IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-分光測定器 図1
  • 特開-分光測定器 図2
  • 特開-分光測定器 図3
  • 特開-分光測定器 図4
  • 特開-分光測定器 図5
  • 特開-分光測定器 図6
  • 特開-分光測定器 図7
  • 特開-分光測定器 図8
  • 特開-分光測定器 図9
  • 特開-分光測定器 図10
  • 特開-分光測定器 図11
  • 特開-分光測定器 図12
  • 特開-分光測定器 図13
  • 特開-分光測定器 図14
  • 特開-分光測定器 図15
  • 特開-分光測定器 図16
  • 特開-分光測定器 図17
  • 特開-分光測定器 図18
  • 特開-分光測定器 図19
  • 特開-分光測定器 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174355
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】分光測定器
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/36 20060101AFI20221116BHJP
   G01J 3/18 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
G01J3/36
G01J3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019199812
(22)【出願日】2019-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】▲鶴▼谷 克敏
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020AA04
2G020CC02
2G020CC26
2G020CC42
2G020CC63
2G020CD03
2G020CD24
(57)【要約】
【課題】適正な形状の分光応答度を有する分光測定器を提供する。
【解決手段】被測定光を回折させる回折手段504と、回折手段で回折された被測定光を受光する二次元受光センサ506と、二次元受光センサの積算画素範囲を波長毎に異なる範囲に設定して、被測定光の受光量を積算演算することにより分光データを取得する分光データ取得手段700を備えている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定光を回折させる回折手段と、
前記回折手段で回折された被測定光を受光する二次元受光センサと、
前記二次元受光センサの積算画素範囲を波長毎に異なる範囲に設定して、被測定光の受光量を積算演算することにより分光データを取得する分光データ取得手段と、
を備えたことを特徴とする分光測定器。
【請求項2】
前記積算画素範囲は、前記二次元受光センサまでの光路に配置された少なくとも一個の光学系部品の光学特性に応じて設定される請求項1に記載の分光測定器。
【請求項3】
前記積算画素範囲は1つの範囲からなり、当該範囲に属する前記二次元受光センサの画素数を変更することによって調整される請求項1または2に記載の分光測定器。
【請求項4】
前記積算画素範囲は複数の範囲で構成される請求項1または2に記載の分光測定器。
【請求項5】
光バンドルファイバーを備え、
前記回折手段は、前記光バンドルファイバーで導光され、入射スリットを兼ねる前記光バンドルファイバーの出力端から放射された被測定光を回折させる請求項1~4のいずれかに記載の分光測定器。
【請求項6】
単線光ファイバーと、該単線光ファイバーの出口近傍に配置された入射スリットを備え、
前記回折手段は、前記単線光ファイバーで導光され、単線光ファイバーの出力端から放射された前記入射スリットを通過した被測定光を回折させる請求項1~4のいずれかに記載の分光測定器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源の輝度や色度、物体の分光反射率や色彩値等の測定に用いられる分光測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶モニター等のディスプレイ装置は解像度が大きくなっており、このようなディスプレイ装置の輝度や色度等を精度良く測定するために、分光測定器の特性として分光応答度が重要になっている。
【0003】
