(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174420
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】ガスヒートポンプエンジン
(51)【国際特許分類】
F01M 5/00 20060101AFI20221116BHJP
F01P 7/16 20060101ALI20221116BHJP
F01N 5/02 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
F01M5/00 D
F01M5/00 N
F01P7/16 504C
F01N5/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080205
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 哲夫
【テーマコード(参考)】
3G313
【Fターム(参考)】
3G313BB14
3G313BB35
3G313DA09
3G313EA06
3G313EA20
3G313EA24
3G313FA08
(57)【要約】
【課題】始動時及び再始動時の潤滑油の油温を冷却水の水温以上に上げることが可能となり、熱効率を上げることができるガスヒートポンプエンジンを提供する。
【解決手段】排気通路の途中に配置されて、冷却水がエンジン本体へ流入する流入通路を流れる冷却水と排気通路を流れる排気ガスとの間で熱交換させる排気熱交換器と、排気通路の排気熱交換器よりも上流側から分岐した後、再度、排気熱交換器よりも上流側の排気通路に接続されるバイパス通路と、バイパス通路に配置されて、オイルポンプから吐出された潤滑油を循環させてバイパス通路を流れる排気ガスとの間で熱交換させるオイル熱交換器と、バイパス通路を開閉可能な電磁式弁装置と、潤滑油温検出装置を介して検出した潤滑油温に基づいて、電磁式弁装置を開弁状態又は閉弁状態に切り替え設定するように制御する弁切替制御装置と、を備えるように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体の外部に配置されて、前記エンジン本体からラジエータへ冷却水を循環させる冷却水回路に設けられた電動ウォータポンプと、
前記エンジン本体に内蔵されて、エンジン回転数に応じた吐出量で潤滑油を循環させるオイルポンプと、
前記エンジン本体から排出された排気ガスを大気に放出する排気通路と、
前記冷却水回路の前記冷却水が前記エンジン本体へ流入する流入通路と、
前記排気通路の途中に配置されて、前記流入通路を流れる前記冷却水と前記排気通路を流れる前記排気ガスとの間で熱交換させる排気熱交換器と、
前記排気通路の前記排気熱交換器よりも上流側から分岐した後、再度、前記排気熱交換器よりも上流側の前記排気通路に接続されるバイパス通路と、
前記バイパス通路に配置されて、前記オイルポンプから吐出された前記潤滑油を循環させて前記バイパス通路を流れる前記排気ガスとの間で熱交換させるオイル熱交換器と、
前記バイパス通路を開閉可能な電磁式弁装置と、
前記潤滑油の潤滑油温を検出する潤滑油温検出装置と、
前記潤滑油温検出装置を介して検出した前記潤滑油温に基づいて、前記電磁式弁装置を開弁状態又は閉弁状態に切り替え設定するように制御する弁切替制御装置と、
を備えた、
ガスヒートポンプエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のガスヒートポンプエンジンにおいて、
前記弁切替制御装置は、
エンジン運転時に、前記潤滑油温検出装置を介して検出した前記潤滑油温が、所定の目標油温よりも低い温度であるか否かを判定する第1温度判定部と、
前記第1温度判定部を介して前記潤滑油温が、所定の前記目標油温よりも低い温度であると判定された場合には、前記電磁式弁装置を開弁状態に設定するように制御する第1弁制御部と、
を有する、
ガスヒートポンプエンジン。
【請求項3】
請求項2に記載のガスヒートポンプエンジンにおいて、
冷房運転の運転指示を受け付ける冷房運転指示受付装置を備え、
前記弁切替制御装置は、
前記冷房運転指示受付装置を介して前記冷房運転の運転指示を受け付けているか否かを判定する冷房運転判定部と、
前記冷房運転判定部を介して前記冷房運転の運転指示を受け付けていると判定され、且つ、前記第1温度判定部を介して前記潤滑油温が、所定の前記目標油温以上の温度であると判定された場合には、前記電磁式弁装置を開弁状態に設定するように制御する第2弁制御部と、
を有する、
ガスヒートポンプエンジン。
【請求項4】
請求項3に記載のガスヒートポンプエンジンにおいて、
前記弁切替制御装置は、
エンジン運転時に、前記潤滑油温検出装置を介して検出した前記潤滑油温が、前記目標油温よりも高い所定の潤滑油許容温度を超えたか否かを判定する第2温度判定部と、
前記冷房運転判定部を介して前記冷房運転の運転指示を受け付けていると判定され、且つ、前記第2温度判定部を介して前記潤滑油温が前記潤滑油許容温度を超えたと判定された場合には、前記電磁式弁装置を閉弁状態に設定するように制御し、
前記冷房運転判定部を介して前記冷房運転の運転指示を受け付けていると判定され、且つ、前記第2温度判定部を介して前記潤滑油温が前記潤滑油許容温度を超えていないと判定された場合には、前記電磁式弁装置を開弁状態に設定するように制御する第3弁制御部と、
を有する、
ガスヒートポンプエンジン。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のガスヒートポンプエンジンにおいて、
暖房運転の運転指示を受け付ける暖房運転指示受付装置を備え、
前記弁切替制御装置は、
前記暖房運転指示受付装置を介して前記暖房運転の運転指示を受け付けているか否かを判定する暖房運転判定部と、
前記暖房運転判定部を介して前記暖房運転の運転指示を受け付けていると判定され、且つ、前記第1温度判定部を介して前記潤滑油温が、所定の前記目標油温以上の温度であると判定された場合には、前記電磁式弁装置を閉弁状態に設定するように制御する第4弁制御部と、
を有する、
ガスヒートポンプエンジン。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のガスヒートポンプエンジンにおいて、
前記弁切替制御装置は、
エンジン停止中であるか否かを判定するエンジン停止判定部と、
前記エンジン停止判定部を介してエンジン停止中であると判定された場合には、前記電磁式弁装置を閉弁状態に設定するように制御する第5弁制御部と、
を有する、
ガスヒートポンプエンジン。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のガスヒートポンプエンジンにおいて、
前記電磁式弁装置は、
前記バイパス通路の前記オイル熱交換器よりも上流側に配置されて、前記バイパス通路を開閉可能な入口側電磁弁と、
前記バイパス通路の前記オイル熱交換器よりも下流側に設けられて、前記バイパス通路を開閉可能な出口側電磁弁と、
のうちの少なくとも一方を有し、
前記弁切替制御装置は、
前記入口側電磁弁と前記出口側電磁弁とを開弁状態又は閉弁状態に切り替え設定するように制御する、
ガスヒートポンプエンジン。
【請求項8】
請求項1に記載のガスヒートポンプエンジンにおいて、
前記電磁式弁装置は、
前記バイパス通路の前記オイル熱交換器よりも上流側に配置されて、前記バイパス通路を流れる排気ガスの流量を可変可能な入口側流量調整電磁弁と、
前記バイパス通路の前記オイル熱交換器よりも下流側に設けられて、前記バイパス通路を流れる排気ガスの流量を可変可能な出口側流量調整電磁弁と、
のうちの一方を有し、
前記弁切替制御装置は、
前記開弁状態及び前記閉弁状態の切り替え設定に替えて、前記潤滑油温検出装置を介して検出した前記潤滑油温に基づいて、前記入口側流量調整電磁弁又は前記出口側流量調整電磁弁を介して前記バイパス通路を流れる排気ガスの流量を可変設定するように制御する、
ガスヒートポンプエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスヒートポンプエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスヒートポンプエンジンに関する技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献1に記載される内燃機関の油水熱交換システムでは、エンジンに冷却水を供給するウォータポンプと、冷却水を循環させて冷却するラジエータと、ラジエータを迂回して冷却水を循環させるバイパス通路と、エンジンに潤滑油を供給するオイルポンプと、潤滑油を循環させてバイパス通路を循環する冷却水との間で熱交換を促す熱交換通路と、冷却水温度Tが所定値Taより低い運転状態と、所定値Tcより高い運転状態でバイパス通路をそれぞれ開き、かつ、冷却水温度Tが所定値TaとTcの間にある運転状態でバイパス通路を閉じるサーモスタットと、から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エンジンの始動、停止の間隔時間が短いガスヒートポンプエンジンにおいて、冷却水温度Tが所定値Taより低い運転状態でバイパス通路を開くサーモスタットが設けられているため、再始動時に、熱交換通路を循環する潤滑油の油温を、冷却水の水温以上の温度に上昇させることできない。その結果、ガスヒートポンプエンジンの熱効率を上げることが難しいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、始動時及び再始動時の潤滑油の油温を冷却水の水温以上に上げることが可能となり、熱効率を上げることができるガスヒートポンプエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、エンジン本体の外部に配置されて、前記エンジン本体からラジエータへ冷却水を循環させる冷却水回路に設けられた電動ウォータポンプと、前記エンジン本体に内蔵されて、エンジン回転数に応じた吐出量で潤滑油を循環させるオイルポンプと、前記エンジン本体から排出された排気ガスを大気に放出する排気通路と、前記冷却水回路の前記冷却水が前記エンジン本体へ流入する流入通路と、前記排気通路の途中に配置されて、前記流入通路を流れる前記冷却水と前記排気通路を流れる前記排気ガスとの間で熱交換させる排気熱交換器と、前記排気通路の前記排気熱交換器よりも上流側から分岐した後、再度、前記排気熱交換器よりも上流側の前記排気通路に接続されるバイパス通路と、前記バイパス通路に配置されて、前記オイルポンプから吐出された前記潤滑油を循環させて前記バイパス通路を流れる前記排気ガスとの間で熱交換させるオイル熱交換器と、前記バイパス通路を開閉可能な電磁式弁装置と、前記潤滑油の潤滑油温を検出する潤滑油温検出装置と、前記潤滑油温検出装置を介して検出した前記潤滑油温に基づいて、前記電磁式弁装置を開弁状態又は閉弁状態に切り替え設定するように制御する弁切替制御装置と、を備えた、ガスヒートポンプエンジンである。
【0007】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るガスヒートポンプエンジンにおいて、前記弁切替制御装置は、エンジン運転時に、前記潤滑油温検出装置を介して検出した前記潤滑油温が、所定の目標油温よりも低い温度であるか否かを判定する第1温度判定部と、前記第1温度判定部を介して前記潤滑油温が、所定の前記目標油温よりも低い温度であると判定された場合には、前記電磁式弁装置を開弁状態に設定するように制御する第1弁制御部と、を有する、ガスヒートポンプエンジンである。
【0008】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係るガスヒートポンプエンジンにおいて、冷房運転の運転指示を受け付ける冷房運転指示受付装置を備え、前記弁切替制御装置は、前記冷房運転指示受付装置を介して前記冷房運転の運転指示を受け付けているか否かを判定する冷房運転判定部と、前記冷房運転判定部を介して前記冷房運転の運転指示を受け付けていると判定され、且つ、前記第1温度判定部を介して前記潤滑油温が、所定の前記目標油温以上の温度であると判定された場合には、前記電磁式弁装置を開弁状態に設定するように制御する第2弁制御部と、を有する、ガスヒートポンプエンジンである。
【0009】
次に、本発明の第4の発明は、上記第3の発明に係るガスヒートポンプエンジンにおいて、前記弁切替制御装置は、エンジン運転時に、前記潤滑油温検出装置を介して検出した前記潤滑油温が、前記目標油温よりも高い所定の潤滑油許容温度を超えたか否かを判定する第2温度判定部と、前記冷房運転判定部を介して前記冷房運転の運転指示を受け付けていると判定され、且つ、前記第2温度判定部を介して前記潤滑油温が前記潤滑油許容温度を超えたと判定された場合には、前記電磁式弁装置を閉弁状態に設定するように制御し、前記冷房運転判定部を介して前記冷房運転の運転指示を受け付けていると判定され、且つ、前記第2温度判定部を介して前記潤滑油温が前記潤滑油許容温度を超えていないと判定された場合には、前記電磁式弁装置を開弁状態に設定するように制御する第3弁制御部と、を有する、ガスヒートポンプエンジンである。
【0010】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1の発明乃至第4の発明のいずれか1つに係るガスヒートポンプエンジンにおいて、暖房運転の運転指示を受け付ける暖房運転指示受付装置を備え、前記弁切替制御装置は、前記暖房運転指示受付装置を介して前記暖房運転の運転指示を受け付けているか否かを判定する暖房運転判定部と、前記暖房運転判定部を介して前記暖房運転の運転指示を受け付けていると判定され、且つ、前記第1温度判定部を介して前記潤滑油温が、所定の前記目標油温以上の温度であると判定された場合には、前記電磁式弁装置を閉弁状態に設定するように制御する第4弁制御部と、を有する、ガスヒートポンプエンジンである。
【0011】
次に、本発明の第6の発明は、上記第1の発明乃至第5の発明のいずれか1つに係るガスヒートポンプエンジンにおいて、前記弁切替制御装置は、エンジン停止中であるか否かを判定するエンジン停止判定部と、前記エンジン停止判定部を介してエンジン停止中であると判定された場合には、前記電磁式弁装置を閉弁状態に設定するように制御する第5弁制御部と、を有する、ガスヒートポンプエンジンである。
【0012】
次に、本発明の第7の発明は、上記第1の発明乃至第6の発明のいずれか1つに係るガスヒートポンプエンジンにおいて、前記電磁式弁装置は、前記バイパス通路の前記オイル熱交換器よりも上流側に配置されて、前記バイパス通路を開閉可能な入口側電磁弁と、前記バイパス通路の前記オイル熱交換器よりも下流側に設けられて、前記バイパス通路を開閉可能な出口側電磁弁と、のうちの少なくとも一方を有し、前記弁切替制御装置は、前記入口側電磁弁と前記出口側電磁弁とを開弁状態又は閉弁状態に切り替え設定するように制御する、ガスヒートポンプエンジンである。
【0013】
次に、本発明の第8の発明は、上記第1の発明に係るガスヒートポンプエンジンにおいて、前記電磁式弁装置は、前記バイパス通路の前記オイル熱交換器よりも上流側に配置されて、前記バイパス通路を流れる排気ガスの流量を可変可能な入口側流量調整電磁弁と、前記バイパス通路の前記オイル熱交換器よりも下流側に設けられて、前記バイパス通路を流れる排気ガスの流量を可変可能な出口側流量調整電磁弁と、のうちの一方を有し、前記弁切替制御装置は、前記開弁状態及び前記閉弁状態の切り替え設定に替えて、前記潤滑油温検出装置を介して検出した前記潤滑油温に基づいて、前記入口側流量調整電磁弁又は前記出口側流量調整電磁弁を介して前記バイパス通路を流れる排気ガスの流量を可変設定するように制御する、ガスヒートポンプエンジンである。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、排気通路の排気熱交換器よりも上流側から分岐した後、再度、排気熱交換器よりも上流側の排気通路に接続されるバイパス通路が設けられている。そして、オイルポンプから吐出された潤滑油は、バイパス通路に配置されたオイル熱交換器を循環して、バイパス通路を流れる排気ガスとの間で熱交換される。また、弁切替制御装置は、バイパス通路を開閉可能な電磁式弁装置を開弁状態又は閉弁状態に切り替え設定するように制御する。
【0015】
これにより、ガスヒートポンプエンジンの始動時及び再始動時において、弁切替制御装置が電磁式弁装置を開状態に設定して、バイパス通路に排気ガスを流すように制御することによって、潤滑油の油温を冷却水の水温以上に上げることが可能となり、熱効率を上げることができる。また、冷却水の水温が低水温時においても、ガスヒートポンプエンジンの再始動時に、潤滑油温の上昇を早めて、潤滑油の粘性を低下させることができ、燃費を向上させることができる。また、弁切替制御装置が電磁式弁装置を閉状態に設定して、バイパス通路に排気ガスを流さないように制御することによって、潤滑油の油温上昇を抑え、潤滑油の劣化を抑止することができる。
【0016】
第2の発明によれば、弁切替制御装置は、第1温度判定部を介して潤滑油温が所定の目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも低い温度であると判定された場合には、電磁式弁装置を開弁状態に設定するように制御する。これにより、ガスヒートポンプエンジンの始動時及び再始動時において、潤滑油温が目標油温よりも低い温度の場合には、バイパス通路に排気ガスの一部を流して、オイル熱交換器に循環される潤滑油を排気ガスによって加熱し、潤滑油温を上昇させることができる。その結果、ガスヒートポンプエンジンの始動時及び再始動時に、潤滑油温の上昇を早めて、潤滑油の粘性を低下させることができ、燃費を向上させることができる。
