(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174211
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】アクティブOLEDディスプレイ、アクティブOLEDディスプレイの製造方法および化合物
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20221115BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20221115BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H05B33/22 D
H01L27/32
H05B33/22 A
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144426
(22)【出願日】2022-09-12
(62)【分割の表示】P 2019545350の分割
【原出願日】2018-02-20
(31)【優先権主張番号】17156902.3
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17156904.9
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17156906.4
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ヘッゲマン,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】フンメルト,マルクス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低電圧で駆動可能なディスプレイデバイス。
【解決手段】複数のOLED画素において、第1の正孔輸送層は、複数のOLED画素によって共有され、第1の正孔輸送層は(i)共有結合原子からなる、少なくとも1つの第1の正孔輸送マトリックス化合物、(ii)金属塩、および金属カチオン、ならびに少なくとも1つのアニオン、および/または、少なくとも4つの共有結合原子からなる、少なくとも1つのアニオン性配位子を含む電気的に中性の金属錯体から選択される少なくとも1つの電気的p-ドーパントを含む、ディスプレイデバイス。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのOLED画素を含む複数のOLED画素であって、前記OLED画素は、陽極、陰極、および有機層の積層体を含み、前記有機層の積層体は、前記陰極と前記陽極との間に、前記陰極と前記陽極とに接するように配置され、前記有機層の積層体は、第1の電子輸送層、第1の正孔輸送層、および当該第1の正孔輸送層と当該第1の電子輸送層との間に設けられた第1の発光層を含む、OLED画素、ならびに
前記複数のOLED画素の画素を別々に駆動するように構成された駆動回路
を含むディスプレイデバイスであって、
ここで、前記複数のOLED画素において、前記第1の正孔輸送層は、前記複数のOLED画素によって共有される共通の正孔輸送層として、前記有機層の積層体に設けられ、
前記第1の正孔輸送層は
(i)共有結合原子からなる、少なくとも1つの第1の正孔輸送マトリックス化合物、
(ii)金属塩、および金属カチオンならびに少なくとも1つのアニオンおよび/または少なくとも4つの共有結合原子からなる少なくとも1つのアニオン性配位子を含む電気的に中性の金属錯体から選択される少なくとも1つの電気的p-ドーパント、
を含み、
前記電気的p-ドーパントの前記金属カチオンは、
アルカリ金属;
アルカリ土類金属である、Pb、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Cd;
酸化状態(II)または酸化状態(III)である希土類金属;
Al、Ga、In;および
酸化状態(IV)以下のSn、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoならびにWから選択される、ディスプレイデバイス。
【請求項2】
前記アニオンおよび/またはアニオン性配位子が、少なくとも5個、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも7個、さらにより好ましくは少なくとも8個、最も好ましくは少なくとも9個の共有結合原子からなる、請求項1に記載のディスプレイデバイス。
【請求項3】
前記アニオンおよび/またはアニオン性配位子が、B、C、Nから選択される少なくとも1つの原子を含む、請求項1または2に記載のディスプレイデバイス。
【請求項4】
前記アニオンおよび/またはアニオン性配位子が、共有結合によって互いに結合している、B、CおよびNから選択される少なくとも2つの原子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のディスプレイデバイス。
【請求項5】
前記アニオンおよび/またはアニオン性配位子が、H、N、O、F、Cl、BrおよびIから選択される少なくとも1つの末端原子を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のディスプレイデバイス。
【請求項6】
前記アニオンおよび/またはアニオン性配位子が、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化(ヘテロ)アリール、ハロゲン化(ヘテロ)アリールアルキル、ハロゲン化アルキルスルホニル、ハロゲン化(ヘテロ)アリールスルホニル、ハロゲン化(ヘテロ)アリールアルキルスルホニル、シアノから選択される少なくとも1つの電子求引基を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のディスプレイデバイス。
【請求項7】
前記電子求引基が過ハロゲン化基である請求項6に記載のディスプレイデバイス。
【請求項8】
前記過ハロゲン化電子求引基が過フッ素化基である請求項7に記載のディスプレイデバイス。
【請求項9】
前記p-ドーパントの前記金属カチオンが、Li(I)、Na(I)、K(I)、Rb(I)、Cs(I);Mg(II)、Ca(II)、Sr(II)、Ba(II)、Sn(II)、Pb(II)、Mn(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、Zn(II)、Cd(II)、Al(III);酸化状態(III)の希土類金属、V(III)、Nb(III)、Ta(III)、Cr(III)、Mo(III)、W(III)、Ga(III)、In(III)およびTi(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)、Sn(IV)から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載のディスプレイデバイス。
【請求項10】
前記p-ドーパント分子において、前記金属カチオンに最も近い前記アニオンおよび/または前記アニオン性配位子の原子が、C原子またはN原子である、請求項3~9のいずれか1項に記載のディスプレイデバイス。
【請求項11】
1,2-ジクロロエタン中の1つ以上のプロトンの添加によって前記アニオンおよび/またはアニオン性配位子から形成される電気的に中性の共役酸の酸性度が、HClの酸性度よりも高く、好ましくはHBrの酸性度よりも高く、より好ましくはHIの酸性度よりも高く、さらにより好ましくはフルオロ硫酸の酸性度よりも高く、最も好ましくは過塩素酸の酸性度よりも高く、1,2-ジクロロエタン中の酸性度の測定が、Journal of Organic Chemistry (2011), 76(2), 391-395 の開示に従って行われる請求項1~10のいずれか1項に記載のディスプレイデバイス。
【請求項12】
前記電気的p-ドーパントが、標準量子化学法によって計算された最低空軌道のエネルギー準位を有し、標準量子化学法によって計算された共有結合正孔輸送化合物の最高被占軌道のエネルギー準位を超え、絶対真空尺度で少なくとも0.5eV、好ましくは少なくとも0.6eV、より好ましくは少なくとも0.8eV、さらにより好ましくは少なくとも1.0eV、最も好ましくは少なくとも1.2eVを示し、前記標準量子化学法は、基底系def2-TZVPを有するDFT機能B3LYPを使用するソフトウェアパッケージTURBOMOLE を使用する、請求項1~11のいずれか1項に記載のディスプレイデバイス。
【請求項13】
前記第1の正孔輸送マトリックス化合物が有機化合物であり、好ましくは少なくとも6個、好ましくは少なくとも10個の非局在化電子の共役系を含む有機化合物であり、また好ましくは、前記第1の正孔輸送マトリックス化合物が少なくとも1個のトリアリールアミン構造部分を含み、より好ましくは前記第1の正孔輸送マトリックス化合物が少なくとも2個のトリアリールアミン構造部分を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のディスプレイデバイス。
【請求項14】
前記方法が、前記第1の正孔輸送マトリックス化合物および前記電気的p-ドーパントが50℃を超える温度で曝露され、相接する少なくとも1つの工程を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載のディスプレイデバイスの製造方法。
【請求項15】
(i)前記p-ドーパントおよび前記第1の正孔輸送マトリックス化合物を、溶媒中に分散させ、
(ii)当該分散液を、固体支持体上に堆積させ、かつ
(iii)前記溶媒を、高温で蒸発させる、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
