(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174463
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】ボンディング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080272
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】北川 雅人
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK01
5F044LL01
5F044PP15
5F044PP16
5F044PP17
5F044PP19
5F044QQ03
5F044RR12
(57)【要約】
【課題】 半導体チップと基板との接合部分の周囲の空気を高いレベルで不活性ガスに置換することができる。
【解決手段】 上記ボンディングヘッド5の保持部5aに隣接して設けられた噴射口より不活性ガスを噴射させるガス供給手段17を備えたボンディング装置3に関する。
上記噴射口(スリットS)を上記ボンディングヘッド5の保持部5aを囲繞するように設け、当該スリットSの一部を、他の部分の幅狭スリットSSよりも不活性ガスの噴出流量を大きく設定した幅広スリットSLとし、上記幅広スリットSLと幅狭スリットSSとから噴射した不活性ガスによって上記半導体チップ1と基板2との接合部分を囲繞するエアカーテンCを形成するとともに、上記幅広スリットSLから噴射された不活性ガスによって上記半導体チップ1と基板2との間を流通する流れを形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持するボンディングステージと、半導体チップを保持する保持部を備えたボンディングヘッドと、上記ボンディングヘッドの保持部に隣接して設けられた噴射口と、当該噴射口より不活性ガスを噴射させるガス供給手段とを備えたボンディング装置において、
上記噴射口を上記ボンディングヘッドの保持部を囲繞するように設け、当該噴射口の一部を、他の部分の小噴射口よりも不活性ガスの噴出流量を大きく設定した大噴射口とし、
上記大噴射口と小噴射口とから噴射した不活性ガスによって上記半導体チップと基板との接合部分を囲繞するエアカーテンを形成するとともに、上記大噴射口から噴射された不活性ガスが上記半導体チップと基板との間を流通する流れを形成するようにしたことを特徴とするボンディング装置。
【請求項2】
上記噴射口をボンディングヘッドに保持部に沿って設けたスリットによって形成し、
上記大噴射口を構成するスリットを、上記小噴射口を構成するスリットよりも幅広に設定したことを特徴とする請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項3】
上記ボンディングヘッドの保持部における上記半導体チップ吸着保持する吸着面を略四角形に形成し、上記噴射口を上記保持部を構成する4つの辺に沿って設けた4つの上記スリットによって構成し、
このうちひとつまたはふたつのスリットを上記大噴射口とすることを特徴とする請求項2に記載のボンディング装置。
【請求項4】
上記噴射口を上記ボンディングヘッドの保持部を無端状に囲繞するように形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボンディング装置に関し、詳しくは半導体チップを基板に接合する際に、上記半導体チップと基板との接合部分の周囲の空気を不活性ガスに置換するガス供給手段を備えたボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップを保持する保持部を備えたボンディングヘッドと、基板を支持するボンディングステージとを備え、半導体チップを基板に密着させて接合するボンディング装置が知られている。
ここで、半導体チップを基板上に加熱して接合するボンディング装置の場合、半導体チップと基板との接合部分の酸化による接合不良を防止するため、上記接合部分の周囲の空気を不活性ガスに置換することが行われている(特許文献1、2)。