【0017】
第3の発明によれば、弁切替制御装置は、冷房運転指示受付装置を介して冷房運転の運転指示を受け付けており、且つ、第1温度判定部を介して潤滑油温が、所定の目標油温以上の温度であると判定された場合には、電磁式弁装置を開弁状態に設定するように制御する。これにより、冷房運転の運転指示を受け付けている場合には、暖機運転を終了した後においても、オイル熱交換器を介して潤滑油温を目標油温以上の温度まで上昇させることができ、潤滑油温を確実に冷却水温以上の温度に上昇させ、熱効率を更に上げることができる。
【0018】
第4の発明によれば、弁切替制御装置は、冷房運転指示受付装置を介して冷房運転の運転指示を受け付けており、且つ、第2温度判定部を介して潤滑油温が、目標油温よりも高い所定の潤滑油許容温度(例えば、90℃~95℃である。)を超えたと判定された場合には、電磁式弁装置を閉弁状態に設定するように制御する。これにより、電磁式弁装置を閉弁状態に設定して、バイパス通路に排気ガスを流さないように制御することによって、オイル熱交換器に循環される潤滑油の排気ガスによる加熱を停止させ、潤滑油の劣化を抑止することができる。
【0019】
また、弁切替制御装置は、冷房運転指示受付装置を介して冷房運転の運転指示を受け付けており、且つ、第2温度判定部を介して潤滑油温が、目標油温よりも高い所定の潤滑油許容温度以下の温度であると判定された場合には、電磁式弁装置を開弁状態に設定するように制御する。これにより、冷房運転の運転指示を受け付けている場合には、オイル熱交換器を介して潤滑油温を潤滑油許容温度以下の温度まで上昇させることができ、潤滑油の劣化を抑止しつつ、潤滑油温を確実に冷却水温以上の温度に上昇させ、熱効率を更に上げることができる。
【0020】
第5の発明によれば、弁切替制御装置は、暖房運転指示受付装置を介して暖房運転の運転指示を受け付けており、且つ、第1温度判定部を介して潤滑油温が、所定の目標油温以上の温度であると判定された場合には、電磁式弁装置を閉弁状態に設定するように制御する。これにより、暖房運転の運転指示を受け付けている場合には、オイル熱交換器を介して潤滑油温を目標油温以上の温度まで上昇させた後は、排気ガスの全量を排気熱交換器に流して、冷却水の水温上昇を高くすることができ、暖房効率を高くすることができる。
【0021】
第6の発明によれば、弁切替制御装置は、エンジン停止判定部を介してエンジン停止中であると判定された場合には、電磁式弁装置を閉弁状態に設定するように制御する。これにより、ガスヒートポンプエンジンの停止中における、オイル熱交換器内の潤滑油の温度低下を抑制することができる。その結果、ガスヒートポンプエンジンの再始動時に、潤滑油温の上昇を早めて、潤滑油の粘性を低下させることができ、燃費を向上させることができる。
【0022】
第7の発明によれば、バイパス通路のオイル熱交換器よりも上流側に配置されて、バイパス通路を開閉可能な入口側電磁弁と、バイパス通路のオイル熱交換器よりも下流側に設けられて、バイパス通路を開閉可能な出口側電磁弁とのうちの少なくとも一方が設けられている。そして、弁切替制御装置は、入口側電磁弁と出口側電磁弁とを開弁状態又は閉弁状態に切り替え設定するように制御する。
【0023】
これにより、弁切替制御装置は、入口側電磁弁と出口側電磁弁とを開弁状態に設定することによって、バイパス通路に排気ガスの一部を流して、オイル熱交換器を介して潤滑油との間で熱交換させることができる。一方、弁切替制御装置は、入口側電磁弁と出口側電磁弁とを閉弁状態に設定することによって、バイパス通路における排気ガスの流れを停止して、オイル熱交換器内の潤滑油の温度低下を抑制することができる。その結果、ガスヒートポンプエンジンの再始動時に、潤滑油温の上昇を早めて、潤滑油の粘性を低下させることができ、燃費を向上させることができる。
【0024】
第8の発明によれば、バイパス通路のオイル熱交換器よりも上流側に配置されて、バイパス通路を流れる排気ガスの流量を可変可能な入口側流量調整電磁弁と、バイパス通路のオイル熱交換器よりも下流側に設けられて、バイパス通路を流れる排気ガスの流量を可変可能な出口側流量調整電磁弁と、のうちの一方が設けられている。そして、弁切替制御装置は、潤滑油温検出装置を介して検出した潤滑油温に基づいて、入口側流量調整電磁弁又は出口側流量調整電磁弁を介して、バイパス通路を流れる排気ガスの流量を可変設定するように制御する。
【0025】
これにより、入口側流量調整電磁弁又は出口側流量調整電磁弁を介して、バイパス通路を流れる排気ガスの流量を多くすることによって、オイル熱交換器に循環される潤滑油の温度上昇を早めることができる。その結果、ガスヒートポンプエンジンの始動時及び再始動時に、潤滑油温の上昇を早めて、潤滑油の粘性を低下させることができ、燃費を向上させることができる。また、潤滑油温が目標温度以上の場合においては、入口側流量調整電磁弁又は出口側流量調整電磁弁を介して、バイパス通路を流れる排気ガスの流量を少なくすることによって、オイル熱交換器に循環される潤滑油の温度上昇を抑え、潤滑油の劣化を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態に係るガスヒートポンプエンジンの概略構成の一例を説明する図である。
【
図2】本実施形態に係る制御装置が実行する弁切替制御処理の一例を示す第1フローチャートである。
【
図3】本実施形態に係る制御装置が実行する弁切替制御処理の一例を示す第2フローチャートである。
【
図4】弁切替制御における冷房運転時の電磁弁の開閉設定の一例を示すタイムチャートである。
【
図5】弁切替制御における暖房運転時の電磁弁の開閉設定の一例を示すタイムチャートである。
【
図6】他の第1実施形態に係るガスヒートポンプエンジンの概略構成の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るガスヒートポンプエンジンを具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るガスヒートポンプエンジン1の概略構成について
図1に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るガスヒートポンプエンジン1の概略構成の一例を示している。ガスヒートポンプエンジン1は、例えば、空調設備等に用いられるガスヒートポンプ等の動力源として搭載される。
【0028】
図1に示すように、ガスヒートポンプエンジン(以下、「GHPエンジン」という。)1は、例えば、都市ガスやLPG等の気体燃料を用いて作動するエンジン本体11と、空冷又は水冷のラジエータ12と、エンジン本体11の外部に配置された電動ウォータポンプ13と、電動ウォータポンプ13によって冷却水がエンジン本体11からラジエータ12へ循環する冷却水回路15と、エンジン本体11内に内蔵されたオイルポンプ16と、制御装置(以下、「ECU」という。)50等から構成されている。
【0029】
GHPエンジン1は、例えば、空調設備等に用いられるガスヒートポンプ等の動力源として搭載される。例えば、エンジン本体11の回転駆動力は、圧縮機61に伝達される。圧縮機61は、エンジン本体11により駆動されて冷媒を冷媒回路62から吸入すると共に、この吸入した冷媒を圧縮して再度、冷媒回路62に吐出する。この冷媒回路62には、室内空気と冷媒との間で熱交換を行う室内熱交換器63等が設けられている。圧縮機61は、空調として指令された温度と、現在の空調対象室内の温度等に応じた負荷をECU50に出力している。
【0030】
エンジン本体11には、各気筒や燃焼室の回りに冷却水を循環させるウォータジャケット18が設けられている。電動ウォータポンプ13から吐出される冷却水は、破線で示す冷却水回路15を経てラジエータ12を循環した後、エンジン本体11に設けられたウォータジャケット18へ流れる。ウォータジャケット18を循環した冷却水は、エンジン本体11から冷却水回路15を経て、電動ウォータポンプ13に吸い込まれる。
【0031】
冷却水回路15には、ラジエータ12を循環した冷却水が、エンジン本体11内のウォータジャケット18に流入する流入通路15Aが設けられている。また、冷却水回路15には、ウォータジャケット18を循環した冷却水が、エンジン本体11から流出して電動ウォータポンプ13に流入する流出通路15Bが設けられている。従って、ウォータジャケット18を循環した冷却水は、エンジン本体11から流出通路15Bを経て、電動ウォータポンプ13に吸い込まれる。
【0032】
エンジン本体11の排気側には、排気マニホールド31の流入側が接続されている。排気マニホールド31の流出側には、2点鎖線で示す排気通路32の流入側が接続されている。排気通路32の途中には、排気熱交換器33と排気ガス浄化装置35と不図示のマフラーが、この順で設けられている。排気熱交換器33は、ラジエータ12から流出して冷却水回路15の流入通路15Aを流れる冷却水と排気通路32を流れる排気ガスとの間で熱交換を行う。そして、排気熱交換器33において、排気ガスによって暖められた冷却水は、冷却水回路15の流入通路15Aを流れてエンジン本体11のウォータジャケット18へ流入する。
