(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174354
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】空気調和機の室内ユニット
(51)【国際特許分類】
F24F 13/20 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
F24F1/0007 401C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019198422
(22)【出願日】2019-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】517303269
【氏名又は名称】トウシバ・キヤリア(タイランド)・カンパニー・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブンケオ・タナウット
(72)【発明者】
【氏名】吉永 登
【テーマコード(参考)】
3L051
【Fターム(参考)】
3L051BG07
(57)【要約】
【課題】吹出口から吹き出される空気が室内の居住者等に対して直接当たることを抑制するとともに、外観上のデザインの調和を図った空気調和機の室内ユニットを提供する。
【解決手段】空気調和機の室内ユニットは、熱交換器と、熱交換器で温調された空気を吹き出す送風装置と、熱交換器および送風装置を収容する筐体と、送風装置から室内に向けて吹き出される空気の吹出方向を回動して偏向させるルーバとを備える。筐体は、平坦状の第1面部と、第1面部に対して略垂直に起立する平坦状の第2面部と、第1面部と第2面部との間にいずれの面部に対しても傾斜して介在する平坦状の第3面部とを有する。ルーバは、回動前の状態において、第1面部と面一、かつ第3面部と面一に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、
前記熱交換器で温調された空気を吹き出す送風装置と、
前記熱交換器および前記送風装置を収容する筐体と、
前記送風装置から室内に向けて吹き出される前記空気の吹出方向を回動して偏向させるルーバと、を備え、
前記筐体は、平坦状の第1面部と、前記第1面部に対して略垂直に起立する平坦状の第2面部と、前記第1面部と前記第2面部との間にいずれの面部に対しても傾斜して介在する平坦状の第3面部とを有し、
前記ルーバは、回動前の状態において、前記第1面部と面一、かつ前記第3面部と面一に配置される
空気調和機の室内ユニット。
【請求項2】
前記ルーバは、前記第1面部の一部を構成する基部と、前記基部に対して傾斜して連続して前記第3面部の一部を構成する偏向部と、を有する
請求項1に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項3】
前記偏向部は、前記ルーバの回動前の状態において、前記基部との連続側とは反対側の端部が前記第3面部における傾斜方向の距離の中間部に位置する
請求項2に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項4】
前記筐体は、前記第2面部を構成する四辺形の平坦状のパネル本体と、前記パネル本体の各辺縁から起立するパネル枠体とを備えるパネルを有し、
前記ルーバの回動前の状態において、前記基部との連続側とは反対側の前記偏向部の端面は、前記パネル枠体の起立端面と前記パネル本体の法線方向に対向する
請求項2に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項5】
前記基部および前記偏向部は、平面視が長方形の平坦状に構成され、互いの間の傾斜角度が120°以上、160°以下の所定角度であり、
前記基部の短辺は、前記偏向部の短辺よりも長い
請求項2に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項6】
前記基部の短辺は、前記筐体に対して回動可能に支持される支持部を有し、前記支持部での回動時に起点となる位置から前記偏向部との連続部分までの寸法が前記偏向部の短辺以上である
請求項5に記載の空気調和機の室内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和機の室内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、壁面設置型の空気調和機は、建屋の壁面や柱面などに設置される室内ユニットを備えている。室内ユニットは、冷媒と空気との間で熱交換を行う熱交換器と、熱交換により温度調整された空気を室内に向けて吹き出す送風装置を備えている。筐体には、例えば上面側(天井を向く側)に空気の吸込口が設けられ、正面側(室内空間を向く側)に空気の吹出口が設けられている。室内の空気は、送風装置によって吸込口から室内ユニットの筐体内に吸い込まれ、熱交換器で温調される。温調された空気は、吹出口から室内に向けて吹き出される。