分光応答度は、横軸を波長としたときのラインセンサの各画素の受光強度を示すものである。このような分光応答度の形状は、左右対称で滑らかであることが望ましい。図20(A)に例示したような非対称である場合や、同図(B)に示すようにいびつな形状である場合等、分光応答度の形状が適切でない場合は、輝度・色度の測定データに誤差が生じる恐れがある。分光応答度の形状は、光学系の性能、例えばレンズ性能(収差)や回折格子の性能(収差)に依存し、図20(A)の波形の原因は主にレンズ収差に起因しており、同図(B)の波形の原因は主にピンボケの影響に起因している。
【0004】
また、分光応答度の形状は、波長に依らず同じ形状であることが望ましい。図14に例示するように波長によって形状が異なると、やはり輝度・色度の測定データに誤差が生じる恐れがある。なお、図14は380nm、480nm、580nm、680nm、780nmの各値を横軸の0にとって、各波長の分光応答度を重ねた状態を示している。
【0005】
なお、特許文献1には、二次元センサと、2組の回折格子とトロイダル鏡を備え、2種類の分光条件(波長範囲の異なる条件や、半値幅の異なる条件)での受光を特徴とする分光器が開示されている。具体的には、1個の入射スリット(長方形)からの出射光を、2つの光路に分割し受光し、回折格子を異なる角度で配置することで、異なる波長範囲の受光を行い(半値幅は同じである)、溝本数の異なる回折格子で、波長分解能・半値幅の異なる受光を行う(波長範囲も異なる)というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-145477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の分光器では、分光応答度の形状を改善する技術ではなく、適正な形状の分光応答度を有する分光測定器を実現しうるものではない。
【0008】
この発明はこのような技術的背景に鑑みてなされたものであって、適正な形状の分光応答度を有する分光測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は以下の手段によって達成される。
(1)被測定光を回折させる回折手段と、前記回折手段で回折された被測定光を受光する二次元受光センサと、前記二次元受光センサの積算画素範囲を波長毎に異なる範囲に設定して、被測定光の受光量を積算演算することにより分光データを取得する分光データ取得手段と、を備えたことを特徴とする分光測定器。
(2)前記積算画素範囲は、前記二次元受光センサまでの光路に配置された少なくとも一個の光学系部品の光学特性に応じて設定される前項1に記載の分光測定器。
(3)前記積算画素範囲は1つの範囲からなり、当該範囲に属する前記二次元受光センサの画素数を変更することによって調整される前項1または2に記載の分光測定器。
(4)前記積算画素範囲は複数の範囲で構成される前項1または2に記載の分光測定器。
(5)光バンドルファイバーを備え、前記回折手段は、前記光バンドルファイバーで導光され、入射スリットを兼ねる前記光バンドルファイバーの出力端から放射された被測定光を回折させる前項1~4のいずれかに記載の分光測定器。
(6)単線光ファイバーと、該単線光ファイバーの出口近傍に配置された入射スリットを備え、前記回折手段は、前記単線光ファイバーで導光され、単線光ファイバーの出力端から放射された前記入射スリットを通過した被測定光を回折させる前項1~4のいずれかに記載の分光測定器。
【発明の効果】
【0010】
前項(1)に記載の発明によれば、二次元受光センサの積算画素範囲を波長毎に異なる範囲に設定して、被測定光の受光量を積算演算することにより分光データを取得するから、波長毎に最適な積算画素範囲、換言すれば各波長の分光応答度が左右対称でかつ形状も同じになるように、積算画素範囲を設定することができる。このため、輝度・色度の測定データに誤差が生じるのを防止することができ、精度の高い分光測定を行うことができる。
【0011】
前項(2)に記載の発明によれば、積算画素範囲は、前記二次元受光センサまでの光路に配置された少なくとも一個の光学系部品の光学特性に応じて設定されるから、光学系部品の影響を受けることなく、適正な分光応答度の形状を実現することができる。
【0012】
前項(3)に記載の発明によれば、1つの積算画素範囲に属する二次元受光センサの画素数を調整することにより、波長毎に最適な積算画素範囲を設定でき、適正な分光応答度の形状を実現することができる。
【0013】
前項(4)に記載の発明によれば、積算画素範囲を複数の範囲で構成することによって波長毎に最適な積算画素範囲を設定でき、適正な分光応答度の形状を実現することができる。
【0014】
前項(5)に記載の発明によれば、光バンドルファイバーで導光され、入射スリットを兼ねる光バンドルファイバーの出力端から放射された被測定光を回折手段で回折させる分光測定装置において、適正な分光応答度の形状を実現することができる。
