽鎖CDR配列によって特徴付けられる、前記ハイブリドーマまたは改変細胞。
【請求項37】
前記抗体または抗体フラグメントは、表1に記載のクローン対配列に記載の軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる、請求項36に記載のハイブリドーマまたは改変細胞。
【請求項38】
前記抗体または抗体フラグメントは、表1に記載のクローン対可変配列に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる、請求項36に記載のハイブリドーマまたは改変細胞。
【請求項39】
前記抗体または抗体フラグメントは、表1に記載のクローン対可変配列に対して95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる、請求項36に記載のハイブリドーマまたは改変細胞。
【請求項40】
前記抗体または抗体フラグメントは、表2に記載のクローン対配列に記載の軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項36に記載のハイブリドーマまたは改変細胞。
【請求項41】
前記抗体または抗体フラグメントは、表2に記載のクローン対可変配列に対して少なくとも70%、80%、または90%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によってコードされる、請求項36に記載のハイブリドーマまたは改変細胞。
【請求項42】
前記抗体または抗体フラグメントは、表2に記載のクローン対配列に対して95%の同
一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を含む、請求項36に記載のハイブリドーマまたは改変細胞。
【請求項43】
抗体フラグメントは、組換えScFv(一本鎖可変フラグメント)抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、またはFvフラグメントである、請求項36~42のいずれか1項に記載のハイブリドーマまたは改変細胞。
【請求項44】
前記抗体はキメラ抗体である、請求項36~43のいずれか1項に記載のハイブリドーマまたは改変細胞。
【請求項45】
前記抗体はIgGである、請求項36~43のいずれか1項に記載のハイブリドーマまたは改変細胞。
【請求項46】
前記抗体または抗体フラグメントは細胞浸透性ペプチドをさらに含み、かつ/またはイントラボディである、請求項36~45のいずれか1項に記載のハイブリドーマまたは改変細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられている、2015年4月14日出願の米国仮出願第62/147,354号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)から付与された助成金番号K08 AI103038、F32 AI096833、およびU54 AI057157の下で政府の支援によってなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
1.開示の分野
本開示は、概して、医学、感染症、および免疫学の分野に関する。より詳細には、本開示は、チクングニヤウイルスを中和する抗体に関する。
【背景技術】
【0004】
2.背景
チクングニヤウイルス(CHIKV)は、トガウイルス科のアルファウイルス属に属するエンベロープ型のプラス鎖(positive-sense)RNAウイルスであり、ヤブカ属(Aedes)の蚊によって伝播される。成熟CHIKVビリオンは、前駆体ポリタンパク質p62-E1からタンパク質分解的切断により生じる2つの糖タンパク質E1およびE2を含む。E2はウイルス付着において機能し、一方E1は膜融合を媒介してウイルスが侵入できるようにする(非特許文献1)。ヒトでは、CHIKV感染は発熱と関節痛を引き起こし、これらは重症である場合もあり、また場合によっては何年も続く(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。CHIKVは、アフリカのサハラ以南の大部分の地域で、そしてアジア、ヨーロッパ、ならびにインド洋および太平洋の一部の地域においても大発生を引き起こしている。2013年12月、セント・マーチン島において現地性症例が同定され、西半球で最初のCHIKVの伝播が発生した(非特許文献5)。ウイルスは、カリブ海の実質的に全ての島、そして中央、南、および北アメリカにも急速に広まった。1年足らずで、西半球において100万例を超えるCHIKVの疑い例が報告され、米国を含む40を超える国において地域性伝播が記録された(非特許文献6)。現在のところ、CHIKV感染の予防または治療のための認可ワクチンも抗ウイルス療法もない。
【0005】
ヒトにおけるCHIKV感染に対する防御免疫機構は完全には解明されていないが、体液性応答が感染を抑制し、組織損傷を制限する(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12)。免疫ヒトγ-グロブリンは、培養細胞において感染性を中和し、マウスでは、ウイルス接種の24時間後までに投与された場合、罹患を阻止する(非特許文献13)。CHIKV感染を中和するいくつかのマウスモノクローナル抗体(mAb)が報告されており(非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16、非特許文献12、非特許文献17)、CHIKVの負荷後、組み合わせて用いてマウスまたは非ヒト霊長類を治療した場合に効力があるものもある(非特許文献12、非特許文献17)。これに対し、報告されているヒトCHIKVmAbの数は限られており、その大部分は中和活性があまり高くない(非特許文献18、非特許文献19、非特許文献20、非特許文献21、非特許文献22)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kielianら、2010
【非特許文献2】Schilteら、2013
【非特許文献3】Sissokoら、2009
【非特許文献4】Staplesら、2009
【非特許文献5】CDC 2013
【非特許文献6】CDC 2014
【非特許文献7】Chuら、2013
【非特許文献8】Hallengardら、2014
【非特許文献9】Hawmanら、2013
【非特許文献10】Kamら、2012b
【非特許文献11】Lumら、2013
【非特許文献12】Palら、2013
【非特許文献13】Coudercら、2009
【非特許文献14】Brehinら、2008
【非特許文献15】Gohら、2013
【非特許文献16】Masrinoulら、2014
【非特許文献17】Palら、2014
【非特許文献18】Fongら、2014
【非特許文献19】Fricら、2013
【非特許文献20】Leeら、2011
【非特許文献21】Selvarajahら、2013
【非特許文献22】Warterら、2011
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本開示によれば、対象におけるチクングニヤウイルス感染を検出する方法であって、(a)前記対象由来のサンプルを、それぞれ表3および表4に記載のクローン対重鎖および軽鎖CDR配列を有する抗体または抗体フラグメントと接触させること;および(b)前記サンプル中のE2に前記抗体または抗体フラグメントを結合させることによって、前記サンプル中のチクングニヤウイルス糖タンパク質E2を検出することを含む、前記方法が提供される。サンプルは、血液、痰、涙、唾液、粘液もしくは血清のような体液、尿、または糞便であり得る。検出は、ELISA、RIA、またはウェスタンブロットを含み得る。該方法は、2回目の工程(a)および(b)を実行すること、ならびに、1回目のアッセイと比較して、E2レベルの変化量を測定することをさらに含み得る。抗体は、表1に記載のクローン対可変配列にコードされるもの、または表1に記載のクローン対可変配列に対して70%、80%、90%、または95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によりコードされるもの、または、表2に記載のクローン対配列に特徴付けられるか、もしくは表2に記載のクローン対配列に対して70%、80%、90%、または95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を有するものであり得る。抗体フラグメントは、組換えScFv(一本鎖可変フラグメント)抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、またはFvフラグメントであり得る。抗体はIgGおよび/またはキメラ抗体であり得る。
【0008】
別の実施形態では、チクングニヤウイルスに感染した対象を処置するか、またはチクングニヤウイルスに罹患するリスクのある対象の感染の可能性を低減させる方法であって、前記対象に、それぞれ表3および表4に記載のクローン対重鎖および軽鎖CDR配列を有する抗体または抗体フラグメントを送達することを含む、前記方法が提供される。抗体は、表1に記載のクローン対可変配列にコードされるもの、または表1に記載のクローン対可変配列に対して70%、80%、90%、または95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によりコードされるもの、または、表2に記載のクローン対配列に特徴付けられるか、もしくは表2に記載のクローン対配列に対して70%、80%、90%、または
95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を有するものであり得る。抗体フラグメントは、組換えScFv(一本鎖可変フラグメント)抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、またはFvフラグメントであり得る。抗体は、IgG、および/またはキメラ抗体であり得る。抗体または抗体フラグメントは、感染前または感染後に投与することができる。送達することは、抗体もしくは抗体フラグメントの投与、または、抗体もしくは抗体フラグメントをコードするRNAもしくはDNA配列、もしくはベクターによる遺伝子送達を含み得る。
【0009】
さらに別の実施形態では、モノクローナル抗体であって、該抗体は、それぞれ表3および4に記載のクローン対重鎖および軽鎖CDR配列によって特徴付けられる、前記モノクローナル抗体が提供される。抗体は、表1に記載のクローン対可変配列にコードされるもの、または表1に記載のクローン対可変配列に対して70%、80%、90%、または95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によりコードされるもの、または、表2に記載のクローン対配列に特徴付けられるか、もしくは表2に記載のクローン対配列に対して70%、80%、90%、または95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を有するものであり得る。抗体フラグメントは、組換えScFv(一本鎖可変フラグメント)抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、またはFvフラグメントであり得る。抗体は、キメラ抗体、または、糖タンパク質以外のチクングニヤウイルス抗原を標的とする二重特異性抗体であり得る。抗体はIgGであり得る。抗体または抗体フラグメントは、細胞浸透性ペプチドをさらに含み、かつ/または、イントラボディである。
【0010】
また、抗体または抗体フラグメントをコードするハイブリドーマまたは改変細胞であって、該抗体または抗体フラグメントは、それぞれ表3および表4に記載のクローン対重鎖および軽鎖CDR配列によって特徴付けられる、前記ハイブリドーマまたは改変細胞も提供される。抗体または抗体フラグメントは、表1に記載のクローン対可変配列にコードされるもの、または表1に記載のクローン対可変配列に対して70%、80%、90%、または95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列によりコードされるもの、または、表2に記載のクローン対配列に特徴付けられるか、もしくは表2に記載のクローン対配列に対して70%、80%、90%、または95%の同一性を有する軽鎖および重鎖可変配列を有するものであり得る。抗体フラグメントは、組換えScFv(一本鎖可変フラグメント)抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、またはFvフラグメントであり得る。抗体は、キメラ抗体、および/またはIgGであり得る。抗体または抗体フラグメントは、細胞浸透性ペプチドをさらに含むことができ、かつ/またはイントラボディである。
【0011】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:53/54、55/56、57/58、59/60、61/62、63/64、65/66、67/68、70/71、72/73、74/75、76/77、81/82、83/84、85/86、87/88、89/90、91/92、93/94、95/96、および97/98からなる群から選択される重鎖および軽鎖可変配列対を含む。
【0012】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:103、104、および105のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:187、188、および189のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0013】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:106、107
、および108のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:190、191、および192のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0014】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:109、110、および111のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:193、194、および195のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0015】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:112、113、および114のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:196、197、および198のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0016】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:115、116、および117のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:199、200、および201のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0017】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:118、119、および120のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:202、203、および204のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0018】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:121、122、および123のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:205、206、および207のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0019】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:124、125、および126のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:208、209、および210のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0020】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:130、131、および132のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:211、212、および213のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0021】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:133、134、および135のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:214、215、および216のアミノ酸配列のCDRL1、CDR
L2、およびCDRL3を含む。
