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特開2022-174413電気光学パネルの温度検出方法、表示装置、及び電気光学装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174413
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】電気光学パネルの温度検出方法、表示装置、及び電気光学装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/01 20060101AFI20221116BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20221116BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20221116BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20221116BHJP
   G03B 21/16 20060101ALI20221116BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20221116BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20221116BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20221116BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
G01K7/01 C
G02F1/133 580
G02F1/13 505
G09F9/00 304Z
G09F9/00 304B
G03B21/16
G09F9/30 349Z
G03B21/14 Z
G03B21/00 E
H04N5/74 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080196
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 成也
【テーマコード(参考)】
2F056
2H088
2H193
2K203
5C058
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2F056JT06
2F056JT08
2H088EA14
2H088EA15
2H088EA68
2H088HA05
2H088HA06
2H088HA08
2H088HA13
2H088HA24
2H088HA28
2H193ZA04
2H193ZG02
2H193ZG16
2H193ZH18
2H193ZH34
2H193ZH69
2H193ZH74
2H193ZR04
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA43
2K203FA62
2K203GB26
2K203HA79
2K203LA03
2K203LA22
2K203LA47
2K203LA56
2K203MA12
5C058BA35
5C058EA02
5C058EA11
5C058EA26
5C058EA52
5C094AA34
5C094BA03
5C094BA43
5C094CA19
5C094DB02
5C094FB14
5C094HA05
5C094HA08
5C094JA04
5G435AA12
5G435BB12
5G435CC09
5G435EE47
5G435EE49
5G435GG44
5G435HH13
5G435HH20
5G435LL07
5G435LL08
5G435LL12
5G435LL14
5G435LL15
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上させることが可能な電気光学パネルの温度検出方法、表示装置、及び電気光学装置を提供する。
【解決手段】液晶パネルの温度検出方法であって、液晶パネルには、少なくともポリシリコンを用いて形成されたダイオードを有する温度検出素子が配置されており、温度検出素子に検出電流I3を流す工程と、検出電流I3に応じた温度検出素子の順方向電圧を計測する工程と、を含み、検出電流I3は、定電流I1に、定電流I1よりも大きいパルス状電流を間欠的に重畳させた電流である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学パネルの温度検出方法であって、
前記電気光学パネルには、半導体層を用いて形成されたダイオードを有する温度検出素子が配置されており、
前記温度検出素子に検出電流を流す工程と、
前記検出電流に応じた前記温度検出素子の順方向電圧を計測する工程と、
を含み、
