(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174438
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】半田付け方法および半田付け装置
(51)【国際特許分類】
B23K 3/02 20060101AFI20221116BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20221116BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B23K3/02 R
H05K3/34 507N
B23K1/00 330E
B23K1/00 330D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080229
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】314000280
【氏名又は名称】株式会社アンド
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 満男
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA02
5E319AB01
5E319AC01
5E319AC16
5E319AC17
5E319BB02
5E319CC54
5E319CD04
5E319CD26
5E319GG03
(57)【要約】
【課題】予備半田層が表面に形成されたランドやパッドと電子部品の電極とを半田付けする場合に半田ボールが生成しないようにする。
【解決手段】略筒形状で上下方向に貫通した半田孔51を有し加熱可能な鏝先5aを用いて、プリント回路基板CBの表面の予備半田層PSが予め形成されたランドLdと電子部品Epのピン電極Pとを半田付けする方法であって、鏝先5aの下面をプリント回路基板CBに接触させる工程と、半田孔51内に半田片Whを供給する工程と、供給された半田片Whを半田孔51内で加熱溶融させてランドLdと電子部品Epのピン電極Pとを半田付けする工程とを有する。そして、鏝先5aとして下面に凹部52が設けられたものを用い、凹部52の底面には半田孔51の下端開口が形成され、平面視において凹部52の内周面は予備半田層PSを囲むように位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略筒形状で上下方向に貫通した半田孔を有し加熱可能な鏝先を用いて、プリント回路基板の表面の予備半田層が予め形成されたランド又はパッドと電子部品の電極とを半田付けする方法であって、
前記鏝先の下面を前記プリント回路基板に接触させる工程と、
前記半田孔内に半田片を供給する工程と、
供給された前記半田片を前記半田孔内で加熱溶融させて前記ランド又は前記パッドと前記電子部品の電極とを半田付けする工程と、
を有し、
前記鏝先として下面に凹部が設けられたものを用い、前記凹部の底面には前記半田孔の下端開口が形成され、平面視において前記凹部の内周面は前記予備半田層を囲むように位置することを特徴とする半田付け方法。
【請求項2】
前記凹部の上下方向深さが前記予備半田層の上下方向厚みよりも深い請求項1記載の半田付け方法。
【請求項3】
前記凹部の上下方向深さが25μm以上500μm以下である請求項1又は2記載の半田付け方法。
【請求項4】
電子部品の部品本体から外方に突出したピン電極をプリント回路基板板のスルーホールに挿通して前記スルーホールの外周縁に形成されたランドに前記ピン電極を半田付けする半田付け方法であって、
前記半田孔はその下端部に半径方向外方に拡大した拡大部を有し、
前記拡大部の上下方向長さと前記凹部の上下方向深さの和が、前記ピン電極の前記プリント回路基板の表面からの突出長さよりも長い請求項1~3のいずれかに記載の半田付け方法。
【請求項5】
プリント回路基板の表面の予備半田層が予め形成されたランド又はパッドと電子部品の電極とを半田付けする半田付け装置であって、
略筒形状で上下方向に貫通した半田孔を有し加熱可能な鏝先と、
半田片を前記半田孔内へ供給する半田片供給手段と、
前記鏝先を加熱する加熱手段と、
前記鏝先と前記プリント回路基板とを接触方向及び離間方向に相対的に移動させる移動手段とを有し、
前記鏝先は下面に凹部を有し、前記凹部の底面には前記半田孔の下端開口が形成され、平面視において前記凹部の内周面は前記予備半田層を囲むように位置することを特徴とする半田付け装置。
【請求項6】
前記凹部の上下方向深さが前記予備半田層の上下方向厚みよりも深い請求項5記載の半田付け装置。
【請求項7】
前記凹部の上下方向深さが25μm以上500μm以下である請求項5又は6記載の半田付け装置。
【請求項8】
電子部品の部品本体から外方に突出したピン電極をプリント回路基板板のスルーホールに挿通して前記スルーホールの外周縁に形成されたランドに前記ピン電極を半田付けする半田付け装置であって、
前記半田孔はその下端部に半径方向外方に拡大した拡大部を有し、
前記拡大部の上下方向長さと前記凹部の上下方向深さの和が、前記ピン電極の前記プリント回路基板の表面からの突出長さよりも長い請求項5~7のいずれかに記載の半田付け装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の半田付け装置に用いる鏝先であって、
略筒形状で上下方向に貫通した半田孔を有し、
下面に凹部を有し、
前記凹部の底面には前記半田孔の下端開口が形成され、
平面視において前記凹部の内周面が前記予備半田層を囲むように位置することを特徴とする鏝先。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半田付け方法および半田付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種機器のほとんどには電子部品を実装したプリント回路基板が搭載されている。このプリント回路基板の作製過程において、各種の電子部品をプリント回路基板の配線パターン(ランド,パッド)に接合する処理等のため半田付け作業がなされる。また半田付け作業を機械的に実現させるため半田付け装置が各種提案されすでに使用されているものもある。