特許文献1、2のボンディング装置では、半導体チップを保持するボンディングヘッドに不活性ガスを噴射する噴射口を設けることにより、上記接合部分の周囲にエアカーテンを形成し、当該エアカーテンの内側に不活性ガスを充満させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-108990号公報
【特許文献2】特開2015-153807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1、2のボンディング装置では、半導体チップを囲繞する噴射口から同じ噴出流量で不活性ガスを噴射しているため、エアカーテンの中央部分で不活性ガスの滞留が生じてしまい、この部分に残存していた酸素を含む空気を完全に排除できない場合があった。
このような問題に鑑み、半導体チップと基板との接合部分の周囲の空気を高いレベルで不活性ガスに置換することが可能なボンディング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかるボンディング装置は、基板を支持するボンディングステージと、半導体チップを保持する保持部を備えたボンディングヘッドと、上記ボンディングヘッドの保持部に隣接して設けられた噴射口と、当該噴射口より不活性ガスを噴射させるガス供給手段とを備えたボンディング装置において、
上記噴射口を上記ボンディングヘッドの保持部を囲繞するように設け、当該噴射口の一部を、他の部分の小噴射口よりも不活性ガスの噴出流量を大きく設定した大噴射口とし、
上記大噴射口と小噴射口とから噴射した不活性ガスによって上記半導体チップと基板との接合部分を囲繞するエアカーテンを形成するとともに、上記大噴射口から噴射された不活性ガスが上記半導体チップと基板との間を流通する流れを形成するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、ボンディングヘッドの保持部を囲繞するように設けた噴射口によって、半導体チップと基板との接合部分の周囲にエアカーテンを形成することができ、エアカーテンの内側への空気の流入を防止することができる。
さらに、上記噴射口の一部を噴出流量の大きな大噴射口とすることで、上記大噴射口から流出した不活性ガスが上記半導体チップと基板との間を流通して小噴射口に向かう流れを形成することとなる。
その結果、半導体チップと基板との間の空気を上記不活性ガスの流れによって排除することができ、接合部分の空気を高いレベルで不活性ガスへと置換することにより、接合部分の酸化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】第2実施例における噴射口の配置を説明する図
【
図4】第3実施例における噴射口の配置を説明する図
【
図5】第4実施例における噴射口の配置を説明する図
【
図6】第5実施例における噴射口の配置を説明する図
【
図7】第6実施例における噴射口の配置を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について説明すると、
図1は半導体チップ1を基板2に接合するボンディング装置3を示しており、基板2を支持するボンディングステージ4と、半導体チップ1を保持する保持部5aを備えたボンディングヘッド5と、上記ボンディングヘッド5を移動させる移動手段6とを備え、これらは図示しない制御手段によって制御されるようになっている。
上記半導体チップ1は、
図2に示すように略正方形を有しており、半導体チップ1の裏面には複数の電極1aが設けられるとともに、各電極1aにはハンダからなるバンプBが形成されている。
また上記基板2は上記半導体チップ1よりも大きく形成されており、当該基板2の表面の所要の位置には、上記半導体チップ1の電極1aと同じ配置で電極2aが設けられており、各電極2aにはハンダからなるバンプBが形成されている。
そして上記半導体チップ1を保持したボンディングステージ4が移動手段6によって移動し、半導体チップ1をボンディングステージ4に支持された基板2の所要の位置に密着させると、上記バンプBを溶融させて半導体チップ1と基板2とを接合するようになっている。
【0009】
