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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174465
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】パノラマX線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/14 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
A61B6/14 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080274
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(71)【出願人】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】新井 嘉則
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英基
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA12
4C093CA02
4C093DA05
4C093EC28
4C093FA22
4C093FA53
(57)【要約】
【課題】パノラマ画像の解像度を向上させることが可能なパノラマX線撮影装置を提供することを目的とする。
【解決手段】X線発生部と、X線検出部44と、X線発生部とX線検出部44とが対向するようにX線発生部とX線検出部44とを支持する支持部と、前記支持部を駆動する駆動機構と、撮影対象者Mを保持する被写体保持部と、X線発生部とX線検出部44とが頭部Pの周りを旋回してパノラマX線撮影を行うように、駆動機構による支持部の動作を制御する旋回制御部とを備え、旋回制御部が、同一の撮影対象者Mに対するX線検出部44のパノラマ旋回軌道として、第1旋回軌道と第2旋回軌道R2とを設定可能に構成され、第2旋回軌道R2は、頭部Pの前方及び側方において、第1旋回軌道よりも頭部Pの表面に近接した軌道とされている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生器を含むX線発生部と、
X線検出器を含むX線検出部と、
前記X線発生部と前記X線検出部とが対向するように前記X線発生部と前記X線検出部とを支持する支持部と、
前記支持部を駆動する駆動機構と、
撮影対象者を保持する被写体保持部と、
前記X線発生部と前記X線検出部とが、前記X線発生部と前記X線検出部の間に前記被写体保持部に保持された前記撮影対象者の頭部を位置させた状態で、前記頭部の周りを旋回してパノラマX線撮影を行うように、前記駆動機構による前記支持部の動作を制御する旋回制御部とを備え、
前記旋回制御部が、同一の前記撮影対象者に対する前記X線検出部のパノラマ旋回軌道として、第1旋回軌道と第2旋回軌道とを設定可能に構成され、
前記第2旋回軌道は、前記頭部の前方及び側方において、前記第1旋回軌道よりも前記頭部の表面に近接した軌道である、パノラマX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパノラマX線撮影装置であって、
前記被写体保持部が、前記頭部のうちの前歯領域を固定する前歯領域固定部を含み、
前記旋回制御部は、前記第2旋回軌道として、前記前歯領域固定部の前方において、前記第1旋回軌道よりも前記前歯領域固定部に近接した軌道を設定する、パノラマX線撮影装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のパノラマX線撮影装置において、
前記駆動機構が、前記支持部を旋回軸部の軸回りに旋回させる旋回機構と、前記旋回軸部を前記旋回軸部の軸方向と交差する方向に移動させる旋回軸移動機構とを含む、パノラマX線撮影装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のパノラマX線撮影装置において、
前記旋回制御部が、前記第1旋回軌道として、標準的な頭部形状に適応する軌道を設定する、パノラマX線撮影装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のパノラマX線撮影装置であって、
前記旋回制御部は、前記第2旋回軌道として、前記頭部の前方において、前記頭部の表面から10cm以内の位置を経由する軌道を設定する、パノラマX線撮影装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパノラマX線撮影装置であって、
前記旋回制御部は、前記第2旋回軌道として、全体に亘って、前記頭部の表面から10cm以内の位置を経由する軌道を設定する、パノラマX線撮影装置。
【請求項7】
請求項6に記載のパノラマX線撮影装置であって、
前記第2旋回軌道は、前記頭部の前歯領域の前方範囲における部分軌道が、他の範囲における部分軌道よりも前記頭部の表面に近づく軌道である、パノラマX線撮影装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載のパノラマX線撮影装置において、
前記旋回制御部が、前記撮影対象者の個体の体格データに従い個体別に前記第2旋回軌道を設定する、パノラマX線撮影装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載のパノラマX線撮影装置において、
前記頭部の表面形状を検出する頭部表面形状検出部をさらに備え、
前記旋回制御部が、前記頭部の表面形状検出部の検出結果に応じて、前記第2旋回軌道を設定する、パノラマX線撮影装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1つに記載のパノラマX線撮影装置において、
前記旋回制御部は、前記第1旋回軌道及び前記第2旋回軌道の少なくとも一方として、前記頭部の前方における前記頭部の表面に対する距離よりも、前記頭部の側方における前記頭部の表面に対する距離の方が大きい軌道を設定する、パノラマX線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、X線発生器とX線検出器とを被写体周りに旋回させてパノラマX線撮影を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カメラ等の肩当たり検出手段によって、患者の肩当りの可能性の有無を検知し、肩当りを検知した場合に、肩当りを警告することが開示されている。
【0003】
特許文献2には、パノラマX線撮影を行う際に、X線発生器が頭部に接触することを抑制するため、被写体の頭部の体格の大きさに応じて、X線検出器の通過経路を変更することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-136363号公報
【特許文献2】国際公開第2019/131859号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、パノラマ画像の解像度(撮影対象領域の細部表現力)を向上させることが要請されている。パノラマ画像の解像度は、X線検出器が撮影対象領域である頭部に近ければ近い程向上する。
【0006】
特許文献1及び2は、患者の肩又は頭部に対する接触を回避することを目的とする構成を開示しており、X線検出器を頭部に近づけてパノラマ画像の解像度を向上させるための検討を欠く。
【0007】
そこで、本開示は、パノラマ画像の解像度を向上させることが可能なパノラマX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、パノラマX線撮影装置は、X線発生器を含むX線発生部と、X線検出器を含むX線検出部と、前記X線発生部と前記X線検出部とが対向するように前記X線発生部と前記X線検出部とを支持する支持部と、前記支持部を駆動する駆動機構と、撮影対象者を保持する被写体保持部と、前記X線発生部と前記X線検出部とが、前記X線発生部と前記X線検出部の間に前記被写体保持部に保持された前記撮影対象者の頭部を位置させた状態で、前記頭部の周りを旋回してパノラマX線撮影を行うように、前記駆動機構による前記支持部の動作を制御する旋回制御部とを備え、前記旋回制御部が、同一の前記撮影対象者に対する前記X線検出部のパノラマ旋回軌道として、第1旋回軌道と第2旋回軌道とを設定可能に構成され、前記第2旋回軌道は、前記頭部の前方及び側方において、前記第1旋回軌道よりも前記頭部の表面に近接した軌道とされている。
【発明の効果】
【0009】
このパノラマX線撮影装置によると、パノラマ画像の解像度を向上させることできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るX線撮影装置を示す斜視図である。
図2】同上のX線撮影装置を示す一部断面側面図である。
図3】X線ビーム形状調整部を示す説明図である。
図4】X線ビーム形状調整部を示す説明図である。
図5】旋回軸移動機構を示す一部破断平面図である。
図6】旋回軸移動機構を示す一部破断正面図である。
