(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174369
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】紫外線センサ用の波長変換部材、及び紫外線センサ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20221116BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20221116BHJP
【FI】
G02B5/20
H01L31/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080116
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】591075467
【氏名又は名称】冨士色素株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】311007545
【氏名又は名称】GSアライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩林 弘久
(72)【発明者】
【氏名】森 良平
【テーマコード(参考)】
2H148
5F849
【Fターム(参考)】
2H148AA01
2H148AA05
2H148AA18
5F849AA02
5F849AA03
5F849AA04
5F849AA11
5F849AB07
5F849BA01
5F849BA09
5F849BA30
5F849HA05
5F849JA03
5F849JA05
5F849JA09
5F849JA10
5F849JA11
5F849JA18
5F849XB05
(57)【要約】
【課題】紫外領域における受光感度が乏しい半導体材料を用いた受光素子であっても、紫外線光を効率良く可視光に変換することで高感度な紫外線センサ用の波長変換部材及び紫外線センサを提供する。
【解決手段】 シリカを主成分とする固体ガラスと、前記固体ガラス中に分散したグラフェン量子ドットとを含有する蛍光体組成物を含む、紫外線センサ用の波長変換部材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを主成分とする固体ガラスと、前記固体ガラス中に分散したグラフェン量子ドットとを含有する蛍光体組成物を含む、紫外線センサ用の波長変換部材。
【請求項2】
前記グラフェン量子ドットの含有量が、前記蛍光体組成物中に0.0001質量%~1質量%である請求項1に記載の紫外線センサ用の波長変換部材。
【請求項3】
前記蛍光体組成物は、紫外領域の励起光に対し、受光装置が検出可能な波長を有する蛍光を発する、請求項1又は2に記載の紫外線センサ用の波長変換部材。
【請求項4】
前記蛍光体組成物は、紫外線170~380nmの少なくとも何れかの波長に対して、波長400~470nmの蛍光を発する、請求項1~3のいずれか1項に記載の紫外線センサ用の波長変換部材。
【請求項5】
受光装置と、その入射側に設けられた波長変換部材と、を備える紫外線センサであって、
前記波長変換部材は、シリカを主成分とする固体ガラスと、前記固体ガラス中に分散したグラフェン量子ドットとを含有する蛍光体組成物を含む、紫外線センサ。
【請求項6】
前記受光装置は、その入射側に窓部材を有し、
前記波長変換部材は、前記窓部材として、又は前記窓部材に重ねて配置される、請求項5に記載の紫外線センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン量子ドットを含有する蛍光体組成物を用いた紫外線センサ用の波長変換部材、及び紫外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線、一例としてUV-C(100~280nm)を用いた殺菌およびウイルス不活化技術が注目されており、紫外線を測定可能な紫外線センサが求められている。紫外線センサに関連する従来技術の一例として、特許文献1に記載の技術がある。
【0003】
ところで、200~1100nmの波長範囲に感度を有するシリコン系の受光素子(フォトダイオードやフォトトランジスタなど)が、安価かつその手軽さから広く利用されている。また、紫外領域に感度を有する半導体材料として、シリコンの他に、ガリウムリン、ガリウムヒ素リン、インジウムガリウムヒ素なども知られている。
【0004】
しかしながら、上記の半導体材料は、紫外領域の受光感度が乏しく、紫外線センサの受光素子として使用するのは難しいという問題があった。
【0005】
図10に各半導体材料における光吸収係数αおよび吸収長さの波長依存性を示す。光吸収係数αが大きいほど、半導体材料による光の吸収が大きく、光は半導体材料の表面近くで吸収される。即ち、光の吸収長さ(侵入深さ)が短い。反対に、光吸収係数αが小さいほど、光が半導体材料に深く侵入する。即ち、光の吸収長さ(侵入深さ)が長い。
【0006】
図10に示すように、各半導体材料では、波長が短くなるほど光吸収係数αが大きくなる。特に、シリコン(Si)やガリウムリン(GaP)は、入射光の波長が400nm付近になると、光吸収係数αが10
6近くまで大きくなる。その結果、シリコンやガリウムリンは、波長400nm以下の入射光が照射されても、入射光は半導体材料の表面付近で吸収され、半導体材料の内部まで侵入しない。即ち、シリコンやガリウムリンは、波長400nm以下の入射光を照射されても、光電変換が適切に行われず、その結果、適切に光起電力を発生させることができず、波長400nm以下の受光感度が低い。
このような問題を解決する目的で、特許文献2には、可視光受光部の入射側に、紫外線を可視光に変換する波長変換部を設けた紫外線検出器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013―8998号公報
