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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174372
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】水処理装置および水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20221116BHJP
   B01D 61/22 20060101ALI20221116BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20221116BHJP
   C02F 1/52 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
C02F1/44 C
B01D61/22
B01D65/02 530
C02F1/44 A
C02F1/52 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080120
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】若狭 浩之
(72)【発明者】
【氏名】西田 高志
【テーマコード(参考)】
4D006
4D015
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA01
4D006HA41
4D006HA61
4D006HA71
4D006JA53Z
4D006KA03
4D006KB13
4D006KB15
4D006KB20
4D006KB30
4D006KC03
4D006KC14
4D006KD01
4D006KD06
4D006KD08
4D006KD11
4D006KD12
4D006KD15
4D006KD16
4D006KD17
4D006KD22
4D006KD24
4D006KD30
4D006KE02R
4D006KE03R
4D006KE12Q
4D006KE15Q
4D006KE30R
4D006MA01
4D006MA03
4D006MC03
4D006MC18
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC39
4D006MC63
4D006PA01
4D006PB03
4D006PB04
4D006PB05
4D006PC80
4D015BA04
4D015BB05
4D015CA14
4D015CA20
4D015DA04
4D015DA05
4D015DA06
4D015DA13
4D015DA16
4D015EA37
(57)【要約】
【課題】効率的にろ過ができ、かつ、物理洗浄によりろ過膜を効率的に回復できる水処理装置の提供。
【解決手段】フロックを含む原水を流入させて被処理水として排出させる原水槽と、原水に機械的にせん断力を発生させるせん断力発生手段と、被処理水からフロックを分離して処理水を得るろ過膜とを備える水処理装置であって、せん断力発生手段を制御して被処理水に含まれるフロックの平均粒子径を0.1~10μmにする、水処理装置;水処理方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロックを含む原水を流入させて被処理水として排出させる原水槽と、
前記原水に機械的にせん断力を発生させるせん断力発生手段と、
前記被処理水から前記フロックを分離して処理水を得るろ過膜とを備える水処理装置であって、
前記せん断力発生手段を制御して前記被処理水に含まれる前記フロックの平均粒子径を0.1~10μmにする、水処理装置。
【請求項2】
前記せん断力発生手段を制御して前記被処理水に含まれる前記フロックの平均粒子径を0.1~1μmにする、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記ろ過膜が精密ろ過膜または限外ろ過膜である、請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記ろ過膜のバブリング洗浄手段を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記原水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記凝集剤がアルミニウム系凝集剤である、請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記アルミニウム系凝集剤を酸化アルミニウム換算で0.1~7.0mg/L添加する、請求項6に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記せん断力発生手段が循環水用ポンプであり、
前記水処理装置が前記循環水用ポンプによって前記原水槽から前記原水の一部を送液して循環水として前記原水槽に戻す循環流路を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記原水槽と前記ろ過膜の間に被処理水用ポンプを備え、
前記被処理水の流量を前記循環水の流量の1.1~5倍に制御する、請求項8に記載の水処理装置。
