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特開2022-174293記録ヘッドのメンテナンス装置およびそれを備えたインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174293
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】記録ヘッドのメンテナンス装置およびそれを備えたインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20221115BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/01 303
B41J2/01 301
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150060
(22)【出願日】2022-09-21
(62)【分割の表示】P 2018198074の分割
【原出願日】2018-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 雄三
(72)【発明者】
【氏名】福永 靖幸
(57)【要約】
【課題】記録ヘッドのインク吐出面に対するワイパーの喰い込み量を簡易な構成で一定に維持可能なメンテナンス装置およびそれを備えたインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】メンテナンス装置は、ワイパーと、ブレードユニットと、ワイパーキャリッジと、支持フレームと、ワイパー移動機構と、を有する。ワイパーキャリッジは、平板状のキャリッジ本体と、ワイパーキャリッジの移動方向と平行なキャリッジ本体の両側端部に設けられる一対のレール部と、一対のレール部のそれぞれの内側面から水平に突出する位置決めピンと、一対のレール部のそれぞれに回転可能に設けられ、記録ヘッドを保持するヘッドハウジングに当接してワイパーとインク吐出面との間隔を一定に保持する位置決め部と、を有する。ブレードユニットは、一対のレール部に対向する両側面に、位置決めピンを上下方向から挟むように係合する係合部を有する。
【選択図】図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上にインクを吐出する記録ヘッドのインク吐出面を拭き取るワイパーと、
前記ワイパーが固定されるブレードユニットと、
前記ブレードユニットを水平方向に着脱可能に支持するワイパーキャリッジと、
前記ワイパーキャリッジを水平方向に移動可能に支持する支持フレームと、
前記ワイパーキャリッジを前記支持フレームに沿って往復移動させるワイパー移動機構と、
を有し、
前記ワイパーキャリッジを往復移動させることにより前記インク吐出面の拭き取りを行う記録ヘッドのメンテナンス装置において、
前記ワイパーキャリッジは、
平板状のキャリッジ本体と、
前記ワイパーキャリッジの移動方向と平行な前記キャリッジ本体の両側端部に設けられる一対のレール部と、
前記一対のレール部から水平に突出する位置決めピンと、
前記一対のレール部のそれぞれに設けられ、前記記録ヘッドを保持するヘッドハウジングに当接して前記ワイパーと前記インク吐出面との間隔を一定に保持する位置決め部と、
を有し、
前記ブレードユニットは、
前記一対のレール部に対向する両側面に、前記位置決めピンを上下方向から挟むように係合する係合部を有することを特徴とする記録ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項2】
前記ワイパーキャリッジと前記インク吐出面とを接近または離間させるユニット昇降機構を有することを特徴とする請求項1に記載の記録ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項3】
前記位置決め部は、前記レール部に対して回転可能であり、
前記位置決めピンは、前記位置決め部の回転軸と同軸であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項4】
前記位置決めピンは、前記一対のレール部のそれぞれにおいて前記ワイパーキャリッジの移動方向の両端部に1本ずつ設けられ、
前記係合部は、前記位置決めピンの一方に係合する第1係合部と、前記位置決めピンの他方に係合する第2係合部と、で構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の記録ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項5】