【0003】
例えば半田付け装置の一つとして、半田片(半田層内部にフラックスの層が設けられた糸半田を切断したもの)を、円筒状の鏝先の軸方向に貫通した半田孔内に供給し、半田孔内で加熱し溶融した半田を下方へ供給して半田付けを行うものがある(例えば特許文献1等)。
【0004】
また、半田付けをより確実に行う等の観点から、プリント回路基板のランドやパッドの表面にスクリーン印刷によってソルダーペーストを塗布して予備半田層を予め形成しておくことも行われている(例えば特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-195938号公報
【特許文献2】特開2010-80945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の半田孔内で半田片を加熱溶融して半田付けを行う装置を用いて、予備半田層が表面に形成されたランドやパッドと電子部品の電極とを半田付けした場合、ランドやパッドの周囲に溶融半田が飛散して半田ボールが生成されることがあった。半田ボールが生成されると半田ボールが配線と配線との間に入り込んで回路をショートさせることがあった。
【0007】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、円筒状の鏝先の半田孔内で半田片を加熱溶融して半田付けを行う装置を用いて、予備半田層が表面に形成されたランドやパッドと電子部品の電極とを半田付けする場合に半田ボールが生成しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成する本発明に係る半田付け方法の一実施形態は、略筒形状で上下方向に貫通した半田孔を有し加熱可能な鏝先を用いて、プリント回路基板の表面の予備半田層が予め形成されたランド又はパッドと電子部品の電極とを半田付けする方法であって、前記鏝先の下面を前記プリント回路基板に接触させる工程と、前記半田孔内に半田片を供給する工程と、供給された前記半田片を前記半田孔内で加熱溶融させて前記ランド又は前記パッドと前記電子部品の電極とを半田付けする工程とを有し、前記鏝先として下面に凹部が設けられたものを用い、前記凹部の底面には前記半田孔の下端開口が形成され、平面視において前記凹部の内周面は前記予備半田層を囲むように位置することを特徴とする。
【0009】
このような構成の半田付け方法では、鏝先の下面がプリント回路基板に接触したときに、鏝先の下面に形成された凹部がランド又はパッドの表面の予備半田層の周囲を囲むので、溶融した予備半田層が鏝先から外に押し出されてランド又はパッドの周囲に飛散することが防止される。
【0010】
上記構成の半田付け方法において、前記凹部の上下方向深さが前記予備半田層の上下方向厚みよりも深いのが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、プリント回路基板と鏝先の凹部とで予備半田層を完全に取り囲むことが可能となる。
【0012】
また上記構成の半田付け方法において、前記凹部の上下方向深さは25μm以上500μm以下であるのが好ましい。
【0013】
また上記構成の半田付け方法において、電子部品の部品本体から外方に突出したピン電極をプリント回路基板板のスルーホールに挿通して前記スルーホールの外周縁に形成されたランドに前記ピン電極を半田付けする場合、前記半田孔はその下端部に半径方向外方に拡大した拡大部を有し、前記拡大部の上下方向長さと前記凹部の上下方向深さの和は、前記ピン電極の前記プリント回路基板の表面からの突出長さよりも長いのが好ましい。
【0014】
また前記目的を達成する本発明に係る半田付け装置の一実施形態は、プリント回路基板の表面の予備半田層が予め形成されたランド又はパッドと電子部品の電極とを半田付けする半田付け装置であって、略筒形状で上下方向に貫通した半田孔を有し加熱可能な鏝先と、半田片を前記半田孔内へ供給する半田片供給手段と、前記鏝先を加熱する加熱手段と、前記鏝先と前記プリント回路基板とを接触方向及び離間方向に相対的に移動させる移動手段とを有し、前記鏝先は下面に凹部を有し、前記凹部の底面には前記半田孔の下端開口が形成され、平面視において前記凹部の内周面は前記予備半田層を囲むように位置することを特徴とする。
【0015】
前記構成の装置において、前記凹部の上下方向深さは前記予備半田層の上下方向厚みよりも深いのが好ましい。
【0016】
前記構成の装置において、前記凹部の上下方向深さは25μm以上500μm以下であるのが好ましい。
【0017】
前記構成の装置において、電子部品の部品本体から外方に突出したピン電極をプリント回路基板板のスルーホールに挿通して前記スルーホールの外周縁に形成されたランドに前記ピン電極を半田付けする場合、前記半田孔はその下端部に半径方向外方に拡大した拡大部を有し、前記拡大部の上下方向長さと前記凹部の上下方向深さの和が、前記ピン電極の前記プリント回路基板の表面からの突出長さよりも長いのが好ましい。
【0018】
また前記目的を達成する本発明に係る鏝先の一実施形態は、前記のいずれかに記載の半田付け装置に用いる鏝先であって、略筒形状で上下方向に貫通した半田孔を有し、下面に凹部を有し、前記凹部の底面には前記半田孔の下端開口が形成され、平面視において前記凹部の内周面が前記予備半田層を囲むように位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る半田付け方法および半田付け装置によれば、予備半田層が表面に形成されたランドやパッドと電子部品の電極とを半田付けする場合に半田ボールを生成させないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る鏝先5aとプリント回路基板CBの垂直断面図である。
【
図2】プリント回路基板CBのランドLdの拡大平面図である。
【
図3】鏝先5aとプリント回路基板CBとが接触した状態を示す垂直断面図である。
【
図4】半田片Whが半田孔51に供給されたときの状態を示す垂直断面図である。