減圧下、好ましくは1×10-2Pa未満の圧力および50℃を超える温度、より好ましくは5×10-2Pa未満の圧力および80℃を超える温度、さらにより好ましくは1×10-3Pa未満の圧力および120℃を超える温度、最も好ましくは5×10-4Pa未満の圧力および150℃を超える温度で、前記p-ドーパントを蒸発させる工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記p-ドーパントが、固体水和物の形態で使用される、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記p-ドーパントが、0.10重量%未満の水、好ましくは0.05重量%未満の水を含む無水固体として使用される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
式(I)を有する化合物;
【化1】
式中、
【数1】
は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属およびAl、Ga、In、Sn、Pb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびCdから選択される金属のx価のカチオンであり、
xが1の場合、Mはアルカリ金属から選択され、xが2の場合、Mはアルカリ土類金属、Pb、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびCdから選択され、xが2または3の場合、Mは希土類金属から選択され、xが3の場合、Al、Ga、In、xが2、3または4の場合、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、およびxが2または4の場合、Snであり、
B
1およびB
2は、過ハロゲン化C
3~C
20アルキル、C
3~C
20シクロアルキルまたはC
3~C
20アリールアルキルから独立して選択され、
ただし、式(I)を有する化合物において
a)Mがアルカリ金属、Mg、CaおよびZnから選択され、かつB
1およびB
2が過フッ素化直鎖第一級アルキルから独立して選択されること、または
b)MがLiであり、かつB
1およびB
2が過フッ素化イソプロピルであること、
は、除外される。
【請求項20】
Mが、Mg(II)、Mn(II)およびZn(II)から選択される、請求項18に記載の化合物。
【請求項21】
固体形態、好ましくは0.10重量%未満の水を含む固体形態、より好ましくは0.05重量%未満の水を含む固体形態、最も好ましくは0.05重量%未満の水を含む結晶性固体形態の、請求項18または19に記載の化合物。
【請求項22】
結晶性固体水和物の形態、好ましくは水分含有量が、
(i)30.33~36.33モル%、好ましくは31.00~35.66モル%、より好ましくは31.00~35.66モル%、さらにより好ましくは31.66~35.00モル%、さらにより好ましくは32.33~34.33モル%、最も好ましくは33.00~33.66モル%、または
(ii)18.20~21.80モル%、好ましくは18.60~21.40モル%、より好ましくは19.00~21.00モル%、さらにより好ましくは19.40~20.60モル%、最も好ましくは19.80~20.20モル%
である結晶性固体水和物の形態である、請求項18または19に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のOLED画素を有し、少なくとも2つの画素によって共有される正孔注入層および/または正孔輸送層中に非酸化性p-ドーパントを含むアクティブOLEDディスプレイ、アクティブOLEDディスプレイの製造方法、および当該ディスプレイに特に好適な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
共通の正孔輸送層を共有する複数のOLED画素を含むアクティブOLEDディスプレイに関して、陽極と発光層との間に配置され、複数の画素によって共有される層に使用される半導体材料には、困難な要件が課せられる。一方では、前記材料は可能な限り低い作動電圧で、個々の画素の個々の駆動を可能にしなければならない。もう一方では、隣接する画素間のいわゆる電気的クロストークは回避されるべきである。参照により本明細書に援用されるWO2016/050834は、これらの矛盾する要件が、1×10-3S・m-1および1×10-8S・m-1、最も好ましくは1×10-5S・m-1および1×10-6S・m-1の間の導電率を有するp-ドープされた層によって満たされ得ることを教示する。このような低導電率のp-ドープされた正孔輸送層は、深いHOMO準位の観点から十分にドープされないマトリックスにおいて、強い電子受容性ラジアレン化合物のような通常の最新技術のレドックスドーパントを使用することで達成可能である。しかしながら、これらの基準を満たしつつ、例えば加工性および装置安定性の観点からの他のパラメータが改善されたp-ドーパントが、依然として求められている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、これらの改善を可能にする、改善されたアクティブOLEDディスプレイ、および改善された材料を提供することである。一態様では、アクティブOLEDディスプレイの隣接画素間の電気的クロストークが低減される。別の一態様では、例えば、表示部又はその特定の層の高温での処理を含む任意のプロセス工程中における改善されたデバイス安定性に関して、堅牢なデバイスの製造を可能にし得る。
【0004】
前記目的は、
少なくとも2つのOLED画素を含む複数のOLED画素であって、前記OLED画素は、陽極、陰極、および有機層の積層体を含み、前記有機層の積層体は、前記陰極と前記陽極との間に、前記陰極と前記陽極とに接するように配置され、前記有機層の積層体は、第1の電子輸送層、第1の正孔輸送層、および当該第1の正孔輸送層と当該第1の電子輸送層との間に設けられた第1の発光層を含む、OLED画素、ならびに
前記複数のOLED画素の画素を別々に駆動するように構成された駆動回路
を含むディスプレイデバイスであって、
ここで、前記複数のOLED画素において、前記第1の正孔輸送層は、前記複数のOLED画素によって共有される共通の正孔輸送層として、前記有機層の積層体に設けられ、
前記第1の正孔輸送層は
(i)共有結合原子からなる、少なくとも1つの第1の正孔輸送マトリックス化合物、
(ii)金属塩、および金属カチオンならびに少なくとも1つのアニオンおよび/または少なくとも4つの共有結合原子からなる少なくとも1つのアニオン性配位子を含む電気的に中性の金属錯体から選択される少なくとも1つの電気的p-ドーパント、
を含み、
前記電気的p-ドーパントの前記金属カチオンは、
アルカリ金属;
アルカリ土類金属である、Pb、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Cd;
酸化状態(II)または酸化状態(III)である希土類金属;
Al、Ga、In;および
酸化状態(IV)以下のSn、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoならびにWから選択される、ディスプレイデバイスによって、達成される。
【0005】
一実施形態では、アニオンおよび/またはアニオンリガンドが酸素原子を介して、好ましくは2つの酸素原子を介して、p型ドーパントの金属カチオンに結合される。
【0006】
用語「結合した」とは、金属カチオンと酸素原子との間の距離が、金属カチオンとアニオンおよび/またはアニオン性配位子の任意の他の原子との間の距離よりも短い、p-ドーパントの構造を含むことを理解されたい。
【0007】
例えば、2価および/または3価の金属のいくつかのビス(スルホニル)イミド錯体の固体構造研究は、ビス(スルホニル)イミドリガンドが、イミド窒素原子によってではなく、スルホニル基の酸素原子によって中心金属原子に接合され得ることを明らかにした。ここで、実際には、前記酸素原子に比べて前記イミド窒素原子は、中心金属原子からより離れて配置され得る。
【0008】
一実施形態では、前記金属塩中および/または前記金属カチオンに結合した前記金属錯体中にある前記アニオンおよび/または前記アニオン性配位子の酸素原子は、ジクロロエタン中で、前記アニオンおよび/または前記アニオン性配位子の少なくとも1つの非酸素原子よりも弱い塩基性を有する。
【0009】
同様に、別の一実施形態では、前記金属塩中および/または前記金属カチオンに結合した前記金属錯体中にある前記アニオンおよび/または前記アニオン性配位子の酸素原子の各々は、ジクロロエタン中で、前記アニオンおよび/または前記アニオン性配位子の少なくとも1つの非酸素原子よりも弱い塩基性を有する。
【0010】
ある環境中、例えば1,2-ジクロロエタン中のアニオンおよび/またはアニオン性配位子中の原子の塩基性は、同じ環境中で1つ以上のプロトンを添加することによって形成される電気的に中性の共役酸の対応する互変異性体の酸性度に反比例することを理解されたい。種々の酸を比較するための多用途ツールとしての1,2-ジクロロエタン中の酸性度の測定が、Journal of Organic Chemistry (2011),76(2),391-395 に記載されている。アニオンおよび/またはアニオン性配位子中の特定の原子の塩基性を評価しなければならない場合、電気的に中性の共役酸の「対応する互変異性体」は、前記特定の原子へプロトンを付加することで形成される酸であると理解される。
【0011】
一実施形態では、前記アニオンおよび/または前記アニオン性配位子が少なくとも5個、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも7個、さらにより好ましくは少なくとも8個、最も好ましくは少なくとも9個の共有結合原子からなる。
【0012】
一実施形態では、前記アニオンおよび/または前記アニオン性配位子が、B、C、Nから選択される少なくとも1つの原子を含む。
【0013】
一実施形態では、前記アニオンおよび/または前記アニオン性配位子が、共有結合によって互いに結合しているB、CおよびNから選択される少なくとも2つの原子を含む。
【0014】
一実施形態では、前記アニオンおよび/または前記アニオン性配位子が、H、N、O、F、Cl、BrおよびIから選択される少なくとも1つの末端原子を含む。「末端原子」とは、アニオンおよび/またはアニオン性配位子の1つの原子のみに共有結合する原子だと理解されたい。反対に、アニオンおよび/またはアニオン性配位子の少なくとも2つの他の原子に共有結合した原子は、内部原子として割り当てられる。