前記ブレードユニットには複数の前記ワイパーが固定されており、前記ワイパーキャリッジを往復移動および昇降させることにより、複数の前記記録ヘッドに対して前記インク吐出面の拭き取りを同時に行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の記録ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項6】
記録媒体を搬送する記録媒体搬送部と、
前記記録媒体搬送部により搬送される前記記録媒体上にインクを吐出する記録ヘッドが配置される記録部と、
前記記録部に配置された前記記録ヘッドの前記インク吐出面の拭き取りを行う請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の記録ヘッドのメンテナンス装置と、
を備えたインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にインクを吐出することによって記録を行うインクジェット記録装置に搭載され、記録ヘッドのインク吐出面を拭き取るワイパーを水平移動させる記録ヘッドのメンテナンス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ、複写機、プリンターのような記録装置として、紙、OHP用シートのような記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置が、高精細な画像を形成できることから広く用いられている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置では、一般に、記録ヘッドのインク吐出面に開口が設けられたインク吐出用ノズル内のインクの乾燥やノズルの目詰まりを防止するために、ノズルからインクを強制的に押し出す(パージ)。このインク押し出しにより、ノズル内の増粘インクや気泡、不純物等を排出することができる。また、押し出されたインクはインク吐出面に付着したミスト(インク残渣)を再溶解する。
【0004】
そして、インクを押し出した後、インク吐出面(ノズル面)に付着したインクをブレード状のワイパーで拭き取って記録ヘッドの回復処理を行う構成になっている。ワイパーはゴムのような弾性材料で形成されており、ワイパーを弾性変形させてインク吐出面に押し当てることで、インク吐出面とワイパーとの間に隙間が生じないようにワイパーをインク吐出面に密着させてインクを拭き取ることができる。
【0005】
例えば特許文献1には、複数のワイパーが固定された略矩形状のキャリッジと、キャリッジを支持する支持フレームとを昇降機構により昇降させるとともに、支持フレームに対しキャリッジを水平移動させることにより、ラインヘッドを構成する複数の記録ヘッドのインク吐出面を一回の動作でワイピングするインクジェット記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-237324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
記録ヘッドを清掃するワイパーと記録ヘッドとの距離は、清掃性能、インクの飛散抑制性能を満たすために非常に重要である。従来、特許文献1に記載されるようなキャリッジを水平移動させる構成では、ワイパーが固定されるキャリッジに設けられた円筒状部材(摺動コロ)を、記録ヘッドを保持するヘッドハウジングに当接させることで、ワイパーと記録ヘッドとの距離を一定に維持していた。
【0008】
しかし、上記の構成では、キャリッジの寸法公差や、キャリッジに搭載されるブレードユニットの取り付け誤差等により、ワイパーと記録ヘッドとの距離を正確に維持することが困難となる。その結果、記録ヘッドのインク吐出面に対するワイパーの喰い込み量が変動し、インクの拭き取り不良やワイパーの損傷が発生するおそれがあった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、記録ヘッドのインク吐出面に対するワイパーの喰い込み量を簡易な構成で一定に維持可能な記録ヘッドのメンテナンス装置およびそれを備えたインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、ワイパーと、ブレードユニットと、ワイパーキャリッジと、支持フレームと、ワイパー移動機構と、を有し、ワイパーキャリッジを往復移動させることによりインク吐出面の拭き取りを行う記録ヘッドのメンテナンス装置である。