(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174312
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20221115BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20221115BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H05B33/14 B
H05B33/02
H05B33/22 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152118
(22)【出願日】2022-09-26
(62)【分割の表示】P 2021053057の分割
【原出願日】2014-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】結城 敏尚
(57)【要約】
【課題】発光部以外の領域に位置する有機層においてフォトルミネッセンスが生じにくくする。
【解決手段】発光部140は基板100の第1面の一部に形成されており、第1電極110、第2電極130、及び有機層120を備えている。第2電極130は第1電極110を覆っている。有機層120は第1電極110と第2電極130の間に位置している。有機層120は、第1電極110と重なる領域から、第1電極110の周囲に位置する部分にわたって連続して形成されている。そして、有機層120は、燐光材料を含んでいる。具体的には、有機層120の発光層は、蛍光材料ではなく燐光材料によって形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の基板と、
前記基板の第1面に互いに離れて位置する複数の発光部と、
前記複数の発光部の間に位置する複数の透光部と、
を備え、
前記複数の発光部はそれぞれ、第1電極、第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層を含み、
前記有機層は、燐光材料を含み、前記複数の発光部及び前記複数の透光部にわたって連続して位置している発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記複数の発光部はそれぞれ線状の形状を有し、かつ同一方向に延在している発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光装置において、
前記有機層の光の吸収領域のピーク波長が400nm以下である発光装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記発光部を囲む絶縁膜を備え、
前記基板の前記第1面は、前記発光部及び前記絶縁膜を含まず前記有機層を含む第1領域と、前記発光部を含まず前記絶縁膜及び前記有機層を含む第2領域を有し、
前記第1領域の面積は前記第2領域の面積よりも大きい発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は有機ELを利用した発光装置の開発が進んでいる。この発光装置は、照明装置や表示装置として使用されており、第1電極と第2電極の間に有機層を挟んだ構成を有している。そして、一般的には第1電極には透明材料が用いられており、第2電極には金属材料が用いられている。
【0003】
有機ELを利用した発光装置の一つに、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1の技術は、有機ELを利用した表示装置に光透過性(シースルー)を持たせるために、第2電極を画素の一部にのみ設けている。このような構造において、複数の第2電極の間に位置する領域は光を透過させるため、表示装置は光透過性を有することができる。なお、特許文献1に記載の技術において、複数の第2電極の間には、画素を画定するために、透光性の絶縁層が形成されている。特許文献1において、この絶縁層の材料として、酸化シリコンなどの無機材料や、アクリル樹脂などの樹脂材料が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発光層となる有機層が発光部以外の領域にも形成されている場合、この領域に位置する有機層に外光が入射すると、この外光が有機層で吸収されてフォトルミネッセンスが生じることがある。この場合、表示装置の光透過性が低下してしまう。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、有機層を発光部以外の領域にも形成する場合において、発光部以外の領域に位置する有機層においてフォトルミネッセンスが生じにくくすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、透光性の基板と、
第1電極、第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層、とを有し、且、前記基板の第1面に形成される発光部と、
を備え、
前記有機層は前記第1電極上の領域と前記第1電極の周囲に位置する部分とにわたって連続して形成されており、前記有機層の光の吸収領域のピークが480nm~580nmにない発光装置である。
【0008】
第2の発明は、透光性を有しており、かつ第1波長以下の光の光線透過率が20%以下である基板と、
第1電極、第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層とを有し、且、前記基板の第1面に形成される発光部と、
を備え、
前記有機層は前記第1電極上の領域と前記第1電極の周囲に位置する部分とにわたって連続して形成されており、前記有機層の光の吸収領域のピーク波長が前記第1波長以下である発光装置である。
【0009】
第3の発明は、透光性の基板と、
第1電極、第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層とを有し、且、前記基板の第1面に形成される発光部と、
を備え、
前記有機層は前記第1電極と前記第2電極の間の領域にのみ形成されており、前記有機層の発光層を構成する発光体は、少なくとも燐光材料を含む発光装置である。
【0010】
第4の発明は、透光性の基板と、