【0003】
吹出口には、室内に向けて吹き出される空気の向き(風向)を調整する風向調整装置が備えられている。風向調整装置は、例えば吹出口に対して上下方向に回動可能に支持されるルーバと、左右方向に回動可能に支持される複数枚の羽板を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吹出口から吹き出される風の抵抗を低減させるためには、ルーバは室内空間に向かって平坦(ストレート)な形状であることが好ましい。その一方で、ルーバが平坦状である場合、室内の居住者や作業者など(以下、居住者等という)に風が直接当たり、快適性を損なうおそれがある。快適性を考慮し、例えばルーバを平坦状ではなく、屈曲させた形状として風向を変えることで、室内の居住者等に対して直接風が当たることは回避可能となる。しかしながら、ルーバを屈曲させた形状とする場合には、室内ユニットの外観に与える影響を考慮する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、吹出口から吹き出される空気(風)が室内の居住者等に対して直接当たることを抑制するとともに、外観上のデザインの調和を図った空気調和機の室内ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、空気調和機の室内ユニットは、熱交換器と、熱交換器で温調された空気を吹き出す送風装置と、熱交換器および送風装置を収容する筐体と、送風装置から室内に向けて吹き出される空気の吹出方向を回動して偏向させるルーバとを備える。筐体は、平坦状の第1面部と、第1面部に対して略垂直に起立する平坦状の第2面部と、第1面部と第2面部との間にいずれの面部に対しても傾斜して介在する平坦状の第3面部とを有する。ルーバは、回動前の状態において、第1面部と面一、かつ第3面部と面一に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る空気調和機の概略的な構成を示す回路図である。
【
図2】実施形態に係る空気調和機の室内ユニットの概略的な構成を右斜め下方から示す図である。
【
図3】実施形態に係る空気調和機の室内ユニットの概略的な構成を右斜め上方から示す図である。
【
図4】
図2においてパネルが開いた状態の空気調和機の室内ユニットの概略的な構成を示す図である。
【
図5】
図2においてルーバが回動した状態の空気調和機の室内ユニットの概略的な構成を示す図である。
【
図6】
図2に示す空気調和機の室内ユニットの概略的な構成を示す断面図である。
【
図7】
図5に示す空気調和機の室内ユニットの概略的な構成を示す断面図である。
【
図8】
図6に示す断面図の円内部分の概略的な構成を拡大して示す図である。
【
図9】実施形態に係る空気調和機の室内ユニットが備えるルーバの概略的な構成を右斜め下方から示す図である。
【
図10】実施形態に係る空気調和機の室内ユニットが備えるルーバの概略的な構成を右斜め上方から示す図である。
【
図11】実施形態に係る空気調和機の室内ユニットから吹き出された空気(風)が流れる状態の一例を模式的に示す図である。
【
図12】比較例に係る空気調和機の室内ユニットから吹き出された空気(風)が流れる状態の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、
図1から
図12を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る空気調和機1の構成を示す回路図である。空気調和機1は、室外ユニット2と室内ユニット3とを備えている。室外ユニット2と室内ユニット3とは、冷媒が循環する循環路4によって接続されている。室外ユニット2は、主たる要素として、圧縮機21、四方弁22、室外熱交換器23、室外送風装置24、膨張装置25、およびアキュムレータ26を備えている。室内ユニット3は、主たる要素として、室内熱交換器31および室内送風装置32を備えている。
【0010】
図1に示すように、圧縮機21の吐出側は、四方弁22の第1ポート22aに接続されている。四方弁22の第2ポート22bは、室外熱交換器23に接続されている。室外熱交換器23は、膨張装置25を介して室内熱交換器31に接続されている。室内熱交換器31は、四方弁22の第3ポート22cに接続されている。四方弁22の第4ポート22dは、アキュムレータ26を介して圧縮機21の吸入側に接続されている。