【0022】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:136、137、および138のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:217、218、および219のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0023】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:139、140、および141のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:220、221、および222のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0024】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:151、152、および153のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:223、224、および225のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0025】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:154、155、および156のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:226、227、および228のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0026】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:157、158、および159のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:229、230、および231のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0027】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:160、161、および162のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:232、233、および234のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0028】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:163、164、および165のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:235、236、および237のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0029】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:166、167、および168のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:238、239、および240のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0030】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:169、170、および171のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:241、242、および243のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0031】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:172、173、および174のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:244、245、および246のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0032】
一実施形態では、チクングニヤウイルス糖タンパク質E2に特異的に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号:175、176、および177のアミノ酸配列のCDRH1、CDRH2、およびCDRH3、ならびにそれぞれ配列番号:247、248、および249のアミノ酸配列のCDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。
【0033】
「1つの(a)」または「1つの(an)」という語の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において「含む」という用語と共に使用される場合、「1つ(one)」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つより多く」という意味とも合致する。「約」という語は、記載された数値のプラスまたはマイナス5%を意味する。
【0034】
本明細書に記載される任意の方法または組成物は、本明細書に記載される他の任意の方法または組成物に関して実施することができることが企図される。本開示の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の特定の実施形態を示すものであるが、例示のみを目的として提供されていることを理解すべきであり、これは、本開示の精神および範囲内における様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者に明らかとなるためである。
【0035】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の特定の態様をさらに明らかにするために含められている。本開示は、これらの図面の1つまたは複数を、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することによって、よりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1-1】
図1Aは、mAb結合に重要なE2残基の構造解析を示す図である。(
図1A)本試験において用いたCHIKV株由来のE2の配列アラインメント。株名を左に示す(S27、配列番号:1、受入番号AF369024.2;SL15649、受入番号GU189061;LR2006_OPY1、受入番号DQ443544.2;99659、受入番号KJ451624;RSU1、受入番号HM045797.1;NI 64 IbH35、受入番号HM045786.1)。配列の上側の数字は、成熟E2タンパク質におけるアミノ酸位置に対応する。株S27と同一のアミノ酸をダッシュ記号で示す。CHIKV E2/E1ヘテロ二量体の結晶構造から決定されたE2のドメイン(Vossら、2010)を配列アラインメントの上側の線図に示し、色分けする(シアン色:ドメインA、紫色:β-リボンコネクタ、緑色:ドメインB、ピンク色:ドメインC、暗灰色の網掛け:結晶構造中に存在しない領域)。アラニンスキャニング変異導入法によって決定した、アラニン置換がmAb結合を妨害する残基の位置を、各特異的抗体について、アラインメントの上側に色分けしたドットで示す。複数の抗体の結合に影響を与える残基は灰色で網掛けした四角で示すが、網掛けの灰色が濃いほどその残基でのアラニン置換の影響を受ける抗体数が多い。
【
図1-3】
図1Bは、成熟エンベロープ糖タンパク質複合体の結晶構造(PDB ID 3N41)上にマッピングした、mAb結合に必要な残基の位置を示す図である。E1/E2の単一ヘテロダイマーのリボントレースの側面図を、E1を薄いシアン色に色付けし、E2のドメインをパネルAと同様に色付けして示す。抗体結合に必要なアミノ酸の側鎖を空間充填形式で示し、20個の各抗体について、パネルAの凡例に従って色分けする。複数の抗体の結合に影響を与える残基を灰色の網掛けで示すが、網掛けの灰色が濃いほど、その残基でのアラニン置換の影響を受ける抗体数が多い(凡例を左側に示す)。
図1Cは、
図1Bの構造から90°回転させたE1/E2ヘテロ二量体の上面図を示す図である。
【
図2-1】
図2Aは、ヒト抗CHIKV mAbによる中和のメカニズムを示す図である。付着前および付着後中和アッセイ。SL15649 VRPを、(i)予冷したベロ細胞に添加する前に、示されたmAb(CHK-152、陽性対照mAbを含む)と共に4℃で1時間インキュベートし、続いて3回洗浄して未結合ウイルスを除去する(付着前;黒丸)か、または(ii)予冷したベロ細胞に4℃で1時間吸着させ、続いて示されたmAbを4℃で1時間添加した(付着後;白丸)。
図2Bは、FFWOアッセイを示す図である。SL15649 VRPを予冷したベロ細胞に4℃で1時間吸着させ、続いて示されたmAb(CHK-152、陽性対照マウスmAbを含む)を1時間添加した。非結合ウイルスを除去し、細胞を低pH培地(pH5.5;黒丸)に37℃で2分間暴露して原形質膜におけるウイルス融合を誘発した。陰性対照として、細胞を中性pH培地(pH7.4;白丸)に37℃で2分間暴露した。
図2Aおよび
図2Bの両方について、感染後18時間まで細胞を37℃でインキュベートし、蛍光顕微鏡を用いてGFP陽性細胞を定量した。データは、それぞれ3連で実施した2つの独立した実験から統合した。
【
図3】
図3A~Dは、Ifnar
-/-マウスにおける致死性CHIKV感染に対するヒトmAb療法を示す図である。(
図3A)マウスに、示されたCHIKV特異的mAbまたは対照mAb 50μgを、腹腔内注射により、CHIKVの致死的負荷の24時間前に投与した(試験したmAb当たりn=3~6マウス)。(
図3B)マウスに、示されたCHIKV特異的mAbまたは対照mAb 50μgを、腹腔内注射により、CHIKVの致死的負荷の24時間後に投与した(試験したmAb当たりn=4~6マウス)。(
図3C)マウスに、示されたCHIKV特異的mAbまたは対照mAb 250μgを、腹腔内注射により、CHIKVの致死的負荷の48時間後に投与した(試験したmAb当たりn=7~10マウス)。(
図3D)マウスに、示されたCHIKV特異的mAbのペアまたは対照mAb 250μgを、腹腔内注射により、CHIKVの致死的負荷の60時間後に投与した(試験したmAbの組み合わせ当たりn=8マウス、ただし、n=3である4J21+2H1を除く)。4J21または4N12による単独療法では、500μgの単回用量を投与した(試験したmAb当たりn=4~5マウス)。
【
図4】急性症状時の丘疹発疹を示す図である。対象はかかりつけ医に、3日間の熱(102°F)と同時に、両側の肘および指の関節痛と発疹が発症していることを訴えた。医師は、隆起した非掻痒性の白化した丘疹発疹(図に示す写真)を背中、胸部、および腹部全体に認めた。
【
図5】mAb競合グループの同定を示す図である。Octetベースのバイオレイヤー干渉法を用いた定量的競合結合を用いて、mAbを競合グループに割り当てた。固定化CHIKV-LR2006 E2エクトドメインで被覆した抗ペンタHisバイオセンサチップを、一次mAbを含有するウェル中に浸漬し、続いて競合mAbを含有するウェル中に浸漬した。示された値は、第1のmAbの存在下における競合mAbの結合率(第1のmAb複合体後に適用した競合mAbの最大シグナルを競合mAb単独の最大シグナルと比較することによって測定する)である。MAbは、競合mAbの最大結合がその非競合結合の30%未満に減少した場合(黒色の四角)同一部位への結合に良好に競合すると判断され、また、競合mAbの結合がその非競合結合の70%未満に減少した場合(灰色の四角)部分的競合を示すと判定された。競合mAbの最大結合がその非競合結合の70%を超える場合(白色の四角)にはMAbは非競合とみなした。4つの競合結合グループを同定し、色付きの四角で示した。アラニンスキャニング変異導入法によって発見されたmAbへの対応する主要抗原部位(表1および
図1A~C)を競合マトリックスの右側の列に要約する。DAはドメインAを示し;DBはドメインBを示し;eはアーク1および2の両方を示し;NTは試験されていないことを示し;NotReactは、mAbが野生型エンベロープタンパク質に対して反応しなかったことを示し;NoReductは、mAbが野生型Eタンパク質に結合したが、いずれの変異体についても再現性のある減少は認められなかったことを示す。データは、各mAb単独の複数回の読み値と、各競合抗体と組み合わせたmAbの1回の読み値を用いて、1つの実験から統合したものである。
【
図6-1】
図6A~Fは、CHIKV MAbの高分解能エピトープマッピングを示す図である。(A)各アミノ酸を個別にアラニンに変異させた910個のE2/E1変異を包含するCHIKVエンベロープタンパク質のアラニンスキャニング変異ライブラリを構築した。各変異アレイプレートの各ウェルは規定された置換を有する1つの変異体を含む。反応性の結果を示す代表的な384ウェルプレートを示す。各プレートには8個の陽性(野生型E2/E1)対照ウェルおよび8個の陰性(モックトランスフェクト)対照ウェルが含まれている。(B)エピトープマッピングのために、CHIKVエンベロープ変異ライブラリを発現するヒトHEK-293T細胞を、目的のMAb(ここではMAb 4G20を示す)との免疫反応性について試験し、Intellicytハイスループットフローサイトメーターを用いて測定した。反応性が野生型CHIKV E2/E1に比べて30%未満であるが、別のCHIKV E2/E1 MAbに対して70%を超える反応性を有するクローンを、先ずMAb結合に重要であると同定した。(C)4つの残基の変異がそれぞれ4G20の結合を低下させた(赤色棒グラフ)が、他の立体構造依存性MAb(灰色棒グラフ)またはウサギポリクローナル抗体(rPAb、IBT Bioservicesからの贈与)の結合には大きく影響しなかった。棒グラフは、少なくとも2つの複製データ点の平均値およびレンジを表す。(D)PRNT50が1,000ng/ml未満である中和性MAbのエピトープをE2/E1の三量体結晶構造(PDB Entry 2XFC)上にマッピングする。全ての中和性エピトープが、E2/E1のかなり露出した膜遠位ドメインにマッピングされる。明確化のためにE2/E1ヘテロ二量体サブユニットをそれぞれ別の色で示す。複数のMAbにとって重要なエピトープ残基を含む、E2ドメインAおよびB中の高免疫原性領域をE2の単一サブユニット上に赤色で描く。
【
図7】競合グループに対してマッピングされた抗体についてのmAb結合に重要なE2残基の構造分析を示す図である。E1/E2(PDB ID 2XFB)の結晶構造上にマッピングされた、異なる競合グループからのヒトmAbまたはマウスmAbの結合に必要な残基(
図1A~C)の位置。E1を白色で、各E2単量体を薄灰色、濃灰色、または黒色で示したE1/E2三量体の空間充填モデル。抗体結合に必要な残基を、それらが属する競合グループに従って色分けする。赤色は残基D117およびI121を示し、これらは5N23の結合に必要であり競合グループ1に属する。青色は残基R80およびG253を示し、これらはI06または5M16による結合に必要であり競合グループ2に属する。緑色は残基Q184、S185、I190、V197、R198、Y199、G209、L210、T212、およびI217を示し、これらはCHK-285、CHK-88、または3A2による結合に必要であり競合グループ3に属する。オレンジ色は残基H18を示し、これは5F19の結合に必要であり競合グループ4に属する。紫色は残基E24、A33、L34、R36、V50、D63、F100、T155を示し、これらは5N23、CHK-84、またはCHK-141による結合に必要であり競合グループ1および2に属する。ティール色は残基T58、D59、D60、R68、I74、D77、T191、N193、およびK234を示し、これらは1H12による結合に必要であり競合グループ2および3に属する。茶色は残基D71を示し、これはCHK-84および1H12による結合に必要であり競合グループ1、2、および3に属する。黄色は、競合グループ1、2、および3に属する残基D71を除いて推定受容体結合ドメイン(RBD)を含む、残基(T58、D71、N72、I74、P75、A76、D77、S118、およびR119)を示す。上のパネルは三量体の鳥瞰図を示し、中央のパネルは、上のパネルの構造からx軸で45度回転させた三量体の斜め側面図を示し、そして下のパネルは、中央のパネルの構造からx軸で45度回転させた三量体の側面図を示す。
【
図8】2つのヒト抗CHIKV mAb、2H1または4N12による中和のメカニズムを示す図である。付着前および付着後中和アッセイ。CHIKV株SL15649ウイルスレプリコン粒子(VRP)を、(1)示されたmAb(2H1または4N12)と共にインキュベートした後、予冷したベロ細胞に添加し、続いて3回洗浄することにより非結合ウイルスを除去する(付着前;黒丸)か、または(2)予冷したベロ細胞に吸着させた後、示されたmAbを添加した(付着後;白丸)。これらのmAbは、付着の前または後に添加された場合、中和した。
【
図9】B6マウス急性疾患モデルを示す図である。1日目に投与したCHO細胞産生組換え抗体は、対照抗体処置に比べて、D+3において、足踝のウイルスを減少させる。実験は、4週齢のWTマウスで、CHIKV-LR 10
3FFUの皮下接種後に行った。D+1に抗体を投与し、D+3に組織を採取してフォーカス形成アッセイにより滴定した。
【
図10】B6マウス急性疾患モデルを示す図である。CHO細胞中で産生させ、3日目に全身投与したCHIKV mAb 4N12は、足踝のウイルス力価を減少させる。実験は、4週齢のWTマウスで、CHIKV-LR 10e3FFUの皮下接種後に行った。D+3に抗体を投与し、D+5に組織を採取してフォーカス形成アッセイにより滴定した。
【
図11】B6マウス慢性疾患モデルを示す図である。CHO細胞中で産生させ、3日目に全身投与したCHIKV mAbは、28日目において、足踝のウイルスゲノム当量を減少させる。実験は、4週齢のWTマウスで、CHIKV-LR 10e3FFUの接種後に行った。D+3に抗体(300μg)を投与し、D+28に組織を採取してqRT-PCRにより分析した。
【
図12】IFNARノックアウト致死性疾患マウスモデルを示す図である。CHO細胞中で産生させ、感染60時間後に全身投与したCHIKV mAbは、生存率を高める。実験は、4~5週齢のIFNAR
-/-マウスで、CHIKV-LR 10e3FFUの皮下接種後に行った。感染60時間後に抗体を投与し、死亡率を21日間追跡した。
【
図13-1】ハイブリドーマ産生(「旧」)または組換え(「新」)CHIKV特異的mAbの中和曲線を示す図である。BHK21細胞で中和曲線を測定した。CHIKV-LR 100FFUを示されたmAbと共に37℃で1時間混合してから、BHK21細胞に添加した。フォーカス形成アッセイによって感染性を測定した。