【
図5】予備半田層PSと半田片Whが溶融したときの状態を示す垂直断面図である。
【
図6】ピン電極PとランドLdとが半田付けされた状態を示す垂直断面図である。
【
図7】凹部52の深さdpの浅い鏝先5bを用いたときの状態を示す垂直断面図である。
【
図8】凹部52の深さdpの浅い鏝先5bを用いたときの状態を示す垂直断面図である。
【
図10】本発明の実施形態にかかる半田付け装置APの一例の斜視図である。
【
図11】装置本体A1の内部構造を示す斜視図である。
【
図12】
図2に示す装置本体A1の概略垂直断面図である。
【
図13】
図2に示す装置本体A1に設けられた駆動機構の一部の分解斜視図である。
【
図14】半田ボールが生成される原因(機構)についての説明図である。
【
図15】半田ボールが生成される原因(機構)についての説明図である。
【
図16】半田ボールが生成される原因(機構)についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者は、半田孔内で半田片を加熱溶融して半田付けを行う装置を用いて、予備半田層が表面に形成されたランドやパッドと電子部品の電極とを半田付けする場合に、ランドやパッドの周囲に半田ボールが生成される原因について種々検討を重ねた。その結果、鏝先の下面が予備半田層に接触し、鏝先によって圧力が加わった状態で予備半田層が加熱、溶融されることが大きな原因であるとの知見を得た。本発明はこの知見に基づき成されたものである。
【0022】
まず、従来の半田付け装置において半田ボールが生成される原因(機構)について
図14~
図16を用いて具体的に説明する。これらの図は鏝先5eとプリント回路基板CBの部分垂直断面図である。
【0023】
鏝先5eは、円筒形状の部材であり、中央部分に軸方向に貫通した断面円形の半田孔51を有する。そして半田孔51は下端部において半径方向外方に半田孔51の中心軸C1と同心円状に拡大した拡大部510を有する。鏝先5eは、不図示のヒーターによって加熱される。また鏝先5eの半田孔51には不図示の供給手段から半田片Wh(
図16に図示)が供給される。
【0024】
プリント回路基板CBは、基板本体Bdと、基板本体Bdを上下方向に貫通するスルーホールThと、基板本体Bdの上下両面のスルーホールThの周囲に形成されたランドLdと、ランドLdの表面に形成された予備半田層PSと、ランドLd(予備半田層PS)以外の基板本体Bd表面を覆うソルダーレジストSRとを有する。予備半田層PSの上面はソルダーレジストSRの上面よりも上方に突出している。
【0025】
電子部品Epのピン電極PはスルーホールThを下側から上側に挿通され、ピン電極Pの先端はプリント回路基板CBの上面から上方に突出する。
【0026】
図14に示すように、電子部品Epのピン電極Pとプリント回路基板CBのランドLdとが半田付けされる場合、まず、鏝先5eがプリント回路基板CBに対して接近する方向に相対的に移動する。そして鏝先5eの下面がランドLd表面の予備半田層PSの上面に当接する。その後、
図15に示すように、予備半田層PSは、鏝先5eで押圧された状態で主として鏝先5eからの伝熱によって加熱溶融する。溶融した予備半田層PSは鏝先5eの下面によってランドLdの表面に押し広げられる。そして
図16に示すように、溶融した予備半田層PSの一部は鏝先5eの下面から鏝先5eの外に押し出される。鏝先5eから外に押し出された溶融半田は表面張力で球形化し冷却されて半田ボールSBとなる。
【0027】
このような半田ボールSBの生成機構に鑑みて、本発明に係る半田付け方法及び装置では、平面視において内周面が予備半田層を囲む形状の凹部を鏝先の下面に形成することとした。
【0028】
(第1実施形態)
図1に本発明の一実施形態に係る鏝先5aとプリント回路基板CBの垂直断面図を示す。
図2はプリント回路基板CBのランドLdの拡大平面図であって、ランドLdの上面に形成された予備半田層PSと、鏝先5aの凹部52の内周面が破線で示されている。
【0029】
鏝先5aは円筒形状で中央部分に軸方向に貫通した断面円形の半田孔51を有する。そして半田孔51は下端部には半田孔51の中心軸C1を中心として半径方向外方に同心円状に拡大した拡大部510を有する。また鏝先5aの下面には半田孔51の中心軸C1を中心として同心円状に拡大し下面からの深さdpの凹部52が形成されている。換言すると、鏝先5aの下面に形成された凹部52の底面(上面)に半田孔51の拡大部510の下端開口が形成されている。また鏝先5aは、拡大部510よりも上方に半田孔51と外周面とを連通するリリース孔53を有する。リリース孔53は、溶融した半田によって半田孔51の下端開口がせき止められたときに、不図示のガス供給部から供給される窒素ガスや気化したフラックスなどを鏝先5aの外に逃がす役割を果たす。
【0030】
一方、プリント回路基板CBの基板本体Bdには平面視が円形状のランドLdが形成され、ランドLdの中央部にはスルーホールThが形成されている。また、ランドLdの上面には厚さtの予備半田層PSが形成されている。ランドLd(予備半田層PS)以外の基板本体Bdの表面はソルダーレジストSRで覆われている。スルーホールThには電子部品Epのピン電極Pが下側から上側に挿通され、ピン電極Pの先端はプリント回路基板CBの上面から上方に突出している。
【0031】
図1及び
図2に示すように、鏝先5aの下面に形成された凹部52の内径DはランドLdに塗布された予備半田層PSの外径dよりも大きく、凹部52の深さdpは予備半田層PSの厚さtよりも深く設定されている。凹部52の深さdpに特に限定は無いが、通常、25μm以上500μm以下の範囲で足りる。
【0032】
後段において
図10に基づき説明するように、半田付け装置APの制御手段Contが、マニピュレーターMLの多関節アームAmの回転動作を制御して、
図1に示すように、装置本体A1の鏝先5aを、鏝先5aの中心軸C1がプリント回路基板CBから突出したピン電極Pの中心軸C2と同一線上で且つ上方向に離隔した位置(離隔位置)に移動させる。次いで