図7】X線撮影装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図8】撮影制御部の処理例を示すフローチャートである。
図9】第1旋回軌道の一例を示す説明図である。
図10】第2旋回軌道の一例を示す説明図である。
図11】パノラマ撮影中における撮影対象者に対するX線検出部及び筐体の位置関係を示す説明図である。
図12】パノラマ撮影中における撮影対象者に対するX線検出部及び筐体の位置関係を示す説明図である。
図13】変形例に係る撮影制御部の処理例を示すフローチャートである。
図14】X線検出部に対する頭部の表面形状を表す頭部表面形状データの一例を示す説明図である。
図15】第2実施形態に係るX線撮影装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図16】撮影制御部の処理例を示すフローチャートである。
図17】上下変位パターンの一例を示す図である。
図18】複数の撮影対象者の体格例を示す説明図である。
図19】第1旋回軌道によるパノラマ撮影中における撮影対象者に対するX線検出部及び筐体の位置関係を示す説明図である。
図20】第1旋回軌道によるパノラマ撮影中における撮影対象者に対するX線検出部及び筐体の位置関係を示す説明図である。
図21】第1旋回軌道によるパノラマ撮影中における撮影対象者に対するX線検出部及び筐体の位置関係を示す説明図である。
図22】第2旋回軌道によるパノラマ撮影中における撮影対象者に対するX線検出部及び筐体の位置関係を示す説明図である。
図23】第2旋回軌道によるパノラマ撮影中における撮影対象者に対するX線検出部及び筐体の位置関係を示す説明図である。
図24】第2旋回軌道によるパノラマ撮影中における撮影対象者に対するX線検出部及び筐体の位置関係を示す説明図である。
図25】肩の位置を検出するための画像例を示す説明図である。
図26】第2旋回軌道の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係るパノラマX線撮影装置について説明する。
【0012】
<全体構成>
パノラマX線撮影装置の一例であるX線撮影装置の全体構成を説明する。図1はX線撮影装置20を示す斜視図である。図1において構成の一部が機能ブロックで示される。図2はX線撮影装置20を示す一部断面側面図である。
【0013】
なお、説明の便宜上方向を規定しておく。
【0014】
XYZ直交座標系は、撮影本体部30が設置される3次元空間において定義される直交座標系である。後述する機構上の旋回軸X1の軸方向と平行な方向がZ軸方向である。本実施形態では、機構上の旋回軸X1の軸方向と平行な方向と、後述する鉛直駆動部82による移動方向とは、Z軸方向として一致している。Z軸方向に直交する方向がY軸方向であり、Z軸方向にもY軸方向にも直交する方向がX軸方向である。被写体保持部32によって保持された頭部Pの前後の方向をY軸方向とし、頭部の左右の方向をX軸方向とする。本願では、Z軸方向をZ方向、Y軸方向をY方向、X軸方向をX方向と呼ぶこともある。視線方向について、例えば-Z側から+Z側を見る視線方向を+Z方向視と呼ぶなど、-○(○はX、Z、Yのいずれか)側から+○側を見る視線方向またはその視線方向に平行な視線方向を「+○方向視」とし、+○側から-○側を見る視線方向またはその視線方向に平行な視線方向を「-○方向視」と定義することとする。単に「○方向視」と述べる場合は、+○方向視でも-○方向視でもよいこととする。X方向とY方向に広がりを有する2次元の面をXY面というように、○方向と△(△はX、Z、Yのいずれか)方向に広がりを有する2次元の面を「○△面」と表現することがある。
【0015】
頭部Pからベース80Bに向かう方すなわち下側を-Z側とし、逆に頭部Pからベース80Bより遠ざかっていく方すなわち上側を+Z側とする。頭部Pの前の方を+Y側とし、後の方が-Y側とする。顔側から見た頭部Pの右の方を+X側とし、左の方が-X側とする。図1及び図2に各軸方向を図示する。
【0016】
X線撮影装置20は、例えば、撮影本体部30と、X線画像処理装置180(単に画像処理装置180ともいう)とを備える。撮影本体部30は、パノラマX線撮影を実行可能に構成されている。撮影本体部30は、パノラマX線に加えて、例えば、単純透過X線撮影、X線CT(Computed Tomography)撮影及びセファロ撮影の少なくとも1つを実行可能に構成されていてもよい。撮影本体部30は、パノラマX線撮影等のX線撮影を実行して、X線撮影データ(投影データともいう)を収集する。収集されたX線撮影データは、X線画像処理装置180によって処理されて、各種X線画像(具体的には、X線CT撮影画像、パノラマ撮影画像及びセファロ撮影画像等)を生成する装置である。本例では、X線画像処理装置180は、パノラマX線撮影処理によって収集されたX線撮影データを処理してパノラマX線画像を生成する。なお、パノラマX線画像とは、歯列弓を当該歯列弓に直交する方向のX線透過画像で連続的に表現したX線画像である。歯列弓の部分によっては顎骨などの他の硬組織の写り込みを避けるためにあえて直交を多少避けることもある。かかるパノラマX線画像では、隣合う歯がなるべく重なり合わずに表される。X線撮影装置20は、X線撮影データを収集する装置として構成され、上記X線画像処理装置180が省略された構成であってもよい。X線撮影装置20は、X線画像処理装置180の一部機能のみ備える構成であってもよい。
【0017】
撮影本体部30は、X線発生部42と、X線検出部44と、支持部の一例である旋回アーム40と、駆動機構60と、被写体保持部32と、撮影制御部100とを備える。
【0018】
X線発生部42は、X線を発生させるX線発生器43を含む。X線検出部44は、X線を検出するX線検出器45を含む。旋回アーム40は、X線発生部42とX線検出部44とが対向するようにX線発生部42とX線検出部44とを支持する。駆動機構60は、上記旋回アーム40を駆動する。駆動としては、例えば、旋回駆動である。駆動機構60は旋回アーム40を駆動することでX線発生部42とX線検出部44を少なくとも旋回させる。被写体保持部32は、撮影対象者Mを保持する。撮影制御部100による制御下、X線発生部42とX線検出部44との間に被写体保持部32によって保持された撮影対象者Mの頭部Pを位置させた状態で、駆動機構60による旋回アーム40の駆動により、X線発生部42とX線検出部44とが頭部Pの周りを旋回してパノラマX線撮影を行うように、駆動機構60が旋回アーム40を旋回させる。X線検出部44の移動に鉛直駆動部82による移動を加えてもよい。被写体保持部32は好適には撮影対象者の頭部PのX線撮影中の動きを制約するように、好ましくは固定するようにして位置決めする。
【0019】
各部構成についてより具体的に説明する。
【0020】
旋回アーム40は、一方向に長い形状に形成されている。旋回アーム40は例えば水平方向に沿って設けられる。旋回アーム40の一端部にX線発生部42が垂下状に設けられ、旋回アーム40の他端部にX線検出部44が垂下状に設けられる。これにより、X線発生部42とX線検出部44との間に頭部Pを配置可能な状態で、X線発生部42とX線検出部44とが対向する。この状態で、X線発生部42は頭部PにX線ビームを照射する。X線検出部44は、頭部Pを透過したX線ビームを受光して検出する。
【0021】
X線発生部42は、X線発生器43及びX線ビーム形状調整部50を備えている。本実施形態では、X線発生部42は、さらに、X線発生器43及びX線ビーム形状調整部50を収容する筐体41を含む。筐体41は、底部及び底部から上方の空間を囲む周壁部とを含む。筐体41は、旋回アーム40の一端部に下側に突出するようにして支持されている。
【0022】
X線発生器43は、X線を発生させるX線源であるX線管を含む。X線発生器43から出射されるX線ビームの強度(出力強度)は、X線管に供給される電圧及び/又は電流を変更することによって制御される。X線発生器43の制御(詳細には、電圧量及び/又は電流量の制御)は、撮影制御部100の照射制御部102dにより行われる。
【0023】
X線ビーム形状調整部50は、X線発生器43から出射されるX線ビームの広がりを規制し、撮影目的に応じた形状にX線ビームを調整する。つまり、X線ビーム形状調整部50は、撮影対象者(被写体)Mに対するX線の照射範囲を制御する。X線ビーム形状調整部50は、照射制御部102dによって制御される。
【0024】
図3及び図4を参照してX線ビーム形状調整部50の構成例を説明する。X線ビーム形状調整部50は、2枚の遮蔽部材52Aと、2枚の遮蔽部材52Aを開閉駆動する遮蔽部材駆動部53Aと、2枚の遮蔽部材52Bと、2枚の遮蔽部材52Bを開閉駆動する遮蔽部材駆動部53Bとを備える。なお、図5においては、遮蔽部材52A、52B及び遮蔽部材52A、52Bを駆動する部分(モータ、シャフト等)については実線又は隠れ線(破線)で示し、ガイド53A1、53B1については仮想線(2点鎖線)で示している。
【0025】
遮蔽部材52A、52Bは、X線を吸収する材料(鉛等)で構成されており、長方形の板状に形成されている。
【0026】
4枚の遮蔽部材52A、52Bのうち2つの遮蔽部材52Aは、X線発生器43の出射口の正面側の上下位置に設けられている。2つの遮蔽部材52Aのうち対向する側の辺は、水平方向に沿っている。
【0027】
