(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174208
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】多重高分子色素デバイス及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
G01N33/543 501J
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143860
(22)【出願日】2022-09-09
(62)【分割の表示】P 2018554721の分割
【原出願日】2017-04-18
(31)【優先権主張番号】62/326,640
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】シャーキー,マリィベス
(72)【発明者】
【氏名】マモ,シュミィ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】多重高分子色素デバイスが提供される。
【解決手段】このデバイスの態様は、固体支持体と、固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第1及び第2の乾燥高分子色素組成物とを備える。本発明の態様は、例えば、被検物質の検出用途におけるこのデバイスの製造方法及び使用方法、ならびにこのデバイスを備えるキットを更に含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体支持体と、前記固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第1及び第2の乾燥高分子色素組成物とを備える試剤デバイスであって、
図面に実質的に示されており、明細書に実質的に記載されている、
試剤デバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
生物学的試料流体中の被検物質の有無及び濃度を測定するためのアッセイは、多くの場合、標的被検物質に対する検出可能な標識の特異的結合に依拠する。検出可能な標識は、肉眼で視認可能であるか、または蛍光分光分析もしくはUV-可視光分光分析などの分光分析によって検出可能であるかのいずれかのマーカーであってもよい。一般的には、検出可能な標識として、特定の蛍光色素(fluorochrome)を含む蛍光色素(fluorescent dyes)を用いてもよい。蛍光色素は、その吸収スペクトル、その励起に適した波長における吸光係数、その発光スペクトル、及びその量子効率などの特定の特性を有していてもよい。量子効率とは、吸収される各光子に対する放出される光子の数である。
【0002】
蛍光色素の特性はその周囲環境に依存する場合がある。例えば、フルオレセインなどのいくつかの蛍光色素はpHに感受性がある。蛍光はまた、別の分子であって、該分子中で当該色素の放射エネルギーが非放射遷移によって放散される別の分子との相互作用によって消光する場合もある。いくつかの場合において、蛍光色素の検出可能な蛍光は、別の色素の蛍光色素などの、別の蛍光色素の分子間の相互作用によって消光する場合がある。この作用は、ある色素の蛍光が、他の妨害性の色素が存在しない場合の当該色素の蛍光と比較して、予想されたものよりも有意に低い、望ましくない色素-色素相互作用として観測される場合がある。
【発明の概要】
【0003】
多重高分子色素デバイスが提供される。このデバイスの態様は、固体支持体と、固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第1及び第2の乾燥高分子色素組成物とを有する試剤デバイスを含む。本発明の態様は、例えば、被検物質の検出用途におけるこのデバイスの製造方法及び使用方法、ならびにこのデバイスを備えるキットを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】本開示の実施形態に係る、3種の明確に区別して配置された乾燥高分子色素組成物を備える試剤デバイスを示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る、3種の明確に区別して配置された乾燥高分子色素組成物を有する試剤デバイスを用いて実施したフローサイトメトリーの分析結果のグラフを示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る、3種の明確に区別して配置された乾燥高分子色素組成物及び7種の非高分子色素を備える試剤デバイスの画像を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る、3種の明確に区別して配置された乾燥高分子色素組成物及び7種の非高分子色素を有する試剤デバイスを用いて実施したフローサイトメトリーの分析結果のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
多重高分子色素デバイスが提供される。このデバイスの態様は、固体支持体と、固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第1及び第2の乾燥高分子色素組成物とを備える。本発明の態様は、例えば、被検物質の検出用途におけるこのデバイスの製造方法及び使用方法、ならびにこのデバイスを備えるキットを更に含む。
【0006】
本開示の実施形態をより詳細に説明する前に、これらの実施形態は、説明する特定の実施形態に限定されず、したがって変更される場合があることを理解されたい。本開示の実施形態の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で用いる用語は特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図しないことも理解されたい。
【0007】
ある範囲の値が提示される場合、文脈により明確に別段の指示がなされない限り、当該範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの、間にある各値、及び当該記載された範囲中の任意の他の記載された値または間にある値は、本開示の実施形態内に包含されるものと理解されたい。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立に当該のより小さい範囲に含まれていてもよく、記載された範囲中の任意特定の除外された限度を条件として、本開示の実施形態内にも含まれる。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、これらの含まれる限界のいずれか一方または両方を含まない範囲も、本開示の実施形態に含まれる。
【0008】
別段の定義がなされない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同様の意味を有する。本明細書に記載された方法及び物質と類似するまたは等価な任意の方法及び物質も、本開示の実施形態の実施または試験において使用することができるが、代表的な例示のための方法及び物質を以下に記載する。
【0009】
本明細書に引用される全ての刊行物及び特許は、それぞれ個々の刊行物または特許が、具体的且つ個別に参照により援用されると示されているのと同様に、参照により本明細書に援用され、方法及び/または物質であって、それらと関連して当該刊行物が引用される方法及び/または物質を開示し且つ説明するために、参照により本明細書に援用される。いずれの刊行物の引用も、当該刊行物の開示が本出願の出願日よりも前であることを示すためのものであり、先行発明により、本発明の実施形態がかかる刊行物に先行する資格をもたないことを自認するものと解釈されるべきではない。更に、提示された刊行日は実際の刊行日と異なる場合があり、実際の刊行日は自ら確認する必要がある場合がある。
【0010】
本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈により明確に別段の指示がなされない限り、複数の指示対象を包含する。特許請求の範囲はいずれの任意選択の要素も除外するように作成されてもよいことに更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連した「単独で」、「~のみ」などのような排他的な用語の使用、または「否定的な」限定の使用に対する先行する根拠としての役割を果たすことを意図している。
【0011】
本開示を読めば当業者には明らかであろうが、本明細書に記載され図示される個々の実施形態のそれぞれは、本開示の実施形態の範囲または趣旨から逸脱することなく、容易に他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から分離することができる、またはこの特徴と組み合わせることができる別個の要素及び特徴を有する。いずれの記載された方法も、記載された事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で実施することができる。
【0012】
以上で要約したように、本開示は、固体支持体と、固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第1及び第2の乾燥高分子色素組成物とを備える試剤デバイスを提供する。本発明の種々の実施形態を更に説明するにあたり、初めに、本主題の試剤デバイスをより詳細に説明する。次に、本主題の試剤デバイスの使用方法を説明する。更に、本主題の試剤デバイスの製造方法、ならびに本主題の試剤デバイスを備えるキットも提示される。
【0013】
試剤デバイス
本開示の態様は試剤デバイスを含む。特定の実施形態において、この試剤デバイスは、アッセイ、例えば、生物学的試料などの液体試料の、例えば、当該試料中の1種または複数種の被検物質の有無を調べるためのアッセイにおいて有用である。本開示の特定の実施形態に係る試剤デバイスは、固体支持体と、固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第1及び第2の乾燥高分子色素組成物とを備える。
【0014】
本試剤デバイスの実施形態中に備わる固体支持体は、当該試剤デバイスと接触する液体試料及び/もしくは試剤(複数可)または被検物質(複数可)に適合する任意の適当な固体支持体であってよい。例えば、固体支持体は、液体試料を入れるように構成された試剤デバイス用の、液体に適合する固体支持体であってよい。いくつかの場合において、液体試料は水性液体試料であってもよく、これらの場合には、固体支持体は水性試料に適合するものであってよい。「適合する」とは、当該固体支持体が、固体支持体に接触する液体及び/または試剤(複数可)または被検物質(複数可)に対して実質的に不活性である(例えば、これらと有意に反応しない)ことを意味する。
【0015】
固体支持体は、特定の容積の流体(例えば、気体または液体)を保持するように構成された容器として構成されてもよい。特定の実施形態において、固体支持体は液体容器として構成される。例えば、液体容器はある容積の液体を保持するように構成されてもよい。液体容器の大きさは当該液体容器内に保持されるべき液体の容積に依存してもよい。例えば、液体容器は、0.1ml~1000ml、例えば、0.1ml~900ml、または0.1ml~800ml、または0.1ml~700ml、または0.1ml~600ml、または0.1ml~500ml、または0.1ml~400ml、または0.1ml~300ml、または0.1ml~200ml、または0.1ml~100ml、または0.1ml~50ml、または0.1ml~25ml、または0.1ml~10ml、または0.1ml~5ml、または0.1ml~1ml、または0.1ml~0.5mlの範囲の容積(例えば、液体の容積)を保持するように構成されてもよい。特定の場合において、液体容器は0.1ml~200mlの範囲の容積(例えば、液体の容積)を保持するように構成される。
【0016】
固体支持体の形状も様々であってよく、本試剤デバイスの用途に応じたものであってよい。例えば、本明細書に記載されるように、本試剤デバイスは液体試料(例えば、生物学的試料)のアッセイなどのアッセイに用いられてもよい。これらの場合には、固体支持体は、当該アッセイ及び/または該アッセイを実施するために用いられる方法もしくは他のデバイスに適合する形状に構成されてもよい。例えば、固体支持体は、当該アッセイを実施するために用いられる一般的な実験器具の形状、または当該アッセイを実施するために用いられる他のデバイスに適合する形状に構成されてもよい。上述したように、固体支持体は液体容器として構成されてもよい。これらの実施形態においては、液体容器はバイアルまたは試験管であってもよい。特定の場合において、液体容器はバイアルである。特定の場合において、液体容器は試験管である。上述したように、液体容器はある容積(例えば、液体の容積)を保持するように構成されてもよい。液体容器がバイアルまたは試験管である実施形態において、液体容器は、0.1ml~1000ml、例えば、0.5ml~900ml、または0.5ml~800ml、または0.5ml~700ml、または0.5ml~600ml、または0.5ml~500ml、または0.5ml~400ml、または0.5ml~300ml、または0.5ml~200ml、または0.5ml~100ml、または0.5ml~50ml、または0.5ml~25ml、または0.5ml~10ml、または0.5ml~5ml、または1ml~5mlの範囲の容積(例えば、液体の容積)を保持するように構成されてもよい。特定の場合において、バイアルまたは試験管は0.5ml~5mlの範囲の容積(例えば、液体の容積)を保持するように構成される。
【0017】
他の実施形態において、固体支持体はマルチウェルプレートとして構成される。これらの場合には、固体支持体は、複数の液体容器(例えば、ウェル)、例えば、2以上、または10以上、または50以上、または75以上、または100以上、または300以上、または500以上、または750以上、または1000以上、または1500以上、または2000以上の液体容器(例えば、ウェル)を備えていてもよい。マルチウェルプレートとして構成された固体支持体の例は、例えば、6、24、96、384、または1536の液体容器(例えば、ウェル)を備えていてもよい。液体容器がマルチウェルプレートのウェルである実施形態においては、個々のウェルは、0.1ml~1000ml、例えば、0.1ml~900ml、または0.1ml~800ml、または0.1ml~700ml、または0.1ml~600ml、または0.1ml~500ml、または0.1ml~400ml、または0.1ml~300ml、または0.1ml~200ml、または0.1ml~100ml、または0.1ml~50ml、または0.1ml~25ml、または0.1ml~10ml、または0.1ml~5ml、または0.1ml~1ml、または0.1ml~0.5mlの範囲の容積(例えば、液体の容積)を保持するように構成されてもよい。特定の場合において、バイアルまたは試験管は、0.1ml~25mlの範囲の容積(例えば、液体の容積)を保持するように構成される。
