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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174324
(43)【公開日】2022-11-22
(54)【発明の名称】蒸着マスク
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20221115BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20221115BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/10
H05B33/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152810
(22)【出願日】2022-09-26
(62)【分割の表示】P 2021072405の分割
【原出願日】2014-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 良弘
(72)【発明者】
【氏名】田丸 裕仁
(72)【発明者】
【氏名】中島 貴士
(57)【要約】
【課題】均一な高さ寸法を有する発光層を高精度に再現性良く形成することができる蒸着マスクを提供する。
【解決手段】マスク本体2に多数独立の蒸着通孔5からなる蒸着パターン6が設けられ、蒸着通孔5は、被蒸着基板側に位置する小孔部5aと、気化源側に位置して小孔部5aの開口形状よりも大きく形成された大孔部5bとが連通形成して構成されており、マスク本体2は、小孔部5aを有して水平方向に伸びる下段部と、大孔部5bを有して下段部から上方に向かって伸びる上段部とを備え、下段部の被蒸着基板側に微小凹み50を有し、マスク本体2の断面視において、微小凹み50の幅寸法が下段部の幅寸法より小さい。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体2に多数独立の蒸着通孔5からなる蒸着パターン6が設けられた蒸着マスクであって、
前記蒸着通孔5は、被蒸着基板側に位置する小孔部5aと、気化源側に位置し、前記小孔部5aの開口形状よりも大きく形成された大孔部5bとが連通形成して構成されており、
前記マスク本体2は、前記小孔部5aを有して水平方向に伸びる下段部と、前記大孔部5bを有して前記下段部から上方に向かって伸びる上段部とを備え、
前記下段部の被蒸着基板側に微小凹み50を有し、
前記マスク本体2の断面視において、前記微小凹み50の幅寸法が前記下段部の幅寸法より小さいことを特徴とする蒸着マスク。
【請求項2】
前記マスク本体2の断面視において、前記微小凹み50の幅寸法が前記下段部の被蒸着基板側の幅寸法より小さいことを特徴とする請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記マスク本体2の断面視において、前記微小凹み50の幅寸法が前記下段部の気化源側の幅寸法より小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の蒸着マスク。
【請求項4】
前記マスク本体2の断面視において、前記微小凹み50の幅寸法が前記上段部の幅寸法より大きいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の蒸着マスク。
【請求項5】
前記マスク本体2の断面視において、前記微小凹み50の幅寸法が前記上段部の被蒸着基板側の幅寸法より大きいことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の蒸着マスク。
【請求項6】
前記マスク本体2の断面視において、前記微小凹み50の幅寸法が前記上段部の気化源側の幅寸法より大きいことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の蒸着マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスクに関する。本発明は、例えば蒸着マスク法により、有機EL素子の発光層を形成する際に用いられる有機EL素子用の蒸着マスクに適用できる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図17に示すごとく、マスク本体102の外周縁に、該マスク本体102の補強用の枠体103が装着された蒸着マスクが開示されている。そこでの枠体103は、被蒸着基板30と同等の熱線膨張係数を有する素材、あるいは低熱線膨張係数の素材からなる。枠体103は、耐熱セラミック系接着剤や耐熱エポキシ樹脂接着剤などの温度変化に対して安定した接着剤からなる接着剤108を介してマスク本体102上に固定されている。マスク本体102は、多数独立の蒸着通孔105からなる有機EL素子の発光層310形成用の蒸着パターン106を、パターン形成領域104内に備える。特許文献1に開示の蒸着マスクによれば、マスク本体102の形成素材が有する熱線膨張係数が被蒸着基板30のそれと異なる場合でも、マスク本体102は被蒸着基板30と同等の熱線膨張係数を有する枠体103の膨張に追随して形状変化し、あるいは低熱線膨張係数を有する枠体103に抑制されて形状変化せず、従って、常温時における被蒸着基板30に対するマスク本体102の整合精度を蒸着窯内における昇温時においても良好に担保できるので、被蒸着基板30上に発光層310を高精度に再現性良く形成できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-371349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸着マスク法は、被蒸着基板上に蒸着マスクを配置し、該蒸着マスクの蒸着通孔に、気化源により気化された有機材料を蒸着させて、被蒸着基板上に発光層を形成する方法であり、被蒸着基板上に形成される発光層は、均一な高さ寸法を有することが求められている。