【0015】
共有結合とは、2つの評価された原子間の電子密度共有を伴う任意の結合相互作用だと理解されたい。ここで、前記結合は、ファンデルワールス分散相互作用よりも強く、便宜上、結合エネルギー10kJ/molを任意の下限とみなすことができる。この意味では、前記用語「結合」は、配位結合または水素結合も含む。しかし、水素結合を含むアニオンおよび/またはアニオン性配位子は、特に好ましくない。
【0016】
一実施形態では、前記アニオンおよび/または前記アニオン性配位子がハロゲン化アルキル、ハロゲン化(ヘテロ)アリール、ハロゲン化(ヘテロ)アリールアルキル、ハロゲン化アルキルスルホニル、ハロゲン化(ヘテロ)アリールスルホニル、ハロゲン化(ヘテロ)アリールアルキルスルホニル、シアノから選択される少なくとも1つの電子求引基を含む。簡潔にするために、ハロゲン化(ヘテロ)アリールは「ハロゲン化アリールまたはハロゲン化ヘテロアリール」を意味し、ハロゲン化(ヘテロ)アリールアルキルは「ハロゲン化ヘテロアリールアルキルまたはハロゲン化アリールアルキル」を意味し、ハロゲン化(ヘテロ)アリールスルホニルは「ハロゲン化ヘテロアリールスルホニルまたはハロゲン化アリールスルホニル」を意味し、およびハロゲン化(ヘテロ)アリールアルキルスルホニル「ハロゲン化ヘテロアリールアルキルスルホニルまたはハロゲン化アリールアルキルスルホニル」を意味することを理解されたい。
【0017】
一実施形態では、前記電子求引基が過ハロゲン化基である。用語「ハロゲン化された」とは末端水素原子または内部水素原子を含む基の少なくとも1つの水素原子がF、Cl、BrおよびIから選択される原子で置き換えられていることを意味すると理解されたい。さらに、過ハロゲン化基において、置換されていない基に含まれる全ての水素原子がF、Cl、BrおよびIから独立して選択される原子で置き換えられていることと理解されたい。したがって、過フッ素化基のもとでは、水素原子を置き換える全てのハロゲン原子が、フッ素原子だと理解されたい。
【0018】
一実施形態では、前記p-ドーパントの前記金属カチオンがLi(I)、Na(I)、K(I)、Rb(I)、Cs(I);Mg(II)、Ca(II)、Sr(II)、Ba(II)、Sn(II)、Pb(II)、Mn(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、Zn(II)、Cd(II)、Al(III);酸化状態(III)の希土類金属、V(III)、Nb(III)、Ta(III)、Cr(III)、Mo(III)、W(III)、Ga(III)、In(III)およびTi(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)、Sn(IV)から選択される。
【0019】
一実施形態では、前記p-ドーパント分子において、前記金属カチオンに最も近い前記アニオンおよび/または前記アニオン性配位子の原子が、C原子またはN原子である。
【0020】
一実施形態では、1,2-ジクロロエタン中の1つ以上のプロトンの添加によって前記アニオンおよび/またはアニオン性配位子から形成される電気的に中性の共役酸の酸性度がHClの酸性度よりも高く、好ましくはHBrの酸性度よりも高く、より好ましくはHIの酸性度よりも高く、さらにより好ましくはフルオロ硫酸の酸性度よりも高く、最も好ましくは過塩素酸の酸性度よりも高い。
【0021】
一実施形態では、前記電気的p-ドーパントが、標準量子化学法によって計算された最低空軌道のエネルギー準位を有し、標準量子化学法によって計算された共有結合正孔輸送化合物の最高被占軌道のエネルギー準位を超え、絶対真空尺度で少なくとも、0.5eV、好ましくは少なくとも0.6eV、より好ましくは少なくとも0.8eV、さらにより好ましくは少なくとも1.0eV、最も好ましくは少なくとも1.2eVを示す。
【0022】
前記標準量子化学法は、基底系def2-TZVPを有するDFT機能B3LYPを使用するソフトウェアパッケージTURBOMOLEであってもよい。
【0023】
一実施形態では、前記第1の正孔輸送マトリックス化合物が有機化合物であり、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも10個の非局在化電子の共役系を含む有機化合物であり、また好ましくは前記第1の正孔輸送マトリックス化合物が少なくとも1個のトリアリールアミン構造部分を含み、より好ましくは第1の正孔輸送マトリックス化合物が少なくとも2個のトリアリールアミン構造部分を含む。
【0024】
前記目的はさらに、前述の実施形態のいずれかに記載のディスプレイデバイスを製造するための方法によって達成される。前記方法は、前記第1の正孔輸送マトリックス化合物および前記電気的p-ドーパントが50℃を超える温度に曝露され、相接する少なくとも1つの工程を含む。
【0025】
「相接」は、1つの凝縮相中に両方の成分が存在すること、または共通の相界面を共有する2つの凝縮相中にそれらの成分が存在することを意味すると理解されたい。
【0026】
前記方法は、減圧下、好ましくは1×10-2Pa未満の圧力および50℃を超える温度、より好ましくは5×10-2Pa未満の圧力および80℃を超える温度、さらにより好ましくは1×10-3Pa未満の圧力および120℃を超える温度、最も好ましくは5×10-4Pa未満の圧力および150℃を超える温度で、前記p-ドーパントを蒸発させる少なくとも1つの工程をさらに含んでもよい。
【0027】
一実施形態では、前記方法は以下の工程を含み得る;
(i)前記p-ドーパントおよび前記第1の正孔輸送マトリックス化合物を溶媒中に分散させる工程、
(ii)該分散液を固体支持体上に堆積させる工程、および
(iii)前記溶媒を高温で蒸発させる工程。
【0028】
一実施形態では、前記p-ドーパントが固体水和物の形態で使用されてもよい。
【0029】
別の一実施形態では、前記p-ドーパントが、0.10重量%未満の水、好ましくは0.05重量%未満の水を含む無水固体として使用されてもよい。
【0030】
前記目的は、式(I)を有する化合物によってさらに達成される;
【0031】
【0032】
式中、
【0033】
【数1】
は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属およびAl、Ga、In、Sn、Pb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびCdから選択される金属のx価のカチオンであり、
xが1の場合、Mはアルカリ金属から選択され、xが2の場合、Mはアルカリ土類金属、Pb、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびCdから選択され、xが2または3の場合、Mは希土類金属から選択され、xが3の場合、Al、Ga、In、xが2、3または4の場合、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、およびxが2または4の場合、Snであり、
B
1およびB
2は、過ハロゲン化C
3~C
20アルキル、C
3~C
20シクロアルキルまたはC
3~C
20アリールアルキルから独立して選択され、
ただし、式(I)を有する化合物において
a)Mがアルカリ金属、Mg、CaおよびZnから選択され、かつB
1およびB
2が過フッ素化直鎖第一級アルキルから独立して選択されること、または
b)MがLiであり、かつB
1およびB
2が過フッ素化イソプロピルであること、
は、除外される。
【0034】
一実施形態では、Mが、Mg(II)、Mn(II)およびZn(II)から選択される。
【0035】
一実施形態では、式(I)に係る化合物が、固体形態で、好ましくは0.10重量%未満の水を含む固体形態で、より好ましくは0.05重量%未満の水を含む固体形態で、最も好ましくは0.05重量%未満の水を含む結晶性固体形態で提供される。
【0036】
別の実施形態では、式(I)による化合物が、結晶性固体水和物の形態、好ましくは水分含有量が、
(i)30.33~36.33モル%、好ましくは31.00~35.66モル%、より好ましくは31.00~35.66モル%、さらにより好ましくは31.66~35.00モル%、さらにより好ましくは32.33~34.33モル%、最も好ましくは33.00~33.66モル%、または
(ii)18.20~21.80モル%、好ましくは18.60~21.40モル%、より好ましくは19.00~21.00モル%、さらにより好ましくは19.40~20.60モル%、最も好ましくは19.80~20.20モル%
である結晶性固体水和物の形態で提供される。
【発明の効果】
【0037】
有機半導体デバイスに含まれる材料の重要な特性は、それらの導電率である。WO2016/050834に記載されているように、構造化された陽極、および少なくとも1つの正孔輸送層および/または正孔注入層を共有する少なくとも2つの画素を有するディスプレイデバイスでは、共有される層の制限された導電率が、ディスプレイにおいて望ましくない電気的クロストークを低準位とするために有利に働く場合がある。一方、共有される層の導電率が非常に低いと、ディスプレイの動作電圧が増加する可能性がある。WO2016/050834では、これらの矛盾する要件の間における折り合いを表す導電率範囲を教示している。
【0038】
しかしながら、本願の著者らは驚くべきことに、特定の金属塩および金属錯体を基にした電気的p-ドーパントが、特定の条件下で、純粋なマトリックスで観察される伝導率に対応する準位を超えて自由電荷キャリアの濃度を実質的に増加させることなく、最新技術の陽極から最新技術の正孔輸送マトリックスへの安定した正孔注入を提供するp-ドープされた材料および/またはp-ドープされた層を製造することを可能にすることを見出した。
【0039】