【特許文献2】特開2020-41922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載された波長変換部には、蛍光顔料を含有する紫外線発光インキが使用されており、このように蛍光顔料粒子が母材中に分散したものでは、光の散乱が多くなり、波長変換された光が十分な光量で得られにくいという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、紫外領域における受光感度が乏しい半導体材料を用いた受光素子であっても、紫外線光を効率良く可視光に変換することで高感度な紫外線センサ用の波長変換部材、及び紫外線センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究したところ、シリカを主成分とする固体ガラス中にグラフェン量子ドットを含有する蛍光体組成物を製造する際に、グラフェン量子ドット濃度を変化させることで、紫外領域の励起光に対する可視光への変換が可能で、紫外線発光インキ等と比較してその変換効率が大きいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、以下の態様を含むものである。
【0012】
1.シリカを主成分とする固体ガラスと、前記固体ガラス中に分散したグラフェン量子ドットとを含有する蛍光体組成物を含む、紫外線センサ用の波長変換部材。
【0013】
2.前記グラフェン量子ドットの含有量が、前記蛍光体組成物中に0.0001質量%~1質量%である1.に記載の紫外線センサ用の波長変換部材。
【0014】
3.前記蛍光体組成物は、紫外領域の励起光に対し、受光装置が検出可能な波長を有する蛍光を発する、1.又は2.に記載の紫外線センサ用の波長変換部材。
【0015】
4.前記蛍光体組成物は、紫外線170~380nmの少なくとも何れかの波長に対して、波長400~470nmの蛍光を発する、1.~3.のいずれかに記載の紫外線センサ用の波長変換部材。
【0016】
5.受光装置と、その入射側に設けられた波長変換部材と、を備える紫外線センサであって、
前記波長変換部材は、シリカを主成分とする固体ガラスと、前記固体ガラス中に分散したグラフェン量子ドットとを含有する蛍光体組成物を含む、紫外線センサ。
【0017】
6.前記受光装置は、その入射側に窓部材を有し、
前記波長変換部材は、前記窓部材として、又は前記窓部材に重ねて配置される、5.に記載の紫外線センサ。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シリカを主成分とする固体ガラスと、前記固体ガラス中に分散したグラフェン量子ドットとを含有する蛍光体組成物を含む波長変換部材を備えるため、紫外領域の励起光に対する可視光への変換が可能で、従来の紫外線発光インキ等と比較してその変換効率が高くなる。このため、当該波長変換部材を受光装置の入射側に設けた紫外線センサは、紫外領域における受光感度が乏しい半導体材料を用いた受光素子であっても、紫外線光を効率良く可視光に変換することで高感度な紫外線センサ用の波長変換部材、及び紫外線センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の紫外線センサの第一実施形態の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の紫外線センサの一例を示す写真である。
【
図3】本発明の紫外線センサの第二実施形態の構成を模式的に示す図である。
【
図4】実施例1と同様の条件で製造した蛍光体組成物の一例を示す写真である。
【
図5】実施例1の蛍光体組成物の吸収スペクトルを示すグラフである。
【
図6】実施例1~3の蛍光体組成物の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【
図7】実施例1の蛍光体組成物の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【
図8】実施例2の蛍光体組成物の吸収スペクトルを示すグラフである。
【
図9】実施例3の蛍光体組成物の吸収スペクトルを示すグラフである。
【
図10】各半導体材料における光吸収係数αおよび吸収長さの波長依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<紫外線センサ>
(第一実施形態)
図1は本発明の紫外線センサの第一実施形態の構成を模式的に示す図である。本実施形態の紫外線センサ1は、受光装置10及び波長変換部材12を含んでなる。
【0021】
初めに波長変換部材12について説明する。波長変換部材12は、受光装置10の窓部材100の上面に配置される。波長変換部材12は、シリカを主成分とする固体ガラスと、固体ガラス中に分散したグラフェン量子ドットとを含有する蛍光体組成物121を含むものである。なお、波長変換部材12は、蛍光体組成物121の他、蛍光体組成物121の蛍光L1(後述)を透過する任意の材料を含んでいても構わない。
【0022】
波長変換部材12(蛍光体組成物121)は、グラフェン量子ドットが分散した固体ガラスの前駆体(詳細は後述)を受光装置10の窓部材100の上面にポッティングし、所定時間(一例として、2~3日)放置して固化することによって窓部材100の上面に配置してもよい。別の手法として、固化した上記の前駆体の周囲または底面を樹脂等の接着剤によって窓部材100の上面に貼り付けても構わない。後者の場合、接着剤を構成する材料は、蛍光体組成物121の蛍光L1(後述)を透過するものが好ましい。更に別の手法として、固化した上記の前駆体を金属又は樹脂の部材にて周囲を圧接して波長変換部材12(蛍光体組成物121)を取り付けても構わない。
【0023】
蛍光体組成物121は、波長λ0の紫外線L0(一例として、λ0=170~390nm)に対し、波長λ0より長い波長λ1の蛍光L1(一例として、λ1=400~470nm)を発する。より一般的には、蛍光体組成物121は、紫外線L0を波長λ1400~470nmの可視光L1に変換する。蛍光体組成物121の詳細は後述する。
【0024】
続いて、受光装置10について説明する。受光装置10は、窓部材100、基板101、受光素子102、パッケージ基板103、フレーム104、リードピン105、ワイヤ106、及び封止材107を含んでなる。
【0025】
窓部材100は、基板101の上面側に、受光素子102を覆うように貼付されている。窓部材100は、蛍光体組成物121の蛍光L1を透過する。窓部材100は、一例として、ガラス製または樹脂製である。