しかしながら、図17に示す蒸着マスクのように、蒸着通孔105がストレート状であると、蒸着マスクの蒸着通孔105には直進方向だけでなく、斜め方向からも有機材料が飛来するため、斜め方向から蒸着通孔105内に入射する有機材料がマスクの開口上端縁に遮られ、蒸着通孔105の縁部分の被蒸着基板30上には少量の有機材料しか蒸着されず、完成された発光層310は、中央部分が膨らみ、縁部分が漸減した断面視で略水滴状の形状となりやすい。このような歪な形状の発光層310は、輝度にムラがあり、素子の高精度化を図るうえでの大きな障害となる。
【0005】
本発明の目的は、均一な高さ寸法を有する発光層を高精度に再現性良く形成することができる蒸着マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蒸着マスク1は、マスク本体2に、多数独立の蒸着通孔5からなる蒸着パターン6が設けられている。そして、蒸着通孔5は、気化源側に位置する小孔部5aと、被蒸着基板30側に位置し、小孔部5aの開口形状よりも大きく形成された大孔部5bとが連通形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、マスク本体2は、第一金属層13・44と第二金属層16・45とを有し、第一金属層13・44の上面及び側面を覆うように第二金属層16・45が形成されており、蒸着通孔5間におけるマスク本体2の断面形状が段差状となっていることを特徴とする。
【0008】
また、大孔部5bおよび小孔部5aの周面に臨む第二金属層16・45の各上端周縁部をR状とすることを特徴とする。
【0009】
また、蒸着パターン6がパターン形成領域4内に形成されており、マスク本体2の外周に、低熱線膨張係数の材質からなる枠体3が配置され、マスク本体2のパターン形成領域4の外周縁4aと枠体3とを金属層9を介して一体的に接合してあることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、マスク本体2に、多数独立の蒸着通孔5からなる蒸着パターン6が設けられた蒸着マスクの製造方法であって、母型10の表面に、レジスト体12aを有する一次パターンレジスト12を形成する工程と、一次パターンレジスト12を用いて、母型10上に第一金属層13を形成する工程と、母型10の表面に、レジスト体15aを有する二次パターンレジスト15を形成する工程と、二次パターンレジスト15を用いて、母型10及び第一金属層13上に第二金属層16を形成する工程と、母型10から第一金属層13および第二金属層16を一体に剥離する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
さらに本発明は、マスク本体2に、多数独立の蒸着通孔5からなる蒸着パターン6が設けられた蒸着マスクの製造方法であって、金属膜41がパターン形成された母型40を準備する工程と、母型40表面に、レジスト体43aを有するパターンレジスト43を形成する工程と、パターンレジスト43を用いて、金属膜41上に第一金属層44を形成する工程と、金属膜41及び第一金属層44上に、第二金属層45を形成する工程と、母型10から第一金属層44および第二金属層45を一体に剥離する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る蒸着マスクによれば、マスク本体2に設けられた蒸着通孔5は、気化源側に位置する小孔部5aと、被蒸着基板30側に位置し、小孔部5aの開口形状よりも大きく形成された大孔部5bとが連通形成されているので、蒸着通孔5が気化源に向かって外広がり形状となって、広い角度で気化源からの有機材料を受け入れることが可能となり、よって、蒸着通孔がストレート状であるため発生していた開口上端縁による影をなくして、均一な高さ寸法を有する発光層を精度良く形成することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る蒸着マスクの製造方法によれば、前記マスク本体2が第一金属層13・44と第二金属層16・45と有するものであり、第一金属層13・44の表面を覆うように前記第二金属層16・45を形成しているので、第一金属層13・44と第二金属層16・45との密着性が良く、しかも高精度の蒸着マスクを生産性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る蒸着マスクの縦断側面図
図2】本発明の第1実施形態に係る蒸着マスクの分解斜視図
図3】本発明の第1実施形態に係る蒸着マスクの製造過程の工程説明図
図4】本発明の第1実施形態に係る蒸着マスクの製造過程の工程説明図
図5】本発明の第1実施形態に係る蒸着マスクの製造過程の工程説明図
図6】本発明の第2実施形態に係る蒸着マスクの縦断側面図
図7】本発明の第2実施形態に係る蒸着マスクの要部の平面図
図8】本発明の第2実施形態に係る蒸着マスクの要部の斜視図
図9】本発明の第2実施形態に係る蒸着マスクの分解斜視図
図10】本発明の第2実施形態に係る蒸着マスクの製造過程の工程説明図
図11】本発明の第2実施形態に係る蒸着マスクの製造過程の工程説明図
図12】本発明の第2実施形態に係る蒸着マスクの製造過程の工程説明図
図13】本発明の第3実施形態に係る蒸着マスクの製造過程の工程説明図
図14】本発明の第3実施形態に係る蒸着マスクの製造過程の工程説明図
図15】本発明の第3実施形態に係る蒸着マスクの縦断側面図
