(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174262
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】電子回路
(51)【国際特許分類】
H03M 1/12 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
H03M1/12 A
H03M1/12 C
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148389
(22)【出願日】2022-09-16
(62)【分割の表示】P 2019163991の分割
【原出願日】2019-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】川井 秀介
(57)【要約】
【課題】回路規模とコストを抑えつつ、急峻な変化を含む信号波形のアナログデジタル変換を行う電子回路を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態としての電子回路は、第1端子から供給される第1パルス信号を順次遅延させる、複数の直列接続された第1遅延素子と、複数の前記第1遅延素子から供給される、遅延された複数の前記第1パルス信号に応じて、入力端子から供給される入力信号の電圧を保持する複数の第1保持回路と、複数の前記第1保持回路とそれぞれ接続され、前記第1パルス信号とはパルス幅が異なる複数の第2パルス信号が供給され、複数の前記第2パルス信号に応じて順次切り替わる複数の第1スイッチと、複数の前記第1スイッチと接続され、複数の前記第1保持回路に保持された電圧を、複数の前記第1スイッチの切り替えタイミングに応じて量子化して出力する量子化回路とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パルス信号を遅延させ、第1信号にする第1遅延素子と、
前記第1信号を遅延させ、第2信号にする第2遅延素子と、
前記第1信号に応じて、入力信号の第1電圧を保持する第1保持回路と、
前記第2信号に応じて、前記入力信号の第2電圧を保持する第2保持回路と、
第2パルス信号に基づいて、異なる立ち上がり時刻である第3信号および第4信号にし、
前記第3信号に基づいて、前記第1電圧を量子化し、
前記第4信号に基づいて、前記第2電圧を量子化する量子化回路と、
前記第1保持回路および前記量子化回路に接続され、前記第3信号に応じて切り替わる第1スイッチと、
前記第2保持回路および前記量子化回路に接続され、前記第4信号に応じて切り替わる第2スイッチと、を備え、
前記量子化回路は、前記第1スイッチの切り替えに応じて前記第1電圧を量子化し、前記第2スイッチの切り替えに応じて前記第2電圧を量子化し、
前記量子化回路は、
前記第2パルス信号を遅延させ、前記第3信号にする第3遅延素子と、
前記第3信号を遅延させ、前記第4信号にする第4遅延素子と、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチに接続され、前記第1電圧および前記第2電圧を、第1参照電位と比較する第1比較器と、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチに接続され、前記第1電圧および前記第2電圧を、第2参照電位と比較する第2比較器と、
前記第1比較器における前記第1電圧の比較結果および前記第2電圧の比較結果、並びに前記第1比較器における前記第1電圧の比較結果および前記第2電圧の比較結果に基づき、前記第1電圧および前記第2電圧をデジタル化して出力する変換回路と、を含み、
前記第3信号は、前記第3遅延素子から前記第1スイッチに供給され、
前記第4信号は、前記第4遅延素子から前記第2スイッチに供給される、電子回路。
【請求項2】
第1パルス信号を遅延させ、第1信号にする第1遅延素子と、
前記第1信号を遅延させ、第2信号にする第2遅延素子と、
前記第1信号に応じて、入力信号の第1電圧を保持する第1保持回路と、
前記第2信号に応じて、前記入力信号の第2電圧を保持する第2保持回路と、
第2パルス信号に基づいて、異なる立ち上がり時刻である第3信号および第4信号にし、
前記第3信号に基づいて、前記第1電圧を量子化し、
前記第4信号に基づいて、前記第2電圧を量子化する量子化回路と、
前記第1保持回路および前記量子化回路に接続され、前記第3信号に応じて切り替わる第1スイッチと、
前記第2保持回路および前記量子化回路に接続され、前記第4信号に応じて切り替わる第2スイッチと、
前記第3信号を前記第1スイッチに供給し、前記第4信号を前記第2スイッチに供給するシフトレジスタと、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチに接続されるアナログデジタル変換器と、
前記シフトレジスタに接続され、半導体素子に供給する入力電圧を決定し、前記入力電圧に基づいて、前記シフトレジスタが前記第2パルス信号を供給する時刻を決定する第2制御回路と、をさらに備え、
前記量子化回路は、前記第1スイッチの切り替えに応じて前記第1電圧を量子化し、前記第2スイッチの切り替えに応じて前記第2電圧を量子化し、クロック信号に基づいて前記第2パルス信号を遅延させて前記第3信号および前記第4信号にする、電子回路。
【請求項3】
第1パルス信号を遅延させ、第1信号にする第1遅延素子と、
前記第1信号を遅延させ、第2信号にする第2遅延素子と、
前記第1信号に応じて、入力信号の第1電圧を保持する第1保持回路と、
前記第2信号に応じて、前記入力信号の第2電圧を保持する第2保持回路と、
第2パルス信号に基づいて、異なる立ち上がり時刻である第3信号および第4信号にし、
前記第3信号に基づいて、前記第1電圧を量子化し、
前記第4信号に基づいて、前記第2電圧を量子化する量子化回路と、
前記第1保持回路および前記量子化回路に接続され、前記第3信号に応じて切り替わる第1スイッチと、
前記第2保持回路および前記量子化回路に接続され、前記第4信号に応じて切り替わる第2スイッチと、
前記第3信号を前記第1スイッチに供給し、前記第4信号を前記第2スイッチに供給するシフトレジスタと、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチに接続されるアナログデジタル変換器と、
半導体素子に供給する入力電圧に基づいて、前記シフトレジスタが前記第2パルス信号を供給する時刻を決定する第2制御回路と、
前記入力電圧におけるリンギングを検出する検出回路と、
を備え、
前記量子化回路は、前記第1スイッチの切り替えに応じて前記第1電圧を量子化し、前記第2スイッチの切り替えに応じて前記第2電圧を量子化し、クロック信号に基づいて前記第2パルス信号を遅延させて前記第3信号および前記第4信号にし、
前記第2制御回路は、さらに前記検出回路から送信された前記リンギングの検出に関する通知に基づき、前記シフトレジスタが前記第2パルス信号を供給する時刻を決定する、電子回路。
【請求項4】
第1パルス信号を遅延させ、第1信号にする第1遅延素子と、
前記第1信号を遅延させ、第2信号にする第2遅延素子と、
前記第1信号に応じて、入力信号の第1電圧を保持する第1保持回路と、
前記第2信号に応じて、前記入力信号の第2電圧を保持する第2保持回路と、
第2パルス信号に基づいて、異なる立ち上がり時刻である第3信号および第4信号にし、
前記第3信号に基づいて、前記第1電圧を量子化し、
前記第4信号に基づいて、前記第2電圧を量子化する量子化回路と、
前記第1保持回路および前記量子化回路に接続され、前記第3信号に応じて切り替わる第1スイッチと、
前記第2保持回路および前記量子化回路に接続され、前記第4信号に応じて切り替わる第2スイッチと、
前記第3信号を前記第1スイッチに供給し、前記第4信号を前記第2スイッチに供給するシフトレジスタと、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチに接続されるアナログデジタル変換器と、
前記入力信号が供給される入力端子と、
前記入力端子に接続される第1コンデンサと、
前記第1コンデンサとグラウンドとの間に接続される第2コンデンサと、
電源電位と前記入力端子との間に接続される第3スイッチと、
前記入力端子とグラウンドとの間に接続される第4スイッチとをさらに備え、
前記第3スイッチ及び前記第4スイッチは、前記アナログデジタル変換器がアナログデジタル変換を行う前にオンする、電子回路。
【請求項5】
第1パルス信号を遅延させ、第1信号にする第1遅延素子と、
前記第1信号を遅延させ、第2信号にする第2遅延素子と、
前記第1信号に応じて、入力信号の第1電圧を保持する第1保持回路と、
前記第2信号に応じて、前記入力信号の第2電圧を保持する第2保持回路と、
第2パルス信号に基づいて、異なる立ち上がり時刻である第3信号および第4信号にし、
前記第3信号に基づいて、前記第1電圧を量子化し、
前記第4信号に基づいて、前記第2電圧を量子化する量子化回路と、
入力電圧を制御する信号発生器と、
前記入力信号と参照電位を比較する第3比較器と、
前記信号発生器および前記第3比較器に接続される第3制御回路と、をさらに備え、
前記第1遅延素子は可変遅延素子であり、
前記第3制御回路は、前記信号発生器が前記入力電圧を変更したときから、前記第3比較器の出力電圧が変化するまでの時差に基づき、前記可変遅延素子の遅延量を決定する、電子回路。
【請求項6】
第1パルス信号を遅延させ、第1信号にする第1遅延素子と、
前記第1信号を遅延させ、第2信号にする第2遅延素子と、
前記第1信号に応じて、入力信号の第1電圧を保持する第1保持回路と、
前記第2信号に応じて、前記入力信号の第2電圧を保持する第2保持回路と、
第2パルス信号に基づいて、異なる立ち上がり時刻である第3信号および第4信号にし、
前記第3信号に基づいて、前記第1電圧を量子化し、
前記第4信号に基づいて、前記第2電圧を量子化する量子化回路と、
前記入力信号を供給する半導体素子およびグラウンドに接続される第1抵抗器と、
前記第1抵抗器と接続される第2抵抗器と、
前記第2抵抗器および参照電位に接続され、前記入力信号を供給する第2増幅器と、
前記第2抵抗器および前記第2増幅器の間にある第1ノードと、前記第2増幅器および入力端子の間にある第2ノードとを接続する第3抵抗器とをさらに備え、