【0026】
基板101は、受光素子102を形成するための半導体基板の一種であり、一例として、シリコンウェハを用いることができる。
【0027】
受光素子102は、蛍光体組成物121の蛍光L1を受光して、光電流を出力する。一例として、受光素子102は、基板101(シリコンウェハ)にp型不純物(ホウ素など)とn型不純物(リンなど)をそれぞれ添加して形成されるPN型またはPIN型のシリコンフォトダイオード、シリコンフォトトランジスタを用いることができる。
【0028】
受光素子102が蛍光体組成物121の蛍光L1を受光して光電流を出力する原理について説明する。
受光素子102がPN型のフォトダイオードである場合、PN接合付近で「空乏層」と呼ばれる電気的に絶縁された領域が生じ、「空乏層」で内部電界が発生する。この「空乏層」に光が照射すると、電子と正孔が生じ、内部電界により電子がN型半導体側の電極へ移動し、正孔がP型半導体側の電極へ移動し、光起電力が発生し、光電流を出力する。
受光素子102がPIN型のフォトダイオードである場合、p型半導体とn型半導体の間に絶縁性のi型半導体が配置されており、i型半導体に光が照射すると、PN型のフォトダイオードと同様の原理で、光起電力が発生し、光電流を出力する。
受光素子102がフォトトランジスタである場合、フォトダイオードとトランジスタが一体化した構造になっており、フォトダイオードの光電流をトランジスタで増幅してから出力する。
【0029】
なお、受光素子102は、ガリウムリン、ガリウムヒ素リン、インジウムガリウムヒ素などの半導体材料によって形成されても構わない。より一般的には、受光素子102は、紫外領域における受光感度が乏しく、かつ、蛍光体組成物121の蛍光L1を検出可能であるという特性を有する限り、上記の半導体材料に限定されない。
【0030】
図1に戻って受光装置10について説明を続ける。パッケージ基板103は、上面にフレーム104を形成され、フレーム104の上面には、基板101がダイボンディングされている。
リードピン105は、パッケージ基板103の上面から裏面に貫通して形成され、ワイヤ106を介して基板101のパッド(不図示)に接続されている。
パッケージ基板103と窓部材100との間には、樹脂製の封止材107が充填されている。
【0031】
図2に本発明の紫外線センサの一例である写真を示す。
図2に示されるように、紫外線センサ1は、受光装置10の上面に波長変換部材12が配置されてなる。
【0032】
上記のように、波長変換部材12(蛍光体組成物121)が、紫外線L0を受光装置10(より具体的には受光素子102)が検出可能な蛍光L1に変換することにより、受光装置10は当該蛍光L1を検出でき、光電流を出力できる。即ち、紫外線センサ1は、紫外領域の受光感度が乏しい受光装置10であっても、当該受光装置10を利用して、適切に紫外線L0を検出できる。
【0033】
さらに、紫外線センサ1は、従来一般的に利用されている受光装置10に波長変換部材12(蛍光体組成物121)をポッティングまたは接着により取り付けることによって得られる簡便な構成である。そのため、安価かつ簡便に紫外線センサ1を製造可能である。
【0034】
また、波長変換部材12は、シリカを主成分とする固体ガラスと、固体ガラス中に分散したグラフェン量子ドットとを含有する蛍光体組成物121を含む。一般的に、量子ドットは、量子化学、量子力学に従う独特な光学特性を持つナノスケールの半導体結晶を指し、高い量子収率を有する。そのため、グラフェン量子ドットの特性である高い量子収率により、従来の紫外線発光インキ等と比較して変換効率が高い、即ち、高感度な紫外線センサ1を提供できる。
また、蛍光体組成物121は、後述の製造方法により固体ガラスの前駆体中にグラフェン量子ドットが均一に分散されて形成される。そのため、蛍光体組成物121は、均一な蛍光を発することができ、紫外線を効率良く可視光に変換できる。即ち、従来の紫外線発光インキ等と比較して高感度な紫外線センサ1を実現できる。
【0035】
<蛍光体組成物>
続いて、蛍光体組成物121について説明する。
本発明の蛍光体組成物121は、シリカを主成分とする固体ガラスと、固体ガラス中に分散したグラフェン量子ドットとを含有するものである。本発明において「シリカを主成分とする」とは、ガラスの金属成分中のSi元素の含有量が、60モル%以上である場合を指し、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90~100モル%である。
【0036】
(固体ガラス)
シリカを主成分とする固体ガラスとしては、シリカガラスであることが好ましい。シリカガラスには、他の金属成分として、Al、Ca、Cu、Fe、Na、K、Li、Mg、Mn、Tiを含有していてもよい。但し、これらの金属成分の含有量は、金属成分中に20モル%以下が好ましく、好ましくは10モル%以下であり、より好ましくは0~5モル%である。
【0037】
シリカガラスは、天然の石英粉を溶融した溶融石英ガラスと、液体原料から合成した合成シリカガラスに大別でき、いずれも使用可能であるが、合成シリカガラスであることが好ましい。合成シリカガラスはその製造方法により、気相合成法、液相合成法に分類できる。溶融石英ガラスは電気溶融石英ガラスと火炎溶融石英ガラスに分類される。前者は、OH含有量が少なく、後者はOH量が比較的多いのが特徴である。いずれも、耐熱性に優れ、比較的廉価である。
【0038】
気相合成法には、直接法、スート法、プラズマ法などがある。直接法は、四塩化ケイ素(SiCl4)を酸水素火炎中で加水分解し、直接堆積・ガラス化することによりシリカガラスを合成する方法である。このタイプのシリカガラスは、OH基を500~1500ppm程度含む。光学的に均質なものを比較的容易に合成することができ、紫外線耐性にも優れている。したがって、紫外線用光学材料として使用される。
【0039】
スート法では最初にシリカの微粒子を生成して多孔質体を形成する。次に適当な雰囲気中での熱処理により、OH量を制御する。最後に、高温で透明ガラス化する。この合成方法は、複数の工程からなっているため、性状を制御しやすい。プラズマ法は、スート法よりも古くから無水のシリカガラスの合成法として用いられてきた。