ワイパーは、記録媒体上にインクを吐出する記録ヘッドのインク吐出面を拭き取る。ブレードユニットは、ワイパーが固定される。ワイパーキャリッジは、ブレードユニットを水平方向に着脱可能に支持する。支持フレームは、ワイパーキャリッジを水平方向に移動可能に支持する。ワイパー移動機構は、ワイパーキャリッジを支持フレームに沿って往復移動させる。ワイパーキャリッジは、平板状のキャリッジ本体と、ワイパーキャリッジの移動方向と平行なキャリッジ本体の両側端部に設けられる一対のレール部と、一対のレール部からそれぞれ水平に突出する位置決めピンと、一対のレール部のそれぞれに設けられ、記録ヘッドを保持するヘッドハウジングに当接してワイパーとインク吐出面との間隔を一定に保持する位置決め部と、を有する。ブレードユニットは、一対のレール部に対向する両側面に、位置決めピンを上下方向から挟むように係合する係合部を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の構成によれば、位置決めピンと位置決め部とが共にワイパーキャリッジのレール部に固定されている。そのため、ブレードユニットの係合部と位置決めピンとの係合によって、位置決め部に対するブレードユニットの上下方向の位置精度が出しやすくなる。従って、記録ヘッドのインク吐出面へのワイパーの喰い込み量(オーバーラップ量)のバラツキを最小限にすることができ、ワイパーの喰い込み量の変化に伴うインクの拭き取り不良やワイパーの損傷を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のメンテナンスユニット19が搭載されるインクジェット式のプリンター100の構造を示す図
図2】プリンター100の第1ベルト搬送部5および記録部9を上方から見た図
図3】プリンター100の記録部9の構造を示す図
図4】プリンター100の記録部9のラインヘッド11C~11Kを構成する記録ヘッド17a~17cの構造を示す図
図5】プリンター100の記録ヘッド17a~17cをインク吐出面F側から見た図
図6】プリンター100の記録部9、キャップユニット30およびメンテナンスユニット19等の構造を示す図
図7】プリンター100のキャップユニット30の構造を示す図
図8】プリンター100のキャリッジ71の構造を示す斜視図であって、支持アーム74が倒伏した状態を示す図
図9】プリンター100のキャリッジ71の構造を示す斜視図であって、支持アーム74が起立した状態を示す図
図10】プリンター100に搭載される本発明の第1実施形態に係るメンテナンスユニット19を上方から見た拡大図
図11】メンテナンスユニット19の駆動部の構造を示す断面図
図12】第1実施形態のメンテナンスユニット19を構成するブレードユニット31の斜視図
図13】第1実施形態のメンテナンスユニット19を構成するワイパーキャリッジ33の斜視図
図14】プリンター100の第1ベルト搬送部5が降下した状態を示す図
図15】プリンター100のメンテナンスユニット19が第1の位置に移動した状態を示す図
図16】プリンター100のワイパー35を記録ヘッド17a~17cのインク吐出面Fの拭き取り開始位置に圧接した状態を示す図
図17】プリンター100のワイパー35により記録ヘッド17a~17cのインク吐出面Fに押し出されたパージインクを拭き取っている状態を示す図
図18】プリンター100のキャップユニット30およびメンテナンスユニット19が第1の位置に移動した状態を示す図
図19】第1実施形態のメンテナンスユニット19において、ワイパーキャリッジ33にブレードユニット31を取り付ける途中の状態を示す側面断面図
図20】第1実施形態のメンテナンスユニット19において、ワイパーキャリッジ33に対するブレードユニット31の取り付けが完了した状態を示す側面断面図
図21】本発明の第2実施形態に係るメンテナンスユニット19において、ワイパーキャリッジ33にブレードユニット31を取り付ける途中の状態を示す側面断面図