前記半導体素子と前記第1抵抗器との接続ノードは、前記量子化回路の基準電圧に設定される、電子回路。
【請求項7】
前記第1保持回路および前記量子化回路に接続され、前記第3信号に応じて切り替わる第1スイッチと、
前記第2保持回路および前記量子化回路に接続され、前記第4信号に応じて切り替わる第2スイッチとをさらに備え、
前記量子化回路は、前記第1スイッチの切り替えに応じて前記第1電圧を量子化し、前記第2スイッチの切り替えに応じて前記第2電圧を量子化する、
請求項5又は6に記載の電子回路。
【請求項8】
前記量子化回路は、クロック信号に基づいて前記第2パルス信号を遅延させて前記第3信号および前記第4信号にし、
前記第3信号を前記第1スイッチに供給し、前記第4信号を前記第2スイッチに供給するシフトレジスタと、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチに接続されるアナログデジタル変換器と、を含む、
請求項1、又は7のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項9】
前記量子化回路は、クロック信号に基づいて前記第2パルス信号を遅延させて前記第3信号および前記第4信号にし、
前記第3信号を前記第1スイッチに供給し、前記第4信号を前記第2スイッチに供給するシフトレジスタと、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチに接続され、前記第1電圧および前記第2電圧を、第1参照電位と比較する第1比較器と、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチに接続され、前記第1電圧および前記第2電圧を、第2参照電位と比較する第2比較器と、
前記第1比較器における前記第1電圧の比較結果および前記第2電圧の比較結果、並びに前記第1比較器における前記第1電圧の比較結果および前記第2電圧の比較結果に基づき、前記第1電圧および前記第2電圧をデジタル化して出力する変換回路とを含む、
請求項1、又は7に記載の電子回路。
【請求項10】
前記量子化回路は、前記第1電圧、前記第2電圧、および第1参照電位を増幅し、前記第1比較器に供給する第1増幅器と、
前記第1電圧、前記第2電圧、および第2参照電位を増幅し、前記第2比較器に供給する第2増幅器とをさらに含む、
請求項9に記載の電子回路。
【請求項11】
前記量子化回路は、前記第2パルス信号を遅延させ、前記第3信号にする第3遅延素子と、
前記第3信号を遅延させ、前記第4信号にする第4遅延素子と、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチに接続され、前記第1電圧および前記第2電圧を、第1参照電位と比較する第1比較器と、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチに接続され、前記第1電圧および前記第2電圧を、第2参照電位と比較する第2比較器と、
前記第1比較器における前記第1電圧の比較結果および前記第2電圧の比較結果、並びに前記第1比較器における前記第1電圧の比較結果および前記第2電圧の比較結果に基づき、前記第1電圧および前記第2電圧をデジタル化して出力する変換回路とを含み、
前記第3信号は、前記第3遅延素子から前記第1スイッチに供給され、
前記第4信号は、前記第4遅延素子から前記第2スイッチに供給される、
請求項2、3、4又は7に記載の電子回路。
【請求項12】
半導体素子および前記シフトレジスタに接続され、前記半導体素子に供給する入力電圧を決定し、
前記入力電圧に基づいて、前記シフトレジスタが前記第2パルス信号を供給する時刻を決定する第2制御回路をさらに備える、
請求項4、8、又は9のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項13】
前記入力電圧におけるリンギングを検出する検出回路を備え、
前記第2制御回路は、さらに前記検出回路から送信された前記リンギングの検出に関する通知に基づき、前記シフトレジスタが前記第2パルス信号を供給する時刻を決定する、 請求項12に記載の電子回路。
【請求項14】
前記入力信号が供給される入力端子と、
前記入力信号を供給する半導体素子および前記入力端子との間に接続される第1コンデンサと、
前記第1コンデンサとグラウンドとの間に接続される第2コンデンサと、
電源電位と前記入力端子との間に接続される第3スイッチと、
前記入力端子とグラウンドとの間に接続される第4スイッチとをさらに備え、
前記第3スイッチ及び前記第4スイッチは、前記アナログデジタル変換器がアナログデジタル変換を行う前にオンする、
請求項2、3、又は8のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項15】
半導体素子の入力電圧を制御する信号発生器と、
前記入力信号と参照電位を比較する第3比較器と、
前記信号発生器および前記第3比較器に接続される第3制御回路とをさらに備え、
前記第1遅延素子は可変遅延素子であり、
前記第3制御回路は、前記信号発生器が前記入力電圧を変更したときから、前記第3比較器の出力電圧が変化するまでの時差に基づき、前記可変遅延素子の遅延量を決定する、 請求項1乃至4、6のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項16】
前記入力信号を供給する半導体素子およびグラウンドに接続される第1抵抗器と、
前記第1抵抗器と接続される第2抵抗器と、
前記第2抵抗器および参照電位に接続され、前記入力信号を供給する第2増幅器と、
前記第2抵抗器および前記第2増幅器の間にある第1ノードと、前記第2増幅器および入力端子の間にある第2ノードとに接続される第3抵抗器とをさらに備え、
前記半導体素子と前記第1抵抗器との接続ノードは、前記量子化回路の基準電圧に設定される、 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項17】
前記量子化回路は、少なくとも1つの第1比較器を含んでおり、
前記第1比較器は、
入力側の端子と出力側の端子が互いに接続される第1インバータおよび第2インバータを含むラッチ回路と、
入力された電圧を比較した結果に応じた電流によって前記ラッチ回路の前記第1インバータおよび第2インバータを駆動する差動対と、
前記差動対の動作状態を決定する第5スイッチと、
前記第5スイッチと基準電位との間に接続される第4抵抗器とを備え、
前記差動対は、前記第5スイッチと前記ラッチ回路との間に接続され、
前記ラッチ回路は、電源電位と、前記差動対との間に接続される、
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項18】
前記第1信号、前記第2信号、前記第3信号、および前記第4信号は、それぞれ立ち上がる時刻が異なる、
請求項1乃至17のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項19】
前記第1信号は、前記第3信号よりも早く立ち上がる、
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項20】
前記第2パルス信号のパルス幅は、前記第1パルス信号のパルス幅よりも大きい、
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項21】
前記第1遅延素子および前記第2遅延素子は、可変遅延素子であり、
前記第1遅延素子および前記第2遅延素子の遅延量を決定する第1制御回路をさらに備える、
請求項1乃至20のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項22】
前記入力信号を供給する半導体素子を備える、請求項2、3、4、6、12、14、15又は16のいずれか一項に記載の電子回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電力変換器、インバータなどの電力回路では、パワーデバイスの入力信号を制御するため、パワーデバイスの出力信号が計測される。計測されたアナログ信号は、デジタル信号に変換され、当該デジタル信号に基づいてパワーデバイスへの入力信号が制御される。
【0003】
しかし、パワーデバイスのスイッチング動作によっては、充分な性能を有するアナログデジタル変換器を用意することが難しい場合もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】X. Jiang, et. al.,“A 1-GHz Signal Bandwidth 6-bit CMOS ADC With Power-Efficient Averaging” IEEE JSSC 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、回路規模とコストを抑えつつ、急峻な変化を含む信号波形のアナログデジタル変換を行う電子回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態としての電子回路は、第1端子から供給される第1パルス信号を順次遅延させる、複数の直列接続された第1遅延素子と、複数の前記第1遅延素子から供給される、遅延された複数の前記第1パルス信号に応じて、入力端子から供給される入力信号の電圧を保持する複数の第1保持回路と、複数の前記第1保持回路とそれぞれ接続され、前記第1パルス信号とはパルス幅が異なる複数の第2パルス信号が供給され、複数の前記第2パルス信号に応じて順次切り替わる複数の第1スイッチと、複数の前記第1スイッチと接続され、複数の前記第1保持回路に保持された電圧を、複数の前記第1スイッチの切り替えタイミングに応じて量子化して出力する量子化回路とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態による回路システムの例を示した図。
【
図4】回路システムにおける信号波形の例を示したタイミングチャート。
【
図5】一実施形態による電子回路の例を示した回路図。
【
図6】電子回路における信号波形の例を示したタイミングチャート。
【
図13】第6の変形例による電子回路の信号波形の例を示したタイミングチャート。
【
図14】量子化処理の実行タイミングの例を示した図。
【