【0040】
液相中で合成する方法として、ゾル-ゲル法がある。これは、金属アルコキシドの重縮合により、シリカの多孔質体を合成したのち、乾燥、焼結ガラス化する方法である。また、低温でのシリカガラス薄膜の生成方法として、液相析出(LPD)法がある。
【0041】
本発明では、金属アルコキシドの加水分解と重縮合(ゾル-ゲル法)により得られるシリカガラスが好適に使用でき、後に詳述する本発明の製造方法により得たものを使用することができる。
【0042】
(グラフェン量子ドット)
量子ドットは、量子化学、量子力学に従う独特な光学特性を持つナノスケールの粒子のことを指し、粒子サイズによって光学特性を調節することが可能であるため、粒径に依存した特徴的な発光特性を持つ。本発明では量子ドットのうち、炭素原子間のπ結合に起因して、粒径に依存した発光特性を有する炭素系量子ドット、特に、グラフェン構造を有するグラフェン量子ドット、これらを化学修飾した量子ドット等を使用することができる。
【0043】
これらのグラフェン量子ドットは、シグマ-アルドリッチ社、冨士色素株式会社、GSアライアンス株式会社、フナコシ株式会社、キシダ化学株式会社などから、市販されており、これらを何れも使用することができる。
【0044】
グラフェン量子ドットの含有量は、紫外領域(一例として、170~390nm)を適度に吸収可能とする観点から、蛍光体組成物121中に0.0001~1質量%であることが好ましい。より好ましくは0.001~0.1質量%であり、更に好ましくは0.001~0.01質量%である。グラフェン量子ドットの含有量が少ないほど(即ち濃度が薄いほど)量子収率は高くなるが、絶対光量は濃度が高い方が多くなるためである。
【0045】
グラフェン量子ドットとしては、非官能化グラフェン量子ドット、官能化グラフェン量子ドット、原初の(pristine)グラフェン量子ドット、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
官能化グラフェン量子ドットは1つ以上の官能基で官能化されていてもよい。官能基には、酸素基、カルボキシル基、カルボニル基、非晶質炭素、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、エステル、アミン、アミド、ポリマー、ポリ(プロピレンオキシド)、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0047】
また、グラフェン量子ドットには、1つ以上のアルキル基で官能化されている官能化グラフェン量子ドットが含まれる。アルキル基には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、およびこれらの組み合わせが含まれる。幾つかの態様において、アルキル基にはオクチル基(例えば、オクチルアミン)が含まれる。
【0048】
また、グラフェン量子ドットは、1種以上のポリマー先駆物質で官能化することができる。例えば、グラフェン量子ドットは1種以上のモノマー(例えば、ビニルモノマー)で官能化することができる。
【0049】
グラフェン量子ドットは、重合するポリマー先駆物質で官能化することにより、ポリマー官能化グラフェン量子ドットを形成することができる。例えば、重合するビニルモノマーで端部を官能化することにより、端部官能化ポリビニルの付加物を形成することができる。
【0050】
グラフェン量子ドットは、1種以上の親水性官能基で官能化されている官能化グラフェン量子ドットを含む。親水性官能基には、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0051】
グラフェン量子ドットは、1種以上の疎水性官能基で官能化されている官能化グラフェン量子ドットを含む。疎水性官能基には、アルキル基、アリール基、およびこれらの組み合わせが含まれる。疎水性官能基には1種以上のアルキルアミドまたはアリールアミドが含まれる。
【0052】
グラフェン量子ドットは端部官能化グラフェン量子ドットを含む。端部官能化グラフェン量子ドットには、前述した1種以上の疎水性官能基が含まれる。端部官能化グラフェン量子ドットには、前述したような1種以上の疎水性官能基が含まれる。端部官能化グラフェン量子ドットには、やはり前述したような1種以上の親水性官能基が含まれる。端部官能化グラフェン量子ドットには、それらの端部上にある1種以上の酸素の付加物が含まれる。端部官能化グラフェン量子ドットには、それらの端部上にある1種以上の非晶質炭素の付加物が含まれる。
【0053】
グラフェン量子ドットは、アルキルアミドまたはアリールアミドなどの1種以上のアルキル基またはアリール基で端部が官能化されている。アルキル基またはアリール基を用いるグラフェン量子ドットの端部官能化は、グラフェン量子ドットの端部におけるアルキルアミドまたはアリールアミドのカルボン酸との反応によって行われる。
【0054】
グラフェン量子ドットには原初の(pristine)グラフェン量子ドットが含まれる。原初のグラフェン量子ドットは、合成後に未処理のままのグラフェン量子ドットを含む。原初のグラフェン量子ドットは、合成後にいかなる追加の表面変性も行われていないグラフェン量子ドットを含む。
【0055】
グラフェン量子ドットは様々な発生源から得ることができる。例えば、グラフェン量子ドットには、石炭由来のグラフェン量子ドット、コークス由来のグラフェン量子ドット、およびこれらの組み合わせが含まれる。グラフェン量子ドットにはコークス由来のグラフェン量子ドットが含まれる。グラフェン量子ドットには石炭由来のグラフェン量子ドットが含まれる。石炭には、(これらに限定はされないが)無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、変性瀝青炭、アスファルテン、アスファルト、泥炭、亜炭、ボイラー用炭、石化油(petrified oil)、カーボンブラック、活性炭、およびこれらの組み合わせが含まれる。炭素源は瀝青炭である。炭素には瀝青炭が含まれる。
【0056】
グラフェン量子ドットは様々な直径を有することができる。例えば、グラフェン量子ドットは約1nmから約100nmまでの範囲の直径を有することが好ましく、約1nmから約50nmまでの範囲の直径を有することがより好ましく、約1nmから約20nmまでの範囲の直径を有することが更に好ましい。