【請求項10】
前記循環水の流量を10~50m/時間に制御する、請求項8または9に記載の水処理装置。
【請求項11】
前記循環流路の長さが、前記原水槽と前記ろ過膜の間の流路の長さよりも長い、請求項8~10のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項12】
前記原水槽と前記ろ過膜の間にインラインミキサーを備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項13】
前記せん断力発生手段が、撹拌手段である、請求項1~12のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項14】
前記原水槽と前記ろ過膜の間にフロック監視手段を備え、
前記フロック監視手段により前記フロックの平均粒子径を求める、請求項1~13のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項15】
原水槽にフロックを含む原水を流入させる工程と、
せん断力発生手段により前記原水に機械的にせん断力を発生させる工程と、
前記原水槽から被処理水を排出させる工程と、
ろ過膜により前記被処理水から前記フロックを分離して処理水を得る工程とを含む水処理方法であって、
前記せん断力発生手段を制御して前記被処理水に含まれる前記フロックの平均粒子径を0.1~10μmにする、水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水処理装置および水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、上水処理システム、下水処理システム、工業用水処理システム、排水処理システム、海水淡水化システムなどの各種類の水処理システムにおいて被処理水中の汚濁物質を分離除去する方法として、ろ過膜によるろ過を用いた水処理方法が知られている。
【0003】
その中でも、原水中の濁質をフロックにして、フロックをろ過膜で分離除去する水処理方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、取水した原水に凝集剤を注入して原水中の微粒子および濁質を凝集させてフロックにし、フロックを膜で分離除去する浄水処理方法において、凝集剤注入後のフロック粒径を計測し、フロック粒径と膜の細孔径との比率もしくは差が、予め設定した適正範囲となる様に凝集剤注入量を制御する、浄水処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-057739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ろ過膜を用いた水処理方法では、ろ過の継続に伴い、被処理水中の汚濁物質等がろ過膜に付着してろ過膜の目詰まり(ファウリング)が生じ、ろ過性能が低下する(例えば、ろ過膜の差圧が上昇する)。そのため、定期的にろ過膜を逆洗浄(ろ過膜のろ過時の下流から上流に通水しながら洗浄すること)やバブリング洗浄(液体中でろ過膜に気体を接触させて洗浄すること)などの物理洗浄をしたり、薬品洗浄したりして目詰まりを解消する必要がある。
【0006】
特許文献1に記載の方法は、特許文献1の図3に記載のとおり、フロックの平均粒子径が大きくなる方法であった。また、特許文献1に記載の方法を検討したところ、物理洗浄によるろ過膜の回復効率が悪いことがわかった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、効率的にろ過ができ、かつ、物理洗浄によりろ過膜を効率的に回復できる水処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、フロックを含む原水に機械的にせん断力(シェア、シア;shear)を加え、フロックの平均粒子径を0.1~10μmの範囲に調整することにより、効率的にろ過ができ、かつ、物理洗浄によりろ過膜を効率的に回復できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
具体的には、本発明および本発明の好ましい態様の構成は以下のとおりである。
[1] フロックを含む原水を流入させて被処理水として排出させる原水槽と、
原水に機械的にせん断力を発生させるせん断力発生手段と、
被処理水からフロックを分離して処理水を得るろ過膜とを備える水処理装置であって、
せん断力発生手段を制御して被処理水に含まれるフロックの平均粒子径を0.1~10μmにする、水処理装置。
[2] せん断力発生手段を制御して被処理水に含まれるフロックの平均粒子径を0.1~1μmにする[1]に記載の水処理装置。
[3] ろ過膜が精密ろ過膜または限外ろ過膜である[1]または[2]に記載の水処理装置。
[4] ろ過膜のバブリング洗浄手段を備える[1]~[3]のいずれか一つに記載の水処理装置。
[5] 原水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段を備える[1]~[4]のいずれか一つに記載の水処理装置。
[6] 凝集剤がアルミニウム系凝集剤である[5]に記載の水処理装置。