上記ボンディングステージ4は上記基板2よりも広い面積を有しており、図示しない吸着手段によってその上面で基板2を吸着保持するようになっている。なお、上記移動手段6として、ボンディングステージ4を水平方向に移動させるX-Yテーブルを備えていてもよい。
上記ボンディングヘッド5は、図示しないハウジングの内部に上記半導体チップ1に向けてレーザ光Lを照射するレーザ光照射手段11を備えている。
また上記ハウジングの下部には、上記半導体チップ1を負圧によって吸着保持する上記保持部5aと、当該保持部5aの周囲に設けられて不活性ガスによるエアカーテンCを形成する噴射部5bと、上記エアカーテンC内の酸素濃度を計測する計測部5cとが設けられている。
上記レーザ光照射手段11はレーザ光Lを下方に向けて照射し、保持部5aの下面に吸着保持された半導体チップ1にレーザ光Lを照射することで、当該半導体チップ1および基板2の電極1a、1bに形成された上記バンプBを溶融させるものとなっている。
なお、上記レーザ光照射手段11に代えて、パルスヒーター等の公知の加熱手段を用いて、上記半導体チップ1および基板2の電極1a、1bに形成された上記バンプBを溶融させるようにしてもよい。
そして上記移動手段6は、上記ボンディングヘッド5を水平方向(X-Y方向)に移動させるとともに、上下方向(Z方向)に昇降させるように構成され、さらにボンディングヘッド5ごと上記半導体チップ1を回転させる回転機構を備えている。
【0010】
上記保持部5aは、透明な2枚のプレート12と、当該プレート12の外周部分を保持するホルダ13とを備えており、また保持部5aには負圧を供給する負圧供給手段14が接続されている。
上記2枚のプレート12はレーザ光照射手段11からのレーザ光Lを透過させる石英やガラス等の透明な素材によって構成されており、
図2に示すように上記半導体チップ1よりも大きな面積を有した略正方形を有している。
上記2枚のプレート12の間には、当該プレート12の外周縁に沿って無端状に設けられたスペーサ15が設けられており、これにより2枚のプレート12の間に空間が形成されるようになっている。
上記ホルダ13は、上記2枚のプレート12およびスペーサ15を囲繞するように設けられ、上記レーザ光照射手段11が照射したレーザ光Lが上記2枚のプレート12を上方から下方へと透過するのを許容するようになっている。
【0011】
また上記ホルダ13および上記スペーサ15には、上記負圧供給手段14に連通する負圧通路14aが形成されており、当該負圧通路14aを介して供給された負圧は上記プレート12とプレート12との間に形成された空間に流入するようになっている。
上記2枚のプレート12のうち、下方側に設けられたプレート12の略中央部には上下方向に貫通穴12aが形成されており、上記貫通穴12aの位置に上記半導体チップ1が位置すると、上記空間に供給された負圧によって当該半導体チップ1がプレート12の下面に吸着されるようになっている。
そして上記負圧供給手段14は上記制御手段によって制御され、負圧の供給を制御することで上記半導体チップ1の吸着保持および解除を行うことが可能となっている。
【0012】
上記噴射部5bは、上記保持部5aを構成するホルダ13のさらに外周を囲繞するフレーム16によって構成され、当該フレーム16は開口部が内側を向いた断面略コ字型を有している。
これにより、フレーム16と上記ホルダ13の外周面との間には上記ホルダ13を無端状に囲繞する空間が形成され、当該空間には上記フレーム16に形成されたガス通路17aを介してガス供給手段17が接続されている。
上記ガス供給手段17は上記半導体チップ1と基板2とを接合する際に、酸化による接合不良が生じないようにするため、窒素ガスなどの不活性ガスを供給するようになっている。
本実施例において、上記ガス通路17aは
図2に示すように上記フレーム16の四隅に設けられており、上記ガス供給手段17から分岐配管を介して各ガス通路17aに接続されている。
そして、上記フレーム16の下部には、上記ホルダ13の外周面との間に噴射口としてのスリットSが形成されており、このスリットSは上記フレーム16の内側に形成される空間に連通することで、上記空間に供給された不活性ガスを下方に向けて噴射するようになっている。
【0013】
図2に示すように、上記スリットSは略正方形を有した上記保持部5aの各辺に対応する位置に設けられており、より具体的には上記ホルダ13の外周縁に沿って無端状に略正方形に形成されたものとなっている。