図22】第2実施形態のメンテナンスユニット19において、ワイパーキャリッジ33に対するブレードユニット31の取り付けが完了した状態を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1図22を参照して、本発明のメンテナンスユニット19が搭載されるインクジェットプリンター100(インクジェット記録装置。以下、プリンター100と称する)について説明する。図1に示すように、プリンター100は、プリンター本体1の内部下方に用紙収容部である給紙カセット2が配置されている。給紙カセット2の内部には、記録媒体の一例である用紙Pが収容されている。給紙カセット2の用紙搬送方向下流側、すなわち図1における給紙カセット2の左側の上方には給紙装置3が配置されている。この給紙装置3により、用紙Pは図1において給紙カセット2の左上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。
【0014】
また、プリンター100はその内部に第1用紙搬送路4aを備えている。第1用紙搬送路4aは、給紙カセット2の給紙方向である左上方に位置する。給紙カセット2から送り出された用紙Pは第1用紙搬送路4aによりプリンター本体1の側面に沿って垂直上方に搬送される。
【0015】
用紙搬送方向に対し第1用紙搬送路4aの下流端にはレジストローラー対13が備えられている。さらにレジストローラー対13の用紙搬送方向下流側直近には第1ベルト搬送部5および記録部9が配置されている。給紙カセット2から送り出された用紙Pは第1用紙搬送路4aを通ってレジストローラー対13に到達する。レジストローラー対13は用紙Pを一旦停止させて斜め送りを矯正しつつ記録部9が実行するインク吐出動作とのタイミングを計り、第1ベルト搬送部5に向かって用紙Pを再搬送する。
【0016】
用紙搬送方向に対し第1ベルト搬送部5の下流側(図1の右側)には第2ベルト搬送部12が配置されている。記録部9にてインク画像が記録された用紙Pは第2ベルト搬送部12へと送られ、第2ベルト搬送部12を通過する間に用紙P表面に吐出されたインクが乾燥される。
【0017】
用紙搬送方向に対し第2ベルト搬送部12の下流側であってプリンター本体1の右側面近傍にはデカーラー部14が備えられている。第2ベルト搬送部12にてインクが乾燥された用紙Pはデカーラー部14へと送られ、用紙幅方向に並んだ複数のローラーを用いて用紙Pに生じたカールが矯正される。
【0018】
用紙搬送方向に対しデカーラー部14の下流側(図1の上方)には第2用紙搬送路4bが備えられている。デカーラー部14を通過した用紙Pは両面記録を行わない場合、第2用紙搬送路4bから排出ローラー対を介してプリンター100の右側面外部に設けられた用紙排出トレイ15に排出される。
【0019】
また、第2ベルト搬送部12の下方にはメンテナンスユニット19およびキャップユニット30が配置されている。メンテナンスユニット19は、後述するパージを実行する際に記録部9の下方に水平移動し、後述する記録ヘッド17a~17cの吐出ノズル18(図2参照)から押し出されたインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。キャップユニット30は、記録ヘッド17a~17cのインク吐出面F(図4参照)をキャッピングする際に記録部9の下方に水平移動し、さらに上方に移動して記録ヘッド17a~17cの下面に装着される。
【0020】
記録部9は、図2および図3に示すように、ヘッドハウジング10と、ヘッドハウジング10に保持されたラインヘッド11C、11M、11Y、および11Kを備えている。これらのラインヘッド11C~11Kは、駆動ローラー6および従動ローラー7を含む複数のローラーに張架された第1搬送ベルト8の搬送面に対して所定の間隔(例えば1mm)が形成されるような高さに支持され、用紙搬送方向(矢印A方向)と直交する用紙幅方向(図2の上下方向)に沿って複数(ここでは3個)の記録ヘッド17a~17cが千鳥状に配列されている。ラインヘッド11C~11Kは、搬送される用紙Pの幅以上の記録領域を有しており、第1搬送ベルト8によって搬送される用紙Pに対して、印字位置に対応した吐出ノズル18から水性インク(以下、単にインクと称する)を吐出する。
【0021】
図5に示すように、記録ヘッド17a~17cのインク吐出面Fには吐出ノズル18が多数配列されたノズル領域Rが設けられている。また、インク吐出面Fには撥水膜(図示せず)が形成されている。なお、記録ヘッド17a~17cは同一の形状および構成であるため、図4および図5では記録ヘッド17a~17cを一つの図で示している。
【0022】
各ラインヘッド11C~11Kを構成する記録ヘッド17a~17cには、それぞれインクタンク(図示せず)に貯留されている4色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)のインクがラインヘッド11C~11Kの色毎に供給される。