【
図14】ハイブリドーマ産生抗体対組換えCHO細胞産生抗体の最大半量有効阻害濃度(EC
50;ng/mL)を示す図である。データはハイブリドーマで産生されたものと組換え体とで類似している。
【
図15-1】アミノ酸としてのE1およびE2両タンパク質、ならびに該タンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチドのアラインメントを示す図である。タンパク質のGenbank受入番号をウイルス株と共に記載する。プロトタイプ群:東.中央.南アフリカ型(ECSA)ウイルス3株、アジア型2株、西アフリカ型1株を示す。これらの抗体は、全ての株間で交差反応する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
例示的実施形態の説明
本発明者らは、細胞培養物においてCHIKV感染性を中和するヒトmAbの広範なパネルを単離し、そして、致死量のCHIKVを接種した(I型インターフェロン受容体欠損)Ifnar-/-マウスを、感染後60時間後になってから投与を行った場合でさえ、成功裡に治療することができた。本発明者らは、CHIKV感染を広範に超高活性で中和するmAbが認識するための主要抗原部位としてE2のAドメインを同定し、阻害の主要メカニズムが融合の阻止であることを示した。本開示のこれらおよび他の態様を以下に詳細に記載する。
【0038】
I.チクングニヤ熱およびチクングニヤウイルス
チクングニヤ熱はチクングニヤウイルスによって引き起こされる感染症である。通常2~7日間持続する急性の発熱、および、典型的には数週間または数ヶ月、場合によっては数年間続く関節痛を特徴とする。死亡率は1000人に1人弱であり、高齢者が死亡する可能性が最も高い。ウイルスはヤブカ属の2種の蚊:ヒトスジシマカ(A.albopictus)およびネッタイシマカ(A.aegypti)によってヒトに伝達される。動物のウイルス保有宿主としては、サル類、鳥類、ウシ、およびげっ歯類が挙げられる。これは、霊長類のみが宿主であるデング熱とは対照的である。
【0039】
最善の予防手段は、全般的な蚊の防除と、感染した蚊による刺咬の回避である。具体的な治療法は知られていないが、薬物を使用して症状を軽減することができる。また休息および水分摂取も有用である場合がある。
【0040】
チクングニヤ熱の病の潜伏期は2日から12日、典型的には3日から7日の範囲である。感染者の72から97%が症状を発症することになる。症状としては、突然発症し、場合により二峰性であり、典型的には数日から1週間、場合により最大10日間続き、通常は39°C(102°F)を超え、場合により41°C(104°F)に達する発熱、ならびに、通常数週間または数ヶ月、場合により数年間続く強い関節痛または関節のこわばりが挙げられる。また、発疹(通常は黄斑丘)、筋肉痛、頭痛、疲労感、吐き気、または嘔吐もある場合がある。虹彩毛様体炎またはブドウ膜炎のような目の炎症がある場合があり、網膜病変が起こる場合もある。典型的には、発熱は2日間続き、その後突然終了する。しかしながら、頭痛、不眠症、および極度の衰弱は不定期間、通常約5~7日間続く。
【0041】
近年の伝染病の観察では、チクングニヤ熱は、急性感染後に長期症状を引き起こす場合があることが示唆されている。2006年のレユニオン島(La Reunion)の大
発生の際には、45歳以上の対象の50%超が長期の筋骨格痛を報告し、60%に上る人々で最初の感染から3年後に長期にわたる関節の痛みが報告されている。フランスの輸入症例の研究では、59%の人々が急性感染の2年後になお関節痛を患っていたことが報告された。イタリアにおけるチクングニヤ熱の地域的流行の後、66%の人々で、急性感染の1年後に筋肉痛、関節痛、または無力症が報告された。長期的症状は全くの新しい知見という訳ではなく、1979年の大発生後に長期の関節炎が認められている。長期症状の一般的な予測因子は、年齢が高いこと、およびリウマチ性疾患の既往である。これらの慢性症状の原因は現在のところ完全には理解されていない。慢性症状を報告した人々では、自己免疫疾患またはリウマチ疾患のマーカーは発見されていない。しかしながら、ヒトおよび動物モデルから得られたいくつかのエビデンスは、チクングニヤ熱が宿主内で慢性感染を確立できる可能性があることを示唆している。最初の発症の3ヶ月後に疾患の再発エピソードを患っていた人々の筋肉生検において、ウイルス抗原が検出された。さらに、最初の感染の18ヶ月後に筋骨格系疾患が再発している人の滑膜マクロファージで、ウイルスの抗原およびRNAが見られた。またいくつかの動物モデルでも、チクングニヤウイルスが持続性の感染症を確立し得ることが示唆されている。マウスモデルでは、ウイルスRNAが、接種後少なくとも16週間、関節関連組織において特異的に検出され、慢性滑膜炎との関連があった。同様に、別の研究では、接種後数週間、マウスの関節組織においてウイルスレポーター遺伝子が検出されることが報告されている。非ヒト霊長類モデルでは、チクングニヤウイルスが少なくとも6週間脾臓に存続していることが判明した。
【0042】
チクングニヤウイルスは、約11.6kbのプラス鎖一本鎖RNAゲノムを有するアルファウイルスである。セムリキ森林ウイルス複合体のメンバーであり、ロスリバーウイルス、オニョンニョンウイルス、セムリキ森林ウイルスと近縁である。米国では、カテゴリーCの優先度の病原体に分類され、取り扱いにはバイオセーフティレベルIIIの予防策が必要である。ヒト上皮および内皮細胞、初代線維芽細胞、ならびに単球由来マクロファージはインビトロでチクングニヤウイルスを許容し、ウイルス複製は細胞変性性が高いが、I型およびII型インターフェロン感受性である。インビボでは、チクングニヤウイルスは、線維芽細胞、骨格筋前駆細胞、および筋繊維で複製するものと見られる。
【0043】
チクングニヤウイルスは、東部馬脳炎および西部馬脳炎を引き起こすウイルスと同様、アルファウイルスである。チクングニヤ熱は一般的にネッタイシマカによる咬傷を介して広がるが、パリのパスツール研究所による最近の研究では、2005~2006年のレユニオン島の大発生におけるチクングニヤウイルス株は、ヒトスジシマカ(Asian tiger mosquito(A.albopictus))による伝播を容易にする突然変異を受けていたことが示唆されている。
【0044】
ヒトスジシマカによるチクングニヤウイルス感染は、ウイルスエンベロープ遺伝子(E1)のうちの1つの点変異によって引き起こされたものである。ヒトスジシマカによるチクングニヤウイルスの伝播の増強は、ヒトスジシマカが存在する他の地域における大発生のリスクの増加を意味し得る。近年のイタリアにおける流行はヒトスジシマカによって長期化された可能性が高い。アフリカでは、チクングニヤ熱は、ヒトの大発生の間に、ウイルスが他の霊長類に広く存在する森林型サイクルによって広まる。
【0045】
チクングニヤ熱に感染すると、宿主線維芽細胞は1型(αおよびβ)インターフェロンを産生する。インターフェロンアルファ受容体を欠くマウスは、102PFUのチクングニヤに暴露されて2から3日で死亡するが、野生型マウスは106PFUものウイルスに暴露されても生存し続ける。それと同時に、不完全1型欠損(partially type-1 deficient)のマウス(IFNα/β+/-)が受ける影響は軽度であり、筋力低下や倦怠感などの症状を呈する。Partidosら(2011)は生弱毒株CHIKV181/25においても同様の結果を認めた。しかしながら、1型インター
フェロン欠損(IFNα/β-/-)マウスは、死に至らずに一時的な障害を負っただけであり、不完全1型インターフェロン欠損マウスには何ら症状は無かった。
【0046】
いくつかの研究は、チクングニヤ熱への感染に対する宿主応答に関与する1型インターフェロン経路の上流要素を見出そうと試みている。これまでのところ、チクングニヤ特異的病原体関連分子パターンは知られていない。しかしながら、Cardif、MAVS、およびVISAとしても知られているIPS-1が重要な因子であることが判明している。2011年に、Whiteらは、IPS-1による干渉がインターフェロン調節因子3(IRF3)のリン酸化およびIFN-βの産生を減少させることを見出した。他の研究では、IRF3およびIRF7が年齢依存的に重要であることを見出されている。これらの調節因子の両方を欠く成体マウスは、チクングニヤ熱に感染すると死亡する。一方、新生児は、これらの因子のうちの1つが欠損しているとこのウイルスのために死亡する。
【0047】
チクングニヤは、RBP1を分解し、宿主細胞のDNA転写能を遮断する非構造タンパク質であるNS2を産生することによってI型インターフェロン応答に対抗する。NS2はJAK-STATシグナル伝達経路に干渉し、STATのリン酸化を阻む。
【0048】
チクングニヤ熱の一般的な臨床検査としては、RT-PCR、ウイルス単離、および血清学的検査が挙げられる。ウイルス単離は最も確定的な診断を提供するが、完了までに1~2週間かかり、バイオセーフティレベルIIIの実験室で実施する必要がある。この技術は、特定の細胞株を全血由来のサンプルに暴露し、チクングニヤウイルス特異的応答を同定することを含む。ネストプライマー対を用いたRT-PCRを用いて全血からいくつかのチクングニヤ特異的遺伝子を増幅する。結果は1~2日で確定することができる。
【0049】
血清学的診断は、他の方法よりも大量の血液を必要とし、ELISAアッセイを用いてチクングニヤ特異的IgMレベルを測定する。結果を得るのに2~3日必要であり、オニョンニョンウイルスやセムリキ森林ウイルスなどの他の関連ウイルスの感染による偽陽性が生じ得る。
【0050】
鑑別疾患にはデング熱およびインフルエンザなどの他の蚊媒介性ウイルスによる感染が含まれ得る。慢性再発性多発関節痛は、感染1年後にチクングニヤ熱の患者の少なくとも20%で起こるが、このような症状はデング熱ではまれである。
【0051】
現在のところ具体的な治療法はない。症状を緩和する試みとしては、ナプロキセンなどのNSAIDまたはパラセタモール(アセトアミノフェン)の使用および水分摂取が挙げられる。アスピリンは推奨されていない。関節リウマチを2週間以上患っている人では、リバビリンが有用である場合がある。クロロキンの効果は明らかではない。クロロキンは急性疾患には役立たないようであるが、慢性関節炎患者に役立つ可能性があることを示す暫定的なエビデンスがある。ステロイドも有用でないと思われる。
【0052】
チクングニヤ熱は大部分が開発途上国に存在する。チクングニヤ熱は、疫学的には、蚊、その環境、人間の行動に関連している。約5,000年前、蚊が北アフリカの変わりやすい気候に適応したことで、蚊は、ヒトの貯水環境を探し求めるようになった。ヒトの居住地と蚊の環境は非常に密接な関連があった。流行期間中はヒトがウイルスの保有宿主である。他の期間は、サル、鳥類、および他の脊椎動物が保有宿主となっている。
【0053】
このウイルスには、西アフリカ型、東/中央/南アフリカ型、アジア型の3種の遺伝子型が報告されている。2005年のインド洋および2011年の太平洋諸島、そして現在のアメリカにおける爆発的流行により、遺伝子型の分布は変化し続けている。
【0054】
2009年5月28日、ウイルスが流行しているタイ行政区(Changwat)であるトラン県の地方病院は、チクングニヤ熱に感染している母親(Khwanruethai Sutmueang、28歳、トラン出身)から、母体-胎児ウイルス感染を防ぐために、男児を帝王切開で出産させることを決定した。しかしながら、出産後、医師は、子が既にウイルスに感染していることを発見し、その感染のために自発呼吸も飲乳もできなくなっていたため、集中治療室に入室させた。医師はこのウイルスが母親から胎児に伝染した可能性があると推測したが、臨床検査による確認は行わなかった。
【0055】
2013年12月、カリブ諸島のセント・マーチン島において、66の確定例と約181の疑い例によりチクングニヤ熱が確認された。この大発生は、この疾患が感染した蚊の集団からヒトに伝染した西半球における最初の例である。2014年1月までにカナダ公衆衛生局は、イギリス領バージン諸島、サン・バルトヘレミー、グアドループ、ドミニカ、マルティニーク、およびフランス領ギアナで症例が確認されたことを報告した。2014年4月には、疾病予防管理センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)によりドミニカ共和国でもチクングニヤ熱が確認された。4月末までに、ジャマイカ、セントルシア、セントキッツ・ネイビス、および流行宣言が出されたハイチなど、全14ヶ国に拡大していた。
【0056】
2014年5月末までに、米国において、ウイルスが流行している地域からフロリダへの旅行者による10例を超える輸入症例が報告された。カリブ海から米国に広がっているチクングニヤ熱の菌株はネッタイシマカによって最も容易にまん延する。チクングニヤ熱のこの株には、突然変異によりヒトスジシマカベクターがより効果的となる可能性があるという懸念がある。米国では、ヒトスジシマカ(A.albopictusまたはAgian tiger mosquito)が、ネッタイシマカに比べてより広範に存在しより攻撃的であるため、もしこの変異が起こった場合、チクングニヤ熱は米国にとってさらなる公衆衛生上の懸念材料となる。
【0057】
2014年6月、ブラジルで6例のウイルスが確認され、2例はサンパウロ州のカンピーナス市で確認された。この6例は、国際連合ハイチ安定化ミッションのメンバーとして再建に参加しており、その頃ハイチから帰還したばかりのブラジル軍兵であった。この情報は、カンピーナス自治体当局によって公式に発表されたものであり、適切な措置が講じられたものと思われる。
【0058】
2014年6月16日におけるフロリダ州の累計症例は合計42例であった。2014年9月11日の時点でプエルトリコにおける年間報告症例数は1,636例であった。10月28日までに、その数は2,974例の確定例、および10,000例を超える疑い例に増加した。2014年6月17日、合衆国ミシシッピ州の保健省は、その頃ハイチへ旅行したばかりのミシシッピ居住者の最初の潜在例を調査していることを認めた。2014年6月19日には、ウイルスは米国ジョージア州に広がっていた。2014年6月24日、米国フロリダ州ポーク郡ポインシアーナで症例が報告された。2014年6月25日、合衆国アーカンソー州の保健局は、その州出身者1名がチクングニヤ熱を保菌していることを確認した。2014年6月26日、メキシコのハリスコ州で症例が報告された。
【0059】
2014年7月17日、フロリダ州において、米国で罹患した最初のチクングニヤ熱の症例が疾病管理予防センターにより報告された。2006年以来、米国では200例を超える症例が報告されているが、他の国を旅行したことのある人々のみにおける報告であった。このウイルスが蚊によって人に伝達されたのは米国本土では本例が初めてである。2014年9月2日、疾病管理予防センターは、この疾患に国内で(locally)罹患した人々のチクングニヤ熱の確定例が米国で7例確認されていることを報告した。
【0060】
2014年9月25日、エルサルバドル当局は、この新規の流行性疾患の30,000例を超える確定例を報告している。ジャマイカおよびバルバドスにおいても新たな流行が拡大している。これらの国を訪ねた観光客が自国にウイルスを持ち込む危険性がある。2014年11月、ブラジルは、アメリカ大陸でそれまでに報告されたことのないチクングニヤ熱の異なる株(遺伝子型)の局地的伝播を報告した。これはアフリカ型の遺伝子型であるが、奇妙なことにそれが南アフリカ型であるか西アフリカ型であるかは明らかでない。新規(アメリカ大陸では)の遺伝子型は、現在アメリカ大陸にまん延しているアジア型の遺伝子型よりも重症であり、また、1つの遺伝子型に対する免疫は他の遺伝子型に対して免疫を付与しない。フランス領ポリネシアは、数ある地域の中でも大発生が継続中である地域の1つである。
【0061】
2014年11月7日、メキシコは、南部のチアパス州における局地的伝播によるチクングニヤ熱の大発生を報告した。この大発生は、海岸線をわたってグアテマラ国境から隣接するオアハカ州まで拡大している。保健当局は、累積で39例の臨床検査による確定例(第48週末まで)を報告している。疑い例は報告されていない。2015年1月にはコロンビアにおけるチクングニヤ熱の報告症例が90,481例あった。
【0062】
II.モノクローナル抗体およびその産生
A.一般的方法
チクングニヤウイルスに結合するモノクローナル抗体にはいくつかの用途があることが理解されるであろう。これらの用途としては、チクングニヤウイルス感染の検出および診断、ならびにその処置に使用するための診断キットの製造が挙げられる。このような状況では、このような抗体を診断薬または治療薬に連結させて捕捉剤もしくは競合アッセイにおける競合剤として使用するか、または、追加の薬剤をそれらに結合させずに個別に使用することができる。以下でさらに検討するように、抗体を変異または改変させることもできる。抗体を調製する方法および特徴付ける方法は当技術分野でよく知られている(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、1988;米国特許第4,196,265号を参照されたい)。
【0063】
モノクローナル抗体(MAb)を生成するための方法は、一般に、ポリクローナル抗体を調製するための方法と同じように開始する。これらの両方法における最初の工程は、適切な宿主の免疫化または自然感染の既往による免疫を有する対象の同定である。当技術分野でよく知られているように、免疫化のための組成物によってその免疫原性は異なり得る。このため、ペプチドまたはポリペプチド免疫原を担体に結合することで達成される場合があるように、宿主免疫系を増強することがしばしば必要である。例示的な好ましい担体は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)である。またオボアルブミン、マウス血清アルブミン、またはウサギ血清アルブミンのような他のアルブミンも担体として使用することができる。ポリペプチドを担体タンパク質にコンジュゲートさせる手段は当技術分野においてよく知られており、グルタルアルデヒド、m-マレイミドベンコイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボジイミド、およびビス-ジアゾ化ベンジジンが挙げられる。これも当技術分野でよく知られているように、特定の免疫原組成物の免疫原性をアジュバントとして知られる免疫応答の非特異的刺激因子の使用によって増強することもできる。例示的な好ましいアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(死菌マイコバクテリウム・ツベルクローシス(killed Mycobacterium tuberculosis)を含有する免疫応答の非特異的刺激因子)、不完全フロイントアジュバント、および水酸化アルミニウムアジュバントが挙げられる。