【0057】
グラフェン量子ドットはまた、様々な構造を有することもできる。例えば、グラフェン量子ドットは結晶質の構造を有していてもよく、例えば結晶質の六方晶構造を有する。グラフェン量子ドットは単層又は複層を有していてもよく、例えばグラフェン量子ドットはおよそ2つの層からおよそ4つの層までを有する。
【0058】
グラフェン量子ドットは、様々な量子収率を有することもできる。グラフェン量子ドットは約30~80%までの範囲の量子収率を有することが好ましい。また、グラフェン量子ドットの水分散体における蛍光特性は、励起光300nm~420nmの少なくとも何れかの波長に対して、発光波長が380nm~650nmであることが好ましい。
【0059】
グラフェン量子ドットは粉末の形態であってもよく、ペレットの形態であってもよい。グラフェン量子ドットは液体状態であってもよく、分散液、溶液、溶融した状態であってもよい。
【0060】
グラフェン量子ドットを形成するために、様々な方法を利用することができる。例えば、グラフェン量子ドットを形成する工程は、炭素源を酸化剤に曝し、その結果としてグラフェン量子ドットを形成することを含むことができる。炭素源には、石炭、コークス、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0061】
酸化剤には酸が含まれ、酸には、硫酸、硝酸、リン酸、次亜リン酸、発煙硫酸、塩化水素酸、オレウム、クロロスルホン酸、およびこれらの組み合わせが含まれる。また、酸化剤には、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、次亜リン酸、硝酸、硫酸、過酸化水素、およびこれらの組み合わせが含まれる。好ましい酸化剤は過マンガン酸カリウム、硫酸および次亜リン酸の混合物である。
【0062】
酸化剤の存在下で炭素源を音波処理することによって炭素源は酸化剤に曝される。酸化剤の存在下で炭素源を加熱することが含まれる。加熱は少なくとも約100℃の温度において行われる。
【0063】
グラフェン量子ドットを形成するさらなる方法の使用も想定することができる。例えば、グラフェン量子ドットを形成するさらなる方法は、国際特許出願であるPCT/US2014/036604号に開示されている。グラフェン量子ドットを製造するさらなる適当な方法は、次の参考文献にも開示されている:ACS Appl. Mater. Interfaces 2015, 7, 7041-7048;および、Nature Commun. 2013, 4:2943, 1-6。
【0064】
グラフェン量子ドットは、例えば、炭素ターゲットをレーザーアブレーション(laserablation)後、化学処理を実施して製造する手法(特表2012-501863号公報)や蝋燭の煤から製造する手法(H. Liu, et al., Angew. Chem.Int. Ed. 2007, 46, 6473-6475.)、グラファイト酸化物を化学処理して製造する手法(G. Eda, et al., Adv. Mater.2010, 22, 505-509.)、グラファイト酸化物を前駆体とする化学反応から製造する手法(特開2012-136566号公報)、フラーレンの転換反応から製造する手法(J. Lu, et al., Nature Nanotech.2011, 6, 247-252.)、更に、炭素繊維や活性炭など、より安価な炭素原料を化学処理して製造する手法(J. Peng, et al., Nano Lett. 2012, 12, 844-849.、Z.A. Qiao, ChemCommun. 2010, 46,8812-8814.、Y. Dong, et al., Chem. Mater.2010, 22, 5895-5899.)で製造することも可能である。
【0065】
なお、これらの手法は、大別してトップダウン(top-down)の手法であるが、有機前駆体分子のポリマー化から炭素量子ドットを製造するボトムアップ(bottom-up)の手法(G. A. Ozin, et al., J. Mater. Chem., 2012, 22, 1265-1269.)でも製造可能である。
【0066】
また、炭素材と過酸化水素とを混合し、過酸化水素により炭素を分解反応させ、炭素量子ドット生成液を調製する工程と、炭素量子ドット生成液中の炭素量子ドットと過酸化水素を分離して分解反応を停止させ、炭素量子ドットを取得する工程と、を含む炭素量子ドットの製造方法(特開2014-133685号公報)で製造することも可能である。
【0067】
(蛍光特性)
本発明の蛍光体組成物121の蛍光特性としては、汎用性の高い紫外線センサの蛍光材料を提供する観点から、励起光170nm~390nmの少なくとも何れかの波長に対して、蛍光波長(ピーク波長)が400nm~470nmであることが好ましく、蛍光波長が430nm~470nmであることがより好ましく、蛍光波長が440nm~470nmであることが更に好ましい。このような蛍光波長は、受光装置10が検出可能な波長領域に含まれる。これにより、受光装置10が紫外領域の受光感度に乏しい場合であっても、紫外線センサ1が適切に紫外線を検出可能となる。
【0068】
また、蛍光ピーク波長を中心とした発光の半値幅が40nm~100nmであることが
好ましい。
【0069】
なお、このような蛍光特性を得る観点から、原料となる炭素系量子ドットの水分散体における蛍光特性としては、励起光300nm~420nmの少なくとも何れかの波長に対して、発光波長(ピーク波長)が380nm~600nmであることが好ましく、発光波長が400nm~550nmであることがより好ましく、発光波長が420nm~500nmであることが更に好ましい。
【0070】
また、蛍光体組成物の量子収率(発光効率)は、25%以上が好ましく、さらに50%以上がより好ましく、特に70~80%が好ましい。
【0071】
<蛍光体組成物の製造方法>
本発明の蛍光体組成物121は、固体ガラスの合成時にグラフェン量子ドットを分散させる方法、又は合成等によって得られた固体ガラスを微粉砕した後に、粉砕物中にグラフェン量子ドットを分散させ固化させる方法などにより得ることができる。
