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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174404
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】隔膜真空計
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/06 20060101AFI20221116BHJP
   G01L 21/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
G01L19/06 Z
G01L21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080179
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 康秀
(72)【発明者】
【氏名】小原 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】市原 純
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA11
2F055BB08
2F055CC02
2F055DD20
2F055EE25
2F055FF38
2F055GG49
(57)【要約】
【課題】自己加熱温度を自動的に切り替える。
【解決手段】隔膜真空計は、被測定媒体の圧力によるダイアフラムの変位に応じて電気特性が変化する受圧部10と、受圧部10を加熱するヒータ5と、受圧部10の温度を計測する温度センサ9と、受圧部10の電気特性の変化を計測圧力値に変換する圧力計測部13と、計測圧力値に応じて加熱温度設定値を設定する温度設定部14と、温度センサ9によって計測された温度と加熱温度設定値とに基づいてヒータ5への供給電力を制御するヒータ制御部16とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定媒体の圧力によるダイアフラムの変位に応じて電気特性が変化するように構成された受圧部と、
前記受圧部を加熱するように構成されたヒータと、
前記受圧部の温度を計測するように構成された温度センサと、
前記受圧部の電気特性の変化を計測圧力値に変換するように構成された圧力計測部と、
前記圧力計測部によって得られた計測圧力値に応じて加熱温度設定値を設定するように構成された温度設定部と、
前記温度センサによって計測された温度と前記加熱温度設定値とに基づいて前記ヒータへの供給電力を制御するように構成されたヒータ制御部とを備えることを特徴とする隔膜真空計。
【請求項2】
請求項1記載の隔膜真空計において、
前記計測圧力値と前記加熱温度設定値とを対応付けて記憶するように構成された記憶部をさらに備え、
前記温度設定部は、前記圧力計測部によって得られた計測圧力値に対応する加熱温度設定値を前記記憶部から取得することを特徴とする隔膜真空計。
【請求項3】
請求項2記載の隔膜真空計において、
前記記憶部は、圧力上昇時自動設定無効化フラグと圧力下降時自動設定無効化フラグとをさらに記憶し、
前記温度設定部は、前記圧力上昇時自動設定無効化フラグがセット状態の場合に、前記計測圧力値の上昇時の前記加熱温度設定値の切り替えを無効とし、前記圧力下降時自動設定無効化フラグがセット状態の場合に、前記計測圧力値の下降時の前記加熱温度設定値の切り替えを無効とすることを特徴とする隔膜真空計。
【請求項4】
請求項2または3記載の隔膜真空計において、
前記記憶部は、前記加熱温度設定値を切り替えるまでの遅延時間をさらに記憶し、
前記温度設定部は、前記加熱温度設定値を切り替える際に、前記遅延時間の経過後に前記加熱温度設定値を切り替えることを特徴とする隔膜真空計。
【請求項5】
請求項4記載の隔膜真空計において、
前記記憶部は、前記遅延時間として、圧力上昇時遅延時間と圧力下降時遅延時間とを記憶し、
前記温度設定部は、前記計測圧力値の上昇時に前記加熱温度設定値を切り替える際に、前記圧力上昇時遅延時間の経過後に前記加熱温度設定値を切り替え、前記計測圧力値の下降時に前記加熱温度設定値を切り替える際に、前記圧力下降時遅延時間の経過後に前記加熱温度設定値を切り替えることを特徴とする隔膜真空計。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の隔膜真空計において、
前記記憶部の記憶内容を外部からの指示に応じて変更可能な設定変更部をさらに備えることを特徴とする隔膜真空計。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の隔膜真空計において、
前記加熱温度設定値を外部に知らせるように構成された通知部をさらに備えることを特徴とする隔膜真空計。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の隔膜真空計において、