【0064】
ポリクローナル抗体の産生に使用される免疫原組成物の量は、免疫原の性質および免疫
化に使用される動物によって異なる。免疫原の投与には様々な経路(皮下、筋肉内、皮内、静脈内、および腹腔内)を使用することができる。ポリクローナル抗体の産生は、免疫動物の血液を免疫後の様々な時点でサンプリングすることによってモニターすることができる。また2回目の追加免疫注射を行うこともできる。適切な力価が達成されるまで、追加免疫および力価測定のプロセスを繰り返す。所望のレベルの免疫原性が得られたら、免疫動物から採血し、血清を単離して保存し、および/または該動物を用いてMAbを生成させることができる。
【0065】
免疫化後、抗体産生能を有する体細胞、特にBリンパ球(B細胞)を、MAb生成プロトコールで使用するために選択する。これらの細胞は、生検を行った脾臓もしくはリンパ節から、または循環血液から得ることができる。次いで、免疫動物由来の抗体産生Bリンパ球を、一般には免疫化された動物と同種の細胞、またはヒト細胞もしくはヒト/マウスキメラ細胞である不死化骨髄腫細胞の細胞と融合させる。ハイブリドーマ産生融合手順における使用に適した骨髄腫細胞株は、好ましくは、非抗体産生型であり、高い融合効率を有し、特定の選択培地で増殖できないようにして所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支援する酵素欠損を有する。当技術分野で知られているように、様々な骨髄腫細胞の任意の1つを使用することができる(Goding、65~66頁、1986;Campbell、75~83頁、1984)。
【0066】
抗体産生脾臓またはリンパ節細胞と骨髄腫細胞とのハイブリッドを生成するための方法は、通常、体細胞を骨髄腫細胞と2:1の割合で混合することを含むが、その割合は、細胞膜の融合を促進する(化学的または電気的)薬剤の存在下で、それぞれ約20:1~約1:1に変更することができる。センダイウイルスを用いた融合法は、KohlerおよびMilstein(1975;1976)により報告されており、37%(v/v)PEGのようなポリエチレングリコール(PEG)を用いた融合法はGefterら(1977)により報告されている。電気的融合法の使用も適切である(Goding、71~74頁、1986)。融合手順は通常、約1×10-6~1×10-8の低頻度で生存可能なハイブリッドを産生する。しかしながら、このことは、生存可能な融合ハイブリッドは、選択培地で培養することにより注入された親細胞(特に、通常は無限に分裂し続ける注入された骨髄腫細胞)と区別されるため、問題とはならない。選択培地は、一般に、組織培養培地中にヌクレオチドのデノボ合成を阻止する薬剤を含有するものである。例示的な好ましい薬剤は、アミノプテリン、メトトレキサート、およびアザセリンである。アミノプリンおよびメトトレキサートは、プリンおよびピリミジンの両方のデノボ合成を阻止するが、アザセリンはプリン合成のみを阻止する。アミノプテリンまたはメトトレキサートが使用される場合、培地には、ヌクレオチド源としてヒポキサンチンおよびチミジンが補充される(HAT培地)。アザセリンが使用される場合、培地にはヒポキサンチンが補充される。B細胞供給源がエプスタインバーウイルス(EBV:Epstein Barr virus)で形質転換したヒトB細胞株である場合、骨髄腫に融合されていないEBV形質転換株を排除するために、ウアバインが添加される。
【0067】
好ましい選択培地は、HATまたはウアバイン含有HATである。ヌクレオチドサルベージ経路を稼働することができる細胞のみがHAT培地中で生存することができる。骨髄腫細胞は、サルベージ経路の重要な酵素、例えばヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)を欠損しており、生存することができない。B細胞はこの経路を稼働することができるが、培養物では寿命が限られており一般に約2週間以内に死滅する。したがって、選択培地中で生き残ることができる細胞は、骨髄腫とB細胞とから形成されるハイブリッドのみである。融合に使用されるB細胞の供給源が、本明細書のようにEBV形質転換B細胞株である場合、EBV形質転換B細胞は薬物殺傷に感受性があり、一方、使用される骨髄腫パートナーはウアバイン耐性であるように選択されるため、ウアバインもハイブリッドの薬物選択に使用することができる。
【0068】
培養によりハイブリドーマの集団が提供され、そこから特定のハイブリドーマが選択される。典型的には、ハイブリドーマの選択は、マイクロタイタープレートで単一クローン希釈液で細胞を培養し、続いて(約2~3週間後の)個々のクローン上清を、所望の反応性について試験することによって行われる。このアッセイは、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、細胞毒性アッセイ、プラークアッセイ、ドット免疫結合アッセイなどのような、感度が高く簡便で迅速なものであるべきである。次いで、選択されたハイブリドーマを連続希釈するか、またはフローサイトメトリーソーティングにより単一細胞選別し、個々の抗体産生細胞株にクローニングし、次いでそのクローンを無限増殖させてmAbを提供することができる。この細胞株を2つの基本的な方法でMAb産生のために利用することができる。ハイブリドーマのサンプルは動物(例えば、マウス)に(しばしば腹腔に)注入することができる。場合により、動物を炭化水素、特にプリスタン(テトラメチルペンタデカン)のような油で注射前にプライミングする。ヒトハイブリドーマをこの方法で使用する場合には、SCIDマウスのような免疫不全マウスに注射して、腫瘍拒絶反応を防ぐことが最適である。注入された動物は、融合細胞ハイブリッドにより産生される特異的モノクローナル抗体を分泌する腫瘍が発症する。次いで、血清または腹水のような動物体液を穿刺して採取(tap)し高濃度のMAbを提供することができる。また個々の細胞株をインビトロで培養することもでき、この場合MAbは培地中に自然に分泌され、その培地からMAbを容易に高濃度で得ることができる。あるいは、ヒトハイブリドーマ細胞株をインビトロで使用して細胞上清中に免疫グロブリンを産生させることもできる。細胞株を無血清培地中での増殖に適合させて、高純度のヒトモノクローナル免疫グロブリンの回収能を最適化することができる。
【0069】
いずれかの手段によって産生されたMAbは、所望により、濾過、遠心分離、およびFPLCまたはアフィニティークロマトグラフィーなどの様々なクロマトグラフィー法を用いて、さらに精製してもよい。本開示のモノクローナル抗体のフラグメントは、精製モノクローナル抗体から、ペプシンもしくはパパインのような酵素による消化および/または化学還元によるジスルフィド結合の切断などの方法によって得ることができる。あるいは、本開示に包含されるモノクローナル抗体フラグメントは、自動ペプチド合成装置を用いて合成することもできる。
【0070】
また、モノクローナルを生成するために、分子クローニング法を用いることも企図される。このために、ハイブリドーマ株からRNAを単離し、RT-PCRによって抗体遺伝子を得て、免疫グロブリン発現ベクターにクローニングすることができる。あるいは、細胞株から単離したRNAからコンビナトリアル免疫グロブリンファージミドライブラリを作製し、適切な抗体を発現するファージミドをウイルス抗原を用いたパンニングにより選択する。このアプローチは、たった1回のラウンドで約104倍もの数の抗体を生成しスクリーニングできること、ならびに、HおよびL鎖の組み合わせにより新たな特異性を生み出し、それにより適切な抗体を見出す可能性がさらに高まることにおいて、従来のハイブリドーマ技術と比べて有利である。
【0071】
本開示において有用な抗体の製造方法を教示する他の米国特許としては、コンビナトリアルアプローチを用いたキメラ抗体の製造を記載する米国特許第5,565,332号;組換え免疫グロブリン調製物を記載する米国特許第4,816,567号;および抗体-治療薬コンジュゲートを記載する米国特許第4,867,973号が挙げられ、それぞれ参照によって本明細書中に組み入れる。
【0072】
B.本開示の抗体
本開示に係る抗体は、第1の例では、その結合特異性によって規定することができ、この場合の結合特異性は、チクングニヤウイルス糖タンパク質(GP)に対するものである
。当業者であれば、当業者によく知られている技術を用いて所与の抗体の結合特異性/親和性を評価することにより、該抗体が本請求項の範囲内に入るかどうかを決定することができる。一態様では、表3および表4にそれぞれ示した重鎖および軽鎖由来のクローン対CDRを有するモノクローナル抗体が提供される。そのような抗体は、本明細書に記載の方法を使用して、実施例の項で後述するクローンにより産生することができる。
【0073】
第2の態様では、抗体は、追加の「フレームワーク」領域を含むその可変配列によって規定することができる。これらは、完全な可変領域をコードするまたは表す表1および表2に記載されている。さらに、抗体配列は、場合により以下に詳細に記載される方法を用いて、これらの配列から変わる場合もある。例えば、核酸配列は、以下の点で上に示したものとは異なり得る:(a)可変領域が軽鎖および重鎖の定常ドメインから分離していてもよく、(b)核酸は、それがコードする残基に影響を与えない範囲で、上に示したものから異なっていてもよく、(c)核酸は、所与の比率で、例えば、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性で、上に示したものと異なっていてもよく、(d)核酸は、低塩および/または高温条件に例示されるような高ストリンジェンシー条件下、例えば約50℃~約70℃の温度で約0.02M~約0.15MのNaClによりもたらされるような条件下でハイブリダイズする能力に基づいて、上に示したものと異なっていてもよく、(e)アミノ酸は、所与の比率で、例えば80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性で、上に示したものと異なっていてもよく、または(f)アミノ酸は、(後述する)保存的置換を許容することによって、上記に示したものと異なっていてもよい。上記はそれぞれ、表1に記載の核酸配列および表2のアミノ酸配列に適用される。
【0074】
C.抗体配列の操作
様々な実施形態において、発現の改善、交差反応性の改善、またはオフターゲット結合の低減などの様々な理由で、同定された抗体の配列を操作することを選択することができる。以下は、抗体工学の関連技術の一般的な考察である。
【0075】
ハイブリドーマを培養し、次いで細胞を溶解し、そして全RNAを抽出することができる。RTと共にランダムヘキサマーを用いてRNAのcDNAコピーを生成し、次いで、全ヒト可変遺伝子配列を増幅すると期待されるPCRプライマーの多重混合物を用いてPCRを行うことができる。PCR産物をpGEM-T Easyベクターにクローニングし、次いで標準的なベクタープライマーを用いた自動DNAシークエンシングにより配列決定することができる。ハイブリドーマ上清から回収し、プロテインGカラムを用いてFPLCで精製した抗体を用いて、結合および中和のアッセイを行うことができる。
【0076】
クローニングベクターから重鎖および軽鎖FvDNAをIgGプラスミドベクターにサブクローニングし、293Freestyle細胞またはCHO細胞にトランスフェクトし、293またはCHO細胞上清から抗体を収集して精製することにより組換え完全長IgG抗体を生成した。
【0077】
最終cGMP製造プロセスと同じ宿主細胞および細胞培養プロセスで産生された抗体を迅速に入手できることにより、プロセス開発プログラムの期間を短縮できる可能性がある。Lonzaは、CHO細胞中で少量(最大50g)の抗体を迅速に産生するための、CDACF培地で増殖させたトランスフェクタントプールを用いる一般的な方法を開発している。本来の一過性の系よりもわずかに遅いものの、その利点としては、より高い生成物濃度、ならびに産生細胞株と同じ宿主およびプロセスの使用が挙げられる。モデル抗体を使い捨てバイオリアクタで発現させるGS-CHOプールの増殖および生産性の例:流加培養モードで操作される使い捨てバッグバイオリアクタ培養液(作業容量5L)において
、トランスフェクションの9週間以内に2g/Lの回収抗体濃度が達成された。
【0078】
抗体分子は、例えばmAbのタンパク質分解的切断によって生産されるフラグメント(例えば、F(ab’)、F(ab’)2)、または組換え手段により生産可能な一本鎖免疫グロブリンを含むことになる。そのような抗体誘導体は一価である。一実施形態では、そのようなフラグメントを、互いに、または、「キメラ」結合分子を形成するために他の抗体フラグメントもしくは受容体リガンドと組み合わせることができる。重要なことには、そのようなキメラ分子は、同一分子の異なるエピトープに結合することができる置換基を含み得る。
【0079】
関連する実施形態では、抗体は、開示した抗体の誘導体、例えば、開示した抗体のものと同一のCDR配列を含む抗体(例えば、キメラまたはCDRグラフト抗体)である。あるいは、抗体分子に保存的改変を導入するなどの改変を行いたい場合がある。このような改変を行うには、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮することができる。タンパク質に相互的な生物学的機能を付与する際のハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当技術分野で一般に理解されている(KyteおよびDoolittle、1982)。アミノ酸の相対的な疎水親水性の性質は、得られるタンパク質の二次構造に寄与し、それがタンパク質と他の分子、例えば酵素、基質、受容体、DNAなどとの相互作用を規定することが認められている。
【0080】
また、同様のアミノ酸の置換を親水性に基づいて効果的に行うことができることも当技術分野で理解されている。参照によって本明細書に組み入れる米国特許第4,554,101号は、その隣接するアミノ酸の親水性によって支配されるタンパク質の最大局所平均親水性度がタンパク質の生物学的特性と相関すると述べている。米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:塩基性アミノ酸:アルギニン(+3.0)、リシン(+3.0)、およびヒスチジン(-0.5);酸性アミノ酸:アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、アスパラギン(+0.2)、およびグルタミン(+0.2);親水性、非イオン性アミノ酸:セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、およびスレオニン(-0.4)、硫黄含有アミノ酸:システイン(-1.0)およびメチオニン(-1.3);疎水性、非芳香族アミノ酸:バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、プロリン(-0.5±1)、アラニン(-0.5)、およびグリシン(0);疎水性、芳香族アミノ酸:トリプトファン(-3.4)、フェニルアラニン(-2.5)、およびチロシン(-2.3)。
【0081】
アミノ酸を同等の親水性を有する別のアミノ酸に置換して、生物学的または免疫学的に改変されたタンパク質を生み出すことができることが理解される。そのような変更では、親水性値が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが特に好ましく、±0.5以内のものがさらに特に好ましい。
【0082】
上に概説したように、アミノ酸置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づく。前述の様々な特徴を考慮した置換の例は当業者によく知られており、アルギニンとリシン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;および、バリンとロイシンとイソロイシンが挙げられる。
【0083】
また本開示はアイソタイプ改変も企図する。Fc領域を改変して異なるアイソタイプを有するようにすることで、異なる機能を得ることができる。例えば、IgG1への変更により抗体依存性細胞傷害活性を高めることができ、クラスAへの切り替えにより組織分布を改善することができ、クラスMへの切り替えにより結合価を増加させることができる。
【0084】
改変抗体は、標準的な分子生物学的技術による発現、またはポリペプチド化学合成などの、当業者に知られている任意の技術によって作製することができる。組換え体の発現のための方法を本明細書の別項で述べる。
【0085】
D.一本鎖抗体
一本鎖可変フラグメント(scFv)は、短い(通常はセリン、グリシン)リンカーで連結された免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域の融合体である。このキメラ分子は、定常領域が除去されかつリンカーペプチドが導入されているにもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持している。この改変は、通常、特異性は変化させずに残す。これらの分子は、歴史的には、抗原結合ドメインを単一ペプチドとして発現することが非常に好都合であるファージディスプレイを容易にするために生み出されたものである。あるいは、scFvは、サブクローニングされたハイブリドーマ由来の重鎖および軽鎖から直接作り出すこともできる。一本鎖可変フラグメントは、完全抗体分子中に見られる定常Fc領域を欠いており、そのため抗体を精製するために使用される共通の(例えば、プロテインA/Gの)結合部位を欠いている。プロテインLはカッパ軽鎖の可変領域と相互作用するため、これらのフラグメントは、多くの場合、プロテインLを用いて精製/固定することができる。
【0086】