【0015】
前項(6)に記載の発明によれば、単線光ファイバーで導光され、単線光ファイバーの出力端から放射された前記入射スリットを通過した被測定光を回折手段で回折させる分光測定装置において、適正な分光応答度の形状を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る分光測定器の基本構成の一例を示す図である。
図2】バンドルファイバーの斜視図である。
図3】二次元受光センサ面上での輝線(特定の波長の光)の受光データの分布イメージを示す図である。
図4】二次元受光センサ面上での各波長の受光データの分布イメージを示す図である。
図5】(A)~(E)は積算領域の一例を示す図である。
図6】(A)~(C)は、中央波長(580nm)についての積算領域と得られる分光応答度の関係を示す図である。
図7】(A)~(C)は、波長380nmについての積算領域と分光応答度の関係を示す図である。
図8】単線ファイバーと入射スリットを組み合わせた分光輝度計の基本構成を示す図である。
図9】分光部の光学性能(収差性能)が波長により異なることを説明するための図である。
図10】単線ファイバーの出口端に対する入射スリットの形状の一例を示す図である。
図11図10の形状の入射スリットを用いた場合の、二次元受光センサに対して設定される積算領域の一例を示す図である。
図12】(A)~(C)は、図11に示した積算領域Aを設定した場合の各波長についての分光応答度を示すグラフである。
図13】(A)(B)は、図11に示した積算領域Aを設定した場合の他の波長についての分光応答度を示すグラフである。
図14図12及び図13に示した各波長についての分光応答度をまとめたグラフである。
図15】(A)~(C)は、波長580nmについて積算領域の設定例を示す図である。
図16図15の各積算領域で得られた分光応答度を示すグラフである。
図17】(A)~(C)は、各波長について最適な積算領域を設定したときの分光応答度を示すグラフである。
図18】(A)(B)は、他の波長について最適な積算領域を設定したときの分光応答度を示すグラフである。
図19図17及び図18に示した各波長について最適な積算領域を設定したときの分光応答度をまとめたグラフである。
図20】従来の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る分光測定器である分光輝度計の基本構成を示す図である。図1に示すように、分光測定器1は、受光光学系100と、観察光学系200と、測定光学系300と、信号処理回路600と、演算処理部700を備えており、測定光学系300はさらに導光部400と分光部500を備えている。
【0019】
受光光学系100は、光源からなる被測定物2からの光束3を受光して、測定光学系300の導光部400及び観察光学系200へと導くものであり、被測定物2からの光束3を集光する対物レンズ101と、対物レンズ101の後方(光束3の進行方向の前方)に配置された測定光量規制用の開口絞り102と、さらに開口絞り102の後方に配置されたアパーチャーミラー103を備えている。
【0020】
アパーチャーミラー103は、光束3の導光部400への入射光路中に配置され、対物レンズ101で集光された光束3を通過させる開口を備えるミラーである。対物レンズ101からの光束のうち、被測定物2の測光エリアからの光束はアパーチャーミラー103の前記開口を通過して後段の導光部400へ直進されるが、測光エリア外の光束についてはアパーチャーミラー103によって反射され、観察光学系200内の反射ミラー201及び観察リレーレンズ202を含むレンズ群を経て、使用者の瞳へ導かれる。使用者は、観察光学系200から、被測定物2と指標円(アパーチャーミラーで反射されない領域であり、使用者は黒色と見える)を視認し、測定位置合わせとピント合わせを行う。ピント合わせは対物レンズ101の全群または一部のレンズ群を移動させることで、アパーチャーミラー位置に焦点を合わせる。開口絞り102はピント合わせを行っても測定光の開口角(Fナンバー)は変化しない。なお、アパーチャーミラー103の穴サイズは手動又は自動で変更可能に構成されても良い。穴サイズを変更することで測定角(測定サイズ)の変更ができる。
【0021】
測定光学系300における導光部400は、アパーチャーミラー103の開口部を通過した光束を集光する集光レンズ401と、集光レンズ401を通過した光束を分光部500へと導光する光バンドルファイバー(単にバンドルファイバーともいう)402を備えており、この実施形態ではバンドルファイバー402の出力端(出口端面であり、入力部に相当する)が入射スリット501を兼ねている。なお、バンドルファイバー402の出側にバンドルファイバー402とは別の入射スリット501を配置しても良い。