前記検出電流は、所定の定電流に、前記所定の定電流よりも大きいパルス状電流を間欠的に重畳させた電流である、電気光学パネルの温度検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学パネルの温度検出方法であって、
前記計測する工程は、前記温度検出素子に前記パルス状電流を流したタイミングに計測する、電気光学パネルの温度検出方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電気光学パネルの温度検出方法であって、
前記パルス状電流は、1段目よりも2段目の電流値が大きくなる、少なくとも2段階の階段状のパルス電流である、電気光学パネルの温度検出方法。
【請求項4】
請求項3に記載の電気光学パネルの温度検出方法であって、
前記1段目の電流値は、前記2段目の電流値の略半分の電流値である、電気光学パネルの温度検出方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の電気光学パネルの温度検出方法であって、
前記所定の定電流は、100nA以下である、電気光学パネルの温度検出方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の電気光学パネルの温度検出方法であって、
前記半導体層は、ポリシリコンである、電気光学パネルの温度検出方法。
【請求項7】
電気光学パネルと、
前記電気光学パネルに半導体層を用いて形成されたダイオードを有する温度検出素子と、
前記温度検出素子に流す検出電流を制御する電流制御部と、
前記検出電流に応じた前記温度検出素子の順方向電圧を計測する温度算出部と、
を備え、
前記検出電流は、所定の定電流に、前記所定の定電流よりも大きいパルス状電流を間欠的に重畳させた電流である、表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表示装置であって、
前記電気光学パネルによって生成された透過像をシフトさせるシフトデバイスと、
前記電気光学パネルを冷却する冷却ファンと、を備える、表示装置。
【請求項9】
電気光学パネルと、
前記電気光学パネルに半導体層を用いて形成されたダイオードを有する温度検出素子と、
前記温度検出素子に検出電流を制御する電流制御部と、
前記検出電流に応じた前記温度検出素子の順方向電圧を計測する温度算出部と、
を備え、
前記検出電流は、所定の定電流に、前記所定の定電流よりも大きいパルス状電流を間欠的に重畳させた電流である、電気光学装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気光学装置であって、
前記電流制御部は、前記電気光学パネルと電気的に接続されたフレキシブル基板に設けられている、電気光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学パネルの温度検出方法、表示装置、及び電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学パネルとして、例えば、プロジェクターなどに用いられる液晶パネルの温度を検出する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、温度検出素子として用いられるダイオードに対して温度を検出することが可能な電流値の定電流を流し、ダイオードに定電流が流れている際に、ダイオードの順方向電圧からダイオードの温度を導出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-187102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、温度検出素子としてのダイオードに所定の電流値の定電流を流し続けるとダイオードの特性が変動し、正確な温度が検出できない場合がある。特に、ダイオードの構造や形成材質によって、特性が大きく変動しやすい。一方、電流値を小さくすると、パネル駆動信号に起因するノイズにより、正確な温度が検出できなくなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電気光学パネルの温度検出方法は、前記電気光学パネルには、ダイオードを有する温度検出素子が配置されており、前記温度検出素子に検出電流を流す工程と、前記検出電流に応じた前記温度検出素子の順方向電圧を計測する工程と、を含み、前記検出電流は、所定の定電流にパルス状電流を間欠的に重畳させた電流である。
【0006】
表示装置は、電気光学パネルと、電気光学パネルに半導体層を用いて形成されたダイオードを有する温度検出素子と、温度検出素子に流す検出電流を制御する電流制御部と、検出電流に応じた温度検出素子の順方向電圧を計測する温度算出部と、を備え、検出電流は、所定の定電流に、前記所定の定電流よりも大きいパルス状電流を間欠的に重畳させた電流である。