図16】本発明のその他実施形態に係る蒸着マスクの縦断側面図
図17】従来例の蒸着マスクを示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
図1において、蒸着マスク1は、マスク本体2に、多数独立の蒸着通孔5からなる蒸着パターン6が設けられたものである。マスク本体2は、ニッケルやニッケル-コバルト等のニッケル合金、銅、その他の電着金属を素材として、電鋳法により形成される。図2において、マスク本体2は、200×200mmの四角形状の母型領域の中に、例えば50×50mmの正方形状に4つ独立して形成されており、その内部にパターン形成領域4を備える。このパターン形成領域4に、蒸着通孔5からなる蒸着パターン6が形成されている。
【0016】
マスク本体2は、第一金属層13と第二金属層16とを有する。詳しくは、第一金属層13の上面及び側面を覆うように第二金属層16が形成されている。本実施形態において、上面は気化源側を指し、側面は蒸着通孔5に臨む面を指す。このように、第一金属層13の表面を覆うように第二金属層16を形成することで、第一金属層13と第二金属層16とが単に積層された形態に比べ、第一金属層13と第二金属層16との接触する表面積が大きくなるので、第一金属層13と第二金属層16とが強固に密着した積層構造が得られる。マスク本体2の厚みは、好ましくは10~100μmの範囲とし、本実施例では20μmに設定した。具体的には、第一金属層13の厚みt1は、好ましくは5~90μmの範囲とし、本実施例では16μmに設定し、第二金属層16の厚みt2は、好ましくは10μm以下とし、本実施例では4μmに設定した。なお、第二金属層16の厚みt2が薄いほど、蒸着通孔5の上端周縁による影をなくすことができる。
【0017】
各蒸着通孔5は、小孔部5aと、この小孔部5aの開口形状よりも大きく形成された大孔部5bとが連通してなるものであり、例えば、小孔部5aは、平面視で前後の長さ寸法が150μm、左右幅寸法が50μmの四角形状を有しており、大孔部5bは、平面視で前後の長さ寸法が300μm、左右幅寸法が150μmの四角形状を有している。小孔部5aが被蒸着基板30側となり、大孔部5bが気化源側となる。これら蒸着通孔5は、前後および/または左右方向に並列状に配設されて蒸着パターン6を構成している。図1に示すように、蒸着通孔5間におけるマスク本体2(第一金属層13及び第二金属層16)は、断面視で段差状に形成されていることにより、蒸着通孔5が小孔部5aと大孔部5bとで構成される形態となる。この大孔部5bによって、広い角度で気化源からの有機材料を受け入れることを可能とし、斜め方向から入射する有機材料にも対応することができるので、均一な高さ寸法の発光層の形成に寄与できる。しかも、図1に示すように、大孔部5bおよび小孔部5aの周面に臨む第二金属層16のそれぞれの上端周縁部(気化源側周縁部)をR状とすることで、大孔部5bおよび小孔部5aの上端周縁による影を限りなくなくすことができ、有機材料の受け入れ角度をより広げることができ、より一層均一な高さ寸法の発光層を得ることができる。なお、図1の縦断面図は、実際の蒸着パターン6の様子を示したものではなく、それを模式的に示したものである。
【0018】
マスク本体2には、マスク本体2の補強用の枠体3を装着することができる。この枠体3は、ニッケル-鉄合金であるインバー材、あるいはニッケル-鉄-コバルト合金であるスーパーインバー材等のような低熱線膨張係数の材質からなる。枠体3は、マスク本体2よりも肉厚の成形品であり、金属層9によりマスク本体2のパターン形成領域4の外周縁4aと不離一体的に接合される。ここでは、図2に示すごとく、4枚のマスク本体2を1枚の枠体3で保持している。すなわち、枠体3は、その板面上に4つの開口3aが整列配置されており、各開口3aに一枚のマスク本体2が装着される。枠体3は、マスク本体2に対応する開口3aを備え、平板形状に形成されている。枠体3の厚み寸法は、例えば100~500μm程度とし、本実施例においては200μmに設定した。
【0019】
枠体3の形成素材としてインバー材やスーパーインバー材を採用したのは、その線膨張係数が2×10-6/℃、あるいは1×10-6/℃以下と極めて小さく、蒸着工程における熱影響によるマスク本体2の寸法変化を良好に抑制できることに拠る。すなわち、例えば、上述のようにマスク本体2がニッケルからなるものであると、その線膨張係数は12.80×10-6/℃であり、被蒸着基板30(図17参照)である一般ガラスの線膨張係数3.20×10-6/℃に比べて数倍大きいため、蒸着時の高温による熱膨張率の違いから、常温下で蒸着マスク1を被蒸着基板30に整合させた際の蒸着位置と、実際の蒸着時における蒸着物質の蒸着位置との間に位置ズレが生じることは避けられない。そこで、マスク本体2を保持する枠体3の形成素材として、インバー材などの線膨張係数の小さな素材を採用してあると、昇温時におけるマスク本体2の膨張に起因する寸法変化、形状変化をよく抑えて、常温時における整合精度を蒸着時の昇温時にも良好に保つことができる。
【0020】
図1において、符号9は、パターン形成領域の外周縁4aに係るマスク本体2の上面に積層された金属層を示す。詳しくは、金属層9は、パターン形成領域4の外周縁4aの上面と、枠体3の上面およびパターン形成領域4に臨む側面と、マスク本体2と枠体3との間隙部分に形成されており、これでパターン形成領域4の外周縁4aと枠体3の開口周縁とを不離一体的に接合する。この金属層9は、ニッケルやニッケル-コバルト合金等からなり、メッキ法により形成することができる。
【0021】