前記温度センサによって計測された温度が前記加熱温度設定値に到達したときに、隔膜真空計の自己加熱温度が加熱温度設定値に到達したことを外部に知らせるように構成された通知部をさらに備えることを特徴とする隔膜真空計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隔膜真空計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
隔膜真空計は、半導体のプロセスチャンバーの圧力計測のために使用される。半導体のプロセスガスは、温度が適切でないと、液化または固化して隔膜真空計のセンサ部に付着してしまい計測に影響してしまう。このため、隔膜真空計は、液化または固化したプロセスガスの付着を防止するための自己加熱機能を有している(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
一方で、近年の半導体プロセスは高度化しており、1つのプロセスで様々なガスが使用される。プロセスガスにより適切な自己加熱温度が異なっている場合があるので、特許文献2、特許文献3に開示された隔膜真空計のように自己加熱温度を切り替える機能を有する隔膜真空計もある。さらに、隔膜真空計を使用していない時は、消費電力を低減させるために自己加熱機能をオフにする機能を備えているものもある。
【0004】
しかしながら、従来の隔膜真空計では、自己加熱温度を切り替えるために、外部から切替信号を隔膜真空計に入力しなければならないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-117154号公報
【特許文献2】特開2009-243887号公報
【特許文献3】特開2019-7906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、自己加熱温度を自動的に切り替えることができる隔膜真空計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の隔膜真空計は、被測定媒体の圧力によるダイアフラムの変位に応じて電気特性が変化するように構成された受圧部と、前記受圧部を加熱するように構成されたヒータと、前記受圧部の温度を計測するように構成された温度センサと、前記受圧部の電気特性の変化を計測圧力値に変換するように構成された圧力計測部と、前記圧力計測部によって得られた計測圧力値に応じて加熱温度設定値を設定するように構成された温度設定部と、前記温度センサによって計測された温度と前記加熱温度設定値とに基づいて前記ヒータへの供給電力を制御するように構成されたヒータ制御部とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の隔膜真空計の1構成例は、前記計測圧力値と前記加熱温度設定値とを対応付けて記憶するように構成された記憶部をさらに備え、前記温度設定部は、前記圧力計測部によって得られた計測圧力値に対応する加熱温度設定値を前記記憶部から取得することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の隔膜真空計の1構成例において、前記記憶部は、圧力上昇時自動設定無効化フラグと圧力下降時自動設定無効化フラグとをさらに記憶し、前記温度設定部は、前記圧力上昇時自動設定無効化フラグがセット状態の場合に、前記計測圧力値の上昇時の前記加熱温度設定値の切り替えを無効とし、前記圧力下降時自動設定無効化フラグがセット状態の場合に、前記計測圧力値の下降時の前記加熱温度設定値の切り替えを無効とすることを特徴とするものである。
また、本発明の隔膜真空計の1構成例において、前記記憶部は、前記加熱温度設定値を切り替えるまでの遅延時間をさらに記憶し、前記温度設定部は、前記加熱温度設定値を切り替える際に、前記遅延時間の経過後に前記加熱温度設定値を切り替えることを特徴とするものである。
また、本発明の隔膜真空計の1構成例において、前記記憶部は、前記遅延時間として、圧力上昇時遅延時間と圧力下降時遅延時間とを記憶し、前記温度設定部は、前記計測圧力値の上昇時に前記加熱温度設定値を切り替える際に、前記圧力上昇時遅延時間の経過後に前記加熱温度設定値を切り替え、前記計測圧力値の下降時に前記加熱温度設定値を切り替える際に、前記圧力下降時遅延時間の経過後に前記加熱温度設定値を切り替えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の隔膜真空計の1構成例は、前記記憶部の記憶内容を外部からの指示に応じて変更可能な設定変更部をさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明の隔膜真空計の1構成例は、前記加熱温度設定値を外部に知らせるように構成された通知部をさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明の隔膜真空計の1構成例は、前記温度センサによって計測された温度が前記加熱温度設定値に到達したときに、隔