そして本実施例のボンディング装置3では、図示左方に位置する1つのスリットSを大噴射口としての幅広スリットSLとし、他の3つのスリットSを小噴射口としての幅狭スリットSSとしている。
本実施例では、上記幅広スリットSLの幅を5mmに設定し、幅狭スリットSSの幅を0.5mmに設定しており、幅広スリットSLの開口面積を幅狭スリットSSに対して10倍程度に設定したものとなっている。
このような構成とすることにより、上記幅広スリットSLからはガス供給手段17より供給される不活性ガスを上記幅狭スリットSSよりも大きな噴出流量で噴射することが可能となっている。
ここで本実施例では、上記幅広スリットSLからの不活性ガスの噴出流量を幅狭スリットSSの噴出流量よりも大きくするため、上記フレーム16に形成したガス通路17aのうち、幅広スリットSLに隣接して設けた2つのガス通路17a(
図2において図示左方に位置)を、当該幅広スリットSLに接近した位置に設けたものとなっている。
【0014】
上記計測部5cは、上記保持部5aによって保持された半導体チップ1の周囲の空気が不活性ガスによって置換されているか否かを、酸素濃度測定手段18を用いて計測するものとなっている。
上記保持部5aにおける下方側に設けられたプレート12には、吸着保持される半導体チップ1の周囲に4つの吸引口12bが形成されており、当該吸引口12bは上方側のプレート12およびスペーサ15に形成された測定通路18aを介して上記酸素濃度測定手段18に接続されている。
上記酸素濃度測定手段18は、上記吸引口12bから保持部5aの下方の空間の空気を吸引するとともに、吸引した空気中の酸素濃度を測定するものとなっており、上記制御手段は測定結果に基づいて半導体チップ1の周囲の空気が不活性ガスによって置換されているか否かを判定するものとなっている。
制御手段は、半導体チップ1の周囲の空気が不活性ガスによって十分に置換されていないと判断した場合には、上記移動手段6を制御してボンディングヘッド5とボンディングステージ4との間隔を狭くしたり、上記ガス供給手段17による不活性ガスの噴射量を増大させるようになっている。
ここで酸素濃度測定手段18は、半導体チップ1の周囲に形成した4つの吸引口12bから同時に空気を吸引して、半導体チップ1の周囲の酸素濃度を一体的に計測することが可能であるが、切換弁等を用いることにより、各吸引口12bから個別に空気を吸引して、各吸引口12bの周囲の酸素濃度をピンポイントで測定することが可能である。
なお、本実施例では上記吸引口12bを、吸着保持されている半導体チップ1の各辺に隣接した合計4か所に設けているが、保持部5aの形成された範囲内であって、半導体チップ1の吸着に支障をきたさない位置であれば、その位置および数は適宜変更することが可能である。
【0015】
以下、上記構成を有するボンディング装置3の動作を説明すると、最初に、制御手段は上記移動手段6によってボンディングヘッド5を図示しないチップ供給手段へと移動させ、ボンディングヘッド5は上記負圧供給手段14からの負圧によって、上記半導体チップ1を上記保持部5aに吸着保持する。
一方、制御手段は図示しない基板供給手段によって、上記ボンディングステージ4の所要の位置に上記基板2を供給し、ボンディングステージ4は当該基板2を吸着保持する。
続いて、制御手段は図示しない撮影手段を用いて、上記ボンディングヘッド5に吸着保持された半導体チップ1と、上記ボンディングステージ4に保持された基板2とを撮影し、これらの相対的な位置関係を認識する。
その後、制御手段は上記移動手段6によってボンディングヘッド5をボンディングステージ4の上方へと移動させ、その際、半導体チップ1の電極1aの位置と、基板2の電極2aの位置とが一致するよう、半導体チップ1の水平方向における位置の微調整と、水平面内における回転を行う。
【0016】
図1は、ボンディングヘッド5に保持された半導体チップ1がボンディングステージ4に支持された基板2における当該半導体チップ1の接合位置の上方(例えば、ボンディングヘッド5とボンディングステージ4との間の隙間の量が5mmとなる位置)に位置した状態を示している。