【0072】
後者の方法では、固体ガラスを平均粒径100nm~5000nmに微粉砕したものを使用することができ、グラフェン量子ドットを分散させた混合物を、常法により適当な温度と圧力で固化することができる。
【0073】
本発明では、グラフェン量子ドットの均一分散性、光学特性などの観点から、合成時にグラフェン量子ドットを分散させる方法が好ましく、金属アルコキシドの加水分解と重縮合(ゾル-ゲル法)によりシリカガラスを合成する際に、グラフェン量子ドットを分散させる製造方法を用いることがより好ましい。以下、本発明の蛍光体組成物121の製造方法について詳述する。
【0074】
蛍光体組成物121の製造方法は、シリカを主成分とする固体ガラスの前駆体と、その前駆体中に分散したグラフェン量子ドットとを含有する分散液を得る分散工程と、前記前駆体をゾル-ゲル反応により固化させて、固体ガラスとその固体ガラス中に分散したグラフェン量子ドットとを含有する蛍光体組成物を得る反応工程と、を含むものである。
【0075】
(分散工程)
分散工程は、シリカを主成分とする固体ガラスの前駆体と、その前駆体中に分散したグラフェン量子ドットとを含有する分散液を得るものである。グラフェン量子ドットの分散は、固体ガラスの前駆体の各成分とともに混合・撹拌すればよい。攪拌にはスターラー、攪拌羽根などを用いることができる。
【0076】
グラフェン量子ドットは、前述したものを使用できるが、水分散体を使用することが好ましい。水分散体におけるグラフェン量子ドットの濃度は、分散性、固形化時の粒子収率の観点より、質量基準で0.01ppm~10ppmであることが好ましく、0.5ppm~5ppmであることがより好ましい。
【0077】
グラフェン量子ドットの含有量は、紫外領域(一例として、170~390nm)を適度に吸収可能にする観点から、蛍光体組成物121中に0.0001~1質量%であることが好ましい。より好ましくは0.001~0.1質量%であり、更に好ましくは0.001~0.01質量%である。グラフェン量子ドットの含有量が少ないほど(即ち濃度が薄いほど)量子収率は高くなるが、絶対光量は濃度が高い方が多くなるためである。
【0078】
なお、グラフェン量子ドット以外の半導体ナノ粒子を量子ドットとして添加することも可能であり、シリコン系量子ドット、硫化カドミウム、セレン化亜鉛、セレン化カドミウム、テルル化亜鉛、テルル化カドミウムなどを使用することができる。但し、環境保護の観点からCd、Pbを含まないものが好ましい。また、コスト等の観点から、炭素系量子ドット以外の量子ドットを実質的に含まないものが好ましい。
【0079】
固体ガラスの前駆体は、好ましくは、金属アルコキシド、アルコール、水、および酸触媒を含有する。金属アルコキシドとして、アルコキシシランのみを使用することも可能である。
【0080】
金属アルコキシドとしては、テトラアルコキシシラン(Si(OR)4)が使用され、テトラアルコキシジルコニウム(Zr(OR)4)、テトラアルコキシチタン(Ti(OR)4)、トリアルコキシアルミニウム(Al(OR)3)等が任意の成分として例示される。
【0081】
上記のROはアルコキシ基であり、好ましくは、C1-4のアルコキシ基である。具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム等が例示される。金属アルコキシドは、これらのうち、一種又は二種以上を用いることができる。金属アルコキシドとしてテトラアルコキシシランを用いるのが好ましく、テトラエトキシシランがより好ましい。二種以上を混合する場合は、テトラエトキシシランを主成分(例えば、80モル%以上)とするのが好ましい。
【0082】
なお、本発明においては、原料として金属アルコキシドを用いるものであるが、本発明の作用効果に悪影響を与えない範囲で、必要に応じて一般式:
Xm-Si(OR’)4-m
(式中、Xは、アミノアルキル基、メルカプトアルキル基等、R’はC1-3のアルキル
基、m=1,2又は3を示す)
で表されるオルガノアルコキシシランを添加しても良い。オルガノアルコキシシランとし
ては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)、3-メルカプトプロピルトリ
メトキシシラン(MPS)等が挙げられる。通常、金属アルコキシドとオルガノアルコキ
シシランのモル比は、100:0~90:10程度であればよい。
【0083】
用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のC1-4のアルコールが挙げられる。使用する金属アルコキシドのアルコキシドに対応するアルコールを用いることが好ましい。例えば、金属アルコキシドとしてテトラエトキシシランを用いる場合、アルコールとしてエタノールが用いられる。
【0084】
用いる酸触媒としては、塩酸、酢酸、硝酸等が挙げられる。酸の使用量は触媒量でよい。ゾル-ゲル法において酸を用いるのは、酸条件下では金属アルコキシドの加水分解は速いが続く脱水反応が遅いためである。なお、塩基を用いる場合には、金属アルコキシドの加水分解は遅いが続く脱水反応が速いため、ゲル化が急速に進行してしまう。
【0085】
金属アルコキシド(オルガノアルコキシシランを含む場合は、オルガノアルコキシシランと金属アルコキシドの合計)、アルコール、及び水の配合量は、1:0.1~2:0.5~8程度のモル比であればよく、1:0.3~1:1~4程度のモル比であることが好ましい。酸は上述したように触媒量でよい。
【0086】
上記各成分を混合する順序としては、最初に金属アルコキシドとアルコールを混合して完全に混和した後、水とグラフェン量子ドットを添加して混合することが好ましい。その後に、酸触媒を添加して、ゾル-ゲル反応を開始させることが好ましい。
【0087】
各成分の混合は、通常、15~80℃程度で5分~1時間程度撹拌すればよい。混合時の温度は、金属アルコキシドの種類等に応じて適宜選択できる。なお、テトラアルコキシシランを主成分とする二種以上の金属アルコキシドを混合する場合は、テトラアルコキシシランにアルコール、水及び触媒量の酸を加えて得られる加水分解溶液に、他の金属アルコキシドのアルコール溶液を滴下すればよい。