可撓性リンカーは、一般に、アライン、セリン、およびグリシンのようなヘリックスおよびターンを形成しやすいアミノ酸残基を含む。しかしながら、他の残基も機能することができる。Tangら(1996)は、タンパク質リンカーライブラリから一本鎖抗体(scFv)のテーラードリンカーを迅速に選択する手段としてファージディスプレイを使用した。重鎖および軽鎖可変ドメインの遺伝子が様々な組成の18アミノ酸ポリペプチドをコードするセグメントによって連結されたランダムリンカーライブラリが構築された。scFvレパートリー(約5×106メンバー)が繊維状ファージ上に提示され、ハプテンを用いた親和性選択に供された。選択された変異体の集団は、結合活性の顕著な増加を示したが、配列多様性を相当保持していた。続いて、1054個の変異体のスクリーニングにより、可溶型で効率的に産生される触媒活性scFvを得た。配列分析により、選択されたテザーの唯一の共通の特徴として、リンカー中、VHC末端の2残基後ろにプロリンが保存されていること、および、別の位置にアルギニンおよびプロリンが豊富であることが明らかとなった。
【0087】
また本開示の組換え抗体は、受容体の二量体化または多量体化を可能にする配列または部分を含み得る。そのような配列としては、J鎖と連結して多量体の形成を可能にするIgA由来の配列が挙げられる。別の多量体化ドメインとしてはGal4二量体化ドメインがある。他の実施形態では、2つの抗体の組み合わせを可能にするビオチン/アビジンのような薬剤で鎖を改質することができる。
【0088】
別の実施形態では、受容体の軽鎖および重鎖を非ペプチドリンカーまたは化学単位を用いて結合することによって一本鎖抗体を作り出すことができる。一般に、軽鎖および重鎖は、別々の細胞で産生され、精製され、続いて適切な方法で連結される(すなわち、重鎖のN末端を適切な化学架橋で軽鎖C末端に付着させる)。
【0089】
架橋剤は、2つの異なる分子の官能基を結ぶ分子架橋を形成するために使用される、例えば、安定化および凝固剤である。しかしながら、同一のアナログの二量体もしくは多量体、または、異なるアナログからなるヘテロマー複合体を作り出すことが企図される。2つの異なる化合物を段階的に連結するために、不要なホモポリマー形成を排除するヘテロ二官能性架橋剤を使用することができる。
【0090】
例示的なヘテロ二官能性架橋剤は、一方は第一級アミン基と反応する反応基(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド)であり、他方はチオール基と反応する反応基(例えば、ピリジルジスルフィド、マレイミド、ハロゲンなど)である2つの反応基を含む。架橋剤は、第一級アミン反応性基を介して一方のタンパク質(例えば、選択された抗体またはフラグメント)のリシン残基と反応することができ、そして、既に最初のタンパク質につながれている架橋剤が、チオール反応基を介して他方のタンパク質(例えば、選択剤)のシステイン残基(遊離スルフヒドリル基)と反応する。
【0091】
血液中で妥当な安定性を有する架橋剤を採用することが好ましい。様々な種類のジスルフィド結合含有リンカーが知られており、これらを標的化剤および治療/予防剤をコンジュゲートするために成功裡に使用することができる。立体障害のあるジスルフィド結合を含むリンカーは、インビボでより大きな安定性を与え、作用部位に到達する前の標的ペプチドの放出を防止することが判明する場合がある。したがって、これらのリンカーは、連結剤の1つのグループである。
【0092】
別の架橋剤はSMPTであり、隣接するベンゼン環およびメチル基による「立体障害のある」ジスルフィド結合を含む二官能性架橋剤である。ジスルフィド結合の立体障害は、組織および血液中に存在し得るグルタチオンのようなチオレートアニオンによる攻撃から結合を保護する機能を果たし、それにより、付着した薬剤が標的部位に送達される前にコンジュゲートから切り離されるのを阻止するのに役立つと考えられている。
【0093】
他の多くの既知の架橋剤と同様に、SMPT架橋剤は、システインのSHまたは第一級アミン(例えば、リシンのイプシロンアミノ基)などの官能基を架橋する能力を付与する。他の種類の架橋剤の候補としては、スルホスクシンイミジル-2-(p-アジドサリチルアミド)エチル-1,3’-ジチオプロピオナートのような切断可能なジスルフィド結合を含むヘテロ二官能性光反応性フェニルアジドが挙げられる。N-ヒドロキシスクシンイミジル基は第一級アミノ基と反応し、フェニルアジドは(光分解の際に)任意のアミノ酸残基と非選択的に反応する。
【0094】
立体障害性架橋剤に加えて、非立体障害性リンカーも本明細書に沿って使用することができる。保護ジスルフィドを含まないまたは生成しないと考えられる他の有用な架橋剤としては、SATA、SPDP、および2-イミノチオラン(Wawrzynczak&Thorpe、1987)が挙げられる。このような架橋剤の使用は、当技術分野において十分に理解されている。別の実施形態は、可撓性リンカーの使用を含む。
【0095】
米国特許第4,680,338号は、リガンドとアミン含有ポリマーおよび/またはタンパク質とのコンジュゲートの製造に有用な、特には、キレート剤、薬物、酵素、検出可能な標識などとの抗体コンジュゲートの形成に有用な二官能性リンカーを記載している。米国特許第5,141,648号および第5,563,250号は、様々な温和な条件下で切断可能な不安定な結合を含む切断可能なコンジュゲートを開示している。このリンカーは、目的の薬剤をリンカーに直接結合させ、切断により活性物質の放出をもたらすことができるという点で特に有用である。特定の用途としては、遊離アミノまたは遊離スルフヒドリル基を、抗体のようなタンパク質、または薬物に付加することが挙げられる。
【0096】
米国特許第5,856,456号は、ポリペプチド構成要素を連結して、融合タンパク質、例えば一本鎖抗体を作製するのに使用するためのペプチドリンカーを提供する。リンカーは、最大約50アミノ酸長であり、荷電アミノ酸(好ましくはアルギニンまたはリシン)に続くプロリンを少なくとも1回含み、安定性が高くかつ凝集が少ないことを特徴とする。米国特許第5,880,270号は、様々な免疫診断および分離技術において有用なアミノオキシ含有リンカーを開示している。
【0097】
E.イントラボディ
特定の実施形態では、抗体は、細胞内での作用に適した組換え抗体であり、このような抗体は「イントラボディ」として知られている。これらの抗体は、細胞内タンパク質輸送を改変する、酵素機能を妨げる、およびタンパク質-タンパク質またはタンパク質-DNA相互作用を遮断するなどの様々なメカニズムにより標的機能を妨げ得る。それらの構造は、多くの点で、上述の一本鎖抗体および単一ドメイン抗体の構造の模倣であるか、またはそれらと同等である。実際、単一転写物/一本鎖であることは、標的細胞における細胞内発現を可能にする重要な特徴であり、また、細胞膜を介したタンパク質輸送もより実現可能となる。ただし、他の特徴も必要である。
【0098】
イントラボディ療法の実現に影響を及ぼす2つの主要な課題は、細胞/組織標的化などの送達、そして安定性である。送達に関しては、組織特異的送達、細胞型特異的プロモーターの使用、ウイルスベースの送達、および細胞透過性/膜転座ペプチドの使用などの様々なアプローチが採用されている。安定性に関しては、一般に、ファージディスプレイを伴い、さらに配列成熟またはコンセンサス配列の開発を含み得る方法などの力ずくのスクリーニングか、あるいは、安定化配列(例えば、Fc領域、シャペロンタンパク質配列、ロイシンジッパー)の挿入およびジスルフィド置換/修飾のようなより直接的な改変のいずれかに向けたアプローチがとられる。
【0099】
イントラボディが必要とし得るさらなる特徴は、細胞内標的化のためのシグナルである。イントラボディ(または他のタンパク質)を細胞質、核、ミトコンドリア、およびERのような細胞下領域に標的化することができるベクターが設計されており、市販されている(Invitrogen Corp.;Persicら、1997)。
【0100】
イントラボディは、細胞に入る能力を有するために、他の種類の抗体が達成できないさらなる用途を有する。本発明の抗体の場合、生細胞内のMUC1細胞質ドメインと相互作用する能力により、シグナル伝達機能(他の分子への結合)またはオリゴマー形成のようなMUC1 CDに関連する機能を妨げることができる。特に、そのような抗体を使用してMUC1二量体の形成を阻害することが企図される。
【0101】
F.精製
特定の実施形態では、本開示の抗体を精製してもよい。本明細書で使用される場合、「精製された」という用語は、他の成分から単離可能であり、タンパク質がその自然に得られる状態に対して任意の程度まで精製されている組成物を指すことが意図される。したがって、精製されたタンパク質とは、それが元々存在していた環境を含まないタンパク質も指す。「実質的に精製された」という用語が使用される場合、これは、該タンパク質またはペプチドが組成物の主要成分を形成する、例えば、組成物中のタンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれ以上を構成するような組成物を指すことになる。
【0102】
タンパク質精製技術は、当業者によく知られている。これらの技術は、あるレベルで、細胞環境をポリペプチドおよび非ポリペプチドの画分に粗分画することを含む。ポリペプチドを他のタンパク質から分離した後、クロマトグラフィーおよび電気泳動技術を用いて目的のポリペプチドをさらに精製して、部分的または完全な精製(または、均質になるまで精製)を達成することができる。純粋なペプチドの調製に特に好適な分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、排除クロマトグラフィー;ポリアクリルアミドゲル電気泳動;等電点電気泳動である。タンパク質精製のための他の方法としては、硫酸アンモニウム、PEG、抗体などを用いた、または熱変性による沈殿後遠心分離;ゲル濾過、逆相、ヒドロキシアパタイト、およびアフィニティークロマトグラフィー;そのような技術と他の
技術との組み合わせが挙げられる。
【0103】
本開示の抗体を精製する際に、原核または真核発現系においてポリペプチドを発現させ、変性条件を用いてタンパク質を抽出することが望ましい場合がある。ポリペプチドは、ポリペプチドのタグ部分に結合するアフィニティーカラムを用いて他の細胞成分から精製することができる。当技術分野で一般的に知られているように、様々な精製工程を行う順序を変更してもよく、または、特定の工程を省略してもよく、それでもなお、実質的に精製されたタンパク質またはペプチドの調製に適した方法となると考えられている。
【0104】
一般的に、完全抗体は、抗体のFc部分に結合する薬剤(すなわち、プロテインA)を利用して分画される。あるいは、抗原を用いて、適切な抗体を同時に精製および選択することもできる。そのような方法は、カラム、フィルター、またはビーズのような支持体に結合された選択剤をしばしば利用する。抗体は、支持体に結合し、混入物質が除去され(例えば、洗い流され)、条件(塩、熱など)の適用により抗体が放出される。
【0105】
当業者であれば、本開示を踏まえて、タンパク質またはペプチドの精製度を定量するための様々な方法を理解するであろう。これらの方法としては、例えば、活性画分の比活性を測定すること、またはSDS/PAGE解析によって画分中のポリペプチドの量を評価することが挙げられる。画分の純度を評価する別の方法は、画分の比活性を計算し、それを最初の抽出物の比活性と比較し、これにより純度を計算することである。活性量を表すのに使用される実際の単位は、当然のことながら、精製の後の選択された特定のアッセイ技術、および発現されたタンパク質またはペプチドが検出可能な活性を示すかどうかによることとなる。
【0106】
ポリペプチドの移動度は、SDS/PAGEの条件によって、時として顕著に変化し得ることが知られている(Capaldiら、1977)。そのため、異なる電気泳動条件下では、精製または部分精製された発現産物の見かけの分子量が変わり得ることが理解されるであろう。
【0107】
III.チクングニヤ感染症の能動的/受動的免疫付与および治療/予防
A.製剤および投与
本開示は、抗チクングニヤウイルス抗体およびそれを生成するための抗原を含む医薬組成物を提供する。そのような組成物は、予防もしくは治療有効量の抗体もしくはそのフラグメント、またはペプチド免疫原と、および医薬として許容される担体とを含む。特定の実施形態では、「医薬として許容される」という用語は、連邦政府または州政府の規制機関によって承認されているか、または、米国薬局方、もしくは動物、特にヒトにおける使用のための一般に認められている薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、医薬と共に投与される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。このような医薬担体は、滅菌液、例えば、水、および、石油、動物、植物、合成物由来のものなどの油(例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ごま油など)であり得る。水は、特に、医薬組成物が静脈内投与される場合の担体である。また、生理食塩水、ならびにデキストロース水溶液およびグリセリン水溶液も、液体担体として、特には注射液用に使用することができる。他の好適な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセリンモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセリン、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0108】
また組成物は、所望により、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有することもできる。これらの組成物は、液剤、懸濁液剤、乳剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、粉剤、徐放性製剤などの形態を取ることができる。経口製剤は、医薬グレードのマンニト
ール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような標準的な担体を含むことができる。好適な医薬品の例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、予防または治療有効量の抗体またはそのフラグメントを、好ましくは精製された形態で、患者への適切な投与のための形態となるように好適な量の担体と共に含む。製剤は投与様式に適しているべきであり、投与様式は、経口、静脈内、動脈内、口腔内、鼻腔内、ネブライザー、気管支吸入とすることができ、または人工呼吸器により送達することもできる。
【0109】
また、開示されているもののような抗体が、チクングニヤウイルス感染のリスクがある対象においてインビボで産生される場合は、活性ワクチンも想定され得る。E1およびE2の配列を、添付の配列表に配列番号:253~276として列挙する。このようなワクチンは、非経口投与用に製剤化、例えば、皮内、静脈内、筋肉内、皮下注射、さらには腹腔内経路用に製剤化することができる。皮内および筋肉内経路による投与が企図される。あるいは、ワクチンは、局所経路によって粘膜へ直接的に、例えば、点鼻薬、吸入剤により、またはネブライザーにより投与することもできる。医薬として許容される塩としては、酸性塩、ならびに、例えば塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸を用いて形成された塩が挙げられる。また、遊離カルボキシル基を用いて形成される塩も、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄のような無機塩基、および、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインのような有機塩基から得ることができる。
【0110】
抗体の受動伝達は、人工的に獲得される受動免疫として知られており、一般に、静脈内または筋肉内注射の使用を含む。抗体の形態は、静脈内(IVIG)または筋肉内(IG)使用のためのヒト免疫グロブリンプールとしての;免疫化された、もしくは疾患から回復中のドナー由来の高力価ヒトIVIGまたはIGとしての;および、モノクローナル抗体(MAb)としての、ヒトまたは動物の血漿または血清であり得る。そのような免疫は一般に短時間しか持続せず、また、過敏症反応、および、特に非ヒト起源のガンマグロブリンによる血清病の潜在的なリスクもある。しかながら、受動免疫は即時型の防御をもたらす。抗体は、注射に適した、すなわち滅菌された注射可能な担体中に製剤化される。
【0111】
一般的に、本開示の組成物の成分は、個別にまたは単位剤形として混合して、例えば、乾燥した凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、有効成分量を示すアンプルまたは小袋のような密封容器に入れて供給される。組成物を輸注によって投与すべき場合は、組成物は、無菌の医薬品グレードの水または生理食塩水を含む輸注ボトルを用いて調剤することができる。組成物を注射によって投与する場合は、成分を投与前に混合できるように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0112】
本開示の組成物は、中性または塩の形態として製剤化することができる。医薬として許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるもののようなアニオンを用いて形成された塩、ならびに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されるもののようなカチオンを用いて形成された塩が挙げられる。
【0113】
IV.抗体コンジュゲート
本開示の抗体を少なくとも1つの薬剤に連結させて抗体コンジュゲートを形成することができる。診断薬または治療薬としての抗体分子の効力を高めるために、慣習的には、少なくとも1つの所望の分子または部分構造を連結または共有結合または複合化させる。そ
のような分子または部分構造は、これに限定されるものではないが、少なくとも1つのエフェクター分子またはレポーター分子であり得る。エフェクター分子は、所望の活性、例えば細胞傷害活性を有する分子を含む。抗体に付着しているエフェクター分子の非限定的な例としては、毒素、抗腫瘍薬、治療用酵素、放射性核種、抗ウイルス剤、キレート剤、サイトカイン、成長因子、およびオリゴまたはポリヌクレオチドが挙げられる。対照的に、レポーター分子は、アッセイを用いて検出することができる任意の部分構造と定義される。抗体にコンジュゲートされているレポーター分子の非限定的な例としては、酵素、放射性標識、ハプテン、蛍光標識、燐光分子、化学発光分子、発色団、光親和性分子、着色粒子、またはビオチンなどのリガンドが挙げられる。