【0033】
また、排気通路32の排気熱交換器33よりも上流側には、排気ガスの一部が分岐されて流れる2点鎖線で示すバイパス通路32Aの入口側が接続されている。そして、排気通路32から分岐されたバイパス通路32Aの出口側は、再度、排気通路32の排気熱交換器33よりも上流側で、且つ、バイパス通路32Aの入口側が接続された箇所よりも下流側の排気通路32に接続されている。従って、排気マニホールド31から排気通路32に流入した排気ガスの一部が、バイパス通路32Aの入口側に流入する。そして、バイパス通路32Aの入口側から流入した排気ガスは、再度、排気通路32の排気熱交換器33よりも上流側に吐出される。
【0034】
このバイパス通路32Aには、オイルポンプ16から吐出された潤滑油を循環させて、バイパス通路32Aを流れる排気ガスとの間で熱交換させるオイル熱交換器22が配置されている。オイル熱交換器22は、例えば、エンジン本体11の側壁部に設けられている。また、バイパス通路32Aのオイル熱交換器22よりも上流側には、バイパス通路32Aを開閉可能な電磁弁(入口側電磁弁)25が設けられている。電磁弁(入口側電磁弁)25は、バイパス通路32Aの入口側にできるだけ近い位置に設けられるのが好ましい。
【0035】
電磁弁(入口側電磁弁)25は、ECU50からの制御信号に基づいて、バイパス通路32Aを開放する開弁状態とバイパス通路32Aを閉塞する閉弁状態とに切り替え可能に構成されている。従って、電磁弁(入口側電磁弁)25が開弁状態に設定された場合には、排気通路32を流れる排気ガスの一部がバイパス通路32Aに流入して、オイル熱交換器22を循環する潤滑油が排気ガスによって暖められる。一方、電磁弁(入口側電磁弁)25が閉弁状態に設定された場合には、排気通路32を流れる排気ガスは、バイパス通路32Aに流入せず、オイル熱交換器22を循環する潤滑油は、排気ガスによって暖められない。
【0036】
エンジン本体11に内蔵されるオイルポンプ16は、エンジン本体11を駆動源とする機械式オイルポンプであって、エンジン回転数に応じた吐出量(油圧)で潤滑油を循環させる。具体的には、エンジン回転数が高いほど吐出量が大きくなり(発生する油圧が高くなり)、エンジン回転数が低いほど吐出量が小さくなる(発生する油圧が低くなる)ように動作する。
【0037】
オイルポンプ16から吐出された潤滑油は、一点鎖線で示すオイル回路28を経て、エンジン本体11の、例えば、側壁部に配置されたオイル熱交換器22を循環して、再度、エンジン本体11内に流入する。そして、潤滑油は、不図示の動弁系の潤滑部、不図示のクランクシャフト系の潤滑部等に供給された後、不図示のオイルパンを経てオイルポンプ16により吸い上げられる。また、ウォータジャケット18を介して、エンジン本体11内のオイル回路28を流れる潤滑油と、ウォータジャケット18内を流れる冷却水との間で熱交換が行われる。
【0038】
排気ガス浄化装置35は、各種触媒であって、例えば、排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素、及び、窒素酸化物を浄化する機能を有する三元触媒を含むようにしてもよい。排気マニホールド31から排気通路32に排出された排気ガスは、排気熱交換器33、排気ガス浄化装置35及び不図示のマフラーを経由して大気に排気(放出)される。
【0039】
また、エンジン本体11には、冷却水温検出装置37と、潤滑油温検出装置38と、回転検出装置39等が設けられている。冷却水温検出装置37は、例えば、冷却水温センサであり、ウォータジャケット18を循環する冷却水の冷却水温に応じた検出信号をECU50に出力する。冷却水温検出装置37は、例えば、ウォータジャケット18から流出する冷却水の冷却水温を検出して、冷却水温に応じた検出信号をECU50に出力するのが好ましい。
【0040】
潤滑油温検出装置38は、例えば、潤滑油温センサであり、エンジン本体11内を循環する潤滑油の潤滑油温に応じた検出信号をECU50に出力する。潤滑油温検出装置38は、例えば、オイルポンプ16に吸い込まれる潤滑油の潤滑油温を検出して、潤滑油温に応じた検出信号をECU50に出力するのが好ましい。回転検出装置39は、例えば、回転センサであり、エンジン本体11のクランクシャフトの回転角度に応じた検出信号(例えば、回転角度15度毎に1パルスの検出信号)をECU50に出力する。
【0041】
ECU(Electronic Control Unit)50は、CPU、EEPROM、RAM、タイマ、不図示のバックアップRAM等を備えた公知のものであり、GHPエンジン1の全体を制御する。CPUは、EEPROMに記憶された各種プログラムや各種パラメータに基づいて、種々の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各検出装置から入力されたデータ等を一時的に記憶し、EEPROM、及び、バックアップRAMは、例えば、エンジン本体11の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する。
【0042】
ECU50には、冷却水温検出装置37、潤滑油温検出装置38、回転検出装置39が電気的に接続され、それぞれから検出信号が入力される。ECU50には、電磁弁(入口側電磁弁)25が電気的に接続され、電磁弁(入口側電磁弁)25を開弁状態と閉弁状態に設定することができる。ECU50には、圧縮機61が電気的に接続され、圧縮機61から負荷に応じた負荷信号が入力される。また、ECU50には、空調設備の不図示の操作パネルに設けられた暖房スイッチ41と冷房スイッチ42が電気的に接続され、それぞれの押下信号が入力される。
【0043】
ECU50は、冷却水温検出装置37からの検出信号に基づいて、エンジン本体11内を循環する冷却水の冷却水温を検出することができる。ECU50は、潤滑油温検出装置38からの検出信号に基づいて、エンジン本体11内を循環する潤滑油の潤滑油温を検出することができる。ECU50は、回転検出装置39からの検出信号に基づいて、エンジン回転数やエンジン始動とエンジン停止、つまり、エンジン運転中か否かを検出することができる。
【0044】
暖房スイッチ41は、暖房運転の運転指示を受け付ける暖房運転指示受付装置の一例として機能する。冷房スイッチ42は、冷房運転の運転指示を受け付ける冷房運転指示受付装置の一例として機能する。ECU50は、暖房スイッチ41から押下信号が入力された場合には、不図示の空調設備を暖房運転で駆動するように制御すると共に、RAMから暖房フラグを読み出して、「ON」に設定した後、再度RAMに記憶する。また、ECU50は、冷房スイッチ42から押下信号が入力された場合には、不図示の空調設備を冷房運転で駆動するように制御すると共に、RAMから冷房フラグを読み出して、「ON」に設定した後、再度RAMに記憶する。尚、暖房フラグ及び冷房フラグは、ECU50の起動時に「OFF」に設定されて、RAMに記憶されている。
【0045】
尚、バイパス通路32Aを開閉可能な電磁弁(入口側電磁弁)25に替えて、例えば、
図1に点線で示すように、バイパス通路32Aのオイル熱交換器22よりも下流側に、バイパス通路32Aを開閉可能な電磁弁(出口側電磁弁)26を設けるようにしてもよい。電磁弁(出口側電磁弁)26は、バイパス通路32Aの出口側にできるだけ近い位置に設けられるのが好ましい。この電磁弁(出口側電磁弁)26は、ECU50からの制御信号に基づいて、バイパス通路32Aを開放する開弁状態とバイパス通路32Aを閉塞する閉弁状態とに切り替え可能に構成されている。
【0046】
また、電磁弁(入口側電磁弁)25と電磁弁(出口側電磁弁)26を、バイパス通路32Aのオイル熱交換器22よりも上流側と下流側のそれぞれに設けるようにしてもよい。この場合には、各電磁弁25、26は、バイパス通路32Aの入口側と出口側にできるだけ近い位置にそれぞれ設けられ、同時に開弁状態と閉弁状態に切り替えられるのが好ましい。
【0047】
次に、上記のように構成されたGHPエンジン1において、ECU50が実行する電磁弁(入口側電磁弁)25の開弁状態と閉弁状態を切替制御して潤滑油の潤滑油温を制御する弁切替制御処理の一例について
図2乃至
図5に基づいて説明する。ECU50は、起動されると所定時間間隔(例えば、数ミリ秒~数10ミリ秒間隔)にて、
図2及び
図3に示す処理を起動し、ステップS11へと処理を進める。尚、
図2及び
図3にフローチャートで示されるプログラムは、ECU50のEEPROMに予め記憶されている。
【0048】