この驚くべき発見は、WO2016/05083に開示される1×10-5S・m-1~1×10-6S・m-1の間の最適範囲未満の導電率を有するとしても、十分に匹敵する電圧で動作するWO2016/050834のディスプレイを構築する機会を提供した。本願のドーパントは、利用可能な測定手段での検出限界付近か、またはそれ未満である多数の画素によって共有されるp-ドープされた層における電気導電率の準位で、WO2016/050834のディスプレイデバイスの効率的な動作を可能にする。したがって、本願のドーパントは、OLEDディスプレイの電気的クロストークをさらに抑制することを可能にし、また電気的クロストークが非常に低い準位を示す効率的なOLEDディスプレイを設計するための新しい機会を提供する。著者らによってなされたこれらの観察を、さらにより詳細に記載する。
【0040】
本出願人により出願され、ここで参照により本明細書に援用される現在EP3133663として公開されている先の出願EP15181385において、著者らの数人は、有機電気デバイスにおける正孔注入材料として、以下に示すような幾つかの金属イミドの使用の成功を記載している。
【0041】
【0042】
類似の金属イミド化合物のさらなる調査と並行して、著者らは驚くべきことに、いくつかの構造的に全く異なる化合物、すなわち、以下のような金属ホウ酸塩錯体を類似の方法で使用可能であることも見出した。
【0043】
【0044】
著者らの数人は、さらなる出願であるEP17209023において、亜鉛スルホンアミド錯体の昇華によって製造され、C
42F
48N
6O
13S
6Zn
4の組成を有し、単位格子寸法a=14.1358(5)Å、α=90°;b=16.0291(6)Å、β=113.2920(10);c=15.9888(6)Å;γ=90°および単位格子体積3327.6(2)Å
3を有する、空間群P1211に属する単斜晶格子中で結晶化する化合物E3を開示した。この化合物は、
図5に示す逆配位錯体構造を有する。具体的には、錯体の分子が、四面体に配置された4つの亜鉛ジカチオンからなる第一配位圏、および6つのスルホニルアミド性配位子からなる第二配位圏で囲まれた中心酸素ジアニオンを含み、Zn
4クラスターの6つの端の全てを三原子-N-S-Oブリッジで架橋する。
【0045】
最も驚くべきことに、著者らはこれらの構造的に異なる化合物の全てが、ドープされた材料および/または層の製造中のプロセス条件に依存して、それらのp-ドープ作用において2つの異なる様式を同様に示すことを見出した。
【0046】
第1の様式では、これらの化合物でドープされた半導体材料および/または層(金属塩および/またはアニオン性配位子を有する電気的に中性の金属錯体として一般化することができる)は、典型的なレドックス(redox) p-ドーパントでドープされた材料および/または層と比較してわずかに低いが、十分に測定可能な電気伝導率を示す。この様式は、微量であっても、ドープされた材料および/または層が酸素に曝露される場合に起こるようである。
【0047】
第2の様式では、開示された金属塩および/またはアニオン性配位子を含む電気的に中性の金属錯体でドープされた半導体材料および/または層は、測定可能な電気伝導率をほとんど示さない。この様式は、ドープされた材料および/または層への酸素の接触がそのプロセス全体を通して厳密に回避される場合に生じる。著者らは、第2の様式でドープされた材料および/または層の極めて低い導電率にもかかわらず、特に正孔輸送層または正孔注入層としてそのような材料および/または層を含むデバイスが、優れた正孔注入に対応する電気的挙動を依然として示すことを見出した。
【0048】
p-ドープ作用の前記2つの様式の存在は、本開示のp-ドーパントに対して、有機電子デバイス、特に共通の正孔輸送層を共有する多数の画素に構造化された陽極を含むディスプレイ中の使用において、固有の汎用性を提供する。共通のp-ドープされた層の導電率は、第1のドーピング様式を利用することによってWO2016/050834で教示されている制限に設定するか、または第2のドーピング様式を利用してこれらの制限未満に設定することができる。
【0049】
さらに、著者らによってなされた最近の研究は、提示された金属塩および/または金属錯体でドープされた材料および/または層が特にp-ドーピング作用の上記の第2の様式に従って提供された材料において、好ましい熱安定性を示し得るという示唆を提供した。これらの特性はこのようなディスプレイを別個の画素に構造化する必要性がしばしば、pドープ層の熱治療を必要とするか、または前に堆積されたpドープ層の不可避な加熱をもたらす可能性がある別の治療を使用することを必要とするので、AMOLEDディスプレイにおける開示されたpドーパントの使用に再び特に適している可能性がある。
【0050】
本発明の特定の実施形態において、著者らは、EP15181385において試験された化合物と比較して、より嵩高いフッ素化側鎖を含む新規のアミド化合物を提供した。この変化により、新規化合物は、実質的に非吸湿性であり、高い空気湿度でも固体のままであるという好ましい貯蔵時の特性を得たが、LiTFSIおよび類似のTFSI塩は潮解する傾向を有する。
【発明の詳細な説明】
【0051】
薄層試料の導電率は、例えば、いわゆる2点法によって測定することができる。このとき、薄層に電圧を適用し、前記層を流れる電流を測定する。抵抗、導電率はそれぞれ、接触の幾何学的形状と、試料の層の厚さとを考慮することによって得られる。本出願の著者らによって使用された導電率測定のための実験的設定は、特に酸素を含む空気との堆積層の接触に関して、制御された条件下で、p-ドープされた層の堆積ならびに導電率測定を可能にする。この点に関して、一連の堆積~測定の全ては、制御された空気を含むグローブボックス内もしくはチャンバ内で溶液処理技術を使用して実行されるか、または、完全に真空のチャンバ内で第2の様式でドープされた材料および/または層に対して適切な方法として選択される真空熱蒸着(VTE)を使用して実行され得る。
【0052】
第1の正孔輸送層の導電率は、1×10-6S・m-1未満、好ましくは1×10-7S・m-1未満、より好ましくは1×10-8S・m-1未満であってもよい。また、使用する導電率測定法の検出限界が1×10-6S・m-1未満であれば、第1の正孔輸送層の導電率が検出限界未満であることが好ましい。
【0053】
第1正孔輸送層(HTL)は、OLEDディスプレイ内の複数のOLED画素のために形成されてもよい。一実施形態では、第1のHTLが、OLEDディスプレイ内の複数の画素のうち、すべての画素にわたって延在することができる。同様に、陰極は、複数の画素のための共通の陰極として形成されてもよい。共通の陰極は、OLEDディスプレイ内の複数の画素の全ての画素にわたって延在することができる。全ての個々の画素は、他の個々の画素の陽極に接触しないことがある、それ自体の陽極を有することができる。
【0054】
任意選択で、複数のOLED画素のうちの1つ以上について、以下の有機層、すなわち正孔阻止層、電子注入層、および/または電子阻止層を設けることができる。
【0055】
さらに、アクティブOLEDディスプレイは、複数の画素の個々の画素を別々に駆動するように構成された駆動回路を有する。一実施形態では、別々に駆動する工程が個々の画素に適用される駆動電流の別々の制御を含むことができる。
【0056】
第1のHTLは、p-ドーパントで電気的にドープされた正孔輸送マトリックス(HTM)材料から作製される。正孔輸送マトリックス材料は、2つ以上のp-ドーパントで電気的にドープされてもよい。HTM材料は1つ以上のHTM化合物からなってもよいが、正孔輸送材料という用語は、本出願全体を通して、少なくとも1つの正孔輸送マトリックス化合物を含む全ての半導体材料に対して使用されるより広い用語であることを理解されたい。正孔輸送マトリックス材料は、特に限定されない。一般に、正孔輸送マトリックス材料は、p-ドーパントを埋め込むことができる共有結合原子からなる任意の材料である。この点で、シリコンまたはゲルマニウムのような主に共有結合を有する無機無限結晶、またはシリケートガラスのような極めて架橋された無機ガラスは、正孔輸送マトリックス材料の定義の範囲内に入らない。好ましくは、正孔輸送マトリックス材料が1つ以上の有機化合物からなり得る。
【0057】
第1の正孔輸送層の厚さは、150nm未満、100nm未満、50nm未満、40nm未満、30nm未満、20nm未満、または15nm未満であり得る。
【0058】
第1の正孔輸送層の厚さは、3nm超、5nm超、8nm超、または10nm超であり得る。
【0059】
第1の正孔輸送層の一実施形態では、p-ドーパントは均一かつ等方的に分布され得る。別の一実施形態では、p-ドーパントはマトリックスと均一に混合されてもよいが、p-ドーパントの濃度は、第1の正孔輸送層中で勾配を示してもよい。一実施形態では、第1の正孔輸送層が副層を含み得、ここで、前記p-ドーパントの量は、重量および/または体積において、層に追加で含まれ得る他の成分の総量を超えてもよい。
【0060】
一実施形態では、副層の総重量に基づくp-ドーパントの重量濃度は、副層の総重量に対して50%を超えてもよく、あるいは副層の総重量に対して、p-ドーパントは少なくとも75重量%、あるいは少なくとも90重量%、あるいは少なくとも95重量%、あるいは少なくとも98重量%、あるいは少なくとも99重量%、あるいは少なくとも99.5重量%、あるいは少なくとも99.9重量%で形成されてもよい。便宜上、p-ドーパントのみを堆積することによって製造される第1の輸送層の任意の副層は、純水な(正孔注入)p-ドーパント副層として割り当てることができる。
【0061】
第1の正孔輸送層と同様に、金属塩および/または金属錯体と接触する類似の正孔輸送マトリックスの組み合わせを含み得るディスプレイデバイス中の任意の他の層にも、同じことが当てはまり得る。
【0062】
例えば、ディスプレイデバイスに含まれる画素は、一実施形態ではp-ドーパントで均一にドープされた正孔輸送マトリックスからなる正孔生成層を含んでもよい。別の一実施形態では、正孔生成層は、p-ドーパントの量が重量および/または体積において、他の成分の総量を超える副層を含んでもよい。
【0063】
陽極は、インジウムスズ酸化物(ITO)またはアルミニウム亜鉛酸化物(AZO)のような透明導電性酸化物(TCO)から作製されてもよい。あるいは、陽極は、半透明の陽極となる1つ以上の薄い金属層から作製されてもよい。別の一実施形態では、陽極が可視光に対して透明でない厚い金属層から作製されてもよい。
