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特開2022-174421複合材構造体の製造装置及び複合材構造体の製造方法
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  • 特開-複合材構造体の製造装置及び複合材構造体の製造方法 図1
  • 特開-複合材構造体の製造装置及び複合材構造体の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174421
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】複合材構造体の製造装置及び複合材構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/44 20060101AFI20221116BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20221116BHJP
   B29C 39/42 20060101ALI20221116BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20221116BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20221116BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20221116BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20221116BHJP
【FI】
B29C39/44
B29C39/10
B29C39/42
B29C70/06
B29C70/42
B29C70/54
B29K105:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080208
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】倭 誉
【テーマコード(参考)】
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F204AA36
4F204AC05
4F204AD16
4F204AM28
4F204AR14
4F204EA03
4F204EB01
4F204EB11
4F204EF30
4F204EF47
4F204EK09
4F204EK17
4F204EK26
4F205AA36
4F205AC05
4F205AD16
4F205AM28
4F205AR14
4F205HA06
4F205HA12
4F205HA27
4F205HA33
4F205HA37
4F205HB01
4F205HB11
4F205HF30
4F205HF46
4F205HK05
4F205HK22
(57)【要約】
【課題】複合材構造体を製造する際に使用する樹脂の量を低減し、コストを低減することを目的とする。
【解決手段】複合材構造体の製造装置1は、樹脂が含浸された繊維強化シートを有する。
複合材構造体の製造装置1は、空間Sが形成され、空間Sに繊維強化シートが配置される治具10と、空間Sに前記樹脂を注入する樹脂注入部20と、空間Sから空気を排出する空気排出部30と、空間Sから樹脂を吸入するとともに、吸入した樹脂を空間Sへ供給する樹脂循環部40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂が含浸された繊維強化シートを有する複合材構造体の製造装置であって、
空間が形成され、該空間に前記繊維強化シートが配置される治具と、
前記空間に前記樹脂を注入する樹脂注入部と、
前記空間からガスを排出するガス排出部と、
前記空間から前記樹脂を吸入するとともに、吸入した前記樹脂を前記空間へ供給する樹脂循環部と、を備える複合材構造体の製造装置。
【請求項2】
前記樹脂循環部は、前記空間から吸入した前記樹脂を貯留する貯留部と、前記空間と前記貯留部とを接続する樹脂流通配管と、を有し、
前記樹脂流通配管は、前記空間から吸入される前記樹脂及び前記空間へ供給される前記樹脂が流通する請求項1に記載の複合材構造体の製造装置。
【請求項3】
前記貯留部は、前記樹脂を貯留する閉空間が内部に形成されていて、