膜真空計の自己加熱温度が加熱温度設定値に到達したことを外部に知らせるように構成された通知部をさらに備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、計測圧力値に応じて加熱温度設定値を設定する温度設定部を設けることにより、隔膜真空計の自己加熱温度を自動的に切り替えることができ、自己加熱温度の切り替えのための外部からの信号が不要となるので、自己加熱温度の切替信号発生のためのハードウェアの製作が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施例に係る隔膜真空計の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施例に係る隔膜真空計のセンサチップの要部の構成を示す図である。
図3図3は、本発明の実施例に係る隔膜真空計の動作を説明するフローチャートである。
図4図4は、本発明の実施例に係る隔膜真空計の記憶部に記憶されるパラメータの1例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施例に係る隔膜真空計の自己加熱温度の切り替え動作の1例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施例に係る隔膜真空計の回路部を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例に係る隔膜真空計の構成を示すブロック図、図2は隔膜真空計に用いられるセンサチップの要部の構成を示す図である。
【0013】
隔膜真空計は、被測定媒体(例えばプロセスガス)の圧力によるダイアフラム(隔膜)の変位に応じて静電容量(電気特性)が変化する受圧部10と、受圧部10の静電容量の変化を計測圧力値に変換する回路部11とを備えている。
【0014】
受圧部10のセンサチップ1は、ダイアフラム構成部材100と台座101とを備えている。ダイアフラム構成部材100は、被測定媒体(例えばプロセスガス)の圧力Pに応じて変形可能に構成されたダイアフラム102と、このダイアフラム102よりも肉厚に形成されてダイアフラム102の周縁部を変位不能に支持するダイアフラム支持部103とを備える。台座101は、ダイアフラム支持部103に接合され、ダイアフラム102と共に基準真空室104を形成する。
【0015】
センサチップ1において、台座101の基準真空室104側の面には固定電極105が形成され、ダイアフラム102の基準真空室104側の面には固定電極105と対向するように可動電極106が形成されている。ダイアフラム102が被測定媒体の圧力Pを受けて撓むと、可動電極106と固定電極105との間の間隔が変化し、可動電極106と固定電極105との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化からダイアフラム102が受けた被測定媒体の圧力Pを検出することができる。ダイアフラム構成部材100と台座101とは、例えばサファイアなどの絶縁体から構成されている。
【0016】
図1に示した隔膜真空計は、このように構成されたセンサチップ1と、センサチップ1を収容したハウジング2と、センサチップ1のダイアフラム102に被測定媒体の圧力Pを導く圧力導入管3と、ハウジング2を覆うセンサケース4と、センサケース4の外周面を取り囲むようにして設けられたヒータ5とを備えている。ヒータ5が設けられたセンサケース4は、断熱材6によって覆われている。
【0017】
ハウジング2の内部には隔壁7が設けられている。隔壁7は、台座板7aと支持板7bとから構成されており、ハウジング2の内部空間を第1の空間2aと第2の空間2bとに分離する。支持板7bは、外周がハウジング2に固定されており、台座板7aをハウジング2の内部空間内に浮上させた状態で支持する。台座板7aの第2の空間2b側にセンサチップ1が固定されている。また、台座板7aには、第1の空間2a内の圧力をセンサチップ1のダイアフラム102に導く圧力導入孔7cが形成されている。第2の空間2bは、センサチップ1の基準真空室104と連通しており、真空状態とされている。
【0018】
圧力導入管3は、ハウジング2の第1の空間2a側に接続されている。圧力導入管3とハウジング2との間にはバッフル8が設けられている。圧力導入管3より導入される被測定媒体は、バッフル8の板面に当たり、バッフル8の周囲の隙間を通して、ハウジング2の第1の空間2a内に流入する。
ハウジング2の外壁面には温度センサ9が設けられている。温度センサ9は、受圧部10の温度としてハウジング2の温度を計測する。
【0019】
隔膜真空計の回路部11は、容量検出部12と、圧力計測部13と、温度設定部14と、記憶部15と、ヒータ制御部16と、通知部17と、設定変更部18とから構成される。
【0020】
次に、本実施例の動作について説明する。図3は本実施例の隔膜真空計の動作を説明するフローチャートである。