図3に示すように、制御手段ContはマニピュレーターMLを制御して、鏝先5aを下方に移動させる。
【0033】
図3に示すように、鏝先5aがプリント回路基板CBに接近する方向に移動したとき、
図14~
図16に示した従来の半田付け装置と異なり、鏝先5aの下面に形成された凹部52によって鏝先5aの下面は予備半田層PSに接触することなくソルダーレジストSRに当接する。鏝先5aの下面に形成された凹部52の内径Dは予備半田層PSの外径dよりも大きく、平面視において凹部52の内周面は予備半田層PSを囲むように位置する。また凹部52の上下方向の深さdpは予備半田層PSの厚さtよりも深く、予備半田層PSの上面は凹部52の底面(上面)に接触しない。つまり予備半田層PSは所定隙間を有して凹部52に囲まれた状態となる。
【0034】
これにより、従来ような、鏝先で加熱溶融された予備半田層の一部が鏝先の下面から鏝先の外に押し出されて半田ボールが生成する不具合は効果的に防止される。
【0035】
次いで、
図4に示すように、鏝先5aの半田孔51に半田片Whが供給される。予備半田層PSは凹部52によって囲まれている、換言すると予備半田層PSは鏝先5aに接触していないので、鏝先5aからの熱は直接的に受け取れず、半田片Whが半田孔51に供給されたとき予備半田層PSの加熱溶融は大きくは進んでいない。一方、半田孔51内に供給された半田片Whは、通常は半田孔51の内周壁にその一部が接触するので(半田孔51の内周壁に接触せずにピン電極P上に半田片Whが立った場合を除いて)、鏝先5aから伝熱によって半田片Whは直接的に加熱される。鏝先5aからの伝熱量が多く半田片Whは短時間で溶融温度まで加熱される。半田片Whの加熱溶融過程において溶融温度が半田よりも低いフラックスがまず溶融して半田片Whの表面に流出する。フラックスは半田よりも熱伝導率が高いのでフラックスを介して鏝先5aから半田片Whへの伝熱が加速される。また、半田片Whから流下した一部のフラックスが予備半田層PSの表面と鏝先5a(凹部52)との隙間に至り、フラックスを介して鏝先5aから予備半田層PSへの伝熱も加速される。
【0036】
そして、
図5に示すように、半田片Whおよび予備半田層PSの温度が溶融温度に達すると、半田片Whおよび予備半田層PSは溶融して一体となる(溶融半田MS)。そして、
図6に示すように、溶融半田MSの一部はスルーホールTh内を流下し、鏝先5aがプリント回路基板CBから上方に離間することで溶融半田MSが外気によって冷却固化され、ランドLdとピン電極Pとの間に半田の円錐形状のフィレットが形成されランドLdとピン電極Pとが半田付けされる。
【0037】
(第2実施形態)
図7及び
図8に第2実施形態に係る半田付け装置及び半田付け方法の主要部の垂直断面図を示す。これらの図に示す第2実施形態の装置及び方法が第1実施形態と異なる点は、鏝先5bの下面に形成された凹部52の深さdpが予備半田層PSの厚みtよりも浅い点である。
【0038】
図7に示すように、このような構成の装置および方法では、プリント回路基板CBに接近する方向に鏝先5bが相対的に移動したとき、鏝先5bの凹部52の底面(上面)が予備半田層PSの上面に当接し、鏝先5bの下面とプリント回路基板CBの表面との間には隙間Gが形成される。ただし、第1実施形態と同様に、鏝先5bの下面に形成された凹部52の内径Dは予備半田層PSの外径dよりも大きく、平面視において凹部52の内周面は予備半田層PSを囲むように位置する。
【0039】
凹部52の底面が予備半田層PSの上面に接触しているので、第1実施形態とは異なって、鏝先5bから予備半田層PSに熱が直接伝えられる。また、予備半田層PSは鏝先5bによって常に下方に力が加わっている。このため予備半田層PSは第1実施形態よりも早く加熱溶融される。そして、
図14~
図16に示した従来の装置及び方法と同様に、予備半田層PSの溶融と共に鏝先5bは下方に移動し、鏝先5bの下面がプリント回路基板CB(ソルダーレジストSR)に当接する。
【0040】
しかしながら、
図14~
図16に示した従来の装置及び方法と異なって、平面視において凹部52の内周面が予備半田層PSを囲むように位置しているので、
図8に示すように、溶融した予備半田層PSは鏝先5bの凹部52及び拡大部510の中に留まって鏝先5bの外に押し出されることはない。したがって半田ボールCB(
図16に図示)が生成する不具合は効果的に防止される。
【0041】
(鏝先の他の例)
図9は、本発明で使用可能な鏝先の他の例を示す垂直断面図である。プリント回路基板CBの変形や鏝先の取り付け精度誤差などによって、プリント回路基板CBに対して鏝先が垂直に当接せずプリント回路基板CBと鏝先の下面との間に微小な隙間が生じることがある。このとき、稀にではあるが半田孔51内で溶融した半田が前記隙間に進入し鏝先の下端外周にボール状(半田ボール)となって付着することがある。鏝先の下端外周に付着した半田ボールは鏝先が移動する際の衝撃で鏝先からプリント回路基板CB上に落下するおそれがある。万が一半田ボールが配線と配線との間に落下すると回路をショートさせることになる。そこで、
図9(a)に示す鏝先5cでは、鏝先5cの下端外周に面取り部511が形成されている。このような面取り部511が鏝先5cの下端外周に形成されていることによって前述の半田ボールの鏝先の下端外周への付着が防止される。このことは本発明者による実験で確認されている。
【0042】
図9(b)に示す鏝先5dは、円筒形状で中央部分に軸方向に貫通した断面円形の半田孔51を有し、上部に半田孔51と外周面とを連通するリリース孔53を有する点は第1実施形態の鏝先5aと同じであるが、半田孔51の下方に拡大部510が形成されていない点で第1実施形態の鏝先5aと異なる。拡大部510は、鏝先5aの半田孔51にピン電極Pを挿入する際の裕度を設けるためのものであるので、プリント回路基板CBに対する鏝先5aの相対的移動精度の高い場合には拡大部510は必要とされず、
図9(b)に示す拡大部510のない鏝先5dを使用することも可能となる。また、プリント回路基板CBの表面のパッドと、パッド上に載置された電子部品の電極とを半田付けする場合(スルーホールThがない場合)にはこのような形態の鏝先5dを使用することも可能である。