半導体チップ1が基板2における接合位置の上方に位置すると、制御手段は上記ガス供給手段17により不活性ガスを供給し、不活性ガスはガス通路17aを介して上記フレーム16の内部に形成された空間に供給され、フレーム16とホルダ13との隙間に形成された噴射口としてのスリットSから下方に向けて噴射される。
図2に示すように、スリットSから噴射された不活性ガスは、下方に位置する基板2やボンディングステージ4の表面に衝突すると、基板2やボンディングステージ4に沿って広がるように流れる。
上記スリットSは保持部5aを囲繞するように設けられていることから、噴射された不活性ガスは当該保持部5aに吸着保持された半導体チップ1と上記基板2との接合位置を囲繞する層流のエアカーテンCを形成するようになっている。
本実施例では、上記スリットSを上記保持部5aを無端状に囲繞するように設けているため、エアカーテンCを途切れなく形成することが可能となっている。
エアカーテンCを形成することで、エアカーテンCの外部からの空気の流入を防止して、半導体チップ1と基板2とを接合する際に、接合部分が酸化しないようにすることができる。
また、ボンディングヘッド5とボンディングステージ4との間に流入した不活性ガスは、上記半導体チップ1と基板2との間の空間に充満することで、それまで存在していた酸素を外部に排除するようになっている。
【0017】
そして本実施例のボンディング装置3では、上記保持部5aを囲繞する4つのスリットSのうち、一つを大噴射口としての幅広スリットSLとし、その他を小噴射口としての幅狭スリットSSとしている。
このような構成とすることで、
図1に示すように、噴出流量の大きな幅広スリットSLからエアカーテンCの内側に流れた不活性ガスが、当該幅広スリットSLに対して半導体チップ1を挟んで対向した位置に設けた、噴出流量の小さな幅狭スリットSSに向けて流通して、ボンディングヘッド5の下方で半導体チップ1を横切るような層流である主流を形成するようになっている。
特に、ボンディングヘッド5に保持された半導体チップ1が基板2の上方に位置している状態では、この不活性ガスの流れ(主流)が半導体チップ1と基板2との間を通過するため、それまで存在していた酸素を含む空気を高いレベルで排除することができる。
これに対し、保持部5aを囲繞する4つのスリットSからの不活性ガスの噴出流量が等しいと、エアカーテンCの内側に噴射された不活性ガスがエアカーテンCの中央部分、すなわち半導体チップ1と基板2との間で滞留してしまい、それまで存在していた酸素を含む空気が排除されない場合があった。
【0018】
このようにして、半導体チップ1と基板2との間の空間が不活性ガスによって置換されると、制御手段は上記レーザ光照射手段11を制御してレーザ光Lを半導体チップ1に照射し、上記半導体チップ1のバンプBを溶融させ、その後ボンディングヘッド5を下降させることにより、半導体チップ1を基板2に密着させる。
半導体チップ1を基板2に密着させると、レーザ光照射手段11によるレーザ光Lの照射を停止させ、その後溶融したバンプBが冷却されて固化し、半導体チップ1と基板2とが接合されると、制御手段は負圧供給手段14による負圧の供給を停止するとともに、ボンディングヘッド5を上昇させて、半導体チップ1より離脱させる。
なお、上記噴射口より不活性ガスを噴射して上記エアカーテンCおよび主流を形成している間に、上記レーザ光照射手段11がレーザ光Lを照射して、半導体チップ1を予熱するようにしてもよく、あるいは、ボンディングヘッド5を下降させて半導体チップ1が基板2に密着した状態で、上記レーザ光照射手段11がレーザ光Lを照射するようにしてもよい。
【0019】
ここで、半導体チップ1と基板2との間の空間を不活性ガスによって置換する際には、
図1に示す上記ボンディングヘッド5とボンディングステージ4との間の隙間量や、上記ガス供給手段17が上記噴射部5bより噴射させる不活性ガスの流量を適切に設定する必要がある。
例えば、上記隙間量を大きく設定してしまうと、上記幅広スリットSLから幅狭スリットSSに向かう上記主流を形成しやすくなるものの、エアカーテンCの外部から大気が侵入する可能性が高くなってしまう。