【0007】
電気光学装置は、電気光学パネルと、電気光学パネルに半導体層を用いて形成されたダイオードを有する温度検出素子と、温度検出素子に検出電流を制御する電流制御部と、検出電流に応じた温度検出素子の順方向電圧を計測する温度算出部と、を備え、検出電流は、所定の定電流に、前記所定の定電流よりも大きいパルス状電流を間欠的に重畳させた電流である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】表示装置としてのプロジェクターの構成を示す概略図。
図2】電気光学装置としての液晶装置の構成を示す斜視図。
図3】液晶装置の構成を示す平面図。
図4】温度検出素子を含む定電流回路の電気的な構成を示す回路図。
図5】ダイオードの温度特性を示すグラフ。
図6】ダイオードにおける通電時間と電圧シフト量との関係を示すグラフ。
図7】温度検出方法の概略を示す図。
図8】第1実施形態の温度検出方法を示すタイミングチャート。
図9】ダイオードに電流を流したときの電流波形を示す図。
図10】第2実施形態の温度検出方法を示すタイミングチャート。
図11】第3実施形態の温度検出方法を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の各図においては、互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸、及びZ軸として説明する。X軸に沿う方向を「X方向」、Y軸に沿う方向を「Y方向」、Z軸に沿う方向を「Z方向」とし、矢印の方向が+方向であり、+方向と反対の方向を-方向とする。なお、+Z方向を「上」又は「上方」、-Z方向を「下」又は「下方」ということもあり、+Z方向から見ることを平面視あるいは平面的ともいう。また、Z方向+側の面を上面、これと反対側となるZ方向-側の面を下面として説明する。
【0010】
さらに、以下の説明において、例えば基板に対して、「基板上に」との記載は、基板の上に接して配置される場合、基板の上に他の構造物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接して配置され、一部が他の構造物を介して配置される場合のいずれかを表すものとする。
【0011】
まず、図1を参照しながら、表示装置としてのプロジェクター1000の構成を説明する。
【0012】
図1に示すように、プロジェクター1000は、電気光学パネルとしての液晶パネル100Rと、液晶パネル100Gと、液晶パネル100Bとを含む。また、プロジェクター1000には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット2102が設けられている。このランプユニット2102から出射された投射光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によって、赤(R)、緑(G)および青(B)の3原色に分離される。このうち、Rの光は液晶パネル100Rに、Gの光は液晶パネル100Gに、Bの光は液晶パネル100Bに、それぞれ入射する。
【0013】
なお、Bの光路は、他の赤や緑と比較して長い。したがって、Bの光は、光路での損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123、及び出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して液晶パネル100Bに導かれる。
【0014】
液晶パネル100Rは、マトリクス状に配列する画素回路を有し、Rに対応するデータ信号に基づいて、上記画素回路の液晶素子を透過した光、即ち、液晶素子による変調光によってRの透過像を生成する。同様に、液晶パネル100Gは、Gに対応するデータ信号に基づいてGの透過像を生成する。液晶パネル100Bは、Bに対応するデータ信号に基づいてBの透過像を生成する。
【0015】
液晶パネル100R,100G,100Bによってそれぞれ生成された各色の透過像は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、RおよびBの光は90度に屈折する一方、Gの光は直進する。したがって、各色の画像が合成された後、シフトデバイス2300を介して投射レンズ2114に入射する。シフトデバイス2300は、ダイクロイックプリズム2112からの出射方向の光軸をシフトさせる。投射レンズ2114は、シフトデバイス2300を介した合成像を、スクリーン2120に拡大して投射する。シフトデバイス2300は、映像フレームに同期して光軸をシフトさせるので情報量を高めた映像表示を実現する。この場合、映像フレーム数を増加させる必要がある。この際に液晶応答が問題になるので、液晶応答の影響を抑制するために液晶パネル100R,100G,100Bの温度管理が重要となる。
【0016】
プロジェクター1000は、制御部60と、冷却ファン41と、を備えている。