図2に示すように、先ず、ステップS11において、ECU50は、エンジン本体11がエンジン運転中であるか否かを判定する。具体的には、ECU50は、回転検出装置39から入力される検出信号に基づいて、エンジン本体11のエンジン回転数を検出する。そして、ECU50は、エンジン本体11のエンジン回転数が所定下限閾値(例えば、2~3[rpm])以下の場合には、エンジン本体11がエンジン停止中であると判定する。また、ECU50は、エンジン本体11のエンジン回転数が所定上限閾値(例えば、10~15[rpm])以上の場合には、エンジン本体11がエンジン運転中であると判定する。
【0049】
そして、エンジン本体11がエンジン停止中であると判定された場合には(S11:NO)、ECU50は、ステップS12の処理に進む。ステップS12において、ECU50は、エンジン本体11の暖機運転が終了して定常運転状態に移行した旨を表す定常運転フラグをRAMから読み出し、「OFF」に設定して再度、RAMに記憶した後、ステップS13の処理に進む。
【0050】
ステップS13において、ECU50は、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定して、バイパス通路32Aを閉塞した後、当該処理を終了する。これにより、GHPエンジン1の停止中における、オイル熱交換器22内の潤滑油の温度低下を抑制することができる。その結果、GHPエンジン1の再始動時に、潤滑油温の上昇を早めて、潤滑油の粘性を低下させることができ、燃費を向上させることができる。尚、定常運転フラグは、ECU50の起動時に「OFF」に設定されて、RAMに記憶されている。
【0051】
一方、上記ステップS11で、エンジン本体11がエンジン運転中であると判定された場合には(S11:YES)、ECU50は、ステップS14の処理に進む。ステップS14において、ECU50は、不図示の空調設備を暖房運転で駆動している暖房運転中であるか否か、つまり、暖房スイッチ41を介して暖房運転の運転指示を受け付けているか否かを判定する。具体的には、ECU50は、暖房フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定されているか否かを判定する。
【0052】
そして、暖房運転中であると判定した場合、つまり、暖房フラグが「ON」に設定されていると判定した場合には(S14:YES)、ECU50は、ステップS15の処理に進む。ステップS15において、ECU50は、エンジン本体11の暖機運転が終了して定常運転状態に移行した旨を表す定常運転フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定されているか否かを判定する。
【0053】
そして、定常運転フラグが「ON」に設定されていると判定された場合、つまり、暖機運転が終了して定常運転状態に移行したと判定された場合には(S15:YES)、ECU50は、上述のステップS13以降の処理を実行する。具体的には、ステップS13において、ECU50は、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定して、バイパス通路32Aを閉塞した後、当該処理を終了する。
【0054】
これにより、暖房運転の運転指示を受け付けている場合には、後述のように、オイル熱交換器22を介して潤滑油温を目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)以上の温度まで上昇させた後は、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定することができる(ステップS17:NO~ステップS20参照)。その結果、暖機運転が終了した後は、排気ガスの全量を排気熱交換器33に流して、冷却水の水温上昇を高くすることができ、暖房効率を高くすることができる。
【0055】
一方、上記ステップS15で定常運転フラグが「OFF」に設定されていると判定された場合、つまり、暖機運転が終了していないと判定された場合には(S15:NO)、ECU50は、ステップS16の処理に進む。ステップS16において、ECU50は、潤滑油温検出装置38から入力される検出信号に基づいて、エンジン本体11内を循環する潤滑油の潤滑油温を検出してRAMに記憶した後、ステップS17の処理に進む。
【0056】
ステップS17において、ECU50は、上記ステップS16で検出した潤滑油温をRAMから読み出す共に、暖機運転時における潤滑油の目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)をEEPROMから読み出す。続いて、ECU50は、この潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも低い温度であるか否かを判定する。そして、潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも低い温度であると判定された場合には(S17:YES)、ECU50は、ステップS18の処理に進む。尚、暖機運転時における潤滑油の目標油温は、実験等により予め計測されて、ECU50のEEPROMに予め記憶されている。
【0057】
ステップS18において、ECU50は、電磁弁(入口側電磁弁)25を開弁状態に設定してバイパス通路32Aを開放した後、当該処理を終了する。これにより、GHPエンジン1の始動時及び再始動時において、潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも低い温度の場合には、バイパス通路32Aに排気ガスの一部を流して、オイル熱交換器22に循環される潤滑油を排気ガスによって加熱し、潤滑油温を上昇させることができる。その結果、GHPエンジン1の始動時及び再始動時に、潤滑油温の上昇を早めて、潤滑油の粘性を低下させることができ、燃費を向上させることができる。
【0058】
一方、上記ステップS17で潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)以上の温度であると判定された場合には(S17:NO)、ECU50は、ステップS19の処理に進む。ステップS19において、ECU50は、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定してバイパス通路32Aを閉塞した後、ステップS20の処理に進む。ステップS20において、ECU50は、エンジン本体11の暖機運転が終了して定常運転状態に移行した旨を表す定常運転フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度、RAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0059】
これにより、暖房運転の運転指示を受け付けている場合には、オイル熱交換器22を介して潤滑油温を目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)以上の温度まで上昇させた後は、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定することができる。その結果、排気ガスの全量を排気熱交換器33に流して、冷却水の水温上昇を高くすることができ、暖房効率を高くすることができる。
【0060】
他方、上記ステップS14で、暖房運転中でないと判定した場合、つまり、暖房フラグが「OFF」に設定されていると判定した場合には(S14:NO)、ECU50は、ステップS21の処理に進む。即ち、ECU50は、冷房スイッチ42を介して冷房運転の運転指示を受け付けて、不図示の空調設備を冷房運転で駆動している冷房運転中であると判断して(S14:NO)、ステップS21の処理に進む。
【0061】
図3に示すように、ステップS21において、ECU50は、エンジン本体11の暖機運転が終了して定常運転状態に移行した旨を表す定常運転フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定されているか否かを判定する。そして、定常運転フラグが「OFF」に設定されていると判定された場合、つまり、暖機運転が終了していないと判定された場合には(S21:NO)、ECU50は、ステップS22の処理に進む。ステップS22において、ECU50は、潤滑油温検出装置38から入力される検出信号に基づいて、エンジン本体11内を循環する潤滑油の潤滑油温を検出してRAMに記憶した後、ステップS23の処理に進む。
【0062】
ステップS23において、ECU50は、上記ステップS22で検出した潤滑油温をRAMから読み出すと共に、暖機運転時における潤滑油の目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)をEEPROMから読み出す。続いて、ECU50は、この潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも低い温度であるか否かを判定する。そして、潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも低い温度であると判定された場合には(S23:YES)、ECU50は、ステップS24の処理に進む。ステップS24において、ECU50は、電磁弁(入口側電磁弁)25を開弁状態に設定してバイパス通路32Aを開放した後、当該処理を終了する。