遮蔽部材駆動部53Aは、2つの遮蔽部材52Aを上下方向に沿って接近及び離隔駆動する。例えば、遮蔽部材駆動部53Aは、2つのガイド53A1と、2つのシャフト53A2と、2つのシャフト53A2を駆動する2つのモータ53A3とを備える。遮蔽部材52Aとシャフト53A2とは、例えば遮蔽部材52A内に設けたネジ溝にシャフト53A2外周に設けたネジ部が螺合してシャフト53A2の回転駆動で遮蔽部材52Aが変位するように構成できる。遮蔽部材52Aの一方がシャフト53A2の一方により駆動され、遮蔽部材52Aの他方がシャフト53A2の他方により駆動されるなど、各個別の駆動制御がなされてよい。
【0028】
一対のガイド53A1は、2つの遮蔽部材52Aのそれぞれの両端を上下方向に移動可能に支持している。
【0029】
2つの遮蔽部材52Aは個別に上下方向に移動駆動される。
【0030】
4枚の遮蔽部材52A、52Bのうち他の2つの遮蔽部材52Bは、X線発生器43からのX線の射出方向において上記2つの遮蔽部材52Aとは異なる位置で、X線発生器43の出射口の正面側の左右位置に設けられている。2つの遮蔽部材52Bのうち対向する側の辺は、上下方向に沿っている。
【0031】
遮蔽部材駆動部53Bは、2つの遮蔽部材52Bを左右方向に沿って接近及び離隔駆動する。上記遮蔽部材駆動部53B、遮蔽部材52Bは、遮蔽部材駆動部53A、遮蔽部材52Aと駆動・移動の方向が異なるだけの同じ構造に構成してよく、駆動・移動の方向は角度にしてX線の照射の軸の軸周りに90°異なるようにしてよい。そして、2つのモータ53B3の時計回り又は逆時計回りの回転駆動によって、2つの遮蔽部材52Bが個別に左右方向に移動駆動される。
【0032】
なお、遮蔽部材駆動部53A、53Bとしては、その他、リニアモータ機構、ラックアンドピニオン機構、ベルトとプーリーを利用した機構等が用いられてもよい。
【0033】
本例では、2つの遮蔽部材52Aのうち対向する上下2つの内側の辺及び2つの遮蔽部材52Bのうち対向する左右2つの内側の辺によって形成される開口55H1、55H2に応じて、X線ビームの形状、照射先となる位置等が調整される。
【0034】
例えば、2つの遮蔽部材52Aのうち対向する上下2つの内側の辺が大きく開き、かつ、2つの遮蔽部材52Bのうち対向する左右2つの内側の辺が大きく開いた状態では、方形状の開口55H1(図3参照)が形成される。X線発生器43から出射されたX線ビームは、この方形状、例えば、正方形状の開口55H1を通過することにより、正四角錐台状に広がるX線コーンビームに形成される。かかるX線コーンビームは、例えば、CT撮影に用いられる。
【0035】
また、例えば、2つの遮蔽部材52Aのうち対向する上下2つの内側の辺が大きく開き、かつ、2つの遮蔽部材52Bのうち対向する左右2つの内側の辺が小さく開いた状態では、細長い開口55H2が形成される(図4参照)。X線発生器43から出射されたX線ビームは、上下に細長いスリット状の開口55H2を通過することにより、上下に長い角錐台状に広がるX線細隙ビームに形成される。かかるX線細隙ビームは、例えば、パノラマX線撮影に用いられる。
【0036】
上記開口55H2の形状を保ったまま、2つの遮蔽部材52Bを同方向、例えば、右方向に移動させることで、X線細隙ビームの照射先を左方向から右方向に走査することができる。また、この開口55H2の形状を保ったまま、2つの遮蔽部材52Bを同方向、例えば、上方向に移動させることで、X線細隙ビームの照射先を下方向から上方向に移動させることができる。
【0037】
このX線ビーム形状調整部50によって、例えば、パノラマX線撮影時において、X線発生器43から照射されるX線ビームを、X線ビームの中心であるセンタービームCBが撮影対象者Mの体軸(鉛直方向)に対して斜め下方から上向きに入射し、かつ、体軸の方向に長さを有するX線細隙ビームに成形することができる(図2参照)。水平方向Hrに対するセンタービームCBの角度θは、例えば、4度~8度であってもよい。このように、X線ビームが撮影対象者Mに対して水平方向に対して下方から上向きに入射することで、パノラマ画像上において、硬口蓋、下顎角部及び脊椎などによる障害陰影の低減が図られる。このように、X線ビームを撮影対象者Mに対して斜め下方から上向きに入射させることを、斜め打上げ照射と呼んでもよい。
【0038】
なお、パノラマX線撮影を行う際、X線ビームが撮影対象者Mに対して水平方向に対して下方から上向きに入射することは必須ではなく、例えば、X線ビームは撮影対象者Mに対して水平方向に沿って入射してもよい。
【0039】
X線ビーム形状調整部は他の構成であってもよい。例えば、X線ビーム形状調整部は、L字状の板状に形成された2つの遮蔽部材を備え、2つの遮蔽部材の内側コーナー部を構成する縁の組合せによって開口を形成してもよい。この場合、2つの遮蔽部材は、直交する2方向に移動駆動可能なXYテーブル機構等によって、上下方向及び左右方向に移動可能とされているとよい。2つの遮蔽部材が当該機構によって移動駆動されることにより、上記と同様に、開口の形状が調整される。また、X線ビーム形状調整部は、1つ又は複数の開口が形成された単一の遮蔽部材を含む構成であってもよい。この場合、遮蔽部材が直線移動機構によって移動駆動されれば、開口の位置が移動してX線ビームの照射先が移動され得る。また、複数の開口を選択的にX線発生部42の出射口に対向させることができる。
【0040】
図1及び図2に示すように、X線検出部44は、X線検出器45及びX線検出器上下移動駆動部47を備えている。X線検出器45は、X線発生部42から出射されたX線ビームを検出する。X線検出器45は、平面状に広がる検出面を有するフラットパネルディテクタ(FPD)又はX線蛍光増倍管(I. I.:Image Intensifier)等により構成され得る。
【0041】
X線検出器45の検出面に配された複数の検出素子は、入射したX線の強度を電気信号に変換する。そして、その電気信号は、出力信号として撮影制御部100、画像処理装置180に入力され、その信号に基づいてX線画像が生成される。
【0042】
本実施形態では、X線検出部44は、X線検出器45を収容する筐体46を含む。X線検出器45は、筐体46の内部において、検出面がX線発生部42を向く姿勢で設けられている。X線検出器45の検出面に対して、X線発生部42から出射されたX線ビームが照射される。筐体46は、X線検出器45及びX線検出器上下移動駆動部47を収容した状態で、旋回アーム40の他端に支持されている。
【0043】
X線検出器上下移動駆動部47は、X線検出器45を旋回アーム40に対して上下方向(Z軸方向)に移動させる。X線検出器上下移動駆動部47は、モータ47aと、ボールネジ47bと、ナット部47cとを備えている。モータ47aは、Z軸方向に延びるボールネジ47bをZ軸まわりに回転させる。ナット部47cは、ボールネジ47bに螺合しており、X線検出器45のうち検出面とは反対側の裏面にX線検出器45に対して回動不能に取り付けられている。X線検出器45は、不図示のレールによりX線発生部42側を向いた姿勢でZ軸方向に移動するように案内されてもよい。
【0044】
モータ47aは、X線検出部駆動制御部102eにより制御される。X線検出部駆動制御部102eからの制御信号に基づき、モータ47aがボールネジ47bを回転させることによって、ナット部47c及びX線検出器45がZ軸方向に移動される。
【0045】
筐体46は、旋回アーム40の他端部から下方に延びるとともに下方に向けて開口する筒状に形成された筒部46aと、上方に向けて開口するとともに筒部46aの外側に被せられている外筐体46bとを備えている。
【0046】
モータ47aは、筒部46aに固定されている。外筐体46bは、旋回アーム40若しくは筒部46aと、外筐体46bとの間とを上下方向に連結するように設けられたスプリング部46dによって上側に付勢されている。外筐体46bの底面内側には、X線検出器45の下端部が当接することができる。
【0047】
X線検出器上下移動駆動部47がX線検出器45を下方へ移動させると、X線検出器45が外筐体46bの底面にあたって当該外筐体46bを下方へ押し下げる。このとき、スプリング部46dが弾性的に伸びて、スプリング部46dに弾性復元力が蓄積される。このため、X線検出器上下移動駆動部47がX線検出器45を上方へ移動させると、スプリング部46dの弾性復元力によって外筐体46bが上側へ引っ張られる。これにより、外筐体46bが上昇するX線検出器45に追従するように当接しつつ上昇する。
【0048】
なお、旋回アーム40に対してX線検出部44を上下移動させる構成は省略されてもよい。
【0049】
X線検出器45の高さ位置に合わせて外筐体46bが内側の筒部46aに対して上下に移動することにより、筐体46が上下方向に伸縮する。このように筐体46が伸縮することにより、高さ方向の位置が変化するX線検出器45を適切に保護できる。また、スプリング部46dによって、筐体46が可能な限り高い位置に配せられるため、X線撮影時に、筐体46が撮影対象者Mに接触し難くなる。すなわち、筒部46a、外筐体46b、スプリング部46d、X線検出器上下移動駆動部47、X線検出器45は、X線検出部44の底部および底部側にあるX線検出器45自体の昇降方向の移動を案内、駆動することでX線検出部44をZ方向に伸縮させるX線検出部伸縮機構を形成する。X線検出部伸縮機構は、旋回アーム40に対してX線検出部44の底部および底部側にあるX線検出器45自体のZ方向の位置を変更するX線検出部底部位置変更機構としても機能できる。