【0018】
上述したように、本試剤デバイスの固体支持体の実施形態は、当該試剤デバイスと接触する液体試料及び/または試剤(複数可)または被検物質(複数可)に適合するものであってよい。本試剤デバイス用の好適な固体支持体材料の例としてはガラス及びプラスチックが挙げられるが、これらに限定はされない。例えば、固体支持体は、ケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ナトリウムガラス(例えば、PYREX(登録商標))、溶融石英ガラス、溶融シリカガラスなどの、但しこれらに限定されないガラスから構成されてもよい。本試剤デバイス用の好適な固体支持体材料の他の例としては、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロエーテル(PFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの、但しこれらに限定されないプラスチックが挙げられる。
【0019】
いくつかの実施形態において、上述したように、固体支持体は、特定の容積の流体(例えば、気体または液体)を保持するように構成された容器として構成される。いくつかの場合において、固体支持体は容器(例えば、液体容器)として構成される。固体支持体が液体容器として構成されるいくつかの実施形態において、液体容器は密封されていてもよい。すなわち、液体容器は、液体容器の内容物(例えば、当該液体容器内の液体)が液体容器から外に出ることを実質的に防止する封止材を備えていてもよい。液体容器の封止材はまた、他の物質が外から当該液体容器に入ることを実質的に防止してもよい。例えば、封止材は、液体が外から当該容器に入るまたは当該容器の外に出ることを実質的に防止する水密封止材であってもよく、または気体が外から当該容器に入るまたは当該容器の外に出ることを実質的に防止する気密封止材であってもよい。いくつかの場合において、例えば、当該液体容器の内容物の一部を取り出すことが所望される場合など、必要に応じて当該液体容器の内容物を周囲環境に暴露することができるように、封止材は、脱着可能な封止材またはブレーカブルシールである。いくつかの場合において、封止材は、当該容器内の試料を維持するための隔膜(例えば、水密封止材及び/または気密封止材)となる弾力がある材料で作製される。特定の形式の封止材としては、容器の形式に応じて、ポリマーフィルムなどのフィルム、キャップ等が挙げられるが、これらに限定はされない。封止材に適した材料としては、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン共重合体、ポリクロロプレン、ポリアクリル酸エステル、ポリブタジエン、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン等、及びそれらの組み合わせなどの、但しこれらに限定されないゴムまたはポリマー封止材が挙げられる。例えば、特定の実施形態において、封止材は、針、シリンジ、またはカニューレによって穿刺可能なセプタムである。封止材はまた、当該容器内の試料に利便性よくアクセスすることを可能にし、ならびに当該容器の開口部を覆う保護用隔膜にもなることができる。いくつかの場合において、封止材は、ねじ式もしくは押し嵌め式のキャップまたは当該容器の開口部に適用することができる他の適宜の封止部材などの脱着可能な封止材である。例えば、当該容器に試料を加えた前または後に、ねじ式キャップを開口部の上にねじ込むことができる。
【0020】
上述したように、固体支持体は、特定の容積の流体(例えば、気体または液体)を保持するように構成された容器として構成されてもよい。いくつかの場合において、容器(例えば、液体容器)として構成された固体支持体は内面及び外面を有する。これらの実施形態においては、固体支持体(例えば、容器)の内面は、固体支持体(例えば、容器)の内部に面する固体支持体(例えば、容器)の表面である。この内面は当該容器の内容物と接触していてもよい。したがって、固体支持体は、液体容器の内面などの容器の内面を備えていてもよい。固体支持体(例えば、容器)の外面は、固体支持体(例えば、容器)の内側から見て外側を向いた固体支持体(例えば、容器)の表面である。この外面は当該容器の内容物と接触しない。したがって、固体支持体は、液体容器の外面などの容器の外面を備えていてもよい。
【0021】
特定の実施形態において、本試剤デバイスは、固体支持体の表面上に配置された色素組成物を備える。本試剤デバイスは、固体支持体の表面上の1種また複数種の色素組成物、例えば、固体支持体の表面上の2種以上、または3種以上、または4種以上、または5種以上、または6種以上、または7種以上、または8種以上、または9種以上、または10種以上、または11種以上、または12種以上、または13種以上、または14種以上、または15種以上、または16種以上、または17種以上、または18種以上、または19種以上、または20種以上、または25種以上、または30種以上、または35種以上、または40種以上、または45種以上、または50種以上の固体支持体の表面上の色素組成物を備えていてもよい。いくつかの実施形態において、本試剤デバイスは、固体支持体の表面上の2~50種の色素組成物、例えば、2~40種、または2~30種、または2~20種、または2~15種、または2~10種、または2~7種、または2~5種の固体支持体の表面上の色素組成物を備える。例えば、本試剤デバイスは、2種、または3種、または4種、または5種、または6種、または7種、または8種、または9種、または10種、または11種、または12種、または13種、または14種、または15種、または16種、または17種、または18種、または19種、または20種の固体支持体の表面上の色素組成物を備えていてもよい。特定の場合において、本試剤デバイスは固体支持体の表面上の2種の色素組成物を備える。特定の場合において、本試剤デバイスは5種の固体支持体の表面上の色素組成物を備える。特定の場合において、本試剤デバイスは7種の固体支持体の表面上の色素組成物を備える。特定の場合において、本試剤デバイスは10種の固体支持体の表面上の色素組成物を備える。
【0022】
上述したように、本試剤デバイスは、固体支持体の表面に対して配置された、2種以上の色素組成物を備えてもよい。色素組成物は別個の位置で固体支持体の表面上に配置されてもよい。例えば、第1及び第2の色素組成物は、固体支持体の表面上に明確に区別して配置されてもよい。「別個の位置」または「明確に区別して配置された」とは、色素組成物が、別の色素組成物の位置とは異なる位置に配置されることを意味する。色素組成物の位置は、固体支持体の表面上の当該色素組成物の位置を指してもよく、且つ/または固体支持体の表面に対する色素組成物の位置を指してもよい。いくつかの場合において、色素組成物は画定されたある容積の空間を占める。例えば、色素組成物は、固体支持体の表面上のある容積の空間を占めていてもよい。明確に区別して配置された色素組成物は、別の色素組成物によって占められるある容積の空間と有意に一致または重複しないある容積の空間を占めていてもよく、いくつかの場合において、このある容積の空間は、別の色素組成物によって占められるある容積の空間と全く一致または重複しない。色素組成物が明確に区別して配置される実施形態は、それぞれの色素組成物間の色素-色素相互作用を最小化することができる。
【0023】
換言すれば、明確に区別して配置された色素組成物は、別の高分子色素組成物と有意に混合されておらず、例えば、明確に区別して配置された色素組成物の実質的に如何なる部分も、別の高分子色素組成物の一部と混合されていない。いくつかの場合において、明確に区別して配置された色素組成物は、別の高分子色素組成物と混合されておらず、例えば、明確に区別して配置された色素組成物の如何なる部分も、別の高分子色素組成物の一部と混合されていない。特定の実施形態において、明確に区別して配置された色素組成物は単一の色素を含む。例えば、明確に区別して配置された色素組成物は実質的に単一の色素から構成されてもよく、有意な量の別の色素を含まない。明確に区別して配置された色素組成物は、例えば、当該色素組成物中に存在する場合があるいずれかの他の色素に対して、例えば、75wt%以上など、例えば80wt%以上、または85wt%以上、または90wt%以上、または95wt%以上、または97wt%以上、または99wt%以上、または100wt%の、当該色素組成物中に存在する場合があるいずれかの他の色素に対して、大過剰の色素を含んでいてもよい。
【0024】
いくつかの場合において、明確に区別して配置された複数種の色素組成物は、固体支持体の表面上の別個の位置に、互いに間隔を空けて配置される。別の色素組成物から間隔を空けて配置された色素組成物は、隣合う色素組成物から物理的に分離されていてもよい。例えば、明確に区別して配置された色素組成物は、色素組成物の縁部と隣合う色素組成物の縁部との間にある距離が存在するような別個の位置で、固体支持体の表面上に配置されてもよい。いくつかの実施形態において、固体支持体の表面上の色素組成物の別個の位置の間の距離は、0.1mm以上、例えば、0.5mm以上、または1mm以上、または2mm以上、または3mm以上、または4mm以上、または5mm以上、または6mm以上、または7mm以上、または8mm以上、または9mm以上、または10mm以上、または12mm以上、または14mm以上、または16mm以上、または18mm以上、または20mm以上、または25mm以上、または30mm以上、または35mm以上、または40mm以上、または50mm以上、または60mm以上、または70mm以上、または80mm以上、または90mm以上、または100mm以上、または110mm以上、または120mm以上、または130mm以上、または140mm以上、または150mm以上、または160mm以上、または170mm以上、または180mm以上、または190mm以上、または200mm以上である。例えば、固体支持体の表面上の色素組成物の別個の位置の間の距離は、0.1mm~200mm、例えば、0.1mm~190mm、または0.1mm~180mm、または0.1mm~170mm、または0.1mm~160mm、または0.1mm~150mm、または0.1mm~140mm、または0.1mm~130mm、または0.1mm~120mm、または0.1mm~110mm、または0.1mm~100mm、または0.1mm~90mm、または0.1mm~80mm、または0.1mm~70mm、または0.1mm~60mm、または0.1mm~50mm、または0.1mm~40mm、または0.1mm~30mm、または0.1mm~20mm、または0.1mm~10mm、または0.1mm~9mm、または0.1mm~8mm、または0.1mm~7mm、または0.1mm~6mm、または0.1mm~5mm、または0.1mm~4mm、または0.1mm~3mm、または0.1mm~2mm、または0.1mm~1mm、または0.1mm~0.5mmの範囲であってよい。特定の場合において、固体支持体の表面上の色素組成物の別個の位置の間の距離は、0.1mm~200mmの範囲である。いくつかの場合において、固体支持体の表面上の色素組成物の別個の位置の間の距離は、0.1mm~10mmの範囲である。
【0025】
特定の実施形態において、明確に区別して配置された色素組成物は、固体支持体の表面上で互いに隣合って配置されるが、互いに間隔を空けて配置されない。これらの場合には、色素組成物の縁部は隣合う色素組成物の縁部と接触していてもよい。例えば、色素組成物によって占められる容積の空間は、別の(隣合う)色素組成物によって占められるある容積の空間と接触していてもよいが、有意に重複はしない。これらの実施形態において、隣合う色素組成物は互いに接触してもよいが、有意に混合されてはおらず、例えば、明確に区別して配置された色素組成物の実質的に如何なる部分も、別の(隣合う)色素組成物の一部と混合されていない。
【0026】
明確に区別して配置された色素組成物は、固体支持体の同一の表面上に存在してもよいが、固体支持体の表面上または表面に対して異なる位置に配置されてもよい。例えば、上述したように、固体支持体は液体容器として構成されてもよく、したがって、内面及び外面を備えていてもよい。特定の場合において、色素組成物は液体容器の表面(例えば、内面)上に配置される。いくつかの場合において、色素組成物は液体容器の内面上に明確に区別して配置される。
【0027】
明確に区別して配置された色素組成物の例は、色素組成物が固体支持体の表面上のある位置に配置され、別の色素組成物が固体支持体の表面上の異なる位置に配置される実施形態を含む。したがって、明確に区別して配置された色素組成物は、固体支持体の表面上の別個の位置に配置されてもよい。例えば、本試剤デバイスの実施形態は、第1及び第2の色素組成物を備えていてもよく、第1の色素組成物は固体支持体の表面上のある位置に配置され、第2の色素組成物は固体支持体の表面上の第1の色素組成物とは異なる位置に配置される。上述したように、第1及び第2の色素組成物は、固体支持体の表面上の当該第1及び第2の色素組成物の別個の位置の間に距離が存在するように、互いに間隔を空けて配置されてもよい。第1の色素組成物と第2の色素組成物との間の距離は、上述の範囲及び値に基づくものであってよい。
【0028】
更なる色素組成物が固体支持体の表面上に提供されてもよい。例えば、本試剤デバイスは、固体支持体の表面上に明確に区別して配置された第3の色素組成物を備えていてもよい。第3の色素組成物は、第1の色素組成物に対して明確に区別して配置されてもよく、第2の色素組成物に対しても明確に区別して配置されてもよい。したがって、色素組成物(例えば、第1、第2、及び第3の色素組成物)のそれぞれは、本明細書に記載の固体支持体の表面上に、互いに対して明確に区別して配置されてもよい。更なる明確に区別して配置された色素組成物、例えば、4種以上、または5種以上、または7種以上、または10種以上などの、上述の明確に区別して配置された色素組成物が、固体支持体の表面上に提供されてもよい。
【0029】