前記貯留部には、前記閉空間へガスを供給するとともに、前記閉空間からガスを排出するガス配管が接続されている請求項2に記載の複合材構造体の製造装置。
【請求項4】
前記樹脂循環部は、前記空間から吸入した前記樹脂を貯留する貯留部と、前記空間と前記貯留部とを接続し、前記空間から吸入される前記樹脂が流通する往路配管と、前記空間と前記貯留部とを接続し、前記空間へ供給される前記樹脂が流通する復路配管と、を備える請求項1に記載の複合材構造体の製造装置。
【請求項5】
前記樹脂循環部は、前記往路配管を介して前記空間から前記樹脂を吸入し、前記復路配管を介して前記空間へ前記樹脂を供給する循環装置を有する請求項4に記載の複合材構造体の製造装置。
【請求項6】
樹脂が含浸された繊維強化シートを有する複合材構造体の製造方法であって、
治具に形成された空間に前記繊維強化シートを配置する配置工程と、
樹脂注入部によって、前記繊維強化シートが配置された前記空間に前記樹脂を注入する注入工程と、
ガス排出部によって、前記空間からガスを排出する排出工程と、
樹脂循環部によって、前記空間から前記樹脂を吸入する吸入工程と、
前記樹脂循環部によって、前記吸入工程で吸入した前記樹脂を前記空間へ供給する供給工程と、を備える複合材構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材構造体の製造装置及び複合材構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機の胴体、主翼等の航空機部品は、複合材(例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP))が用いられるものがある。航空機部品を構成するCFRP製の構造部材(複合材構造体)は、任意の断面形状を有している。このような任意の断面形状を有する複合材構造体を製造する方法の1つに、強化繊維シートを硬化型等の治具に組み付けて、この強化繊維シートを硬化及び成形する方法が知られている。具体的には、例えば、目的の形状に対応する空間が形成された硬化型に強化繊維シートを配置し、強化繊維シートが配置された空間に樹脂を注入し、樹脂を含浸させた繊維強化シートを硬化させることで、目的の形状を有する複合材構造体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、金型にドライ繊維プリフォームを配置し、ドライ繊維プリフォームに熱硬化性の樹脂を真空注入して含浸させ、これを加熱して樹脂を硬化させる方法が記載されている。この方法では、金型にはリザーバ44から樹脂入口48を介して樹脂が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6918985号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、ドライ繊維プリフォームに樹脂を含浸させる際に、気泡が金型から全て排出されるまで金型に樹脂を注入し続ける。このとき、余剰分の樹脂は金型から排出され、樹脂出口を介して樹脂トラップに導入される。このため、余剰分の樹脂を含めた量の樹脂を金型へ供給する必要があるので、使用する樹脂の量が増大し、コストが増大するという問題があった。特に、注入する樹脂が低粘度である場合には、樹脂が気泡をより動かし難くなるので、気泡を金型から排出するために、より多量の樹脂を注入する必要があった。このため、コストがより増大する可能性があった。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複合材構造体を製造する際に使用する樹脂の量を低減し、コストを低減することができる複合材構造体の製造装置及び複合材構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の複合材構造体の製造装置及び複合材構造体の製造方法は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る複合材構造体の製造装置は、樹脂が含浸された繊維強化シートを有する複合材構造体の製造装置であって、空間が形成され、該空間に前記繊維強化シートが配置される治具と、前記空間に前記樹脂を注入する樹脂注入部と、前記空間からガスを排出するガス排出部と、前記空間から前記樹脂を吸入するとともに、吸入した前記樹脂を前記空間へ供給する樹脂循環部