【0022】
測定光学系300における分光部500は、バンドルファイバー402の出力端から入射された光束を概ね平行光にするコリメータレンズ502と、コリメータレンズ502の後方に順に配置された赤外光カットフィルター510、減光部材520、矩形の開口部を有する絞り(図示せず)と、絞りの開口部を通過した平行光を回折させる回折格子504と、結像レンズ505と、回折格子504による回折光を結像レンズ505を介して受光する二次元受光センサ506と、二次元受光センサ506の一部前方に配置された2次光カットフィルター507等を備えている。減光部材520は、受光光量の調節用であり、駆動部521により光路に対して挿入退出可能に駆動されるようになっている。
【0023】
絞りは、コリメータレンズ502からの平行光の光量を回折格子504の大きさに合わせて規制するものであり、結像レンズ505は回折格子504で波長分散された光線を二次元受光センサ506に結像させるものである。
【0024】
図2に示すように、バンドルファイバー402の入力端402aの形状は円形であり、出力端402bの形状が長方形であり、入力端402aと出力端402bの面積は同じである。
【0025】
二次元受光センサ506は図3に示すように、波長の分散方向(以下の説明では縦方向ということもある)及び波長の分散方向と直交する方向(以下の説明では横方向ということもある)に二次元配列された多数の画素506aを有するもので、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary MOS)センサ等により構成されている。二次元受光センサ506の画素506a毎の受光データは、信号処理回路600に送信されて信号処理され、さらに演算処理部(分光データ取得手段に相当)700へ転送されて、被測定物2の分光データが得られる。この実施形態では、例えば、有効画素=波長の分散方向(縦方向)に512画素×波長の分散方向と直交する方向(横方向)に122画素のセンサ506が用いられている。ただし、実際の演算範囲は縦方向500画素×横方向100画素に設定されている。図4以降に示す二次元受光センサ506についても同様である。
【0026】
図3に、二次元受光センサ506面上での輝線(特定の波長の光)の受光データの分布イメージ図を示す。バンドルファイバー402の出力端402bの形状に対応した受光エリア507となっている。
【0027】
また、各波長の受光データの分布イメージを図4に示す。光学系の性能が良い場合、図4(A)に示すように、各波長の受光エリア508a~508eはいずれも長方形状になっている。一方、光学系の性能が悪い場合、図4(B)に示すように、中央の波長(580nm)については、光学系の中心(軸上)を通過するので光学性能(収差性能)が良く、受光エリア508cは長方形状になっているが、周辺波長(短波長(例えば480nm、380nm)、長波長(例えば680nm、780nm))は、光学系の周辺(軸外)を通過するので性能が低下し、非点収差・湾曲収差・歪曲収差などが発生するため、受光エリア508a、508b、508d、508eは“弓なり”形状となる。
【0028】
そこで、この実施形態では、横方向に配列された画素506aの積算領域、つまり横方向の積算画素範囲を、積算される画素506aの数や位置を変えることにより波長毎に設定している。図5に積算領域の一例を示す。図5(A)~(E)では、積算領域を細線で示している。
【0029】
図5(A)の積算領域Aは、横方向の全画素(100画素)についての1つの積算領域であり、図5(B)の積算領域Bは左右両側の端部領域の画素についての2つの積算領域であり、図5(C)の積算領域Cは左右両側のそれぞれ中央部領域の画素についての2つの積算領域である。図5(D)の積算領域Dは左右両側の端部を除く領域の画素についての1つの積算領域であり、図5(E)の積算領域Eは左側領域における一部の画素についての1つの積算領域である。各積算領域における各画素での受光量を演算処理部700で積算演算する。
【0030】
各波長の積算領域について説明すると、中央波長(580nm)については、図6(A)左図に示すように、横方向の全画素について1つの積算領域A1を設定した場合であっても、図6(B)左図に示すように、横方向中央部の画素について1つの積算領域A2を設定した場合であっても、図6(C)左図に示すように、左右両側のそれぞれ一部に2つの積算領域A3を設定した場合であっても、各右図に分光応答度を示すように、580nmを中心として比較的対称な形状の分光応答度が得られる。つまり、中央波長(580nm)に対応する画素については、演算領域を問わず、比較的対称な形状の分光応答度が得られる。