明確に区別して配置された色素組成物の更なる例としては、色素組成物が固体支持体の表面上のある位置に配置され、別の色素組成物が同一の位置に配置される実施形態が挙げられる。したがって、明確に区別して配置された色素組成物は、固体支持体の表面の同一の位置に配置されてもよい。色素組成物は、同一の位置に配置されてもよいが、それでもなお明確に区別して配置される。例えば、色素組成物は非色素物質によって互いに分離されていてもよい。いくつかの場合において、非色素物質は明確に区別して配置された色素組成物の間に挿入される。非色素物質は色素組成物の表面を、隣合う色素組成物が当該色素組成物から分離されるように実質的に覆っていてもよい。例えば、色素組成物は、色素組成物の表面上に配置された非色素物質を有していてもよく、別の色素組成物は非色素物質の表面上に配置されてもよい。これらの場合には、当該色素組成物は、非色素物質によって他の色素組成物から物理的に分離されていてもよい。いくつかの場合において、明確に区別して配置された色素組成物は、固体支持体の表面上の色素組成物と非色素物質との交互層として提供されてもよい。かくして、特定の実施形態において、2種以上の色素組成物が互いに対して明確に区別して配置され、且つ固体支持体の表面の同一の位置に配置もされる。
【0030】
特定の実施形態において、非色素物質は、本試剤デバイスの使用中にデバイス中に存在する場合がある他のアッセイ成分(例えば、試剤、緩衝剤、被検物質など)に適合する物質である。非色素物質は、非色素物質と本試剤デバイスの使用中にデバイス中に存在する場合がある他のアッセイ成分(例えば、試剤、緩衝剤、被検物質など)との間に有意な反応が起こらないように、他のアッセイ成分に対して実質的に不活性であってよい。非色素物質の例としては、安定剤、緩衝剤、可溶性不活性物質(例えば、水溶性不活性物質)などが挙げられるが、これらに限定はされない。対象となる安定剤としては糖及びポリアルコールが挙げられるが、これらに限定はされない。凍結乾燥した色素組成物に用いるために好適な糖及びポリアルコールとしては、用いられる他の試剤、緩衝剤、色素、及び試料成分に適合する糖が挙げられる。好適な糖の例としては、スクロース、マルトース、トレハロース、2-ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(β-HPCD)、ラクトース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、グルコサミンなど、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定はされない。特定の場合において、この糖は二糖である。例えば、この二糖はスクロースであってもよい。好適なポリアルコールの例としては、マンニトール、グリセリン、エリトリトール、トレイトール、キシリトール、ソルビトールなど、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定はされない。非色素物質は、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、アジ化ナトリウム、グリセリン、フッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、緩衝クエン酸塩、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)、塩化ナトリウム、パラホルムアルデヒドなど、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0031】
例えば、本試剤デバイスの実施形態は、第1及び第2の色素組成物を備えていてもよく、第1の色素組成物は固体支持体の表面上のある位置に配置され、第2の色素組成物は第1の色素組成物と同一の位置に配置される。上述したように、第1及び第2の色素組成物は、第1及び第2の色素組成物の間に距離が存在するように、互いに間隔を空けて配置されてもよい。例えば、第1及び第2の色素組成物は、上述の非色素物質によって互いに分離されていてもよい。第1の色素組成物と第2の色素組成物との間の距離は、上述の範囲及び値に基づくものであってよい。例えば、非色素物質は、明確に区別して配置された第1及び第2の色素組成物の間に挿入されていてもよい。これらの実施形態において、第1の色素組成物が固体支持体の表面上に配置されてもよく、非色素物質が第1の色素組成物の表面上に層として配置されてもよく、第2の色素組成物が非色素組成物の表面上に配置されてもよい。これらの場合には、第1の色素組成物は、非色素物質によって第2の色素組成物から物理的に分離されてもよい。かくして、特定の実施形態において、第1及び第2の色素組成物は、互いに対して明確に区別して配置され、且つ固体支持体の表面の同一の位置に配置される。例えば、第1の色素組成物の表面上の非色素物質の層は、実質的に第1の色素組成物の全表面を覆っていてもよい。これらの場合には、非色素組成物の表面上に配置された第2の色素組成物は、第1の色素組成物と有意に接触していなくてもよい。いくつかの場合において、非色素物質は、第1の色素組成物の表面上の非色素物質の実質的に連続した層である。例えば、非色素物質は、第1の色素組成物の表面の実質的な部分、例えば、第1の色素組成物の表面の75%以上、または80%以上、または85%以上、または90%以上、または95%以上、または97%以上、または99%以上を覆っていてもよい。第1の色素組成物の表面が非色素物質によって実質的に覆われている実施形態は、第1及び第2の色素組成物間の色素-色素相互作用を最小化することができる。
【0032】
特定の実施形態において、非色素物質の厚さは、0.01mm~5mm、例えば、0.05mm~5mm、または0.1mm~5mm、または0.1mm~4mm、または0.1mm~3mm、または0.1mm~2mm、0.1mm~1mm、または0.1mm~0.9mm、または0.1mm~0.8mm、または0.1mm~0.7mm、または0.1mm~0.6mm、または0.1mm~0.5mmの範囲である。特定の場合において、非色素物質の厚さは0.1mm~1mmである。いくつかの場合において、非色素物質の厚さは0.1mm~0.05mmである。
【0033】
更なる色素組成物も提供されてよい。例えば、本試剤デバイスは、第1及び第2の色素組成物に対して明確に区別して配置された第3の色素組成物を備えていてもよい。したがって、第3の色素組成物は、第1の色素組成物に対して明確に区別して配置されてもよく、第2の色素組成物に対しても明確に区別して配置されてもよい。したがって、色素組成物(例えば、第1、第2、及び第3の色素組成物)のそれぞれは、本明細書に記載されるように、互いに対して明確に区別して配置されてもよい。いくつかの場合において、色素組成物のそれぞれは、非色素物質によって互いに分離されていてもよい。例えば、色素組成物のそれぞれは、非色素物質によって互いに分離されていてもよい。いくつかの場合において、非色素物質は、明確に区別して配置された色素組成物のそれぞれの間に挿入される。特定の場合において、明確に区別して配置された色素組成物のそれぞれは、明確に区別して配置された色素組成物のそれぞれの間の非色素物質の層を伴う層として提供される。更なる明確に区別して配置された色素組成物の層、例えば、4種以上、または5種以上、または7種以上、または10種以上などの、上述の明確に区別して配置された色素組成物が提供されてもよい。かくして、複数種の色素組成物を互いに対して明確に区別して配置し、且つ固体支持体の表面の同一の位置に配置することができる。
【0034】
特定の実施形態において、固体支持体の表面上の色素組成物は乾燥色素組成物である。乾燥色素組成物とは、含まれる溶媒の量が少ない色素組成物である。例えば、乾燥色素組成物は、含まれる水などの液体の量が少ないものであってよい。いくつかの場合において、乾燥色素組成物は実質的に溶媒を含まない。例えば、乾燥色素組成物は、水などの液体を実質的に含まないものであってもよい。特定の実施形態において、乾燥色素組成物が含む溶媒は、25wt%以下、例えば、20wt%以下、または15wt%以下、または10wt%以下、または5wt%以下、または3wt%以下、または1wt%以下、または0.5wt%以下である。いくつかの場合において、乾燥色素組成物は流体ではない。いくつかの場合において、乾燥色素組成物は実質的に固体である。例えば、乾燥色素組成物の粘度は高粘度、例えば、標準条件で10,000cP以上、または25,000cP以上、または50,000cP以上、または75,000cP以上、または100,000cP以上、または150,000cP以上、または200,000cP以上、または250,000cP以上であってよい。
【0035】
いくつかの場合において、色素組成物は凍結乾燥した色素組成物である。特定の場合において、凍結乾燥した色素組成物とは、色素組成物であって、当該色素組成物中の水が固体から気体へ相転移する昇華によって、水が当該色素組成物から除去された色素組成物である。例えば、凍結乾燥した色素組成物は、色素組成物であって、当該色素組成物を凍結させ(例えば、当該色素組成物中の水を凍結させ)、次いで、当該色素組成物中の水が昇華するように、当該色素組成物の周囲の圧力を低下させることによって組成物から水が除去された色素組成物であってもよい。特定の場合において、凍結乾燥した色素組成物が含む水の量は少なく、例えば、カールフィッシャー(KF)滴定によって測定して、25%以下、または20%以下、または15%以下、または10%以下、または9%以下、または8%以下、または7%以下、または6%以下、または5%以下、または4%以下、または3%以下、または2%以下、または1%以下、または0.5%以下、または0.25%以下、または0.1%以下である。いくつかの場合において、凍結乾燥した色素組成物の水分は、カールフィッシャー滴定によって測定して3%以下である。いくつかの場合において、凍結乾燥した色素組成物の水分は、カールフィッシャー滴定によって測定して1%以下である。いくつかの場合において、凍結乾燥した色素組成物の水分は、カールフィッシャー滴定によって測定して0.5%以下である。凍結乾燥した色素組成物は安定剤などの添加剤及び/または賦形剤を含んでいてもよい。いくつかの場合において、凍結乾燥した色素組成物は、糖またはポリアルコールなどの安定剤を含む。凍結乾燥した色素組成物に用いるために好適な糖及びポリアルコールとしては、用いられる他の試剤、緩衝剤、色素、及び試料成分に適合する糖が挙げられる。好適な糖の例としては、スクロース、マルトース、トレハロース、2-ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(β-HPCD)、ラクトース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、グルコサミンなど、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定はされない。特定の場合において、この糖は二糖である。例えば、この二糖はスクロースであってもよい。好適なポリアルコールの例としては、マンニトール、グリセリン、エリトリトール、トレイトール、キシリトール、ソルビトールなど、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0036】
色素組成物中の色素を検出可能な標識として用いてもよい。特定の場合において、色素は、例えば、蛍光発光極大、蛍光偏光、蛍光寿命、光散乱、質量、分子量、またはそれらの組み合わせに基づいて検出可能な検出可能部分またはマーカーを含む。特定の実施形態において、検出可能な標識はフルオロフォア(すなわち、蛍光標識、蛍光色素(fluorescent dye)など)である。対象となるフルオロフォアとしては、分析用途(例えば、フローサイトメトリー、画像診断など)における使用に適した色素を挙げることができるが、これらに限定はされない。
【0037】
いくつかの場合において、フルオロフォア(すなわち、色素)は高分子色素(例えば、蛍光高分子色素)である。本主題の方法及びシステムで使用される蛍光高分子色素は様々である。本方法のいくつかの場合において、高分子色素は共役高分子を含む。共役ポリマー(CP)は、π電子がひとつの結合からもう一方の結合へと移動可能な、交互の不飽和結合(例えば、二重結合及び/または三重結合)及び飽和結合(例えば、単結合)の骨格を含む非局在化電子構造を特徴とする。かくして、共役骨格は、高分子色素に、当該ポリマーの繰り返し単位間の結合角が制限された、長い線状構造を付与することができる。例えば、タンパク質及び核酸は、それらもまた高分子ではあるが、いくつかの場合においては長い棒状構造を形成せず、より高次の三次元形状に折り畳まれる。更に、CPは、「剛直な棒状」ポリマー骨格を形成し、ポリマー骨格鎖に沿ったモノマー繰り返し単位間のねじれ(twist)(例えば、ねじれ(torsion))角に制限を受ける場合がある。いくつかの場合において、高分子色素は剛性棒状構造を有するCPを含む。高分子色素の構造的特徴は、当該分子の蛍光特性に影響を与える場合がある。
【0038】
任意の適当な高分子色素を本主題のデバイス及び方法に利用してもよい。いくつかの場合において、高分子色素は、集光してフルオロフォアの蛍光出力を増幅することができる構造を有する多発色団である。いくつかの場合において、高分子色素は集光し、その光をより長波長の放射光に効率的に変換することができる。いくつかの場合において、高分子色素は、エネルギーを近傍の発光種(例えば、「シグナル伝達発色団」)に効率的に移動させることができる集光多発色団系を有する。エネルギー移動の機構としては、例えば、共鳴エネルギー移動(例えば、フェルスター(または蛍光)共鳴エネルギー移動、FRET)、量子電荷交換(デクスターエネルギー移動)などが挙げられる。いくつかの場合において、これらのエネルギー移動機構は比較的短い距離に限定される、すなわち、集光多発色団系がシグナル伝達発色団に近接していることにより、効率的にエネルギー移動が行われる。効率的なエネルギー移動のための条件下では、シグナル伝達発色団からの発光の増幅は、集光多発色団系における個々の発色団の数が多い場合に起こる、すなわち、シグナル伝達発色団からの発光は、入射光(「励起光」)の波長が集光多発色団系によって吸収される波長である場合の方が、シグナル伝達発色団がポンプ光によって直接励起される場合よりもより強い。
【0039】
多発色団は共役ポリマーであってもよい。共役ポリマー(CP)は非局在化電子構造を特徴とし、化学的及び生物学的標的用の高応答性の光学的レポーターとして用いることができる。有効共役長は当該のポリマー鎖長よりも実質的に短いことから、骨格は非常に近接した多数の共役セグメントを含む。したがって、共役ポリマーは集光に対して効率的であり、フェルスターエネルギー移動を介した光増幅を可能にする。