【0017】
制御部60は、電流制御部61と、温度算出部62と、処理部63と、管理温度値格納部65と、管理温度比較部66と、冷却ファン制御部67と、を備えている。電流制御部61、温度算出部62、管理温度値格納部65、管理温度比較部66、および冷却ファン制御部67は、電子回路によって実現されるが、処理部63に含めてもよい。
【0018】
電流制御部61は、液晶パネル100に形成された温度検出素子110に流す電流の電流値を制御する。後述するように、制御する電流値は、例えば、定電流I1、定電流I2、検出電流I3の3種類の電流値を制御する。所定の定電流I1は、例えば、100nA以下である。検出電流I3は、温度検出素子110を構成するダイオードにより順方向電圧VFを検出可能な電流である。定電流I2は、検出電流I3の電流値の略半分の電流値である。
【0019】
温度算出部62は、温度検出素子110によって得られた順方向電圧VFから温度を算出する。具体的には、後述するように、順方向電圧VFと温度との関係が紐づけされたデータに基づいて温度検出素子110の温度を算出する。
【0020】
処理部63は、コンピュータープログラムとしての制御プログラムを実行することにより、種々の処理を行うプロセッサーを含む。処理部63は、図示しない記憶部を有し、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等のメモリーを備えて構成される。RAMは、各種データ等の一時記憶に用いられ、ROMは、温度検出素子110に流す電流値を制御するための制御プログラムや制御データ等を記憶する。
【0021】
管理温度値格納部65は、液晶パネル100に配置された温度検出素子110における上限の温度値データが格納されている。
【0022】
管理温度比較部66は、温度検出素子110の温度と、管理温度値格納部65に格納された管理温度値データと、を比較する。管理温度比較部66は、温度検出素子110が管理温度値の上限を超えないように冷却ファン制御部67による制御を決定する。冷却ファン制御部67は、例えば、PWM(パルス幅変調)動作によって実効駆動電圧を調整し、冷却ファン41の風量を制御する。即ち、液晶パネル100の温度を、適正な温度になるように冷却し、液晶応答の変化を抑制する。
【0023】
なお、液晶パネル100R,100Bによる透過像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射される。液晶パネル100Gによる透過像は、直進して投射される。したがって、液晶パネル100R,100Bによる各透過像は、液晶パネル100Gの透過像に対して左右反転した関係となる。
【0024】
次に、図2を参照しながら、電気光学装置としての液晶装置500の構成を説明する。
【0025】
以降の実施形態では、画素ごとに薄膜トランジスター(Thin Film Transistor)を備えたアクティブ駆動型の液晶装置500を例に挙げて説明する。この液晶装置500は、例えば、プロジェクター1000の光変調手段(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
【0026】
図2に示すように、液晶装置500は、電気光学パネルとしての液晶パネル100とフレキシブル基板200を含む。液晶パネル100は、互いに対向配置された素子基板10及び対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層(図示せず)と、を有する。
【0027】
素子基板10は、対向基板20よりも一回り大きい。素子基板10と対向基板20とは、対向基板20の外縁部に沿って額縁状に配置されたシール材(図示せず)を介して貼り合わされ、その隙間に正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて、液晶層が構成されている。
【0028】
素子基板10の張り出し部10aには、フレキシブル基板200が電気的に接続されている。フレキシブル基板200は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)などの可撓性基板である。なお、フレキシブル基板200には、例えば、駆動IC210が実装されている。
【0029】
次に、図3図5を参照しながら、液晶パネル100の温度を検出するため、液晶パネル100に内蔵された温度検出素子110について説明する。
【0030】
図3に示すように、温度検出素子110は、液晶パネル100の表示領域Eの外側、例えば、非表示領域E1の外側(紙面左下)に配置されている。
【0031】
本実施形態では、温度検出素子110は、画素ごとに形成される薄膜トランジスターと同様に、半導体層としてポリシリコンを用いて形成される。図4に示すように、温度検出素子110は、温度変化の感度を高めるために、直列に接続された複数のダイオードを備えている。また、温度検出素子110には、ポリシリコンを用いて形成された静電気保護回路111が接続されている。