【0023】
各記録ヘッド17a~17cは、外部コンピューターから受信した画像データに応じて、第1搬送ベルト8の搬送面に吸着保持されて搬送される用紙Pに向かって吐出ノズル18からインクを吐出する。これにより、第1搬送ベルト8上の用紙Pにはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが重ね合わされたカラー画像が形成される。
【0024】
また、記録ヘッド17a~17cの乾燥や目詰まりによるインクの吐出不良を防止するために、長期間停止後の印字開始時は全ての記録ヘッド17a~17cの吐出ノズル18から、また印字動作の合間にはインク吐出量が規定値以下の記録ヘッド17a~17cの吐出ノズル18から、ノズル内の粘度が高くなったインクを押し出すパージを実行して、次の印字動作に備える。
【0025】
図6に示すように、記録部9の下方には、用紙搬送方向(矢印A方向)と平行な両端部に沿って2本のガイドレール60a、60bが固定されている。ガイドレール60a、60bには一対のガイド板61a、61bが固定されており、ガイド板61a、61bの下端部にはキャップユニット30の側端縁が支持されている。また、ガイドレール60a、60bにはキャリッジ71が摺動可能に支持されており、キャリッジ71上にメンテナンスユニット19が載置されている。
【0026】
キャップユニット30は、記録部9の真下の第1の位置(図18の位置)と第1の位置から水平方向(矢印A方向)に退避した第2の位置(図6の位置)との間を往復移動可能であり、第1の位置において上方に移動して記録ヘッド17a~17cにキャップをするように構成されている。
【0027】
具体的には図7に示すように、キャップユニット30は、板金製のキャップトレイ30aと、キャップトレイ30aの上面に配置される凹状の12個のキャップ部30bと、4個の高さ方向位置決め突起30cと、を含んでいる。
【0028】
キャップ部30bは、記録ヘッド17a~17cに対応する位置に配置されている。これにより、第1の位置においてキャップユニット30が上方に移動することによって、各キャップ部30bが各記録ヘッド17a~17cのインク吐出面Fのキャップを行う。高さ方向位置決め突起30cは、記録ヘッド17a~17cのキャップを行うためにキャップユニット30を記録部9側に上昇させたとき、記録部9のハウジング10に当接することでキャップ部30bとインク吐出面Fとの接触状態を一定に保持する。
【0029】
メンテナンスユニット19は、記録部9の真下の第1の位置(図15の位置)と第1の位置から水平方向(矢印A方向)に退避した第2の位置(図6の位置)との間を往復移動可能であり、第1の位置において上方に移動して後述するワイピング動作を行うように構成されている。
【0030】
具体的には、ガイドレール60bの外側には、キャリッジ71を矢印AA′方向に移動させるための駆動モーター72と、駆動モーター72およびキャリッジ71のラック歯71aに係合するギア列(図示せず)と、これらを覆うカバー部材73と、が取り付けられている。駆動モーター72が正回転することにより、ギア列が回転し、キャリッジ71およびメンテナンスユニット19が第2の位置から第1の位置に移動する。なお、駆動モーター72およびギア列等によって、メンテナンスユニット19を水平方向に移動させるユニット移動機構が構成されている。
【0031】
また、キャリッジ71の四隅には図8および図9に示すように、メンテナンスユニット19を下面側から支持するとともに揺動(起立または倒伏)可能な支持アーム74が設けられている。矢印AA′方向に隣り合う支持アーム74同士は、回転軸75により連結されている。また、キャリッジ71の外側には、支持アーム74を揺動させるためのワイプ昇降モーター76と、ワイプ昇降モーター76および回転軸75のギアに係合するギア列等(図示せず)と、が取り付けられている。ワイプ昇降モーター76が正回転することにより、ギア列等が回転し、回転軸75が回動することによって、支持アーム74が揺動(起立)する。これにより、メンテナンスユニット19が上昇する。なお、ワイプ昇降モーター76、ギア列、回転軸75および支持アーム74等によって、メンテナンスユニット19を上下方向(矢印BB′方向)に移動させるユニット昇降機構が構成されている。また、キャリッジ71の内面には上下方向に延びるガイド溝71bが形成されており、メンテナンスユニット19はガイド溝71bに沿って昇降する。