【0050】
この実施形態では、X線検出器45が最も高い位置に配されたとき(すなわち、外筐体46bが最も高い位置に配されたとき)の外筐体46bの最下端(すなわち、筐体46の最下端)は、X線発生部42の筐体41の最下端よりも低い位置となるように構成してもよい。すなわち、この場合はX線検出器45がどの高さに配されたとしても、筐体46の最下端は筐体41の最下端よりも低い位置にある。
【0051】
X線ビームを斜め打上げ照射する際に、その照射先の位置に合せてX線検出器45を上方に位置させることができる。これにより、斜め打上げ照射してパノラマX線撮影を行う際に、外筐体46b下端を可能な限り高い位置で回転させることができる。なお、X線ビームの照射先に合わせて、X線検出部44及び筐体46を上下移動させることは必須ではない。例えば、X線検出部44の検出面が、X線ビームの照射先に拘らず、当該X線ビームを検出可能な程度に十分に広い大きさを有している場合、X線検出部44は上下移動しなくてもよい。また、もちろん、X線ビームの照射方向を上下に変動させない場合、X線検出部44及び筐体46を上下移動させなくてもよい。
【0052】
X線発生部42及びX線検出部44を支持する旋回アーム40は、駆動機構60を介して上部フレーム95に支持されている。
【0053】
上部フレーム95は、支柱部80に支持されている。支柱部80は、例えば、床に対して水平方向に広がるベース80Bによって床に対して立った状態で支持される。本実施形態では、上部フレーム95の基端部が支柱部80に片持ち状態で支持されており、上部フレーム95の先端部が支柱部80から水平方向に沿って外方に向けて延びている。上部フレーム95の先端部に、Z軸方向に延びる旋回軸部96が設けられる。旋回軸部96の下端部は、旋回アーム40におけるX線発生部42とX線検出部44との間の中間部に連結されている。これにより、旋回アーム40は、旋回軸部96を介して、上部フレーム95に吊下げ状態で支持される。
【0054】
駆動機構60は、X線発生部42とX線検出部44とが撮影対象者Mの頭部Pの周りを旋回するように、旋回アーム40を駆動する装置である。駆動機構60は、少なくともX線検出部44の旋回軌道を変更するように、旋回アーム40を駆動することができる。
【0055】
本実施形態では、駆動機構60は、旋回機構62と、旋回軸移動機構70(以下、単に軸移動機構70と表記する場合がある)とを含む。旋回機構62は、旋回アーム40を旋回軸部96の軸周りすなわち旋回軸周りに旋回させる。軸移動機構70は、旋回軸部96を旋回軸部96の軸方向と交差(ここでは直交)する方向に移動させる。
【0056】
より具体的には、図6に示すように、旋回軸部96の下端部に対して、旋回アーム40が旋回軸部96の中心軸周りに回転可能に支持される。旋回軸部96と旋回アーム40との間に、軸受97が介在しており、旋回軸部96に対して旋回アーム40が円滑に回転できるように構成されていてもよい。
【0057】
旋回アーム40の内部には、旋回機構62が設けられる。旋回機構62は、旋回用モータ63を含む。より具体的には、旋回機構62は、旋回アーム40に固定された旋回用モータ63と、無端環状ベルト64とを含む。旋回用モータ63の回転方向及び回転方向は、支持体制御部102aによって制御される。無端環状ベルト64は、旋回用モータ63のシャフトに固定された環状部材(プーリー等)及び旋回軸部96の下端部に固定された環状部材に巻掛けられている。この場合、旋回軸部96は上部フレーム95に対して回転しないように固定される。旋回用モータ63の駆動により無端環状ベルト64に回転力が伝達されることによって、旋回用モータ63自身が無端環状ベルト64から反動を受けて回転運動をして、旋回用モータ63と固定関係にある旋回アーム40が回転する。無端環状ベルト64は、環状チェーンであってもよい。旋回用モータ63と旋回軸部96との間に、上記無端環状ベルト64に代えて又は加えて1つ又は複数のギヤが介在してもよい。旋回用モータ63は、旋回軸部96に直結されていてもよい。
【0058】
なお、旋回機構62は、上部フレーム95内に設けられてもよい。この場合、旋回軸部96と旋回アーム40を固定的に接続し、上部フレーム95に対して回転可能に支持された旋回軸部96を、旋回アーム40と共に回転させる構成としてもよい。
【0059】
旋回軸部96の中心軸X1は、旋回アーム40の一端側のX線発生部42と旋回アーム40の他端側のX線検出部44との間に位置している。このため、旋回機構62が旋回アーム40を回転させることによって、X線発生部42とX線検出部44とが旋回軸部96の中心軸X1の周りに旋回することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、旋回アーム40に撮像装置22が設けられる。撮像装置22は、被写体保持部32によって保持された頭部Pを撮像可能な位置に設けられる。撮像装置22は、例えば、可視光カメラである。ここでは、撮像装置22は、筐体46のうちX線発生部42側を向く上部に、X線発生部42を向くように支持される。撮像装置22による撮像範囲は、例えば、被写体保持部32によって保持された撮影対象者Mの頭部P及び肩Sを含む範囲に設定される。なお、撮像装置22は省略されてもよい。後に、撮像装置22を利用した変形例が説明される。
【0061】
図5及び図6に示すように、軸移動機構70は、旋回軸部96を旋回軸部96の中心軸と直交する方向に移動させる機構であり、本実施形態では、旋回軸移動機構70は、旋回軸部96をX軸方向及びY軸方向に移動させるXY方向移動機構である。軸移動機構70は、例えば、XYテーブル72及び駆動用モータ76a、76bを備えている。軸移動機構70は、例えば、上部フレーム95内に設けられる。
【0062】
XYテーブル72は、X方向可動テーブル73及びY方向可動テーブル74を備えている。X方向可動テーブル73は、X方向に沿って可動に設けられており、旋回アーム40を横方向(X軸方向)に移動させる。Y方向可動テーブル74は、Y方向に沿って可動に設けられており、旋回アーム40を前後方向(Y軸方向)に移動させる。例えば、Y方向可動テーブル74は、上部フレーム95に対してY方向に移動可能に支持されており、X方向可動テーブル73は、Y方向可動テーブル74に対してX方向に移動可能に支持される。そして、Y方向可動テーブル74の移動に伴って、X方向可動テーブル73、旋回軸部96及び旋回アーム40がY方向に沿って移動する。また、X方向可動テーブル73の移動に伴って、旋回軸部96及び旋回アーム40がX方向に沿って移動する。
【0063】
駆動用モータ76a、76bは、X方向可動テーブル73を駆動するX軸駆動用モータ76aと、Y方向可動テーブル74を駆動するY軸駆動用モータ76bとを含む。例えば、X軸駆動用モータ76aの回転シャフトにネジ溝が形成され、当該回転シャフトがX方向可動テーブル73に設けられたネジ孔に螺合している。X軸駆動用モータ76aの正方向又は逆方向の回転駆動に応じて、X方向可動テーブル73がX方向に沿って両方向に移動する。Y軸駆動用モータ76bがY方向可動テーブル74を移動させる構成についても、同様構成とすることができる。これらのX軸駆動用モータ76a及びY軸駆動用モータ76bは、例えば、支持体制御部102aによって制御される。
【0064】
X方向可動テーブル73及びY方向可動テーブル74は、その他、リニアモータ機構、ラックアンドピニオン機構、ベルトとプーリーを利用した機構等によって移動駆動されてもよい。軸移動機構70は、XY方向移動機構である必要は無く、多関節ロボットアーム装置であってもよい。
【0065】
本実施形態では、軸移動機構70は、旋回軸部96と旋回機構62と旋回アーム40とをX軸方向及びY軸方向に移動させる。このため、旋回機構62による旋回アーム40の旋回中に、当該旋回アーム40の機構上の旋回軸X1(旋回軸部96の中心軸)をXY方向に沿って移動させることができる。これにより、X線検出部44及びX線発生部42は、旋回機構62による旋回運動と軸移動機構70による軸移動運動との合成運動を行うことができる。軸移動機構70による旋回軸部96の移動経路を調整することによって、X線検出部44及びX線発生部42の旋回軌道を設定することができる。
【0066】
なお、旋回軸移動機構を旋回アーム側に設けてもよい。この場合、上部フレーム95のXY平面内における一定位置に固定された旋回軸部96の下端が、旋回アーム側に設けられた旋回軸移動機構に支持される。そして、旋回軸移動機構が旋回アーム40に対して旋回軸部96をXY方向に相対的に移動させることにより、一定位置の旋回軸部96に対して旋回アームがXY方向に移動することができる。
【0067】
駆動機構60が、軸移動機構70を備えることは必須ではない。例えば、軸移動機構70が設けられる代りに、旋回アーム40のうちX線検出部44側の端部が、リニアモータ、ラックアンドピニオン機構等の伸縮機構によって、旋回アーム40の長手方向に沿って伸縮駆動可能に構成されていてもよい。この場合、旋回アーム40の伸縮駆動によって、X線検出部44がX線検出部44等の旋回面に沿って2次元方向に移動し、もって、X線検出部44の旋回軌道が変更され得る。また、旋回アーム40の端部に、リニアモータ、ラックアンドピニオン機構等の可動支持機構によって、X線検出部44がX線発生部42に対して接近離隔移動可能に構成されていてもよい。この場合、当該可動支持機構によって、X線検出部44がX線検出部44に対して進退移動することによって、X線検出部44の旋回軌道が変更され得る。
