(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174368
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】法面作業車
(51)【国際特許分類】
E21B 7/04 20060101AFI20221116BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
E21B7/04
E02D17/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080114
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】390040073
【氏名又は名称】岡本 俊仁
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】岡本 俊仁
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA03
2D129BA05
2D129DC13
2D129DC28
(57)【要約】
【課題】 法面作業車を牽引するウインチのワイヤーを傷つけることなく、法面で効率よく作業ができる法面作業車を提供することを目的としている。
【解決手段】法面作業車は、作業車本体と、作業車本体に設けられた走行装置と、作業車本体に設けられたウインチと、作業車本体に設けられ、ウインチのワイヤーを誘導するワイヤーフェアリーダーと、作業車本体に水平方向に回転可能に設けられた油圧ショベルと、走行装置及び前記ワイヤーフェアリーダーを前後方向に伸縮させるスパンナーとで構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面上を走行して作業を行うことができる法面作業車であって、
作業車本体と、前記作業車本体に設けられた左右の走行装置と、前記作業車本体に設けられた左右のウインチと、前記作業車本体に設けられ、前記作業車本体の前方から前記左右のウインチのワイヤーをそれぞれ前方側へ誘導する左右のワイヤーフェアリーダーと、前記作業車本体に旋回可能に設けられた油圧ショベルと、前記左右の走行装置の距離をそれぞれ左右方向に変位させる走行装置用スパンナーと、前記左右のワイヤーフェアリーダー間の距離をそれぞれ左右方向に変位させるワイヤーフェアリーダー用スパンナーとで構成される法面作業車。
【請求項2】
前記作業車本体の左右方向の側部には、左右方向に伸縮する伸縮部を備え、前記ウインチ及び前記ワイヤーフェアリーダーは、前記伸縮部に設けられ、前記走行装置用スパンナーは、前記走行装置を左右方向に変位させ、前記ワイヤーフェアリーダー用スパンナーは、前記伸縮部を左右方向に変位させることを特徴とする請求項1に記載の法面作業車。
【請求項3】
前記油圧ショベルは、法面においても前記油圧ショベルを略水平にすることができる角度調節手段を介して前記作業車本体に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の法面作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は法面を移動して削孔等の作業を行う法面作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、法面において、ウインチのワイヤーで牽吊されて法面等を走行し、法面において作業を行う法面作業車としては、「作業車本体3と、該作業車本体の左右部位にそれぞれ設けられ、左右方向に伸縮可能なタイヤ取付部4と、前記左右のタイヤ取付部の前後部位に、それぞれ設けられたタイヤ7と、前記左右のタイヤ取付部にそれぞれ取り付けられたウインチ8と、前記左右のタイヤ取付部の前方部位にそれぞれ設けられ、前記ウインチのワイヤーをガイドするワイヤーフェアリーダー34と、前記作業車本体に左右方向に回動可能設けられたアーム9と、該アームに上下方向に回動可能に設けられたガイドシェル取付部11と、該ガイドシェル取付部に固定されたガイドシェル12と、該ガイドシェルに前後方向に移動可能に設けられた削孔装置13とで構成される法面作業車(請求項2)」が知られている。
【0003】
しかして、前記タイヤ取付部4は、前記作業車本体3の前後の左右部位に左右方向に伸縮するタイヤ取付部伸縮機構5としての油圧シリンダー16を介して取り付けられたタイヤ取付部本体17と、該タイヤ取付部本体17の前後に一端が取り付けられ、他端にタイヤ7が取り付けられる上下方向に伸縮可能なシリンダー6とで構成され、前記タイヤ取付部本体17、17は前記油圧シリンダー16により左右方向に伸縮できるものである(例えば段落0010参照)。なお、望ましくは、前記タイヤ取付部4の左右のタイヤ取付部本体17の後方部位には、ウインチ8が設けられていると共に、前記左右のタイヤ取付部本体17の前方部位には、ワイヤーフェアリーダー(誘導部材)34を設けられている(符号は特許文献1のもの)。
【0004】