【0043】
(半田付け装置の全体構成)
図10は、以上説明した鏝先5aを用いて半田付けを行う半田付け装置APの斜視図である。半田付け装置APがプリント回路基板CBに電子部品Epを半田付けする場合である。治具Gjに固定されたプリント回路基板CBには4つのスルーホールThが形成されており、各スルーホールThの内周面及び周縁にはランドLdが形成されている。そして、この4つのスルーホールThの各々には、プリント回路基板CBの裏面側に配置された電子部品Epから延出した4つのピン電極Pが下から上方向に挿通され、プリント回路基板CBの上面からピン電極Pの先端が突出した状態となっている。
【0044】
一方、本発明に係る半田付け装置APは、多関節アームAmを有する移動手段としてのマニピュレーターMLと、マニピュレーターMLの先端に取り付けられた装置本体A1と、マニピュレーターML及び装置本体A1の動作を制御する制御装置Contとを備える。マニピュレーターMLは基台Bs上に設置され、多関節アームAmは複数の関節部の各々において回転可能とされている。制御手段Contは、マニピュレーターMLの多関節アームAmの回転動作を制御して、装置本体A1をX方向、Y方向、Z方向の所望位置に移動させる。また制御手段Contは、後述する装置本体A1のカッターユニット2、駆動機構3、半田送り機構6及びヒーターユニット(加熱手段)4の動作を制御する。なお、本実施形態ではカッターユニット2、駆動機構3、半田送り機構6が半田片供給手段を構成する。
【0045】
半田付け装置APによって半田付けを行う場合、装置本体A1が、マニピュレーターMLによってX方向及びY方向に移動されてプリント回路基板CBのランドLdに対する位置決めが行われる。そして、装置本体A1がZ方向に移動されることで、鏝先5aの先端がランドLdに接触する。以下説明する実施形態ではこの半田付け装置APを用いて、プリント回路基板CBの上面から突出したピン電極Pを装置本体A1の鏝先5aの半田孔51(
図12に図示)内に位置させ、鏝先5aの半田孔51に供給される半田片Whを溶融させてピン電極PとランドLdとを半田付けする。なお、本実施形態では、装置本体A1を移動させているが、装置本体A1を固定しプリント回路基板CBを移動させる、あるいは装置本体A1とプリント回路基板CBの両者を移動させるようにしても構わない。
【0046】
このような鏝先5aの制御手段Contによる移動制御は、予め入力設定された値に基づき行ってもよいし、接触センサーなど不図示の検知手段による検知信号に基づき行ってもよい。
【0047】
(装置本体A1)
図11に装置本体A1の斜視図を示し、
図12に
図11に示す半田付け装置の垂直断面図、
図13は
図11に示す半田付け装置に設けられた駆動機構の一部の分解斜視図である。なお、
図11では、筐体の一部を切断し、装置本体A1の内部を表示するようにしている。
【0048】
図11に示すように、装置本体A1は、装置ユニットUと、装置ユニットUをZ方向の所定距離範囲で移動可能に支持する支持部材SPと、装置ユニットUと支持部材SPを覆うカバーC(
図11の破線)とを有する。
【0049】
支持部材SPは、四角形状のYZ平面を有しX方向に所定の厚みを有する板状の基部Mfと、基部MfのX方向一方側面のY方向中央部にY方向に所定幅を有しX方向に突出しZ方向に連続するガイドレールMgと、ガイドレールMgにZ方向に移動可能に取り付けられたブロックMbとを備える。
【0050】
基部MfのZ方向上端部はマニピュレーターMLの多関節アームAmの先端に取り付けられる。ブロックMbには装置ユニットUの壁体11がZ方向の略全域にわたって取り付けられている。すなわち、装置ユニットUはブロックMbに固定され、ブロックMbと一体となってZ方向に移動可能とされている。また、ブロックMbのY方向の一方側面の下端部には移動規制ピン91が側面から外方に向かって垂直に突出して設けられている。
【0051】
一方、基部MfのX方向一方側面のZ方向下部のY方向端部位置には、直方体形状の上ストッパー部93と下ストッパー部94とがZ方向に所定距離隔てて対向するように設けられている。
【0052】
ブロックMbの一方側面に設けられた移動規制ピン91は、基部Mfの上ストッパー部93と下ストッパー部94との間の領域に位置し、初期状態のときすなわち鏝先5aが配線基板Bdに当接していない状態のときは、装置ユニットU及びブロックMbの自重によって移動規制ピン91は下ストッパー部94に当接した状態となっている。換言すると、移動規制ピン91が下ストッパー部94に当接することで、装置ユニットUのZ方向下方への移動が規制される。他方、鏝先5aが配線基板Bdに当接して装置ユニットUがZ方向上方に移動した場合には、移動規制ピン91が上ストッパー部93に当接することで、装置ユニットUのZ方向上方向への移動が規制される。
【0053】
(装置ユニットU)
装置ユニットUは、支持部1、カッターユニット2、駆動機構3、ヒーターユニット4、鏝先5a、半田送り機構6を備えている。
【0054】
支持部1は、立設された平板状の壁体11を備えている。なお、以下の説明では、便宜上、
図11に示すように、壁体11に沿う水平方向をX方向、壁体11と垂直な水平方向をY方向、壁体11に沿う鉛直方向をZ方向とする。例えば、
図11に示すように、壁体11はZX平面を有している。
【0055】
支持部1は、壁体11と、保持部12と、摺動ガイド13と、ヒーターユニット固定部14とを備える。壁体11は、鉛直方向に立設された平板状の壁体である。壁体11は、装置本体A1の支持部材としての役割を果たしている。保持部12は、壁体11のZ方向の下端部より上方にずれた位置に固定されている。保持部12は、駆動機構3の後述するエアシリンダー31を保持する。ヒーターユニット固定部14は、ヒーターユニット4の固定を行う部材であり、壁体11のZ方向の端部(下端部)に設けられている。
【0056】
摺動ガイド13は、壁体11のZ方向の下端部の近傍に、固定されている。摺動ガイド13は、カッターユニット2の後述するカッター下刃22と共に、壁体11と固定されており、カッターユニット2の後述するカッター上刃21をX方向に摺動可能にガイドする。