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る複合材構造体の製造方法は、樹脂が含浸された繊維強化シートを有する複合材構造体の製造方法であって、治具に形成された空間に前記繊維強化シートを配置する配置工程と、樹脂注入部によって、前記繊維強化シートが配置された前記空間に前記樹脂を注入する注入工程と、ガス排出部によって、前記空間からガスを排出する排出工程と、樹脂循環部によって、前記空間から前記樹脂を吸入する吸入工程と、前記樹脂循環部によって、前記吸入工程で吸入した前記樹脂を前記空間へ供給する供給工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、複合材構造体を製造する際に使用する樹脂の量を低減し、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1実施形態に係る複合材構造体の製造装置の構成を示す図である。
図2】本開示の第2実施形態に係る複合材構造体の製造装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る複合材構造体の製造装置及び複合材構造体の製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態について、図1を用いて説明する。複合材構造体の製造装置で製造される複合材構造体は、強化繊維シートに樹脂を含浸させて製造される。すなわち、複合材構造体は、樹脂を含浸させた強化繊維シートを有している。複合材構造体は、例えば、航空機構造体を構成する航空機部品である胴体パネル等に用いられる。
【0013】
本実施形態に係る複合材構造体の製造装置1は、図1に示すように、凹部11によって空間が形成される硬化治具(治具)10と、硬化治具10の空間に樹脂を注入する樹脂注入部20と、硬化治具10の空間から空気を排出する空気排出部(ガス排出部)30と、空間から樹脂を吸入するとともに、吸入した樹脂を空間へ供給する樹脂循環部40と、を備えている。
【0014】
硬化治具10は、例えば金属材料で形成されている。硬化治具10は、例えば、外形が略直方体形状の部材である。硬化治具10は、上面から凹む凹部11が形成されている。凹部11は、強化繊維シートが配置される空間Sを規定している。換言すれば、凹部11の内部には空間Sが形成されている。凹部11の形状は、目標とする複合材構造体の形状に応じた形状とされる。
【0015】
樹脂注入部20は、凹部11(空間S)に注入する樹脂を貯留する樹脂注入タンク21と、樹脂注入タンク21と凹部11(空間S)とを接続する樹脂注入配管22と、を有する。樹脂注入部20が注入する樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂である。
【0016】
空気排出部30は、凹部11(空間S)に接続する排気配管31を有する。排気配管31の上流端は、凹部11の壁面に接続している。排気配管31の上流端にはフィルタ(図示省略)が設けられている。フィルタは、空気は通過させ、樹脂は通過させない。このため、排気配管31内は、空気のみが流通し、樹脂は流通しない。排気配管31の途中位置には、真空ポンプ32が設けられている。
【0017】
樹脂循環部40は、凹部11(空間S)から吸入した樹脂を貯留する別口タンク(貯留部)41と、凹部11(空間S)と別口タンク41とを接続する樹脂流通配管42と、硬化治具10と別口タンク41との間で樹脂を循環させる循環装置43と、を有する。
【0018】
別口タンク41は、内部に閉空間が形成されている。別口タンク41は、閉空間に一時的に樹脂を貯留する。別口タンク41は、硬化治具10の上方に配置されている。なお、別口タンク41の配置はこれに限定されず、硬化治具10の上方以外に配置されててもよい。
樹脂流通配管42は、第1端部が別口タンク41の側壁に接続されている。また、樹脂流通配管42は、第2端部が凹部11(空間S)に接続されている。なお、樹脂流通配管42の第1端部は、別口タンク41の側壁を貫通するように接続されていてもよい。また、樹脂流通配管42は、例えば透明な配管としてもよい。透明な配管とすることで、内部を流通する樹脂及び樹脂に含まれる空気(気泡等)が視認可能となる。
【0019】