第1電極、第2電極、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する有機層とを有し、且、前記基板の第1面に形成される発光部と、
を備え、
前記有機層は前記第1電極と前記第2電極の間の領域にのみ形成されており、前記有機層の発光層を構成する発光体は、燐光材料である発光装置である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図2】実施例1に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係る発光装置10の構成を示す断面図である。実施形態に係る発光装置10は、例えば照明装置または表示装置であり、基板100及び発光部140を備えている。発光部140は基板100の第1面に形成されており、第1電極110、第2電極130、及び有機層120を備えている。第2電極130は第1電極110を覆っている。有機層120は第1電極110と第2電極130の間に位置している。有機層120は、第1電極110と重なる領域から、第1電極110の周囲に位置する部分にわたって連続して形成されている。そして、有機層120の光の吸収領域のピークは、480nm~600nmにない。具体的には、有機層120は、燐光材料を含んでいる。さらに詳細には、有機層120の発光層を構成する発光体は、一部、もしくは全てが、正孔と電子の再結合エネルギーにより励起し、燐光発光を主体とする燐光材料によって形成されている。以下、詳細に説明する。
【0014】
基板100は、例えばガラス基板や樹脂基板などの可視光に対して透光性を有する基板である。基板100がガラス基板である場合、基板100は、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、及び酸化シリコンを合計で80重量%以上含んでいる。このようにすると、第1波長以下(例えば400nm以下)における基板100の光線透過率を低く(例えば20%以下)にすることができる。基板100は可撓性を有していてもよい。可撓性を有している場合、基板100の厚さは、例えば10μm以上1000μm以下である。基板100は、例えば矩形などの多角形や円形である。基板100が樹脂基板である場合、基板100は、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、又はポリイミドを用いて形成されている。また、基板100が樹脂基板である場合、水分が基板100を透過することを抑制するために、基板100の少なくとも一面(好ましくは両面)に、SiNxやSiONなどの無機バリア膜が形成されているのが好ましい。
【0015】
基板100の一面には、発光部140が形成されている。発光部140は、第1電極110、有機層120、及び第2電極130をこの順に積層させた構成を有している。発光装置10が照明装置の場合、複数の発光部140はライン状に延在している。一方、発光装置10が表示装置の場合、複数の発光部140はマトリクスを構成するように配置されているか、セグメントを構成したり所定の形状を表示するように(例えばアイコンを表示するように)なっていてもよい。そして複数の発光部140は、画素別に形成されている。
【0016】
第1電極110は、光透過性を有する透明電極である。透明電極の材料は、金属を含む材料、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)等の金属酸化物である。第1電極110の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。第1電極110は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。なお、第1電極110は、カーボンナノチューブ、又はPEDOT/PSSなどの導電性有機材料であってもよい。
【0017】
有機層120は発光層を有している。有機層120は、例えば、正孔注入層、発光層、及び電子注入層をこの順に積層させた構成を有している。正孔注入層と発光層との間には正孔輸送層が形成されていてもよい。また、発光層と電子注入層との間には電子輸送層が形成されていてもよい。有機層120は蒸着法で形成されてもよい。また、有機層120のうち少なくとも一つの層、例えば第1電極110と接触する層は、インクジェット法、印刷法、又はスプレー法などの塗布法によって形成されてもよい。なお、この場合、有機層120の残りの層は、蒸着法によって形成されている。また、有機層120のすべての層が、塗布法を用いて形成されていてもよい。
【0018】
有機層120の発光層を構成する発光体は、一部もしくは全てが燐光材料を用いて形成されている。このようにすると、有機層120の光の吸収領域のピークが480nm~580nmより小さくなる。このピークは、例えば400nm以下に位置している。また、有機層120におけるフォトルミネッセンスにおける発光スペクトルのピーク波長は、480nm~580nmの波長域から外れる。ここで、基板100の説明において記載した第1波長が、有機層120の光の吸収領域のピーク波長より大きくなるように、基板100を構成する。このようにすると、有機層120において、外光に起因してフォトルミネッセンスは生じにくくなる。
【0019】
そして、有機層120は、第1電極110上、及び基板100のうち少なくとも第1電極110の周囲に位置する領域のそれぞれに、連続して形成されている。
【0020】
第2電極130は、例えば、Al、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn、及びInからなる第1群の中から選択される金属、又はこの第1群から選択される金属の合金からなる金属層を含んでいる。この場合、第2電極130は遮光性を有している。第2電極130の厚さは、例えば10nm以上500nm以下である。ただし、第2電極130は、第1電極110の材料として例示した材料を用いて形成されていてもよい。第2電極130は、例えばスパッタリング法又は蒸着法を用いて形成される。本図に示す例において、発光装置10は第1電極110よりも幅が広くなっている。このため、基板100に垂直な方向から見た場合において、幅方向において第1電極110の全体が第2電極130によって重なっており、また覆われている。
【0021】