【0032】
温度検出素子110の両端には、各端子112,113から延在する配線が電気的に接続されている。一方の端子112から順方向の定電流を供給すると、温度検出素子110に電流が流れる。定電流は、例えば、フレキシブル基板200に配置された駆動IC210を経由して、所定の電流値の電流が供給される。また、温度検出素子110により、順方向電圧VFが検出される。
【0033】
図5は、温度検出素子110の温度特性の一例を示す。図5において、温度検出素子110の温度特性は、横軸に温度検出素子110の温度を示しており、縦軸に温度検出素子110の順方向電圧VFを示している。
【0034】
温度検出素子110を構成するダイオードの順方向電圧VFは、実線で示すように、温度によって略直線的に変化する。従って、2つの端子112,113間の電圧が温度によって変化するので、2つの端子112,113間の電圧を検出すれば、温度を求めることができる。
【0035】
図6は、温度検出素子110に流す電流の通電時間と順方向電圧VFシフト量との関係の一例である。
【0036】
図6に示すグラフは、横軸に通電時間(H)を示し、縦軸に順方向電圧VFシフト量(mV)を示し、温度検出素子110に流す電流を、600nA、1.2μA、3μA、6μAとした場合の比較を示している。
【0037】
温度検出素子110に流す電流は、通電時間が長くなるに従って、順方向電圧VFのシフト量が大きくなる。また、温度検出素子110に流す電流値が大きくなるに従って、順方向電圧VFのシフト量も大きくなる。つまり、温度検出素子110に、一定の高い電流を流し続け、トータルの電流量が大きくなると、順方向電圧VFの変動も大きくなり、温度検出素子110、即ち、液晶パネル100の温度が正確に求められなくなる。よって、温度検出素子110に流すトータルの電流量を小さくすることが望ましい。
【0038】
図7は、半導体層を用いて形成されたダイオードを有する温度検出素子が配置された液晶パネル100の温度検出方法であり、温度検出素子に検出電流を流す工程と、検出電流に応じた前記温度検出素子の順方向電圧を計測する工程と、が実行される。次に、図8を参照しながら、第1実施形態の液晶パネル100の温度検出方法について説明する。
【0039】
図8に示すタイミングチャートは、温度検出素子110に電流を流すタイミングを示しており、横軸に時間を示し、縦軸に電流値を示している。電流値は、縦軸の上側に行くに従って大きな電流値となっている。
【0040】
まず、図8に示すように、温度検出(計測)を行わないとき、温度検出素子110には、例えば、所定の定電流としての100nA以下の定電流I1が流れている。
【0041】
次に、時間t1では、温度検出素子110に検出電流I3を流すために、電流制御部61は、温度検出素子110に流れる電流値を制御する。ここで、検出電流I3とは、温度検出素子110を構成するダイオードが温度を検出可能な定電流のことをいう。また、検出電流I3とは、定電流I1に、定電流I1よりも大きいパルス状電流を間欠的に重畳させた電流をいう。また、パルス状電流とは、1段目(定電流I1)よりも2段目(検出電流I3)の電流値が大きくなる、少なくとも2段階の階段状のパルス電流のことをいう。
【0042】
次に、時間t2では、温度検出素子110の温度を検出する。具体的には、温度検出素子110に流れる電流値が検出電流I3に達しているので、このタイミングで、温度算出部62により、温度検出素子110の温度を計測(算出)する。
【0043】
次に、時間t3では、温度検出素子110の温度計測を時間t2において実施したため、電流制御部61は、電流値を検出電流I3から定電流I1に切り替える。
【0044】
次に、時間t4、時間t5、時間t6において、上記した時間t1、時間t2、時間t3と同様に電流値を切り替え、温度検出素子110の温度を計測する。なお、計測する間隔、具体的には、時間t2から時間t5の時間は、例えば、1秒である。つまり、1秒間隔で温度計測を行う。
【0045】
このような温度検出方法を行うことにより、従来のように、温度検出素子110に検出電流I3を流し続けている場合と比較して、温度検出素子110に流すトータルの電流量を、少なくすることができる。よって、温度検出素子110を構成するダイオードの特性変化を抑えることが可能となり、正確な温度を計測することができる。更に、温度を計測するときには、定電流I1から検出電流I3に切り替えるので、ノイズによる影響を抑えることができる。
【0046】
次に、温度算出部62によって算出された温度と、管理温度値格納部65に格納されている管理温度値データとを、管理温度比較部66によって比較する。冷却ファン制御部67は、液晶パネル100が適正な温度になるように、冷却ファン41の動作を制御する。
【0047】