図3ないし図5は、本実施形態に係る蒸着マスクの製造方法を示す。まず、図3(a)に示すごとく、母型10の表面にフォトレジスト層11を形成する。母型10は、例えば、ステンレスや真ちゅう鋼製などの導電性を有するものからなる。また、フォトレジスト層11は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成する。
【0022】
次いで、フォトレジスト層11の上に、蒸着通孔5の大孔部5b位置に対応する透光孔を有するパターンフィルム(ガラスマスク)を密着させたのち、紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を除去することにより、図3(b)に示すごとく、蒸着通孔5の大孔部5b位置に対応する、ストレート状のレジスト体12aを有する一次パターンレジスト12を母型10上に形成した。
【0023】
次いで、上記母型10を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、図3(c)に示すごとく、先のレジスト体12aの高さの範囲内で、母型10のレジスト体12aで覆われていない表面(露出領域)にニッケル-コバルト合金を、好ましくは5~90μm厚の範囲、本実施形態では16μm厚で電鋳して、第一金属層13を形成した。この第一金属層13を形成後、図3(d)に示すごとく、一次パターンレジスト12(レジスト体12a)を除去する。
【0024】
続いて、図4(a)に示すごとく、第一金属層13の形成領域を含む母型10の表面全体に、フォトレジスト層14を形成した。このフォトレジスト層14は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成する。
【0025】
次いで、蒸着通孔5の小孔部5a位置に対応する透光孔を有するパターンフィルムを密着させたのち、紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を除去することにより、図4(b)に示すごとく、蒸着通孔5の小孔部5a位置に対応するストレート状のレジスト体15aを有する二次パターンレジスト15を母型10上に形成した。
【0026】
次いで、上記母型10を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、図4(c)に示すごとく、先のレジスト体15aの高さの範囲内で、母型10及び第一金属層13のレジスト体16aで覆われていない表面(露出領域)にニッケル-コバルト合金を、好ましくは10μm以下の厚さ、本実施形態では4μm厚で電鋳して、第二金属層16を形成した。この時、第一金属層13の端部(頂部や根元)と対向する部分に形成される第二金属層16はR状となる。また、蒸着通孔5に臨む第二金属層16の端部もR状となる。なお、係るR(アール)の曲率は、第二金属層16の厚みを調整することで、所望のR(アール)が得られる。そして、二次パターンレジスト15(レジスト体15a)を除去することにより、図4(d)に示すごとく、多数独立の蒸着通孔5からなる蒸着パターン6を備えたマスク本体2を得た。
【0027】
続いて、図5(a)に示すごとく、第一金属層13及び第二金属層16(マスク本体2) の形成部分を含む母型10の表面全体に、フォトレジスト層17を形成した。このフォトレジスト層17は、ネガタネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成する。次いで、前記パターン形成領域4に対応する透光孔を有するパターンフィルムを密着させたのち、紫外線光を照射して露光を行った。かくして、パターン形成領域4に係る部分が露光(17a)されており、それ以外の部分が未露光(17b)のフォトレジスト層17を得たうえで、図5(b)に示すごとく、母型10上に、第一金属層13及び第二金属層16を囲むようにして枠体3を配した。ここでは、未露光のフォトレジスト層17bの粘着性を利用して、母型10上に枠体3を仮止め固定した。
【0028】
次いで、図5(c)に示すごとく、表面に露出している未露光のフォトレジスト層17bを溶解除去して、パターン形成領域4を覆うレジスト体18aを有する三次パターンレジスト18を形成した。なお、このとき、枠体3の下面に存する未露光のフォトレジスト層17bは、母型10上に残留している。
【0029】
次いで、図5(d)に示すごとく、パターン形成領域4の外周縁4aに係る表面に露出する第二金属層16の上面、枠体3と第二金属層16との間で露出する母型10の表面、および枠体3の表面上に電着金属を電鋳して金属層9を形成し、この金属層9により、第一金属層13を含む第二金属層16と枠体3とを接合した。この時、パターン形成領域4の外周縁4aに係る表面に露出する第二金属層16の上面、および枠体3と第二金属層16との間で露出する母型10の表面における金属層9の層厚が30μmとなっており、枠体3の表面における金属層9の層厚は15μmとなっていた。このように、母型10の表面等と枠体3との間で層厚が異なるのは、金属層9は、母型10の表面から順次積層されていき、そして、金属層9が未露光のフォトレジスト層17bの高さ寸法を超えて枠体3に至ると、枠体3が母型10と導通状態となって、該枠体3の表面に金属層9が形成されることによる。
【0030】
最後に、母型10から第一金属層13、第二金属層16、および金属層9を剥離してから、三次パターンレジスト18および枠体3の下面に存する未露光のフォトレジスト層17bを除去することにより、図1に示すようなマスク1を得た。