図17】量子化処理の実行タイミングの例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。また、図面において同一の構成要素は、同じ番号を付し、説明は、適宜省略する。
【0009】
電力回路におけるパワーデバイスのスイッチング動作時に、急峻な変化を含む信号波形が出力されることがある。パワーデバイスの入力信号を制御するためには、急峻な変化を含む信号波形のアナログデジタル変換を行わなくてはならない。電力回路に限らず、情報処理、通信、計測、画像処理、音声処理などその他の分野で用いられる回路でも、急峻な変化を含む信号波形のアナログデジタル変換が必要となる場合がある。急峻な変化を含む信号波形に対応するため、アナログデジタル変換器のサンプリングレートを高くすることが考えられる。
【0010】
例えば、個々のアナログデジタル変換器を高速化させる技術の開発が進められている。ただし、アナログデジタル変換器の複数の回路ブロックに含まれるすべての素子を等しく高速化させることは容易ではない。さらに、複数のアナログデジタル変換器をインターリーブ方式で並列的に動作させ、個々のアナログデジタル変換器より高いサンプリングレートを得る方法が知られている。しかし、この方法を使うと、回路規模とコストの増大が避けられない。そこで、以下では、回路規模とコストを抑えつつ、急峻な変化を含む信号波形のアナログデジタル変換を実現する電子回路について説明する。
【0011】
図1は、一実施形態による回路システムの例を示している。
図1の回路システム1は、信号生成回路10と、電力回路20と、電子回路100とを含んでいる。信号生成回路10は、電子回路100の端子V
SP、V
TPおよびCLKに接続されている。また、電力回路20が端子V
INを介して電子回路100に接続されている。電子回路100は、端子V
INを介して入力された信号の一部期間における時間波形のアナログデジタル変換を行う。電子回路100によってデジタル化された信号は端子V
OUTより出力される。信号生成回路10は、クロック生成器11と、分周器12と、ワンショット回路13と、ワンショット回路17とを含んでいる。クロック生成器11は、分周器12と、ワンショット回路13に接続されている。ワンショット回路13は、電子回路100の端子V
SPに接続されている。また、分周器12は、ワンショット回路17と、電子回路100の端子CLKに接続されている。ワンショット回路17は、電子回路100の端子V
TPに接続されている。なお、
図1に示した信号生成回路10の構成は一例にしかすぎない。したがって、これとは異なる構成の回路を用いて、電子回路100の端子V
SP、V
TPおよびCLKに入力する信号を生成してもよい。
【0012】
電力回路20は、トランジスタ21と、ダイオード22と、インダクタ23と、抵抗器r1と、抵抗器r2とを含んでいる。トランジスタ21は、例えば、nチャネルの電界効果トランジスタ(FET)である。電力回路20のトランジスタ21のドレイン端子と端子Vpinとの間には、インダクタ23が接続されている。また、電力回路20のトランジスタ21のドレイン端子と端子Vpoutとの間には、ダイオード22が接続されている。端子Vpinは、例えば、電力回路20の入力端子に相当する。ダイオード22のカソード端子と接続されている端子Vpoutは、電力回路20の出力端子に相当する。トランジスタ21のソース端子は、電力回路20のグラウンドvssに接続されている。グラウンドvssは、例えば、基板の基準電位、信号の基準電位、接地電位である。ただし、グラウンドとして使う電位については、特に問わない。なお、ここに示した電力回路20の構成は一例にしかすぎない。したがって、電力回路は、これとは異なる構成であってもよい。トランジスタ21のドレイン端子と、グラウンドvssとの間には、抵抗器r1と抵抗器r2が直列に接続されている。抵抗器r1と抵抗器r2との間の接続点には、電子回路100の端子VINが接続されている。したがって、トランジスタ21のドレイン電圧は、抵抗器r1と抵抗器r2によって分圧され、端子VINを介して電子回路100に入力される。端子VINは、電子回路100の入力端子に相当する。
【0013】
電子回路100は、電力回路20の出力信号を計測対象となっている。ただし、電子回路の計測対象は、
図1の例と異なっていてもよい。このため、電子回路は、電力回路以外の回路から出力される信号を計測対象とすることができる。例えば、電子回路は、情報処理、通信、計測、画像処理、音声処理などその他の用途の回路を計測対象としてもよい。電力回路20では、パワーデバイスとしてnチャネルの電界効果トランジスタ(FET)が使われている。FETの例としては、MOSFET、JFET、MESFETなどがある。ただし、電力回路では、pチャネルのFET、バイポーラトランジスタ、サイリスタ、IGBTなどその他のパワーデバイス(半導体素子)が使われていてもよい。なお、電子回路100の詳細については、後述する。
【0014】
図2および
図3は、時間領域の信号波形がサンプリングされる期間の例を示している。
図2および
図3において、横軸はいずれも時刻を示している。また、
図2および
図3では、電圧信号の波形が示されているものとする。ただし、電子回路は、電流信号などその他の種類の信号を計測し、サンプリングしてもよい。
図2および
図3の上段には、端子V
INを介して電子回路100に入力される信号(入力信号とよぶ)の波形が示されている。また、
図2および
図3の下段には、信号生成回路の端子V
TR1の電圧波形(トリガ信号とよぶ)が示されている。
【0015】
図2および
図3において、P
sampは、電子回路100によってサンプリングが行われる期間(サンプリング期間とよぶ)を示している。また、P
grは、サンプリング期間と、その次のサンプリング期間との間の期間(猶予期間とよぶ)を示している。
図2に例示したサンプリング期間P
sampは、入力信号のパルスの立ち上がり期間を含んでいる。また、
図3に例示したサンプリング期間P
sampは、入力信号のパルスの立ち下がり期間を含んでいる。
図2および
図3のサンプリング期間P
sampは例にしかすぎない。したがって、これとは異なるタイミング/条件に基づきサンプリング期間P
sampを設定してもよい。複数のタイミングにおいて、入力信号のサンプリングが行われる場合、サンプリング期間は一定の長さに設定されていてもよいし、異なる長さに設定されていてもよい。また、時間軸において、サンプリング期間が周期的に設定されていてもよい。また、時間軸上の任意のタイミングにサンプリング期間が設定されていてもよい。
【0016】
図2および
図3におけるトリガ信号(端子V
TR1の電圧)を参照すると、電圧信号のパルスの立ち下がりがサンプリング期間P
sampの開始する直前のタイミングに到来していることがわかる。後述するように、トリガ信号のパルスが所定の条件を満たすと、電子回路100は、端子V
INから入力された信号のサンプリングを一定期間行う。例えば、トランジスタ21のゲート電圧がしきい値を超えるタイミングと、端子V
TR1にパルスが供給されるタイミングが同期するよう、トリガ信号を生成することができる。このような同期を行うために、例えば、トランジスタ21の駆動回路にトリガ信号を生成させてもよい。ただし、これとは異なるタイミングでトリガ信号のパルスが生成されてもよい。また、トリガ信号を生成する回路については、特に問わない。
【0017】
図2および
図3で例示したように、信号波形の全期間にわたってサンプリングを行わず、信号波形の一部期間(例えば、サンプリング期間P
samp)をサンプリングしてもよい。例えば、信号波形のうち、急峻な変化を含む部分のみをサンプリングすることができる。サンプリングを行わない期間(猶予期間P
gr)では、サンプリングした信号の量子化処理を実行することができる。このように、同一のクロックでサンプリング処理と、量子化処理とを実行せず、異なるクロックでサンプリング処理と量子化処理を実行することができる。すなわち、サンプリング処理と、量子化処理は、必ず同期していなくてもよい。例えば、電子回路100の前段部で信号波形の一部の期間をサンプリング(サンプリング処理)し、電子回路100の後段部でサンプリングされた信号を量子化(量子化処理)してもよい。例えば、f
f>f
bとなるよう、電子回路100の前段部のクロック周波数f
fと、電子回路100の後段部のクロック周波数f
bを設定することができる。サンプリングされた信号については、順次量子化処理を開始することができる。したがって、信号のサンプリングが行われている期間P
sampと、量子化処理が行われている期間の一部が重なっていてもよい。
【0018】
図4は、回路システム1における信号波形の例を示している。
図4のタイミングチャートには、クロック生成器11が生成する信号(CLK_A)の電圧波形と、ワンショット回路13の端子V
TR1におけるトリガ信号の電圧波形と、電子回路100の端子V
SPにおける電圧波形と、電子回路100の端子V
TPにおける電圧波形と、電子回路100の端子V
INにおける電圧波形とが示されている。
【0019】
信号CLKの電圧波形は、周期的なパルスを含んでいる。端子V
TR1に、しきい値th1より長いパルスが供給されると、ワンショット回路13は、一定の期間(例えば、P
samp)、クロック生成器11が生成した信号を供給する。ワンショット回路13が供給する信号は、端子V
SPに供給される第1パルス信号に相当する。第1パルス信号は、電子回路100でサンプリングが行われるタイミングを制御する信号である。第1パルス信号のパルス(
図4のV
SP)は、電子回路100のV
INから入力された信号がサンプリングされるタイミングを指定する。第1パルス信号
【0020】
クロック生成器11が生成した信号は、分周器12に供給される。分周器12は、クロック生成器11から供給された信号CLK_Aの周波数を1/m倍(mは正の整数)にした信号(CLK_B)を生成する。信号CLK_Bは、ワンショット回路17および電子回路100の端子CLKに供給される。信号CLK_Bは、電子回路100の後段の量子化処理において、クロックとして使われる。信号生成回路10が用いられる場合、電子回路100の前段部のクロック周波数ffと、電子回路100の後段のクロック周波数fbは、ff=(1/m)fbの関係式を満たす。電子回路100で使用するアナログデジタル変換器30または、比較器の動作可能な周波数に応じて、mの値を決定することができる。
【0021】