【0040】
対象となる高分子色素としては、米国公開第20040142344号、第20080293164号、第20080064042号、第20100136702号、第20110256549号、第20120028828号、第20120252986号、及び第20130190193号のGaylord et al.(これらの開示は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される)、及びGaylord et al.,J.Am.Chem.Soc.,2001,123(26),pp 6417-6418;Feng et al.,Chem.Soc.Rev.,2010,39,2411-2419;及びTraina et al.,J.Am.Chem.Soc.,2011,133(32),pp 12600-12607(これらの開示は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される)に記載される色素が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0041】
いくつかの実施形態において、高分子色素は、共役系を形成する複数の第1の光学的に活性な単位であって、第1の光学的に活性な単位が吸収して励起状態を形成する光の波長である第1の吸収波長(例えば、本明細書に記載の)を有する、第1の光学的に活性な単位を含む共役ポリマーを含む。共役ポリマー(CP)はポリカチオン性の、ポリアニオン性の、及び/または電荷的に中性の共役ポリマーであってもよい。
【0042】
CPは生物学的試料に用いるために水溶性であってもよい。高分子色素中には、水溶性を高めるために、親水性置換基、例えば、親水性ポリマー、または荷電した置換基、例えば、水性溶液中、例えば、生理学的条件下で正または負に荷電する基などの、任意の適当な置換基が含まれていてもよい。任意の適当な水溶性基(WSG)を、本主題の集光多発色団に利用してもよい。用語「水溶性基」とは、官能基であって、水性環境において十分に溶媒和され、当該官能基が結合している分子の水溶性を向上させる官能基をいう。いくつかの実施形態において、WSGは、当該WSGをもたない多発色団と比較して、主として水からなる溶液(例えば、本明細書に記載される)中での多発色団の溶解性を向上させる。水溶性基は、水性環境において十分に溶媒和される任意の適当な親水性基であってよい。いくつかの場合において、親水性水溶性基は荷電、例えば、正または負に荷電している。特定の場合において、親水性水溶性基は中性の親水性基である。いくつかの実施形態において、WSGは親水性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、セルロース、キトサン、またはそれらの誘導体である。
【0043】
本明細書では、用語「ポリエチレンオキシド」、「PEO」、「ポリエチレングリコール」、及び「PEG」は同義で用いられ、式-(CH2 -CH2 -O-)n -で表される連鎖を含むポリマー、またはその誘導体をいう。いくつかの実施形態において、「n」は5000以下、例えば1000以下、500以下、200以下、100以下、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、例えば5~15、または10~15である。PEGポリマーは任意の適当な長さのPEGポリマーであってよく、アルキル、アリール、ヒドロキシル、アミノ、アシル、アシルオキシ、及びアミド末端基を含む、但しこれらに限定されない種々の末端基を含んでいてもよいことが理解されよう。本主題の多発色団における使用に適し得る機能化PEGとしては、S.Zalipsky,“Functionalized poly(ethylene glycol)for preparation of biologically relevant conjugates”,Bioconjugate Chemistry 1995,6(2),150-165に記載されるPEGが挙げられる。対象となる水溶性基としては、カルボン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、スルフィン酸塩、エステル、ポリエチレングリコール(PEG)及び変性PEG、ヒドロキシル、アミン、アンモニウム、グアニジニウム、ポリアミン及びスルホニウム、ポリアルコール、直鎖または環状糖類、第一級、第二級、第三級、または第四級アミン及びポリアミン、ホスホン酸塩基、ホスフィン酸塩基、アスコルビン酸塩基、ポリエーテル、-COOM’、-SO3 M’、-PO2 M’、-NR3
+、Y’、(CH2 CH2 O)p R及びそれらの混合物(式中、Y’は任意のハロゲン、硫酸塩、スルホン酸塩、または酸素含有アニオンであってよく、pは1~500であってよく、各Rは独立にHまたはアルキル(メチルなど)であってよく、M’はカチオン性対イオンまたは水素であってよい)、-(CH2 CH2 O)yyCH2 CH2 XRyy、-(CH2 CH2 O)yyCH2 CH2 X-、-X(CH2 CH2 O)yyCH2 CH2 -、グリコール、及びポリエチレングリコール(式中、yyは1~1000から選択され、XはO、S、及びNRzzから選択され、Rzz及びRyyは独立にH及びC1~3アルキルから選択される)を含むグリコールが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0044】
高分子色素の長さは任意の適当な長さであってよい。いくつかの場合において、高分子色素のモノマー繰り返し単位またはセグメントの特定の数は、2~500,000、例えば、2~100,000、2~30,000、2~10,000、2~3,000、もしくは2~1,000単位またはセグメント、または例えば、100~100,000、200~100,000、もしくは500~50,000単位またはセグメントの範囲内であってよい。
【0045】
高分子色素は、任意の適当な分子量(MW)の高分子色素であってよい。いくつかの場合において、高分子色素のMWは平均分子量として表されてもよい。いくつかの場合において、高分子色素の平均分子量は、500~500,000、例えば1,000~100,000、2,000~100,000、10,000~100,000、また更には50,000~100,000である。特定の実施形態において、高分子色素の平均分子量は70,000である。
【0046】
特定の場合において、高分子色素は以下の構造を含み、式中、CP1 、CP2 、CP3 、及びCP4 は独立に、共役ポリマーセグメントまたはオリゴマー構造であり、CP1 、CP2 、CP3 、及びCP4 の1または複数がバンドギャップを低下させるn共役繰返し単位であり、それぞれのn及びそれぞれのmは独立に0または1~10,000の整数であり、pは1~100,000の整数である。
【0047】
【0048】
いくつかの場合において、高分子色素は以下の構造を含み、式中、それぞれのR1 は独立に可溶化基またはリンカー-色素であり、L1 及びL2 は任意選択のリンカーであり、それぞれのR2 は独立にHまたはアリール置換基であり、それぞれのA1 及びA2 は独立に、H、アリール置換基、またはフルオロフォアであり、G1 及びG2 はそれぞれ独立に、末端基、π共役セグメント、リンカー、及び連結した特異的結合部分からなる群より選択され、それぞれのn及びそれぞれのmは独立に0または1~10,000の整数であり、pは1~100,000の整数である。対象となる可溶化基としては、ポリエチレングリコール(例えば、2~20単位のPEG)、アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの親水性基で更に置換されたアルキル、アリール、及びヘテロ環基が挙げられる。
【0049】
【0050】
いくつかの場合において、高分子色素は、ポリマー骨格の一部として、以下の構造の一方を有する共役セグメントを含み、式中、それぞれのR3 は独立に、任意選択で置換されたアルキルまたはアリール基であり、Arは任意選択で置換されたアリールまたはヘテロアリール基であり、それぞれのnは1~10,000の整数である。特定の実施形態において、R3 は任意選択で置換されたアルキル基である。特定の実施形態において、R3 は任意選択で置換されたアリール基である。いくつかの場合において、R3 は、ポリエチレングリコール、色素、化学選択的官能基、または特異的結合部分で置換されている。いくつかの場合において、Arは、ポリエチレングリコール、色素、化学選択的官能基、または特異的結合部分で置換されている。
【0051】
【0052】
いくつかの場合において、高分子色素は以下の構造を含み、式中、それぞれのR1 は独立に可溶化基またはリンカー-色素基であり、それぞれのR2 は独立にHまたはアリール置換基であり、それぞれのL1 及びL3 は独立に任意選択のリンカーであり、それぞれのA1 及びA3 は独立に、H、フルオロフォア、官能基、または特異的結合部分(例えば、抗体)であり、n及びmはそれぞれ独立に0または1~10,000の整数であり、n+m>1である。
【0053】
【0054】
高分子色素は、特定の吸収極大波長、特定の発光極大波長、吸光係数、量子収率などの1種または複数種の望ましい分光分析的特性を有していてもよい(例えば、Chattopadhyay et al.,“Brilliant violet fluorophores:A new class of ultrabright fluorescent compounds for immunofluorescence experiments.”Cytometry Part A,81A(6),456-466,2012を参照のこと)。
【0055】
いくつかの実施形態において、高分子色素は280nm~475nmに吸収曲線を有する。特定の実施形態において、高分子色素は280nm~475nmの範囲に吸収極大(励起極大)を有する。いくつか実施形態において、高分子色素は280nm~475nmの範囲の波長の入射光を吸収する。
【0056】
いくつかの実施形態において、高分子色素は、400nm~850nm、例えば415nm~800nmの範囲の発光極大波長を有し、対象となる発光極大の特定の例としては、421nm、510nm、570nm、602nm、650nm、711nm、及び786nmが挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの場合において、高分子色素は、410nm~430nm、500nm~520nm、560nm~580nm、590nm~610nm、640nm~660nm、700nm~720nm、及び775nm~795nmからなる群より選択される範囲の発光極大波長を有する。特定の実施形態において、高分子色素は421nmの発光極大波長を有する。いくつかの場合において、高分子色素は510nmの発光極大波長を有する。いくつかの場合において、高分子色素は570nmの発光極大波長を有する。特定の実施形態において、高分子色素は602nmの発光極大波長を有する。いくつかの場合において、高分子色素は650nmの発光極大波長を有する。特定の場合において、高分子色素は711nmの発光極大波長を有する。いくつか実施形態において、高分子色素は786nmの発光極大波長を有する。特定の場合において、高分子色素は421nm±5nmの発光極大波長を有する。いくつかの実施形態において、高分子色素は510nm±5nmの発光極大波長を有する。特定の場合において、高分子色素は570nm±5nmの発光極大波長を有する。いくつかの場合において、高分子色素は602nm±5nmの発光極大波長を有する。いくつかの実施形態において、高分子色素は650nm±5nmの発光極大波長を有する。いくつかの場合において、高分子色素は711nm±5nmの発光極大波長を有する。いくつかの場合において、高分子色素は786nm±5nmの発光極大波長を有する。特定の実施形態において、高分子色素は421nm、510nm、570nm、602nm、650nm、711nm、及び786nmからなる群より選択される発光極大を有する。
【0057】
いくつかの場合において、高分子色素の吸光係数は、1×106 cm-1M-1以上、例えば2×106 cm-1M-1以上、2.5×106 cm-1M-1以上、3×106 cm-1M-1以上、4×106 cm-1M-1以上、5×106 cm-1M-1以上、6×106 cm-1M-1以上、7×106 cm-1M-1以上、または8×106 cm-1M-1以上である。特定の実施形態において、高分子色素の量子収率は、0.05以上、例えば、0.1以上、0.15以上、0.2以上、0.25以上、0.3以上、0.35以上、0.4以上、0.45以上、0.5以上、または更にそれ以上である。特定の場合において、高分子色素の量子収率は0.1以上である。特定の場合において、高分子色素の量子収率は0.3以上である。特定の場合において、高分子色素の量子収率は0.5以上である。いくつかの実施形態において、高分子色素の吸光係数は1×106 以上、且つ量子収率は0.3以上である。いくつかの実施形態において、高分子色素の吸光係数は2×106 以上、且つ量子収率は0.5以上である。
【0058】
特定の実施形態において、上述したように、本試剤デバイスは、2種以上の色素組成物、例えば2種の色素組成物(例えば、第1及び第2の色素組成物)を備える。これらの実施形態において、色素組成物は上述の高分子色素組成物であってもよい。例えば、本試剤デバイスは第1及び第2の高分子色素組成物を備えていてもよい。上述のように、第1及び第2の高分子色素は共役ポリマー(CP)であってもよい。特定の場合において、第1及び第2の高分子色素は上述した水溶性共役ポリマーである。いくつかの場合において、本試剤デバイス中に備わる色素組成物は、異なる高分子色素組成物などの異なる色素組成物であってもよい。異なる色素組成物は、化学組成の点で及び/または当該色素の1または複数の特性の点で互いに異なっていてもよい。例えば、異なる色素組成物は、励起極大及び発光極大の少なくとも一方において互いに異なっていてもよい。いくつかの場合において、異なる色素組成物は、当該組成物の励起極大において互いに異なる。いくつかの場合において、異なる色素組成物は、当該組成物の発光極大において互いに異なる。いくつかの場合において、異なる色素組成物は、該組成物の励起極大及び発光極大の両方において互いに異なる。したがって、第1及び第2の色素を備える実施形態において、第1及び第2の色素は、励起極大及び発光極大の少なくとも一方において互いに異なっていてもよい。例えば、第1及び第2の色素は、励起極大において、発光極大において、または励起及び発光極大の両方において互いに異なっていてもよい。更なる色素組成物が本試剤デバイスに備わっていてもよく、本試剤デバイス中の色素組成物のそれぞれは上述のように互いに異なる。