【0031】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る蒸着マスクを図6ないし図12に基づいて説明する。図6において、蒸着マスク1は、多数独立の蒸着通孔5からなる蒸着パターン6が設けられたマスク本体2を備え、このマスク本体2は、ニッケルやニッケルコバルト等のニッケル合金、銅、その他の電着金属を素材として、電鋳法により形成される。図9において、蒸着マスク1は、500mm×400mmの四角形状を呈しており、その内部に複数個のマスク本体2を備える。各マスク本体2は、50×40mmの四角形状に形成されており、その内部にパターン形成領域4を備える。パターン形成領域4には、多数独立の蒸着通孔5からなる発光層形成用の蒸着パターン6が形成されている。
【0032】
マスク本体2は、第一金属層13と第二金属層16とを有する。詳しくは、図6に示すように、第一金属層13の上面及び側面を覆うように第二金属層16が形成されており、蒸着通孔5間における第一金属層13及び第二金属層16(マスク本体2)の断面形状は段差状に形成されている。このように、第一金属層13の表面を覆うように第二金属層16を形成することで、第一金属層13と第二金属層16とが単に積層された形態に比べ、第一金属層13と第二金属層16との接触する表面積が大きくなるので、第一金属層13と第二金属層16とが強固に密着した積層構造が得られる。マスク本体2の厚みは、好ましくは10~100μmの範囲とし、本実施例では20μmに設定した。具体的には、第一金属層13の厚みt1は、好ましくは5~90μmの範囲とし、本実施例では16μmに設定し、第二金属層16の厚みt2は、好ましくは10μm以下とし、本実施例では4μmに設定した。なお、第一金属層13の上面は気化源側を指し、第一金属層13の側面は蒸着通孔5に臨む面を指す。
【0033】
各蒸着通孔5は、小孔部5aと、この小孔部5aの開口形状よりも大きく形成された大孔部5bとが連通してなるものであり、例えば、小孔部5aは、平面視で前後の長さ寸法が150m、左右幅寸法が50μmの四角形状を有しており、大孔部5bは、平面視で前後の長さ寸法が300μm、左右幅寸法が150μmの四角形状を有している。小孔部5aが被蒸着基板30側となり、大孔部5bが気化源側となる。これら蒸着通孔5は、前後または左右方向に並列状に配設されて蒸着パターン6を構成している。このように、蒸着通孔5は、第一金属層13と第二金属層16とが断面視で段差状に形成されることにより、小孔部5aと大孔部5bとで構成される形態となり、この大孔部5bによって、広い角度で気化源からの有機材料を受け入れることを可能とし、斜め方向から入射する有機材料にも対応することができるので、均一な高さ寸法の発光層の形成に寄与できる。しかも、大孔部5bおよび小孔部5aの周面に臨む第二金属層16の各上端周縁部(気化源側周縁部)をR状とすることで、大孔部5bおよび小孔部5aの上端周縁による影を限りなくなくすことができるとともに、有機材料の受け入れ角度をより広げることができ、より一層均一な高さ寸法の発光層を得ることができる。なお、図1の縦断面図は、実際の蒸着パターン6の様子を示したものではなく、それを模式的に示したものである。
【0034】
マスク本体2には、マスク本体2の補強用の枠体3が装着することができる。この枠体3は、ニッケル-鉄合金であるインバー材、あるいはニッケル-鉄-コバルト合金であるスーパーインバー材等のような低熱線膨張係数の材質からなる。枠体3は、マスク本体2よりも肉厚の成形品であり、金属層9によりマスク本体2のパターン形成領域4の外周縁4aと不離一体的に接合される。ここでは、図9に示すごとく、30枚のマスク本体2を1枚の枠体3で保持している。すなわち、枠体3は、その板面上に30個の開口3aが整列配置されており、各開口3aに一枚のマスク本体2が装着される。枠体3は、マスク本体2に対応する開口3aを備え、平板形状に形成されている。枠体3の厚み寸法は、例えば100~500μm程度とし、本実施例においては250μmに設定した。
【0035】
枠体3の形成素材としてインバー材やスーパーインバー材を採用したのは、その線膨張係数が2×10-6/℃、あるいは1×10-6/℃以下と極めて小さく、蒸着工程における熱影響によるマスク本体2の寸法変化を良好に抑制できることに拠る。すなわち、例えば、上述のようにマスク本体2がニッケルからなるものであると、その線膨張係数は12.80×10-6/℃であり、被蒸着基板30(図17参照)である一般ガラスの線膨張係数3.20×10-6/℃に比べて数倍大きいため、蒸着時の高温による熱膨張率の違いから、常温下で蒸着マスク1を被蒸着基板30に整合させた際の蒸着位置と、実際の蒸着時における蒸着物質の蒸着位置との間に位置ズレが生じることは避けられない。そこで、マスク本体2を保持する枠体3の形成素材として、インバー材などの線膨張係数の小さな素材を採用してあると、昇温時におけるマスク本体2の膨張に起因する寸法変化、形状変化をよく抑えて、常温時における整合精度を蒸着時の昇温時にも良好に保つことができる。
【0036】
図6において、符号9は、マスク本体2のパターン形成領域4の外周縁4aと枠体3とを接合する金属層を示す。かかる金属層9は、メッキ法により形成されるものであり、ニッケルやニッケル-コバルト合金等の電鋳金属からなる。このように、マスク本体2のパターン形成領域4の外周縁4aと枠体3とを金属層9で接合してあると、マスク本体2と枠体3とを接着剤で接合する形態では不可避であった、洗浄処理等において使用される有機溶剤が接着剤に作用することに起因する接着剤の変質などの不具合は一切生じず、マスク本体2と枠体3との間の良好な接合状態を長期にわたってよく維持できる。
【0037】