【0057】
摺動ガイド13は、Y方向に対向して対をなす部材である。摺動ガイド13は、一対の壁部131と、抜止部132とを有している。壁部131は、X方向に延びる平板状の部材である。一方の壁部131は、壁体11と接触して配されており、壁体11と反対側の面は、カッター下端22と接触している。また、他方の壁部131は、カッター下刃22の側面と接触している。つまり、一対の壁部131は、カッター下刃22をY方向の両側から挟んでいる。そして、一対の壁部131及びカッター下刃22は、ねじ等の締結具で壁体11に共締めされて、固定される。
【0058】
抜止部132は、一対の壁部131のそれぞれに設けられている。一対の壁部131は、カッター下刃22のZ方向上面よりもZ方向に延びており、一対の壁部131のZ方向の上端部から、それぞれ、他方に向かって延びている。すなわち、摺動ガイド13は、一対の抜止部132を備えている。そして一対の抜止部132それぞれのY方向の先端は、接触しない、換言すると、摺動ガイド13には上部に開口を有している。カッター上刃21は、カッター下刃22の上面と、抜止部132との間に少なくとも一部は配される。これにより、カッター上刃21は、X方向にガイドされるとともに、Z方向に抜け止めされる。
【0059】
カッターユニット2は、半田送り機構6によって送られた糸半田Wを所定長さの半田片Whに切断する切断具である。カッターユニット2は、カッター上刃21と、カッター下刃22と、プッシャーピン23とを備えている。
【0060】
上述のとおり、カッター下刃22は摺動ガイド13とともに壁体11に固定される。
図12に示すように、カッター下刃22は、下刃孔221と、ガス流入孔222とを備えている。下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向に貫通する貫通孔であり、カッター上刃21の後述する上刃孔211を貫通した糸半田Wが挿入される。下刃孔221の上端の辺縁部は切刃状に形成されている。上刃孔211と下刃孔221とを用いて、糸半田Wを所定長さの半田片Whに切断する。切断された半田片Whは、自重によって又はプッシャーピン23に押されて、下刃孔221の内部を下方に落下する。下刃孔221は、ヒーターユニット4の後述する半田供給孔422を介して、鏝先5aの後述する半田孔51と連通している。下刃孔221の内部を落下した半田片Whは、半田供給孔422に達した後、半田孔51に落下する。
【0061】
ガス流入孔222は、カッター下刃22の外側面と下刃孔221とを連通する孔である。不図示のガス供給源から供給されるガスはガス流入孔222に流入する。そして、ガスは、下刃孔221、半田供給孔422を通過して、半田孔51に到達する。なお、ガスとは、半田を加熱して溶融するときに半田の酸化を抑制するために用いられるものである。すなわち、溶融した半田と酸素との接触を抑制するためのガスである。ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素等を挙げることができる。本実施形態の半田付け装置APでは、窒素ガスを供給するものとして説明する。
【0062】
カッター上刃21は、上述したとおり、カッター下刃22のZ方向上面上に配される。カッター上刃21は、摺動ガイド13によって摺動時に摺動方向がX方向になるようガイドされるとともにZ方向に抜け止めされる。すなわち、カッター上刃21は、カッター下刃22のZ方向の上面上をX方向に摺動する。なお、カッター上刃21は、駆動機構3によって摺動される。
【0063】
カッター上刃21は、上刃孔211と、ピン孔212とを備えている。上刃孔211は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔である、上刃孔211には、半田送り機構6から送られた糸半田Wが挿入される。上刃孔211の下端の辺縁部は切刃状に形成されている。ピン孔212は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔である。ピン孔212には、プッシャーピン23の後述するロッド部231が、摺動可能に挿入される。
【0064】
プッシャーピン23は、ロッド部231と、ヘッド部232と、バネ233とを有する。ロッド部231は、円柱状の部材であり、ピン孔212に摺動可能に挿入される。また、プッシャーピン23がZ方向下に移動することで、ロッド部23の先端が、ピン孔212から突出する。ヘッド部232はロッド部231の軸方向の上端に連結される。ヘッド部232は、ピン孔212の内径よりも大きい外径を有する円板形状である。ヘッド部232は、ピン孔212に挿入されない。すなわち、ヘッド部232は、ロッド部231のピン孔212内への移動を制限する、いわゆる、ストッパーとしての役割を果たす。
【0065】
バネ233は、ロッド部231の径方向外側を囲む圧縮コイルばねである。バネ233は、Z方向下端部がカッター上刃21の上面と接触し、Z方向上端部がヘッド部232の下面と接触する。すなわち、バネ233は、カッター上刃21の上面から反力を受け、ヘッド部232をZ方向上に押す。これにより、ヘッド部232と連結されたロッド部231は、Z方向上方に持ち上げられ、ロッド部231の下端が、ピン孔212の下端から突出しないように維持される。なお、ロッド部231のZ方向下端部には、ピン孔212からの抜けを抑制する抜け止め(不図示)が設けられている。
【0066】
プッシャーピン23は、カッター上刃21とカッター下刃22で切断されて下刃孔221に残った半田片Whを下方に押す。そして、プッシャーピン23は、ばね233の弾性力によって、常に上方に、すなわち、カッター下刃22と反対側に押し上げられている。つまり、ロッド部231は、ヘッド部232が押されたときに、ピン孔212のZ方向下端部から下に突出する。そして、ヘッド部232は、駆動機構3の後述するカム部材33に押される。
【0067】