【0059】
特定の実施形態において、本試剤デバイスは、1種または複数種の非高分子色素組成物などの他の種類の色素組成物も備える。上述したように、色素は、例えば、蛍光発光極大、蛍光偏光、蛍光寿命、光散乱、質量、分子量、またはそれらの組み合わせに基づいて検出可能な検出可能部分またはマーカーを含んでいてもよい。特定の実施形態において、非高分子色素はフルオロフォア(すなわち、蛍光標識、蛍光色素など)を含む。対象となるフルオロフォアとしては、分析用途(例えば、フローサイトメトリー、画像診断など)における使用に適した色素を挙げることができるが、これらに限定はされない。多数の非高分子色素が、例えば、Molecular Probes(Eugene、OR)及びExciton(Dayton、OH)などの様々な供給元から市販されている。例えば、非高分子色素のフルオロフォアは、4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸;アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー、アクリジンレッド、及びアクリジンイソチオシアナートなどのアクリジンならびに誘導体;5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS);4-アミノ-N-(3-[ビニルスルホニル]フェニル)ナフタルイミド-3,5-ジスルホン酸塩(ルシファーイエローVS);N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド;アントラニルアミド;ブリリアントイエロー;7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7-amino-4-trifluoromethylcouluarin (Coumaran 151)などのクマリン及び誘導体;シアニンならびにシアノシン、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、及びCy7などの誘導体;4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI);5’,5’’-ジブロモピロガロール-スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド);7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン;ジエチルアミノクマリン;ジエチレントリアミンペンタアセタート;4,4’-ジイソチオシアナトジヒドロスチルベン-2,2’-ジスルホン酸;4,4’-ジイソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸;5-[ジメチルアミノ]ナフタレン-1-スルホニルクロリド(DNS、ダンシルクロリド);4-(4’-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL);4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4’-イソチオシアナート(DABITC);エオシン及びエオシンイソチオシアナートなどのエオシンならびに誘導体;エリトロシンならびにエリトロシンB及びエリトロシンイソチオシアナートなどの誘導体;エチジウム;フルオレセインならびに5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’7’-ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)、フルオレセインクロロトリアジニル、ナフトフルオレセイン、及びQFITC(XRITC)などの誘導体;フルオレサミン;IR144;IR1446;緑色蛍光タンパク質(GFP);造礁サンゴ由来蛍光タンパク質(RCFP);リサミン(登録商標);リサミンローダミン、ルシファーイエロー;マラカイトグリーンイソチオシアナート;4-メチルウンベリフェロン;オルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラロスアニリン;ナイルレッド;オレゴングリーン;フェノールレッド;B-フィコエリトリン(PE);o-フタルジアルデヒド;ピレン、酪酸ピレン、及び1-ピレン酪酸スクシンイミジルなどのピレンならびに誘導体;リアクティブレッド4(チバクロン(登録商標)ブリリアントレッド3B-A);6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、4,7-ジクロロローダミンリサミン、ローダミンBスルホニルクロリド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアナート、スルホローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体(テキサスレッド)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、テトラメチルローダミン、及びテトラメチルローダミンイソチオシアナート(TRITC)などのローダミンならびに誘導体;リボフラビン;ロゾール酸及びテルビウムキレート誘導体;キサンテン;ペリジニン-クロロフィルタンパク質(PerCP)などのカロテノイド-タンパク質複合体;アロフィコシアニン(APC);またはこれらの組み合わせであってよい。
【0060】
特定の実施形態において、本試剤デバイスに備わる色素組成物は、上述した高分子色素組成物を含む。いくつかの場合において、本試剤デバイスに備わる色素組成物は、上述した非高分子色素組成物を含む。いくつかの場合において、本試剤デバイスに備わる色素組成物は、高分子色素組成物及び非高分子色素組成物の両方を含む。上述したように、色素組成物(例えば、高分子及び非高分子色素組成物)のそれぞれは、本試剤デバイスの固体支持体の表面上に明確に区別して配置されてもよい。いくつかの場合において、本試剤デバイスは、上述の複数種の色素組成物を備える。例えば、本試剤デバイスは、2種以上の、例えば3種以上の別個の高分子色素組成物、及び2種以上の、例えば3種以上、または4種以上、または5種以上の別個の非高分子色素組成物を備えていてもよい。いくつかの場合において、本試剤デバイスは、3種以上の別個の高分子色素組成物及び5種以上の別個の非高分子色素組成物を備える。
【0061】
上述したように、本試剤デバイスは、高分子色素組成物及び非高分子色素組成物の両方を備えていてもよい。いくつかの場合において、高分子色素組成物が非高分子色素組成物と混合される。特定の実施形態において、高分子色素組成物と非高分子色素組成物との混合物にあっては、高分子色素組成物と記非高分子色素組成物との間での有意な色素-色素相互作用が生じない。例えば、高分子色素組成物の蛍光発光エネルギーは、非高分子色素組成物との相互作用によって有意には消光されない。いくつかの場合において、高分子色素組成物の蛍光発光エネルギーは非放射遷移によって有意には放散されない。これらの実施形態においては、高分子色素組成物の検出可能な蛍光は、非高分子色素組成物の非存在下での高分子色素組成物の蛍光と比較して、予想されるよりも有意には低くならない。同様に、いくつかの実施形態において、非高分子色素組成物の蛍光発光エネルギーは、高分子色素組成物との相互作用によって有意には消光されない。例えば、非高分子色素組成物の蛍光発光エネルギーは非放射遷移によって有意には放散されない場合がある。これらの実施形態において、非高分子色素組成物の検出可能な蛍光は、高分子色素組成物の非存在下での非高分子色素組成物の蛍光と比較して、予想されるよりも有意には低くならない。
【0062】
特定の実施形態において、色素組成物は、上述した高分子及び/または非高分子色素などの色素を含む。色素組成物はまた、溶媒、緩衝剤、安定剤などの、但しこれらに限定されない他の成分を含んでいてもよい。例えば、色素組成物は、当該色素組成物中の色素の分解を低減する及び/または実質的に防止する安定剤を含んでいてもよい。いくつかの場合において、色素組成物中の安定剤の存在は、当該色素組成物中の色素の分解を特定の期間、例えば、24時間以上、または48時間以上、または72時間以上、または4日以上、または5日以上、または6日以上、または1週間以上、または2週間以上、または3週間以上、または4週間以上、または2ヶ月以上、または3ヶ月以上、または4ヶ月以上、または5ヶ月以上、または6ヶ月以上、または9ヶ月以上、または1年以上の間低減する及び/または実質的に防止するために十分なものである。安定剤の例としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、アジ化ナトリウム、グリセリン、フッ化フェニルメタンスルホニル(PMSF)などが挙げられるが、これらに限定はされない。組成物中には、全血中に存在する細胞を保護する添加剤、例えば血小板安定化因子などの更なる添加剤が存在していてもよい。組成物中に含まれていてもよい添加剤の例には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、緩衝化クエン酸塩、ヘパリンなどの抗凝固剤がある。組成物はこれらの添加剤を液体または乾燥した状態で含んでいてもよい。
【0063】
特定の実施形態において、本試剤デバイスは較正標準も含む。較正標準はアッセイの精度を判定するため、及び後続のアッセイ間の一貫性を保証するために有用な場合がある。いくつかの場合において、較正標準としては蛍光標識ビーズなどの標識ビーズが挙げられる。蛍光標識ビーズは、較正標準として一般的に使用される標準蛍光標識ビーズであってよい。標準蛍光標識ビーズの例としては蛍光標識ミクロ粒子またはナノ粒子が挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの場合において、蛍光標識ビーズは、アッセイ混合物中で懸濁した状態を維持し、実質的に沈降または凝集しないように構成される。いくつかの実施形態において、蛍光標識ビーズとしては、蛍光標識ポリスチレンビーズ、フルオレセインビーズ、ローダミンビーズ、及び蛍光色素で標識された他のビーズが挙げられるが、これらに限定はされない。蛍光標識ビーズの更なる例は、米国特許第6,350,619号、第7,738,094号、及び第8,248,597号に記載されており、これらの特許のそれぞれの開示は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0064】
いくつかの場合において、本試剤デバイスによって、色素組成物が長期間容易に保存される。例えば、試剤デバイスは保存安定性がある試剤デバイスであってもよい。いくつかの場合において、本試剤デバイスに備わる色素組成物は、長期間実質的に安定である、保存安定性がある色素組成物である。「安定な」または「保存安定性がある」または「実質的に安定な」とは、長期間にわたって有意に分解しない及び/または活性が低下しない色素組成物を意味する。例えば、保存安定性がある色素組成物は、長期間にわたって、当該色素組成物の分解に起因する有意な蛍光活性の低下、例えば、10%以下、または9%以下、または8%以下、または7%以下、または6%以下、または5%以下、または4%以下、または3%以下、または2%以下、または1%以下の蛍光活性の低下がなくてもよい。特定の場合において、保存安定性がある色素組成物の蛍光活性の低下は長期間にわたって5%以下である。いくつかの場合において、保存安定性がある色素組成物は、長期間にわたって実質的にその蛍光活性を維持し、例えば、その活性の100%、または99%以上、または98%以上、または97%以上、または96%以上、または95%以上、または94%以上、または93%以上、または92%以上、または91%以上、または90%以上、または85%以上、または80%以上、または75%以上を維持する。例えば、保存安定性がある色素組成物は、その蛍光活性の90%以上を長期間にわたって維持してもよい。いくつかの場合において、保存安定性がある色素組成物は、その蛍光活性の95%以上を長期間にわたって維持する。長期間とは、1週間以上、または2週間以上、または3週間以上、または1ヶ月以上、または2ヶ月以上、または3ヶ月以上、または4ヶ月以上、または6ヶ月以上、または9ヶ月以上、または1年以上、または1.5年(例えば、18ヶ月)以上、または2年以上、または2.5年(例えば、30ヶ月)以上、または3年以上、または3.5年(例えば、42ヶ月)以上、または4年以上、または4.5年(例えば、54ヶ月)以上、または5年以上などの期間である。例えば、長期間とは6ヶ月以上であってよい。いくつかの場合において、長期間とは9ヶ月以上である。いくつかの場合において、長期間とは1年(例えば、12ヶ月)以上である。いくつかの場合において、長期間とは1.5年(例えば、18ヶ月)以上である。いくつかの場合において、長期間とは2年(例えば、24ヶ月)以上である。いくつかの場合において、長期間とは、10年以下、例えば、5年以下、例えば2年以下を含む7.5年以下である。
【0065】
本開示の実施形態に係る試剤デバイスの一例を
図1に示す。
図1において、本試剤デバイス10は、バイアルまたは試験管として構成され、例えば、本試剤デバイス10はバイアル(試験管)の形態の固体支持体12を備える。本試剤デバイス10は、固体支持体12の表面上に3種の異なる乾燥高分子色素組成物(14,16,18)を備える。固体支持体12の表面上のこれらの3種の高分子色素組成物(14,16,18)は、固体支持体12の表面上に互いに対して明確に区別して配置される。
【0066】
使用方法
本開示の態様はまた、本主題の試剤デバイスの使用方法も含む。上述したように、本試剤デバイスは、固体支持体と、固体支持体の表面上に明確に区別して配置された1種または複数種の高分子色素組成物(例えば、第1及び第2の高分子色素組成物)とを備えていてもよい。高分子色素組成物は乾燥高分子色素組成物であってもよい。かくして、本試剤デバイスの使用方法は色素組成物を再構成することを含む。特定の実施形態において、本方法は、再構成された色素組成物を生成させるために十分な形態で、ある容積の液体と本試剤デバイスとを合体させることを含む。ある容積の液体を、他の液体を取り扱う器具がある中でも、シリンジ、針、ピペット、アスピレーターなどの、但しこれらに限定されない任意の適当な液体を取り扱う用具を用いて、本試剤デバイスに加えてもよい。
【0067】