【0063】
これにより、GHPエンジン1の始動時及び再始動時において、潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも低い温度の場合には、バイパス通路32Aに排気ガスの一部を流して、オイル熱交換器22に循環される潤滑油を排気ガスによって加熱し、潤滑油温を上昇させることができる。その結果、GHPエンジン1の始動時及び再始動時に、潤滑油温の上昇を早めて、潤滑油の粘性を低下させることができ、燃費を向上させることができる。
【0064】
一方、上記ステップS23で潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)以上の温度であると判定された場合には(S23:NO)、ECU50は、ステップS25の処理に進む。ステップS25において、ECU50は、電磁弁(入口側電磁弁)25を開弁状態に設定してバイパス通路32Aを開放した後、ステップS26の処理に進む。ステップS26において、ECU50は、エンジン本体11の暖機運転が終了して定常運転状態に移行した旨を表す定常運転フラグをRAMから読み出し、「ON」に設定して再度、RAMに記憶した後、当該処理を終了する。
【0065】
これにより、冷房スイッチ42を介して、冷房運転の運転指示を受け付けている場合には、暖機運転を終了した後においても、バイパス通路32Aに排気ガスの一部を流して、オイル熱交換器22を介して潤滑油温を目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)以上の温度まで上昇させることができる。その結果、ECU50は、潤滑油温を確実に冷却水温以上の温度に上昇させ、熱効率を更に上げることができる。
【0066】
他方、上記ステップS21で、定常運転フラグが「ON」に設定されていると判定された場合、つまり、暖機運転が終了して定常運転状態に移行したと判定された場合には(S21:YES)、ECU50はステップS27の処理に進む。ステップS27において、ECU50は、潤滑油温検出装置38から入力される検出信号に基づいて、エンジン本体11内を循環する潤滑油の潤滑油温を検出してRAMに記憶した後、ステップS28の処理に進む。
【0067】
ステップS28において、ECU50は、上記ステップS27で検出した潤滑油温をRAMから読み出す共に、潤滑油が劣化しない最高温度である潤滑油許容温度(例えば、約90℃~95℃である。)をEEPROMから読み出す。続いて、ECU50は、この潤滑油温が潤滑油許容温度よりも低い温度であるか否か、つまり、潤滑油温が潤滑油許容温度(例えば、約90℃~95℃である。)を超えていないか否かを判定する。尚、潤滑油が劣化しない最高温度である潤滑油許容温度は、実験等により予め計測されて、ECU50のEEPROMに予め記憶されている。
【0068】
そして、潤滑油温が潤滑油許容温度(例えば、約90℃~95℃である。)よりも低い温度である、つまり、潤滑油温が潤滑油許容温度(例えば、約90℃~95℃である。)を超えていないと判定された場合には(S28:YES)、ECU50は、ステップS29の処理に進む。ステップS29において、ECU50は、電磁弁(入口側電磁弁)25を開弁状態に設定してバイパス通路32Aを開放した後、当該処理を終了する。
【0069】
これにより、冷房スイッチ42を介して、冷房運転の運転指示を受け付けている場合には、オイル熱交換器22を介して潤滑油温を潤滑油許容温度(例えば、約90℃~95℃である。)以下の温度まで上昇させることができ、潤滑油の劣化を抑止しつつ、潤滑油温を確実に冷却水温以上の温度に上昇させ、熱効率を更に上げることができる。
【0070】
一方、潤滑油温が潤滑油許容温度(例えば、約90℃~95℃である。)以上の温度である、つまり、潤滑油温が潤滑油許容温度(例えば、約90℃~95℃である。)を超えたと判定された場合には(S28:NO)、ECU50は、ステップS30の処理に進む。ステップS30において、ECU50は、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定してバイパス通路32Aを閉塞した後、当該処理を終了する。
【0071】
これにより、ECU50は、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定して、バイパス通路32Aに排気ガスを流さないように制御することによって、オイル熱交換器22に循環される潤滑油の排気ガスによる加熱を停止させ、潤滑油の劣化を抑止することができる。
【0072】
[冷房運転時の一例]
ここで、上述した弁切替制御処理における、不図示の空調設備を冷房運転で駆動する際のエンジン本体11と電動ウォータポンプ13の運転状態と、電磁弁(入口側電磁弁)25の開閉設定の一例を
図4に基づいて説明する。
図4に示すように、時間T1において、エンジン本体11が始動されると共に、電動ウォータポンプ13が始動される。そして、時間T2において、潤滑油温が暖機運転時における潤滑油の目標油温(例えば、70℃~80℃)に達している。その後、時間T3において、空調対象室内の温度が設定室内温度に達したため、エンジン本体11が停止された後、所定時間(例えば、約1分~2分)経過した時間T4において、電動ウォータポンプ13が停止される。
【0073】
また、ECU50は、時間T1~時間T2の間は、潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも低い温度であるため(S23:YES)、電磁弁(入口側電磁弁)25を開弁状態に設定して、バイパス通路32Aを開放する(S24)。これにより、バイパス通路32Aに排気ガスの一部を流して、オイル熱交換器22に循環される潤滑油を排気ガスによって加熱し、潤滑油温を上昇させることができる。その結果、GHPエンジン1の始動時に、潤滑油温の上昇を早めて、潤滑油の粘性を低下させることができ、燃費を向上させることができる。
【0074】
そして、ECU50は、時間T2において、潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)以上になったため(S23:NO)、電磁弁(入口側電磁弁)25を開弁状態に設定してバイパス通路32Aを開放する。また、ECU50は、エンジン本体11の暖機運転が終了して定常運転状態に移行した旨を表す定常運転フラグを「ON」に設定する(S25、S26)。
【0075】
これにより、暖機運転を終了した後においても、バイパス通路32Aに排気ガスの一部を流して、オイル熱交換器22を介して潤滑油温を目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)以上の温度まで上昇させることができる。その結果、ECU50は、潤滑油温を確実に冷却水温以上の温度に上昇させ、熱効率を更に上げることができる。
【0076】
その後、ECU50は、時間T2~時間T3において、潤滑油温が潤滑油許容温度(例えば、90℃~95℃である。)より低い温度であるため(S28:YES)、電磁弁(入口側電磁弁)25を開弁状態に設定して、バイパス通路32Aを開放する(S29)。そして、時間T3において、空調対象室内の温度が設定室内温度に達して、エンジン本体11が停止するため(S11:NO)、ECU50は、定常運転フラグを「OFF」に設定した後、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定してバイパス通路32Aを閉塞する(S12、S13)。その後、所定時間(例えば、約1分~2分)経過した時間T4において、電動ウォータポンプ13が停止される。
【0077】
これにより、時間T2において、暖機運転を終了した後、時間T2~時間T3においても、バイパス通路32Aに排気ガスの一部を流して、オイル熱交換器22を介して潤滑油温を目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも高い潤滑油許容温度(例えば、90℃~95℃である。)以下の温度まで上昇させることができ、潤滑油の劣化を抑止しつつ、潤滑油温を確実に冷却水温以上の温度に上昇させ、熱効率を更に上げることができる。
【0078】
また、時間T2~時間T3においても、冷却水が電動ウォータポンプ13によって吐出されてラジエータ12を循環するため、目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも低い冷却水温(例えば、約70℃である。)に設定することができ、GHPエンジン1の信頼性を向上させることができる。また、時間T3~時間T4の間は、冷却水が電動ウォータポンプ13によって吐出されてラジエータ12を循環するため、冷却水温が急激に低下し、潤滑油もウォータジャケット18を介して冷却される。