【0114】
抗体コンジュゲートは、一般に、診断薬としての使用に好ましい。抗体診断は、一般に、様々なイムノアッセイのようなインビトロ診断に使用するものと、一般に「抗体指向性(antibody-directed)イメージング」として知られているインビボ診断プロトコールに使用するもの、の2つのクラスに分類される。多くの適切な造影剤が、それらを抗体へ付着させる方法と同様に、当技術分野で知られている(例えば、米国特許第5,021,236号、第4,938,948号、および第4,472,509号を参照されたい)。使用される造影部分構造は、常磁性イオン、放射性同位体、蛍光色素、NMR検出可能物質、およびX線造影剤であり得る。
【0115】
常磁性イオンの場合、例として、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、および/またはエルビウム(III)のようなイオンを挙げることができるが、ガドリニウムが特に好ましい。X線イメージングのような他の状況で有用なイオンとしては、これらに限定されるものではないが、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、そして特にビスマス(III)が挙げられる。
【0116】
治療および/または診断用途のための放射性同位体の場合には、アスタチン211、14炭素、51クロム、36塩素、57コバルト、58コバルト、銅67、152Eu、ガリウム67、3水素、ヨウ素123、ヨウ素125、ヨウ素131、インジウム111、59鉄、32リン、レニウム186、レニウム188、75セレン、35硫黄、テクネチウム99m、および/またはイットリウム90を挙げることができる。125Iは多くの場合特定の実施形態において使用するのに好ましく、またテクネチウム99mおよび/またはインジウム111も、それらが低エネルギーであること、および遠距離検出に好適であることから、多くの場合好ましい。本開示の放射性標識されたモノクローナル抗体は当技術分野においてよく知られている方法に従って製造することができる。例えば、モノクローナル抗体は、ヨウ化ナトリウムおよび/もしくはヨウ化カリウム、ならびに次亜塩素酸ナトリウムのような化学的酸化剤またはラクトペルオキシダーゼのような酵素的酸化剤との接触によりヨウ素化することができる。本開示に係るモノクローナル抗体は、リガンド交換プロセスによって、例えば、パーテクネートを第一スズ溶液で還元し、還元テクネチウムをSephadexカラムにキレート化させ、このカラムに抗体を適用することによって、テクネチウム99mで標識することができる。あるいは、例えば、パーテクネート、SNCl2のような還元剤、フタル酸ナトリウム-カリウム溶液のようなバッファー溶液、および抗体をインキュベートすることによって、直接的標識技術を使用することもできる。金属イオンとして存在する放射性同位体を抗体に結合させるのにしばしば使用される中間官能基は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0117】
コンジュゲートとしての使用が企図される蛍光標識としては、Alexa350、Al
exa430、AMCA、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665、BODIPY-FL、BODIPY-R6G、BODIPY-TMR、BODIPY-TRX、カスケードブルー、Cy3、Cy5、6-FAM、フルオレセインイソチオシアネート、HEX、6-JOE、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、REG、ローダミングリーン、ローダミンレッド、レノグラフィン、ROX、TAMRA、TET、テトラメチルローダミン、および/またはテキサスレッドが挙げられる。
【0118】
本開示において企図される別の種類の抗体コンジュゲートは、主にインビトロでの使用を意図したものであり、ここで、該抗体は、二次結合リガンド、および/または、色素生成性基質と接触すると着色生成物を生成する酵素(酵素タグ)に連結される。好適な酵素の例としては、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(西洋ワサビ)水素ペルオキシダーゼ、またはグルコースオキシダーゼが挙げられる。好ましい二次結合リガンドは、ビオチンおよびアビジンおよびストレプトアビジン化合物である。そのような標識の使用は当業者によく知られており、例えば、米国特許第3,817,837号、第3,850,752号、第3,939,350号、第3,996,345号、第4,277,437号、第4,275,149号、および第4,366,241号に記載されている。
【0119】
抗体に対する分子の部位特異的な付着のさらに別の既知の方法は、抗体とハプテンベースの親和性標識との反応を含む。本質的に、ハプテンベースの親和性標識は、抗原結合部位中のアミノ酸と反応し、それによりこの部位を破壊して特異的抗原反応を遮断する。しかしながら、これは抗体コンジュゲートによる抗原結合の喪失をもたらすため、有利ではない場合もある。
【0120】
またアジド基を含む分子も、低強度紫外線によって生成する反応性ナイトレン中間体を介してタンパク質に対する共有結合を形成するために使用され得る(PotterおよびHaley、1983)。特に、プリンヌクレオチドの2-および8-アジドアナログは、粗細胞抽出物中のヌクレオチド結合タンパク質を同定するための部位指向性フォトプローブとして使用されている(Owens&Haley、1987;Athertonら、1985)。また2-および8-アジドヌクレオチドは、精製タンパク質のヌクレオチド結合ドメインをマッピングするためにも使用されており(Khatoonら、1989;Kingら、1989;Dholakiaら、1989)、また抗体結合剤として使用することができる。
【0121】
抗体のそのコンジュゲート部分構造に対する付着またはコンジュゲーションのためのいくつかの方法が当技術分野において知られている。いくつかの付着方法は、抗体に付着している、例えば、ジエチレントリアミンペンタ酢酸無水物(DTPA);エチレンジアミン四酢酸;N-クロロ-p-トルエンスルホンアミド;および/またはテトラクロロ-3α-6α-ジフェニルグリクリル-3のような有機キレート剤を用いた金属キレート錯体の使用を含む(米国特許第4,472,509号および第4,938,948号)。またモノクローナル抗体も、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩のようなカップリング剤の存在下で酵素と反応させることができる。フルオレセインマーカーとのコンジュゲートは、これらのカップリング剤の存在下で、またはイソチオシアネートとの反応によって作製される。米国特許第4,938,948号では、乳房腫瘍の画像化は、モノクローナル抗体と、メチル-p-ヒドロキシベンゾイミダートまたはN-スクシンイミジル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオナートのようなリンカーを用いて該抗体に結合させた検出可能な画像化部分構造とを用いて達成されている。
【0122】
他の実施形態では、抗体結合部位を変化させない反応条件を使用して、スルフヒドリル基を免疫グロブリンのFc領域に選択的に導入することによる免疫グロブリンの誘導体化
が企図される。この方法に従って製造された抗体コンジュゲートは、改善された寿命、特異性、および感度を示すことが開示されている(米国特許第5,196,066号、参照によって本明細書に組み入れる)。レポーター分子またはエフェクター分子がFc領域の炭水化物残基にコンジュゲートされているエフェクター分子またはレポーター分子の部位特異的付着も文献に開示されている(O’Shannessyら、1987)。このアプローチは、現在臨床評価中の診断上および治療上有望な抗体をもたらすことが報告されている。
【0123】
V.免疫検出法
よりさらなる実施形態では、本開示は、チクングニヤウイルスおよびその関連抗原に結合、またはそれらを精製、除去、定量化するための、あるいは一般的に検出するための免疫検出方法に関する。このような方法は従来の意味で適用することもできるが、他の使用としては、ワクチンおよび他のウイルスストックの品質管理およびモニタリングにおける使用であり、この場合、本開示に係る抗体を、ウイルス中のHI抗原の量または完全性(すなわち、長期安定性)を評価するために使用することができる。あるいは、該方法を用いて、様々な抗体を適切な/所望の反応性プロファイルについてスクリーニングすることができる。
【0124】
いくつかの免疫検出法としては、一部を挙げるだけでも、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫放射線測定アッセイ、フルオロイムノアッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイ、およびウェスタンブロットが挙げられる。また、特には、サンプル中の特定の寄生生物エピトープ指向性のチクングニヤウイルス抗体の検出および定量のための競合アッセイも提供される。様々な有用な免疫検出法の工程が、例えば、DoolittleおよびBen-Zeev(1999)、GulbisおよびGaland(1993)、De Jagerら(1993)、ならびにNakamuraら(1987)のような科学文献に記載されている。一般に、免疫結合法は、チクングニヤウイルスを含むと疑われるサンプルを得ること、および、場合により免疫複合体を形成させるのに効果的な条件下で、サンプルを本開示に係る第1の抗体と接触させることを含む。
【0125】
これらの方法は、サンプルからチクングニヤウイルスまたは関連する抗原を精製するための方法を含む。抗体を、好ましくは、カラムマトリックスの形態のような固体支持体に連結し、チクングニヤウイルスまたは抗原性成分を含むことが疑われるサンプルを、固定化された抗体に適用する。不要な成分をカラムから洗い流して、固定化された抗体と免疫複合体化しているチクングニヤウイルス抗原を残し、次いでこれをカラムから該生物体または抗原を取り出すことによって回収する。
【0126】
また免疫結合法は、サンプル中のチクングニヤウイルスまたは関連成分の検出およびその量の定量、ならびに結合プロセスの間に形成された任意の免疫複合体の検出および定量のための方法も含む。ここでは、チクングニヤウイルスまたはその抗原を含む疑いのあるサンプルを入手し、該サンプルをチクングニヤウイルスまたはその成分に結合する抗体と接触させた後、形成された免疫複合体を、特定の条件下で検出し、そしてその量を定量する。抗原検出に関して、分析される生物学的サンプルは、組織切片または標本、ホモジネート組織抽出物、血液および血清などの生体液、または糞便もしくは尿のような分泌物などの、チクングニヤウイルスまたはチクングニヤウイルス抗原を含むことが疑われる任意のサンプルであってよい。
【0127】
選択された生物学的サンプルを、免疫複合体(一次免疫複合体)を形成させるのに効果的な条件下で、そして十分な時間、抗体に接触させることは、一般には、単に抗体組成物をサンプルに添加し、抗体が免疫複合体を形成する、すなわち存在するチクングニヤウイ
ルスまたは抗原に結合するために十分長い時間インキュベートするということである。この後、一般には、組織切片、ELISAプレート、ドットブロット、またはウェスタンブロットなどのサンプル-抗体組成物を洗浄して非特異的に結合した抗体種を除去し、一次免疫複合体内に特異的に結合している抗体のみが検出されるようにする。
【0128】
一般に、免疫複合体形成の検出は当技術分野でよく知られており、様々なアプローチの適用によって達成することができる。これらの方法は、一般に、放射性、蛍光、生物学的、および酵素的タグのいずれかのような標識またはマーカーの検出に基づく。そのような標識の使用に関する特許としては、米国特許第3,817,837号、第3,850,752号、第3,939,350号、第3,996,345号、第4,277,437号、第4,275,149号、および第4,366,241号が挙げられる。当然のことながら、当技術分野で知られているように、第2の抗体および/またはビオチン/アビジンリガンド結合の配置のような二次結合リガンドの使用によるさらなる利点も見出すことができる。
【0129】
検出に用いられる抗体は、それ自体が検出可能な標識に連結されていてもよく、この場合、単にこの標識を検出し、それにより組成物中の一次免疫複合体の量を測定できるようにする。あるいは、一次免疫複合体内に結合した第1の抗体を、該抗体に対する結合親和性を有する第2の結合リガンドによって検出することもできる。これらの場合、該第2の結合リガンドを検出可能な標識に連結してもよい。該第2の結合リガンドは、多くの場合それ自体が抗体であるため、「二次」抗体と称される場合がある。一次免疫複合体を、二次免疫複合体を形成させるのに効果的な条件下および十分な時間、標識された二次結合リガンドまたは抗体と接触させる。次いで、一般には、二次免疫複合体を洗浄して非特異的に結合した標識二次抗体またはリガンドを全て除去し、その後二次免疫複合体中に残っている標識を検出する。
【0130】
さらなる方法としては、二段階アプローチによる一次免疫複合体の検出が挙げられる。該抗体に対する結合親和性を有する抗体のような第2の結合リガンドを用いて、上記のような二次免疫複合体を形成する。洗浄後、二次免疫複合体を、第2の抗体に対する結合親和性を有する第3の結合リガンドまたは抗体に、この場合も免疫複合体(三次免疫複合体)を形成させるのに効果的な条件下および十分な時間、接触させる。第3のリガンドまたは抗体は検出可能な標識に連結されており、それにより形成された三次免疫複合体を検出できるようにする。この系は、所望によりシグナル増幅をもたらすことができる。
【0131】
免疫検出の1つの方法は、2つの異なる抗体を使用する。第1のビオチン化抗体を用いて標的抗原を検出し、次に第2の抗体を用いて複合化ビオチンに付着したビオチンを検出する。この方法では、試験すべきサンプルを先ず第1段階の抗体を含有する溶液中でインキュベートする。標的抗原が存在する場合、抗体の一部は抗原に結合してビオチン化抗体/抗原複合体を形成する。次いで、抗体/抗原複合体を、ストレプトアビジン(またはアビジン)、ビオチン化DNA、および/または相補的ビオチン化DNAの連続溶液中でインキュベートし、各工程で抗体/抗原複合体にさらなるビオチン部位を付加することにより増幅する。増幅工程を適切な増幅レベルに達するまで繰り返し、その時点でビオチンに対する第2工程の抗体を含有する溶液中でサンプルをインキュベートする。この第2工程の抗体は、例えば色素生成性基質を用いて組織酵素学的に抗体/抗原複合体の存在を検出するために使用することができる酵素を用いて標識される。適切に増幅することにより、巨視的に視認可能なコンジュゲートを生成することができる。
【0132】
免疫検出の別の既知の方法は、イムノ-PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を利用する。PCR法は、ビオチン化DNAとのインキュベーションまではCantor法と類似しているが、ストレプトアビジンとビオチン化DNAのインキュベーションを複数回行う代
わりに、DNA/ビオチン/ストレプトアビジン/抗体複合体を、抗体を放出する低pHまたは高塩バッファーで洗い出す。次いで、得られた洗浄液を使用して、適切なプライマーで、適切な対照を用いてPCR反応を行う。少なくとも理論的には、PCRの非常に高い増幅能力および特異性を利用して、ただ1つの抗原分子を検出することができる。
【0133】
A.ELISA
イムノアッセイは、最も単純で直接的な意味では、結合アッセイである。特定の好ましいイムノアッセイは、当技術分野で知られている様々なタイプの酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)である。組織切片を用いた免疫組織化学的検出も特に有用である。しかしながら、検出はこのような技術に限定されず、ウェスタンブロッティング、ドットブロッティング、FACS解析なども用いることができることは容易に理解されるであろう。
【0134】
1つの例示的なELISAでは、本開示の抗体は、ポリスチレンマイクロタイタープレートのウェルのようなタンパク質親和性を示す選択された表面上に固定化される。次いで、チクングニヤウイルスまたはチクングニヤウイルス抗原を含む疑いのある試験組成物をウェルに添加する。結合および洗浄して非特異的に結合した免疫複合体を除去した後、結合した抗原を検出することができる。検出は、検出可能な標識に連結された別の抗チクングニヤウイルス抗体の添加によって達成することができる。この種のELISAは、単純な「サンドイッチELISA」である。また検出は、第2の抗チクングニヤウイルス抗体を添加し、その後該第2の抗体に対する結合親和性を有する第3の抗体(ここで、第3の抗体は検出可能な標識に連結されている)を添加することによって達成することもできる。
【0135】
別の例示的なELISAでは、チクングニヤウイルスまたはチクングニヤウイルス抗原を含むことが疑われるサンプルをウェル表面に固定化し、次いで本開示の抗チクングニヤウイルス抗体と接触させる。結合および洗浄して非特異的に結合した免疫複合体を除去した後、結合した抗チクングニヤウイルス抗体を検出する。最初の抗チクングニヤウイルス抗体が検出可能な標識に連結されている場合は、免疫複合体を直接検出することができる。またこの場合も、免疫複合体は、第1の抗チクングニヤウイルス抗体に対する結合親和性を有する第2の抗体(ここで、第2の抗体は検出可能な標識に連結されている)を用いて検出することができる。
【0136】
使用される形式にかかわらず、ELISAは、コーティング、インキュベーションおよび結合、非特異的に結合した種を除去するための洗浄、ならびに結合した免疫複合体の検出のような共通の特徴を有する。これらについて以下に記載する。
【0137】
抗原または抗体のいずれかによるプレートのコーティングでは、一般に、プレートのウェルを、抗原または抗体の溶液と共に、一晩または特定時間インキュベートする。次いで、プレートのウェルを洗浄して不完全に吸着した物質を除去する。次いで、ウェルの残りの利用可能な表面を全て、試験抗血清に関して抗原的に中性な非特異的タンパク質で「コーティング」する。これらの非特異的タンパク質としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、または粉乳溶液が挙げられる。コーティングにより、固定化表面上の非特異的吸着部位のブロッキングが可能となり、それにより該表面への抗血清の非特異的結合によって引き起こされるバックグラウンドが低減される。