いくつかの場合において、上述のように、固体支持体は、液体容器として構成されて、内面及び外面を備える。上述したように、液体容器の内面上に1種または複数種の乾燥高分子色素組成物を配置する。このような場合、本方法の合体するステップは、液体容器内にある容積の液体を配置することを含んでいてもよい。液体容器内に液体を配置することにより、液体は、液体容器の内面上の乾燥高分子色素組成物と接触してもよい。いくつかの場合において、液体(例えば水)は乾燥高分子色素組成物に吸収され、そのようにして乾燥高分子色素組成物を再構成してもよい。
【0068】
特定の実施形態において、液体は生物学的試料を含む。いくつかの場合において、生物学的試料は、血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄液、羊水、臍帯血、尿、膣液、及び精液などの、但しこれらに限定されない特定の生体液由来であってもよい。いくつかの実施形態において、生物学的試料は全血またはその画分を含む。いくつかの実施形態において、生物学的試料は血漿を含む。
【0069】
特定の実施形態において、本試剤デバイスは、封止材(例えば、水密封止材及び/または気密封止材)を備えるものなどの、密封された試剤デバイスである。これらの場合には、本方法は、液体容器内に液体を配置する前に、封止材を取り外すことを含んでいてもよい。本試剤デバイス上の封止材を取り外すことにより、体容器の内容物を周囲環境に暴露することができ、液体容器の内部容積にアクセスすることが可能になる。したがって、液体容器の内部容積にアクセスするユーザは、液体容器内に液体を配置して、液体容器内の乾燥高分子色素組成物を再構成してもよい。
【0070】
特定の実施形態において、本方法は、液体容器内に液体を配置した後に、液体容器の内容物を混合することも含む。この混合は、任意の適当なプロトコルを用いて行ってもよい。例えば、この混合は撹拌器を用いて行ってもよい。撹拌器は、他の撹拌プロトコルがある中でも、ボルテックス、超音波処理装置、振とう器(例えば、手動式、機械式、または電動式振とう器)、揺動器、振動プレート、磁気撹拌器、静的ミキサー、回転装置、ブレンダー、ミキサー、タンブラー、軌道振とう器を含む、但しこれらに限定されない、液体容器内の液体を混合するために十分な任意の適当な撹拌器であってもよい。
【0071】
いくつかの場合において、本方法はまた、再構成された色素組成物をアッセイすることも含む。再構成された色素組成物をアッセイすることは、任意の適切なアッセイ装置を用いて実施してもよい。例えば、アッセイ装置はフローサイトメーターであってもよい。これらの実施形態において、アッセイすることは、再構成された色素組成物をフローサイトメトリーで分析することを含む。いくつかの場合において、アッセイすることは、再構成された色素組成物を、再構成された色素組成物の励起極大に対応する波長を有する電磁放射線などの電磁放射線(例えば光)と接触させることを含む。アッセイすることは、励起された色素組成物から放出される光を検出することを更に含んでいてもよい。例えば、本方法は、色素組成物の発光極大に対応する1または複数の波長において励起された色素組成物から放出された光を検出することを含んでいてもよい。
【0072】
本発明の方法において用いてもよい試料の分析のための適切なフローサイトメトリーシステム及び方法としては、Ormerod(ed.),Flow Cytometry:A Practical Approach,Oxford Univ.Press(1997);Jaroszeski et al.(eds.),Flow Cytometry Protocols,Methods in Molecular Biology No.91,Humana Press(1997);Practical Flow Cytometry,3rd ed.,Wiley-Liss(1995);Virgo,et al.(2012)Ann Clin Biochem.Jan;49(pt 1):17-28;Linden,et.al.,Semin Throm Hemost.2004 Oct;30(5):502-11;Alison,et al.J Pathol,2010 Dec;222(4):335-344;及びHerbig,et al.(2007) Crit Rev Ther Drug Carrier Syst.24(3):203-255に記載されるものが挙げられるが、これらに限定はされず、これらの文献の開示は参照により本明細書に援用される。特定の場合において、対象となるフローサイトメトリーシステムとしては、BD Biosciences FACSCanto(登録商標)及びFACSCanto II(登録商標)フローサイトメーター、BD Biosciences FACSVantage(登録商標)、BD Biosciences FACSort(登録商標)、BD Biosciences FACSCount(登録商標)、BD Biosciences FACScan(登録商標)、及びBD Biosciences FACSCalibur(登録商標)システム、BD Biosciences Influx(登録商標)セルソーター、BD Biosciences Accuri(登録商標)C6フローサイトメーター;BD Biosciences LSRFortessa(登録商標)フローサイトメーター、BD Biosciences LSRFortessa(登録商標)X-20フローサイトメーター、BD Biosciences FACSVerse(登録商標)フローサイトメーター、BD Biosciences FACSAria(登録商標)III及びBD FACSAria(登録商標)Fusionフローサイトメーター、BD Biosciences FACSJazz(登録商標)フローサイトメーターなどが挙げられる。特定の実施形態において、本主題のシステムは、米国特許第3,960,449号、第4,347,935号、第4,667,830号、第5,245,318号、第5,464,581号、第5,483,469号、第5,602,039号、第5,643,796号、第5,700,692号、第6,372,506号、及び第6,809,804号に記載されるものなどのフローサイトメトリーシステムであり、これらの特許の開示は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0073】
液体クロマトグラフィー-質量分析またはガスクロマトグラフィー-質量分析システムなどの、但しこれらに限定されない他の分析方法を用いてもよい。例えば、アッセイすることは、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、マイクロもしくはナノ液体クロマトグラフ、または超高圧液体クロマトグラフ(UHPLC)装置を含む液体クロマトグラフ(LC)、キャピラリー電気泳動(CE)、またはキャピラリー電気泳動クロマトグラフィー(CEC)装置などの分析のための分離装置の使用を含んでいてもよい。質量分析計(MS)システムを用いて色素組成物をアッセイしてもよい。質量分析計の例としては、例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、電子衝撃(EI)、大気圧光イオン化(APPI)、マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、もしくは誘導結合プラズマ(ICP)イオン化、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定はされない。同様に、飛行時間型(TOF)、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)、イオントラップ、四重極もしくは二重収束型磁気電気セクター質量分析計、またはそれらの任意のハイブリッドを含む、種々の異なる質量分析計のいずれかを用いてもよい。
【0074】
特定の実施形態において、本試剤デバイスは完全に自動化された装置中に組み込まれる。「完全に自動化された」とは、当該の装置が試剤デバイスを受け入れ、人間の介在または本主題のシステムへの手動での入力をほとんどまたは全く伴わずに、再構成された色素組成物を調製することを意味する。特定の実施形態において、本主題のシステムは、如何なる人間の介在も伴わずに、再構成された色素組成物を調製し且つ分析するように構成される。
【0075】
特定の実施形態において、本方法はまた、ある期間、再構成された色素組成物を保存することも含む。再構成された色素組成物を、アッセイする前、その間、及び/またはその後に、ある期間保存してもよい。いくつかの場合において、再構成された色素組成物は、ある期間、例えば、24時間以上、または48時間以上、または72時間以上、または4日以上、または5日以上、または6日以上、または1週間以上、または2週間以上、または3週間以上、または4週間以上、または2ヶ月以上、または3ヶ月以上、または4ヶ月以上、または5ヶ月以上、または6ヶ月以上、または9ヶ月以上、または1年以上の間、保存される。特定の場合において、再構成された色素組成物は24時間以上保存される。特定の場合において、再構成された色素組成物は48時間以上保存される。特定の場合において、再構成された色素組成物は72時間以上保存される。特定の場合において、再構成された色素組成物は1週間以上保存される。特定の場合において、再構成された色素組成物は2週間以上保存される。特定の場合において、再構成された色素組成物は3週間以上保存される。
【0076】
本方法の実施形態は、再構成された色素組成物を遠隔地に輸送することを更に含んでいてもよい。「遠隔地」とは、色素組成物が再構成される場所以外の場所である。例えば、遠隔地は、同一の市内の別の場所(例えば、診療室、検査室など)、異なる市の別の場所、異なる州の別の場所、異なる国の別の場所などがあり得る。したがって、1つの対象が別の対象から「遠隔」にあると示される場合、それは、これらの2つの対象が同一の部屋に存在するが分離されているか、または少なくとも異なる部屋または異なる建物にある場合があり、少なくとも1マイル、10マイル、もしくは100マイル、またはそれ以上離れている場合があることを意味する。
【0077】
製造方法
本開示の態様はまた、本明細書に記載の試剤デバイスの製造方法も含む。特定の実施形態において、本製造方法は、1種または複数種の色素組成物を、固体支持体の表面上に明確に区別して配置することを含む。例えば、本製造方法は、固体支持体の表面上に2種以上の色素組成物(例えば、第1及び第2の色素組成物)を明確に区別して配置することを含んでいてもよい。いくつかの場合において、色素組成物は、本明細書に記載した、固体支持体の表面上に明確に区別して配置された高分子色素組成物(例えば、第1及び第2の高分子色素組成物)である。
【0078】
本明細書に記載されるように、高分子色素組成物は乾燥高分子色素組成物であってよい。したがって、本製造方法は、固体支持体の表面上に乾燥高分子色素組成物を配置することを含んでいてもよい。乾燥高分子色素組成物を、噴霧、印刷、または他の沈着方法などの、但しこれらに限定されない任意の適当なプロトコルを用いて、固体支持体の表面上に配置してもよい。
【0079】
特定の実施形態において、最初に、色素組成物を固体支持体の表面上に配置し、次いで色素組成物を乾燥させて、固体支持体の表面上に乾燥色素組成物を提供する。これらの実施形態において、色素組成物は液体色素組成物として提供されてもよく、液体色素組成物は固体支持体の表面上に明確に区別して配置されてもよい。明確に区別して配置された液体色素組成物を乾燥させて、固体支持体の表面上に明確に区別して配置された乾燥色素組成物を提供してもよい。液体色素組成物は、他の液体を取り扱う器具がある中でも、シリンジ、針、ピペット、アスピレーターなどの、但しこれらに限定されない任意の適当な液体を取り扱う用具を用いて、固体支持体の表面上に明確に区別して配置されてもよい。いくつかの場合において、液体色素組成物は、インクジェットプリンターなどの、但しこれに限定されないプリンターを用いて、固体支持体の表面上に明確に区別して配置されてもよい。固体支持体の表面上に明確に区別して配置された液体色素組成物は、任意の適当な乾燥プロトコルを用いて乾燥してもよい。いくつかの場合において、固体支持体を加熱するか、または標準的な条件よりも高い温度の環境に置いてもよい。特定の場合において、この温度は、液体色素組成物を乾燥させるために十分な標準的条件よりも高いが、色素組成物に分解を生じさせることとなる温度よりも低い温度である。例えば、固体支持体を30℃~50℃、例えば30℃~45℃の範囲の温度に加熱して、乾燥色素組成物を得てもよい。特定の実施形態において、固体支持体を、色素組成物を乾燥させるために十分な時間、例えば1分以上、または5分以上、または10分以上、または15分以上、または20分以上、または30分以上の間、この温度に加熱する。固体支持体の表面上に2種以上の色素組成物を備える実施形態においては、当該異なる色素組成物を順次固体支持体の表面上に配置し且つ乾燥させてもよく、またはそれぞれの色素組成物を固体支持体の表面上に配置し、それらの色素組成物の全てを同時に乾燥させてもよい。
【0080】
本明細書に記載されるように、本試剤デバイスは、固体支持体の表面上に明確に区別して配置された2種以上の色素組成物(例えば、高分子色素組成物)を備えていてもよい。したがって、いくつかの場合において、本方法は、色素組成物を、固体組成物の表面上の別個の位置に配置することを含む。例えば、本方法は、第1及び第2の高分子色素組成物を、固体支持体の表面上の別個の位置に配置することを含んでいてもよい。更なる色素組成物、例えば第3の高分子色素組成物が、固体支持体の表面上に提供されてもよい。これらの実施形態においては、本方法は、固体支持体の表面上に第3の高分子色素組成物を明確に区別して配置することを更に含んでいてもよい。更なる高分子及び/または非高分子色素組成物もまた、固体支持体の表面上に明確に区別して配置されてもよい。
【0081】
特定の実施形態において、本試剤デバイスは、固体支持体の表面の同一の位置に配置された2種以上の色素組成物(例えば、高分子色素組成物)を備える。したがって、これらの実施形態において、本方法は、色素組成物を、固体支持体の表面の同一の位置に配置することを含んでいてもよい。例えば、本方法は、第1及び第2の色素組成物(例えば、第1及び第2の高分子色素組成物)を、固体支持体の表面の同一の位置に配置することを含んでいてもよい。いくつかの場合において、本方法はまた、同一の位置に配置された色素組成物の間に非色素物質を配置することを含む。例えば、本方法は、第1及び第2の高分子色素組成物の間に非色素物質を配置することを含んでいてもよい。更なる色素組成物、例えば第3の高分子色素組成物が、固体支持体の表面の同一の位置に配置されてもよい。これらの実施形態において、本方法は、固体支持体の表面の同一の位置に第3の高分子色素組成物を明確に区別して配置することを更に含んでいてもよい。更なる高分子及び/または非高分子色素組成物もまた、固体支持体の表面の同一の位置に明確に区別して配置されてもよい。