[7] アルミニウム系凝集剤を酸化アルミニウム換算で0.1~7.0mg/L添加する[6]に記載の水処理装置。
[8] せん断力発生手段が循環水用ポンプであり、
水処理装置が循環水用ポンプによって原水槽から原水の一部を送液して循環水として原水槽に戻す循環流路を備える[1]~[7]のいずれか一つに記載の水処理装置。
[9] 原水槽とろ過膜の間に被処理水用ポンプを備え、
被処理水の流量を循環水の流量の1.1~5倍に制御する[8]に記載の水処理装置。
[10] 循環水の流量を10~50m/時間に制御する[8]または[9]に記載の水処理装置。
[11] 循環流路の長さが、原水槽とろ過膜の間の流路の長さよりも長い[8]~[10]のいずれか一つに記載の水処理装置。
[12] 原水槽とろ過膜の間にインラインミキサーを備える[1]~[11]のいずれか一つに記載の水処理装置。
[13] せん断力発生手段が、撹拌手段である[1]~[12]のいずれか一つに記載の水処理装置。
[14] 原水槽とろ過膜の間にフロック監視手段を備え、
フロック監視手段によりフロックの平均粒子径を求める[1]~[13]のいずれか一つに記載の水処理装置。
[15] 原水槽にフロックを含む原水を流入させる工程と、
せん断力発生手段により原水に機械的にせん断力を発生させる工程と、
原水槽から被処理水を排出させる工程と、
ろ過膜により被処理水からフロックを分離して処理水を得る工程とを含む水処理方法であって、
せん断力発生手段を制御して被処理水に含まれるフロックの平均粒子径を0.1~10μmにする、水処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、効率的にろ過ができ、かつ、物理洗浄によりろ過膜を効率的に回復できる水処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の水処理装置の一例を表す断面概略図である。
図2図2は、本発明の水処理装置の他の一例を表す断面概略図である。
図3図3は、本発明の水処理装置の他の一例を表す断面概略図である。
図4図4は、比較例1の水処理装置を表す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
[水処理装置]
本発明の水処理装置は、フロックを含む原水を流入させて被処理水として排出させる原水槽と、原水に機械的にせん断力を発生させるせん断力発生手段と、被処理水からフロックを分離して処理水を得るろ過膜とを備える水処理装置であって、せん断力発生手段を制御して被処理水に含まれるフロックの平均粒子径を0.1~10μmにする。
この構成により、効率的にろ過ができ、かつ、物理洗浄によりろ過膜を効率的に回復できる。いかなる理論に拘泥するものでもないが、機械的にせん断力をフロックに加えてフロックの平均粒子径を従来(100μm以上)よりも小さいサイズに制御することで、フロックを含む濁質のろ過膜からの剥離性を向上できると推定される。その結果、物理洗浄を効率的にできる。なお、フロックの平均粒子径を小さくするとろ過膜の目詰まりが懸念されたが、本発明の方法によってフロックを調製した場合は目詰まりが発生しないことがわかった。
以下、本発明の好ましい態様を説明する。
【0014】
<水処理装置の構成>
まず、図面を用いて水処理装置の構成を説明する。図1は、本発明の水処理装置の一例を表す断面概略図である。
図1に示した水処理装置は、フロックを含む原水1を流入させて被処理水3として排出させる原水槽11と、原水1に機械的にせん断力を発生させるせん断力発生手段と、被処理水3からフロックを分離して処理水4を得るろ過膜13とを備える。
図1に示した水処理装置では、せん断力発生手段が循環水用ポンプ22であり、水処理装置が循環水用ポンプ22によって原水槽11から原水1の一部を送液して循環水2として原水槽11に戻す循環流路12を備える。図1に示した水処理装置では、このせん断力発生手段を制御して被処理水3に含まれるフロック(不図示)の平均粒子径を0.1~10μmにする。
図1に示した水処理装置は、さらに原水1に凝集剤5を添加する凝集剤添加手段31と、原水1にその他の薬剤6を添加する薬剤添加手段32を備える。水処理装置が凝集剤添加手段を備えることにより、フロックを含む原水1を調製しやすくなる。
図1に示した水処理装置は、さらに原水槽11とろ過膜13との間に被処理水用ポンプ23と、フロック監視手段24を備える。
【0015】
図2は、本発明の水処理装置の他の一例を表す断面概略図である。図1に示した水処理装置において、薬剤添加手段32とフロック監視手段24を備えず、かつ、原水槽11とろ過膜13との間にインラインミキサー25を備える態様が、図2に示した水処理装置である。
【0016】
図3は、本発明の水処理装置の他の一例を表す断面概略図である。図3に示した水処理装置は、フロックを含む原水1を流入させて被処理水3として排出させる原水槽11と、原水1に機械的にせん断力を発生させるせん断力発生手段と、被処理水3からフロックを分離して処理水4を得るろ過膜13とを備える。
図3に示した水処理装置では、せん断力発生手段が撹拌手段26である。図1に示した水処理装置では、このせん断力発生手段を制御して被処理水3に含まれるフロック(不図示)の平均粒子径を0.1~10μmにする。