【0011】
冷媒は、圧縮機21の吐出側から室外熱交換器23、膨張装置25、室内熱交換器31、およびアキュムレータ26を経由し、吸込側に至る循環路4を循環する。四方弁22の各ポート22a~22dの連通が切り換えられることで、四方弁22を起点に冷媒が循環路4を逆向きに循環する。これにより、空気調和機1の運転モードが冷房運転と暖房運転に適宜切り換わる。
【0012】
図2から
図8には、室内ユニット3の概略的な構成を示す。なお、以下の説明においては、
図2に矢印Frで示す方向を前、矢印Lhで示す方向を左、矢印Upで示す方向を上、矢印Fr,Lh,Upで示す方向の各反対方向を後ろ、右、下としてそれぞれ規定する。矢印Frで示す方向は奥行方向、矢印Lhで示す方向は幅方向、矢印Upで示す方向は高さ方向にそれぞれ相当する。
【0013】
図2は、室内ユニット3を右斜め下方から示す図であり、
図3は、室内ユニット3を右斜め上方から示す図である。
図4は、
図2において後述するパネル5が開いた状態を示す図である。
図5は、
図2において後述するルーバ7が回動した状態を示す図である。
図6は、
図2に示す室内ユニット3の断面図であり、
図7は、
図5に示す室内ユニット3の断面図である。
図8は、
図6に示す断面図の円内部分(C)を拡大して示す図である。
図6および
図7に詳しく示すように、室内ユニット3は、壁掛け式として構成されており、例えば建屋の壁面や柱面などの設置面Wに設置される。室内ユニット3の室内熱交換器31および室内送風装置32は、筐体33に収容されている。
【0014】
室内熱交換器31は、複数のフィン311、および冷媒が流れる複数本の伝熱管312を備え、筐体33の幅方向の所定範囲に亘って並んで配置されている。フィン311は、第1フィン部31a、第2フィン部31b、第3フィン部31cを有している。第1フィン部31aは、筐体33の上部から後方へ下向きに傾き、筐体33の天部33aに開口する空気の吸込口331と対向して配置されている。第2フィン部31bは、第1フィン部31aの上端に連続して前方へ下向きに傾き、吸込口331および筐体33の前部33eに開口する空気の吸込口332と対向して配置されている。第3フィン部31cは、第2フィン部31bの下端に連続して後方へ下向きに傾き、吸込口332と対向して配置されている。
【0015】
第1フィン部31aの下端は、後方ドレンパン313によって支持され、第3フィン部31cの下端は、前方ドレンパン314によって支持されている。後方ドレンパン313および前方ドレンパン314は、フィン311から滴下する水滴を受け止め、排水ホース(図示省略)を介して室外へ排水する。
【0016】
室内送風装置32は、主たる要素として、ファンモータ(図示省略)およびファン321を備えている。ファン321は、筐体33の幅方向に延びる円筒状の多翼ファン(シロッコファン)として構成され、ファンモータの回転軸に同軸状に取り付けられている。ファンモータにより駆動されてファン321が回転すると、吸込口331,332から室内の空気が筐体33内に吸い込まれ、フィン311の間を通過する際に伝熱管312を流れる冷媒と熱交換し、温調される。温調された空気は、筐体33の底部33bに形成された吹出口333から室内へ吹き出される。後方ドレンパン313の一部および前方ドレンパン314の一部は、それぞれ吹出口333へ向けて延び、温調された空気を吹出口333まで導く通風路(ファン321のノーズ)334を構成している。
【0017】
図3、
図4、
図6および
図7に示すように、吸込口331,332には、フィルタ335が取り外し可能に設けられている。フィルタ335は、吸込口331,332を覆うように筐体33の天部33aおよび前部33eに配置され、フィン311(31a,31b,31c)と対向している。フィルタ335には、吸込口331,332から吸い込まれる室内の空気をろ過するフィルタ要素(図示省略)が取り付けられている。
【0018】
図2から
図7に示すように、筐体33は、室内熱交換器31および室内送風装置32を収容し、室内ユニット3の外郭を規定している。筐体33は、天部33a、底部33b、右側部33c、左側部33d、前部33e、背部33f、および斜部33gを備えている。
【0019】