【0032】
図10は、プリンター100に搭載される本発明の第1実施形態に係るメンテナンスユニット19を上方から見た拡大図である。図11は、第1実施形態のメンテナンスユニット19の駆動部の構造を示す断面図である。図12および図13は、それぞれ第1実施形態のメンテナンスユニット19を構成するブレードユニット31およびワイパーキャリッジ33の斜視図である。メンテナンスユニット19は、複数のワイパー(ワイプブレード)35が固定されたブレードユニット31と、ブレードユニット31が装着される略矩形状のワイパーキャリッジ33と、ワイパーキャリッジ33を支持する支持フレーム40とで構成されている。
【0033】
図10および図11に示すように、支持フレーム40の上面の対向する端縁にはレール溝41が形成されており、ワイパーキャリッジ33の四箇所に設けられた摺動プーリー36がレール溝41に当接することで、ワイパーキャリッジ33は支持フレーム40に対し矢印CC′方向に摺動可能に支持される。
【0034】
支持フレーム40には、ワイパーキャリッジ33を水平方向(矢印CC′方向)に移動させるためのワイパー駆動モーター45と、ワイパーキャリッジ33のラック32に係合するラック駆動ギア47と、が取り付けられている。ワイパー駆動モーター45が正逆回転することにより、ギア列を介してラック駆動ギア47が正逆回転し、ワイパーキャリッジ33が水平方向(矢印CC′方向)に往復移動する。なお、ワイパー駆動モーター45およびラック駆動ギア47等によって、ワイパー35を記録ヘッド17a~17cのインク吐出面Fに沿って移動させるワイパー移動機構が構成されている。
【0035】
支持フレーム40の上面には、ワイパー35によってインク吐出面Fから拭き取られた廃インクを回収するためのインク回収トレイ44が配置されている。インク回収トレイ44の略中央部にはインク排出孔(図示せず)が形成されており、インク排出孔を挟んで両側のトレイ面はインク排出孔に向かって下り勾配となっている。ワイパー35によってインク吐出面Fから拭き取られ、トレイ面に落下した廃インクはインク排出孔に向かって流れる。その後、廃インクはインク排出孔に連結されたインク回収路(図示せず)を通って廃インク回収タンク(図示せず)に回収される。
【0036】
ワイパー35は、各記録ヘッド17a~17cの吐出ノズル18から押し出されたインクを拭き取るための、例えばEPDMからなるゴム製の部材である。ワイパー35は、吐出ノズル18が露出するノズル領域R(図5参照)の外側の拭き取り開始位置に略垂直方向から圧接され、ワイパーキャリッジ33の移動によりノズル領域Rを含むインク吐出面Fを所定方向(矢印C方向)に拭き取る。
【0037】
図12に示すように、ワイパー35はブレードユニット31のユニット本体31aの幅方向(矢印AA′方向)に略等間隔で4枚ずつ、ワイパーキャリッジ33の移動方向(矢印CC′方向)に3列の計12枚配置されている。各ワイパー35は、それぞれ各ラインヘッド11C~11Kを構成する記録ヘッド17a~17c(図3参照)に対応する位置に配置されている。ブレードユニット31はワイパーキャリッジ33に対し着脱可能となっており、ワイパー35が摩耗や破損した場合はユニット本体31aと共に一括で交換される。
【0038】
ワイパーキャリッジ33の移動方向と平行なユニット本体31aの両側面には第1係合部50、第2係合部51が形成されている。第1係合部50は、ブレードユニット31の装着方向(矢印C′方向)に対し第2係合部51の上流側に配置されている。第1係合部50、第2係合部51は、それぞれワイパーキャリッジ33に設けられた位置決めピン53a、53b(図13参照)に係合することによりワイパーキャリッジ33に対するブレードユニット31の位置決めを行う。
【0039】
図13に示すように、ワイパーキャリッジ33は平板状のキャリッジ本体33aと、キャリッジ本体33aの両側端部に設けられるレール部33bとを有する。キャリッジ本体33aにはブレードユニット31が装着される。レール部33bにはラック32、摺動プーリー36、位置決めプーリー(位置決め部)46、位置決めピン53a、53bが設けられる。ラック32はキャリッジ本体33aの一端縁に沿って設けられ、支持フレーム40のラック駆動ギア47と噛み合う。摺動プーリー36は支持フレーム40に形成されたレール溝41に当接する。
【0040】