図3に示した水処理装置は、さらに原水1に凝集剤5を添加する凝集剤添加手段31と、原水槽11とろ過膜13との間に被処理水用ポンプ23を備える。
以下、本発明の水処理装置を構成する各部分の詳細について、好ましい態様を説明する。
【0017】
<原水>
本発明の水処理装置では、フロックを含む原水を用いる。
原水としてはフロックを含むこと以外は特に制限は無い。例えば、河川水や井水、湖沼水、高濁度の水などを用いることができ、これらの水に凝集剤を添加してフロックを形成させた水を原水として用いることが好ましい。上水処理、下水処理、飲料水製造、工業用水製造、排水高次処理、排水回収処理、海水淡水化など幅広いシステムにおいて本発明を適用できる。
原水のpHは特に制限はなく、水処理装置の薬剤添加手段から原水に対して薬剤を添加して、例えばpH6~8、好ましくはpH6~7に制御することができる。
原水のSS(Suspended Solids)濃度は特に制限はなく、例えば500mg/L以下であることが好ましく、100mg/L以下であることがより好ましく、20mg/L以下であることが特に好ましい。
原水の有機物濃度は特に制限はない。原水の化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand;COD)は、過マンガン酸カリウムCOD測定法(CODMn)として、500mg/L以下であることが好ましく、100mg/L以下であることがより好ましく、20mg/L以下であることが特に好ましい。CODMnの下限値は特に制限はない。
原水の濁度は特に制限はなく、例えば100NTU(Nephelometric Turbidity Unit)以下であることが好ましく、50NTU以下であることがより好ましく、20NTU以下であることが特に好ましい。
【0018】
<原水用ポンプ>
本発明の水処理装置は、原水用ポンプを備えることが好ましい。原水用ポンプとしては特に制限はなく、公知のものを用いることができる。原水用ポンプの流量は、被処理水用ポンプの流量や循環水用ポンプの流量にあわせて安定運転できるように設定することができる。特に被処理水中のフロックの平均粒子径を制御するために、原水用ポンプの流量を制御する必要はない。
【0019】
<凝集剤添加手段>
原水には、凝集剤などを添加する前処理を行い、フロックを形成することが好ましい。本発明の水処理装置は、原水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段を備えることが好ましい。水処理装置が備える凝集剤添加手段の位置は特に制限はなく、原水槽またはその上流の配管に備えることができ、原水槽の上流の配管に備えることが好ましい。
【0020】
(凝集剤)
凝集剤としては、特に制限はない。凝集剤としては、無機凝集剤や有機凝集剤(例えば、高分子凝集剤)を挙げることができ、無機凝集剤が好ましい。
無機凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウム(PAC)および硫酸アルミニウム(硫酸バンド)などのアルミニウム系凝集剤、あるいは、ポリ鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄およびポリシリカ鉄の鉄系凝集剤を挙げることができる。本発明では、凝集剤がアルミニウム系凝集剤であることがコストの観点から好ましく、硫酸バンドであることがより好ましい。
【0021】
無機凝集剤の添加量は特に制限はなく、適宜調整することができる。本発明では、アルミニウム系凝集剤を酸化アルミニウム換算で0.1~10.0mg/L添加することが好ましい。アルミニウム系凝集剤を酸化アルミニウム換算で1.0~7.0mg/L添加することが被処理水中のフロックの平均粒子径を小さくできる観点からより好ましく、3.0~6.0mg/L添加することが特に好ましい。本発明によれば、フロックの粒子径を大きくしない場合であっても、効率的にろ過ができ、かつ、物理洗浄によりろ過膜を効率的に回復できる。そのため、従来よりも凝集剤の添加量を少なくすることができ、水処理のランニングコストを低くできる。
【0022】
<薬剤添加手段>
本発明の水処理装置は、薬剤添加手段を備えることが好ましい。
循環水への薬剤添加手段としては特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
薬剤添加手段は、薬剤添加部の他に、撹拌部を有していてもよい。水処理装置が備える薬剤添加手段の位置は特に制限はなく、原水槽またはその上流の配管に備えることができ、原水槽の上流の配管に備えることが好ましい。薬剤添加手段と凝集剤添加手段の設置順序は特に限定されず、いずれが先であってもよく、実質的に同時に薬剤と凝集剤を添加してもよい。
【0023】
(薬剤)
薬剤としては、特に制限はない。本発明では、薬剤が酸、アルカリまたは殺菌剤であることが好ましい。
酸としては特に制限はなく、塩酸や硫酸、硝酸、クエン酸、シュウ酸、EDTAなどを挙げることができる。