カッター上刃21において、上刃孔211とピン孔212とはX方向に並んで設けられている。カッター上刃21は、X方向に摺動することで、上刃孔211と下刃孔221とが上下に重なる位置、又は、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なる位置に移動する。なお、カッター上刃21は、一方の摺動端部まで摺動したときに上刃孔211と下刃孔221とが重なり、他方の摺動端部まで摺動したときにピン孔212と下刃孔221とが重なるように、摺動してもよい。
【0068】
そして、上刃孔211と下刃孔221とがZ方向に重なっている状態で、半田送り機構6から糸半田Wが送られると、上刃孔211を通過した糸半田Wが、下刃孔221に挿入される。上述のとおり、上刃孔211の下端の辺縁部が切刃状に形成されているとともに、下刃孔221の上端の辺縁部も切刃状に形成されている。そして、カッター上刃21の下面は、カッター下刃22の上面と接触している。そのため、下刃孔221に糸半田Wが挿入されている状態で、カッター上刃21がX方向に摺動することで、上刃孔211および下刃孔221それぞれの切刃によって糸半田Wが切断される。
【0069】
カッター上刃21は、カム部材33によってX方向に摺動される。そのため、カッター上刃21及びプッシャーピン23は、カム部材33と同期している。カム部材33は、ピン孔212が下刃孔221とZ方向に重なったときに、ヘッド部232を押す。そのため、カッター上刃21がX方向に摺動するときには、プッシャーピン23のロッド部231の先端は、ピン孔212に収容されている。そのため、カッター上刃21がX方向に摺動するときに、ロッド部231の先端とカッター下刃22の上面とが接触するのを抑制し、ロッド部231の先端及び(又は)カッター下刃22の変形、破損等が抑制される。
【0070】
カッター上刃21がX方向に摺動することで、下刃孔211とピン孔212とがZ方向に重なる。ピン孔212が下刃孔211と重なっている状態で、ヘッド部232はカム部材33に押される。これにより、プッシャーピン23が、Z方向下に移動する。プッシャーピン23がピン孔212からZ方向下方に突出すると、プッシャーピン23の一部が下刃孔211に挿入される。下刃孔211の入り口に糸半田を切断した後述の半田片が残っている場合、プッシャーピン23の先端が半田片を押して、半田片は落下する。
【0071】
図11、
図12に示すように、駆動機構3は、エアシリンダー31と、ピストンロッド32と、カム部材33と、スライダー部34と、ガイド軸35とを有する。エアシリンダー31は保持部12に保持される。エアシリンダー31は、有底円筒状である。エアシリンダー31の内部には、ピストンロッド32が収容されており、外部から供給される空気の圧力でピストンロッド32を摺動駆動(伸縮)させる。エアシリンダー31とピストンロッド32とが駆動機構3のアクチュエーターを構成している。ピストンロッド32は、エアシリンダー31の内部に配されるとともに、一部が常にエアシリンダー31の軸方向の一方の端部(ここでは、Z方向の下端部)から、突出している。エアシリンダー31は、ピストンロッド32が突出する面がカッターユニット2に向くように、すなわち、Z方向下に向くように、保持部12に保持される。
【0072】
ピストンロッド32は、保持部12に設けられた貫通孔(不図示)を貫通している。ピストンロッド32は、ガイド軸35と平行に設けられており、ガイド軸35に沿って直線的に往復動する。ピストンロッド32の先端部は、カム部材33に固定されており、ピストンロッド32の伸縮によって、カム部材33がZ方向に摺動する。カム部材33の摺動は、ガイド軸35によってガイドされている。
【0073】
図12に示すように、ガイド軸35は、下端部がカッター下刃22に設けられた凹穴に嵌合されており、カッター下刃22にねじ351でねじ止め固定されている。また、ガイド軸35の上部は、保持部12に設けられた孔を貫通しており、ピン352によって移動が規制されている。つまり、ガイド軸35はねじ351によってカッター下刃22と、ピン352によって保持部12と固定されている。
【0074】
なお、本実施形態において、ガイド軸35は、ねじ351及びピン352によって固定されているが、これに限定されるものではなく、例えば、圧入、溶接等の固定方法で固定されるものであってもよい。また、本実施形態において、ガイド軸35として円柱状の部材としているが、これに限定されるものではなく、断面多角形状や楕円等を利用してもよい。
【0075】
図12、
図13に示すように、カム部材33は、矩形状の部材であり、長辺の一部を矩形状に切り欠いた凹部330と、カム部材33に連結し、ガイド軸35が貫通する貫通孔を備えた円筒形状の支持部331とを備えている。凹部330には、スライダー部34が(X方向及びZ方向に)摺動可能に配置される。また、支持部331はガイド軸35と平行に延びる形状を有しており、カム部材33のがたつきを抑制するために設けられている。つまり、カム部材33がある程度厚みを有し、がたつきが発生しにくい構成の場合、円筒形状の部分を省略し、貫通孔だけで支持部331を構成してもよい。
【0076】
そして、カム部材33は、凹部330の中間部分に設けられて中心軸がガイド軸35と直交する円柱状のピン332と、凹部330と隣接してプッシャーピン23を押すピン押し部333と、支持部331内部に配置された軸受334とを備えている。ピン332は、スライダー部34に設けられた後述するカム溝340に挿入される。また、軸受334は、ガイド軸35に外嵌し、カム部材33ががたつかないように、円滑に摺動させる部材である。
【0077】
図12、
図13に示すように、スライダー部34は、長方形状の板状の部材であり、カッター上刃21と一体的に形成されている。スライダー部34は、板厚方向に貫通するとともに長手方向に延びるカム溝340を備えている。カム溝340は、ガイド軸35と平行に延びる第1溝部341を上側に、同じくガイド軸35と平行に延びる第2溝部342を下側に設けている。そして、第1溝部341と第2溝部342とは、X方向にずれて設けられており、カム溝340は第1溝部341と第2溝部342とを接続する接続溝部343を備えている。
【0078】