【0068】
本実施形態では、旋回アーム40は、支柱部80に対して昇降駆動可能に支持される。より具体的には、図1及び図2に示すように、支柱部80に、上部フレーム95をZ軸方向に沿って昇降させる鉛直駆動部82が設けられる。鉛直駆動部82は、上部フレーム95を支柱部80に対して昇降駆動させる機構である。鉛直駆動部82は、例えば、モータ83、ボールネジ84、ナット部85及び複数(ここでは4つ)のローラ部86を備えている。
【0069】
上部フレーム95の基端部が支柱部80の上下方向の一部を囲んでいる。上部フレーム95の基端部にローラ部86が設けられる。ローラ部86は、支柱部80の表面に設けられたZ軸方向に延びるレール80rに沿って走行できるように、上部フレーム95の基端部内に支持される。これにより、上部フレーム95が支柱部80に沿って昇降移動可能に支持される。この際、ローラ部86がレールに沿って移動することで、支柱部80に対するZ軸周りでの上部フレーム95の回転が抑制される。鉛直駆動部82に、上部フレーム95の移動方向をガイドする要素も含めて考える場合は、鉛直駆動部82がモータ83、ボールネジ84、ナット部85、ローラ部86及びレール80rを備えると考えてよい。
【0070】
モータ83が支柱部80に対して一定位置に支持されている。図2に示す例では、モータ83は、支柱部80の下部に儲けられる。モータ83は、Z軸方向に延びるボールネジ84を、Z軸周りに回転させる。ナット部85は、上部フレーム95の基端部内に支持されており、上記ボールネジ84が当該ナット部85に螺合している。ナット部85は上部フレーム95の基端部に対して回動不能に固定される。そして、モータ83の正方向又は逆方向の回転に応じて、ボールネジ84が回転することによって、ナット部85が上方向又は下方向に移動する。ナット部85の移動に伴って、上部フレーム95がZ軸方向に昇降移動する。これにより、旋回アーム40及び当該旋回アーム40に支持されたX線発生部42及びX線検出部44がZ軸方向に沿って昇降移動する。
【0071】
被写体保持部32は、撮影対象者M(頭部P)を保持する部材である。本実施形態では、被写体保持部32は、頭部Pのうちの前歯領域Paを固定する前歯領域固定部を含む。より具体的には、被写体保持部32は、チンレスト33、ヘッドホルダ34(図1参照)及び下部フレーム35を備える。
【0072】
チンレスト33は、頭部Pの下顎の先端部を支持することにより、前歯領域Paを一定位置に固定する。ここで、前歯領域Paとは、頭部Pのうち前歯及び当該前歯を支持するベースとなる領域をいい、例えば、前歯そのもの及び下顎(特に顎先)である。つまり、チンレストは、前歯領域固定部の一例である。前歯領域固定部は、チンレストでなくてもよく、例えば、上下の前歯で噛まれるバイトピースであってもよい。
【0073】
ヘッドホルダ34は、頭部Pをその両側から挟持することにより、頭部PをX軸方向に関して位置付けする。被写体保持部32において、前歯領域固定部又はヘッドホルダ34が省略されてもよい。
【0074】
下部フレーム35の基端部が支柱部80に片持ち状に支持されており、下部フレーム35の先端部が支柱部80から水平方向に沿って延びる。下部フレーム35の先端部に上記チンレスト33及びヘッドホルダ34が支持されている。チンレスト33及びヘッドホルダ34は、旋回アーム40によって支持されたX線発生部42とX線検出部44との間に向うように支持されている。被写体保持部32によって支持された頭部Pは、X線発生部42及びX線検出部44の旋回中において、X線発生部42及びX線検出部44の間の一定位置に保持される。
【0075】
被写体保持部32は、保持部駆動部36によって昇降駆動される。すなわち、下部フレーム35の基端部は、支柱部80に対してZ軸方向に移動可能に支持されている。保持部駆動部36の駆動によって下部フレーム35がZ軸方向に昇降駆動される。
【0076】
保持部駆動部36は、モータ36a、ボールネジ36b、ナット部36c及び複数(ここでは4つ)のローラ部36dを備える。下部フレーム35の基端部が、支柱部80の上下方向の一部を囲んでいる。下部フレーム35の基端部内にローラ部36dが設けられている。ローラ部36dは、支柱部80に設けられたZ軸方向に延びるレール80rに沿って走行できるように、下部フレーム35内に固定されている。これにより、下部フレーム35が支柱部80に沿って昇降移動可能に支持される。この際、ローラ部36dがレールに沿って移動することで、支柱部80に対するZ軸周りでの下部フレーム35の回転が抑制される。保持部駆動部36に、下部フレーム35の移動方向をガイドする要素も含めて考える場合は、保持部駆動部36が、モータ36a、ボールネジ36b、ナット部36c、ローラ部36d及びレール80rを備えると考えてよい。
【0077】
モータ36aは、Z軸方向に延びるボールネジ36bを、Z軸周りに回転させる。ここでは、モータ36aは、下部フレーム35の基端部に支持されており、ボールネジ36bは下部フレーム35の基端部から上方に延出し、上部フレーム95の基端部に達する。
【0078】
ナット部36cは、上部フレーム95の基端部に支持されている。ナット部36cは上部フレーム95の基端部に対して回動不能に固定される。上部フレーム95の基端部に達するボールネジ36bがナット部36cに螺合している。
【0079】
モータ36aの正方向又は逆方向の回転に応じてボールネジ36bが回転し、その回転に応じて、当該ボールネジ36bが螺合するナット部36cに対して下部フレーム35が昇降移動することができる。下部フレーム35が昇降移動することによって、当該下部フレーム35によって支持されたチンレスト33及びヘッドホルダ34も昇降移動することができる。このため、被写体保持部32による頭部Pの上下保持位置と、X線発生部42及びX線検出部44によるX線撮影領域の上下位置とを、同期させて調整することもできるし、別々に調整することもできる。
【0080】
例えば、被写体保持部32による頭部Pの保持高さを一定のところに維持したまま、頭部Pに対して旋回アーム40を相対的に昇降させることにより、頭部PにおけるX線の照射箇所をZ軸方向に変更し得る。具体的には、実際の頭部Pの位置に合わせて、保持部駆動部36による上部フレーム95に対する下部フレーム35の昇降がなされない状態を保って、旋回アーム40と被写体保持部32とを、鉛直駆動部82によって昇降させ、頭部Pをチンレスト33及びヘッドホルダ34によって保持する。その後に、鉛直駆動部82によって旋回アーム40を上昇させると共に、被写体保持部32を一定の高さ位置に保つように、保持部駆動部36によって被写体保持部32を旋回アーム40に対して相対的に下降させる。あるいは、鉛直駆動部82によって旋回アーム40を下降させると共に、被写体保持部32を一定の高さ位置に保つように、保持部駆動部36によって被写体保持部32を旋回アーム40に対して相対的に上昇させる。
【0081】
また、上部フレーム95と下部フレーム35とはボールネジ36bを介して連結されている。このため、旋回アーム40と被写体保持部32とは、鉛直駆動部82によって、一体的に昇降移動される。
【0082】
上部フレーム95はX線発生部42とX線検出部44というイメージャーを支えるイメージャーサポーターでもある。下部フレーム35は被写体保持部32という被写体ホルダーを支持する被写体サポーターでもある。上部フレーム95と下部フレーム35とはボールネジ36bによって連結された、イメージャーサポーター被写体サポーター連結型のイメージング用サポーターである。鉛直駆動部82は少なくともイメージャーサポーターを昇降するイメージャーエレベーターでもある。保持部駆動部36は被写体サポーターを昇降する被写体エレベーターでもある。保持部駆動部36は、イメージャーサポーターと被写体サポーターとの間の距離を調整するイメージャー被写体間距離アジャスターでもある。鉛直駆動部82はイメージング用サポーターを昇降し、イメージング用サポーターを構成するイメージャーサポーターと被写体サポーターの間の距離はイメージャー被写体間距離アジャスターによって調整される関係にある。
【0083】
保持部駆動部36を設けず、鉛直駆動部82がイメージャーサポーターのみを昇降させるようにして、被写体サポーターが鉛直駆動部82から独立した別の鉛直駆動部によって昇降されるようにしてもよい。この場合、鉛直駆動部82はイメージャーサポーターの昇降によってイメージャー被写体間距離アジャスターとしても機能することができる。
【0084】
いずれにしても、X線撮影装置20は、Z方向の昇降に関し、イメージャーエレベーターとイメージャー被写体間距離アジャスターを備える。
【0085】
撮影制御部100は、撮影本体部30のX線撮影動作を制御するものであり、一種のコンピュータ装置である。本実施形態では、撮影制御部100は、パノラマX線撮影中において、駆動機構60による旋回アーム40の動作を制御する旋回制御部として機能することができる。撮影制御部100が旋回アーム40の動作を制御するほか、別の各種制御も可能に構成してよい。例えば、操作表示部110の動作を制御し、操作の受付制御や表示の制御をするようにしてよい。