位置決めプーリー46は、キャリッジ本体33aの上面の4箇所に設けられる。位置決めプーリー46はレール部33bに設けられた支軸46a(図19参照)に回転可能に外挿されている。記録ヘッド17a~17cのインク吐出面Fの拭き取り動作を行うために支持フレーム40を記録部9側に上昇させたとき、位置決めプーリー46が記録部9のヘッドハウジング10に当接することでワイパー35とインク吐出面Fとの接触状態を一定に保持する。
【0041】
位置決めピン53a、53bはレール部33bの内側面から突出しており、ブレードユニット31の第1係合部50、第2係合部51が係合する。
【0042】
次に、本実施形態のプリンター100における記録ヘッド17a~17cの回復動作について説明する。メンテナンスユニット19により記録ヘッド17a~17cの回復処理を行う場合、図14に示すように記録部9の下面に対向配置されている第1ベルト搬送部5を降下させる。そして、図15に示すように、キャップユニット30を第2の位置に残した状態でユニット移動機構によりメンテナンスユニット19を第2の位置から第1の位置に移動させる。
【0043】
そして、ワイピング動作に先立って、インクが記録ヘッド17a~17cに供給される。供給されたインク22は吐出ノズル18から強制的に押し出(パージ)される(図16参照)。このパージ動作により、吐出ノズル18内の増粘インク、異物や気泡が排出され、記録ヘッド17a~17cを回復することができる。
【0044】
次いで、インク吐出面Fに排出されたインク22を拭き取るワイピング動作を行う。具体的には、図16に示すように、ユニット昇降機構によりメンテナンスユニット19を上昇させることによって、ワイパー35を、記録ヘッド17a~17cのインク吐出面Fの拭き取り開始位置に圧接する。
【0045】
そして、ワイパー駆動モーター45(図11参照)によってワイパーキャリッジ33を矢印C方向に水平移動させることにより、図17に示すようにワイパー35が記録ヘッド17a~17cのインク吐出面Fに押し出されたインク22を拭き取る。
【0046】
ワイパー35が記録ヘッド17a~17cのインク吐出面Fの下流側端部まで移動した後、ユニット昇降機構によりワイパーキャリッジ33を下降させる。これにより、ワイパー35を記録ヘッド17a~17cのインク吐出面Fから下方に退避させる。
【0047】
その後、ユニット移動機構によりメンテナンスユニット19を第1の位置から矢印A方向に移動させる。これにより、図14に示すように、メンテナンスユニット19はキャップユニット30の直下の所定位置(第2の位置)に配置される。
【0048】
次に、本実施形態のプリンター100における記録ヘッド17a~17cにキャップユニット30を装着する動作について説明する。キャップユニット30により記録ヘッド17a~17cにキャップを行う場合、図14に示すように記録部9の下面に対向配置されている第1ベルト搬送部5を降下させる。
【0049】
そして、図18に示すように、メンテナンスユニット19上にキャップユニット30を配置した状態で、ユニット移動機構によりメンテナンスユニット19およびキャップユニット30を第2の位置から第1の位置に移動させる。その後、ユニット昇降機構によりメンテナンスユニット19およびキャップユニット30を上昇させることによって、キャップユニット30(キャップ部30b)を記録ヘッド17a~17cに装着する。
【0050】
次に、ワイパーキャリッジ33へのブレードユニット31の取り付け方法について説明する。図19は、ワイパーキャリッジ33にブレードユニット31を取り付ける途中の状態を示す側面断面図であり、図20は、ワイパーキャリッジ33に対するブレードユニット31の取り付けが完了した状態を示す側面断面図である。なお、説明の便宜のため、ブレードユニット31にはハッチングを付している。また、ブレードユニット31に固定されるワイパー35は記載を省略している。
【0051】
先ず、図19に示すように、ワイパーキャリッジ33の一端側(図13の左下側)からキャリッジ本体33aおよびレール部33bに沿ってブレードユニット31の一端側(図12の右上側)を矢印C′方向に挿入する。
【0052】
ブレードユニット31が所定位置まで挿入されると、図20に示すように、ブレードユニット31のユニット本体31aに形成された第1係合部50がワイパーキャリッジ33に設けられた位置決めピン53aに係合する。同様に、ユニット本体31aに形成された第2係合部51が位置決めピン53bに係合する。これにより、ワイパーキャリッジ33に対してブレードユニット31が上下方向に固定される。即ち、ワイパーキャリッジ33に対してブレードユニット31が上下方向に位置決めされる。