【0088】
(反応工程)
反応工程は前駆体をゾル-ゲル反応により固化させて、固体ガラスとその固体ガラス中に分散したグラフェン量子ドットとを含有する蛍光体組成物121を得るものである。この反応は所望の内面形状を有する型内で行なうことも可能である。
【0089】
ゾル-ゲル反応は、常温で行なうことも可能であるが、反応を促進する上で、加熱条件下で行なうのが好ましい。加熱温度としては、25℃~60℃が好ましく30℃~50℃がより好ましい。また、加熱条件を2段階以上に変化させて、段階的に昇温させることも可能である。
【0090】
反応時間としては、常温の場合、2日~7日程度が好ましく、加熱条件下の場合、反応温度にもよるが、12時間~36時間程度が好ましい。より高温で、より長時間の反応を行なうことで、硬度及び比重がより大きい蛍光体を得ることができる。
【0091】
また、生成するアルコールや水分を除去しながら、ゾル-ゲル反応を行なってもよい。
【0092】
また、金属アルコキシドの加水分解溶液に対して、pHを5.5~8.5に調製する工程を有していてもよい。上記の加水分解溶液は、酸触媒により液性が酸性にあるため、アルカリ(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)水溶液を用いてpHを5.5~8.5に調製すると、ゾル状の加水分解溶液の脱水縮合反応が促進されることになる。
【0093】
<紫外線センサ>
(第二実施形態)
続いて本発明の紫外線センサの第二実施形態について説明する。第一実施形態の紫外線センサは、ワイヤボンディングによる実装方式であったが、第二実施形態の紫外線センサは、フリップチップボンディングによる実装方式である点で第一実施形態と相違し、他の構成は第一実施形態と同様である。
図3は本発明の紫外線センサの第二実施形態の構成を模式的に示す図である。第一実施形態と同様の構成については、同一の符号を付しており、説明を省略する。第二実施形態の紫外線センサ1aは、受光装置10a及び波長変換部材12を含んでなる。以下、受光装置10aについて説明する。
【0094】
受光装置10aは、窓部材100、受光素子102、バンプ108、プリント配線基板109、導体パッド110、及び接着剤111を含んでなる。
【0095】
フリップチップボンディングでは、受光素子102は、受光面102aが下面になるように反転して配置される。
バンプ108は、受光素子102の受光面102a周辺の所定の位置に配置される突起であり、一例として金またはハンダなどで形成される。
プリント配線基板109上には、複数の導体パッド110が配置される。導体パッド110は、受光素子102を装着し電気的に接続するためのものであり、上記のバンプ108の位置と対応するように配置されている。
バンプ108及び導体パッド110の接続は従来のフリップチップ実装の技術を用いる。例えば、ハンダバンプ108とハンダめっきの導体パッド110によるリフロー接合でもよく、また金バンプ108と金めっきの導体パッド110を接着剤で固定する方法であってもよい。
接着剤111は、一例として樹脂からなり、受光素子102とプリント配線基板109とを固着する。接着剤111は、受光素子102とプリント配線基板109との間隙から受光面102aに射し込む不要な外来光を遮断する。
【0096】
フリップチップボンディングによれば、ワイヤボンディングに比べ、配線長が短くなり、また受光素子102を反転して実装するため、パッケージ上面に電極が無く電極を保護する封止材107が不要になり、省スペース化を実現できる。
【実施例0097】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限
り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例等における評価項目は下記の
ようにして測定を行った。
【0098】
(1)吸収スペクトル及び蛍光スペクトルの測定
蛍光体組成物121について、測定セルと同じ形状に加工した測定用試料を作成し、分光光度計(V-770、日本分光社製)を用いて吸収スペクトルを測定し、蛍光分光光度計(RF-5300PC、島津製作所製)を用いて蛍光スペクトルを測定した。このとき、各試料について、まず励起光による発光強度が最大になる励起光波長をスキャンして決定し、次いで決定した波長の励起光を用いて、試料の蛍光スペクトルを測定した。
【0099】
(2)密度の測定
蛍光体組成物121の体積(13.1cm3)を水中投下して溢れた水の体積から求め、測定した蛍光体の質量(6g)を体積で除して求めた。
【0100】
(3)量子収率
実施例1と同様にして製造した、0.01重量%のグラフェン量子ドットを分散させ蛍光体組成物を短冊状に切断し試料ホルダーに並べ、浜松ホトニクス社製のQuantaurus-QY絶対PL量子収率測定装置C11347を用いて測定を行ったところ、励起波長365nmの時85%の量子収率を得た。
【0101】
<実施例1>(グラフェン量子ドット0.01質量%)
Si(OC
2H
5)
4(TEOS):エタノール(C
2H
5OH):水(H
2O)のモル比が2:1:4の比率となるように、TEOSをポリプロピレンビーカーにテフロン(登録商標)製メスピペットを用いて秤量し、メスピペットを用いて秤量したエタノールを加え、室温(25℃)にてスターラーで撹拌し、完全に混和した後、グラフェン量子ドットの水分散体1を水のモル比が4になるよう(量子ドット濃度は蛍光体中0.01質量%)と水とを加え(合計の水の比率を4とした)、さらに室温(25℃)で撹拌した。このとき、TEOS1モル(208.37g)に対して0.8mgのクエン酸水和物(C
6H
8O
7・H
2O)を加えた。この溶液に酸触媒である1M硝酸水溶液(HNO
2)を20ml添加し、ゲル化が開始するまで撹拌した。その後、ポッティングを行い、室温(25℃)で2~3日間放置して、反応と乾燥を生じさせて、半球状(直径3mm、厚み1mm)の蛍光体組成物を製造した。その際、エタノールの除去を適宜行なった。この蛍光体は、
図4に示すように、グラフェン量子ドットが均一に分散したものであり、クラック、欠けなどは存在しないものであった。
【0102】