ワンショット回路17は、端子VTR2にしきい値th2より長いパルスが供給されると、一定の期間(例えば、Padc)、分周器12から供給された信号を端子VTPに供給する。分周器12が供給する信号のうち、期間Padcの波形が端子VTPに供給される。端子VTPにおける電圧波形を参照すると、パルスの周期が信号CLK_Aのm倍となっている。端子VTPに供給される第2パルス信号は、電子回路100における量子化処理のタイミングを指定する。
【0022】
次に、電子回路100の構成について説明する。
【0023】
図5は、一実施形態による電子回路の例を示した回路図である。
図5の電子回路100は、N個の遅延素子(遅延素子D0~D(N-1))と、N個のサンプルホールド回路(サンプルホールド回路SH1~SHN)と、N個のスイッチ(スイッチSW1~SWN)と、シフトレジスタ34と、アナログデジタル変換器30とを備えている。ここでは、サンプルホールド回路の個数と、遅延素子の個数が等しい場合を例に説明する。ただし、サンプルホールド回路SH1の端子V
C1に接続された遅延素子D0が省略されていてもよい。この場合、電子回路は少なくとも直列に接続されたN-1個の遅延素子を備えている。ここで、サンプルホールド回路は、保持回路の一例である。
【0024】
図5において、電子回路100の前段部は、遅延素子D0~D(N-1)と、サンプルホールド回路SH1~SHNとを含む。また、電子回路100の後段部は、スイッチSW1~SWNと、量子化回路50を備えている。量子化回路50は、シフトレジスタ34と、アナログデジタル変換器30とを含む。
【0025】
また、
図6は、電子回路100における信号波形の例を示したタイミングチャートである。
図6には、端子V
INにおける信号(入力信号)の電圧波形と、端子V
SPにおける第1パルス信号の電圧波形と、端子V
Cx(x=1、2、・・・、N)における信号の電圧波形と、端子V
TPにおける第2パルス信号の電圧波形と、スイッチSWxの制御端子V
SWx(x=1、2、・・・、N)における信号の電圧波形と、端子CLKにおける信号の電圧波形とが示されている。
図6において、横軸は時刻に対応している。
図6に示したように、第1パルス信号および第2パルス信号は、それぞれ立ち上がる時刻が異なっていてもよい。また、
図6に示したように、第2パルス信号のパルス幅は、第1パルス信号のパルス幅よりも大きくなっていてもよい。
【0026】
はじめに、電子回路100の前段部について説明する。サンプルホールド回路SHx(x=1、2、・・・、N)は、端子VCx(論理端子とよぶ)、端子VIx(アナログ端子とよぶ)と、端子soutxとを備えている。それぞれの論理端子VCxは、いずれかの遅延素子に接続されている。アナログ端子VIxは、端子VINに接続されている。それぞれの論理端子VCxには、異なる時間遅延を経た第1パルス信号が供給される。また、それぞれのアナログ端子VIxには、いずれも端子VINより信号が供給される。
【0027】
それぞれのサンプルホールド回路は、論理端子VCxにパルスが到来するタイミングで、アナログ端子VIxの電圧レベル(サンプリング電圧とよぶ)を保持する。例えば、サンプルホールド回路は、スイッチSWshがON(導通状態)であるとき、コンデンサCshに電荷をためることによってアナログ端子VIxの電圧レベルを記憶することができる(サンプルモード)。そして、サンプルホールド回路は、論理端子VCxにパルスが到来したタイミング(例えば、パルスの立ち下がりタイミング)で、スイッチSWshをOFFにする。これにより、サンプルホールド回路は、論理端子VCxにパルスが到来する直前のタイミングにおける電圧レベルの信号を端子soutから供給することができる(ホールドモード)。サンプルホールド回路は、例えば、オペアンプのボルテージフォロワ回路を使って実装することができる。ただし、サンプルホールド回路の構成については、特に問わない。
【0028】
複数の直列接続された遅延素子Dx(x=0、1、2、・・・、N-1)は、端子V
SPから供給される第1パルス信号を順次遅延させる。遅延素子D1は、サンプルホールド回路SH1の論理端子V
C1と、サンプルホールド回路SH2の論理端子V
C2との間に接続されている。遅延素子D2は、サンプルホールド回路SH2の論理端子V
C2と、サンプルホールド回路SH3の論理端子V
C3との間に接続されている。一般化すると、番号x=1、・・・、Nの遅延素子Dxは、サンプルホールド回路SHxの論理端子V
Cxと、サンプルホールド回路SH(x+1)の論理端子V
C(x+1)との間に接続されている。
図5の電子回路100は、サンプルホールド回路SH1の論理端子V
C1と端子V
SPとの間に接続された遅延素子D0を含め、N個の遅延素子を備えている。ただし、サンプルホールド回路SH1の論理端子V
C1と端子V
SPとの間に接続された遅延素子D0を省略した電子回路を用いることを妨げるものではない。この場合、電子回路は、N-1個の遅延素子Dx(x=1、2、・・・、N-1)を備える。
【0029】
遅延素子Dx(x=0、1、・・・、N-1)のそれぞれは、通過した信号を遅延量Tshだけ遅らせる。番号xが2以上のサンプルホールド回路SHxの論理端子V
Cxと、端子V
SPとの間には、x+1個の遅延素子が直列に接続されている。このため、
図6の論理端子V
Cx(x=1、2、・・・、N)における信号の電圧波形に示されているように、端子V
SPから供給された信号は、通過する遅延素子の個数に応じて遅延する。例えば、第1パルス信号がn個の遅延素子を通過した場合、もとの信号と比べて少なくともn×Tshの時間遅れが発生する。
【0030】
以下では、端子VSPに第1パルス信号のパルスが到来したタイミングを時刻t=0と仮定して、それぞれのサンプルホールド回路がサンプリングを行うタイミングを説明する。まず、サンプルホールド回路SH1は、時刻t=Tshにおいて、入力信号のサンプリングを行う。次に、サンプルホールド回路SH2は、時刻t=2×Tshにおいて、入力信号のサンプリングを行う。そして、サンプルホールド回路SH3は、時刻t=3×Tshにおいて、入力信号のサンプリングを行う。一般化すると、サンプルホールド回路SHxは、時刻t=x×Tshにおいて、入力信号のサンプリングを行う。
【0031】
すなわち、電子回路100では、端子VSPにひとつのパルスが供給されると、端子VINの入力信号が周期Tshで、合計N回(サンプルホールド回路の数に等しい回数)、サンプリングされることがわかる。
【0032】
電子回路100の前段部では、直列接続された遅延素子を含む回路を用いることにより、入力信号を一定のサンプリングレート(1/Tsh)で高速にサンプリングすることが可能となる。
【0033】
次に、電子回路100のスイッチSW1~SWNと、量子化回路50(電子回路100の後段部)について説明する。スイッチSW1~SWNは、それぞれ制御端子V
SW1~V
SWNの電圧に応じてON/OFFする。サンプルホールド回路SHx(x=1、2、・・・、N)の端子soutxには、スイッチSWxが接続されている。スイッチSWxの制御端子は、シフトレジスタ34の端子Q
xに接続されている。
図1および
図5を参照すると、分周器12から供給された第2パルス信号(
図6の端子V
TPにおける信号の電圧波形に相当)は、端子V
TPを介してシフトレジスタ34のシリアル端子に相当する端子S
INに入力される。また、シフトレジスタ34には、端子CLKおよび端子Cを介して周波数f
bのクロック信号CLK_Bが供給される。
【0034】
シフトレジスタ34が有するN個の端子Q
x(x=1、2、・・・、N)は、シフトレジスタ34のパラレル端子に相当する。それぞれの端子Q
x(x=1、2、・・・、N)は、対応するスイッチSWxの制御端子V
SWxに接続されている。シフトレジスタ34の端子Q
1からは、第2パルス信号がT
clkの時間遅れで供給される。このため、スイッチSW1は、もとの第2パルス信号よりT
clk遅れた信号によって制御される。また、シフトレジスタ34の端子Q
2からは、端子V
TPにおける電圧波形より2T
clkの時間遅れで第2パルス信号が供給される。このため、スイッチSW2は、もとの第2パルス信号より2T
clk遅れた信号によって制御される。同様に、シフトレジスタ34の端子Q
3からは、端子V
TPにおける電圧波形より3T
clkの時間遅れで第2パルス信号が供給される。このため、スイッチSW3は、もとの第2パルス信号より3T
clk遅れた信号によって制御される。このように、シフトレジスタ34の端子Q
x(x=1、2、・・・、N)では、番号xの昇順に、パルスが供給される(
図6の端子V
SW0~V
SWNの電圧波形)。
【0035】
スイッチSWx(x=1、2、・・・、N)は、制御端子VSWxにパルスが供給されたタイミングでON(導通状態)になる。スイッチSWxがONになると、サンプルホールド回路SHxの端子soutxから供給された信号は、アナログデジタル変換器30に供給される。それぞれのスイッチSWxは、シフトレジスタ34の端子Q1~QNからパルスが供給される順序にしたがい、順次ONになる(切り替わる)。したがって、それぞれのスイッチSWxは、番号xの昇順にONとなる。例えば、スイッチSW1、スイッチSW2、スイッチSW3、・・・、スイッチSWNの順でそれぞれのスイッチがONになる。いずれかのスイッチSWxがONとなっているタイミングにおいて、残りのスイッチはOFF(遮断状態)となる。例えば、スイッチSW1~SWNのうち、スイッチSW1がONになっているとき、スイッチSW2~SWNはOFFとなる。
【0036】
電子回路100では、番号xの小さいサンプルホールド回路から順に、保持されたサンプリング電圧がアナログデジタル変換器30に供給される。アナログデジタル変換器30は、端子CLKと接続されており、周波数fbのクロック信号CLK_Bによって動作する。このため、アナログデジタル変換器30は、クロック信号CLK_Bのタイミングで、それぞれのサンプリングホールド回路から供給されたサンプリング電圧を比較し、量子化処理を行う。量子化されたデジタル信号は、端子VOUTより出力される。アナログデジタル変換器30は、例えば、フラッシュ型、SAR型、デルタシグマ型のいずれかの方式のアナログデジタル変換器である。ただし、使用するアナログデジタル変換器の種類については限定しない。
【0037】