【0138】
ELISAでは、おそらく、直接的な手順ではなく、二次的または三次的な検出手段を用いることがより慣習的である。したがって、ウェルにタンパク質または抗体を結合させ、バックグラウンドを減少させるために非反応性物質でコーティングし、そして洗浄して非結合物質を除去した後、免疫複合体(抗原/抗体)を形成させるのに効果的な条件下で
、固定化表面を試験すべき生物学的サンプルと接触させる。その後免疫複合体の検出には、標識された二次結合リガンドまたは抗体、および、標識三次抗体または第3の結合リガンドと連結した二次結合リガンドまたは抗体が必要である。
【0139】
「免疫複合体(抗原/抗体)を形成させるのに効果的な条件下」とは、該条件が、好ましくは、BSA、ウシガンマグロブリン(BGG)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)/Tweenのような溶液を用いて抗原および/または抗体を希釈することを含むことを意味する。またこれらの添加された薬剤は、非特異的バックグラウンドの減少を助ける傾向もある。
【0140】
また「適切な」条件は、インキュベーションが効果的な結合を可能にするのに十分な温度でまたは時間行われることを意味する。インキュベーション工程は、典型的には、約1から2から4時間程度、好ましくは25℃~27℃程度の温度であり、または、約4℃程度で一晩としてもよい。
【0141】
ELISAにおける全てのインキュベーション工程の後、複合化されなかった物質を除去するために、接触した表面を洗浄する。好ましい洗浄手順としては、PBS/Tweenまたはホウ酸バッファーのような溶液を用いた洗浄が挙げられる。試験サンプルと元々結合している物質との間の特異的免疫複合体を形成させその後洗浄を行うと、極微量の免疫複合体の存在であっても測定することができる。
【0142】
検出手段を提供するために、第2または第3の抗体は、検出を可能にするための結合された標識を有することになる。好ましくは、該標識は、適切な色素生成性基質と共にインキュベートすると発色する酵素である。したがって、例えば、第1および第2の免疫複合体を、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、または水素ペルオキシダーゼコンジュゲート抗体と、さらなる免疫複合体形成の発達に好都合な時間および条件下(例えば、PBS-TweenのようなPBS含有溶液中、室温で2時間のインキュベーション)で、接触またはインキュベートすることが望ましい。
【0143】
標識抗体とのインキュベーションと、その後の非結合物質の除去のための洗浄の後、例えば、尿素、またはブロモクレゾールパープル、または2,2’-アジノ-ジ-(3-エチル-ベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS)、または酵素標識がペルオキシダーゼの場合にはH2O2のような色素生成性基質とインキュベートすることにより、標識量を定量する。定量は、その後、例えば可視スペクトル分光光度計を使用して、生成された色の程度を測定することによって達成される。
【0144】
別の実施形態では、本開示は、競合形式の使用を企図する。これは、サンプル中のチクングニヤウイルス抗体の検出に特に有用である。競合ベースのアッセイでは、既知量の標識された抗体または被分析物を置き換える能力によって、未知量の被分析物または抗体を測定する。したがって、シグナルの定量可能な消失は、サンプル中の未知の抗体または被分析物の量の指標である。
【0145】
本明細書において本発明者らは、サンプル中のチクングニヤウイルス抗体の量を測定するための標識チクングニヤウイルスモノクローナル抗体の使用を提案する。基本的な構成は、既知量の(検出可能な標識に連結された)チクングニヤウイルスモノクローナル抗体をチクングニヤウイルス抗原または粒子と接触させることを含む。チクングニヤウイルス抗原または生物体は、好ましくは支持体に付着している。標識モノクローナル抗体を支持体に結合させた後、サンプルを添加し、サンプル中の全ての未標識抗体が標識モノクローナル抗体に競合し、それにより置き換えることを可能な条件下でインキュベートする。消失した標識または残存標識のいずれかを測定することにより(そして元の結合標識の量か
らそれを差し引くことにより)、非標識抗体がどれくらい支持体に結合しているか、そしてそれにより、サンプル中にどのくらいの抗体が存在しているかを測定することができる。
【0146】
B.ウェスタンブロット
ウェスタンブロット(あるいは、タンパク質イムノブロット)は、所与の組織ホモジネートまたは抽出物のサンプル中の特定のタンパク質を検出するために使用される分析技術である。これは、ゲル電気泳動を用いて、ポリペプチドの長さ(変性条件)またはタンパク質の3-D構造(天然/非変性条件)により天然または変性タンパク質を分離する。次いで、タンパク質を膜(典型的にはニトロセルロースまたはPVDF)に移行させ、そこで該タンパク質を、標的タンパク質に特異的な抗体を用いてプローブ(検出)する。
【0147】
サンプルは組織全体または細胞培養物から採取することができる。ほとんどの場合、固体組織を先ず、ブレンダーを用いて(サンプル量の多い場合)、ホモジナイザーを用いて(少量の場合)、または超音波処理により機械的に破壊する。また、上記の機械的方法のうちの1つによって細胞を破り開いてもよい。しかしながら、細菌、ウイルス、または環境サンプルがタンパク質供給源となる場合もあり、したがってウェスタンブロッティングは細胞研究のみに限定されるものではないことに留意されたい。種々の界面活性剤、塩、バッファーを使用して、細胞の溶解を促進し、タンパク質を可溶化することができる。自己の酵素によるサンプルの消化を防ぐために、プロテアーゼおよびホスファターゼの阻害剤がしばしば添加される。タンパク質の変性を避けるために組織の調製はしばしば低温で行われる。
【0148】
ゲル電気泳動を用いてサンプルのタンパク質を分離する。タンパク質の分離は、等電点(pI)、分子量、電荷、またはこれらの因子の組み合わせにより行うことができる。分離の種類は、サンプルの処理およびゲルの性質に依存する。これはタンパク質の決定に非常に有用な方法である。また、単一サンプルのタンパク質を2次元に展開する2次元(2-D)ゲルを使用することも可能である。タンパク質は、1次元目では等電点(タンパク質が中性正味電荷を有するpH)により、そして2次元目では分子量により分離される。
【0149】
タンパク質を抗体検出に利用できるようにするために、タンパク質をゲル内からニトロセルロースまたはポリビニリデンジフルオリド(PVDF)でできた膜上に移行させる。膜をゲルの上に置き、その上に濾紙の束を置く。束全体をバッファー溶液に入れると、バッファーは、タンパク質を伴って、毛管作用によって紙の中を上に移動する。タンパク質を移行させる別の方法はエレクトロブロッティングと呼ばれ、電流を用いて、タンパク質をゲルからPVDFまたはニトロセルロース膜に引き込む。タンパク質は、ゲル中で有していた構造を維持しながら、ゲル中から膜上に移動する。このブロッティングプロセスの結果として、タンパク質は、検出のために薄い表層に露出される(下記を参照されたい)。いずれの膜も非特異的タンパク質結合特性を有する(すなわち、全てのタンパク質に同等に良好に結合する)ことから、様々な膜を選択することができる。タンパク質の結合は、膜とタンパク質との間の疎水性相互作用、そして荷電相互作用に基づく。ニトロセルロース膜はPVDFよりも安価であるが、はるかに脆弱であり、プロービングの繰り返しにあまり持ちこたえることができない。タンパク質のゲルから膜への移動の均一性および全体的な有効性は、膜をクマシーブリリアントブルーまたはポンソーS色素で染色することによって確認することができる。タンパク質は、移行された後、標識一次抗体を用いて、または、未標識一次抗体に続き一次抗体のFc領域に結合する標識プロテインAまたは二次標識抗体を用いる間接的検出を用いて検出される。
【0150】
C.免疫組織化学
また本開示の抗体は、免疫組織化学(IHC)による研究のために作製された新鮮凍結
組織ブロックおよび/またはホルマリン固定、パラフィン包埋組織ブロックのいずれとも組み合わせて用いることもできる。これらの粒子標本から組織ブロックを作製する方法は、これまでの様々な予後因子のIHC研究において成功裡に使用されており、当業者によく知られている(Brownら、1990;Abbondanzoら、1990;Allredら、1990)。
【0151】
凍結切片は、簡潔には、小さなプラスチックカプセル中で、凍結「粉砕(pulverized)」組織50ngを室温でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で再水和し;遠心分離によって粒子をペレット化し;それらを粘性の包埋媒体(OCT)中に再懸濁し;カプセルを倒立させ、および/もしくは遠心分離によって再度ペレット化し;-70℃のイソペンタン中で急速凍結し;プラスチックカプセルを切断し、および/もしくは凍結した円筒状の組織を取り出し;クライオスタットミクロトームチャック上に円筒状の組織を固定し;ならびに/または、カプセルから25~50個の連続切片を切り出すことによって作製することができる。あるいは、凍結組織サンプル全体を連続切片の切り出しに使用してもよい。
【0152】
永久切片は、サンプル50mgをプラスチック微量遠心チューブ中で再水和し;ペレット化し;10%ホルマリン中で再懸濁して4時間固定化し;洗浄/ペレット化し;温めた2.5%アガー中に再懸濁し;ペレット化し;冷水中で冷却してアガーを固化させ;組織/アガーブロックをチューブから取り出し;ブロックをパラフィンで浸潤させおよび/または包埋し;および/または最大50個の連続永久切片を切り出すことを含む同様の方法によって作製することができる。この場合も、組織サンプル全体を置換してもよい。
【0153】
D.免疫検出キット
なおさらなる実施形態では、本開示は、上記の免疫検出法と共に使用するための免疫検出キットに関する。抗体はチクングニヤウイルスまたはチクングニヤウイルス抗原の検出に用いることができるため、該抗体をキットに含めることができる。したがって、免疫検出キットは、好適な容器手段中に、チクングニヤウイルスまたはチクングニヤウイルス抗原に結合する第1の抗体、および場合により免疫検出試薬を含むこととなる。
【0154】
特定の実施形態では、チクングニヤウイルス抗体は、カラムマトリックスおよび/またはマイクロタイタープレートのウェルのような固体支持体に予め結合させることができる。キットの免疫検出試薬は、所与の抗体に結合または連結された検出可能な標識などの様々な任意の形態とすることができる。二次結合リガンドに結合または付着した検出可能な標識も企図される。例示的な二次リガンドとしては、第1の抗体に対して結合親和性を有する二次抗体がある。
【0155】
本キットで使用するためのさらに好適な免疫検出試薬としては、第1の抗体に対する結合親和性を有する二次抗体を、該第2の抗体に対する結合親和性を有する第3の抗体(第3の抗体は検出可能な標識に連結されている)と共に含む二成分試薬が挙げられる。上記のように、多くの例示的な標識が当技術分野において知られており、このような標識は全て本開示と関連して使用することができる。
【0156】
キットは、検出アッセイのための標準曲線の作成に使用することができるように、チクングニヤウイルスまたはチクングニヤウイルス抗原(標識化されていても未標識でもよい)の適切に分注された組成物をさらに含むことができる。キットは、抗体-標識コンジュゲートを、完全にコンジュゲートされた形態か、中間体の形態か、またはキットの使用者によってコンジュゲートすべき別個の部分構造として、含むことができる。キットの構成要素は、水性媒体中または凍結乾燥形態のいずれかにパッケージ化することができる。
【0157】
キットの容器手段は、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器を含むこととなり、その中に抗体を入れるか、または好ましくは適切に分注する。また本開示のキットは、典型的には、抗体、抗原、および任意の他の試薬容器を、市販用に厳重に密閉して収容するための手段も含む。そのような容器としては、射出成形またはブロー成形されたプラスチック容器を挙げることができ、所望のバイアルをその中に保持する。
【実施例0158】
VI.実施例
以下の実施例は、好ましい実施形態を示すために含まれる。当業者であれば、以下の実施例に開示された技術は、本発明者らが、実施形態の実施において良好に機能することを発見した技術を表すものであり、したがって、その実施のための好ましい様式を構成するものとみなすことができることを理解されるはずである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態において様々な変更を行うことができ、それでもなお、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、同様のまたは類似の結果が得られることを認識するはずである。
中和アッセイ。精製IgG mAbタンパク質を、CHIKVウイルスレプリコン粒子(VRP)、または様々な遺伝的および地理的プロファイルを表す4種の生チクングニヤウイルスを用いて、中和活性について試験した。GFPをコードするCHIKV VRPを、CHIKV株SL15649(GenBank:GU189061.1)ゲノム配列の完全長cDNAを含むプラスミドに基づく3プラスミドCHIKVレプリコンヘルパー系の開発により、PCRベースのクローニング法を用いて作製した。VRPをmAbと共に希釈液中でインキュベートし、次いでベロ(Vero)81細胞単層上に18時間接種し;感染細胞および(核マーカーで同定される)全細胞を蛍光イメージングシステムで同定した。mAbの幅(breadth)および中和効力を決定するために、本発明者らは、各CHIKV遺伝子型から少なくとも1つの代表的な株を用いて、3つの遺伝子型からプロトタイプウイルスそれぞれ1株と、現在のカリブ海型の大発生からの株とを含む、4つの代表的な生ウイルス株を使用した。中和活性は、フォーカス減少中和試験(focus reduction neutralization test)で測定した。精製ヒトmAbの連続希釈液をCHIKV 100フォーカス形成単位と共に37℃で1時間インキュベートした。MAb-ウイルス複合体を96ウェルプレート中のベロ細胞に添加し、次いで細胞固定後に免疫ペルオキシダーゼ検出法を用いてプラークを検出し、そしてImmunoSpot 5.0.37マクロアナライザー(Cellular Technologies Ltd)を用いて定量した。抗体の非存在下でCHIKVを接種したウェルとの比較後、非線形回帰分析を用いてEC50値を計算した。
E2 ELISA。組換えCHIKV E2エクトドメインタンパク質(CHIKV-LR2006株に対応)を大腸菌で産生し、マイクロタイタープレートに吸着させた。ヒトmAbを適用し、結合したCHIKV特異的mAbをビオチンコンジュゲートヤギ抗ヒトIgGで検出した。
競合結合アッセイ。本発明者らは、Octet Redバイオセンサ(ForteBio)の抗ペンタHisバイオセンサチップ(ForteBio #18-5077)に取り付けられたポリヒスチジンタグを含むCHIKV-LR2006 E2エクトメインタンパク質への結合について抗体のペアを競合させることにより、同一の主要抗原部位に結合する抗体のグループを同定した。
エピトープマッピングのためのアラニンスキャニング変異導入法。C末端V5タグを有するCHIKVエンベロープタンパク質発現コンストラクト(株S27、Uniprotリファレンス#Q8JUX5)をアラニンスキャニング変異導入法に供して包括的変異ライブラリを作製した。プライマーを、エンベロープタンパク質のE2、6K、およびE1領域内(構造ポリタンパク質の残基Y326~H1248)の各残基をアラニンに変異させるように設計し;アラニンコドンをセリンに変異させた。合計で、910個のCHIKVエンベロープタンパク質変異体を作製した。高スループットフローサイトメーターで検出される細胞蛍光を用いた免疫蛍光結合アッセイを用いて、各コンストラクトに対するmAbの結合の消失を試験した。
中和のメカニズム。MAbをベロ81細胞への付着の前または後にVRPと相互作用させ、次いで、VRP中和アッセイについて記載したとおり、細胞を染色、画像化、そして分析して、mAbがどの段階で抗ウイルス効果を発揮するのかを決定した。細胞と細胞の融合アッセイ(fusion from within assay)および外部からの融合アッセイ(fusion from without assay)を補足実験手順で詳述したように行った。
患者は2週間後に再度来院し、熱は無かったが、手指において最も顕著な持続性の関節痛があった。患者は、前回の訪院時に比べて、痛みとこわばりは改善しておらず、おそらく悪化していると説明した。患者は、以前旅行した地域でチクングニヤ熱の大発生が起きていることを報告した。採血して血清を分離し、PCRおよび血清学的検査のためにCDCに送り、これにより、チクングニヤ熱の感染の診断が確定した。
感染の兆候から5年半後の2012年4月に、Ficollの密度勾配分離によって末梢血単核細胞(PBMC)を単離したが、米国に居住していたその間の期間には、CHIKVまたは他の関節炎誘発性アルファウイルスへの認識している暴露はなかった。細胞を凍結保存し、試験まで液体窒素中で保存した。被験者募集および対象からの血液サンプルの採取のためのプロトコールは、ノースカロライナ大学チャペルヒル校およびヴァンダービルト大学医療センターの治験審査委員会による承認を受けたものである。
ヒトハイブリドーマの作製。凍結保存PBMCサンプルを、記載されているように、37℃で迅速に解凍し洗浄してから、エプスタイン-バーウイルスで形質転換した(Smithら、2012)。培養物を37℃、5%CO2で10日間インキュベートし、VRP中和アッセイおよびELISAを用いて、上清中にCHIKV特異的抗体を分泌する細胞の存在についてスクリーニングした。本発明者らは、同一の血液サンプルの別々のアリコートを用いて2つの独立した形質転換を行った。