循環装置43は、凹部11(空間S)から樹脂を吸入するとともに、吸入した樹脂を凹部11(空間S)へ供給する。循環装置43は、別口タンク41に接続される空気配管(ガス配管)44と、空気配管44の途中位置に設けられる空気ポンプ45と、を有する。空気配管44は、下流端が別口タンク41の側壁の上部に接続されている。詳細には、空気配管44の下流端は、樹脂流通配管42と別口タンク41との接続箇所よりも、上方に接続されている。空気ポンプ45は、空気配管44を介して、別口タンク41の内部の上部に空気を供給する。また、空気ポンプ45は、空気配管44を介して、別口タンク41の内部の上部から空気を吸引する。すなわち、空気配管44は、別口タンク41の内部の空気を、別口タンク41の外部へ排出する。
【0020】
循環装置43は、空気ポンプ45によって別口タンク41の内部の上部から空気を吸引することで、樹脂流通配管42を介して凹部11(空間S)から樹脂を吸入する。また、循環装置43は、空気ポンプ45によって別口タンク41の上部に空気を供給することで、別口タンク41内の樹脂を、樹脂流通配管42を介して凹部11(空間S)へ供給する。
【0021】
また、複合材構造体の製造装置1は、真空ポンプ32及び空気ポンプ45の駆動及び停止を制御する制御装置(図示省略)を備えている。
制御装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0022】
次に、本実施形態に係る複合材構造体の製造方法について説明する。
まず、硬化治具10に形成された凹部11の底面に強化繊維シートを配置する。換言すれば、空間Sに強化繊維シートを配置する(配置工程)。
【0023】
次に、強化繊維シートを配置した硬化治具10を上方から真空バッグ(図示省略)で覆う。次に、真空ポンプ32を起動し、排気配管31を介して、凹部11(空間S)内の空気を排出する(排出工程)次に、樹脂注入部20によって、硬化治具10の凹部11(空間S)に樹脂を注入し、強化繊維シートに樹脂を含浸させる(注入工程)。詳細には、樹脂注入タンク21内に貯留された樹脂を、樹脂注入配管22を介して凹部11(空間S)に注入する。このとき、真空ポンプ32を起動した状態を維持し、排気配管31を介して、凹部11(空間S)内の気泡を排出し、凹部11(空間S)内に空隙が形成されないようにする(排出工程)。また、このとき、排気配管31の上流端には、樹脂の流通を妨げるフィルタが取付けられているので、凹部11(空間S)内の空気(気泡等)のみが排気配管31を介して排出され、凹部11(空間S)内の樹脂は排気配管31を介して排出されない。
【0024】
また、このとき、樹脂循環部40によって、凹部11(空間S)から樹脂を吸入したり、吸入した樹脂を凹部11(空間S)へ供給したりする(吸入工程及び供給工程)。樹脂の吸入及び供給は、適宜切り換えられる。例えば、樹脂流通配管42内を流通する樹脂を観察し、吸入する樹脂に気泡が含まれている間は、樹脂の吸入を継続してもよい。また、凹部11への樹脂の供給は、吸入する樹脂に気泡が含まれなったタイミングで行ってもよい。また、樹脂の吸入及び供給は、上述のように、循環装置43によって行われる。
また、凹部11から吸入された樹脂は、別口タンク41内に導入される。凹部11内の樹脂には、空気(例えば、気泡)が混入している。このため、別口タンク41内に導入される樹脂にも気泡が混入しているが、別口タンク41内おいて、樹脂に混入した空気は上昇し樹脂から別離する。樹脂から別離した樹脂は、別口タンク41の上部に貯留する。一方、空気が分離された樹脂は、別口タンク41の下部に貯留する。このように、別口タンク41内では、樹脂と空気とが分離する。別口タンク41から凹部11(空間S)へ供給される樹脂は、空気が分離された樹脂としている。
【0025】
樹脂注入部20による樹脂の注入、排気配管31による空気の排出及び樹脂循環部40による樹脂の循環は、所定の時間継続される。所定時間は、例えば、予備試験等で凹部11(空間S)から気泡を排出するのに要した時間等に基づいて決定されてもよい。また、例えば、強化繊維シートに樹脂が完全に含浸するのに要した時間に基づいて決定されてもよい。
【0026】
所定時間経過すると、真空ポンプ32等を停止し、樹脂注入部20による樹脂の注入、排気配管31による空気の排出及び樹脂循環部40による樹脂の循環を停止する。次に、樹脂が含浸された繊維強化シートを加熱し、硬化させる。次に、真空バッグを外し、硬化した樹脂が含浸された繊維強化シートを硬化治具10から取り外す。このようにして、所望の形状の複合材構造体を製造する。