天部33aは、幅方向および奥行方向にそれぞれ延びて筐体33の上面S1を規定し、吸込口331となる開口部を有している。底部33bは、幅方向および奥行方向にそれぞれ延びて筐体33の下面S2を規定し、吹出口333の一部となる開口部を有している。右側部33cは、奥行方向および高さ方向にそれぞれ延びて筐体33の右側面S3を規定している。左側部33dは、奥行方向および高さ方向にそれぞれ延びて筐体33の左側面S4を規定し、右側部33cと幅方向に正対している。前部33eは、幅方向および高さ方向にそれぞれ延びて筐体33の前面S5を規定し、吸込口332となる開口部および吹出口333の一部となる開口部をそれぞれ有している。背部33fは、幅方向および高さ方向にそれぞれ延びて筐体33の背面(後面)S6を規定している。
【0020】
斜部33gは、底部33bの前端と前部33eの下端との間に介在し、下面S2および前面S5に対していずれも傾斜する斜面S7を規定している。すなわち、斜面S7は、下面S2に対して所定の傾斜角度(
図2に示す角度θ1)で前方へ上向きに傾斜するとともに、前面S5に対して所定の傾斜角度(
図2に示す角度θ2)で後方へ下向きに傾斜している。傾斜角度θ1,θ2の大きさは、特に限定されないが、例えば120°以上、160°以下の所定角度であればよい。傾斜角度θ1と傾斜角度θ2は、一致していてもよいし、異なっていてもよい。斜部33gは、吹出口333の一部となる開口部を有している。
【0021】
筐体33は、前部33eおよびその開口部(吸込口332)を覆うカバー部材(以下、パネルという)5を有している。パネル5は、室内ユニット3の正面のデザイン(外観)をなす略箱形の要素である。パネル5は、四辺形の平坦状のパネル本体51と、パネル本体51の各辺縁から起立するパネル枠体52を含んで構成されている。
【0022】
図4に示すように、パネル5は、支持片53で筐体33の前部33eに回動可能に支持され、前方へ上向きに跳ね上げられるようになっている。これにより、例えば吸込口332の清掃時やフィルタ335の交換時などには、吸込口332およびフィルタ335が外部に露出可能とされている。通常時、パネル5は、係止片54で係止部336に係止され、閉じた状態(
図2に示す状態)とされている。係止片54は、パネル5の幅方向の両端近傍にそれぞれ設けられている。係止部336は、各係止片54の位置に対応して、前部33eの幅方向の両端近傍にそれぞれ設けられている。
【0023】
パネル本体51は、幅方向および高さ方向にそれぞれ延びる平坦状をなし、室内ユニット3の正面S8を規定している。通常時、パネル本体51は、正面S8が前面S5とほぼ平行となるように位置付けられ、筐体33の前部33eを覆っている。
【0024】
パネル5が閉じた状態において、パネル枠体52の上面部521は筐体33の天部33a、右側面部522は右側部33c、左側面部523は左側部33d、下面部524は斜部33gとそれぞれ面一とされている。なお、本実施形態における面一は、厳密に凹凸(段差)や隙間がない状態のみならず、極僅かに凹凸(段差)や隙間がある状態(面の広がりの大きさに対して凹凸が目立たない状態)も含む。すなわち、上面部521は筐体33の上面S1の一部、右側面部522は右側面S3の一部、左側面部523は左側面S4の一部、下面部524は斜面S7の一部をそれぞれ規定している。したがって、下面部524は、正面S8に対して後方へ下向きに傾斜している。下面部524とパネル本体51(正面S8)との間の傾斜角度(
図8に示す角度θ3)は、斜面S7と前面S5との間の傾斜角度θ2と同等であり、例えば120°以上、160°以下の所定角度とされている。
【0025】
このように本実施形態においては、筐体33の底部33bが平坦状の面部(第1面部)を構成し、パネル5のパネル本体51が底部33bに対して略垂直(上下方向)に起立する平坦状の面部(第2面部)を構成している。また、筐体33の斜部33gおよびパネル枠体52の下面部524は、底部33b(第1面部)とパネル本体51(第2面部)との間にいずれに対しても傾斜して介在する平坦状の面部(第3面部)を構成している。そして、パネル本体51および斜部33gは、室内ユニット3の正面部(正面S8および斜面S7を含む部分)を構成している。
【0026】
これにより、パネル5が閉じた状態において、室内ユニット3の正面部、端的にはパネル5と筐体33は、目立った凹凸がなく、平坦面をベースとしたデザインで外観の統一が図られている。
【0027】
図5から
図8に示すように、室内ユニット3は、風向調整装置6を吹出口333に備えている。風向調整装置6は、吹出口333から室内に吹き出される温調された空気の向き(風向)を調整する装置である。風向調整装置6は、主たる要素として、羽板61と、ルーバ7と、ルーバ7および羽板61を動作させる駆動機構(図示省略)を備えている。駆動機構は、例えばルーバ7を所定の支持軸7aを中心として回動させる電動モータ、電動モータを制御する制御基板、複数の羽板61を同時に回動させるリンク部材などを含んで構成されている。