【0053】
ここで、例えばブレードユニット31がキャリッジ本体33aの底面に当接して位置決めされている場合を考える。キャリッジ本体33aは金属板に複数回の曲げ加工を施して成形されるため、レール部33bに比べて部品公差が大きくなる。そのため、部品交差(曲げ公差)が累積することにより位置決めプーリー46に対するブレードユニット31の上下方向の取り付け公差も大きくなる。その結果、記録ヘッド17a~17cのインク吐出面Fへのワイパー35の喰い込み量(オーバーラップ量)のバラツキが許容値を超えてしまい、インクの拭き取り不良やワイパー35の損傷が発生するおそれがある。
【0054】
本実施形態の構成によれば、位置決めピン53aと位置決めプーリー46の支軸46aとが、共にレール部33bの同一面(内側面)に固定されている。そのため、第1係合部50と位置決めピン53aおよび第2係合部51と位置決めピン53bの係合によって、位置決めプーリー46に対するブレードユニット31の上下方向の位置精度が出しやすくなる。
【0055】
これにより、記録ヘッド17a~17cのインク吐出面Fへのワイパー35の喰い込み量(オーバーラップ量)のバラツキを最小限にすることができ、ワイパー35の喰い込み量の変化に伴うインクの拭き取り不良やワイパー35の損傷を効果的に抑制することができる。
【0056】
図21は、本発明の第2実施形態に係るメンテナンスユニット19において、ワイパーキャリッジ33にブレードユニット31を取り付ける途中の状態を示す側面断面図、図22は、ワイパーキャリッジ33に対するブレードユニット31の取り付けが完了した状態を示す側面断面図である。
【0057】
本実施形態では、ワイパーキャリッジ33のレール部33bにおいて、位置決めピン53a、53bが位置決めプーリー46の支軸46aと同軸である。即ち、位置決めプーリー46の支軸46aが位置決めピン53を兼ねている。メンテナンスユニット19の他の部分の構成は第1実施形態と同様である。
【0058】
本実施形態の構成によれば、ブレードユニット31の第1係合部50、第2係合部51が、それぞれ位置決めプーリー46の支軸46aと同軸である位置決めピン53a、53bに係合する。これにより、ブレードユニット31が位置決めプーリーの支軸46aに直接位置決めされるため、第1実施形態に比べて位置決めプーリー46に対するブレードユニット31の上下方向の位置精度がより一層向上する。
【0059】
その他、本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、駆動モーター72およびギア列等によって構成されるユニット移動機構、ワイプ昇降モーター76、ギア列、回転軸75および支持アーム74等によって構成されるユニット昇降機構については、従来公知の他の駆動機構を用いることができる。
【0060】
また、記録ヘッド17a~17cの吐出ノズル18の個数やノズル間隔等はプリンター100の仕様に応じて適宜設定することができる。また、記録ヘッドの数も特に限定されるものではなく、例えば各ラインヘッド11C~11Kにつき記録ヘッド17を1個、2個、或いは4個以上配置することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、記録ヘッドのインク吐出面を拭き取るワイパーをラックとラック駆動ギアとを用いて水平移動させる記録ヘッドのメンテナンス装置に利用可能である。本発明の利用により、ワイパーが固定されるキャリッジに設けられたラックとラックに駆動力を伝達するラック駆動ギアとの距離を簡易な構成で一定に維持可能な記録ヘッドのメンテナンス装置となる。
【符号の説明】
【0062】
9 記録部
11C~11K ラインヘッド
17a~17c 記録ヘッド
18 吐出ノズル
19 メンテナンスユニット(メンテナンス装置)
22 インク
30 キャップユニット
31 ブレードユニット
32 ラック
33 ワイパーキャリッジ
33a キャリッジ本体
33b レール部
35 ワイパー
36 摺動プーリー
46 位置決めプーリー
46a 支軸
50 第1係合部
51 第2係合部
53a、53b 位置決めピン
100 プリンター(インクジェット記録装置)
P 用紙(記録媒体)
R ノズル領域
F インク吐出面
図1
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