【0082】
本方法は、色素組成物を固体支持体(例えば、液体容器)の表面上に配置した後に、固体支持体(例えば、液体容器)を密封することを更に含んでいてもよい。例えば、本方法は、液体容器に封止材を取り付けることを含んでいてもよい。上述したように、封止材は、水密及び/または気密封止材であってもよい。いくつかの場合において、封止材は脱着可能な封止材またはブレーカブルシールであり、これによりユーザはその後、液体容器の内容物にアクセスすることができる。
【0083】
上述したように、本試剤デバイスは、標準蛍光標識ビーズなどの較正標準を含んでいてもよい。これらの実施形態において、本方法は、固体支持体の表面上に標準蛍光標識ビーズ一式を配置することを更に含んでいてもよい。配置することは、ビーズを取り扱うための任意の適当な技法を用いて実施されてもよい。例えば、ビーズは、液体中のビーズの懸濁液のように、液体中で提供されてもよい。このような場合、ビーズを含む液体は、他の液体を取り扱う器具がある中でも、シリンジ、針、ピペット、アスピレーターなどの、但しこれらに限定されない任意の適当な液体を取り扱う用具を用いて、固体支持体の表面上に配置されてもよい。いくつかの場合において、ビーズを含む液体は、インクジェットプリンターなどの、但しこれに限定されないプリンターを用いて、固体支持体の表面上に配置されてもよい。
【0084】
キット
本開示の態様はまた、主題の試剤デバイスを備えるキットを含む。特定の実施形態において、本キットは、主題の試剤デバイスと、試剤デバイスを保持するように構成された包装とを備える。包装は密封包装、例えば、任意選択で気密及び/または真空封止下の、耐水蒸気容器であってもよい。特定の場合において、包装は、無菌環境の包装中に封入された本デバイスを保持するように構成された無菌包装である。「無菌」とは、微生物(真菌、細菌、ウイルス、胞子の形態など)が実質的に存在しないことを意味する。本キットは緩衝液を更に備えていてもよい。例えば、本キットは、試料緩衝液、洗浄緩衝液、アッセイ緩衝液などの緩衝液を備えていてもよい。本キットは、検出可能な標識(例えば、蛍光標識、比色標識、化学発光標識、多色試剤、アビジン-ストレプトアビジン関連検出試剤、放射標識、金粒子、磁気標識等)などの、但しこれらに限定されない追加の試剤を更に備えていてもよい。特定の実施形態において、本キットはまた、較正標準を備えていてもよい。例えば、本キットは、標準蛍光標識ビーズ一式などの標識ビーズ一式を備えていてもよい。
【0085】
本主題のキットは、上述した構成要素に加えて、本主題の方法を実施するための説明書を更に備えていてもよい。これらの説明書は種々の形態で本主題のキットに存在していてもよく、1種または複数種の説明書がキットに存在していてもよい。これらの説明書が存在していてもよい一形態は、本キットの包装中、添付文書中などの、適宜の媒体または基材上に情報が印刷されたもの、例えば、当該情報が印刷された1枚または複数枚の紙面としてのものである。別の手段としては、当該情報が記録または保存された、CD、DVD、ブルーレイ、コンピュータ可読メモリ(例えば、フラッシュメモリ)などのコンピュータ可読媒体がある。存在していてもよい更に別の形態は、インターネットを介してそれを用いて、遠隔の場所にある情報にアクセスすることができるウェブサイトのアドレスである。本キットには、任意の適当な形態の説明書が存在していてもよい。
【0086】
有用性
本主題の試剤デバイス及び方法は、研究、臨床検査、または治療における使用のために生物学的試料由来の細胞の分析が所望される場合がある用途に用いられる。いくつかの実施形態において、本主題の試剤デバイス及び方法は、がんを始めとする、但しこれに限定されない疾患に関する検体などの体液または組織試料から得られた細胞の分析を容易にする。本開示の試剤デバイス及び方法はまた、生物学的試料(例えば、臓器、組織、組織断片、体液)由来の細胞を高効率及び低コストで分析することを可能にする。
【0087】
本主題の試剤デバイス及び方法は、2種以上の色素組成物を用いる試料の分析が所望される用途に用いられる。例えば、本主題の試剤デバイス及び方法は、2種以上の高分子色素組成物を用いる試料の分析が所望される用途に用いられる。本発明の試剤デバイス及び方法の実施形態はまた、2種以上の高分子色素組成物を1種または複数種の非高分子色素組成物と組み合わせて用いる試料の分析が所望される用途にも用いられる。したがって、本主題の試剤デバイス及び方法は、2種以上の対象となる被検物質について、2種以上の対応する高分子色素組成物を用いて試料の分析が行われる用途に用いられる。本試剤デバイス中に非高分子色素組成物も備わるいくつかの場合において、本主題の試剤デバイス及び方法は、2種以上の対象となる被検物質について、2種以上の対応する高分子色素組成物及び非高分子色素組成物を用いて試料の分析が行われる用途に用いられる。
【0088】
本主題の試剤デバイス及び方法は、色素-色素相互作用の最小化が所望される用途に用いられる。本明細書に記載されるように、本主題の試剤デバイス及び方法は、固体支持体の表面上に明確に区別して配置された2種以上の乾燥高分子色素組成物を提供する。かくして、固体支持体の表面上に、色素組成物を互いに対して明確に区別して配置することによって、色素-色素相互作用を容易に最小化することができる。色素-色素相互作用の最小化によって、本主題の試剤デバイスを用いて実施されるアッセイに関して、より正確かつ/または的確なデータの収集が容易になり得る。例えば、本主題の試剤デバイス及び方法は、2種以上の色素組成物が提供されるが、互いに対して明確に区別して配置されない試剤デバイスと比較して、色素-色素相互作用を容易に低減することができる。
【0089】
上述した開示内容から理解することができるように、本開示の実施形態は多種多様な用途を有する。したがって、本明細書中に提示される実施例は例証を目的として提示されており、本開示の実施形態に対する限定として解釈されることを何ら意図するものではない。当業者であれば、本質的に類似の結果を生じるように変更または改変することができる種々の重要ではないパラメータを容易に認識するであろう。したがって、以下の実施例は、当業者に本開示の実施形態の製造及び使用方法を完全に開示及び説明するために提示するのであって、本発明者らが本発明者の発明と考えるものの範囲を限定することを意図するものではなく、また、以下の実験が実施した全ての実験である、または以下の実験しか実施していないことを示すことを意図するものでもない。用いる数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保するための努力を行ってきたが、一定の実験誤差及び偏差を考慮する必要がある。別段の指示がない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏で表され、圧力は大気圧または大気圧近傍である。
【実施例0090】
実施例1
本開示の実施形態に係る、3種の明確に区別して配置された乾燥高分子色素組成物を有する試剤デバイスを製造し且つ試験するための実験を行った。
【0091】
第1の高分子色素組成物(BV510、405nmに励起極大且つ510nmに発光極大を有する高分子色素組成物;BD Biosciences, New Jersey)を、バイアルの内面上の第1の位置に配置し、乾燥させた。第2の高分子色素組成物(BV421、407nmに励起極大且つ421nmに発光極大を有する高分子色素組成物;BD Biosciences, New Jersey)を、バイアルの内面上の第2の別個の位置に明確に区別して配置し、乾燥させた。第3の高分子色素組成物(BV605、407nmに励起極大且つ602nmに発光極大を有する、BV421及びCy(登録商標)3.5の組み合わせであるタンデム蛍光色素(fluorochrome)を含む高分子色素組成物;BD Biosciences, NewJersey)を、バイアルの内面上の第3の別個の位置に明確に区別して配置し、乾燥させた。Cy(登録商標)3.5は、緑色(532nm)及び黄緑色(561nm)レーザーによって励起させることができるシアニン色素である。試料をバイアルに添加して再構成された色素組成物を生成させ、フローサイトメトリーにより分析した。このアッセイの結果のグラフを
図2に示すが、このグラフは色素-色素相互作用が最小化されたことを示した。
【0092】
実施例2
本開示の実施形態に係る、3種の明確に区別して配置された乾燥高分子色素組成物及び7種の非高分子色素組成物を有する試剤デバイスを製造し且つ試験するための実験を行った。
【0093】
第1の高分子色素組成物(BV605、407nmに励起極大且つ602nmに発光極大を有する、BV421及びCy(登録商標)3.5の組み合わせであるタンデム蛍光色素を含む高分子色素組成物;BD Biosciences, NewJersey)及び第2の高分子色素組成物(BV421、407nmに励起極大且つ421nmに発光極大を有する高分子色素組成物;BD Biosciences, New Jersey)を、バイアルの内面上の2つの別個の位置に明確に区別して配置し、乾燥させた。第3の高分子色素組成物(BV510、405nmに励起極大且つ510nmに発光極大を有する高分子色素組成物;BD Biosciences, New Jersey)を、バイアルの内面の第3の位置に明確に区別して配置し、乾燥させた。第3の高分子色素組成物は、7種の異なる非高分子色素、すなわち、FITC、PE、PerCP-Cy5.5複合色素、PE-Cy7複合色素、APC、APC-R700タンデム複合色素、及びAPC-H7(APC-シアニンタンデム色素)も含んでいた。バイアルの内面上の乾燥高分子色素組成物の画像を
図3に示す。
図3に示すように、第1の高分子色素組成物32、第2の高分子色素組成物34、及び7種の非高分子色素も含む第3の高分子色素組成物36は、バイアルの内面上に明確に区別して配置された。試料をバイアルに添加して再構成された色素組成物を生成させ、フローサイトメトリーによって分析した。このアッセイの結果のグラフを
図4に示すが、このグラフは色素-色素相互作用が最小化されたことを示した。
【0094】
実施形態
一実施形態において、本開示は、固体支持体と、固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第1及び第2の乾燥高分子色素組成物とを有する多重高分子色素デバイスを提供する。
【0095】
いくつかの実施形態において、第1及び第2の乾燥高分子色素組成物は、励起極大及び発光極大の少なくとも一方において互いに異なる第1及び第2の高分子色素を含む。例えば、第1及び第2の高分子色素は水溶性共役ポリマーであってもよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、第1及び第2の乾燥高分子色素組成物のそれぞれは安定剤を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、第1及び第2の乾燥高分子色素組成物は、固体支持体の表面上の別個の位置に配置される。いくつか実施形態において、別個の位置の間の距離は0.1mm~200mmの範囲である。
【0098】
いくつかの実施形態において、第1及び第2の乾燥高分子色素組成物は固体支持体の表面の同一の位置に配置される。特定の場合において、第1及び第2の乾燥高分子色素組成物は非色素物質によって互いに分離されている。
【0099】
いくつかの実施形態において、本デバイスは、固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第3の乾燥高分子色素組成物を備える。
【0100】
いくつかの実施形態において、本デバイスは乾燥非高分子色素組成物を備える。
【0101】
いくつかの実施形態において、本デバイスは3種以上の別個の乾燥高分子色素組成物及び5種以上の別個の乾燥非高分子色素組成物を備える。
【0102】
いくつかの実施形態において、固体支持体の表面は液体容器の内面を含む。いくつかの実施形態において、液体容器は0.1ml~250mlの範囲の容積を保持するように構成される。いくつかの実施形態において、液体容器はバイアルである。他の実施形態において、液体容器はマルチウェルプレートのウェルである。いくつかの実施形態において、液体容器は密封されている。いくつかの実施形態において、固体支持体はガラスである。他の場合において、固体支持体はプラスチックである。
【0103】
いくつかの実施形態において、本デバイスは標準蛍光標識ビーズ一式を更に備える。
【0104】
別の実施形態において、本開示は、ある容積の液体及び試剤デバイスを、再構成された色素組成物を生成させるために十分な形態で配合することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、試剤デバイスは、固体支持体と、固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第1及び第2の乾燥高分子色素組成物とを備える。
【0105】
いくつかの実施形態において、液体は生物学的試料を含む。いくつかの実施形態において、生物学的試料は全血またはその画分を含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、固体支持体の表面は液体容器の内面であり、これらの場合には、本方法は、液体容器内にある容積の液体を配置することを含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、液体容器は密封され、これらの場合には、本方法は、液体容器内にある容積の液体を配置する前に、封止材を取り外すことを含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、本方法は、再構成された色素組成物をアッセイすることを更に含む。いくつかの実施形態において、アッセイすることは、再構成された色素組成物をフローサイトメトリーで分析することを含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、本方法は、再構成された色素組成物をある期間保存することを更に含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、本方法は、再構成された色素組成物を遠隔地に輸送することを更に含む。
【0111】