1回目の形質転換では、本発明者らは、培養物当たり平均42個の形質転換B細胞コロニーを含む3,840個の培養物(10×384ウェルプレート)を、推定で合計約161,000個のB細胞コロニーのために樹立した。本発明者らは、BSL2条件下でCHIKVに対する中和活性を示す抗体をスクリーニングするために、緑色蛍光タンパク質をレポーターとして発現するCHIKVレプリコン粒子(VRP)を用いたハイスループット蛍光減少中和アッセイを開発した。VRPは、天然のウイルス糖タンパク質を提示するが、完全長ウイルスゲノムを欠いており、そのため感染性の子孫を生み出すことができないビリオンである(Vander Veenら、2012)。本発明者らは2006年にスリランカから単離されたSL15649株由来のVRP(Morrisonら、2011)を使用した。SL15649は、ドナーに感染した株と同時期に発生した株であり、配列が非常に類似している可能性が高い。この実験から、本発明者らは、阻害率90%で中和を媒介する上清を有する160個のB細胞培養物を同定し、これは、全B細胞あたり0.099%(約1,000分の1)のウイルス特異的B細胞の発生率を示唆する。これらの株のうち合計で60個が98%を超えるレベルで阻害し、二次スクリーニングでは60個中58個の上清に、ELISAにおいてイムノアッセイプレートに捕捉された細胞培養物産生CHIKV(株181/25)に結合する抗体が含まれていた。本発明者らは、ハイブリドーマ融合のために、この58個の中で、最も高い中和能および結合活性を有する35個を選択し、融合およびプレーティング後にウイルス結合上清を有する22個のハイブリドーマを同定し、そして、さらなる研究のために14クローンを成功裡に単離した。2回目の形質転換では、本発明者らは、培養物当たり平均38個の形質転換B細胞コロニーを含む1,536個の培養物(4×384ウェルプレート)を、試験した推定合計約58,000個のB細胞コロニーのために樹立し、0.1%(今回も、約1,000分の1)のウイルス特異的B細胞の発生頻度が示唆された。この実験において、本発明者らは、事前に中和試験を行わずに、CHIKV株181/25に結合するELISAの一次スクリーニングを用いた。本発明者らは、ELISA光学密度シグナルがバックグラウンドレベルの4倍を超える60株を同定し、融合用に、ELISAにおいて光学密度シグナル
が最も高い30個のB細胞株を選択し、融合およびプレーティング後にウイルス結合上清を有する18個のハイブリドーマを同定し、そして、さらなる研究のために16クローンを成功裡に単離した。
骨髄腫細胞との融合。CHIKV感染を中和することができる上清を有するウェル由来の細胞を、記載されているように、HMMA2.5非分泌性骨髄腫細胞と融合させた(Smithら、2012)。得られたハイブリドーマを、ウアバイン含有ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)培地中で増殖させることにより選択し、FACSAriaIIIセルソーター(BD Biosciences)を用いて、単一細胞FACSにより生物学的にクローニングし、増殖させた。
ヒトmAbの産生および精製。CHIKV特異的抗体を産生するハイブリドーマを含むウェルを、3ラウンドの限界希釈により、またはClonePix装置(Molecular Devices)を用いて製造業者の指示に従って、クローニングした。個々のクローンが得られたら、各ハイブリドーマを75cm2フラスコ中で50%コンフルエントになるまで増殖させた。抗体発現のために細胞をセルスクレーパーで収集し、無血清培地(Invitrogen製GIBCO Hybridoma-SFM、12045084)で洗浄し、無血清培地250mLを含む225cm2フラスコ(Corning、431082)4個に均等に分配した。細胞を21日間インキュベートした後、培地を遠心分離により清澄化し、0.2μmの滅菌フィルターを通した。清澄化した培地から抗体をプロテインGクロマトグラフィー(GE Life Sciences、Protein G HP Columns)によって精製した。
細胞。BHK-21細胞(ATCC CCL-10)を、10%ウシ胎児血清(FBS)および10%トリプトースホスフェート(Sigma)を含有するように補充したアルファ最小必須培地(αMEM;Gibco)中で維持した。ベロ81細胞(ATCC CCL-81)を5%FBSを含むように補充したαMEM中で維持した。全ての細胞の培地は、L-グルタミン(Gibco)0.29mg/mL、ペニシリン(Gibco)100U/mL、ストレプトマイシン(Gibco)100μg/mL、およびアンホテリシンB 500ng/mLを含有するように補充した。細胞を37℃で5%CO2の加湿雰囲気中で維持した。
CHIKV VRPプラスミドコンストラクトの作製。PCRベースのクローニング法を用いて、CHIKV株SL15649(GenBank:GU189061.1)ゲノム配列の完全長cDNAを含むプラスミドから3プラスミドCHIKVレプリコンヘルパーシステムを得た。CHIKVレプリコンゲノムは、多重クローニングサイト(MCS)で置換されたCHIKV完全長構造カセットを有する中間クローニングベクターの作製を含む2段階プロセスを用いて構築した。改変型(enhanced)緑色蛍光タンパク質(eGFP)をこのプラスミドの多重クローニング部位にサブクローニングしてpMH41(CHIKV SL15649 eGFPレプリコン)を作製した。2プラスミドヘルパーシステムの構築には、先ずCHIKV非構造カセットの大部分(6,891nt)の除去による完全長構造遺伝子ヘルパープラスミドの作製を含む多段階クローニングプロセスが含まれた。完全長構造カセットをさらに2つのコンストラクト、すなわち、キャプシド遺伝子配列とそれに続く固有AvrII制限部位とを含むpMH38(CHIKV SL15649キャプシドヘルパー)、および、カプシドRNA結合ドメインのインフレーム欠失と、それに続くインタクトなエンベロープ糖タンパク質(E3-E1)コード配列とを含むpMH39(CHIKV SL15649糖タンパク質ヘルパー)に細分した。
組換えCHIKVp62-E1産生。CHIKVp62(すなわち、E3[aaS1-R64]-E2[aaS1-E361]-16アミノ酸リンカー-E1[aaY1-Q4
11]に続くHisタグ)を含むプラスミド(Vossら、2010)を、293fectin試薬(Invitrogen)を用いて293F細胞にトランスフェクトした。72時間のインキュベーションの後、上清を除去し、細胞をさらに72時間培養した。プールした上清をニッケルアガロースビーズカラム(GoldBio)にロードし、イミダゾールで溶出した。Superdex S200ゲル濾過カラム(GE Life Sciences)を用いてタンパク質をさらに精製した。CHIKV p62-E1タンパク質を含有する画分をプールし、凍結し、-80℃で保存した。
CHIKV株SL15649由来のVRPストックの製造。VRPストックを、組換えCHIKVプラスミドから、ヴァンダービルト大学環境保健安全部門(Department of Environment, Health, and Safety)およびヴァンダービルト施設バイオセーフティ委員会(Vanderbilt Institutional Biosafety Committee)によって承認されたプロトコールに従って、認定生物学的安全性レベル3(BSL3)施設において生物学的安全キャビネット中で回収した。3つのSL15649レプリコン系プラスミドをNotI-HFで消化することにより線状化し、フェノール-クロロホルム抽出により精製し、mMessage mMachine SP6転写キット(Life Technologies)を用いた転写反応の鋳型として用いて、キャップされた完全長RNA転写物をインビトロで生成した。GenePulserエレクトロポレーターを用いたエレクトロポレーションにより、ウイルスRNA転写物をBHK21細胞に導入した。VRPを含む培養上清をエレクトロポレーションの24時間後に収集し;上清を855×gで20分間遠心分離することにより清澄化し、分注し、そして-80℃で保存した。VRPストックを、伝播能を有する組換えウイルスについて、ベロ81細胞を用い、ストック20%と継代1代目の培養上清10%とを連続継代し、感染72時間後の細胞変性効果(CPE)について検査することにより評価した。ストックは、最終継代でCPEが検出されなかった場合に、本安全性試験に合格したとみなした。その後ストックをBSL3実験室から取り出した。
ELISA用の抗原として製造したウイルスストック。CHIKVワクチン株181/25のための感染性クローンプラスミド(Levittら、1986、およびMainouら、2013)をNotI-HFで線状化し、mMessage mMachine SP6 transcription kit(Life Technologies)を用いてインビトロで転写した。ウイルスRNAをエレクトロポレーションによりBHK21細胞に導入した。培養上清を24時間後に収集し、855×g、20分間の遠心分離によって清澄化し、分注し、そして-80℃で保存した。
CHIKV特異的対照ヒトmAb。いくつかのアッセイにおいて、2つの既述のヒトCHIKV特異的mAb、5F10および8B10(Warterら、2011)を陽性対照として用いた。これらのmAbは、Cheng-I WangおよびAlessandra Nardin(Singapore Immunology Network、A*STAR、Singapore)によって提供された配列に基づく5F10および8B10抗体可変遺伝子領域の配列最適化cDNAを含むIgG1発現プラスミド(Lonza)を用いてトランスフェクションした後、293F細胞(Invitrogen)で発現させた。
E2タンパク質へのmAb結合のELISA。組換えCHIKV E2エクトドメインタンパク質(CHIKV-LR2006株に対応する)を記載されているように大腸菌で生成し(Palら、2013)、4℃で一晩、マイクロタイタープレートに吸着させた(0.1M Na2CO3、0.1M NaHCO3、および0.1%NaN3[pH9.3]中2μg/mLのE2タンパク質溶液を100μL)。プレートを0.05%Tween-20含有PBSで3回リンスし、ブロッキングバッファー(PBS、0.05%Tween-20および2%[w/v]BSA)と共に37℃で1時間インキュベートした。一次ヒトmAb(ブロッキングバッファーに10μg/mLに希釈)を室温で1時間ウェルに添加した。プレートを0.05%Tween-20含有PBSで3回リンスし、二次抗体(ブロッキングバッファー中に1/20,000で希釈した、マウス血清タンパク質に対する交差反応性が最小のビオチンコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(H鎖およびL鎖)(Jackson ImmunoResearch Laboratories))およびストレプトアビジンコンジュゲート西洋ワサビペルオキシダーゼ(0.05%Tween-20含有PBS中に希釈;Vector Laboratories)を、それぞれ室温で1時間、連続して添加し、各工程の間にプレートをリンスした。PBSで4回リンスした後、プレートを室温でTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)色素生成性基質溶液(Dako)100μLと共に5分間インキュベートし、2N H2SO4の添加により反応を停止させた。生成物強度をELISAプレートリーダーを用いて450nmの光学密度で測定した。
フォーカス減少中和試験に使用されるウイルス株。mAbの幅および中和能を決定するために、本発明者らは、各CHIKV遺伝子型から少なくとも1つの代表的な株を用いて、3つの遺伝子型からプロトタイプウイルスそれぞれ1株と、現在のカリブ海型の大発生からの株とを含む、4つの代表的な株を使用した。LR2006_OPY1(LR)株(CHIKV東/中央/南アフリカ[ECSA]遺伝子型)はStephen Higgs(Manhattan、KS)より提供された。株NI 64 IbH 35(西アフリカ遺伝子型)ならびに株RSU1および株99659(アジア遺伝子型;英国バージン諸島の対象から2014年に単離された(Lanciotti&Valadere、2014))はRobert Tesh(World Reference Center for Emerging Viruses and Arboviruses、Galveston、TX)より提供された。
感染性CHIKVを用いたフォーカス減少中和試験(FRNT)。精製ヒトmAbの連続希釈液をCHIKV 100フォーカス形成単位(FFU)と共に37℃で1時間インキュベートした。mAb-ウイルス複合体を96ウェルプレート中のベロ細胞に添加した。90分間のインキュベーション後、2%FBSを含むように補充した改変イーグル培地(MEM)中の1%(w/v)メチルセルロースで細胞を覆った。細胞を18時間インキュベートし、PBS中の1%パラホルムアルデヒドで固定した。細胞を、500ng/mLのマウスCHK-11(Palら、2013)および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ抗マウスIgGと共に、順次、0.1%サポニンおよび0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むよう補充したPBS中でインキュベートした。CHIKV感染病巣をTrueBlueペルオキシダーゼ基質(KPL)を用いて視覚化し、ImmunoSpot 5.0.37マクロアナライザー(Cellular Technologies Ltd)を用いて定量した。抗体の非存在下でCHIKVを接種したウェルとの比較後、非線形回帰分析を用いてEC50値を計算した。
バイオレイヤー干渉法競合結合アッセイ。ポリヒスチジンタグ含有CHIKV-LR2006 E2エクトドメインタンパク質(20μg/mL)を抗ペンタHisバイオセンサチップ(ForteBio #18-5077)上に2分間固定化した。ベースラインシグナルをキネティクスバッファー(KB、1×PBS、0.01%BSAおよび0.002%Tween20)中で1分間測定した後、バイオセンサチップを、一次抗体を濃度100μg/mLで含むウェルに5分間、次いで競合mAbを濃度100μg/mLで含むウェルに5分間浸漬した。第1のmAbの存在下での競合mAbの結合率を、最初のmAb複合体の後に適用した競合mAbの最大シグナルを競合mAb単独の最大シグナルと
比較することにより測定した。競合mAbの最大結合が単独の結合親和性の30%未満に減少した場合、該抗体は同一部位への結合について競合すると判定した。競合mAbの最大結合が非競合結合の70%を超える場合、該抗体を非競合とみなした。非競合結合の30~70%のレベルは、中間的競合とみなした。
変異導入エピトープマッピング。C末端V5タグを有するCHIKVエンベロープタンパク質発現コンストラクト(株S27、Uniprotリファレンス#Q8JUX5)をアラニンスキャニング変異導入法に供して包括的変異ライブラリを作製した。プライマーを、エンベロープタンパク質のE2、6K、およびE1領域内(構造ポリタンパク質の残基Y326~H1248)の各残基をアラニンに変異させるように設計し;アラニンコドンをセリンに変異させた(Fongら、2014)。合計で910個のCHIKVエンベロープタンパク質変異体を作製し(カバレッジ98.5%)、配列を確認し、384ウェルプレートにアレイした。HEK-293T細胞を384ウェルプレートでCHIKV変異ライブラリでトランスフェクトし、22時間インキュベートした。細胞をカルシウムおよびマグネシウム含有PBS(PBS+/+)中の4%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences)で固定し、10%正常ヤギ血清(NGS;Sigma)中に希釈した0.25~1.0μg/mLの精製mAbまたは2.5μg/mLの精製Fabフラグメントで染色した。一次抗体濃度を、野生型CHIKVエンベロープタンパク質に対する独立した免疫蛍光滴定曲線を用いて測定してシグナルが確実に線形検出範囲内に含まれるようにした。抗体を、10%NGS中の3.75μg/mLのAlexaFluor488コンジュゲート二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いて検出した。細胞を、マグネシウムおよびカルシウムを含まないPBS(PBS-/-)で2回洗浄し、0.1%BSA(Sigma)含有Cellstripper(Cellgro)に再懸濁した。平均細胞蛍光を、ハイスループットフローサイトメーター(HTFC、Intellicyt)を用いて検出した。モックトランスフェクト対照からシグナルを差し引き、野生型トランスフェクト対照からのシグナルに対して正規化することにより、各変異体クローンに対する抗体反応性を、野生型タンパク質反応性に対して算出した。対応するアラニン変異体が試験mAbと反応しないが他のCHIKV抗体と反応した場合、アミノ酸をmAb結合に必要であると同定した。このカウンタースクリーニング法により、ミスフォールドされた、または発現欠損を有する変異体の排除が容易になる(Christianら、2013、Paesら、2009、およびSelvarajahら、2013)。抗体結合に必要なアミノ酸を、CHIKVエンベロープタンパク質結晶構造(モノマーPDB ID#3N41、およびトリマーPDB ID#2XFB)上で、PyMolソフトウェアを用いて視覚化した。
マウスにおけるインビボ防御試験。この試験は、国立衛生研究所の実験動物のケアおよび使用のための手引き(Guide for the Care and Use of
Laboratory Animals)の勧告に厳密に従って行った。このプロトコールは、ワシントン大学医学部の施設の動物のケアおよび使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)による承認を受けたものである(承認番号:A3381-01)。Ifnar-/-マウスをワシントン大学医学部の無菌動物施設で飼育し、ワシントン大学の動物実験委員会(Animal Studies Committee)の承認を得てA-BSL3施設で感染実験を行った。足蹠注射はケタミン塩酸塩およびキシラジンで誘導および維持した麻酔下で行った。予防研究については、ヒトmAbを、腹腔内注射により、6週齢のIfnar-/-マウスに、1%熱不活化FBS含有HBSS中に希釈したCHIKV-LR 10FFUを足蹠に皮下接種する1日前に投与した。治療研究については、CHIKV-LR 10FFUを、ヒトmAbを特定の用量で個々にまたは組み合わせて単回投与する24、48、または60時間前に送達した。