容量検出部12は、受圧部10のダイアフラム102の変位による可動電極106と固定電極105との間の静電容量(電気特性)の変化を検出する(図3ステップS100)。
【0021】
圧力計測部13は、容量検出部12によって検出された静電容量の変化を計測圧力値MPに変換して出力する(図3ステップS101)。
温度設定部14は、圧力計測部13によって得られた計測圧力値MPに応じて加熱温度設定値tspを設定する(図3ステップS102)。
【0022】
記憶部15は、計測圧力値MPと加熱温度設定値tspとを対応付けて記憶している。温度設定部14は、計測圧力値MPに対応する加熱温度設定値tspを記憶部15から取得する。計測圧力値MPとこれに対応する加熱温度設定値tspとの組からなるパラメータは、隔膜真空計の外部からユーザーにより自由に変更することが可能である。
【0023】
温度検出部19は、温度センサ9によって計測された温度tpvの値を取得する。ヒータ制御部16は、温度センサ9によって計測された温度tpvが加熱温度設定値tspと一致するようにヒータ5への供給電力を制御する(図3ステップS103)。
通知部17は、現在の加熱温度設定値tspを表示することにより、隔膜真空計の加熱温度設定値tspを外部へ、即ちユーザーに知らせる(図3ステップS104)。
【0024】
また、通知部17は、温度センサ9によって計測された温度tpvが加熱温度設定値tspに到達したときに(図3ステップS105においてYES)、例えば自己加熱温度が加熱温度設定値tspに到達した旨のメッセージの表示またはLED等の点灯により、隔膜真空計の自己加熱温度が加熱温度設定値tspに到達したことをユーザーに知らせる(図3ステップS106)。
【0025】
隔膜真空計は、外部からの指示、例えばユーザーの指示によって圧力計測動作が終了するまで(図3ステップS107においてYES)、ステップS100~S106の処理を一定時間毎に行う。
【0026】
こうして、本実施例では、隔膜真空計の自己加熱温度を自動的に切り替えることができ、自己加熱温度の切り替えのための外部からの信号が不要となる。
【0027】
なお、温度設定部14は、計測圧力値MPがある範囲を超えたことにより、加熱温度設定値tspを切り替えるときに、加熱温度設定値tspを切り替えるまでの遅延時間を設けて、加熱温度設定値tspが直ぐに切り替わらないようにしてもよい。この遅延時間についてもパラメータとして記憶部15に予め登録しておくことができる。
【0028】
遅延時間は、計測圧力値MPの上昇時には無効であるが、計測圧力値MPの下降時のみ有効になるようにしてもよい。すなわち、遅延時間としては、圧力上昇時遅延時間と圧力下降時遅延時間とがある。
温度設定部14は、圧力上昇時遅延時間が設定されている場合、計測圧力値MPの上昇時に加熱温度設定値tspを切り替える際に、圧力上昇時遅延時間の経過後に加熱温度設定値tspを切り替える。また、温度設定部14は、圧力下降時遅延時間が設定されている場合、計測圧力値MPの下降時に加熱温度設定値tspを切り替える際に、圧力下降時遅延時間の経過後に加熱温度設定値tspを切り替える。
【0029】
また、記憶部15には、計測圧力値MPの上昇時の加熱温度設定値tspの自動設定の無効化化フラグ、計測圧力値MPの下降時の加熱温度設定値tspの自動設定の無効化フラグをパラメータとして記憶部15に予め登録しておくことができる。
温度設定部14は、圧力上昇時自動設定無効化フラグがセット状態の場合に、計測圧力値MPの上昇時の加熱温度設定値tspの切り替えを無効とする。また、温度設定部14は、圧力下降時自動設定無効化フラグがセット状態の場合に、計測圧力値MPの下降時の加熱温度設定値tspの切り替えを無効とする。
【0030】
設定変更部18は、以上の記憶部15に記憶されるパラメータを、外部から、即ちユーザーからの指示に応じて変更することが可能である。
【0031】
図4は記憶部15に記憶されるパラメータの1例を示す図、図5は自己加熱温度の切り替え動作の1例を示す図である。
図4に示すように、記憶部15には、計測圧力値MPの範囲と、加熱温度設定値tspと、圧力上昇時遅延時間と、圧力下降時遅延時間と、圧力上昇時自動設定無効化フラグと、圧力下降時自動設定無効化フラグとがパラメータとして記憶される。
【0032】
図4の例では、圧力上昇時遅延時間が設定されていないので、計測圧力値MPの上昇時に加熱温度設定値tspを切り替える際には即時に切り替えが行われる。一方、圧力下降時遅延時間Tdownが設定されているので、計測圧力値MPの下降時に加熱温度設定値tspを切り替える際には、Tdownだけ待ってから切り替えが行われる。圧力上昇時自動設定無効化フラグと圧力下降時自動設定無効化フラグは、いずれも「RESET」となっているので、計測圧力値MPの上昇時および下降時のいずれにおいても加熱温度設定値tspが自動的に設定される。自動設定を無効化するためには、無効化フラグを「SET」とすればよい。
【0033】
また、MP<SP1、SP3≦MPの範囲では、加熱温度設定値tspが「OFF」となっている。「OFF」の場合、ヒータ制御部16は、ヒータ5に電力を供給しない。