また上記噴射部5bから噴射する不活性ガスの流量を大きく設定してしまうと、上記エアカーテンCの内側における不活性ガスの置換率を高められるものの、当該不活性ガスによって半導体チップ1や基板2が冷却されてしまうため、不活性ガスの加熱手段を追加する必要が生じるなど、装置コストの上昇につながってしまう。
そこで、本実施例のボンディング装置3では、上記酸素濃度測定装置18によってエアカーテンCの内側の酸素濃度を測定し、制御手段はエアカーテンCの内側の酸素濃度が所望の濃度に達していないと判定した場合、不活性ガスによる置換が不十分であると判定する。
その場合、制御手段は上記移動手段6によってボンディングヘッド5を下降させて上記隙間量を小さくするとともに、上記ガス供給手段17による不活性ガスの流量を増大させるフィードバック制御を行う。
このとき、隙間量と不活性ガスの流量について好適な設定範囲をあらかじめ設定しておき、制御手段はこの設定値に基づいて隙間量または流量の少なくともいずれか一方を変更するような制御を行うようにしてもよい。
また、フィードバック制御を行わずに、予め半導体チップ1や基板2の品種ごとに、予め好適な隙間量および流量を制御手段に登録しておき、ボンディング装置3によって対応する品種をボンディングする際に、撮影手段を介しての自動の品種判別や、オペレーターによる手動選択によって隙間量と流量を選択するようにしてもよい。
【0020】
以下、
図3~
図7は、第2~第6実施例にかかるボンディング装置3を示し、いずれも第1実施例に対して上記ボンディングヘッド5に設けた上記噴射口の形状を異ならせたものとなっている。なお以下の各実施例においても上記吸引口12bを用いてエアカーテンCの内側の酸素濃度を測定しているが、当該構成についての説明は省略するものとする。
図3に示す第2実施例のボンディング装置3においても、ボンディングヘッド5の保持部5aは略正方形を有しており、また本実施例の上記噴射口は当該保持部5aに沿って設けた4つのスリットSによって構成したものとなっている。
本実施例においても、一つのスリットSを幅広スリットSLとし、その他の3つを幅狭スリットSSとしているが、第1実施例と異なり、各スリットSの両端部同士は接続されておらず、保持部5aを無端状に囲繞したものとはなっておらず、それぞれ独立している。
ただし、上記幅広スリットSLおよび幅狭スリットSSは、上記保持部5aに吸着保持される半導体チップ1の幅に合わせて設定されており、半導体チップ1が破線で示すように保持部5aの内側で回転した状態で保持された場合であっても、その両端部と同程度の長さが確保されるようになっている。
このような構成とすることで、第1実施例と同様、上記幅広スリットSLから噴射される不活性ガスの流れを半導体チップ1と基板2との間に形成することができ、半導体チップ1と基板2との間の空気を高いレベルで不活性ガスに置換することができる。
なお、本実施例では隣接するスリットS同士が連結されておらず、保持部5aを無端状に囲繞していないが、スリットSの長さを半導体チップ1の両端部の長さに合わせて設けているため、半導体チップ1の周囲に上記エアカーテンCを形成することができる。
【0021】
図4に示す第3実施例のボンディング装置3は、保持部5aに沿って4つのスリットSを備えているが、上記第2実施例におけるボンディング装置3に対し、保持部5aに沿って設けたスリットSの両端部同士が接続され、保持部5aが無端状に囲繞されたものとなっている。
一方、本実施例では上記第1実施例におけるボンディング装置3と異なり、上記幅広スリットSLの形成されたスリットSについては、当該幅広スリットSLの形成される範囲を上記半導体チップ1の保持される幅に合わせて設け、当該幅広スリットSLの両側に幅狭スリットSSを形成したものとなっている。
このような構成とすることにより、幅広スリットSLを半導体チップ1の保持される範囲に設けることで、不活性ガスによる流れを半導体チップの保持されている範囲に集中させることが可能となり、またスリット同士を連結したことでエアカーテンCを途切れなく形成することができる。
【0022】
図5に示す第4実施例のボンディング装置3の噴射口は、第2実施例と同様、上記保持部5aに沿って設けた4つのスリットSによって構成されたものとなっている。
本実施例では、上記第2実施例に対し、上記幅広スリットSLを二つ備えており、当該幅広スリットSLを上記保持部5aを挟んで対向した位置に設け、幅狭スリットSSを幅広スリットSLに対して直交した位置に設けている。