【0079】
時間T4~時間T5の間は、冷却水温と潤滑油温は、緩やかに低下する。そして、時間T5において、エンジン本体11と電動ウォータポンプ13が再始動される。その結果、ECU50は、時間T5~時間T6の間は、潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも低い温度であるため(S23:YES)、電磁弁(入口側電磁弁)25を開弁状態に設定して、バイパス通路32Aを開放する(S24)。
【0080】
これにより、バイパス通路32Aに排気ガスの一部を流して、オイル熱交換器22に循環される潤滑油を排気ガスによって加熱し、潤滑油温を上昇させることができる。その結果、GHPエンジン1の再始動時に、潤滑油温が冷却水温よりも高い状態で、潤滑油温と冷却水温は共に急激に上昇するため、潤滑油温の上昇を早めて、潤滑油の粘性を低下させることができ、燃費を向上させることができる。
【0081】
そして、ECU50は、時間T6において、潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)以上になったため(S23:NO)、電磁弁(入口側電磁弁)25を開弁状態に設定してバイパス通路32Aを開放する。また、ECU50は、エンジン本体11の暖機運転が終了して定常運転状態に移行した旨を表す定常運転フラグを「ON」に設定する(S25、S26)。
【0082】
その後、ECU50は、時間T6~時間T7において、潤滑油温が潤滑油許容温度(例えば、90℃~95℃である。)より低い温度であるため(S28:YES)、電磁弁(入口側電磁弁)25を開弁状態に設定して、バイパス通路32Aを開放する(S29)。これにより、暖機運転を終了した後においても、バイパス通路32Aに排気ガスの一部を流して、オイル熱交換器22を介して潤滑油温を目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも高い潤滑油許容温度(例えば、90℃~95℃である。)以下の温度まで上昇させることができ、潤滑油の劣化を抑止しつつ、潤滑油温を確実に冷却水温以上の温度に上昇させ、熱効率を更に上げることができる。
【0083】
そして、ECU50は、時間T7において、潤滑油温が潤滑油許容温度(例えば、90℃~95℃である。)以上になったため(S28:NO)、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定してバイパス通路32Aを閉塞する(S30)。これにより、ECU50は、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定して、バイパス通路32Aに排気ガスを流さないように制御することによって、オイル熱交換器22に循環される潤滑油の排気ガスによる加熱を停止させ、潤滑油の劣化を抑止することができる。
【0084】
時間T7~時間T8の間は、潤滑油温が潤滑油許容温度(例えば、90℃~95℃である。)よりも高い温度であるため(S28:NO)、ECU50は、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定して、バイパス通路32Aを閉塞する(S30)。その結果、オイル熱交換器22を循環する潤滑油は排気ガスによって加熱されないため、ウォータジャケット18を介して冷却される。
【0085】
そして、時間T8において、潤滑油温が潤滑油許容温度(例えば、90℃~95℃である。)よりも低い温度になるため(S28:YES)、ECU50は、電磁弁(入口側電磁弁)25を再度、開弁状態に設定して、バイパス通路32Aを開放する(S29)。続いて、ECU50は、時間T8~時間T9において、潤滑油温が潤滑油許容温度(例えば、90℃~95℃である。)より低い温度であるため(S28:YES)、電磁弁(入口側電磁弁)25を開弁状態に設定して、バイパス通路32Aを開放する(S29)。
【0086】
これにより、バイパス通路32Aに排気ガスの一部を流して、オイル熱交換器22を介して潤滑油温を目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも高い潤滑油許容温度(例えば、90℃~95℃である。)以下の温度まで再度、上昇させることができる。その結果、潤滑油の劣化を抑止しつつ、潤滑油温を確実に目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)以上の温度に上昇させ、熱効率を上げることができる。
【0087】
その後、ECU50は、時間T9において、潤滑油温が潤滑油許容温度(例えば、90℃~95℃である。)以上になったため(S28:NO)、電磁弁(入口側電磁弁)25を再度、閉弁状態に設定して、バイパス通路32Aを閉塞する(S30)。そして、時間T9~時間T10の間は、潤滑油温が潤滑油許容温度(例えば、90℃~95℃である。)よりも高い温度であるため(S28:NO)、ECU50は、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定して、バイパス通路32Aを閉塞する(S30)。
【0088】
これにより、ECU50は、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定して、バイパス通路32Aに排気ガスを流さないように制御することによって、オイル熱交換器22に循環される潤滑油の排気ガスによる加熱を停止させ、潤滑油の劣化を抑止することができる。
【0089】
そして、時間T10において、空調対象室内の温度が設定室内温度に達して、エンジン本体11が停止されるため(S11:NO)、ECU50は、定常運転フラグを「OFF」に設定した後、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定してバイパス通路32Aを閉塞する(S12、S13)。その後、所定時間(例えば、約1分~2分)経過した時間T11において、電動ウォータポンプ13が停止される。
【0090】
これにより、時間T7~時間T10の間は、冷却水が電動ウォータポンプ13によって吐出されてラジエータ12を循環するため、目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも低い冷却水温(例えば、約70℃である。)に設定することができ、GHPエンジン1の信頼性を向上させることができる。また、時間T10において、GHPエンジン1が停止された後、時間T10~時間T11の間は、冷却水が電動ウォータポンプ13によって吐出されてラジエータ12を循環するため、冷却水温が急激に低下し、潤滑油もウォータジャケット18を介して冷却される。
【0091】
[暖房運転時の一例]
次に、上述した弁切替制御処理における、不図示の空調設備を暖房運転で駆動する際のエンジン本体11と電動ウォータポンプ13の運転状態と、電磁弁(入口側電磁弁)25の開閉設定の一例を
図5に基づいて説明する。
図5に示すように、時間T21において、エンジン本体11が始動されると共に、電動ウォータポンプ13が始動される。そして、時間T22において、潤滑油温が暖機運転時における潤滑油の目標油温(例えば、70℃~80℃)に達している。その後、時間T23において、空調対象室内の温度が設定室内温度に達したため、エンジン本体11が停止された後、所定時間(例えば、約1分~2分)経過した時間T24において、電動ウォータポンプ13が停止される。
【0092】
また、ECU50は、時間T21~時間T22の間は、潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも低い温度であるため(S17:YES)、電磁弁(入口側電磁弁)25を開弁状態に設定して、バイパス通路32Aを開放する(S18)。これにより、バイパス通路32Aに排気ガスの一部を流して、オイル熱交換器22に循環される潤滑油を排気ガスによって加熱し、潤滑油温を上昇させることができる。その結果、GHPエンジン1の始動時に、潤滑油温の上昇を早めて、潤滑油の粘性を低下させることができ、燃費を向上させることができる。
【0093】
そして、ECU50は、時間T22において、潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)以上になったため(S17:NO)、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定してバイパス通路32Aを閉塞する。また、ECU50は、エンジン本体11の暖機運転が終了して定常運転状態に移行した旨を表す定常運転フラグを「ON」に設定する(S19、S20)。
【0094】