電子回路は、複数の直列接続された第1遅延素子(遅延素子Dx)と、複数の第1保持回路(サンプルホールド回路SHx)と、複数の第1スイッチ(スイッチSWx)と、量子化回路とを備えていてもよい。複数の直列接続された第1遅延素子Dxは、第1端子(端子VSP)から供給される第1パルス信号を順次遅延させる。複数の第1保持回路は、複数の第1遅延素子Dxから供給される、遅延された複数の第1パルス信号に応じて、入力端子から供給される入力信号の電圧を保持する。複数の第1スイッチは、複数の第1保持回路とそれぞれ接続されている。また、複数の第1スイッチには、第1パルス信号とはパルス幅が異なる複数の第2パルス信号が供給され、複数の第1スイッチは、複数の第2パルス信号に応じて順次切り替わる。量子化回路は、複数の第1スイッチと接続されている。量子化回路は、複数の第1保持回路に保持された電圧を、複数の第1スイッチの切り替えタイミングに応じて量子化して出力する。
【0038】
また、
図5に例示したように、量子化回路は、クロック信号に同期して、複数の第2パルス信号を生成し、複数の第1スイッチ(スイッチSWx)に供給するシフトレジスタと、複数の第1スイッチに接続されたアナログデジタル変換器とを含んでいてもよい。ただし、
図5に示した量子化回路50は、量子化回路の構成の一例にしかすぎない。
【0039】
電子回路100では、サンプリング処理とは異なるクロックで量子化処理を行うことができる。量子化処理のクロックは、サンプリング処理のクロックより低速であってもよい。すなわち、量子化回路は、導通状態の第1スイッチが切り替わる周期が、それぞれの第1遅延素子を通過する信号の時間遅れより大きくなるように構成されていてもよい。また、
図6の例では、入力信号(端子V
IN)の電圧の立ち上がり期間について、アナログデジタル変換が行われているが、
図3の例のように、入力信号の電圧の立ち下がり期間について、アナログデジタル変換を行ってもよい。
【0040】
上述の電子回路100は、入力信号のアナログデジタル変換が可能な回路の一例にしかすぎない。したがって、上述の電子回路100とは異なる構成の電子回路を用いて、入力信号のアナログデジタル変換を行ってもよい。以下では、回路システム1において、電子回路100の代わりに使用することができる、変形例の電子回路(電子回路100~109)について説明する。
【0041】
(電子回路の第1の変形例)
図7は、電子回路101の例を示した回路図である。電子回路101の前段部の構成は、電子回路100の前段部と同様である。電子回路101の前段部では、電子回路100と同様、サンプルホールド回路SH1の論理端子V
C1に接続された遅延素子D0を省略することができる。以下では、電子回路101のうち、電子回路の後段部に相当する、複数のスイッチと、量子化回路51の構成を説明する。
【0042】
量子化回路51は、クロック生成器31と、N個のDフリップフロップFx(x=1、2、・・・、N)と、N個のスイッチSWx(x=1、2、・・・、N)と、2M個の比較器COMPy(y=1、2、・・・、2M)と、デコーダ32とを備えている。ここで、Mは、1以上の整数であるものとする。ここで、デコーダ32は、変換回路の一例である。
【0043】
サンプルホールド回路SHxの端子soutx(x=1、2、・・・、N)は、スイッチSWxに接続されている。そして、N個のスイッチSWxには、2
M個の比較器COMPy(y=1、2、・・・、2
M)が並列に接続されている。N個のスイッチSWxは、いずれも2
M個の比較器COMPyの第1端子に接続されている。2
M個の比較器COMPyの第2端子には、それぞれ異なる参照電圧V
R0~V
R2^Mが印加されている。また、比較器COMPyのそれぞれは、デコーダ32に接続されている。そして、デコーダ32の出力端子は、
図1の端子V
OUTに相当する。
【0044】
N個のDフリップフロップFx(x=1、2、・・・、N)のクロック端子と、2
M個の比較器COMPy(y=1、2、・・・、2
M)のCLK端子は、クロック生成器31に接続されている。なお、クロック生成器31を省略し、N個のDフリップフロップFxのCLK端子と、2
M個の比較器COMPyのクロック端子とを
図1の分周器12に接続してもよい。
【0045】
電子回路101の端子VTPは、DフリップフロップF1のD端子に接続されている。このため、DフリップフロップF2のD端子には、端子VTPを介して第2パルス信号が供給される。DフリップフロップF0のQ端子は、スイッチSW1の制御端子に接続されている。このため、スイッチSW1は、DフリップフロップF1のQ端子の電圧レベルに応じてON/OFFする(導通状態または非導通状態になる)。また、DフリップフロップF1のQ端子は、DフリップフリップF2のD端子にも接続されている。DフリップフロップF2のQ端子は、スイッチSW2の制御端子に接続されている。このため、スイッチSW2は、DフリップフロップF2のQ端子の電圧レベルに応じてON/OFFする。同様に、DフリップフロップF2のQ端子は、DフリップフリップF3のD端子にも接続されている。DフリップフロップF3のQ端子は、スイッチSW3の制御端子に接続されている。このため、スイッチSW3は、DフリップフロップF3のQ端子の電圧レベルに応じてON/OFFする。
【0046】
なお、
図7の例では、スイッチSWx(x=1、2、・・・、N)として、FETが用いられている。したがって、スイッチSWxの制御端子は、FETのゲート端子に相当する。
【0047】
このように、N個のDフリップフロップFx(x=1、2、・・・、N)は、同一のクロック信号CLK_Bによって駆動されており、DフリップフロップFnのQ端子がDフリップフロップF(n+1)のD端子に接続されている。ここで、nは、1以上でNより小さい整数である。すなわち、N個のDフリップフロップは、シフトレジスタ34aを形成している。シフトレジスタ34aの動作により、N個のスイッチSWxは、順次、番号xの昇順にONする(切り替わる)。したがって、N個のサンプルホールド回路SHxのサンプリング電圧は、番号xの昇順に、順次、2M個の並列接続された比較器COMPy(y=1、2、・・・、2M)に供給される。それぞれの比較器COMPyは、サンプリング電圧を参照電圧と比較した結果に応じて、HIGHまたはLOWの信号をデコーダ32に供給する。そして、デコーダ32は、複数の比較器COMPyによって量子化されたサンプリング電圧をデジタル化して出力する。
【0048】
このように、量子化回路は、クロック信号に同期して、複数の第2パルス信号を生成し、複数の第1スイッチ(スイッチSWx)に供給するシフトレジスタと、複数の第1スイッチに接続され、複数の第1保持回路(サンプルホールド回路SHx)に保持された電圧を比較する複数の第1比較器(比較器COMPy)と、複数の第1比較器の比較結果に基づき、量子化された電圧をデジタル化して出力する変換回路(デコーダ32)とを含んでいてもよい。
図4の電子回路101で例示したように、前段のDフリップフロップのQ端子が後段のDフリップフロップのD端子が接続されている、複数のDフリップフロップのチェインを用いてシフトレジスタを実装してもよい。
【0049】
電子回路101を使っても、サンプリング処理とは異なるクロックで量子化処理を行うことが可能であり、上述の電子回路100と同様の機能を実現することができる。
【0050】
(電子回路の第2の変形例)
図8は、電子回路102の例を示した回路図である。電子回路102の量子化回路51Aでは、比較器CMPy(y=1、2、・・・、2
M)の前段部に、差動増幅器Ayが設けられている。すなわち、スイッチSWxは、差動増幅器Ayの第1端子に接続されている。ここで、差動増幅器は、増幅器の一例である。また、参照電位V
Ryは、差動増幅器Ayの第2端子に接続されている。そして、差動増幅器Ayの第1端子は、比較器CMPyの第1端子に接続されている。同様に、差動増幅器Ayの第2端子は、比較器CMPyの第2端子に接続されている。電子回路102の構成では、信号および参照電圧が増幅されてから比較器CMPyに供給されるため、量子化処理におけるノイズの影響を抑制することが可能である。差動増幅器Ayが追加されている点を除けば、電子回路102のその他の部分の構成は、上述の電子回路101と同様である。
【0051】
このように、電子回路の量子化回路は、第1保持回路(サンプリングホールド回路SHx)に保持された電圧および参照電位を増幅し、第1比較器(比較器CMPy)に供給する複数の第1増幅器(例えば、差動増幅器Ay)をさらに含んでいてもよい。電子回路102によっても、上述の電子回路100、101と同様の機能を実現することができる。
【0052】
(電子回路の第3の変形例)
図9は、電子回路103の例を示した回路図である。電子回路103の量子化回路52では、スイッチSWx(x=1、2、・・・、N)の制御端子に、DフリップフロップFxのQ端子ではなく、遅延素子VDxが接続されている。すなわち、電子回路103では、端子V
TPと、スイッチSWNの制御端子との間には、N個の遅延素子VDxが直列に接続されている。それぞれの遅延素子VDxの遅延量は、端子CLKから供給されるクロック信号CLK_Bの周波数の逆数1/f
bに等しい時間に設定されている。なお、端子CLKは、
図1の分周器12のまたは、
図7または
図8のクロック生成器31に供給されているものとする。このため、端子V
TPから供給された信号の時間遅れは、通過した遅延素子VDxの数に応じて大きくなる。電子回路102と同様、N個のスイッチSWxは、順次、番号xの昇順にONする(切り替わる)。
【0053】
N個のサンプルホールド回路SHxのサンプリング電圧は、順次、番号xの昇順に2M個の並列接続された比較器COMPy(y=1、2、・・・、2M)に供給される。それぞれの比較器COMPyは、供給された電圧信号を参照電圧と比較した結果に応じて、HIGHまたはLOWの信号をデコーダ32に供給する。そして、デコーダ32は、量子化されたデジタル信号を出力する。
【0054】
このように、電子回路は、複数の直列に接続された第2遅延素子(遅延素子VDx)と、複数の第1比較器(比較器COMPy)とを備えていてもよい。複数の直列に接続された第2遅延素子は、第2パルス信号を順次遅延させる。複数の第1比較器は、複数の第1スイッチ(スイッチSWx)に接続されており、複数の第1保持回路(サンプルホールド回路SHx)に保持された電圧を比較する。複数の第1スイッチは、複数の第2遅延素子から供給される、遅延された複数の第2パルス信号に応じて順次切り替わる。量子化回路は、複数の前記第1比較器の比較結果に基づき、量子化された電圧をデジタル化して出力する変換回路を含んでいる。電子回路103のその他の部分の構成は、上述の電子回路102と同様である。電子回路103によっても、上述の電子回路100~102と同様の機能を実現することが可能である。