そのうえで、本実施形態においては、図6ないし図8に示すごとく、マスク本体2のパターン形成領域4の外周縁4aの全周にわたって多数個の通孔21を設けてあり、マスク本体2のパターン形成領域4の外周縁4aと枠体3とを、該通孔21を埋めるように形成された金属層9を介して一体的に接合してある点が着目される。すなわち、本実施形態に係る金属層9は、パターン形成領域4の外周縁4aの上面と、枠体3の上面およびパターン形成領域4に臨む側面と、マスク本体2と枠体3との間隙部分のみならず、さらに通孔21を埋めるように成長・形成されている点が着目される。このように、通孔21を埋めるように成長・形成された金属層9を介してマスク本体2と枠体3とを接合してあると、両者2・3間の接合強度の向上を図ることができるため、枠体3に対するマスク本体2の不用意な脱落や位置ずれを確実に抑えることができる。従って、発光層の再現精度・蒸着精度の向上を図ることができる。
【0038】
また、図7および図8に示すごとく、マスク本体2の四つの角部を平面視で面取り状に形成している。これによれば、マスク本体2が熱膨張した際に角部に応力が集中することを抑えることができる。なお、図7および図8においては、蒸着通孔5を小孔部5aと大孔部5bとで構成されるものではなく、ストレート状のもので表現している。
【0039】
図10ないし図12は、本実施形態に係る蒸着マスクの製造方法を示す。まず、図10(a)に示すごとく、母型10の表面にフォトレジスト層11を形成する。母型10としては、導電性を有し、低温膨張係数の素材が望ましく、例えば、42アロイやインバー、SUS430(ステンレス)等が挙げられる。フォトレジスト層11は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成する。
【0040】
次いで、フォトレジスト層11の上に、蒸着通孔5の大孔部5bおよび接着強度アップ用の通孔21の位置に対応する透光孔を有するパターンフィルム(ガラスマスク)を密着させたのち、紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、図10(b)に示すごとく、前記蒸着通孔5の大孔部5bおよび通孔21の位置に対応する、ストレート状のレジスト体12aを有する一次パターンレジスト12を母型10上に形成した。
【0041】
次いで、上記母型10を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、図10(c)に示すごとく、先のレジスト体14aの高さの範囲内で、母型10のレジスト体14aで覆われていない表面(露出領域)にニッケル-コバルト合金を、好ましくは5~90μm厚の範囲、本実施例では16μm厚で電鋳して、第一金属層13を形成した。第一金属層13を形成後は、図10(d)に示すごとく、一次パターンレジスト12(レジスト体12a)を除去する。ここで、第一金属層13は、光沢ニッケル層と無光沢ニッケル層との2層構造としても良い。この場合、母型10に光沢ニッケルからなる電着層を5μm電鋳したのち、その上に無光沢ニッケルからなる電着層を11μm電鋳する。このように、第一金属層13を2層構造とすれば、光沢ニッケルが母型10に対してくっつき難く、最後の蒸着マスク1の母型10からの剥離工程を作業効率良く進めることができる。なお、図10(d)において、符号13aは、マスク本体2・2どうしの間に形成された第一金属層を示す。
【0042】
続いて、図11(a)に示すごとく、第一金属層13の形成領域を含む母型10の表面全体に、フォトレジスト層14を形成した。このフォトレジスト層14は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成する。
【0043】
次いで、蒸着通孔5の小孔部5a位置に対応する透光孔を有するパターンフィルムを密着させたのち、紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を除去することにより、図11(b)に示すごとく、蒸着通孔5の小孔部5a位置に対応するストレート状のレジスト体15aを有する二次パターンレジスト15を母型10上に形成した。
【0044】
次いで、上記母型10を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、図11(c)に示すごとく、先のレジスト体15aの高さの範囲内で、母型10及び第一金属層13のレジスト体16aで覆われていない表面(露出領域)にニッケル-コバルト合金を、好ましくは10μm以下の厚さ、本実施形態では4μm厚で電鋳して、第二金属層16を形成した。この時、第一金属層13の端部(頂部や根元)と対向する部分に形成される第二金属層16はR状となる。また、蒸着通孔5に臨む第二金属層16の端部もR状となる。なお、係るR(アール)の曲率は、第二金属層16の厚みを調整することで、所望のR(アール)が得られる。そして、二次パターンレジスト15(レジスト体15a)を除去することにより、図11(d)に示すごとく、多数独立の蒸着通孔5からなる蒸着パターン6と、および該蒸着パターン6の外周縁全体に接合強度アップ用の通孔21とを備えたマスク本体2を得た。マスク本体2の各角部は、図7および図8に示すごとく、平面視で面取り状に形成している。なお、図11(d)において、符号16aは、マスク本体2・2どうしの間に形成された第二金属層を示しており、第一金属層13a上に形成される。
【0045】
続いて、図12(a)に示すごとく、第一金属層13及び第二金属層16(マスク本体2)の形成部分を含む母型10の表面全体に、フォトレジスト層17を形成した。このフォトレジスト層17は、先と同様にネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成する。次いで、パターン形成領域4に対応する透光孔を有するパターンフィルムを密着させたのち、紫外線光を照射して露光を行った。かくして、パターン形成領域4に係る部分が露光(17a)されており、それ以外の部分が未露光(17b)のフォトレジスト層17を得たうえで、図12(b)に示すごとく、母型10上に、第一金属層13及び第二金属層16を囲むようにして枠体3を配した。ここでは、未露光のフォトレジスト層17bの粘着性を利用して、母型10上に枠体3を仮止め固定した。