次に、図9を参照しながら、温度検出素子110に流れる実際の電流値の波形について具体的に説明する。
【0048】
図9に示すように、時間t1において、電流制御部61は、温度検出素子110に流れる電流値が検出電流I3になるように制御する。なお、温度検出素子110は、ノイズ対策として、定電流の出力ラインに図示しないキャパシタが接続されている。このため、単純に定電流をON/OFFした場合は、図9に示すような波形となり、キャパシタの充放電時間を考慮する必要がでてくる。
【0049】
つまり、異なる2つの定電流を切り替えると、電流値の切り替えが素早く追従してくれない。具体的には、図9に示すように、電流値を変化させたときの立ち上がりと立ち下がりがなまってしまう。よって、温度を計測するタイミングは、検出電流I3が安定する、なるべく時間t3に近い方が好ましい。なお、充放電にかかる時間は、例えば、0.02秒~0.1秒程度である。
【0050】
以上述べたように、本実施形態の液晶パネル100の温度検出方法は、液晶パネル100には、ポリシリコンを用いて形成されたダイオードを有する温度検出素子110が配置されており、温度検出素子110に検出電流I3を流す工程と、検出電流I3に応じた温度検出素子110の順方向電圧VFを計測する工程と、を含み、検出電流I3は、定電流I1に、定電流I1よりも大きいパルス状電流を間欠的に重畳させた電流である。
【0051】
この方法によれば、定電流I1を小さく設定することにより、順方向電圧VFの特性変化を抑制することが可能となり、さらに、温度検出時には、間欠的に温度検出に必要な電流がパルス状電流として流れるため、ノイズによる影響を低減することができる。特に、特性が大きく変動しやすいポリシリコンによるダイオードを温度検出素子110として用いた場合でも、正確な温度を検出することができる。
【0052】
また、液晶パネル100の温度検出方法において、計測する工程は、温度検出素子110にパルス状電流を流したタイミングに計測することが好ましい。この方法によれば、パルス状電流が定電流I1よりも大きいので、ノイズによる影響を抑えながら、温度を検出することができる。
【0053】
また、液晶パネル100の温度検出方法において、定電流I1は、100nA以下であることが好ましい。この方法によれば、定電流I1が100nA以下なので、温度検出にかかるトータルの電流量を抑えることが可能となり、ダイオードの特性が変動することを抑えることができる。
【0054】
また、本実施形態の液晶装置500は、上記に記載の液晶パネル100の温度検出方法を用いており、液晶パネル100と電気的に接続されたフレキシブル基板200を有し、フレキシブル基板200には、温度検出素子110に流す電流の電流値を制御する駆動IC210が設けられている。この構成によれば、ノイズによる影響を抑えながら正確な温度を検出することが可能な液晶装置500を提供することができる。
【0055】
また、本実施形態のプロジェクター1000は、液晶ライトバルブとして、上記の液晶装置500が用いられているので、信頼性の高いプロジェクター1000を提供することができる。
【0056】
次に、図10を参照しながら、第2実施形態の液晶パネル100の温度検出方法について説明する。
【0057】
図10に示すように、第2実施形態の液晶パネル100の温度検出方法は、定電流I2と検出電流I3を用いて温度の計測を行っている部分が、第1実施形態の液晶パネルの温度検出方法と異なっている。その他の構成については概ね同様である。このため第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
【0058】
第2実施形態の液晶パネル100の温度検出方法は、図10に示すように、まず、温度の計測を行わない時間t0では、温度検出素子110に定電流I2を流す。定電流I2は、上記したように、検出電流I3の略半分の電流値である。
【0059】
このように、計測するとき以外では、所定の定電流I1よりも大きい定電流を流しておくことにより、図9に示すような、検出電流I3が立ち上がり始めて安定するまでの時間を少なくすることができる。つまり、早く検出電流I3にすることが可能となり、時間t2において、安定した状態で温度を計測することができる。
【0060】
次に、時間t3では、温度の計測が終了したため、検出電流I3から定電流I2に電流値を小さくする。その後、時間t4、時間t5、時間t6において、上記と同様に温度の計測を行う。
【0061】
このように、温度の計測を行うとき以外は、定電流I2にしておくことにより、温度計測のときに、早く検出電流I3に切り替えることができる。よって、温度検出素子110の温度を安定した状態で計測することができる。ここでいう検出電流I3とは、1段目(定電流I2)よりも2段目(検出電流I3)の電流値が大きくなる2段階の階段状のパルス電流のことをいう。
【0062】