【0055】
(電子回路の第4の変形例)
図10は、電子回路104の例を示した回路図である。電子回路104は、上述の電子回路100~103の機能に加え、追加的な機能を備えている。電子回路104では、電子回路100の前段部の構成が変更されている。電子回路104は、N個の遅延素子Dx(x=0、1、2、・・・、N-1)に代わり、遅延量(時間遅れ)が調整可能なN個の可変遅延素子D´x(x=0、1、2、・・・、N-1)を備えている。また、それぞれの可変遅延素子D´xは、遅延同期ループ回路33に接続されている。遅延同期ループ回路33は、それぞれの可変遅延素子D´xに対して遅延量の基準となる信号(基準信号)を送出する。それぞれの可変遅延素子D´xは、基準信号に対応する遅延量を設定する。一般に、遅延素子の遅延量は、電圧、温度、プロセスによってばらつくことが知られている。電子回路104を用いることにより、N個の可変遅延素子D´xの遅延量を高い精度で所望の値に設定することが可能になる。したがって、サンプリング処理において、一定のサンプリングレートを維持することができる。また、入力信号の種類、計測対象の回路、計測タイミングによって、サンプリングレートを変更することが可能となる。なお、電子回路104のその他の構成要素は、上述の電子回路100と同様である。
【0056】
このように、電子回路において、複数の第1遅延素子は、複数の可変遅延素子(D´x)であってもよい。この場合、電子回路は、複数の可変遅延素子の遅延量を決定する第1制御回路をさらに備えていてもよい。上述の遅延同期ループ回路33は、第1制御回路の一例である。
【0057】
(電子回路の第5の変形例)
図11は、電子回路105の例を示した回路図である。電子回路105も、上述の電子回路100~103の機能に加え、追加的な機能を備えている。電子回路105でも、電子回路100の前段部の構成が変更されている。電子回路105は、N個の遅延素子Dx(x=0、1、2、・・・、N-1)に代わり、遅延量(時間遅れ)が調整可能なN個の可変遅延素子D´x(x=0、1、2、・・・、N-1)を備えている。また、それぞれの可変遅延素子D´xは、遅延制御回路35に接続されている。遅延制御回路35は、それぞれの可変遅延素子D´xの遅延量を変更させる。したがって、信号(例えば、パワーデバイスのドレイン電圧またはドレイン電流)の変化が遅い場合でも、サンプリングレートを変更し、波形の計測対象の部分(例えば、パルスの立ち上がりなど)を漏れなくサンプリングすることが可能となる。また、計測対象の波形に適合した、サンプリングレートを使うことができるようになる。なお、電子回路104のその他の構成要素は、上述の電子回路100と同様である。
【0058】
このように、電子回路において、複数の第1遅延素子は、複数の可変遅延素子(D´x)であってもよい。この場合、電子回路は、複数の可変遅延素子の遅延量を決定する第1制御回路をさらに備えていてもよい。上述の遅延制御回路35は、第1制御回路の一例である。
【0059】
(電子回路の第6の変形例)
上述の
図6に示したタイミングチャートでは、サンプルホールド回路SH1の論理端子V
C1に供給された第1パルス信号のパルスの立ち下がりエッジが、端子V
INに入力される信号(入力信号)のパルスの立ち上がりのタイミングと一致している。このため、電子回路は、入力信号のパルスの立ち上がりタイミングをサンプリング期間P
sampとして、アナログデジタル変換を行うことができた。ただし、このような処理を実現するためには、サンプリングを開始したいタイミングでサンプルホールド回路SH1の論理端子V
C1にパルスを供給する必要がある。以下では、電子回路100との相違点を中心に、サンプリング処理の開始タイミングを制御することが可能な電子回路の例について述べる。
【0060】
図12は、電子回路106の例を示した回路図である。電子回路106は、電子回路100に、サンプリング処理の開始タイミングを制御する機能を追加した電子回路に相当する。電子回路106は、遅延素子D0に代わり、遅延量(時間遅れ)が調整可能な遅延素子D´0を備えている。また、電子回路106は、さらに比較器CompV
DSと、制御回路I
0と、メモリI
MEMとを備えている。制御回路I
0は、遅延素子D´
0に接続されている。制御回路I
0は、遅延素子D´
0における遅延量を変更可能に構成されている。比較器CompV
DSの第1端子は、電子回路106の端子V
INに接続されている。また、比較器CompV
DSの第2端子は、参照電位v
refに接続されている。比較器CompV
DSの端子coutは、制御回路I
0に接続されている。そして、メモリI
MEMは、制御回路I
0に接続されている。
【0061】
なお、
図12には、電子回路106だけでなく、電力回路20aも示されている。電力回路20aは、
図1の電力回路20の構成要素に加え、信号発生器24を備えている。信号発生器24、比較器CompV
DS、制御回路I
0は、いずれも端子CLKPWMに接続されている。また、信号発生器24の端子out1は、トランジスタ21のゲート端子に接続されている。端子CLKPWMには、クロック信号が供給される。端子CLKPWMには、
図1のクロック生成器11が接続されていてもよいし、その他のクロック生成器が接続されていてもよい。端子CLKPWMに供給されるクロック信号は、トランジスタ21のドレイン・ゲート間のON/OFF(導通状態/遮断状態)を制御する。また、端子CLKPWMに供給されるクロック信号は、比較器CompV
DSと、制御回路I
0にも供給される。
【0062】
なお、
図12の例のように、信号発生器24は、ふたつの端子を備えていてもよい。信号発生器24の端子out1から供給される信号は、トランジスタ21のゲート電圧v
GSを制御する。一方、信号発生器24の端子out2は、ワンショット回路13(
図1参照)の端子V
TRに接続されていてもよい。信号発生器24は、端子out2を介してワンショット回路13にしきい値th1より長いパルスを供給する。これにより、ワンショット回路13を介して、端子V
SPにクロック生成器11の第1パルス信号のパルスが供給されるようになる。信号発生器24は、トランジスタ21のゲート電圧v
GSレベルが変化するタイミングと、端子V
SPにパルスの到来するタイミングとを同期させることができる。
【0063】
図13は、電子回路106における信号波形の例を示したタイミングチャートである。
図13のタイミングチャートには、トランジスタ21のゲート電圧v
GS、端子V
INの電圧、比較器の端子coutの電圧、端子CLKPWMの電圧が示されている。
図13の横軸は、時刻に相当する。例えば、電子回路106を含む
図12の回路では、トランジスタ21のゲート電圧v
GSがHIGHからLOWになったときから、ドレイン電圧v
DSがHIGHからLOWになるまで、一定の遅延がある。トランジスタ21のゲート電圧v
GSがLOWからHIGHになるとき場合も、一定の遅延の後、ドレイン電圧v
DSがLOWからHIGHに変化する。この遅延は、温度、プロセスなどの条件によって異なる値をとりうる。比較器CompV
DSは、端子V
INにおける電圧信号のレベルが参照電圧v
refより高くなると、端子coutよりHIGHの信号を供給する。制御回路I
0は、端子CLKPWMから供給された信号と、比較器CompV
DSから供給された信号に基づき、トランジスタ21のゲート電圧v
GSがHIGHからLOWになったときから、比較器の端子coutの電圧レベルがHIGHになるまでに要する時間T
COを計測する。ここで、制御回路I
0は、計測した時間T
COをメモリI
MEMに保存してもよい。
【0064】
制御回路I0は、メモリIMEMに保存した時間TCOの値に基づき、可変遅延素子D´0における遅延量(時間遅れ)を設定することができる。例えば、制御回路I0は、サンプルホールド回路SH1の端子VIO(または、端子VIN)の電圧信号におけるパルスの立ち上がりのタイミングと、サンプルホールド回路SH1の論理端子VC1の電圧信号におけるパルスの立ち下がりのタイミングが一致するよう、可変遅延素子D´0の遅延量を設定してもよい。また、制御回路I0は、サンプルホールド回路SH1の端子VI1(または、端子VIN)の電圧信号におけるパルスの立ち上がりのタイミングの前に、サンプルホールド回路SH1の論理端子VC1の電圧信号におけるパルスの立ち下がりが発生するよう、可変遅延素子D´0の遅延量を設定してもよい。これにより、端子VINにおける、電圧信号のパルスの立ち上がり期間における正確なサンプリングを行うことが可能となる。また、比較器CompVDSの参照電圧vrefおよび制御回路I0の論理を変更すれば、端子VINにおける、電圧信号のパルスの立ち下がり期間におけるサンプリングを行うこともできる。
【0065】
このように、電子回路は、入力信号を供給する半導体素子と、半導体素子の入力電圧を制御する信号発生器(信号発生器24)と、入力信号および参照電位を比較する第2比較器(比較器CompVDS)と、信号発生器および第2比較器に接続された第3制御回路(制御回路I0)とをさらに備えていてもよい。例えば、複数の第1遅延素子のうち、第1端子(端子VSP)に接続された遅延素子は可変遅延素子である。第3制御回路は、信号発生器が入力電圧を変更したときから、第2比較器の出力電圧が変化するまでの時差に基づき、可変遅延素子の遅延量を決定してもよい。ここで、半導体素子として、例えば、FETなどのパワーデバイスを使うことができる。ただし、半導体素子の種類については、特に問わない。なお、電子回路106のその他の部分の構成は、上述の電子回路100と同様である。
【0066】
(電子回路の第7の変形例)