このような構成とすることで、対向した位置に設けられた幅広スリットSLから噴射された不活性ガスは、半導体チップ1と基板2との間を流れた後に幅狭スリットSSに向けて流れることにより、半導体チップ1と基板2との間の空気を不活性ガスに高いレベルで置換することができる。
なお、第4実施例においても、第2実施例に対する第3実施例のように、スリットSを無端状に接続して、エアカーテンCを途切れなく形成するようにしてもよい。
【0023】
図6に示す第5実施例のボンディング装置3は、第2実施例と同様上記保持部5aに沿って設けた4つのスリットSによって構成されたものとなっている。
本実施例では、上記第4実施例と同様、上記幅広スリットSLを二つ備えているが、本実施例では幅広スリットSLを保持部5aにおける隣接する2つの辺に設け、幅狭スリットSSを保持部5aの中心を挟んで対向した隣接する2つの辺に設けたものとなっている。
このような構成とすることで、隣接する2辺に設けられた幅広スリットSLから噴射された不活性ガスは、半導体チップ1と基板2との間を流れた後に、対向する2辺の幅狭スリットSSに向けて流れることから、半導体チップ1と基板2との間の空気を不活性ガスに高いレベルで置換することができる。
なお、第5実施例においても、第2実施例に対する第3実施例のように、スリットSを無端状に接続して、エアカーテンCを途切れなく形成するようにしてもよい。
【0024】
図7に示す第6実施例のボンディング装置3は、上記保持部5aが円形を有しており、半導体チップ1はその中央部に吸着保持されるようになっている。そして上記噴射口は上記保持部5aを無端状に囲繞する円形のスリットSによって構成されている。
そして本実施例では、上記スリットの一部をその他の部分より広い幅広スリットSLとし、その他の部分を幅狭スリットSSとしており、幅広スリットSLと幅狭スリットSSとの間の幅は徐々に変化するように形成している。
上記幅広スリットSLの長さは、スリットSの全周に対して20~25%程度の割合で形成されており、このような構成とすることで、上記幅広スリットSLから噴射される不活性ガスが半導体チップ1と基板2との間を通過し、これらの間に介在する空気を不活性ガスに高いレベルで置換することができる。
【0025】
上述した各実施例では、噴射口を保持部5aを構成するホルダ13と噴射部5bを構成するフレーム16との間に形成したスリットSによって構成し、当該スリットSの幅を異ならせることで、幅広スリットSLを大噴射口に、幅狭スリットSSを小噴射口としている。
これに対し、上記スリットSの幅をすべて同じ幅に設定した場合であっても、所要のスリットSとその他のスリットSが異なる噴射流量で不活性ガスを噴射するようにすれば、上記構成以外の構成を採用することができる。
例えば、上記ガス供給手段17が所要のスリットSに対して大流量で不活性ガスを供給して、当該スリットSを大噴射口とし、それ以外のスリットSに対してはそれよりも小流量で不活性ガスを供給することにより、当該スリットSを小噴射口とすることができる。
また、噴射口の形状を上記スリットSとせずに、保持部5aに沿って設けた複数の噴射ノズルによって構成し、所要の噴射ノズルから噴射される不活性ガスからの噴射流量を異ならせることで、各噴射ノズルを上記大噴射口や小噴射口に設定することができる。
この場合においても、上記各実施例に示すように大噴射口と小噴射口とを配置することで、上記実施例と同様、半導体チップ1と基板2との接合部分の周囲にエアカーテンCを形成するとともに、半導体チップ1と基板2との間に不活性ガスによる流れを形成し、これらの間に位置する空気を高いレベルで置換することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 半導体チップ 2 基板
3 ボンディング装置 4 ボンディングステージ
5 ボンディングヘッド 5a 保持部
5b 噴射部 11 レーザ光照射手段
12 プレート 13 ホルダ
14 負圧供給手段 16 フレーム
17 ガス供給手段 B バンプ
L レーザ光 S スリット(噴射口)
SL 幅広スリット(大噴射口) SS 幅狭スリット(小噴射口)
C エアカーテン