殺菌剤としては特に制限はなく、酸化剤、スライムコントロール剤、アルカリ剤を挙げることができる。酸化剤としては、塩素系酸化剤、臭素系酸化剤、オゾンを挙げることができる。特に、原水を塩素系酸化剤で殺菌することにより、ろ過膜の膜面のバイオファウリングを抑制することが、ろ過膜および/または逆浸透膜の薬品洗浄の頻度を抑制する観点から好ましい。水処理の条件にあわせて最適な殺菌剤を選択できる。塩素系酸化剤としては、二酸化塩素、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウムなどを挙げることができ、次亜塩素酸ナトリウムがより好ましい。
殺菌剤の添加量としては特に制限はないが、原水が殺菌剤を0.1~10mg/L(より好ましくは0.5~5mg/L、特に好ましくは2~5mg/L)含むように、殺菌剤を添加することが好ましい。
【0024】
<原水槽>
本発明の水処理装置は、フロックを含む原水を流入させて被処理水として排出させる原水槽を備える。原水槽としては特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
原水槽は原水の流入口と被処理水の流出口を備えることが好ましい。
せん断力発生手段の種類に応じて、原水槽はその他の部分を備えていてもよい。せん断力発生手段が循環水用ポンプである場合、原水槽はさらに循環流路への循環水の流出口および流入口を備えていてもよい。せん断力発生手段が撹拌手段である場合、原水槽はさらに撹拌手段を備えていてもよい。
【0025】
<せん断力発生手段>
本発明の水処理装置は、原水に機械的にせん断力を発生させるせん断力発生手段を備える。
本発明の水処理装置は、せん断力発生手段を制御して被処理水に含まれるフロックの平均粒子径を0.1~10μmにする。フロックの平均粒子径を0.1~5μmにすることが好ましく、0.1~2μmにすることがより好ましく、0.1~1μmにすることが特に好ましい。
機械的にせん断力を発生させる方法としては特に制限はなく、原水(好ましくは原水中のフロック)に機械的なせん断力をかけられればよい。例えば、ポンプ、ニーダー、ライカイ機、押出機などの移送手段;ミル類、ホモジナイザー、ミキサー(インラインミキサー、スタティックミキサーも含む)、撹拌手段(プロペラ)などの磨砕、破砕または混合手段;などを挙げられる。これらの中でも、被処理水に含まれるフロックの平均粒子径を0.1~10μmに制御しやすい観点から移送手段が好ましく、ポンプがより好ましい。これらの手段を単独で用いてもよく、二種類以上の手段を組み合わせてもよい。
せん断力の方向としては、原水(原水中のフロック)の流れ方向に対して平行方向、垂直方向または任意の回転方向のいずれのせん断力であってもよいが、任意の回転方向または垂直方向のせん断力であることが好ましく、垂直方向のせん断力であることがより好ましい。
【0026】
(循環水用ポンプ)
せん断力発生手段が循環水用ポンプであることが好ましい。
循環水用ポンプを設置する場所としては特に制限は無く、例えば循環流路に設置してもよく、原水槽の内部に設置してもよい。循環水用ポンプを原水槽の内部に設置する場合、循環水用ポンプは水中ポンプであることが設置面積削減の観点から好ましい。
本発明では、循環流路に循環水用ポンプを備えることがフロック径コントロールの観点から好ましい。
循環水用ポンプとしては特に制限はなく、公知のポンプを使用することができる。循環水用ポンプは、流速(流量)をインバータ等により調整できることが好ましい。循環水用ポンプとしては、垂直方向のせん断力を加えられるものが好ましい。
循環水用ポンプの任意のパラメータを制御して、原水にかかるせん断力を制御し、被処理水に含まれるフロックの平均粒子径を0.1~10μmにすることができる。例えば、インバータを用いて循環水用ポンプを制御して、循環水の流量、循環水の流束など制御して、原水にかかるせん断力を制御することができる。
【0027】
-循環流路-
せん断力発生手段が循環水用ポンプである場合、水処理装置は、循環水用ポンプによって原水槽から原水の一部を送液して循環水として原水槽に戻す循環流路を備えることが好ましい。
フロックを含む原水を循環水用ポンプを用いて循環流路に循環させることで、フロックを含む原水にせん断力をかけることが、低コストで原水に機械的なせん断力をかけられる観点から好ましい。
循環流路の配管としては、循環水を送液できるものであれば、特に制限はない。配管は、その断面が略円形であることが、フロックを含む原水に均等にせん断力をかけやすい観点から好ましい。
循環流路の形状としては特に制限はない。例えば、循環流路は水平に配置された流路であっても、原水槽の下部から原水槽の上部へ向けて循環水を送液できるよう配置された流路であってもよい。また、循環流路は、流路が直管を備えていても、90°曲がる角部を備えていても、曲線的なカーブのみで構成されていてもよい。これらの中でも、循環流路の形状は、直管と曲線的なカーブの組み合わせであることがエネルギー効率の観点から好ましい。
本発明では、循環流路の長さが、原水槽とろ過膜の間の流路の長さよりも長いことが好ましい。原水槽とろ過膜の間の流路の長さを(循環流路の長さよりも相対的に)短くすることで、原水槽から排出された被処理水中のフロックどうしが衝突してフロックの平均粒子径が大きくなることを抑制することができる。
【0028】
本発明では、循環水の流量を1~50m/時間に制御することが好ましく、10~50m/時間に制御することが被処理水中のフロックの平均粒子径を小さくできる観点からより好ましく、30~45m/時間に制御することが特に好ましい。