上述の電子回路100~106は、参照電圧とサンプリング電圧を比較する比較器CMPyまたは、サンプリング電圧を量子化したデジタル信号を生成するアナログデジタル変換器30を備えていた。電子回路の周辺にある回路(例えば、電圧回路)の電圧変動が、回路の寄生容量によって伝播し、比較器CMPyまたはアナログデジタル変換器30の誤作動を引き起こす可能性がある。そこで、計測対象の回路にパワーデバイスが含まれる場合、パワーデバイスを駆動する信号(例えば、トランジスタ21のゲート端子に供給される信号)のパルスのエッジから時差をおいて、サンプルホールド回路SH1のサンプリング電圧を、比較器CMPyまたは、アナログデジタル変換器30に転送すれば、ノイズの影響を軽減することが可能である。ここで、パルスのエッジは、立ち上がりエッジと、立ち下がりエッジの両方を含むものとする。端子VTPに電圧信号のパルスが供給されたことをトリガとして、サンプルホールド回路SH1のサンプリング電圧は、比較器CMPyまたは、アナログデジタル変換器30に転送される。
【0067】
例えば、
図14のタイムチャートに示したように、トランジスタ21のゲート電圧v
GSにおけるパルスの立ち下がりエッジと、立ち上がりエッジとの中間となるタイミングに端子V
TPに電圧信号のパルスを供給することができる。なお、端子V
TPに電圧信号のパルスが供給される時刻と、トランジスタ21のゲート電圧v
GSにおけるパルスの立ち下がりエッジに相当する時刻との差をt
d1とし、トランジスタ21のゲート電圧v
GSにおけるパルスの立ち上がりエッジに相当する時刻と、端子V
TPに電圧信号のパルスが供給される時刻との差をt
d2とした場合、t
d1とt
d2を等しく設定することができる。t
d1とt
d2との差を小さくするほど、量子化処理におけるノイズの影響を減らすことが可能である。
【0068】
図15は、電子回路107の例を示した回路図である。制御回路14は、端子pdriveと、端子V
TPと、端子CLK_Cと、端子V
TCTLとを備えている。端子pdriveは、トランジスタ21のゲート端子に接続されている。制御回路14は、端子pdriveを介して、トランジスタ21のゲート電圧v
gsを制御する。端子CLK_Cは、例えば、クロック生成器(図示せず)に接続されている。制御回路14は、端子CLK_Cから供給されたクロック信号によって駆動されてもよい。端子V
TCTLには、例えば、端子V
TPにおいて電圧信号のパルスが生成されるタイミングを指定する信号が供給される。制御回路14は、端子V
TCTLから供給された信号に基づいて、端子pdriveおよび端子V
TPから電圧信号を供給してもよい。また、端子V
TCTLから供給された信号に関わらず、端子pdriveおよび端子V
TPから電圧信号を供給してもよい。端子V
TPからは、サンプリング電圧がアナログデジタル変換器30への転送タイミングを指定するパルスを含む電圧信号(第2パルス信号)が供給される。
図15の構成では、同一の制御回路14が、トランジスタ21のゲート電圧v
gsと、端子V
TPの電圧信号を制御しているため、
図14のタイミングチャートのように、パワーデバイスの駆動信号のエッジから時差をおいて、量子化処理を行うことができる。
【0069】
このように、電子回路は、入力信号を供給する半導体素子と、半導体素子およびシフトレジスタに接続され、半導体素子に供給する入力電圧を決定し、入力電圧に基づいて、シフトレジスタが第2パルス信号を供給する時刻を決定する第2制御回路(制御回路14)をさらに備えていてもよい。ここで、半導体素子として、例えば、FETなどのパワーデバイスを使うことができる。ただし、半導体素子の種類については、特に問わない。第2制御回路は、パワーデバイスの入力電圧が変更されている期間において、シリアル端子へのパルスの出力を抑止するように構成されていてもよい。ここで、パワーデバイスの入力電圧の変更の例としては、ゲート端子における電圧信号のパルスの立ち上がり期間およびパルスの立ち上がり期間に相当する電圧の変更が挙げられる。
図15の電子回路107の例では、パワーデバイスがFETであり、パワーデバイスの出力端子は、FETのドレイン端子に相当していた。ただし、第2端子が接続されるパワーデバイスの種類と、パワーデバイスの端子については、特に問わない。なお、電子回路107のその他の構成要素は、電子回路100と同様である。
【0070】
(電子回路の第8の変形例)
パワーデバイスでは、寄生容量および寄生インダクタンスの影響により、電圧変動が生じることがある。この電圧変動はリンギングとも称される。このリンギングは、例えば、スイッチング時におけるパワーデバイスの出力波形に現れる。パワーデバイスがトランジスタである場合、リンギングは、電圧波形の立ち上がりエッジおよび/または立ち下がりエッジ近傍における高周波成分のノイズとして現れる。以下では、リンギングの影響を軽減し、高い精度のアナログデジタル変換処理を実現する電子回路の例を説明する。
【0071】
図16は、電子回路108の例を示した回路図である。電子回路108は、電子回路107に、リンギング検出回路15が追加されている。また、電子回路108では、制御回路14が制御回路16に置き換えられている。リンギング検出回路15の端子rinは、端子V
INに接続されている。また、リンギング検出回路15の端子routは、制御回路16に接続されている。リンギング検出回路15は、端子V
INにおける電圧信号を監視し、リンギングの有無を判定する。
【0072】
リンギング検出回路15は、リンギングを検出した場合、制御回路16にリンギングが発生している旨を通知する。また、リンギング検出回路15は、リンギングを検出していない旨または、リンギングによるノイズ成分の振幅がしきい値より低くなった旨を制御回路16に通知してもよい。リンギング検出回路15による、リンギングの監視および制御回路16への通知は、周期的に行われてもよい。制御回路16は、制御回路14の機能に加え、リンギングが発生している旨の通知を受信したときに、端子V
TPへのパルスの供給を抑止する機能を備えている。制御回路16は、リンギングが検出されていない旨の通知または、リンキングによるノイズ成分の振幅がしきい値より低くなった旨の通知を受けたら、端子V
TPより電圧信号のパルス(第2パルス信号)を供給することができる。
図17のタイムチャートのように、制御回路16は、リンギングが検出されていない旨の通知または、リンキングによるノイズ成分の振幅がしきい値より低くなった旨の通知を受けてから、期間thを経過したときに、端子V
TPより電圧信号のパルス(第2パルス信号)を供給してもよい。
【0073】
すなわち、電子回路は、入力電圧におけるリンギングを検出する検出回路(例えば、上述のリンギング検出回路15)を備えていてもよい。この場合、第2制御回路(制御回路14)は、さらに検出回路から送信されたリンギングの検出に関する通知に基づき、シフトレジスタが第2パルス信号を供給する時刻を決定してもよい。第2制御回路は、リンギング検出回路がリンギングを検出している期間において、シフトレジスタのシリアル端子(端子SIN)へのパルスの供給を抑止するように構成されていてもよい。
【0074】
電子回路108を用いることにより、アナログデジタル変換処理におけるリンギングの影響を軽減することができる。なお、電子回路108のその他の構成要素は、電子回路107と同様であるものとする。電子回路107および電子回路108は、端子VINに入力された電圧信号のパルスの立ち上がり期間のアナログデジタル変換を行う場合と、端子VINに入力された電圧信号のパルスの立ち下がり期間のアナログデジタル変換を行う場合の両方において適用することが可能である。
【0075】
(電子回路の第9の変形例)
図18は、電子回路109の例を示した回路図である。電子回路109は、電子回路100にスイッチSWR1と、スイッチSWR2とを追加した構成となっている。電子回路109では、電源電位v
ddと、端子V
INとの間にスイッチSWR2が接続されている。また、端子V
INと、グラウンドv
ssとの間にスイッチSWR1が接続されている。なお、
図18には、電子回路109だけでなく、電力回路20bも示されている。電力回路20bは、電力回路20の抵抗器r1およびr2がそれぞれコンデンサc1およびc2に置き換えられた回路である。電力回路20bのように、パワーデバイスの出力電圧(例えば、トランジスタ21のドレイン電圧)が容量分圧されてから端子V
INに接続される構成を用いることができる。ただし、このような構成では、アナログデジタル変換を行う前に、計測される信号が以前端子V
INに入力された信号に影響されないよう、端子V
INの電圧レベルをリセットする必要がある。そこで、電子回路109では、スイッチSWR1およびSWR2をONにし、端子V
INの電圧レベルをリセットする。スイッチSWR1およびSWR2は、例えば、上述の制御回路14または16(図示せず)によって制御される。これにより、パワーデバイスの出力電圧が容量分圧されている場合にも、高い精度でアナログデジタル変換を行うことが可能となる。
【0076】
このように、電子回路は、入力信号を供給する半導体素子と、半導体素子および入力端子との間に接続された第1コンデンサ(コンデンサc1)と、第1コンデンサとグラウンドとの間に接続された第2コンデンサ(コンデンサc2)と、電源電位と入力端子(端子V
IN)との間に接続された第2スイッチ(スイッチSWR2)と、入力端子とグラウンドとの間に接続された第3スイッチ(スイッチSWR1)とをさらに備えていてもよい。ここで、半導体素子として、例えば、FETなどのパワーデバイスを使うことができる。ただし、半導体素子の種類については、特に問わない。
図18では、パワーデバイスがFETであり、パワーデバイスの出力は、FETのドレイン端子であった。ただし、パワーデバイスの種類と、出力端子として使われる端子の種類については、問わない。
【0077】
(電子回路の第10の変形例)
上述では、主にトランジスタのドレイン端子における電圧信号をアナログデジタル変換する場合を例に、電子回路の説明を行った。ただし、電子回路がアナログデジタル変換の対象とする信号は、これに限定されない。電子回路の端子VINは、トランジスタのドレイン以外の端子に接続されていてもよい。電子回路は、その他のパワーデバイスから出力される信号をアナログデジタル変換してもよい。例えば、以下で述べるように、電子回路は、電流信号を計測し、当該計測値に基づく電圧信号をアナログデジタル変換してもよい。
【0078】
図19は、電子回路100が増幅回路40を介して電力回路20bに接続された構成の例を示した回路図である。
図19では、回路の入力側から出力側に向かって、電力回路20b、増幅回路40、電子回路100が配置されている。電力回路20bは、トランジスタ(電界効果トランジスタ)21と、ダイオード22と、インダクタ23と、抵抗器R1とを含んでいる。電源電位v