カム溝340には、カム部材33のピン332が挿入されており、カム部材33がガイド軸35に沿って移動することで、ピン332がカム溝340の内面を摺動する。ピン332がカム溝340の接続溝部343に位置するとき、接続溝部343の内面を押す。これにより、スライダー部34及びスライダー部34に一体的に形成されたカッター上刃21がカム部材33の摺動方向(Z方向)と交差する方向(X方向)に移動(カッター下刃22に対して摺動)する。
【0079】
なお、本実施形態では、カム部材33にピン332、スライド部34にカム溝340を備えた構成を挙げて説明しているが、実際には、カム部材にカム溝、スライド部にピンを備えた構成であってもよい。
【0080】
本実施形態では、駆動機構3のアクチュエーターとして空気圧を用いるものとしているが、これに限定されるものではなく、空気以外の流体(例えば、作動油)を用いるもの(油圧)であってもよい。また、流体を用いるものに限定されるものではなく、モーターやソレノイド等の電力を用いるものであってもよい。本実施形態では、1つのアクチュエーターと、カム及びカム溝を用いて、カッター上刃21の摺動とプッシャーピン23の押下を行っているが、これに限定されない。例えば、カッター上刃21の摺動と、プッシャーピン23の押下とを行うように、アクチュエーターを複数個(2個)備えていてもよい。
【0081】
図11、
図12に示すように、半田送り機構6は、糸半田Wを供給する。半田送り機構6は、一対の送りローラ61と、ガイド管62とを備えている。一対の送りローラ61は、支持壁11に回転可能に取り付けられている。一対の送りローラ61は、糸半田Wの側面を挟んで回転することで、糸半田を下方に送る。なお、一対の送りローラ61は、互いに他方に向かって付勢されており、その付勢力で糸半田Wを挟む。送りローラ61の回転角度(回転数)によって、送り出した糸半田Wの長さが測定(決定)されている。
【0082】
ガイド管62は、弾性変形可能な管体であり、上端は、送りローラ61の糸半田Wが送り出される部分に近接して配置されている。また、ガイド管62の下端は、カッター上刃21の上刃孔211と連通するように設けられている。なお、ガイド管62の下端はカッター上刃21の摺動に追従して移動するものであり、ガイド管62はカッター上刃21が摺動する範囲で過剰に引っ張られたり、突っ張ったりしない長さ、および、形状を有している。
【0083】
ヒーターユニット4は、半田片Whを加熱し、溶融させるための加熱装置であり、
図12に示すように、壁体22の下端部に設けられたヒーターユニット固定部14に固定されている。ヒーターユニット4は、ヒーター41と、ヒーターブロック42とを備える。ヒーター41は、通電により発熱する。ヒーター41は、ここでは、円筒形状のヒーターブロック42の外周面に巻き回された電熱線を有する。
【0084】
ヒーターブロック42は円筒形状を有しており、軸方向の端部に鏝先5aを取り付けるための断面円形状の凹部421と、凹部421の底部の中心部から反対側に貫通した半田供給孔422とを備えている。ヒーターブロック42は、半田供給孔422と下刃孔221とが連通するように、カッター下刃22に接触して設けられている。ヒーターブロック42をこのように設けることで、半田片Whは、下刃孔221から半田供給孔422に移動する。
【0085】
(半田付け装置の動作)
次に、半田付け装置APの動作について説明する。
図1及び
図10に示すように、制御手段Contが、マニピュレーターMLの多関節アームAmの回転動作を制御して、装置本体A1の鏝先5aを、鏝先5aの中心軸C1がプリント基板Bdから突出したピン端子Pの中心軸C2と同一線上で且つ上方向に離隔した位置(離隔位置)に移動させる。次いで
図3に示すように、制御手段ContはマニピュレーターMLを制御して、鏝先5aを下方に移動させて、鏝先5aの下面をプリント基板BdのソルダーレジストSRに当接させ、鏝先5aの半田孔51内に電子部品Epのピン端子Pを位置させる。鏝先5aには、ヒーター41(
図12に図示)からの熱が伝達されており、鏝先5aが接触することでプリント基板BdのソルダーレジストSRを介してランドLdが伝熱により加熱され(プレヒート)、電子部品Epのピン端子PもソルダーレジストSR、ランドLd及び基板本体Bdを経由した伝熱及び鏝先5aからの輻射熱、さらには半田孔51内の対流によって加熱される。
【0086】
次いで、
図4に示すように、鏝先5aの半田孔51に半田片Whが供給される。
図5に示すように、半田片Whおよび予備半田層PSの温度が溶融温度に達すると、半田片Whおよび予備半田層PSは溶融して一体となる(溶融半田MS)。そして、
図6に示すように、溶融半田MSの一部はスルーホールTh内を流下し、鏝先5aがプリント回路基板CBから上方に離間することで溶融半田MSが外気によって冷却固化され、ランドLdとピン電極Pとの間に半田の円錐形状のフィレットが形成されランドLdとピン電極Pとが半田付けされる。半田付け装置APはこの一連の動作を繰り返して電子部品Epのピン電極Pとプリント回路基板CBのランドLdとの半田付けを順次行う。
【0087】
以上説明した実施形態は本発明に係る半田付け装置及び半田付け方法の一例を示したものであり、本発明の効果を阻害しない範囲において種々の変形等は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る半田付け方法および半田付け装置は、予備半田層が表面に形成されたランドやパッドと電子部品の電極とを半田付けする場合に半田ボールを生成させないようにすることができる。
【符号の説明】
【0089】
AP 半田付け装置
A1 装置本体
4 ヒーターユニット
41 ヒーター
42 ヒーターブロック
5a,5b,5c,5d,5e 鏝先
51 半田孔
52 凹部
510 拡大部
511 面取り部
6 半田送り機構
Bd 基板本体
CB プリント回路基板
C1 鏝先の中心軸
C2 ピン電極の中心軸
d 予備半田層の外径
dp 凹部の深さ
D 凹部の内径
Ep 電子部品
MS 溶融半田
Ld ランド
P ピン電極
PS 予備半田層
SR ソルダーレジスト
t 予備半田層の厚み
Th スルーホール
W 糸半田
Wh 半田片