循環水の流量を、被処理水の流量の0.1~1.0倍にすることが好ましく、0.2~0.9倍にすることが被処理水に含まれるフロックの平均粒子径を小さくできる観点からより好ましく、0.5~0.8倍にすることが特に好ましい。
【0029】
(撹拌手段)
本発明では、せん断力発生手段が、撹拌手段であることも好ましい。撹拌手段を設置する場所としては特に制限は無く、例えば原水槽の上流に設置してもよく、原水槽の内部に設置してもよい。原水槽の内部に撹拌手段を備えることが被処理水中のフロックの平均粒子径を制御しやすい観点から好ましい。
撹拌手段としては特に制限はなく、公知の撹拌手段を使用することができる。撹拌手段としては、回転方向のせん断力を加えられるものが好ましい。その中でも、水中プロペラであることが、被処理水中のフロックの平均粒子径を制御しやすい観点から好ましい。
撹拌手段の任意のパラメータを制御して、原水にかかるせん断力を制御し、被処理水に含まれるフロックの平均粒子径を0.1~10μmにすることができる。原水にかかるせん断力を制御するために制御できる撹拌手段のパラメータとしては、撹拌手段の撹拌速度などを挙げることができる。
【0030】
<被処理水用ポンプ>
本発明の水処理装置は、原水槽とろ過膜の間に被処理水用ポンプを備えることが好ましい。被処理水用ポンプにより、被処理水をろ過膜に送ることができる。
被処理水用ポンプとしては特に制限はなく、公知のポンプを使用することができる。被処理水用ポンプは、流速(流量)をインバータ等により調整できることが好ましい。
【0031】
被処理水の流量、すなわち被処理水をろ過膜に通過させる流量(流速)は、特に制限は無い。
被処理水の流量を10~200m/時間に制御することが好ましく、20~100m/時間に制御することが被処理水中のフロックの平均粒子径を小さくできる観点からより好ましく、50~80m/時間に制御することが特に好ましい。
本発明では、被処理水の流量を循環水の流量の1.0~10倍に制御することが好ましく、1.1~5.0倍に制御することが被処理水に含まれるフロックの平均粒子径を小さくできる観点からより好ましく、1.25~2.0倍に制御することが特に好ましい。
【0032】
<インラインミキサー>
本発明では、原水槽とろ過膜の間にインラインミキサーを設置することが好ましい。インラインミキサーを設置することにより、原水槽から排出された被処理水中のフロックどうしが衝突してフロックの平均粒子径が大きくなることを抑制しやすくなる。特に、原水槽とろ過膜の間の流路の長さを(例えば、循環流路の長さよりも)長くする場合、原水槽とろ過膜の間にインラインミキサーを設置することが好ましい。
【0033】
<フロック監視手段>
本発明の水処理装置は、フロック監視手段を備えることが好ましく、原水槽とろ過膜の間にフロック監視手段を備えることがより好ましい。
フロック監視手段によりフロックの平均粒子径を求めることができる。粒子径が0.1~10μmのフロックは目視では確認が難しい。本発明では、フロックの平均粒子径は、特開平11-057739号公報の[0025]~[0026]に記載の方法を参照して算出できる。具体的には、カメラ、顕微鏡、透明なフローセルによりフロック像を撮影し、画像処理してフロックの個数とフロックの断面積を求め、各フロックを断面積が同じ等価円と仮定して粒子径を任意の演算装置で算出し、個数平均の平均粒子径を求める。
【0034】
<ろ過膜>
本発明の水処理装置は、被処理水からフロックを分離して処理水を得るろ過膜を備える。
ろ過膜は、精密ろ過膜(MF膜)または限外ろ過膜(UF膜)であることが好ましい。精密ろ過膜の開口径は特に制限はなく、0.1~0.5μmであることが好ましく、0.1~0.2μmであることがより好ましい。限外ろ過膜の開口径は特に制限はなく、0.01~0.05μmであることが好ましく、0.01~0.02μmであることがより好ましい。
ろ過膜は、限外ろ過膜であることが好ましい。限外ろ過膜としては特に制限は無く、公知の限外ろ過膜などを用いることができる。限外ろ過膜としては市販のものを用いてもよい。例えば、王子エンジニアリング株式会社製、OJI-MEMBRANE(登録商標)などを好ましく用いることができる。
ろ過膜の形状は特に制限はなく、例えば中空糸膜、スパイラル膜、プリーツ膜、平膜などを挙げることができる。ろ過膜が、中空糸膜であることが好ましい。
ろ過膜の材質は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)や酢酸セルロース(CA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルスルホン(PES)などの有機高分子系や、セラミックなどの無機系の素材を使用することが出来る。
【0035】
<洗浄手段>
本発明の水処理装置は、ろ過膜の洗浄手段を備えることが好ましく、ろ過膜の物理洗浄手段を備えることがより好ましい。物理洗浄手段としては、逆洗浄手段、バブリング洗浄手段を挙げることができる。
本発明の水処理装置は、バブリング洗浄手段を備えることが好ましく、逆洗浄手段およびバブリング洗浄手段を備えることがより好ましい。ろ過膜を固定するろ過膜モジュールが、ろ過膜のバブリング洗浄手段を備えることが特に好ましい。