【0028】
羽板61は、吹出口333から吹き出される空気(風)の向きを幅方向(左右方向)に規定するための扁平の要素であり、幅方向へ複数並んで配置されている。羽板61は、通風路334を構成する後方ドレンパン313の一部から通風路334に向けて突出している。羽板61は、例えば所定の支持軸(図示省略)を中心として回動可能とされている。羽板61は、例えばルーバ7と同様の駆動機構により自動で動作させればよいが、手動で動作させてもよい。その際には、複数の羽板61をリンク部材によって同時に回動させればよい。
【0029】
図9および
図10には、ルーバ7の概略的な構成を示す。
図9は、ルーバ7を右斜め下方から示す図であり、
図10は、ルーバ7を右斜め上方から示す図である。
【0030】
ルーバ7は、動作時に風向を規定し、非動作時(通常時)に吹出口333を塞ぐ可動式の要素であり、幅方向へ横長の扁平に構成されている。ルーバ7は、支持軸7aが設けられた支持部7bを有し、駆動機構によって動作されて支持軸7aを中心として吹出口333を室内に対して開閉する。具体的には、風向調整装置6の稼働時、つまり室内ユニット3の運転時において、ルーバ7は吹出口333を室内に開放(露出)させるように前方へ下向きに傾く。これにより、ルーバ7は、高さ方向(上下方向)に対する風向を規定する。支持軸7aは、前方ドレンパン314に設けられた軸受部7cによって回転可能に支持されている。軸受部7cは、前方ドレンパン314の一部から通風路334に向けて突出している。
【0031】
図2に示すように、ルーバ7の外郭形状は、吹出口333を開閉するのに支障がないように吹出口333の周縁形状よりも一回り小さい。ただし、ルーバ7で吹出口333を閉塞した状態で両者の間に目立った隙間が生じないように、ルーバ7の外郭寸法は設定されている。
【0032】
図9および
図10に示すように、ルーバ7は、基部71と偏向部72を備えて構成されている。基部71および偏向部72は、通風路334を流れて吹出口333から吹き出される空気(風)の流れをガイドし、室内への風の吹出方向を調整する。基部71および偏向部72は、いずれも平面視が長方形の平坦状に構成され、長辺部分71a,72aで一体に繋がった形態とされている。基部71は、吹出口333から吹き出される空気(風)をほぼ通風路334に沿ってガイドする。これに対し、偏向部72は、基部71によってガイドされた空気(風)を偏向するようにガイドする。
【0033】
基部71は、支持部7bを有し、ルーバ7における筐体33との接続部を兼ねており、筐体33に対する回動時の起点となっている。
図2に示すように、ルーバ7が回動する前、吹出口333を閉塞した状態(以下、回動前状態という)において、基部71は、筐体33の下面S2と面一となるように配置されている。すなわち、回動前状態において、基部71は、幅方向および奥行方向にそれぞれ延びて筐体33の下面S2の一部を規定し、吹出口333の一部となる底部33bの開口部を閉塞している。この状態において、基部71は、筐体33の底部33bとともに、平坦状の面部(第1面部)を構成している。
【0034】
図5から
図7、
図9および
図10に示すように、偏向部72は、基部71に対して所定の傾斜角度(
図8に示す角度θ4)で傾斜している。偏向部72は、回動前状態(
図2に示す状態)において、斜面S7(筐体33の斜部33g)と面一となるように配置されている。すなわち、回動前状態において、偏向部72は、下面S2(換言すれば、基部71)に対して傾斜角度θ4で前方へ上向きに傾斜して斜面S7の一部を規定し、吹出口333の一部となる斜部33gの開口部を閉塞している。この状態において、偏向部72は、斜部33gおよびパネル枠体52の下面部524とともに、平坦状の面部(第3面部)を構成している。また、偏向部72は、パネル本体51および斜部33gとともに、室内ユニット3の正面部を構成している。
【0035】
基部71と偏向部72との間の傾斜角度θ4は、下面S2と斜面S7との間の傾斜角度θ1と同等であり、例えば120°以上、160°以下の所定角度とされている。これにより、回動状態において、ルーバ7は、通風路334を流れる空気(風)をほぼ通風路334に沿って基部71でガイドし、ガイドした空気(風)を偏向部72で上向きに偏向させる。回動状態は、
図5および
図7に示すように、ルーバ7が回動して筐体33の下面S2に対して前方へ下向きに傾斜した状態である。回動状態において、ルーバ7は、例えば基部71が通風路334にほぼ沿うように下面S2に対して傾斜している。下面S2に対する基部71の傾斜角度は、任意に設定可能である。回動状態では、基部71の一部(後述する支持長さ(LS)に相当する部分)および偏向部72が吹出口333から離間した(飛び出た)状態となる。