【0027】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、空間Sから樹脂を吸入するとともに、吸入した樹脂を空間Sへ供給する樹脂循環部40を備えている。これにより、樹脂循環部40が空間Sから樹脂を吸入することで、樹脂とともに樹脂に含まれる空気(例えば、気泡等)が空間Sから排出することができる。また、樹脂循環部40が空間Sから樹脂を吸入し、また、吸入した樹脂を空間Sへ供給することで、空間Sに存在する樹脂が大きく流動する。このため、空間Sにおいて、樹脂に含まれる気泡等の流動も大きくなる。このため、空気排出部30から気泡等を排出し易くすることができる。
このように、本実施形態では、空間Sから気泡等の空気を好適に排出することができる。これにより、空間Sに気泡等の空気が残留し難くすることができる。したがって、樹脂が含浸された繊維強化シートを有する複合材構造体において、樹脂に気泡等の空気が残ることに起因する複合材構造体の品質の低下を抑制することができる。
【0028】
また、本実施形態では、樹脂循環部40が吸入した樹脂を空間Sへ供給する。これにより、例えば、樹脂を硬化治具10に戻さない場合と比較して、複合材構造体を製造する際に使用する樹脂量を低減することができる。したがって、コストを低減することができる。
【0029】
また、本実施形態では、樹脂循環部40が、空間Sから吸入される樹脂及び空間Sへ供給される樹脂が流通する樹脂流通配管42を有している。これにより、一つの樹脂流通配管42で、樹脂の吸入及び樹脂の供給を行うことができる。したがって、樹脂の吸入と樹脂の供給とを異なる配管で行う場合と比較して、部品点数を低減し、構造を簡素化することができる。したがって、複合材構造体の製造装置1を小型化することができる。また、複合材構造体の製造装置1を製造するコストを低減することができる。
【0030】
[変形例]
なお、循環装置は、上記説明の例に限定されない。例えば、循環装置は、別口タンク41の上部に設けられる蓋部と、この蓋部を上下に移動させる駆動部とを有していてもよい。この場合には、駆動部によって蓋部を上方に移動させることで、別口タンク41内に貯留されている樹脂を引き上げ、樹脂流通配管42を介して凹部11(空間S)から樹脂を吸入する。また、駆動部によって蓋部を下方に移動させることで、別口タンク41内に貯留されている樹脂を上方から押圧し、別口タンク41内の樹脂を、樹脂流通配管42を介して凹部11(空間S)へ供給する。
【0031】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態について、図2を用いて説明する。本実施形態は、樹脂循環部が2つの樹脂流通配管を備える点で上記第1実施形態と異なる。また、樹脂循環部が有する循環装置が上記第1実施形態と異なる。その他の点は、第1実施形態と同様であるので、同様の構成については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0032】
本実施形態に係る複合材構造体の製造装置51は、樹脂循環部60を備える。樹脂循環部60は、別口タンク41と、凹部11(空間S)から吸入される樹脂が流通する第1樹脂流通配管(往路配管)62Aと、凹部11(空間S)へ供給される樹脂が流通する第2樹脂流通配管(復路配管)62Bと、を有する。
また、樹脂循環部60は、別口タンク41に設けられ、第1樹脂流通配管62Aを介して凹部11(空間S)から樹脂を吸入し、第2樹脂流通配管62Bを介して凹部11(空間S)へ樹脂を供給する循環ファン(循環装置)65を有する。
【0033】
第1樹脂流通配管62Aは、上流端部が凹部11(空間S)に接続されている。また、第1樹脂流通配管62Aは、下流端部が別口タンク41の側壁に接続されている。第2樹脂流通配管62Bは、下流端部が凹部11(空間S)に接続されている。また、第2樹脂流通配管62Bは、上流端部が別口タンク41の側壁に接続されている。なお、第1樹脂流通配管62Aの下流端部及び第2樹脂流通配管62Bの上流端部は、別口タンク41の側壁を貫通するように接続されていてもよい。
【0034】
循環ファン65は、別口タンク41の内部に配置されている。循環ファン65は、第1樹脂流通配管62Aの下流端の近傍に配置されている。
【0035】