【0046】
次いで、図12(c)に示すごとく、表面に露出している未露光のフォトレジスト層17bを溶解除去して、パターン形成領域を覆うレジスト体18aを有する三次パターンレジスト18を形成した。なお、このとき、枠体3の下面に存する未露光のフォトレジスト層17bは、母型10上に残留している。
【0047】
次いで、図12(d)に示すごとく、パターン形成領域4の外周縁4aに係る表面に露出する第二金属層16の上面、枠体3と第二金属層16との間で露出する母型10の表面、枠体3の表面上、および通孔21内に電着金属を電鋳して金属層9を形成し、かかる金属層9により第一電着層13及び第二金属層16(マスク本体2)と枠体3とを一体的に接合した。なお、金属層9を形成する前に、通孔21の周辺の第一電着層13、詳しくは、通孔21の内壁面及び該通孔21周辺の第一電着層13上面に対して、酸浸漬、電解処理、ストライクメッキ等の処理を施すことにより、該処理を施した部分と金属層9との接合強度の向上を図ることができる。
【0048】
最後に、母型10から第一金属層13、第二金属層16、および金属層9を剥離したうえで、これら金属層から枠体3の下面に存する第一金属層13aを剥離し、三次パターンレジスト18および未露光のフォトレジスト層17bを除去することにより、図6に示すような蒸着マスク1を得た。
【0049】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る蒸着マスクを図13ないし図15に基づいて説明する。上記各実施形態におけるマスク本体2(蒸着マスク1)は、母型として導電性基板を用い、その表面にパターンレジストを形成後、電鋳して製造しているが、母型として絶縁性基板を用いて製造することもできる。図13および図14は、本実施形態に係る蒸着マスクの製造方法を示すものであり、以下に該製造方法の各工程について説明する。
【0050】
まず、図13(a)に示すごとく、金属膜41が形成された母型40を用意する。母型40は、例えば、ガラス板や樹脂板など絶縁性基板を用いる。また、金属膜41は、クロムやチタンなどの導電性を有する金属からなる。この金属膜41は、母型40の表面全体に金属膜をスパッタリングにより堆積させ、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストパターンを形成後、レジストパターンから露出している金属膜をエッチング除去し、レジストパターンを除去することにより、母型40の表面に金属膜41がパターン形成される。こうしてパターン形成された金属膜41上に、後述する第一金属層44及び第二金属層45が形成され、金属膜41間が蒸着通孔5の小孔部5aの位置に対応する。本実施形態では、母型40としてガラス板、金属膜41としてクロムを用いており、金属膜41の厚みは1μm以下である。
【0051】
次いで、図13(b)に示すごとく、母型40の表面にフォトレジスト層42を形成する。フォトレジスト層11は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成する。
【0052】
次いで、フォトレジスト層42の上に、第一金属層44の形成位置に対応する透光孔を有するパターンフィルム(ガラスマスク)を密着させたのち、紫外線光を照射して露光を行い、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を除去することにより、図13(c)に示すごとく、第一金属層44の形成位置に対応する、ストレート状のレジスト体43aを有するパターンレジスト43を母型40上に形成した。
【0053】
次いで、上記母型40を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、図14(a)に示すごとく、先のレジスト体43aの高さの範囲内で、母型40のレジスト体43aで覆われていない表面(露出領域)にニッケル-コバルト合金を、好ましくは5~90μm厚の範囲、本実施形態では16μm厚で電鋳して、第一金属層44を形成した。なお、第一金属層44を形成する前に、レジスト体43aから露出する金属膜41表面に、酸化膜、有機膜、高分子膜などを形成しても良い。
【0054】
次いで、図14(b)に示すごとく、パターンレジスト43(レジスト体43a)を除去する。
【0055】
次いで、上記母型40を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、図14(c)に示すごとく、金属膜41及び第一金属層44の表面にニッケル-コバルト合金を、好ましくは10μm以下厚、本実施形態では4μm厚で電鋳して、第二金属層45を形成した。この時、金属膜41及び第一金属層44の端部(頂部や根元)と対向する部分に形成される第二金属層45はR状となる。これにより、大孔部5bおよび小孔部5aの上端周縁による影を限りなくなくすことができる。なお、係るR(アール)の曲率は、第二金属層45の厚みを調整することで、所望のR(アール)が得られる。また、第二金属層45を形成する前に、金属膜41及び第一金属層44の表面に、酸化膜、有機膜、高分子膜などを形成しても良い。
【0056】
最後に、母型40から第一金属層44及び第二金属層45を剥離することにより、図15に示すような、小孔部5aと大孔部5bとを有する蒸着通孔5を備えたマスク本体2(蒸着マスク1)を得た。
【0057】