【0031】
これに対し、短波長、長波長については、前述したように受光エリアは“弓なり”形状となっているため、積算領域の設定の仕方によって分光応答度の形状が異なるものとなる。波長380nmについて積算領域と分光応答度の関係を図7に示す。
【0032】
図7(A)左図に示すように、横方向の全画素について1つの積算領域A1を設定した場合、重心位置がずれているため分光応答度は同右図に示すように非対称な形状となる。図7(B)左図に示すように、横方向の中央部の画素について1つの積算領域A2を設定した場合、分光応答度は同右図に示すように比較的対称な形状となる。図7(C)左図に示すように、左右両側のそれぞれ一部に2つの積算領域A3を設定した場合は、分光応答度は同右図に示すように若干非対称な形状となる。従って、波長380nmについては、図7(B)左図に示すように、横方向の中央部の画素について積算領域A2を設定することで、左右対称形状となり、しかも波長580nmの場合の分光応答度と形状を揃えた分光応答度を得ることができる。
【0033】
このようにして、光学系の性能に応じて波長毎に最適な積算領域を予め設定しておくことで、形状が対称で各波長と形状が同じ分光応答度を得ることができる。従って、この設定された積算領域で受光データを測定することにより、波長にかかわらず同じ条件(分光応答度)での分光データが得られ、輝度・色度の測定データに誤差が生じるのを防止することができ、精度の良い分光測定を行うことができる。
【0034】
上記の実施形態では、バンドルファイバー402の出力端402bが入射スリットの役目を果たし、出力端402bの形状を長方形状に設定した場合を示した。しかし、バンドルファイバー402に代えて単線ファイバーと入射スリットの組み合わせにおいて、入射スリットの形状を設定しても良い。
【0035】
図8は、このような単線ファイバーと入射スリットを組み合わせた分光輝度計の基本構成を示す図である。
【0036】
図8に示す分光輝度計は、導光部400に単線ファイバー410を備えるとともに、単線ファイバー410の出力端(出口端面)がスリット部材531により形成された入射スリット(入力部に相当)530の近傍に配置されている。
【0037】
分光部500は、入射スリット530から入射された光束を受光する赤外光カットフィルター510と、減光部材520と、照射レンズを兼ねる結像レンズ505と、結像レンズの後方に配置された回折格子504と、回折格子504による回折光を結像レンズ505を介して受光する二次元受光センサ506と、二次元受光センサ506の一部前方に配置された2次光カットフィルター507等を備えている。減光部材520は、受光光量の調節用であり、駆動部521により光路に対して挿入退出可能に駆動されるようになっている。この実施形態では、照射レンズと結像レンズ505を1個のレンズで構成しているため、安価でコンパクトな構成となっている。なお、図8の分光輝度計の他の構成は図1に示した分光輝度計の構成と同じであるため説明は省略する。
【0038】
分光部500は、入射スリット530からの光束を、概ね平行光で回折格子504へ照射し、回折格子504で波長分散された光線を、二次元受光センサ506で受光する。二次元受光センサ506は例えば380~780nmの波長範囲で受光される。
【0039】
分光部500の光学性能(収差性能)は、波長により異なる。例えば図9に示すように、短波長(380nm)で、二次元受光センサ506にピントが合うように設計された光学系では、波長間の性能差(色収差)により、中波長(580nm)では大きくピンボケし、長波長(780nm)では少しピンボケするような光学構成があげられる。
【0040】
単線ファイバー410は、この実施形態では直径φ1.0mmのものが使用されている。単線ファイバー410を使用する目的は、測定光の偏光特性、測定エリアの位置特性(位置ムラ)、配光特性(指向性ムラ)をミキシングするためであり、単線ファイバー410の出口で特性の偏りをなくすことで、出口径よりも小さな入射スリット530を配置しても正確な測定ができ、また、入射スリット面内の位置によらず正確な測定ができる。
【0041】
単線ファイバー410は長ければ長いほどミキシング効果が高く、出口での特性ムラが少ない。この実施形態では、直径φ1.0mm、長さ500mmの樹脂製ファイバーを使用し、巻いた状態で配置されている。
【0042】
この実施形態では、単線ファイバー410の出口近傍に機械的に動作する絞り(メカ絞り)を配置することにより、入射スリット530の形状を所定の形状とする。メカ絞りであるため複雑な形状であっても安価で済む。