本実施形態では、樹脂注入部20による樹脂の注入及び排気配管31による空気の排出が行われる際に、循環ファン65を駆動し、第1樹脂流通配管62A及び第2樹脂流通配管62Bを介して、硬化治具10と別口タンク41との間で樹脂を循環させる。
【0036】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、樹脂循環部60が、空間Sから吸入される樹脂が流通する第1樹脂流通配管62A及び空間Sへ供給される樹脂が流通する第2樹脂流通配管62Bを有している。これにより、別口タンク41への樹脂の吸入と、別口タンク41から空間Sへの樹脂の供給とを同時に行うことができる。したがって、樹脂の吸入と樹脂の供給とを1つの配管で行う場合と比較して、硬化治具10に設けられた空間Sと別口タンク41との間を循環する樹脂の量を多くすることができる。よって、より好適に、空間Sから気泡等のガスを排出することができる。
【0037】
また、本実施形態では、樹脂循環部60が循環ファン65を有している。これにより、循環ファン65によって、第1樹脂流通配管62Aを介して空間Sから樹脂を吸入することができる。また、循環ファン65によって、第2樹脂流通配管62Bを介して空間Sへ樹脂を供給することができる。したがって、より確実に、別口タンク41への樹脂の吸入と、別口タンク41から空間Sへの樹脂の供給とを行うことができる。
【0038】
[変形例]
なお、上記説明では循環ファン65を設ける例について説明したが、循環ファン65を設けなくてもよい。別口タンク41に吸入された樹脂が別口タンク41内で冷却されることで、別口タンク41と硬化治具10との間で熱対流が生じる場合には、別口タンク41と硬化治具10との間で樹脂の循環が生じる。このため、循環ファン65等の樹脂を循環させるための動力を設けなくてもよい。この場合には、循環ファン65等の樹脂を循環させるための動力を設ける場合と比較して、部品点数を低減し、構造を簡素化することができる。したがって、複合材構造体の製造装置51を製造するコストを低減することができる。また、樹脂を循環させるための動力を要しないので、ランニングコストを低減することができる。
【0039】
なお、本開示は、上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
例えば、樹脂注入配管22,排気配管31、樹脂流通配管42及び空気配管44に、弁を設けてもよい。各配管に設けられた弁は、制御装置によって開度を制御されてもよい。
また、上記各実施形態では、硬化治具10に真空バッグを上方から被せることで空間Sを覆う例について説明したが、空間Sを覆う方法はこれに限定されない。例えば、硬化治具10に上方からハードツール(例えば、カウルプレートや、別の硬化治具)を被せることで空間Sを覆ってもよい。
【0040】
以上説明した実施形態に記載の複合材構造体の製造装置及び複合材構造体の製造方法は、例えば以下のように把握される。
本開示の一態様に係る複合材構造体の製造装置は、樹脂が含浸された繊維強化シートを有する複合材構造体の製造装置(1)であって、空間(S)が形成され、該空間に前記繊維強化シートが配置される治具(10)と、前記空間に前記樹脂を注入する樹脂注入部(20)と、前記空間からガスを排出するガス排出部(30)と、前記空間から前記樹脂を吸入するとともに、吸入した前記樹脂を前記空間へ供給する樹脂循環部(40)と、を備える。
【0041】
上記構成では、空間から樹脂を吸入するとともに、吸入した樹脂を空間へ供給する樹脂循環部を備えている。これにより、樹脂循環部が空間から樹脂を吸入することで、樹脂とともに樹脂に含まれるガス(例えば、気泡等)が空間から排出することができる。また、樹脂循環部が空間から樹脂を吸入し、また、吸入した樹脂を空間へ供給することで、空間に存在する樹脂が大きく流動する。このため、空間において、樹脂に含まれる気泡等の流動も大きくなる。このため、ガス排出部から気泡等を排出し易くすることができる。
このように、上記構成では、空間から気泡等のガスを好適に排出することができる。これにより、空間に気泡等のガスが残留し難くすることができる。したがって、樹脂が含浸された繊維強化シートを有する複合材構造体において、樹脂に気泡等のガスが残ることに起因する複合材構造体の品質の低下を抑制することができる。
【0042】
また、上記構成では、樹脂循環部が吸入した樹脂を空間へ供給する。これにより、例えば、樹脂を治具に戻さない場合と比較して、複合材構造体を製造する際に使用する樹脂量を低減することができる。したがって、コストを低減することができる。