第1電極110の縁は、絶縁膜150によって覆われている。絶縁膜150は例えばポリイミドなどの感光性の樹脂材料によって形成されており、第1電極110のうち発光部140となる部分を囲んでいる。第2電極130の幅方向の縁は、絶縁膜150上に位置している。言い換えると、基板100に垂直な方向から見た場合において、絶縁膜150の一部は第2電極130から食み出ている。また本図に示す例において、有機層120は絶縁膜150の上及び側面にも形成されている。
【0022】
基板100の第1面には、複数の発光部140が互いに離間して形成されている。そして、発光装置10は第1領域102及び第2領域104を有している。第1領域102は、複数の発光部140の間の領域のうち有機層120を含んでいて絶縁膜150を含まない領域である。第2領域104は、複数の発光部140の間の領域のうち有機層120及び絶縁膜150を含む領域である。第1領域102の面積は104の面積よりも大きい。断面図においては、第1領域102の幅は第2領域104の幅よりも大きい。
【0023】
そして本図に示す例において、発光装置10は、さらに第3領域106を有している。第3領域106は、複数の発光部140の間の領域のうち有機層120及び絶縁膜150を含んでおり、かつ第2電極130と重なっている領域である。
【0024】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。まず、基板100に第1電極110を、例えばスパッタリング法を用いて形成する。次いで、第1電極110を、フォトリソグラフィー法を利用して所定のパターンにする。次いで、第1電極110の縁の上に絶縁膜150を形成する。例えば絶縁膜150が感光性の樹脂で形成されている場合、絶縁膜150は、露光及び現像工程を経ることにより、所定のパターンに形成される。次いで、有機層120及び第2電極130をこの順に形成する。有機層120が蒸着法で形成される層を含む場合、この層は、例えばマスクを用いるなどして所定のパターンに形成される。第2電極130も、例えばマスクを用いるなどして所定のパターンに形成される。その後、封止部材(図示せず)を用いて発光部140を封止する。
【0025】
本実施形態において、第1領域102の光線透過率は第2領域104の光線透過率よりも高い。そして、第1領域102の面積は第2領域104の面積よりも大きい。このため、発光装置10は、一定以上の光透過性を有する。
【0026】
そして本実施形態では、有機層120を構成する発光層は燐光材料を含んでおり、蛍光材料を含んでいない。このようにすると、有機層120における光の吸収領域のピーク波長は、480nm~580nmの波長域から外れる。一方、発光装置10は可視光を発光する装置であり、基板100等の材料は、480nm~580nmの波長域において透光性が高くなるように設計されている。このため、有機層120においてフォトルミネッセンスは生じにくくなる。従って、発光装置10の光透過性が低下することを抑制できる。さらに有機層120におけるフォトルミネッセンスの発光スペクトルのピーク波長は480nm~580nmの外側に位置している。従って、有機層120においてフォトルミネッセンスが生じても、フォトルミネッセンスによる光を人は視認しにくい。従って、発光装置10の光透過性が低下することをさらに抑制できる。
【実施例0027】
(実施例1)
図2は、実施例1に係る発光装置10の構成を示す断面図である。本実施例に係る発光装置10は、導電部170を備えている点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様の構成である。
【0028】
導電部170は、例えば第1電極110の補助電極であり、第1電極110に接触している。導電部170は第1電極110よりも抵抗値が低い材料によって形成されており、例えば少なくとも一つの金属層を用いて形成されている。導電部170は、例えばMo又はMo合金などの第1金属層、Al又はAl合金などの第2金属層、及びMo又はMo合金などの第3金属層をこの順に積層させた構成を有している。これら3つの金属層のうち第2金属層が最も厚い。
【0029】
そして導電部170は、絶縁膜150によって覆われている。このため、導電部170が絶縁膜150に短絡することを抑制できる。
【0030】
導電部170を形成するタイミングは、第1電極110を形成した後、絶縁膜150を形成する前である。導電部170は、例えば以下のようにして形成される。まず、導電部170となる導電層を、例えばスパッタリング法などの成膜法を用いてこの順に形成する。次いで、この導電層上にレジストパターン(図示せず)を形成し、このレジストパターンをマスクとして導電層をエッチング(例えばウェットエッチング)する。これにより、導電部170は形成される。
【0031】
本実施例によっても、実施形態と同様に、発光装置10の光透過性が低下することを抑制できる。また、第1電極110上に導電部170を形成しているため、第1電極110の抵抗値を小さくすることができる。
【0032】
(実施例2)
図3は、実施例2に係る発光装置10の断面図である。
図4は、
図3に示した発光装置10の平面図である。
図3は、
図4のA-A断面に対応している。本実施例に係る発光装置10は、複数の発光部140を備えている点を除いて、実施形態又は実施例1に係る発光装置10のいずれかと同様の構成である。
【0033】
詳細には、発光装置10は照明装置であり、複数の線状の発光部140を有している。これら複数の発光部140は、基板100の第1面に互いに離れて配置されている。詳細には、複数の発光部140は線状かつ同一方向に延在している。そして有機層120は、基板100の第1面のうち、複数の発光部140の間に位置する領域にも形成されている。言い換えると、有機層120は、複数の発光部140及びこれらの間の領域に連続して形成されている。
【0034】
本実施例によっても、実施形態と同様に、第1電極110と第2電極130が短絡することを抑制できる。また、有機層120は、複数の発光部140及びこれらの間の領域に連続して形成されているため、有機層120を形成するときに、細かなパターンを有するマスクを用いる必要がない。従って、発光装置10を製造するときのコストを低くすることができる。
【0035】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。