別の実施形態において、本開示は、第1及び第2の乾燥高分子色素組成物を、固体支持体の表面に対して明確に区別して配置することを含む、試剤デバイスの製造方法を提供する。
【0112】
いくつかの実施形態において、本方法は、液体容器を密封することを更に含む。
【0113】
別の実施形態において、本開示は、試剤デバイスと、試剤デバイスを保持するように構成された包装とを備えるキットを提供する。いくつかの実施形態において、試剤デバイスは、固体支持体と、固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第1及び第2の乾燥高分子色素組成物とを備える。
【0114】
添付の請求項にもかかわらず、本明細書に記載される開示は、以下の付記によっても定義される。
1.固体支持体と、前記固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第1及び第2の乾燥高分子色素組成物とを備える試剤デバイス。
2.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物は、励起極大及び発光極大の少なくとも一方において互いに異なる第1及び第2の高分子色素を含む、付記1に記載の試剤デバイス。
3.前記第1及び第2の高分子色素は水溶性共役ポリマーである、付記1に記載の試剤デバイス。
4.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物のそれぞれは安定剤を含む、付記1~3のいずれかに記載の試剤デバイス。
5.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物が前記固体支持体の表面上の別個の位置に配置される、付記1~4のいずれかに記載の試剤デバイス。
【0115】
6.前記別個の位置の間の距離が0.1mm~200mmの範囲である、付記5に記載の試剤デバイス。
7.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物が前記固体支持体の表面の同一の位置に配置される、付記1~4のいずれかに記載の試剤デバイス。
8.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物が非色素物質によって互いに分離されている、付記7に記載の試剤デバイス。
9.前記固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第3の乾燥高分子色素組成物を備える、付記1~8のいずれかに記載の試剤デバイス。
10.乾燥非高分子色素組成物を備える、付記1~9のいずれかに記載の試剤デバイス。
【0116】
11.3種以上の別個の乾燥高分子色素組成物及び5種以上の別個の乾燥非高分子色素組成物を備える、付記1~10のいずれかに記載の試剤デバイス。
12.前記固体支持体の表面は液体容器の内面を含む、付記1~11のいずれかに記載の試剤デバイス。
13.前記液体容器は0.1ml~250mlの範囲の容積を保持するように構成された、付記12に記載の試剤デバイス。
14.前記液体容器はバイアルである、付記12または13に記載の試剤デバイス。
15.前記液体容器はマルチウェルプレートのウェルである、付記12または13に記載の試剤デバイス。
【0117】
16.前記液体容器が密封されている、付記12~15のいずれかに記載の試剤デバイス。
17.前記固体支持体はガラスを含む、付記1~16のいずれかに記載の試剤デバイス。
18.前記固体支持体はプラスチックを含む、付記1~17のいずれかに記載の試剤デバイス。
19.標準蛍光標識ビーズ一式を更に備える、付記1~18のいずれかに記載の試剤デバイス。
20.ある容積の液体、及び、固体支持体と、前記固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第1及び第2の乾燥高分子色素組成物とを備える試剤デバイスを、再構成された色素組成物を生成させるために十分な形態で配合することを含む方法。
【0118】
21.前記液体は生物学的試料を含む、付記20に記載の方法。
22.前記生物学的試料は全血またはその画分を含む、付記21に記載の方法。
23.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物は、励起極大及び発光極大の少なくとも一方において互いに異なる第1及び第2の高分子色素を含む、付記20~22のいずれかに記載の方法。
24.前記第1及び第2の高分子色素は水溶性共役ポリマーである、付記23に記載の方法。
25.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物のそれぞれは安定剤を含む、付記20~24のいずれかに記載の方法。
【0119】
26.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物が前記固体支持体の表面上の別個の位置に配置される、付記20~25のいずれかに記載の方法。
27.前記別個の位置の間の距離が0.1mm~200mmの範囲である、付記26に記載の方法。
28.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物が前記固体支持体の表面の同一の位置に配置される、付記20~25のいずれかに記載の方法。
29.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物が非色素物質によって互いに分離されている、付記28に記載の方法。
30.前記試剤デバイスは、前記固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第3の乾燥高分子色素組成物を備える、付記20~29のいずれかに記載の方法。
【0120】
31.前記試剤デバイスは、乾燥非高分子色素組成物を備える、付記20~30のいずれかに記載の方法。
32.前記試剤デバイスは、3種以上の別個の乾燥高分子色素組成物及び5種以上の別個の乾燥非高分子色素組成物を備える、付記20~31のいずれかに記載の方法。
33.前記固体支持体の表面は液体容器の内面を含み、前記配合することは、前記液体容器内に前記液体を配置することを含む、付記20~32のいずれかに記載の方法。
34.前記液体容器は0.1ml~250mlの範囲の容積を保持するように構成された、付記33に記載の方法。
35.前記液体容器はバイアルである、付記33または34に記載の方法。
【0121】
36.前記液体容器はマルチウェルプレートのウェルである、付記33または34に記載の方法。
37.前記液体容器が密封され、前記液体容器内に前記液体を配置する前に、前記封止材を取り外すことを含む、付記33~36のいずれかに記載の方法。
38.前記固体支持体はガラスを含む、付記20~37のいずれかに記載の方法。
39.前記固体支持体はプラスチックを含む、付記20~37のいずれかに記載の方法。
40.前記再構成された色素組成物をアッセイすることを更に含む、付記20~39のいずれかに記載の方法。
【0122】
41.前記アッセイすることは、前記再構成された色素組成物をフローサイトメトリーで分析することを含む、付記40に記載の方法。
42.前記再構成された色素組成物をある期間保存することを更に含む、付記20~41のいずれかに記載の方法。
43.前記再構成された色素組成物を遠隔地に輸送することを更に含む、付記20~42のいずれかに記載の方法。
44.第1及び第2の乾燥高分子色素組成物を、固体支持体の表面に対して明確に区別して配置することを含む、試剤デバイスの製造方法。
45.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物は、励起極大及び発光極大の少なくとも一方において互いに異なる第1及び第2の高分子色素を含む、付記44に記載の方法。
【0123】
46.前記第1及び第2の高分子色素は水溶性共役ポリマーである、付記45に記載の方法。
47.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物のそれぞれは安定剤を含む、付記44~46のいずれかに記載の方法。
48.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物を、前記固体支持体の表面上の別個の位置に配置することを含む、付記44~47のいずれかに記載の方法。
49.前記別個の位置の間の距離は0.1mm~200mmの範囲である、付記48に記載の方法。
50.前記第1及び第2の乾燥高分子色素を、前記固体支持体の表面の同一の位置に配置することを含む、付記44~47のいずれかに記載の方法。
【0124】
51.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物の間に非色素物質を配置することを更に含む、付記50に記載の方法。
52.第3の乾燥高分子色素組成物を、前記固体支持体の表面に対して明確に区別して配置することを含む、付記44~51のいずれかに記載の方法。
53.乾燥非高分子色素組成物を前記固体支持体の表面上に配置することを含む、付記44~52のいずれかに記載の方法。
54.前記試剤デバイスは、3種以上の別個の乾燥高分子色素組成物及び5種以上の別個の乾燥非高分子色素組成物を備える、付記44~53のいずれかに記載の方法。
55.前記固体支持体の表面は液体容器の内面を含む、付記44~54のいずれかに記載の方法。
【0125】
56.前記液体容器は0.1ml~250mlの範囲の容積を保持するように構成された、付記55に記載の方法。
57.前記液体容器はバイアルである、付記55または56に記載の方法。
58.前記液体容器はマルチウェルプレートのウェルである、付記55または56に記載の方法。
59.前記液体容器を密封することを更に含む、付記55~58のいずれかに記載の方法。
60.前記固体支持体はガラスを含む、付記44~59のいずれかに記載の方法。
【0126】
61.前記固体支持体はプラスチックを含む、付記44~59のいずれかに記載の方法。
62.前記固体支持体の表面上に標準蛍光標識ビーズ一式を配置することを更に含む、付記44~61のいずれかに記載の方法。
63.固体支持体と、前記固体支持体の表面に対して明確に区別して配置された第1及び第2の乾燥高分子色素組成物とを備える試剤デバイス、及び、前記試剤デバイスを保持するように構成された包装を備えるキット。
64.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物は、励起極大及び発光極大の少なくとも一方において互いに異なる第1及び第2の高分子色素を含む、付記63に記載のキット。
65.前記第1及び第2の高分子色素は水溶性共役ポリマーである、付記64に記載のキット。
【0127】
66.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物のそれぞれは安定剤を含む、付記63~65のいずれかに記載のキット。
67.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物が前記固体支持体の表面上の別個の位置に配置される、付記63~66のいずれかに記載のキット。
68.前記別個の位置の間の距離は0.1mm~200mmの範囲である、付記67に記載のキット。
69.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物が前記固体支持体の表面の同一の位置に配置される、付記63~66のいずれかに記載のキット。
70.前記第1及び第2の乾燥高分子色素組成物が非色素物質によって互いに分離されている、付記69に記載のキット。
【0128】
71.前記試剤デバイスは、前記容器の内側に明確に区別して配置された第3の乾燥高分子色素組成物を備える、付記63~70のいずれかに記載のキット。
72.前記試剤デバイスは乾燥非高分子色素組成物を備える、付記63~71のいずれかに記載のキット。
73.前記試剤デバイスは、3種以上の別個の乾燥高分子色素組成物及び5種以上の別個の乾燥非高分子色素組成物を備える、付記63~72のいずれかに記載のキット。
74.前記固体支持体の表面は液体容器の内面を含む、付記63~73のいずれかに記載のキット。
75.前記液体容器は0.1ml~250mlの範囲の容積を保持するように構成された、付記74に記載のキット。
【0129】
76.前記液体容器はバイアルである、付記74または75に記載のキット。
77.前記液体容器はマルチウェルプレートのウェルである、付記74または75に記載のキット。
78.前記液体容器が密封されている、付記74~77のいずれかに記載のキット。
79.前記固体支持体はガラスを含む、付記63~78のいずれかに記載のキット。
80.前記固体支持体はプラスチックを含む、付記63~78のいずれかに記載のキット。
81.標準蛍光標識ビーズ一式を備える、付記63~80のいずれかに記載のキット。
【0130】
上述の発明は、理解を明確にするために、図解及び実施例によってある程度詳細に記載してきたが、当業者には、本開示の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、これらに対して特定の変更及び改変を行い得ることが容易に明らかである。
【0131】
したがって、前述は、単に本開示の実施形態の原理を例示しているに過ぎない。当業者であれば、本明細書に明示的に記載されてはいないまたは示されてはいないが、本開示の実施形態の原理を具体化し、その趣旨及び範囲内に含まれる種々の構成を案出できるであろうことが理解されよう。更に、本明細書に記載される全ての実施例及び条件を表す文言は、かかる具体的に詳述された実施例及び条件に限定することなく、主として、読者が本開示の実施形態の原理を理解することを補助することを意図する。更に、本開示の原理、態様、及び実施形態、ならびにその具体的な実施例の全ての記述は、それらの構造的均等物及び機能的均等物の両方を包含することを意図している。更に、かかる均等物は、現在知られている均等物及び将来開発される均等物、すなわち、構造に拘わらず同様の機能を果たす任意の開発される要素の両方を含むことが意図される。したがって、本開示の実施形態の範囲は、本明細書に示され且つ記載された例示的な実施形態に限定されることを意図するものではない。むしろ、本開示の実施形態の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具象化される。
【0132】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に準じて、2016年4月22日出願の米国仮特許出願第62/326,640号の優先権を主張し、該出願の開示は参照により本明細書に援用される。