以上述べたように、第2実施形態の液晶パネル100の温度検出方法によれば、定電流I2の電流値は、検出電流I3の電流値の略半分の電流値である。この方法によれば、定電流I1から検出電流I3に急激に電流値を変化させる場合と比較して、検出電流I3の電流値へ速やかに変化させることができる。よって、温度検出素子110の温度を安定した状態で計測することができる。
【0063】
次に、図11を参照しながら、第3実施形態の液晶パネル100の温度検出方法について説明する。
【0064】
図11に示すように、第3実施形態の液晶パネル100の温度検出方法は、定電流I1、定電流I2、検出電流I3の順に階段状に電流値を上昇させて温度の計測を行っている部分が、第1実施形態の液晶パネルの温度検出方法と異なっている。その他の構成については概ね同様である。このため第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
【0065】
第3実施形態の液晶パネル100の温度検出方法は、図11に示すように、まず、温度の計測を行わない時間t0では、温度検出素子110に定電流I1を流す。
【0066】
次に、時間t1では、温度検出素子110に流す電流を、定電流I1から定電流I2に切り替える。つまり、次の工程において計測を行うために検出電流I3にするための準備段階である。なお、上記したように、定電流I2は、検出電流I3の略半分の電流値である。
【0067】
次に、時間t2では、温度検出素子110に流す電流を、定電流I2から検出電流I3に切り替える。事前の時間t1において、定電流I2に切り替えておいたため、検出電流I3に素早く切り替えることが可能となる。
【0068】
次に、時間t3では、温度検出素子110の温度を計測する。続いて、時間t4では、温度検出素子110に流す電流値を検出電流I3から定電流I1に切り替える。
【0069】
このように、温度の計測を行うときは検出電流I3にし、計測を行う前には準備段階の定電流I2にし、それ以外は定電流I1にするので、温度検出段階では安定した状態で計測でき、トータルの電流量を少なくすることができる。ここでいう検出電流I3とは、1段目(定電流I2)よりも2段目(検出電流I3)の電流値が大きくなる、少なくとも2段階の階段状のパルス電流のことをいう。
【0070】
以上述べたように、第3実施形態の液晶パネル100の温度検出方法によれば、定電流I1、定電流I2、検出電流I3と階段状に定電流を変化させるので、徐々に定電流を上昇させることが可能となり、検出電流I3へ速やかに変化させることができる。更に、第2実施形態の方法と比較して、トータルの電流量を少なくすることができる。
【0071】
以下、上記した実施形態の変形例を説明する。
【0072】
上記したように、検出温度に応じて冷却ファン41を動作させていたが、これに限定されず、冷却ファン41を動作させず、液晶パネル100の温度を検出するのみでもよい。
【0073】
上記したように、冷却ファン41を動作させることに限定されず、例えば、液晶パネル100の温度が管理温度よりも低い場合は、ヒーターなどを用いて液晶パネル100を加熱するようにしてもよい。
【0074】
フレキシブル基板200に配置された駆動IC210によって温度検出素子110に流す電流値を制御したが、これに限定されず、液晶装置500に接続された外部の装置によって電流値を制御するようにしてもよい。
【0075】
また、電気光学装置として液晶装置500を例に説明したが、これに限定されず、例えば、有機EL装置やプラズマディスプレイ、電子ペーパー(EPD)などに適用するようにしてもよい。
【0076】
また、表示装置としてプロジェクター1000を例に説明したが、これに限定されず、例えば、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、HUD(ヘッドアップディスプレイ)、電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどでもよい。
【符号の説明】
【0077】
10…素子基板、10a…張り出し部、20…対向基板、41…冷却ファン、60…制御部、61…電流制御部、62…温度算出部、63…処理部、65…管理温度値格納部、66…管理温度比較部、67…冷却ファン制御部、100,100B,100G,100R…液晶パネル、110…温度検出素子、111…静電気保護回路、112,113…端子、200…フレキシブル基板、210…駆動IC、500…電気光学装置としての液晶装置、1000…表示装置としてのプロジェクター、2102…ランプユニット、2106…ミラー、2108…ダイクロイックミラー、2112…ダイクロイックプリズム、2114…投射レンズ、2120…スクリーン、2121…リレーレンズ系、2122…入射レンズ、2123…リレーレンズ、2124…出射レンズ、2300…シフトデバイス。
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