【0036】
したがって、回動状態では、通風路334を流れる空気(風)が基部71によってほぼ抵抗を受けることなく、基部71でガイドされてスムーズに流れ、吹出口333から吹き出される。吹き出された風は、吹出口333を通ってさらに基部71でガイドされ、偏向部72に達する。偏向部72が基部71に対して傾斜角度θ4で傾斜しているため、基部71でガイドされた風は、偏向部72で過度な抵抗を受けることなく室内へ向けて吹き出される。すなわち、基部71および偏向部72によれば、通風路334を流れる風を基部71から偏向部72へスムーズにガイドすることができ、風量の低下を抑制しながら偏向部72で風を偏向させることができる。
【0037】
また、
図2に示すようなルーバ7の回動前状態において、基部71は平坦状の面部(第1面部)を構成し、偏向部72は平坦状の面部(第3面部)を構成している。したがって、回動前状態において、室内ユニット3の正面部、端的にはパネル5および筐体33、さらにルーバ7には目立った凹凸がなく、平坦面をベースとしたデザインで室内ユニット3の外観の統一を図ることができる。
【0038】
図5から
図7、
図9および
図10に示すように、基部71の短辺は、偏向部72の短辺よりも長い。基部71の短辺長さは、奥行方向(前後方向)の寸法(
図9に示すL71)である。偏向部72の短辺長さは、奥行方向に対して傾斜する方向の寸法(
図9に示すL72)である。偏向部72の短辺長さ(L72)は、例えば15mm以上とする。これにより、通風路334を流れて偏向部72で偏向されるまでの間で、基部71による空気(風)のガイド距離を確保できる。ガイド距離は、基部71から偏向部72に至るまでの空気(風)の助走距離に相当する。したがって、基部71でガイドされた風をスムーズに偏向部72で偏向させるとともに、偏向される風量を増やすことができる。
【0039】
本実施形態では一例として、基部71の支持長さ(
図10に示すLS)は、偏向部72の短辺長さ(L72)以上とされている。基部71の支持長さ(LS)は、基部71の短辺における回動起点位置から偏向部72との連続部分までの寸法である。回動起点位置は、支持部7bの支持軸7aでの回動時に基部71の短辺において回動の起点となる位置である。換言すれば、支持長さ(LS)は、回動状態において吹出口333から基部71が離間する(飛び出る)部分の寸法である(
図7参照)。かかる支持長さ(LS)は、ルーバ7の回動状態において、筐体33の下面S2から基部71における偏向部72との連続部分までの最大距離に相当する。これにより、通風路334を流れて吹出口333から吹き出された後においても、基部71による空気(風)のガイド距離を確保できる。
【0040】
図8に示すように、偏向部72の上端部72bは、パネル5が閉じた状態かつルーバ7の回動前状態において、斜面S7の中間部に位置している。上端部72bは、偏向部72における基部71との連続部分とは反対側の上長辺部分である。斜面S7の中間部は、斜面S7の傾斜方向の距離(長さ)の中間にあたる部位およびその近傍部位を含む。この場合、斜面S7は、筐体33の斜部33g、偏向部72、およびパネル枠体52の下面部524を含む平坦面(第3面部の平坦面)として規定されている。すなわち、偏向部72の上端部72bは、第3面部における傾斜方向の距離の中間部に位置する。
【0041】
パネル5が閉じた状態かつルーバ7の回動前状態において、偏向部72の端面72cは、パネル枠体52の下面部524の端面524aと奥行方向(前後方向)に僅かに隙間をあけ、高さ方向(上下方向)および幅方向(左右方向)に亘って対向している。端面72cは、基部71との連続側とは反対側の先端面であり、パネル本体51(正面S8)と平行(換言すれば、基部71に対して垂直)な平坦面である。起立方向は、パネル本体51からパネル枠体52の下面部524が起立する方向である。端面524aは、起立方向の先端面(起立端面)であり、パネル本体51(正面S8)と平行な平坦面である。奥行方向は、パネル本体51(第2面部)の法線方向に相当する。
【0042】
したがって、かかる状態において、偏向部72の端面72cは、下面部524の端面524aの後ろ側に隠れて位置付けられる。このため、偏向部72の端面72cを室内に向けて露出させずに済む。これにより、室内から見た場合、偏向部72を下面部524とともに斜面S7の一部として外観上フラットですっきりとしたデザインとすることが可能となる。また、偏向部72の端面72cが下面部524の端面524aと重なり代(