これにより、暖機運転を終了した後は、つまり、オイル熱交換器22を介して潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)以上の温度まで上昇させた後は、排気ガスの全量を排気熱交換器33に流して、冷却水の水温上昇を高くすることができ、暖房効率を高くすることができる。
【0095】
そして、時間T23において、空調対象室内の温度が設定室内温度に達して、エンジン本体11が停止するため(S11:NO)、ECU50は、定常運転フラグを「OFF」に設定した後、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定してバイパス通路32Aを閉塞する(S12、S13)。これにより、時間T23~時間T24の間は、冷却水が電動ウォータポンプ13によって吐出されてラジエータ12を循環するため、冷却水温が急激に低下し、潤滑油もウォータジャケット18を介して冷却される。その後、時間T24~時間T25の間は、冷却水温と潤滑油温は、緩やかに低下する。
【0096】
そして、時間T25において、エンジン本体11と電動ウォータポンプ13が再始動される。その後、時間T26において、潤滑油温が暖機運転時における潤滑油の目標油温(例えば、70℃~80℃)に達している。そして、時間T27において、空調対象室内の温度が設定室内温度に達したため、エンジン本体11が停止された後、所定時間(例えば、約1分~2分)経過した時間T28において、電動ウォータポンプ13が停止される。
【0097】
また、ECU50は、時間T25~時間T26の間は、潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも低い温度であるため(S17:YES)、電磁弁(入口側電磁弁)25を開弁状態に設定して、バイパス通路32Aを開放する(S18)。これにより、バイパス通路32Aに排気ガスの一部を流して、オイル熱交換器22に循環される潤滑油を排気ガスによって加熱し、潤滑油温を上昇させることができる。その結果、GHPエンジン1の再始動時に、潤滑油温の上昇を早めて、潤滑油の粘性を低下させることができ、燃費を向上させることができる。
【0098】
そして、ECU50は、時間T26において、潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)以上になったため(S17:NO)、電磁弁(入口側電磁弁)25を閉弁状態に設定してバイパス通路32Aを閉塞する。また、ECU50は、エンジン本体11の暖機運転が終了して定常運転状態に移行した旨を表す定常運転フラグを「ON」に設定する(S19、S20)。
【0099】
これにより、ECU50は、時間T26において、暖機運転を終了した後は、つまり、オイル熱交換器22を介して潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)以上の温度まで上昇させた後は、時間T26~時間T27において、排気ガスの全量を排気熱交換器33に流して、冷却水の水温上昇を高くすることができ、暖房効率を高くすることができる。また、時間T27において、GHPエンジン1が停止された後、時間T27~時間T28の間は、冷却水が電動ウォータポンプ13によって吐出されてラジエータ12を循環するため、冷却水温が急激に低下し、潤滑油もウォータジャケット18を介して冷却される。
【0100】
ここで、電磁弁(入口側電磁弁)25と電磁弁(出口側電磁弁)26は、電磁式弁装置の一例として機能する。ECU50は、弁切替制御装置、第1温度判定部、第1弁制御部、冷房運転判定部、第2弁制御部、第2温度判定部、第3弁制御部、暖房運転判定部、第4弁制御部、エンジン停止判定部、第5弁制御部の一例として機能する。
【0101】
尚、前記実施形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
【0102】
本発明のGHPエンジンは、前記実施形態で説明した構成、構造、外観、形状、処理手順等に限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変更、改良、追加、削除が可能である。尚、以下の説明において上記
図1~
図5のGHPエンジン1等と同一符号は、前記GHPエンジン1等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0103】
[他の第1実施形態]
(A)例えば、
図6に示すように、他の第1実施形態に係るGHPエンジン71では、電磁弁(入口側電磁弁)25に替えて、バイパス通路32Aのオイル熱交換器22よりも上流側に、バイパス通路32Aを流れる排気ガスの流量を可変可能な入口側流量調整電磁弁72を設けるようにしてもよい。入口側流量調整電磁弁72は、バイパス通路32Aの入口側にできるだけ近い位置に設けられるのが好ましい。入口側流量調整電磁弁72は、ECU50からの制御信号に基づいて、バイパス通路32Aの入口側から下流側へ流入する排気ガスの流量を、全閉状態から全開状態の間で可変可能に構成されている。
【0104】
若しくは、
図6に示すように、電磁弁(入口側電磁弁)25に替えて、バイパス通路32Aのオイル熱交換器22よりも下流側に、バイパス通路32Aを流れる排気ガスの流量を可変可能な出口側流量調整電磁弁73を設けるようにしてもよい。出口側流量調整電磁弁73は、バイパス通路32Aの出口側にできるだけ近い位置に設けられるのが好ましい。出口側流量調整電磁弁73は、ECU50からの制御信号に基づいて、バイパス通路32Aから排気通路32へ流出する排気ガスの流量を、全閉状態から全開状態の間で可変可能に構成されている。
【0105】
従って、ECU50は、潤滑油温に基づいて、入口側流量調整電磁弁72又は出口側流量調整電磁弁73を介して、バイパス通路32Aの入口側から出口側へ流れる排気ガスの流量を全閉状態から全開状態の間で可変設定することができる。例えば、上記ステップS18、ステップS24及びステップS25において、ECU50は、潤滑油温が目標油温(例えば、約70℃~80℃である。)よりも低い温度の場合には、入口側流量調整電磁弁72又は出口側流量調整電磁弁73を介して、バイパス通路32Aを流れる排気ガスの流量を多くするように設定する(例えば、全開状態に設定する)ようにしてもよい。これにより、オイル熱交換器22に循環される潤滑油の温度上昇を早めることができる。その結果、GHPエンジン71の始動時及び再始動時に、潤滑油温の上昇を早めて、潤滑油の粘性を低下させることができ、燃費を向上させることができる。
【0106】
また、例えば、上記ステップS29において、ECU50は、潤滑油温と潤滑油許容温度との差が小さくなるに従って、入口側流量調整電磁弁72又は出口側流量調整電磁弁73を全開状態から全閉状態へ連続的、又は、段階的に可変設定するようにして、排気ガスの流量が連続的、又は、段階的に少なくなるように制御するようにしてもよい。また、ECU50は、潤滑油温と潤滑油許容温度との差が大きくなるに従って、入口側流量調整電磁弁72又は出口側流量調整電磁弁73を全閉状態から全開状態へ連続的、又は、段階的に可変設定するようにして、排気ガスの流量が連続的、又は、段階的に多くなるように制御するようにしてもよい。
【0107】
これにより、ECU50は、オイル熱交換器22を介して、潤滑油温が目標油温と潤滑油許容温度との間で変化するように制御することが可能となる。その結果、オイル熱交換器22に循環される潤滑油の温度上昇を潤滑油許容温度以下になるように抑え、潤滑油の劣化を抑止することができる。
【0108】
[他の第2実施形態]
(B)また、例えば、オイル熱交換器22に替えて、バイパス通路32Aをエンジン本体11内の潤滑油が存在する場所(例えば、オイルパンなど)に通し、バイパス通路32Aを流れる排気ガスと潤滑油との熱交換を行うように構成してもよい。これにより、オイル熱交換器22をエンジン本体11の外部(例えば、側壁部)に設ける必要がなく、部品点数の削減化を図ることができる。
【0109】
[他の第3実施形態]
(C)また、例えば、ECU50は、潤滑油の潤滑油温をエンジン本体11の運転状態(エンジン回転数、負荷トルク、外気温、運転時間など)から推定するようにしてもよい。これにより、潤滑油温検出装置38を削減して、部品点数の削減化を図ることができる。
【符号の説明】
【0110】
1、71 ガスヒートポンプエンジン(GHPエンジン)
11 エンジン本体
12 ラジエータ
13 電動ウォータポンプ
15 冷却水回路
15A 流入通路
16 オイルポンプ
22 オイル熱交換器
32 排気通路
32A バイパス通路
33 排気熱交換器
25 電磁弁(入口側電磁弁)
26 電磁弁(出口側電磁弁)
37 冷却水温検出装置
38 潤滑油温検出装置
39 回転検出装置
41 暖房スイッチ
42 冷房スイッチ
50 制御装置(ECU)
72 入口側流量調整電磁弁
73 出口側流量調整電磁弁