【0086】
図7はX線撮影装置20の電気的構成の一例を示すブロック図である。撮影制御部100は、例えば、少なくとも1つのプロセッサ102と、記憶部104とを備える。
【0087】
記憶部104は、例えば、フラッシュメモリあるいはハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されている。記憶部104には、X線撮影に関する諸指示を受け付けると共に当該諸指示に従って旋回機構62、軸移動機構70、鉛直駆動部82、保持部駆動部36、X線発生器43及びX線ビーム形状調整部50等を制御してX線撮影動作を制御する撮影プログラム104aが格納されている。また、記憶部104には、第1旋回軌道情報104b、第2旋回軌道情報104cが格納されている。第1旋回軌道情報104b及び第2旋回軌道情報104cは、パノラマX線撮影を行う際において、X線検出部44の軌道を定めるための情報である。第1旋回軌道情報104b及び第2旋回軌道情報104cは、相互に異なる軌道を定めている。
【0088】
X線撮影中のX線検出部44の移動の軌道をX線検出軌道DTLとする。駆動機構60によるX線検出部44のXY面上の軌道を水平軌道HZLとし、X線検出部44のXY面上の旋回の軌道を水平旋回軌道HRLとする。鉛直駆動部82によるX線検出部44の鉛直方向の移動の軌道を昇降軌道ELLとする。X線検出部44の水平旋回に上下変位を伴うX線撮影が行われる場合、X線検出軌道DTLは水平旋回軌道HRLと昇降軌道ELLの合成軌道となる。このような合成軌道を旋回昇降軌道RELと呼んでもよい。
【0089】
パノラマX線撮影中のX線検出部44のX線検出軌道DTLは、旋回昇降軌道RELとしてよい。旋回昇降軌道RELは、X線検出部44の上下変位の移動量がゼロの場合を含んでよい。X線検出部44の水平軌道HZLを定める情報を水平移動情報HZIとし、X線検出部44の水平旋回軌道HRLを定める情報を水平旋回移動情報HRIとする。X線検出部44の昇降軌道ELLを定める情報を昇降情報ELIとする。上下変位情報204dは昇降情報ELIの例である。この昇降情報ELIに、X線検出部44の鉛直方向の移動の変位量がゼロである場合を含めてもよい。
【0090】
パノラマX線撮影中にX線検出部44の水平旋回に上下変位を伴わせることおよび制御が可能に構成された装置ではX線検出部44の軌道は旋回昇降軌道RELであると定義することが可能である。旋回昇降軌道RELには、パノラマX線撮影中のX線検出部44の鉛直方向の移動の変位量がゼロである場合を含めることも、ゼロより大である場合を含ませることも可能である。ゼロより大である場合、+Z方向への変位も-Z方向への変位も含みうる。
【0091】
記憶部104は、X線撮影における支持部たる旋回アーム40の移動の駆動情報104DR(支持部駆動情報104DR)を格納する。駆動情報104DRには、例えば、パノラマX線撮影の駆動情報104DRP、X線CT撮影の駆動情報104DRCなどが含まれる。駆動情報104DRが結果的にX線撮影におけるX線検出部44の軌道を定めるのであれば、駆動情報104DRはX線検出部44の軌道を定めるための情報でもある。駆動情報104DRが結果的にX線撮影におけるX線発生部42の軌道を定めるのであれば、駆動情報104DRはX線発生部42の軌道を定めるための情報でもある。駆動情報104DRにおいて、X線検出部44の軌道を定める要素をX線検出軌道情報104DTIと考え、X線発生部42の軌道を定める要素をX線発生軌道情報104GNIと考えてもよい。X線発生部42とX線検出部44の組をX線撮影エレメントとすると、駆動情報104DRはX線発生部42とX線検出部44すなわちX線撮影エレメントの軌道を定めるので、X線撮影エレメント軌道情報104Eであると考えてもよい。駆動情報104DRP中のX線検出軌道情報104DTIに第1旋回軌道情報104b、第2旋回軌道情報104cが含まれると考えてもよい。
【0092】
パノラマX線撮影中におけるX線検出部44の動きは、旋回機構62によるX線検出部44の旋回動作と、旋回機構62による旋回中における軸移動機構70による旋回軸部96の移動動作とが合さった動きとなる。このため、第1旋回軌道情報104b及び第2旋回軌道情報104cは、例えば、旋回機構62によるX線検出部44の旋回動作と、当該旋回動作に対する軸移動機構70による旋回軸部96の移動経路とを対応付けた情報であってもよい。旋回機構62によるX線検出部44の旋回動作は、例えば、いずれかの初期角度を基準とするX線検出部44の回転角として表現されてもよい。旋回軸部96の移動経路は、例えば、旋回軸部96を移動させるX軸駆動用モータ76a、Y軸駆動用モータ76bの回転方向及び回転速度の変化を定めるデータ、旋回軸部96の位置を定めるXY座標のデータ列、又は、x座標及びy座標を変数とする関係式等によって表現されてもよい。支持体制御部102aは、当該第1旋回軌道情報104b又は第2旋回軌道情報104cに基づいて、旋回機構62及び軸移動機構70を制御することで、X線検出部44を第1旋回軌道又は第2旋回軌道に沿って旋回させることができる。
【0093】
プロセッサ102は、CPU(Central Processing Unit)等によって構成されている。プロセッサ102が撮影プログラム104aを実行することによって、プロセッサ102の各種機能が実現される。プロセッサ102は、回路によって構成され、撮影プログラム104aの実行によって実現される機能ブロックとして、例えば、支持体制御部102a、軌道設定部102b、X線検出部駆動制御部102e、検出信号処理部102f、保持部制御部102c及び照射制御部102dを備える。すなわち、プロセッサ102は撮影プログラム104aを実行して、例えば支持体制御、軌道設定、X線検出部の駆動制御、検出信号の処理、保持部制御、照射制御を行う回路によって構成される。
【0094】
支持体制御部102aは、X線発生部42とX線検出部44とが、それらの間に被写体保持部32によって保持された撮影対象者Mの頭部Pを位置させた状態で、頭部Pの周りを旋回してパノラマ撮影を行うように、旋回機構62及び軸移動機構70による旋回アーム40の旋回動作を制御する。
【0095】
支持体制御部102aは、鉛直駆動部82の動作を制御して旋回アーム40の昇降制御を行ってもよい。
【0096】
軌道設定部102bは、同一の撮影対象者に対するX線検出部44のパノラマ旋回軌道として、第1旋回軌道R1と第2旋回軌道R2とを設定可能に構成されている。そして、第1旋回軌道R1と第2旋回軌道R2とのうちのいずれか1つを、パノラマX線撮影時における実際の旋回軌道として選択的に設定する。
【0097】
X線検出部駆動制御部102eは、X線検出器上下移動駆動部47を制御して、X線検出部44の上下位置を調整する。
【0098】
検出信号処理部102fは、X線検出器45からの電気信号に基づいて、パノラマX線画像の生成等に適したX線撮影データを生成する。X線撮影データは、画像処理装置180に与えられる。
【0099】
保持部制御部102cは、保持部駆動部36を制御して被写体保持部32の高さ位置を制御してもよい。
【0100】
照射制御部102dは、X線発生器43及びX線ビーム形状調整部50を制御する。例えば、X線パノラマ撮影を行う際には、X線ビーム形状調整部50を制御してX線ビームをX線細隙ビームに形成する。また、X線パノラマ撮影を行う際に、打上げ照射を行う際には、その打上げ角に応じてX線ビーム形状調整部50を制御する。この打上げ角に応じて、X線検出器上下移動駆動部47によってX線検出部44の昇降位置も調整されるとよい。また、照射制御部102dは、X線発生器43のX線管に供給される電圧及び電流の少なくとも一方を制御することにより、X線の射出の有無、X線の強度を制御することができる。
【0101】
ここでは、撮影制御部100がパノラマX線撮影を行う際の動作を中心に説明するが、撮影制御部100は、他のX線CT撮影、セファロ撮影を行う際にも、X線撮影装置20の各部を制御し、また、X線検出器45からの電気信号に基づく諸処理を実行する。
【0102】
撮影制御部100は、操作表示部110に接続されている。操作表示部110は、各種情報を表示する表示装置及び各種情報(撮影条件等を含む)、指令を撮影制御部100に入力するための情報入力装置を含む。表示装置は、液晶表示装置、有機EL(Electroluminescent)表示装置等によって実現される。情報入力装置は、スイッチ、ポインタ、タッチパネルのタッチ検出装置等によって実現され得る。かかる操作表示部110は、例えば、表示装置の表示面にタッチ検出装置を組込んだタッチパネルディスプレイ装置によって構成されていてもよい。操作表示部110は、表示装置と情報入力装置とが別体化された構成であってもよい。操作表示部110は、本X線撮影装置20のいずれかの部位(例えば、支柱部80、筐体46等)に設けられてよいし、X線撮影装置20とは別の箇所(例えば、防X線室の外壁面、別のテーブル上)に設けられてもよい。操作表示部110は、撮影設定受付部110aとして機能することができる。
【0103】