しかし、上記構成の法面作業車を用いた場合、平坦面や傾斜面に設置された法枠上を移動する場合には最適なものの、タイヤ取付部4にタイヤ7のみならずワイヤーフェアリーダー34が一緒に取り付けられているため、左右のタイヤ間の距離と左右のワイヤーフェアリーダー間の距離をそれぞれ個別的に調節することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、法面作業車を牽引するウインチのワイヤーを傷つけることなく、法面で効率よく作業ができる法面作業車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の法面作業車は、法面上を走行して作業を行うことができる法面作業車であって、作業車本体と、前記作業車本体に設けられた左右の走行装置と、前記作業車本体に設けられた左右のウインチと、前記作業車本体に設けられ、前記作業車本体の前方から前記ワイヤーをそれぞれ前方側へ誘導する左右のワイヤーフェアリーダーと、前記作業車本体に旋回可能に設けられた油圧ショベルと、前記左右の走行装置間の距離をそれぞれ左右方向に変位させる走行装置用スパンナーと、前記左右のワイヤーフェアリーダー間の距離をそれぞれ左右方向に変位させるワイヤーフェアリーダー用スパンナーとで構成されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の法面作業車の前記作業車本体の左右方向の側部には、左右方向に伸縮する伸縮部を備え、前記ウインチ及びワイヤーフェアリーダーは、前記伸縮部に設けられ、前記走行装置用スパンナーは、前記走行装置を左右方向に変位させ、ワイヤーフェアリーダー用スパンナーは、前記伸縮部を左右方向に変位させることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の法面作業車の前記油圧ショベルは、法面においても前記油圧ショベルを略水平にすることができる角度調節手段を介して前記作業車本体に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1及び請求項2に記載の各発明においては、走行装置用スパンナーとワイヤーフェアリーダー用スパンナーを別個に設けているので、左右の走行装置間の距離と左右のワイヤーフェアリーダー間の距離をそれぞれ別個に調節することができる。
(2)請求項3に記載の発明においては、前記(1)と同様な効果が得られるとともに、法面で操縦席を水平に保ったまま作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1乃至
図5は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図6乃至
図8は本発明の第2の実施形態示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。なお、左右方向とは
図2(平面視)における左右方向であり、前後方向とは
図1における左右方向、上下方向とは
図1における上下方向をいう。
【0013】
図1乃至
図5に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は主に少なくとも40度以上の急斜面状の法面2で作業可能な法面作業車である。
【0014】
具体的には、法面作業車1は、
図1及び
図2に示すように、作業車本体3と、前記作業車本体3に設けられた左右の走行装置4と、前記作業車本体3に設けられた左右のウインチ5と、前記作業車本体3に設けられ、前記左右のウインチ5のワイヤー6をそれぞれ誘導する左右のワイヤーフェアリーダー7と、前記作業車本体3に旋回可能に設けられた油圧ショベル8と、前記左右の走行装置4、4の相対的な間の距離をそれぞれ左右方向に変位させる走行装置用スパンナー9と、前記左右のワイヤーフェアリーダー間の距離をそれぞれ左右方向に変位させるワイヤーフェアリーダー用スパンナー10とで構成されている(例えば
図2と
図3を参照)。
【0015】
作業車本体3は、その底部に走行装置4を備えており、本実施形態では、走行装置4には左右に無限軌道4が用いられている。なお、無限軌道4ではなくタイヤを走行装置4として用いてもよい。
【0016】
この走行装置4は、走行装置4に設けられた走行装置用スパンナー9により左右方向に変位する。油圧ショベル8により作業する際には、走行装置用スパンナー9を伸長させることにより、左右の走行装置4の間の距離が長くなり、安定して作業を行うことができる。
【0017】
この走行装置用スパンナー9には、油圧シリンダーを用いており、この油圧シリンダーの作動杆に走行装置4が接続され、作動杆が伸縮することにより、走行装置4が左右方向に変位する。
【0018】
作業車本体3の左右方向の側部には、それぞれ左右方向に伸縮する伸縮部11を備えており、この左右の伸縮部11に前記左右のウインチ5及び左右のワイヤーフェアリーダー7が設けられている。ワイヤーフェアリーダー7のワイヤー誘導口7aは、作業車本体3の前方に設けられており、ワイヤーフェアリーダー7の後方側から導入したワイヤー6を作業車本体3の前方側へワイヤー誘導口7aから誘導する。このワイヤー誘導口7aから誘導されたワイヤー6を法面2の上部の主アンカー12に固定してウインチ5を巻き上げることにより、平坦面や緩斜面だけでなく急角度の法面2であっても走行することができる。
【0019】
本発明では急角度の法面としては傾斜が40度以上の急斜面状の法面を想定しているが、例えば略垂直の壁面のような法面2であっても2つのウインチ5に接続されたワイヤー6で支持することにより作業車本体3を法面2の任意の位置に位置させ、作業することができる。
【0020】
なお、本実施形態では、ウインチ5も作業車本体3の後方側の伸縮部11に設けたが、ウインチ5は伸縮部11を除く作業車本体3のいずれかの部位に設けてもよい。
この伸縮部11は、作業車本体3に設けられたワイヤーフェアリーダー用スパンナー10によって左右方向に変位し、左右のウインチ5及び左右のワイヤーフェアリーダー7を左右方向に変位させる。
なお、ワイヤーフェアリーダー用スパンナー10は走行装置用スパンナー9と同様の構成となっている。