【0064】
OLED画素は、第1の正孔輸送層と発光層との間に設けられた電子阻止層(EBL)を含んでもよい。EBLは、第1のHTLおよびEMLと直接接触していてもよい。電子阻止層は、有機正孔輸送マトリックス材料から作製される電気的にドープされていない層(言い換えれば、電子素子層が電気的ドーパントを含まない)であってもよい。第1の正孔輸送層の有機正孔輸送マトリックス材料の組成は、電子阻止層の有機正孔輸送マトリックス材料の組成と同じであってもよい。本発明の別の一実施形態では、両方の正孔輸送マトリックス材料の組成は異なっていてもよい。
【0065】
EBLの層厚は、30nm超、50nm超、70nm超、100nm超、または110nm超であり得る。
【0066】
EBLの厚さは、200nm未満、170nm未満、140nm未満、または130nm未満であり得る。EBLと比較して、共通HTLは、約1段階薄くてもよい。
【0067】
電子阻止層を形成する各化合物は、共通の正孔輸送層の正孔輸送マトリックス材料を形成する任意の化合物の最高被占軌道(HOMO)準位よりも高い、HOMOエネルギー準位を有し得る。前記HOMOエネルギー準位は、真空エネルギー準位がゼロの場合と比較した絶対尺度で表される。
【0068】
電子阻止層の有機マトリックス材料は、正孔輸送層のマトリックス材料の正孔移動度以上の正孔移動度を有し得る。
【0069】
共通のHTLおよび/またはEBLの正孔輸送マトリックス(HTM)材料は、非局在化電子の共役系を含む化合物から選択することができ、前記共役系は、少なくとも2つの第3級アミン窒素原子の孤立電子対を含む。
【0070】
ドープされた正孔輸送層および/または共通正孔輸送層の正孔輸送マトリックス材料に好適な化合物は、公知の正孔輸送マトリックス(HTM)、例えばトリアリールアミン化合物から選択することができる。ドープされた正孔輸送材料のためのHTMは、非局在化電子の共役系を含む化合物であってもよく、前記共役系は少なくとも2つの第3級アミン窒素原子の孤立電子対を含む。例えば、N4,N4’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N4,N4’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(HT1)、およびN4,N4,N4”,N4”-テトラ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-[1,1’:4’,1”-テルフェニル]-4,4”-ジアミン(HT4)である。テルフェニルジアミンHTMの合成は、例えば、WO2011/134458A1、US2012/223296A1またはWO2013/135237A1に記載されており;1,3-フェニレンジアミンマトリックスは例えば、WO2014/060526A1に記載されている。これらの文書は、本明細書に参考として援用される。多くのトリアリールアミンHTMは市販されている。
【0071】
OLEDディスプレイの発光層は、前記副領域の各々は複数の画素のうちの1つに割り当てられる。ディスプレイの発光層の副領域に対応する個々の画素の発光層は、隣接する画素の発光層に接触しないことが好ましい。ディスプレイ製造プロセスでは、個々の画素のEMLを含む有機層が、例えば、上面発光、底面発光、または底面発光マイクロキャビティのいずれかにおいて、ファインメタルマスク(FMM)、レーザ励起熱転写法(LITI)、および/またはインクジェット印刷(IJP)などの公知の方法によってパターン化され得る(例えば、Chung et al. (2006), 70.1: Invited Paper: Large-Sized Full
Color AMOLED TV: Advancements and Issues. SID Symposium Digest of Technical Papers, 37: 1958-1963. doi: 10.1889/1.2451418; Lee et al. (2009), 53.4: Development
of 31-Inch Full-HD AMOLED TV Using LTPS-TFT and RGB FMM. SID Symposium Digest of Technical Papers, 40: 802-804. doi: 10.1889/1.3256911を参照のこと)。RGB位置決めが設けられてもよい。
【0072】
複数のOLED画素について、共通の電子輸送層は、複数のOLED画素の有機層の積層体中に設けられた電子輸送層によって形成されてもよい。
【0073】
共通電子輸送層は、有機電子輸送マトリックス(ETM)材料を含むことができる。さらに、共通電子輸送層は、1つ以上のn-ドーパントを含んでもよい。ETMに好適な化合物は、例えば文献EP1970371A1またはWO2013/079217A1に開示されているように、芳香族またはヘテロ芳香族の構造部分を含む。
【0074】
陰極は、低い仕事関数を有する金属または金属合金から作製することができる。TCOから作製された透明な陰極も、当該技術分野で周知である。
【0075】
有機層の積層体は、2000g/mol未満の分子量を有する有機化合物から作製することができる。また別の一実施形態では、有機化合物が1000g/mol未満の分子量を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0076】
以下には、さらなる実施形態を、図面を参照した実施例によって、さらに詳細に説明する。図面では以下のものが示されている。
【
図1】ディスプレイが複数のOLED画素を有する、アクティブOLEDディスプレイの概略の図である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略の断面図である。
【
図3】本発明の例示的な実施形態に係るOLEDの概略の断面図である。
【
図4】本発明の例示的な実施形態に係る、電荷発生層を含むタンデムOLEDの概略の断面図である。
【
図5】略式C
42F
48N
6O
13S
6Zn
4を有する逆配位錯体E3の結晶構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1は、OLEDディスプレイ1に設けられた複数のOLED画素2、3、4を有するアクティブOLEDディスプレイ1の概略の図を示す。
【0078】
OLEDディスプレイ1において、各画素2、3、4には、駆動回路(図示せず)に接続される陽極2a、3a、4aが設けられている。アクティブマトリックスディスプレイのための駆動回路として機能することができる種々の装置が、当技術分野で知られている。一実施形態では、陽極2a、3a、4aはTCO、例えばITOから作製される。
【0079】
陰極6は、電気的にドープされた正孔輸送層(HTL)7、電子阻止層(EBL)5、画素2、3、4に割り当てられ、電子輸送層(ETL)9内に別々に設けられた副領域2b、3b、4bを有する発光層(EML)を含む有機積層体の上に設けられる。例えば、副領域2b、3b、4bは、カラーディスプレイのためのRGBの組み合わせ(R-赤、G-緑、B-青)を提供することができる。別の一実施形態では、個々の色の画素が、カラーフィルタの適切な組み合わせが設けられた類似の白色OLEDを含むことができる。陽極2a、3a、4aおよび陰極6を介して画素2、3、4に個別の駆動電流を加えることにより、表示画素2、3、4は独立して操作される。
【0080】
図2は、本発明の例示的な実施形態に係るディスプレイデバイス中のOLED画素を代表し得る、有機発光ダイオード(OLED)100の概略の断面図である。OLED100は、基板110、陽極120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、発光層(EML)150、電子輸送層(ETL)160を含む。電子輸送層(ETL)160は、EML150上に直接形成される。電子輸送層(ETL)160上には、電子注入層(EIL)180が配置されている。陰極190は、電子注入層(EIL)180上に直接配置される。
【0081】
単一の電子輸送層160の替わりに、任意選択で電子輸送層積層体(ETL)を使用してもよい。
【0082】
図3は、本発明の別の例示的な実施形態に係るディスプレイデバイス中のOLED画素を代表し得る、OLED100の概略の断面図である。
図3は、
図3のOLED100が電子阻止層(EBL)145および正孔阻止層(HBL)155を含む点で、
図2と異なる。
【0083】
図3を参照すると、OLED100は、基板110、陽極120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、電子阻止層(EBL)145、発光層(EML)150、正孔阻止層(HBL)155、電子輸送層(ETL)160、電子注入層(EIL)180および陰電極190を含む。
【0084】
図4は、本発明の別の例示的な実施形態に係るディスプレイデバイス中のOLED画素を代表し得る、タンデムOLED200の概略の断面図である。
図4は、
図3のOLED100が電荷発生層および第2の発光層をさらに含む点で
図3と異なる。
【0085】
図4を参照すると、OLED200は、基板110、陽極120、第1の正孔注入層(HIL)130、第1の正孔輸送層(HTL)140、第1の電子阻止層(EBL)145、第1の発光層(EML)150、第1の正孔阻止層(HBL)155、第1の電子輸送層(ETL)160、n型電荷発生層(n型CGL)185、正孔発生層(p型電荷発生層;p型GCL)135、第2の正孔輸送層(HTL)141、第2の電子阻止層(EBL)146、第2の発光層(EML)151、第2の正孔阻止層(EBL)156、第2の電子輸送層(ETL)161、第2の電子注入層(EIL)181および陰極190を含む。
【0086】
図2、
図3および
図4には示されていないが、OLED100、200を封止するために、陰電極190上に封止層をさらに形成することができる。また、他にも種々の変形が可能である。