撮影制御部100は、通信インターフェース108を介して画像処理装置180に接続されている。画像処理装置180は、一種のコンピュータ装置である。画像処理装置180は、撮影制御部100からのX線撮影データに基づいてX線画像データ、特に、X線パノラマ画像データを生成する。X線画像処理装置180は、例えば、制御部182、記憶部183、画像処理部184、操作部185、表示部186等を備える。記憶部183は、フラッシュメモリ、HDD等の不揮発記憶装置であり、制御プログラム、X線撮影データ、X線画像データ等を記憶する。制御部182は、少なくとも1つのプロセッサを含み、制御部182が、記憶部183に記憶された制御プログラムに従って動作することにより、撮影制御部100から送信されるX線撮影データに基づいてX線画像データ(特に、X線パノラマ撮影データ)を生成する処理を実行する。例えば、X線撮影装置20にてパノラマ撮影が行われた場合、撮影制御部100は、目的の断層を画像化したパノラマ画像を取得する演算処理を行う。具体的には、撮影制御部100は、撮影本体部30において取得された短冊状の複数のX線投影画像に対して、断層上の位置に応じて相互にシフトさせて画素値を加算するシフト加算処理を行うことにより、1枚のパノラマX線画像を取得する。
【0104】
図7では画像処理用のプロセッサによって実現される画像処理部が示されている。X線画像データを生成する処理は、撮影制御部100に含まれる汎用的なプロセッサによって実現されてもよいし、画像処理用のプロセッサによって実現されてもよいし、これらのプロセッサの連携によって実現されてもよい。生成されたX線画像データは、記憶部183に記憶されてもよいし、他の記憶装置、例えば、撮影制御部100の記憶装置、サーバの記憶装置に記憶されてもよい。
【0105】
操作部185は、画像処理装置180に対して諸情報、支持を入力するための入力装置であり、スイッチ、ポインタ、タッチパネルのタッチ検出装置等によって実現され得る。
【0106】
表示部186は、液晶表示装置、有機EL(Electroluminescent)表示装置等によって実現される。画像処理装置180によって生成されたパノラマX線画像は、本表示部186に表示されてもよい(図1参照)。
【0107】
なお、上記各部において実現される一部あるいは全部の機能は、専用の論理回路等でハードウェア的に実現されてもよい。また、上記各部において実現される一部あるいは全部の機能は、1つのプロセッサによって統合して処理されてもよいし、複数のプロセッサによって適宜分散して処理されてもよい。
【0108】
<X線撮影装置の動作>
X線撮影装置の動作について、パノラマX線撮影に着目して説明を行う。なお、以下の動作は、撮影制御部100、特にプロセッサ102の制御によって行われる。図8はパノラマX線撮影に係る処理の一例を示すフローチャートである。
【0109】
X線撮影装置20が起動されると、各部に電力供給がなされ、撮影本体部30、撮影制御部100、画像処理装置180がスタンバイ状態となる。そして、操作表示部110において、撮影モードの設定画面が表示される。撮影モードの設定画面は、例えば、パノラマX線撮影モード、X線CT撮影モード等のうちから1つのモードを選択するための画面である。操作表示部110のタッチ操作等を通じて、パノラマX線撮影モードが選択されることで、パノラマ撮影モード処理が開始される。
【0110】
なお、パノラマX線撮影を行うにあたって、撮影対象者Mにおける頭部Pの高さ位置に合せて、旋回アーム40及び被写体保持部32の高さ調整がなされる。高さ調整は、オペレーターが操作表示部110等を通じて、旋回アーム40及び被写体保持部32の上昇又は下降の指示を入力することによってなされてもよい。
【0111】
パノラマ撮影モード処理が開始されると、ステップS1において、第1旋回軌道情報104bに基づき第1旋回軌道R1を初期軌道またはデフォルトの軌道として設定する。第1旋回軌道R1を従来からパノラマX線撮影装置で採用されてきた汎用の旋回軌道としてもよい。このため、旋回軌道に関する特別な指示が無い場合、X線検出部44を第1旋回軌道に沿って旋回させるパノラマX線撮影がなされる。
【0112】
次ステップS2において第2旋回軌道R2への設定変更の有無が確認される。第2旋回軌道R2への設定変更は、例えば、操作表示部110を通じてなされる。例えば、操作表示部110に、第2旋回軌道R2への設定変更用のアイコンが表示され、当該アイコンをタッチすることで、第2旋回軌道への設定変更が受付けられる。第2旋回軌道R2への設定変更有りと判定されると、ステップS3に進み、設定変更無しと判定されると、ステップS3を飛ばして、ステップS4に進む。
【0113】
ステップS3では、第2旋回軌道情報104cに基づいて、旋回軌道として第2旋回軌道を設定する。
【0114】
次ステップS4では、撮影開始の受付の有無が判定される。撮影開始の受付は、例えば、撮影制御部100に接続された押ボタンスイッチ(デッドマンスイッチと呼ばれる)を通じてなされてもよい。撮影受付無しと判定されると、ステップS2に戻り、ステップS2、S3の処理を繰返す。撮影受付有りと判定されると、ステップS5に進む。
【0115】
ステップS5では、設定された旋回軌道に応じて、X線検出部44を旋回させつつ、パノラマX線撮影を行う。すなわち、設定された第1旋回軌道情報104b又は第2旋回軌道情報104cに応じて、旋回機構62及び軸移動機構70を制御してX線検出部44を第1旋回軌道R1又は第2旋回軌道R2に沿って旋回させる。パノラマX線撮影においては、旋回アーム40全体が旋回移動するので、X線発生部42も旋回する。旋回中に、X線発生部42から照射されたX線が頭部Pを通過してX線検出部44に入射する。X線検出部44で検出されたX線に応じた電気信号に基づいてX線撮影データを生成し、当該X線撮影データを画像処理装置180に与える。これにより、画像処理装置180は、当該X線撮影データに基づきパノラマX線画像を生成する。
【0116】
なお、パノラマX線撮影を行うにあたって、パノラマ撮影領域の範囲等が操作表示部110等を通じて設定され、当該設定に応じてX線ビーム形状調整部50が制御されてもよい。
【0117】
また、パノラマX線撮影を行うにあたって、X線ビームの打上げ角が操作表示部110等を通じて設定され、当該設定に応じてX線ビーム形状調整部50が制御されてX線ビームの照射方向が調整されると共に、その照射方向に合わせてX線検出器上下移動駆動部47が制御されてX線検出部44の上下位置が調整されてもよい。
【0118】
第1旋回軌道R1及び第2旋回軌道R2の例について説明する。図9は第1旋回軌道R1の一例を示しており、図10は第2旋回軌道R2の一例を示している。図9及び図10において、頭部Pの形状及び肩Sの形状が示されている。頭部Pと肩Sの形状は標準的なものとする。
【0119】
第1旋回軌道R1及び第2旋回軌道R2は、歯列弓Arcの外周側に沿った弧状のラインである。第1旋回軌道R1及び第2旋回軌道R2は、歯列弓における前歯及び臼歯、さらに、顎関節から下顎角周辺を含む領域を透過したX線を検出し得る範囲に設定されてもよい。この観点から、第1旋回軌道R1及び第2旋回軌道R2は、頭部Pの左右方向中央の前部を中心にして左右に90゜を超える範囲(例えば、±115゜の範囲)の弧状軌道であってもよい。第1旋回軌道R1は、水平旋回軌道HRLに設定してもよい。第1旋回軌道R1は、パノラマX線撮影中のX線検出部44の鉛直方向の移動の変位量がゼロの旋回昇降軌道RELに設定してもよい。
【0120】
第2旋回軌道R2は、頭部Pの前方(少なくとも頭部Pの左右方向中央における前方)及び側方(少なくとも頭部Pの前後方向中央における左右)において、第1旋回軌道R1よりも頭部表面に近接した軌道に設定される。このため、第2旋回軌道R2を旋回するX線検出部44は、関心領域である歯列弓Arcにより接近してX線を検出することができる。
【0121】
頭部Pの中心を頭部中心HCとし、頭部表面のうち、X線細隙ビームが通過する地点を地点IPとする。頭部中心HCの定め方はさまざまに考えうるが、例えば前後中央と左右中央の交点とするなどが考えられる。Z方向視で地点IPにおいてX線が進む方向およびこの方向と平行な方向を順照射方向と呼ぶこととし、順照射方向の反対方向を逆照射方向と呼ぶこととする。頭部中心HCと地点IPとの間の距離が、照射方向が変わることで地点IPの位置によって異なってくるので、この変化に対応するためのX線検出部44、旋回軸部96の移動が必要になる。この移動量はオフセット値と考え、純粋にX線検出部44と頭部Pの表面との遠近に応じた移動と旋回軸部96の移動との関係を考えるものとする。図9及び図10に示すように、X線検出部44を第1旋回軌道R1又は第2旋回軌道R2に沿って移動させるため、例えば、X線検出部44が旋回軸部96周りに旋回する際において、軸移動機構70によって旋回軸部96を移動させればよい。例えば、頭部Pの表面に対する第1旋回軌道R1又は第2旋回軌道R2の距離に応じて、頭部Pの中心に対する旋回軸部96の位置を調整すればよい。例えば、旋回軌道R1、R2のうち頭部Pの表面に近づく部分(頭部Pの前方)では、表面に近づく移動が旋回軸部96を逆照射方向に動かす移動によって実現し、旋回軌道R1、R2のうち頭部Pの表面から遠ざかる部分(頭部Pの側方)では、表面から遠ざかる移動が旋回軸部96を順照射方向に動かす移動によって実現する。