ddと、トランジスタ21のドレイン端子との間には、ダイオード22と、インダクタ23が並列に接続されている。トランジスタ21のソース端子と、グラウンドv
ssとの間には、抵抗器R1が接続されている。また、トランジスタ21のソース端子には、端子ADCgndが接続されている。端子ADCgndは、ADC30の基準電位に接続されている。このように、ADC30が実装されているドライバチップの基準電位は、パワーデバイスのソース端子の電位となっている場合がある。電力回路20bでは、トランジスタのゲート端子に印加される電圧v
gsに応じて、ゲート・ソース間に電流I
Dが流れる。パルスの立ち上がり時には、電流I
Dが増え、パルスの立ち下がり時には、電流I
Dが減少する。電流I
Dにより、抵抗器R1では、電源v
dd側からグラウンドv
ss側に向かって電圧降下(負の電圧)が生ずる。
【0079】
また、抵抗器R1と、グラウンドvssの間の端子ioutには、増幅回路40の抵抗器R2が接続されている。増幅回路40は、増幅器AMPと、抵抗器R2と、抵抗器R3とを備えている。例えば、増幅器AMPは、オペアンプである。抵抗器R2は、端子iout(グラウンドvss)と、増幅器AMPの負端子との間に接続されている。抵抗器R3は、増幅器AMPの負端子と、端子VINとの間に接続されている。増幅器AMPの正端子には、端子Vrefampが接続されている。端子Vrefampには、増幅器AMPの参照電位が印加される。そして、増幅器AMPの後段側は、電子回路100の入力端子VINに接続されている。すなわち、増幅回路40は、反転増幅回路となっており、電力回路20bの電流信号IDを正の電圧に変換し、電子回路100の入力端子VINに入力する。変換後の正の電圧信号を入力として、電子回路100は、アナログデジタル変換を行うことが可能である。
【0080】
このように、電子回路は、半導体素子と、半導体素子およびグラウンドに接続された第1抵抗器(抵抗器R1)と、第1抵抗器と接続された第2抵抗器(抵抗器R2)と、第2抵抗器および参照電位に接続され、入力信号を供給する第2増幅器(増幅器AMP)と、第2抵抗器および第2増幅器の間にある第1ノードと、第2増幅器および入力端子(端子V)の間にある第2ノードとを接続する第3抵抗器(抵抗器R3)とをさらに備えていてもよい。ここで、半導体素子として、例えば、FETなどのパワーデバイスを使うことができる。ただし、半導体素子の種類については、特に問わない。
図19の例では、パワーデバイスがFETであり、パワーデバイスの出力として、FETのソースが使われていた。ただし、使われるパワーデバイスの種類と、パワーデバイスの端子については、特に問わない。
【0081】
(電子回路で使われる比較器の例)
上述では、比較器またはアナログデジタル変換器を含む電子回路100~109について説明した。上述の電子回路100~109の回路図に、比較器が明示的に描かれていない場合であっても、アナログデジタル変換器を構成する回路の内部の構成要素として、比較器が含まれている場合もある。以下では、上述の電子回路100~109で使われる比較器の例について説明する。
【0082】
図20は、比較器36の例を示した回路図である。比較器36は、5個のNMOSトランジスタと、4個のPMOSトランジスタとを備えている。比較器36のトランジスタM
1と、トランジスタM
2と、トランジスタM
3と、トランジスタM
7と、トランジスタM
8は、NMOSトランジスタである。一方、比較器36のトランジスタM
4と、トランジスタM
5と、トランジスタM
9と、トランジスタM
10は、PMOSトランジスタである。
【0083】
トランジスタM1のソース端子は、比較器36の基準電位(グラウンド)vSScに接続されている。トランジスタM1は、ゲート端子に供給されるクロック信号に応じて比較器36をON/OFFするスイッチである。トランジスタM2のソース端子と、トランジスタM3のソース端子は、いずれも、トランジスタM1のドレイン端子に接続されている。トランジスタM2と、トランジスタM3は、端子INNに印加される電圧と端子INPに印加される電圧を比較する差動対を形成している。
【0084】
トランジスタM9のソース端子と、トランジスタM10のソース端子は、いずれも比較器36の電源電位VDDcに接続されている。また、トランジスタM9のドレイン端子は、トランジスタM7のドレイン端子に接続されている。トランジスタM10のドレイン端子は、トランジスタM8のドレイン端子に接続されている。トランジスタM7のソース端子は、トランジスタM2のドレイン端子に接続されている。トランジスタM8のソース端子は、トランジスタM3のドレイン端子に接続されている。すなわち、トランジスタM7と、トランジスタM9は、第1CMOSインバータ(INV1)を形成している。一方、トランジスタM8と、トランジスタM10は、第2CMOSインバータ(INV2)を形成している。ここで、第1CMOSインバータは、比較器36の電源電位VDDcと、トランジスタM2のドレイン端子の間に接続されている。一方、第2CMOSインバータは、比較器36の電源電位VDDcと、トランジスタM3のドレイン端子の間に接続されている。
【0085】
トランジスタM9のゲート端子と、トランジスタM7のゲート端子(いずれも第1CMOSインバータの入力側に相当)は、いずれもトランジスタM8のドレイン端子とトランジスタM10のドレイン端子との間の点(第2CMOSインバータの出力側に相当)に接続されている。トランジスタM10のゲート端子と、トランジスタM8のゲート端子(いずれも第2CMOSインバータの入力側に相当)は、いずれもトランジスタM9のドレイン端子とトランジスタM7のドレイン端子との間の点(第1CMOSインバータの入力側に相当)に接続されている。すなわち、第1CMOSインバータの入力側は、第2CMOSインバータの出力側に接続されている。一方、第2CMOSインバータの入力側は、第1CMOSインバータの出力側に接続されている。第1CMOSインバータと、第2CMOSインバータは、入力側と出力側が互いに接続されており、ラッチ回路を形成している。
【0086】
また、トランジスタM9のドレイン端子と、比較器36の電源電位vDDcと間には、トランジスタM4が接続されている。ここで、トランジスタM4のソース端子は、電源電位VDDcに接続されている。また、トランジスタM4のドレイン端子は、トランジスタM9のドレイン端子に接続されている。さらに、トランジスタM10のドレイン端子と、比較器36の電源電位vDDcと間には、トランジスタM5が接続されている。ここで、トランジスタM5のソース端子は、電源電位VDDcに接続されている。また、トランジスタM5のドレイン端子は、トランジスタM9のドレイン端子に接続されている。トランジスタM4とトランジスタM5は、いずれもゲート端子に供給されるクロック信号に応じてON/OFFするスイッチとなっている。ここで、トランジスタM1のゲート端子に供給されるものと同じクロック信号を使うことができる。なお、トランジスタM4とトランジスタM5が省略された構成の比較器を使ってもよい。
【0087】
トランジスタM9のドレイン端子と、トランジスタM7のドレイン端子との間には、比較器36の端子OUTNが接続されている。また、トランジスタM10のドレイン端子と、トランジスタM8のドレイン端子との間には、比較器36の端子OUTPが接続されている。ラッチ回路内の第1CMOSインバータの出力側と、第2CMOSインバータの出力側には、印加電圧INNとINPの差に応じた電流が流れる。これにより、ラッチ回路が動作し、電圧OUTPおよび電圧OUTNは、端子INNに印加された電圧と端子INPに印加された電圧の比較結果によって、HIGHまたはLOWの電圧となる。
【0088】
ラッチ回路の動作時において、トランジスタM2のドレイン電圧vDM2およびトランジスタM3のドレイン電圧vDM3が電源電圧vDDcからグラウンド電圧vSScに向かって変動する。このため、トランジスタM2およびトランジスタM3のゲート・ドレイン間の寄生容量cgsによって、端子INPおよび端子INNの電圧レベルも、当該電圧変動の影響を受ける。この現象をキックバックとよび、比較器36の動作に誤差が生じる原因となる。
【0089】
そこで、
図21の比較器37のように、トランジスタM
1のソース端子と、基準電位v
SScとの間に、抵抗器R4を接続することができる。比較器37のその他の部分の構成は、上述の比較器36と同様である。抵抗器R4は、トランジスタM
1がONしたときに、ラッチ回路に流れる電流を制限する。このため、トランジスタM
2のドレイン電圧v
DM2およびトランジスタM
3のドレイン電圧v
DM3で急激な電圧変動が起こることを防ぎ、キックバックの発生を抑制する。これにより、比較器の判定精度を改善することが可能となる。
【0090】
すなわち、電子回路の量子化回路は、量子化回路は、少なくとも1つの第1比較器を含んでいてもよい。例えば、第1比較器は、ラッチ回路と、差動対と、第3スイッチ(例えば、トランジスタM1)と、第4抵抗器(抵抗器R4)とを備えている。ラッチ回路は、入力側の端子と出力側の端子が互いに接続された第1インバータおよび第2インバータを含んでいる。差動対は、入力された電圧を比較した結果に応じた電流によってラッチ回路の第1インバータおよび第2インバータを駆動する。第3スイッチは、差動対の動作状態を決定する。第4抵抗器は、第3スイッチと基準電位との間に接続されている。差動対は、第3スイッチとラッチ回路との間に接続されている。ラッチ回路は、電源電位と、差動対との間に接続されている。
【0091】
上述の実施形態に係る電子回路を用いることにより、回路規模とコストを抑えつつ、急峻な変化を含む信号波形のアナログデジタル変換を行うことができる。
【0092】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 回路システム
10 信号生成回路
11、31 クロック生成器
12 分周器
13、17 ワンショット回路
14、16 制御回路
15 リンギング検出回路
20、20a、20b 電力回路
21 トランジスタ
22 ダイオード
23 インダクタ
24 信号発生器
30 アナログデジタル変換器
32 デコーダ
33 遅延同期ループ回路
34、34a シフトレジスタ
35 遅延制御回路
36、37 比較器
40 増幅回路
50、51、51A、52 量子化回路
100、101、102、103、104、105、106、107、108、109 電子回路