【0087】
〔合成実施例〕
<LiPFPI>
【0088】
【0089】
1.0g(1.29mmol)のN-(ビス(パーフルオロフェニル)ホスホリル)-P,P-ビス(パーフルオロフェニル)ホスフィンアミドを、20mLの乾燥トルエンに溶解し、0℃に冷却し、10mg(12.9mmol、1.0当量)の水素化リチウムを添加する。混合物を、2時間加熱還流する。室温に冷却した後、生成物を20mLのn-ヘキサンで沈殿させ、濾過し、n-ヘキサン(2×10mL)で洗浄する。高真空中で乾燥させた後、0.62g(61%)の生成物を白色固体として得た。
【0090】
<ZnPFPI>
【0091】
【0092】
2.0g(2.57mmol)のN-(ビス(パーフルオロフェニル)ホスホリル)-P,P-ビス(パーフルオロフェニル)ホスフィンアミドを、50mLの乾燥トルエンに溶解し、0℃に冷却する。1.6mL(1.40mmol、0.55当量)の0.9Mジエチル亜鉛・ヘキサン溶液を添加する。混合物を、2時間加熱還流する。室温に冷却した後、生成物を50mLのn-ヘキサンで沈殿させ、濾過し、n-ヘキサン(2×10mL)で洗浄する。高真空中で乾燥させた後、1.05g(51%)の生成物を白色固体として得た。
【0093】
<リチウムビス((パーフルオロヘキシル)スルホニル)アミド>
[工程1:リチウムビス((パーフルオロヘキシル)スルホニル)アミド]
【0094】
【0095】
乾燥シュレンクフラスコ中、10.25g(25.7mmol)のパーフルオロヘキシルスルホニルアミドを、100mLの乾燥THFに溶解する。Ar向流下で、0.51g(64.2mmol、2.5当量)の水素化リチウムを、氷冷した当該溶液に添加する。得られた懸濁液に、10.33g(25.7mmol、1.0当量)のパーフルオロヘキシルスルホニルフルオリドを滴下する。混合物を60℃で約18時間加熱する。混合物を室温に冷却し、濾過し、溶媒を減圧下で除去する。残渣を50mLのトルエンで処理し、再び濃縮する。懸濁液である粗生成物を、50mLのヘキサンで洗浄し、固体を濾過し、真空中で乾燥させる。13.49g(67%)の生成物を淡黄色粉末として得た。
【0096】
[工程2:リチウムビス((ペルフルオロヘキシル)スルホニル)アミン]
【0097】
【0098】
5.0g(6.35mmol)のビス((パーフルオロヘキシル)スルホニル)アミドを、100mLのジエチルエーテルに溶解し、40mLの25%硫酸水溶液を氷冷下で慎重に添加する。混合物を15分間激しく撹拌する。有機相を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、5mLのトルエンを発泡しないように加え、溶媒を減圧下で蒸発させる。残渣を、約140℃の温度および約4Paの圧力下で、バルブトゥバルブ(bulb to bulb)蒸留装置を用いて精製する。3.70g(75%)の生成物を、黄色がかった蝋状固体として得た。
【0099】
[工程3:リチウムビス((パーフルオロヘキシル)スルホニル)アミド]
【0100】
【0101】
1.0g(1.28mmol)のビス((パーフルオロヘキシル)スルホニル)アミンを5mLの乾燥メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)に溶解する。Ar向流下で、12mg(1.24mmol、1.0当量)のLiHを添加する。反応混合物を一晩撹拌し、次いで、溶媒を減圧下で除去する。淡いピンク色の固体残渣を真空中、60℃で乾燥させる。0.89g(88%)の生成物を黄色がかった白色固体として得た。
【0102】
エレクトロスプレーイオン化法を用いたマススペクトル(MS-ESI)において、中間体であるビス((パーフルオロヘキシル)スルホニル)アミン中ならびにLi塩中のm/zが、780(アニオン C12F26NO4S2)と主要な存在であることから、予想されていた合成結果が確認された。
【0103】
<亜鉛ビス((パーフルオロヘキシル)スルホニル)アミド>
【0104】
【0105】
1.0g(1.28mmol)のビス((パーフルオロヘキシル)スルホニル)アミンを6mLの乾燥MTBEに溶解する。0.71mL(0.64mmol、0.5当量)のジエチル亜鉛・ヘキサン溶液を滴下する。反応混合物を一晩撹拌し、溶媒を減圧下で除去する。真空中60℃で乾燥させた後、0.794g(78%)の淡いピンク色の固体を得た。
【0106】
同様に、亜鉛ビス(パーフルオロプロピル)スルホニルアミド(CAS 1040352-84-8、ZnHFSI)を製造した。
【0107】
<亜鉛ビス((パーフルオロプロパン-2-イル)スルホニル)アミド>
【0108】
【0109】
0.5g(1.04mmol)のビス((パーフルオロプロパン-2-イル)スルホニル)アミンを、10mLの乾燥MTBEに溶解し、0.47mL(0.52mmol、0.5当量)のジエチル亜鉛・ヘキサン溶液を滴下する。混合物を室温で一晩撹拌する。10mLのヘキサンを添加し、得られた沈殿固体を濾過し、高真空中で乾燥させる。0.34g(33%)の生成物を白色粉末として得た。
【0110】
<マグネシウムビス((パーフルオロプロパン-2-イル)スルホニル)アミド>
【0111】
【0112】
0.5g(1.04mmol)のビス((パーフルオロプロパン-2-イル)スルホニル)アミンを、10mLの乾燥MTBEに溶解し、0.52mL(0.52mmol、0.5当量)のジブチルマグネシウム・ヘプタン溶液を滴下し、混合物を室温で一晩撹拌する。溶媒を減圧下で除去し、残渣を高真空下で乾燥させる。0.38g(74%)の生成物を白色粉末として得た。
【0113】
<トリス(4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1H-インダゾール-1-イル)ヒドロホウ酸リチウム(PB-1)>
[工程1:4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1H-インダゾール]
【0114】
【0115】
11.09g(45.1mmol)のパーフルオロアセトフェノンを100mLのトルエンに溶解する。溶液を氷浴で冷却し、2.3mL(2.37g、47.3mmol、1.05当量)のヒドラジン一水和物を滴下して添加する。混合物を3日間、加熱還流する。室温まで冷却した後、前記混合物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mLで2回、および水100mLで2回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去する。黄色の油状残渣を約140℃の温度および約12Paの圧力でバルブトゥバルブ蒸留する。粗生成物を熱ヘキサンに溶解し、溶液を-18℃で保存する。沈殿固体を濾別し、懸濁液を10mLのヘキサンで2回洗浄する。5.0g(43%)の生成物をわずかに黄色の固体として得た。
GCMS:予想されるM/z(質量/電荷)比258を確認した。
【0116】
[工程2:トリス(4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1H-インダゾール-1-イル)ヒドロホウ酸リチウム]
【0117】
【0118】
Ar向流下で、5.1g(19.8mmol)の4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1H-インダゾールを、焼き出した(out-baked) シュレンクフラスコに添加し、3mLのトルエンで処理する。新たに粉砕した水素化ホウ素リチウムを出発材料に添加する。混合物を、水素形成が停止するまで(約4時間)、100℃に加熱する。わずかに冷却した後、15mLのヘキサンを添加し、混合物を10分間、加熱還流し、室温に冷却する。沈殿固体を濾別し、10mLの熱ヘキサンで洗浄し、高真空中で乾燥させる。2.55g(49%)の生成物を黄色がかった白色の固体として得た。
【0119】
<トリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)ヒドロホウ酸リチウム(PB-2)>
【0120】
【0121】
焼き出したシュレンクフラスコ中、2.0g(9.8mmol、5当量)の3,5-ビス(トリフルオロメチル)ピラゾールを5mLの乾燥トルエンに溶解する。Ar向流下で、43mg(1.96mmol、1当量)の新たに粉砕した水素化ホウ素リチウムを添加し、混合物を3日間、加熱還流する。溶媒および過剰の出発材料を減圧下での蒸留によって除去し、残渣をn-クロロヘキサンから結晶化させる。0.25g(20%)の生成物を白色固体として得た。
【0122】
<トリス(4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(パーフルオロフェニル)-1H-インダゾール-1-イル)ヒドロホウ酸リチウム(PB-3)>
[工程1:4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(パーフルオロフェニル)-1H-インダゾール]
【0123】
【0124】
20.0g(54.8mmol)のパーフルオロベンゾフェノンを200mLのトルエンに溶解する。4.0mL(4.11g、82.1mmol、約1.5当量)のヒドラジン一水和物を、氷冷した溶液に滴下して添加する。40gの硫酸ナトリウムを添加し、混合物を2日間、加熱還流する。冷却後、10mLのアセトンを反応混合物に添加し、得られた懸濁液を室温で1時間撹拌する。固体を濾別し、4×50mLのトルエンで十分に洗浄し、有機画分を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄する。溶媒を減圧下で除去し、残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製した。7.92g(41%)の生成物を淡黄色固体として得た。
GC-MS:予想されるM/z(質量/電荷)比356を確認した。
【0125】
[工程2:トリス(4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(パーフルオロフェニル)-1H-インダゾール-1-イル)ヒドロホウ酸リチウム]