逆洗浄手段、バブリング洗浄手段としては特に制限は無く、公知のものを用いることができる。
【0036】
<その他の装置>
水処理装置は、公知のその他の装置を備えていてもよい。例えば、任意の場所にpH調節装置を備えていてもよい。任意の場所に温度調節装置を備えていてもよい。
【0037】
水処理装置には、ろ過膜の上流または下流に沈殿槽、浮上槽、遠心分離機、砂ろ過装置などの固液分離手段を設けてもよい。従来は、これらの大規模な装置(凝集沈殿槽など)を設置していた。
ただし、本発明の水処理装置は、効率的にろ過ができ、かつ、物理洗浄によりろ過膜を効率的に回復できるため、ろ過膜の上流で固液分離処理を行わなくても連続稼働できる。そのため、水処理装置が固液分離手段を備えないことがコストを低減する観点から好ましい。すなわち、本発明では、ろ過膜の上流にフロックを固液分離する固液分離手段を含まないことが好ましく、ろ過膜の上流に沈殿槽および砂ろ過装置を備えないことが特に好ましい。フロック化を制御することと、ろ過膜を組み合わせて、従来よりもコンパクトかつ低コストである水処理装置となる。
【0038】
[水処理方法]
本発明の水処理方法は、原水槽にフロックを含む原水を流入させる工程と、せん断力発生手段により原水に機械的にせん断力を発生させる工程と、原水槽から被処理水を排出させる工程と、ろ過膜により被処理水からフロックを分離して処理水を得る工程とを含む水処理方法であって、せん断力発生手段を制御して被処理水に含まれるフロックの平均粒子径を0.1~10μmにする。
本発明の水処理方法の好ましい態様は、本発明の水処理装置の好ましい態様と同様である。
なお、原水を流入させる工程から処理水を得る工程までの工程を、膜ろ過工程と言うことがある。
【0039】
(物理洗浄)
水処理方法は、膜ろ過工程の途中に適切な頻度で、ろ過膜の物理洗浄(例えば、逆洗やバブリング洗浄)を行うことが好ましい。本発明の水処理方法では、物理洗浄によりろ過膜を効率的に回復できる。本発明では、物理洗浄後に差圧が回復し、膜ろ過工程を繰り返しても膜ろ過工程時の差圧(収束値)がほとんど上昇しないことが好ましい。特に膜ろ過工程を繰り返した場合の膜ろ過工程時の差圧(収束値)の上昇幅が小さいことが好ましい。
ろ過膜の物理洗浄は、1~60分間当たり1回行うことが好ましく、10~30分間当たり1回行うことがより好ましく、20~30分間当たり1回行うことが特に好ましい。
【0040】
(薬品洗浄)
ろ過膜の物理洗浄では安定運転が維持できない場合、ろ過膜を物理洗浄する工程に加えて、膜処理工程の途中に適切な頻度で、ろ過膜を薬品洗浄する工程を行うことがより好ましい。薬品洗浄は、薬品を用いたCIP(クリーニングインプレイス洗浄)洗浄であることが好ましい。
薬品としては、酸、アルカリ、ろ過膜への耐性を有する洗浄剤を挙げることができる。酸としては、塩酸や硫酸、硝酸、クエン酸、シュウ酸、EDTAなどを挙げることができ、硫酸が好ましい。前処理として原水に対して硫酸バンド(硫酸アルミニウム)などの無機凝集剤を用いて凝集フロックを形成させる場合は、酸を用いて鉱物成分(マイナス帯電の汚物の表面にプラス帯電して覆っている)の付着汚れを溶解することにより、有効に差圧を低減できる。
アルカリやろ過膜への耐性を有する洗浄剤としては、次亜塩素酸またはその塩、水酸化ナトリウム、過酸化水素水などを挙げることができ、次亜塩素酸ナトリウムであることが好ましい。
薬品を用いたCIP洗浄は水処理を止めて水処理装置の系内に薬品を循環させるので、水処理の効率が落ちる上、薬品コスト、電気代、人件費などがかかる。これに対し、本発明では、効率的にろ過ができ、かつ、物理洗浄によりろ過膜を効率的に回復できるため、薬品洗浄の頻度も抑制できることが好ましい。
【実施例0041】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0042】
[実施例1]
図1に記載の水処理装置を用いて、水処理を行った。
自然池より取水した、pHが8.0であり、SS濃度が20mg/Lであり、CODMnが20mg/Lであり、濁度が15NTUである水を用いた。
この自然池より取水した水を原水用ポンプ21で原水槽11に送液する配管内において、薬剤添加手段32から薬剤6を、凝集剤添加手段31から凝集剤5を順に添加し、フロックを含む原水1(pH6.6)を得た。薬剤として、次亜塩素酸ナトリウムを5mg/Lとなるような量と、硫酸を添加した。凝集剤として、硫酸バンドを酸化アルミニウム換算で5mg/Lとなるような量を添加した。
得られた原水1は、循環水用ポンプ22および循環流路12からなるせん断力発生手段を用いて40m/時間の流量にて、原水槽11および循環流路12内を循環水2として循環させた。循環水用ポンプ22は、原水1に機械的な垂直方向のせん断力をかけることができる。同時に、被処理水用ポンプ23を用いて60m/時間の流量にて、原水槽11からろ過膜13を備えるろ過膜モジュールに向けて被処理水3として送液した。得られた被処理水3中のフロック(不図示)の粒子径をフロック監視手段24で測定したところ、被処理水3中のフロックの平均粒子径は0.5μmであった。
【0043】
[実施例2]
硫酸バンドを酸化アルミニウム換算で8mg/Lとなるように添加した以外は実施例1と同様にして、被処理水を得た。得られた被処理水中のフロックの平均粒子径は2.1μmであった。