図8に示すH)を有するため、例えばルーバ7に反りなどの変形が生じた場合であっても、変形による下面部524との間の隙間を目立たせずに済む。重なり代(H)は、偏向部72の端面72cの高さ(上下寸法)に相当する。
【0043】
図11および
図12には、室内ユニットから吹き出された空気(風)が流れる状態(風向状態)を示す。
図11は、本実施形態に係る室内ユニット3における風向状態の一例を模式的に示す図である。
図12は、比較例に係る室内ユニットXにおける風向状態の一例を模式的に示す図である。比較例に係る室内ユニットXは、ルーバが偏向部72を備えず、基部をそのまま延長させた平坦状(ストレート)の形態をなす以外、室内ユニット3と同等とされている。
【0044】
図11に示す本実施形態および
図12に示す比較例において、室内ユニット3,Xは、いずれも室内の基準面から同一高さ(2.5m程度)に設置されており、ルーバによって調整される風向以外は同一条件(強度、風量、設定温度など)で風を吹き出している。
図11および
図12において、縦軸は基準面からの高さ、横軸は室内ユニット3,Xの設置面からの距離をそれぞれ示し、白抜き領域A11,A12は室内ユニット3,Xから吹き出された風が流れるエリアを示す。
【0045】
図11に示すように、本実施形態に係る室内ユニット3から吹き出された風は、室内ユニット3の設置高さから前方へ下向きに吹き出されるとともに、設置高さよりも上向きに吹き出され、天井(基準面からの高さが3m程度の位置)に当たっている。その後、ほぼ天井に沿って6mから7m付近まで流れて徐々に落下し、8.5m付近まで到達している。この場合、ルーバ7は、前方へ下向きに傾いた状態(
図5および
図7に示す状態)となっている。
【0046】
これに対し、
図12に示すように、比較例に係る室内ユニットXから吹き出された風は、室内ユニットXの設置高さとほぼ同一高さから前方へ下向きに吹き出され、3mほど流れた後に徐々に落下して8m付近まで到達している。この場合、ルーバは、
図5および
図7に示すような前方へ下向きに傾いた状態となっているが、上述したように該ルーバは偏向部72を備えてない平坦状(ストレート)の形態となっている。
【0047】
比較例では、居住者等の平均的な身長程度に相当する基準面からの高さ(1.5mから1.7m程度)に風が落下するまでの設置面からの距離は、2.5m程度である。一方、本実施形態では、同等の高さに風が落下するまでの設置面からの距離は、6m程度である。居住者等の平均的な身長程度に相当する高さに風が落下するまでの設置面からの距離は、室内ユニット3,Xから吹き出された風と居住者等とが接触することが想定される距離(接触想定距離)に相当する。したがって、本実施形態では比較例と比較して、風と居住者等との接触想定距離を延長させることができる。これにより、室内の居住者等に対して風が直接当たることを抑制でき、快適性の向上を図ることができる。
【0048】
そして、本実施形態によれば、筐体33が斜部33g、ルーバ7が偏向部72、パネル枠体52が下面部524をそれぞれ備えており、これらが平坦状の斜面S7を構成している。このため、上述したような快適性の向上を図るとともに、室内ユニット3の外観を目立った凹凸がなく、平坦面をベースとしたデザインで統一して調和を図ることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、かかる実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1…空気調和機、2…室外ユニット、3…室内ユニット、5…パネル、6…風向調整装置、7…ルーバ、7a…支持軸、7b…支持部、7c…軸受部、31…室内熱交換器、31a~31c…第1~第3フィン部、32…室内送風装置、33…筐体、33a…天部、33b…底部、33c…右側部、33d…左側部、33e…前部、33f…背部、33g…斜部、51…パネル本体、52…パネル枠体、53…支持片、54…係止片、61…羽板、71…基部、71a…長辺部分、72…偏向部、72a…長辺部分、72b…上端部、72c…端面、333…吹出口、334…通風路、524…パネル枠体の下面部、524a…端面、H…重なり代、L71…基部の短辺長さ、L72…偏向部の短辺長さ、LS…基部の支持長さ、S1…筐体の上面、S2…筐体の下面、S3…筐体の右側面、S4…筐体の左側面、S5…筐体の前面、S6…筐体の背面、S7…筐体の斜面、S8…室内ユニットの正面、θ1…斜面と下面との間の傾斜角度、θ2…斜面と前面との間の傾斜角度、θ3…パネル枠体の下面部とパネル本体(正面)との間の傾斜角度、θ4…基部と偏向部との間の傾斜角度。