【0126】
【0127】
焼き出したシュレンクフラスコ中、1.02g(2.86mmol、3.0当量)の4,5,6,7-テトラフルオロ-3-(パーフルオロフェニル)-1H-インダゾールを、5mLのクロロベンゼンに溶解させる。Ar向流下で、新たに粉砕した水素化ホウ素リチウム(21mg、0.95mmol、1.0当量)を添加する。混合物を150℃で2日間加熱し、室温に冷却する。溶媒を減圧下で除去し、残渣を高真空下で乾燥させる。粗生成物をさらに、約150℃の温度および約12Paの圧力下、バルブトゥバルブ蒸留装置中で乾燥させることで精製する。0.57g(70%)の生成物を、黄色がかった白色の固体として得た。
【0128】
<トリス(3-シアノ-5,6-ジフルオロ-1H-インダゾール-1-イル)ヒドロホウ酸リチウム(PB-4)>
【0129】
【0130】
新たに粉砕した水素化ホウ素リチウム(15mg、0.7mmol、1.0当量)を焼き出した圧力管に入れ、Ar向流下で、0.5g(2.79mmol、4.0当量)の5,6-ジフルオロ-1H-インダゾール-3-カルボニトリルを添加し、1mLのトルエンで洗浄する。圧力管を閉じ、約160℃の温度に約21時間加熱する。室温に冷却した後、超音波浴中で約30分間、混合物を5mLのヘキサンで処理する。沈殿固体を濾別し、ヘキサン(合計20mL)で洗浄する。乾燥後、0.48gの黄色がかった固体を得た。
【0131】
<トリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)ヒドロホウ酸亜鉛(II)(PB-5)>
【0132】
【0133】
0.57g(0.91mmol)のトリス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)ヒドロホウ酸リチウムを6mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解する。水1mL中に二塩化亜鉛62mgを含む水溶液を滴下して添加する。20mLの水をさらに添加し、混合物を超音波浴中で2時間処理する。沈殿物を濾別し、高真空中で乾燥させる。0.485g(82%)の生成物を、黄色がかった白色固体として得た。
【0134】
<例示的な化合物E3>
前駆体化合物E2をスキーム1に従って製造した。
【0135】
【0136】
[工程1:1,1,1-トリフルオロ-N-(パーフルオロフェニル)メタンスルホンアミドの合成]
250mLのシュレンクフラスコを真空中で加熱し、冷却後、窒素でパージする。パーフルオロアニリンを100mLのトルエンに溶解し、溶液を-80℃まで冷却する。1.7Mのt-ブチルリチウム・ヘキサン溶液を、シリンジを介して、10分間かけて滴下して添加する。反応溶液は透明から濁った状態に変化し、前記反応溶液を-80℃で1時間撹拌する。その後、溶液を-60℃に温め、1.1当量のトリフルオロメタンスルホン酸無水物を前記溶液に滴下して添加する。次いで、冷却浴を除去し、反応混合物を周囲温度までゆっくりと温め、一晩撹拌すると、色が明るい橙色に変化する。さらに、白色固体が形成される。沈殿した副生成物であるトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを、焼結ガラスフィルター上での吸引濾過によって濾別し、2×30mLのトルエンおよび30mLのn-ヘキサンで洗浄する。橙色の濾液を蒸発させ、高真空中で乾燥させて、結晶を形成する。粗生成物をバルブトゥバルブ蒸留(135℃、1.2×10-1mbar)によって精製し、結晶性の無色固体(主画分)を得た。
【0137】
1HNMR[d6-DMSO、ppm]δ:13.09(s、1H、N-H)。
【0138】
13C{1H}NMR[d6-DMSO、ppm]δ:116.75(m、Ci-C6F5)、120.74(q、1JCF=325Hz、CF3)、136.39、138.35(2m、2JCF=247Hz、m-C6F5)、137.08、139.06(2m、2JCF=247Hz、p-C6F5)、142.98、144.93(2m、2JCF=247、Hz o-C6F5)。
【0139】
19FNMR[d6-DMSO、ppm]δ:-77.45(m、CF3)、-148.12(m、C6F5)、-160.79(m、p-C6F5)、-164.51(m、C6F5)。
【0140】
ESI-MS:m/z-neg=314(M-H)。
EI-MS:m/z=315(M)、182(M-SO2CF3)、69(CF3)。
【0141】
[工程2:ビス((1,1,1-トリフルオロ-N-(パーフルオロフェニル)メチル)-スルホンアミド)亜鉛の合成]
100mLのシュレンクフラスコを真空中で加熱し、冷却後、窒素でパージする。1,1,1-トリフルオロ-N-(パーフルオロフェニル)メタンスルホンアミドを10mLのトルエンに溶解し、周囲温度で、ヘキサン中で0.5当量のジエチル亜鉛を、シリンジを介して溶液に滴下して添加する。添加中、フラスコ中に靄が形成され、反応溶液はゼリー状になり、濁った状態になる。水溶液をこの温度でさらに30分間撹拌する。その後、30mLのn-ヘキサンを添加し、白色沈殿を形成する。次いでこれを不活性雰囲気下で焼結ガラスフィルター(細孔4)上で濾過する。濾過ケーキを15mLのn-ヘキサンで2回洗浄し、高真空中、100℃で2時間乾燥させた。
【0142】
収量:660mg(0.95mmol、1,1,1-トリフルオロ-N-(パーフルオロフェニル)メタンスルホンアミドに対して60%)を、白色固体として得た。
13C{1H}NMR[d6-DMSO、ppm]δ:121.68(q、1JCF=328Hz、CF3)、123.56(m、Ci-C6F5)、133.98、135.91(2m、2JCF=243Hz、p-C6F5)、136.15、138.13(2m、2JCF=249Hz、m-C6F5)、142.33、144.24(2m、2JCF=240、Hz o-C6F5)。
19FNMR[d6-DMSO、ppm]δ:-77.52(m、CF3)、-150.43(m、C6F5)、-166.77(m、C6F5)、-168.23(m、p-C6F5)
ESI-MS:m/z-neg=314(M-Zn-L)。
EI-MS:m/z=692(M)、559(M-SO2CF3)、315(C6F5NHSO2CF3)、182(C6F5NH)、69(CF3)。
【0143】
[例示的な化合物E3]
9.1gのE2を240℃および10-3Paの圧力で昇華させる。
【0144】
収量5.9g(65%)。
【0145】
昇華した材料は無色の結晶を形成する。適切な形および大きさ(0.094×0.052×0.043mm3)の1つの結晶を、アルゴン雰囲気下でガラスキャピラリー中に封入し、モリブデン陰極(λ=71.073pm)を備えた光源からの単色X線放射を用いてKappa Apex II回折計(Bruker-AXS、Karlsruhe、Germany)で分析した。シータ範囲1.881~28.306°内で、全37362回の反射を収集した。
【0146】
前記化合物の構造は、直接法(Shelxs-97、Sheldrick、2008)によって分解され、完全行列最小二乗法(SHELXL-2014/7、Olex2(Dolomanov、2017))によって精密化された。
【0147】
【0148】
ABH-113は発光宿主であり、NUBD-370およびDB-200は青色蛍光発光ドーパントであり、全て韓国のSFCから商業的に入手可能である。
【0149】
真空蒸着プロセスに使用する前に、MgTFSI(Alfa Aesar、CAS 133385-16-1)、MnTFSI(Alfa Aesar、CAS 207861-55-0)、ScTFSI(Alfa Aesar、CAS 176726-07-1)、Fe(III)(TFSI)(Alfa Aesar、CAS 207861-59-4)、LiNFSI(American Custom Chemicals Corporation、CAS 119229-99-1)のような市販のスルホニルイミド塩を含む、補助材料および試験化合物を、分取真空昇華によって精製した。
【0150】
[装置例]
<装置例1>(純粋な正孔生成副層中に濃縮されたp-ドーパントとして、金属錯体または金属塩を含む底面発光白色OLED画素)
厚さ90nmのITO陽極を備えたガラス基板上に、8重量%のPD-2でドープされたF1から作製される10nmの正孔注入層と、純粋なF1からなる厚さ140nmの非ドープ正孔輸送層と、3重量%のBD200でドープされたABH113(両方とも韓国、SFC社によって提供される)から形成される厚さ20nmの第1の発光層と、純粋なF2から作製される厚さ25nmの第1の電子輸送層と、5重量%のYbでドープされたF3から作製される厚さ10nmの電荷発生層の電子発生部(n-CGL)と、F4から作製される厚さ2nmの中間層と、PB-1から作製される厚さ30nmの電荷発生層の正孔発生部(p-CGL)と、純粋なF1から作製される厚さ10nmの第2の正孔輸送層と、第1の発光層と同じ厚さおよび組成の20nmの第2の発光層と、純粋なF2から作製される厚さ25nmの第1の電子輸送層と、5重量%のYbでドープされたF3から作製される厚さ10nmの電子注入層(EIL)と、100nmのAl陰極と、を順に堆積させた。
【0151】
全ての層を、真空熱蒸着(VTE)によって堆積させた。
【0152】
電流密度10mA/cm2における、デバイスの動作電圧8Vおよび観測されたルミナンスは、PB-1の替わりに市販の最新技術のp-ドーパントを含む同じデバイスに十分に匹敵した。この実験では、照度/効率比較に必要な測定装置の精密な較正は行わなかった。
【0153】
<装置例2>(純粋な正孔注入副層に濃縮されたp-ドーパントとして、金属錯体または金属塩を含む底面発光青色OLED画素)
次に、装置例1と同じITO陽極を備えたガラス基板上に、以下の層をVTEによって順に堆積させた:化合物PB-1から作製される10nmの正孔注入層;純粋なF1から作製される厚さ120nmのHTL;3重量%のNUBD370でドープされたABH113(両方とも韓国、SFC社によって供給される)から作製される20nmのEML;50重量%のLiQでドープされたF2から作製される36nmのEIL/ETL;100nmのAl陰極。