この蛍光体組成物について、前述した方法により吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを測定した結果を
図5~
図7に示した。
図5はグラフェン量子ドット0.01質量%における吸収スペクトルを示し、
図6は励起光220nmにおける濃度別の蛍光スペクトルを示し、
図7は励起光365nmにおけるグラフェン量子ドット0.01質量%の蛍光スペクトルを示す。
【0103】
図5に示すように、吸収のピーク波長は220nm付近であり、波長200~250nmの紫外領域に十分な受光感度があり、波長400nm以上(特に波長500nm以上)の光の吸収が少なかった。また、
図6に示すように、励起光220nmにおける蛍光のピーク波長は445nmであった。また、
図7に示すように、励起光365nmにおける蛍光のピーク波長は445nmであり、
図6と比較してその強度(Intensity)は上がった。
【0104】
このように、実施例1の蛍光体組成物は、波長400nm以下(特に波長200~250nm)の紫外領域に十分な受光感度を有し、受光装置10が検出可能な波長範囲(一例として400nm~550nm)の吸収が少ないことを確認できた。さらに、実施例1の蛍光体組成物の蛍光のピーク波長(445nm)は、受光装置10が検出可能な波長範囲(400nm~550nm)に属することを確認できた。
【0105】
<実施例2>(グラフェン量子ドット0.0001質量%)
実施例1において、グラフェン量子ドットの濃度を0.01質量%とする代わりに、蛍光体組成物中に0.0001質量%となるようにグラフェン量子ドットの水分散体を混合したこと以外は、実施例1と同じ条件で蛍光体組成物を製造した。この蛍光体組成物はグラフェン量子ドットが均一に分散したものであり、クラック、欠けなどは存在しないものであった。
【0106】
この蛍光体組成物について、前述した方法により吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した結果を
図8及び
図6に示した。
図8はグラフェン量子ドット0.0001質量%における吸収スペクトルを示す。
【0107】
図8に示すように、吸収のピーク波長は220nm付近であり、波長250nm以下の紫外領域に十分な受光感度があり、波長400nm以上(特に、波長500nm以上)の光の吸収が少なかった。また、
図6に示すように、励起光220nmにおける蛍光のピーク波長は445nmであり、実施例1に比べて強度が下がった。
【0108】
このように、実施例2の蛍光体組成物は、波長250nm以下の紫外領域に十分な受光感度を有し、受光装置10が検出可能な波長範囲(一例として400nm~550nm)の吸収が少ないことを確認できた。さらに、実施例2の蛍光体組成物の蛍光のピーク波長(445nm)は、受光装置10が検出可能な波長範囲(400nm~550nm)に属することを確認できた。さらに、実施例1と比較して、グラフェン量子ドットの濃度を薄くすることにより、蛍光強度が下がることを確認できた。さらに、実施例1と比較して、グラフェン量子ドットの濃度を薄くすることにより、波長350~400nmの吸収が少なくなることを確認できた。
【0109】
<実施例3>(グラフェン量子ドット1質量%)
実施例1において、グラフェン量子ドットの濃度を0.01質量%とする代わりに、蛍光体組成物中に1質量%となるようにグラフェン量子ドットの水分散体を混合したこと以外は、実施例1と同じ条件で蛍光体組成物を製造した。この蛍光体組成物はグラフェン量子ドットが均一に分散したものであり、クラック、欠けなどは存在しないものであった。
【0110】
この蛍光体組成物について、前述した方法により吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した結果を
図9及び
図6に示した。
図9はグラフェン量子ドット1質量%における吸収スペクトルを示す。
【0111】
図9に示すように、吸収のピーク波長は220nm付近であり、波長400nm以下(特に波長210~240nm、及び370~380nm)の紫外領域に十分な受光感度があり、波長400nm以上(特に、波長500nm以上)の光の吸収が少なかった。また、
図6に示すように、励起光220nmにおける蛍光のピーク波長は445nmであり、実施例1に比べて強度が上がった。
【0112】
このように、実施例3の蛍光体組成物は、波長400nm以下(特に波長210~240nm、及び370~380nm)の紫外領域に十分な受光感度を有し、受光装置10が検出可能な波長範囲(一例として400nm~550nm)の吸収が少ないことを確認できた。さらに、実施例3の蛍光体組成物の蛍光のピーク波長(445nm)は、受光装置10が検出可能な波長範囲(400nm~550nm)に属することを確認できた。さらに、実施例1と比較して、グラフェン量子ドットの濃度を濃くすることにより、蛍光強度が上がることを確認できた。さらに、実施例1と比較して、グラフェン量子ドットの濃度を濃くすることにより、波長350~400nmの範囲において受光感度(吸収)のピークが高波長側にシフトすることを確認できた。
【0113】
<別実施形態>
上記の実施形態では、波長変換部材12は、受光装置10、10aの窓部材100の上面に配置されるが、これに限らない。即ち、波長変換部材12は、窓部材100の上面、裏面、側面のうちの少なくとも一面に配置されても構わない。この場合、窓部材100は、蛍光L
1のみならず紫外線L
0をも透過することが好ましい。
また、上記の実施形態では、波長変換部材12は窓部材100に重ねて配置されるが、波長変換部材12と窓部材100との間に紫外線L
0を透過する他の層が位置していても構わない。即ち、波長変換部材12は、窓部材100に直接的または間接的に取付られて構わない。
また、上記の実施形態では、波長変換部材12は受光装置10、10aの窓部材100に配置されるが、波長変換部材12が受光装置10、10aの窓部材100として受光装置10、10aの内部に設けられても構わない。
また、本発明の紫外線センサは、
図1に示される樹脂モールド型のパッケージ構造に限定されず、例えば、CANパッケージの受光装置でも構わないし、セラミックパッケージであっても構わない。