【0021】
ウインチ5のワイヤー6を誘導するワイヤーフェアリーダー7を伸縮部11に設けているので、作業時に伸縮部11を伸長させ、ワイヤーフェアリーダー7の間の距離を長くすることにより、左右のワイヤー6の間の距離も長くなる。これにより、油圧ショベル8が旋回して作業してもワイヤー6と干渉することなく、安全、かつ、効率よく作業を行うことができる。
【0022】
このように、走行装置4に設けられた走行装置用スパンナー9と作業車本体3に設けられたワイヤーフェアリーダー用スパンナー10をそれぞれ別個に設け、それぞれに作動できるので、通常の車幅(左右のワイヤー6間の距離が通常状態)で問題なく、かつ、作業を安定して行いたい場合等は、走行装置用スパンナー9のみを伸長させることにより、効率よく作業することができる。
【0023】
また、伸縮部11のみ別個にワイヤーフェアリーダー用スパンナー10を用いて伸縮させることができるので、法面2において左右のワイヤー6の長さ調節及び伸縮部11の伸縮により左右方向へ移動することもできる。
【0024】
油圧ショベル8は、作業車本体3の上部に設けられており、本実施形態では、法面においても前記油圧ショベル8を略水平にすることができる角度調節手段13を介して前記作業車本体に設けられている。角度調節手段13は、作業車本体3の支持台14に一端部が枢支ピン15を介して、他端部が上下方向に回動可能に取付けられたベース板16と、前記ベース板16の後部側に設けられベース板16を枢支ピン15を支点に上下方向に回動させる油圧シリンダー24及びパンタグラフ25とで構成されている。
【0025】
油圧ショベル8は、このベース板16上に旋回機構17を介して略水平方向に旋回可能に設けられた操縦席18と、この操縦席18の前端部に取付けられた駆動アーム19と、この駆動アーム19の先端部に着脱可能に取付けられた作業アタッチメント20としてのバケット20やブレーカー20等を備えている。
【0026】
ところで、走行装置4、ウインチ5、油圧ショベル8、走行装置用スパンナー9及びワイヤーフェアリーダー用スパンナー10等はそれぞれ油圧ポンプ21により駆動している。
【0027】
この油圧ポンプ21を作動させるためのエンジン22は、作業車本体3の後方に回転可能に設けられている。このようにエンジン22を設けることにより、法面2を移動する場合であっても、エンジン22は重力によって常時略水平状態を維持することができ、エンジン22の焼付き等を防止することができる。
【0028】
法面2で作業を行なう場合、法面作業車1を法面2の下部に位置させ、左右のウインチ5のワイヤー6の先端部を法面上部の主アンカー12に固定する。このとき、
図4に示すように、ワイヤー6を平面視において逆ハの字状になるように固定することが望ましい。主アンカー12にワイヤー6を固定したら、ウインチ5を巻き上げるとともに、走行装置4を作動させて法面作業車1を前進させる。
【0029】
ところで、走行装置用スパンナー9により走行装置4の間の距離を伸縮させる場合には、油圧ショベル8のバケット20と作業車本体3の後方に設けられた排土板23によって作業車本体3を浮かせ、走行装置用スパンナー9を伸縮させて左右の走行装置4の間の距離を調節する。
【0030】
作業位置に法面作業車1が到着したら、油圧ショベル8により法面上で作業を行う。この時、ワイヤーフェアリーダー用スパンナー10により伸縮部11を左右方向に変位させワイヤーフェアリーダー7の間の距離を長くすることにより、ワイヤーフェアリーダー7の誘導口7a付近のワイヤー6を傷つけることなく作業を行うことができる。
【0031】
このように、本発明においては作業する場所である法面2の付近においてスパンナー9を操作し、左右の走行装置4やワイヤーフェアリーダー7、ウインチ5の間の長さを伸長することができる。そのため、法面作業車1を輸送する際にはコンパクトな状態で輸送でき、使用時には安全かつ効率よく作業することができる。
【0032】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図6乃至
図8に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、この異なる実施形態の説明に当って、前記第1の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0033】
図6乃至
図8に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、ウインチ5を作業車本体3に設け、ワイヤーフェアリーダー7のみを伸縮部11に設けた点で、このような法面作業車1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明はウインチのワイヤーで牽吊されて法面等の急斜面の傾斜地で各種の作業を行なう場合に使用される法面作業車を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0035】
1、1A:法面作業車、 2:法面、
3:作業車本体、 4:走行装置、
5:ウインチ、 6:ワイヤー、
7:ワイヤーフェアリーダー、 8:油圧ショベル、
9:走行装置用スパンナー、
10:ワイヤーフェアリーダー用スパンナー、
11:伸縮部、 12:主アンカー、
13:角度調節手段、 14:支持台、
15:枢支ピン、 16:ベース板、
17:旋回機構、 18:操縦席、
19:駆動アーム、 20:作業アタッチメント、
21:油圧ポンプ、 22:エンジン、
23:排土板、 24:油圧シリンダー、
25:パンタグラフ。