【0043】
図10に示すように、単線ファイバー410の出口端410aに対して、メカ絞りにより入射スリット530の形状を長方形状に設定した。
【0044】
図10に示した単線ファイバー410と入射スリット530を組み合わせた場合において、図11に示すように、横方向中央部における受光エリア507の全画素を積算領域Aに設定した場合の各波長の分光応答度を、図12及び図13に示す。図12(A)~(C)はそれぞれ波長が380nm、480nm、580nmについての分光応答度を示し、図13(A)及び(B)はそれぞれ波長が680nm、780nmについての分光応答度を示している。これらに示した分光応答度には形状が非対称のものもある。また各波長の分光応答度を1つのグラフにまとめた図14に示すように、波長によって分光応答度の形状が異なっている。
【0045】
そこで、この実施形態では、波長380nmで最も性能が良くなる光学系を構成しているものとし、波長380nmについての分光応答度に近似した分光応答度の波形となるように、他の波長についての積算領域を設定するものとする。波長580nmについての積算領域の設定について説明すると、図15(A)に示すように、横方向の中央部の受光エリア507の全域の画素について1つの積算領域A4を設定した場合と、図15(B)に示すように、横方向の中央部を挟んで受光エリア507の両端部の画素について2つの積算領域A5を設定した場合と、図15(C)に示すように、横方向の中央部を除く受光エリア507の一部の画素について1つの積算領域A6を設定した場合とで、それぞれ得られた分光応答度を図16に示す。
【0046】
図16に示した分光応答度から理解されるように、同じ波長であっても異なる積算領域を設定することで、分光応答度の波形は異なり、図15(B)に示した積算領域A5の場合に、分光応答度の形状が波長380nmについての分光応答度に近似した形状となる。このため、波長580nmについては積算領域A5を設定する。
【0047】
同様にして、各波長について最適な積算領域を設定したときの分光応答度を、図17及び図18に示す。図17(A)は波長380nmについての分光応答度であり、この実施形態では前述したようにこの波形を基準とし、積算領域は図15(A)に示した積算領域A4である。図17(B)及び(C)はそれぞれ波長が480nm、580nmについての分光応答度を示し、図18(A)及び(B)はそれぞれ波長が680nm、780nmについての分光応答度を示している。380nm以外の波長については、図15(A)に示した積算領域A4とは異なる最適な積算領域を新たに設定することで、波長380nmについての分光応答度と概ね同じ形状の分光応答度を得ている。各図において、破線で示した分光応答度が、新たに設定された積算領域で演算することにより得られた分光応答度である。新たに得られた各分光応答度を重ね合わせると、図19に示すようにほぼ同じ形状となる。
【0048】
このように、単線ファイバー410と入射スリット530を組み合わせた場合においても、光学系の性能に応じて波長毎に最適な積算領域を予め設定しておくことで、各波長について形状が対称で形状が同じ分光応答度を得ることができる。従って、この設定された積算領域で受光データを測定することにより、波長にかかわらず同じ条件(分光応答度)での分光データが得られ、輝度・色度の測定データに誤差が生じるのを防止することができ、精度の良い分光測定を行うことができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることはない。例えば、分光部500において二次元受光センサ506までの光路に配置された少なくとも一個の光学系部品の光学特性に変化が生じた場合、分光応答度も変化するから、積算領域も新たに設定しても良い。例えば、光路中における減光部材520の有無により分光応答度も変化するから、減光部材520が有るときと無いときで、それぞれ別の積算領域を設定しておき、減光部材520が有るときと無いときに応じて、積算領域を切り替えても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 分光測定器
2 測定対象物
3 被測定光
100 受光光学系
200 観察光学系
300 測定光学系
400 導光部
402 バンドルファイバー
402a 出力端
500 分光部
504 回折格子
506 二次元受光センサ
506a 画素
507、508a~508e 受光エリア
530 入射スリット
700 演算処理部(データ取得手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20