【0044】
[実施例3]
凝集剤として硫酸バンドの代わりに、塩化鉄を5mg Fe/Lとなるように添加した以外は実施例1と同様にして、被処理水を得た。得られた被処理水中のフロックの平均粒子径は1.1μmであった。
【0045】
[実施例4]
循環流路を循環させる循環水の流量を10m/時間とした以外は実施例1と同様にして、被処理水を得た。得られた被処理水中のフロックの平均粒子径は7.2μmであった。
【0046】
[比較例1]
図4に記載の水処理装置を用いて、水処理を行った。
自然池より取水した、pHが8.0であり、SS濃度が20mg/Lであり、CODが20mg/Lであり、濁度が15NTU(Nephelometric Turbidity Unit)である水を用いた。
この自然池より取水した水を原水用ポンプ21で第1の原水槽11aに送液し、第1の原水槽11a内に、薬剤添加手段32から次亜塩素酸ナトリウム5mg/Lおよび硫酸を添加した。この水を第1の原水槽11aから第2の原水槽11bに移送し、凝集剤添加手段31から第2の原水槽11bに、凝集剤5として硫酸バンドを酸化アルミ換算で5mg/Lとなるように添加し、フロックを含む原水1(pH6.6)を得た。
得られた原水1は、被処理水用ポンプ23を用いて3m/時間の流量にて第2の原水槽11bからろ過膜13を備えるろ過膜モジュールに向けて被処理水3として送液した。得られた被処理水3中のフロック(不図示)の粒子径をフロック監視手段24で測定したところ、被処理水3中のフロックの平均粒子径は800μmであった。
【0047】
[比較例2]
硫酸バンドを酸化アルミニウム換算で8mg/Lとなるように添加した以外は比較例1と同様にして、被処理水を得た。得られた被処理水中のフロックの平均粒子径は1200μmであった。
【0048】
[比較例3]
凝集剤として硫酸バンドの代わりに塩化鉄を用いた以外は比較例1と同様にして、被処理水を得た。得られた被処理水中のフロックの平均粒子径は1100μmであった。
【0049】
[評価]
各実施例および比較例で得られた被処理水を、連続的にろ過膜(限外ろ過膜)に通過させて膜ろ過工程を行い、処理水4を得た。膜ろ過工程の後、ろ過膜の逆洗浄およびバブリング洗浄を行った。これらの工程を繰り返し行った。これらの工程について以下の方法で評価した。
【0050】
<目詰まり、ろ過効率>
膜ろ過工程におけるろ過膜の目詰まりの発生の有無を目視にて確認した。その結果、各実施例および比較例で目詰まりは発生しなかった。すなわち、実施例1~4では、比較例1~3よりも透過水量を増加でき、効率的にろ過をできることがわかった。
また、ろ過効率を各実施例および比較例で求めたところ、ろ過効率は比較例1~3よりも実施例1~4の方が高いことがわかった。特にろ過効率は、実施例4、実施例2、実施例3、実施例1の順に高くなることがわかった。被処理水に含まれるフロックの平均粒子径を0.1~10μmにすることにより、凝集剤の表面積が増えてSSを取り込みやすくなり、ろ過効率を高くすることができると推定される。なお、ろ過効率とは、下記式1から計算される値のことを言う。
式1: ろ過効率(%)=(ろ過前のフロック数-ろ過後のフロック数)/ろ過前のフロック数×100
【0051】
<差圧の上昇>
さらに、膜ろ過工程の開始から20分間ごとに原水による逆洗浄と、ろ過膜モジュールが備えるバブリング洗浄手段からの空気によるバブリング洗浄を行った。そして、逆洗浄およびバブリング洗浄後に、膜ろ過工程を再開することを、1日間にわたって繰り返した。膜ろ過工程におけるろ過膜の差圧の推移を各実施例および比較例で比較した。
その結果、比較例1~3では逆洗浄およびバブリング洗浄の直後に差圧が回復するものの、膜ろ過工程を繰り返すたびに膜ろ過工程時の差圧(収束値)が徐々に上昇する傾向にあった。
一方、実施例1~4では逆洗浄およびバブリング洗浄後に差圧は回復し、膜ろ過工程を繰り返しても膜ろ過工程時の差圧(収束値)はほとんど上昇しなかった。特に膜ろ過工程を繰り返した場合の膜ろ過工程時の差圧(収束値)の上昇幅は、実施例4、実施例2、実施例3、実施例1の順に少ないことがわかった。
【0052】
以上の実施例および比較例より、本発明によれば、効率的にろ過ができ、かつ、物理洗浄によりろ過膜を効率的に回復できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、逆洗浄およびバブリング洗浄などの物理洗浄によりろ過膜の差圧を回復した後の膜ろ過工程における差圧の上昇を抑制できるため、ろ過膜(例えば限外ろ過膜)の薬品洗浄の頻度を減らすことができる。例えば、通常の1日間あたり1回の次亜塩素酸による薬品洗浄や、3~6ヶ月間あたり1回の酸および/またはアルカリによる薬品洗浄の頻度を、いずれも抑制することができる。そのため、薬品洗浄に伴う薬品コストを削減できる。
【符号の説明】
【0054】
1 原水
2 循環水
3 被処理水
4 処理水
5 凝集剤
6 薬剤
11 原水槽
11a 第1の原水槽
11b 第2の原水槽
12 循環流路
13 ろ過膜
21 原水用ポンプ
22 循環水用ポンプ
23 被処理水用ポンプ
24 フロック監視手段
25 インラインミキサー
26 撹拌手段
31 凝集剤添加手段
32 薬剤添加手段
図1
図2
図3
図4