本実施形態におけるマスク本体2は、第一金属層44の裏面側(被蒸着基板30側)に微小凹み50を有する。この微小凹み50の形状は、金属膜41の形状に対応して形成される。係る微小凹み50が存在することにより、微小凹み50の外周部(小孔部5aの被蒸着基板30側の周縁部)が出っ張り形状となるので、本蒸着マスク1を被蒸着基板30上に載置して蒸着する時に、マスク本体2の蒸着通孔5周辺と被蒸着基板30との線接触により、蒸着マスク1を被蒸着基板30上に密着良く載置することができ、気化源から気化された有機材料のにじみや蒸着マスク1裏面への蒸着を防ぐことができる。
【0058】
上記各実施形態において、金属層9は、第一金属層13及び第二金属層16、すなわちマスク本体2を枠体3側に引き寄せる、引っ張り応力F1が作用するようなテンションを加えた状態で形成することができる。かかる引っ張り応力の付与は、電鋳槽中に添加する第2種光沢剤中のカーボンの含有比率を調製することによって実現できる。これにより、第一金属層13及び第二金属層16は、金属層9を介して枠体3に対してピンと張った引っ張り応力が作用した状態で張設されるため、蒸着作業時の周囲温度上昇に対しても、枠体3との熱膨張係数の差に伴うマスク本体2の膨張を吸収し、蒸着マスク1が熱による寸法精度のばらつきが生じ難く、発光層の再現精度・蒸着精度の向上に寄与できる。さらに、マスク本体2を保持する枠体3として熱膨張しにくい材料を採用することで、熱の影響を可及的に抑えることができる。
【0059】
また、上記各実施形態において、マスク本体2、すなわち、第一金属層13及び第二金属層16は、それが内方に収縮する方向の応力F2が作用するようなテンションを加えた状態で形成することもできる。かかる引っ張り応力F2は、第一金属層13及び第二金属層16を作成する際の電鋳層の温度(40~50℃)と常温(20℃)との温度差に起因して、常温時に第一金属層13及び第二金属層16が収縮するようにすることによって実現できる。より詳しく説明すると、母型10として42アロイやインバー、SUS430(ステンレス)等の低温膨張係数の素材を用いたうえで、40~50℃の電鋳層内で第一金属層13及び第二金属層16を形成すると、ニッケルやニッケル合金等の第一金属層13及び第二金属層16は、母型10よりも膨張率が大きいため、母型に対して膨張しようとする応力が作用する(尤も、このときの金属層9の膨張は、母型10により規制される)。しかるに、電鋳層温度(40~50℃)よりも低い常温(20℃)においては、第一金属層13及び第二金属層16は、内方に収縮しようとし、従って母型10から剥離することによって、第一金属層13及び第二金属層16、すなわち、マスク本体2は枠体3に対して引っ張り応力F2が作用することとなる。これにより、マスク本体2を、皺の無いピンと張った状態とできるため、蒸着作業時の周囲温度上昇に対しても、枠体3との熱膨張係数の差に伴うマスク本体2自体の膨張を吸収し、蒸着マスク1が熱による寸法精度のばらつきが生じ難く、発光層の再現精度・蒸着精度の向上に寄与できる。しかも、通孔21を形成すること、マスク本体2の角部を面取り状とすること、マスク本体2を保持する枠体3自体を熱膨張しにくい材質とすることで、熱による寸法精度のばらつきをさらに抑え、発光層の再現精度・蒸着精度の向上により一層寄与できる。
【0060】
また、上記各実施形態において、母型の剥離時などに、第一金属層13・44と第二金属層16・45の界面から剥離する場合がある。これを防止するために、第一金属層13・44上に第二金属層16・45を形成する前に、第一金属層13・44表面に対して、表面活性化処理(酸浸漬、陰極電解、化学エッチング、ストライクメッキなど)行うと良い。その他に、図16に示すように、第一金属層13・44の上端周縁に張出部60を形成し、この第一金属層13・44上に第二金属層16・45を形成することで、第一金属層13・44と第二金属層16・45との剥離を防ぐことができる。係る張出部60は、第一金属層13・44を形成する際に、レジスト体12a・43aの厚みを超えて電鋳、いわゆるオーバーハングをさせることで、第一金属層13・44の上端周縁に断面庇形状の張出部60が一体に形成された形状を得ることができる。
【0061】
蒸着マスク1が有するマスク本体2の枚数は、上記各実施形態に示したものに限られない。また、一次パターンレジスト12を除去する前もしくは後に、第一金属層13を研磨して平滑化してから、第2金属層16を形成するようにしてもよい。また、二次パターンレジスト15を除去する前もしくは後に、第2金属層16を研磨して平滑化してから、パターン形成領域4に三次パターンレジスト18を形成するようにしてもよい。枠体3の材質としては、実施形態に示すインバー材等のような金属材料のほか、できる限り被蒸着基板であるガラス等に近い低熱線膨張係数の材料、例えばガラスやセラミックのようなものを選択することができる。この場合にはこれら材料の少なくとも表面に導電性を付与させることが必要となる。さらに、形成された蒸着マスク1を引っ張り状態で、その外周縁に別途ステンレス、アルミ等の固定枠を周知の方法で固定しても良い。ただ、実施形態のごとく枠体3に各マスク本体2が金属層9を介してテンションを加えた状態で保持されているような場合、固定枠を必要としない所謂フレームレス化が可能となる。
【符号の説明】
【0062】
1 蒸着マスク
2 マスク本体
3 枠体
4 パターン形成領域
4a パターン形成領域の外周縁
5 蒸着通孔
6 蒸着パターン
9 金属層
10 母型
12 一次パターンレジスト
13 第一金属層
15 二次パターンレジスト
16 第二金属層
17 パターンフィルム
18 三次パターンレジスト
21 通孔
40 母型
43 パターンレジスト
44 第一金属層
45 第二金属層
50 微小凹み
60 張出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17