なお、図5の状態遷移を分かり易くするため、図4にプロセス状態を記載しているが、図4のプロセス状態は記憶部15に記憶されるパラメータではない。
【0034】
次に、図4の設定に基づく自己加熱温度の切り替え動作を図5を用いて説明する。図5の例は、本実施例の隔膜真空計を半導体のプロセスチャンバーの圧力計測のために使用した例を示している。
まず、真空状態のプロセスチャンバー内にN2等の不活性ガスが導入され、計測圧力値MPが上昇する。温度設定部14は、計測圧力値MPが設定値SP1未満の状態では、加熱温度設定値tspを「OFF」とする。したがって、ヒータ制御部16は、ヒータ5に電力を供給しない。
【0035】
温度設定部14は、計測圧力値MPがさらに上昇して設定値SP1以上になると、加熱温度設定値tspを200℃とする。ここで圧力上昇時遅延時間が設定されていないので、加熱温度設定値tspの切り替えは即時に行われる。そしてヒータ制御部16は、温度センサ9によって計測された温度tpvと加熱温度設定値tsp=200℃とが一致するようにヒータ5への供給電力を制御する。
【0036】
次に、プロセスチャンバー内にプロセスガスAが導入される。プロセスガスAによる成膜処理が行われた後に、プロセスチャンバー内にN2等の不活性ガスが導入され、計測圧力値MPがさらに上昇する。温度設定部14は、計測圧力値MPが設定値SP2(SP1<SP2)以上になると、加熱温度設定値tspを50℃とする。上記と同様に、圧力上昇時遅延時間が設定されていないので、加熱温度設定値tspの切り替えは即時に行われる。そしてヒータ制御部16は、温度センサ9によって計測された温度tpvと加熱温度設定値tsp=50℃とが一致するようにヒータ5への供給電力を制御する。
【0037】
続いて、プロセスチャンバー内にプロセスガスBが導入される。プロセスガスBによる成膜処理が行われた後に、プロセスチャンバー内にN2等の不活性ガスが導入され、計測圧力値MPがさらに上昇する。温度設定部14は、計測圧力値MPが設定値SP3(SP2<SP3)以上になると、加熱温度設定値tspを「OFF」とする。上記と同様に、圧力上昇時遅延時間が設定されていないので、加熱温度設定値tspの切り替えは即時に行われる。そしてヒータ制御部16は、加熱温度設定値tspが「OFF」となったことにより、ヒータ5に電力を供給しない。
【0038】
次に、プロセスチャンバーの真空引きが開始され、計測圧力値MPが下降する。このとき、圧力下降時遅延時間Tdownが設定されているので、加熱温度設定値tspは「OFF」のままである。つまり、計測圧力値MPが設定値SP3未満となったときに加熱温度設定値tsp=50℃への切り替えが行われる筈であるが、圧力下降時遅延時間Tdownが経過する前に計測圧力値MPが設定値SP2未満となる。計測圧力値MPが設定値SP2未満となったときには加熱温度設定値tsp=200℃への切り替えが行われる筈であるが、圧力下降時遅延時間Tdownが経過する前に計測圧力値MPが設定値SP1未満となる。したがって、いずれの場合においても加熱温度設定値tspの切り替えは行われない。
【0039】
こうして、本実施例では、プロセスガスに合わせた最適な加熱温度設定値tspを設定することができる。また、自己加熱が不要なときにはヒータ5への電力供給を停止することにより、消費電力を低減することができる。
【0040】
なお、本実施例では、ダイアフラムの変位に応じて静電容量が変化する静電容量方式の隔膜真空計について説明したが、これに限るものではなく、他の方式の隔膜真空計に本発明を適用してもよい。他の方式の隔膜真空計の例としては、例えば拡散抵抗体を形成した半導体シリコンをダイアフラムとして用い、ダイアフラムの変位に応じた抵抗体の抵抗変化を計測圧力値に変換するピエゾ抵抗方式の隔膜真空計がある。
【0041】
本実施例で説明した回路部11は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図6に示す。
【0042】
コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インタフェース装置(I/F)202とを備えている。I/F202には、容量検出部12のハードウェア部とヒータ制御部16のハードウェア部と通知部17のハードウェア部と設定変更部18のハードウェア部などが接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、隔膜真空計に適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…センサチップ、5…ヒータ、9…温度センサ、10…受圧部、11…回路部、12…容量検出部、13…圧力計測部、14…温度設定部、15…記憶部、16…ヒータ制御部、17…通知部、18…設定変更部、19…温度検出部、102…ダイアフラム、105…固定電極、106…可動電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6