【0043】
また、本開示の一態様に係る複合材構造体の製造装置は、前記樹脂循環部は、前記空間から吸入した前記樹脂を貯留する貯留部(41)と、前記空間と前記貯留部とを接続する樹脂流通配管(42)と、を有し、前記樹脂流通配管は、前記空間から吸入される前記樹脂及び前記空間へ供給される前記樹脂が流通する。
【0044】
上記構成では、樹脂循環部が、空間から吸入される樹脂及び空間へ供給される樹脂が流通する樹脂流通配管を有している。これにより、一つの樹脂流通配管で、樹脂の吸入及び樹脂の供給を行うことができる。したがって、樹脂の吸入と樹脂の供給とを異なる配管で行う場合と比較して、部品点数を低減し、構造を簡素化することができる。したがって、製造装置を小型化することができる。また、製造装置を製造するコストを低減することができる。
【0045】
また、本開示の一態様に係る複合材構造体の製造装置は、前記貯留部は、前記樹脂を貯留する閉空間が内部に形成されていて、前記貯留部には、前記閉空間へガスを供給するとともに、前記閉空間からガスを排出するガス配管(44)が接続されている。
【0046】
上記構成では、貯留部に、閉空間へガスを供給するとともに、閉空間からガスを排出するガス配管が接続されている。これにより、ガス配管によって貯留部の内部のガスを排出することで、樹脂流通配管を介して治具に形成された空間から貯留部へ樹脂が移動する。すなわち、樹脂の吸入を行うことができる。また、ガス配管によって貯留部の内部に空気を供給することで、樹脂流通配管を介して貯留部から治具に形成された空間へ樹脂が移動する。すなわち、樹脂の供給を行うことができる。
【0047】
また、本開示の一態様に係る複合材構造体の製造装置は、前記樹脂循環部は、前記空間から吸入した前記樹脂を貯留する貯留部(41)と、前記空間と前記貯留部とを接続し、前記空間から吸入される前記樹脂が流通する往路配管(62A)と、前記空間と前記貯留部とを接続し、前記空間へ供給される前記樹脂が流通する復路配管(62B)と、を備える。
【0048】
上記構成では、樹脂循環部が、空間から吸入される樹脂が流通する往路配管及び空間へ供給される樹脂が流通する復路配管を有している。これにより、貯留部への樹脂の吸入と、貯留部から空間への樹脂の供給とを同時に行うことができる。したがって、樹脂の吸入と樹脂の供給とを1つの配管で行う場合と比較して、治具に設けられた空間と貯留部との間を循環する樹脂の量を多くすることができる。よって、より好適に、空間から気泡等のガスを排出することができる。
【0049】
また、本開示の一態様に係る複合材構造体の製造装置は、前記樹脂循環部は、前記往路配管を介して前記空間から前記樹脂を吸入し、前記復路配管を介して前記空間へ前記樹脂を供給する循環装置(65)を有する。
【0050】
上記構成では、樹脂循環部が循環装置を有している。これにより、循環装置によって、往路配管を介して空間から樹脂を吸入することができる。また、循環装置によって、復路配管を介して空間へ樹脂を供給することができる。したがって、より確実に、貯留部への樹脂の吸入と、貯留部から空間への樹脂の供給とを行うことができる。
【0051】
本開示の一態様に係る複合材構造体の製造方法は、樹脂が含浸された繊維強化シートを有する複合材構造体の製造方法であって、治具(10)に形成された空間(S)に前記繊維強化シートを配置する配置工程と、樹脂注入部(20)によって、前記繊維強化シートが配置された前記空間に前記樹脂を注入する注入工程と、ガス排出部(30)によって、前記空間からガスを排出する排出工程と、樹脂循環部(40)によって、前記空間から前記樹脂を吸入する吸入工程と、前記樹脂循環部によって、前記吸入工程で吸入した前記樹脂を前記空間へ供給する供給工程と、を備える。
【符号の説明】
【0052】
1 :製造装置
10 :硬化治具(治具)
11 :凹部
20 :樹脂注入部
21 :樹脂注入タンク
22 :樹脂注入配管
30 :空気排出部(ガス排出部)
31 :排気配管
32 :真空ポンプ
40 :樹脂循環部
41 :別口タンク(貯留部)
42 :樹脂流通配管
43 :循環装置
44 :空気配管(ガス配管)
45 :空気ポンプ
51 :製造装置
60 :樹脂循環部
62A :第1樹脂流通配管
62B :第2樹脂流通配管
65 :循環ファン
S :空間
図1
図2