【0154】
比較デバイスは、PB-1の替わりに化合物CN-HAT(CAS 105598-27-4)から作製されるHILを含んでいた。
【0155】
本発明のデバイスは動作電圧5.2Vで電流密度15mA/cm2および外部量子効率(EQE)5.4%を達成したが、比較デバイスは有意に高い電圧5.4Vおよび有意に低いEQE4.9%で同じ電流密度を示した。
【0156】
<装置例3>(金属錯体または金属塩で均一にドープされた正孔輸送マトリックスからなる正孔注入副層を含む底面発光青色OLED画素)
次に、装置例2と同じITO陽極を備えたガラス基板上に、以下の層をVTEによって順に堆積させた:8重量%のPB-1でドープされたマトリックス化合物F2から作製される10nmの正孔注入層;純粋なF1から作製される120nmの厚さのHTL;3重量%のNUBD370でドープされたABH113(両方とも韓国、SFC社によって供給される)から作製される20nmのEML;50重量%のLiQでドープされたF2から作製される36nmのEIL/ETL;100nmのAl陰極。
【0157】
本発明のデバイスは、電圧5.6Vで電流密度15mA/cm2およびEQE5.6%を達成した。LT97(電流密度15mA/cm2において、照度が最初の値の97%に低下するのに要する動作時間)は、135時間であった。
【0158】
<装置例4>(金属錯体または金属塩で均一にドープされた正孔輸送マトリックスからなる正孔発生副層を含む白色ディスプレイ画素)
装置例1と同様に製造したデバイスにおいて、純粋なPB-1層を、35重量%のPB-1でドープされたF2からなる同じ厚さの層で置き換えた。
【0159】
<装置例5>(純粋な正孔生成副層中に濃縮されたp-ドーパントとして、金属錯体または金属塩を含む青色ディスプレイ画素)
表2aは、モデルデバイスを概略的に示す。
【0160】
【0161】
2種類の例示的なp-ドーパントについての結果を表2bに示す。
【0162】
【0163】
<装置例6>(金属錯体または金属塩で均一にドープされた正孔輸送マトリックスからなる正孔注入副層を含む青色ディスプレイ画素)
表3aは、モデルデバイスを概略的に示す。
【0164】
【0165】
2種類の例示的なp-ドーパントについての結果を表3bに示す。
【0166】
【0167】
<装置例7>(純粋な正孔生成副層中に濃縮されたp-ドーパントとして、金属錯体または金属塩を含む青色ディスプレイ画素)
表4aは、モデルデバイスを概略的に示す。
【0168】
【0169】
2種類の例示的なp-ドーパントについての結果を表4bに示す。
【0170】
【0171】
<装置例8>(金属錯体または金属塩で均一にドープされた正孔輸送マトリックスからなる正孔生成副層を含む青色ディスプレイ画素)
表5aは、モデルデバイスを概略的に示す。
【0172】
【0173】
2種類の例示的なp-ドーパントについての結果を表5bに示す。
【0174】
【0175】
前述の説明および従属請求項に開示される特徴は、別々に、およびその任意の組み合わせの両方で、独立請求項においてなされた開示の態様をその多様な形態で実現するための材料であり得る。
【0176】
本明細書を通して使用される主要な記号および略語:
CV サイクリックボルタンメトリー
DSC 示差走査熱量測定
EBL 電子阻止層
EIL 電子注入層
EML 発光層
eq. 当量
ETL 電子輸送層
ETM 電子輸送マトリックス
Fc フェロセン
Fc+ フェリセニウム
HBL 正孔阻止層
HIL 正孔注入層
HOMO 最高被占軌道
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HTL 正孔輸送層
p-HTL p-ドープされた正孔輸送層
HTM 正孔輸送マトリックス
ITO インジウムスズ酸化物
LUMO 最低空軌道
mol% モルパーセント
NMR 核磁気共鳴
OLED 有機発光ダイオード
OPV 有機光起電力
QE 量子効率
Rf TLC遅延因子
RGB 赤-緑-青
TCO 透明導電性酸化物
TFT 薄膜トランジスタ
Tg ガラス遷移温度
TLC 薄層クロマトグラフィー
wt% 重量パーセント
【手続補正書】
【提出日】2022-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのOLED画素を含む複数のOLED画素であって、前記OLED画素は、陽極、陰極、および有機層の積層体を含み、前記有機層の積層体は、前記陰極と前記陽極との間に、前記陰極と前記陽極とに接するように配置され、前記有機層の積層体は、第1の電子輸送層、第1の正孔輸送層、および当該第1の正孔輸送層と当該第1の電子輸送層との間に設けられた第1の発光層を含む、OLED画素、ならびに
前記複数のOLED画素の画素を別々に駆動するように構成された駆動回路
を含むディスプレイデバイスであって、
ここで、前記複数のOLED画素において、前記第1の正孔輸送層は、前記複数のOLED画素によって共有される共通の正孔輸送層として、前記有機層の積層体に設けられ、
前記第1の正孔輸送層は
(i)共有結合原子からなる、少なくとも1つの第1の正孔輸送マトリックス化合物、
(ii)金属塩、および金属カチオンならびに少なくとも5つの共有結合原子からなる少なくとも1つのアニオンおよび/または少なくとも5つの共有結合原子からなる少なくとも1つのアニオン性配位子を含む電気的に中性の金属錯体から選択される少なくとも1つの電気的p-ドーパント、
を含み、
前記電気的p-ドーパントの前記金属カチオンは、
アルカリ金属;
アルカリ土類金属、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Cd;
酸化状態(II)または酸化状態(III)である希土類金属;
および
酸化状態(IV)以下のTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoならびにWから選択される、ディスプレイデバイス。
【請求項2】
前記アニオンおよび/またはアニオン性配位子が、B、C、Nから選択される少なくとも1つの原子を含む、請求項1に記載のディスプレイデバイス。
【請求項3】
前記アニオンおよび/またはアニオン性配位子が、共有結合によって互いに結合している、B、CおよびNから選択される少なくとも2つの原子を含む、請求項1または2に記載のディスプレイデバイス。
【請求項4】
前記アニオンおよび/またはアニオン性配位子が、H、N、O、F、Cl、BrおよびIから選択される少なくとも1つの末端原子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のディスプレイデバイス。
【請求項5】
前記アニオンおよび/またはアニオン性配位子が、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化(ヘテロ)アリール、ハロゲン化(ヘテロ)アリールアルキル、ハロゲン化アルキルスルホニル、ハロゲン化(ヘテロ)アリールスルホニル、ハロゲン化(ヘテロ)アリールアルキルスルホニル、シアノから選択される少なくとも1つの電子求引基を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のディスプレイデバイス。
【請求項6】
前記電子求引基が過ハロゲン化基である請求項5に記載のディスプレイデバイス。
【請求項7】
前記過ハロゲン化電子求引基が過フッ素化基である請求項6に記載のディスプレイデバイス。
【請求項8】
前記p-ドーパントの前記金属カチオンが、Li(I)、Na(I)、K(I)、Rb(I)、Cs(I);Mg(II)、Ca(II)、Sr(II)、Ba(II)、Mn(II)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、Zn(II)、Cd(II);酸化状態(III)の希土類金属、V(III)、Nb(III)、Ta(III)、Cr(III)、Mo(III)、W(III)およびTi(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載のディスプレイデバイス。
【請求項9】
前記p-ドーパント分子において、前記金属カチオンに最も近い前記アニオンおよび/または前記アニオン性配位子の原子が、C原子またはN原子である、請求項2~8のいずれか1項に記載のディスプレイデバイス。
【請求項10】
前記電気的p-ドーパントが、標準量子化学法によって計算された最低空軌道のエネルギー準位を有し、標準量子化学法によって計算された前記第1の正孔輸送マトリックス化合物の最高被占軌道のエネルギー準位を超え、絶対真空尺度で少なくとも0.5eVを示し、前記標準量子化学法は、基底系def2-TZVPを有するDFT機能B3LYPを使用するソフトウェアパッケージTURBOMOLEを使用する、請求項1~9のいずれか1項に記載のディスプレイデバイス。
【請求項11】
前記第1の正孔輸送マトリックス化合物が有機化合物である、請求項1~10のいずれか1項に記載のディスプレイデバイス。
【請求項12】
前記第1の正孔輸送マトリックス化合物および前記電気的p-ドーパントが50℃を超える温度で曝露され、相接する少なくとも1つの工程を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のディスプレイデバイスの製造方法。
【請求項13】
(i)前記p-ドーパントおよび前記第1の正孔輸送マトリックス化合物を、溶媒中に分散させ、
(ii)当該分散液を、固体支持体上に堆積させ、かつ
(iii)前記溶媒を、高温で蒸発させる、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
減圧下、前記p-ドーパントを蒸発させる工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記p-ドーパントが、固体水和物の形態で使用される、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記p-ドーパントが、0.10重量%未満の水を含む無水固体として使用される、請求項14に記載の方法。