【0122】
図9及び図10に示す構成例では、第2旋回軌道R2に対応する旋回軸部96の移動軌道Q2は、第1旋回軌道R1に対応する旋回軸部96の移動軌道Q1よりも、頭部Pの後方側及び側方側において、逆照射方向に進んだ位置に設定される。これにより、第2旋回軌道R2に沿って移動するX線検出部44が、頭部Pの前方及び側方において、第1旋回軌道R1に沿って移動するX線検出部44よりも頭部Pの表面に近づく。
【0123】
上記第1旋回軌道R1は、標準的な頭部Pの形状に適応する軌道であってもよい。すなわち、第1旋回軌道R1は、標準的な頭部Pの形状に対して、X線検出部44の形状、大きさを考慮し、X線検出部44が標準的な頭部Pに接触しないで頭部P周りを旋回できる経路に設定されていてもよい。
【0124】
ここで、標準的な頭部Pの形状とは、大人、子供、性別等を問わず、本X線撮影装置20が使用される国又は地域における平均的な頭部形状を意味するものであってもよい。標準的な頭部Pの形状とは、当該国又は地域における成人を対象として、本X線撮影装置20が使用される国又は地域における平均的な頭部を意味するものであってもよい。標準的な頭部Pとは、頭部P内における歯列弓Arcの形大きさも標準的であり、従って、第1旋回軌道R1は、そのような歯列弓Arcが存在し得る範囲を旋回するものとして設定されてもよい。無論、複数ある群を区別をするようにして、例えば、大人、子供は区別し、それぞれの群ごとの平均的な頭部形状に適応するようにさせてもよい。
【0125】
第2旋回軌道R2は、第1旋回軌道R1に対して相似形状でかつ小さい形状であってもよい。また、第1旋回軌道R1の左右幅(X方向幅)に対する第2旋回軌道R2の左右幅(X方向幅)の収縮の程度は、第1旋回軌道R1の前後長さ(Y方向長さ)に対する第2旋回軌道R2の前後長さ(Y方向長さ)の収縮の程度よりも大きく、従って、第2旋回軌道R2は、第1旋回軌道R1に対して、前後(Y方向)よりも左右(X方向)においてより収縮された形状であってもよい。
【0126】
第2旋回軌道R2は、前歯領域固定部の一例であるチンレスト33の前方において、第1旋回軌道R1よりも当該チンレスト33に近接した軌道でもある。また、第2旋回軌道R2は、被写体保持部32による保持される撮影対象者Mの左右方向、即ち、X方向において、第1旋回軌道R1よりも当該チンレスト33に近接した軌道でもある。
【0127】
頭部Pの形状との関係では、第2旋回軌道R2は、頭部Pの前方(少なくとも頭部Pの左右方向(X方向)中央における前方)において、当該頭部Pの表面から10cm以内の位置を経由する軌道であってもよい。
【0128】
第2旋回軌道R2は、前歯領域Paの前方範囲における部分軌道が、他の範囲における部分軌道よりも頭部Pの表面に近づく軌道であってもよい。換言すれば、第2旋回軌道R2は、頭部Pの左右方向(X方向)中央における領域部分が、他の領域部分に対して、最も頭部Pの表面に接近する軌道であってもよい。
【0129】
これらの場合、頭部Pの前方では、X線検出部44が接触し易い肩Sが存在しないため、X線検出部44は撮影対象者Mに対して接触せずに頭部Pに容易に接近できる。
【0130】
さらに、第2旋回軌道R2は、頭部Pの周りにおける全体に亘って、頭部Pの表面から10cm以内の位置を経由する軌道であってもよい。この場合、撮影対象者Mの肩Sの形状に応じて、X線検出部44が肩Sに接触するかどうか確認するとよい。X線検出部44が肩Sに接触する可能性がある場合には、第2旋回軌道R2の設定自体を止めるか、第2旋回軌道R2に沿った旋回中において、X線検出部44の上下位置を調整することが考えられる。この場合の変形例が後に説明される。
【0131】
第1旋回軌道R1及び第2旋回軌道R2のうちの少なくとも一方は、頭部Pの前方における頭部Pの表面に対する距離よりも、頭部Pの側方における頭部Pの表面に対する距離の方が大きい軌道であってもよい。換言すれば、第1旋回軌道R1及び第2旋回軌道R2のうちの少なくとも一方は、旋回軌道中X線検出部44が頭部Pの側部に対面する部分での頭部Pの前後方向(Y方向)中央における頭部Pの側部表面に対する距離が、旋回軌道中X線検出部44が頭部Pの前部に対面する部分での頭部Pの左右方向(X方向)中央における頭部Pの前部表面に対する距離よりも遠くなる軌道であってもよい。
【0132】
X線検出部44の配置について、ある配置AAのときのX線検出部44と頭部Pの表面(地点IP)との間の距離ADが別の配置BAのときのX線検出部44と頭部Pの表面との間の距離BDよりも小であるとき、配置AAと配置BAの比較において、配置AAの状態を「接近度が高い」と表現し、配置BAの状態を「接近度が低い」と表現するものとする。
【0133】
X線検出部44が頭部Pの前方にあるときのX線検出部44と頭部Pの表面(地点IP)との間の距離を距離FDとし、X線検出部44が頭部Pの側方にあるときのX線検出部44と頭部Pの表面(地点IP)との間の距離を距離SDとする。距離FD/距離SDの値を近接離隔比FSRとする。近接離隔比FSRがより小であることを「前方接近比が高い」、「側方接近比が低い」と表現し、近接離隔比FSRがより大であることを「前方接近比が低い」、「側方接近比が高い」と表現するものとする。距離FDと距離SDが等距離である旋回軌道と比較して、本実施形態の旋回軌道Rは、前方接近比が高い。
【0134】
頭部Pの前方(少なくとも頭部Pの左右方向中央における前方)における頭部Pの前部表面に対する距離を、頭部前部の左右方向中央部に対する軌道の離間距離と表現してもよい。上述の、頭部Pの側方(少なくとも頭部Pの前後方向中央における左右)における頭部Pの側部表面に対する距離を、頭部側部の前後方向中央部に対する軌道の離間距離と表現してもよい。
【0135】
ここで、鼻または耳、あるいはその双方のように、-Z方向視の頭部の丸みから突出している部分を頭部突出部と呼ぶこととする。頭部とX線検出部44との間の距離を考慮する場合、頭部突出部を含めた表面との間の距離として考えてもよいが、頭部突出部は無いものとみなして頭部の丸みとの間の距離として考えてもよい。鼻だけは無いものとみなすなど、複数ある頭部突出部の一部のみ無いものとみなしてもよい。
【0136】
頭部Pの前方下方には胴体の出っ張りが観察され難いのに対し、頭部Pの側方下方では肩Sが観察され得る。このため、X線検出部44が頭部Pの側方を通過する際に、X線検出器45を収容するX線検出部44が肩Sと接触する恐れがある。一般的に、肩Sの上側表面は、頭部Pの表面から離れるほど、下方に向う形状を有している。そこで、頭部Pの側方では、X線検出部44が頭部Pの表面から離れた位置を通過するようにすることで、X線検出部44が肩Sと接触し難くなる。
【0137】
図11及び図12はパノラマ撮影中における撮影対象者Mに対するX線検出部44の位置関係を示す説明図である。図11及び図12のそれぞれにおいて、左側に側面視した撮影対象者Mに対するX線検出部44の位置関係が示され、右側に正面視した撮影対象者MにするX線検出部44の位置関係が示される。図11及び図12ではX線ビームが打上げ照射され、X線発生器43を収容する筐体41の下端部と、X線検出器45を収容する筐体46の下端部とが同じ高さ位置に揃っている例が示される。X線ビームは打上げ照射されることは必須ではなく、従って、X線発生器43を収容する筐体41の下端部は、X線検出器45を収容する筐体46の下端部よりも下方に位置していてもよい。
【0138】
X線検出部44が第1旋回軌道R1に沿って旋回する際の位置関係が図11に示される。X線検出部44が頭部Pの前方を通過する際には、頭部Pの前方下方に接触対象となるような他の人体部位は存在しないので、X線検出部44は、撮影対象者Mと接触することなく移動することができる。X線検出部44が頭部Pの側方を通過する際にも、X線検出部44は第2旋回軌道R2に沿って移動する場合よりも頭部Pの表面から側方に離れた箇所を通過する。通常、肩Sの上側表面は、頭部Pから離れるに従って下方に向う形状を有している。このため、X線検出部44が頭部Pから側方に離れている分、肩Sの上側表面も下方に位置し、肩Sと接触し難い。
【0139】
X線検出部44が第2旋回軌道R2に沿って旋回する際の位置関係が図12に示される。X線検出部44が頭部Pの前方を通過する際には、頭部Pの前方下方に接触対象となるような他の人体部位は存在しないので、X線検出部44は、撮影対象者Mと接触することなく移動することができる。X線検出部44の通過位置が図11に示す場合よりも頭部Pの表面に近いとしても、同様に撮影対象者Mとは接触し難い。
【0140】
X線検出部44が頭部Pの側方を通過する際は、X線検出部44は第1旋回軌道R1に沿って移動する場合よりも頭部Pの表面に近い位置を通過する。通常、肩Sの上側表面は、頭部Pに近づくに従って上方に向う形状を有している。このため、X線検出部44が頭部Pに近づくほど、X線検出部44は、肩Sに接触し易くなる。図示の例では、X線検出部44は肩Sの上側表面の上方を通過できている状態にあるものの、第1旋回軌道R1の場合より肩Sの上側表面に近くを通過するようになっている。
【0141】
ここで、頭部PにおいてパノラマX線撮影の対象となる歯列弓Arcと肩Sとの位置関係については個体差がある。例えば、撮影対象者Mが怒り肩、首が短い体型である場合等には、歯列弓Arcの高さ位置に対して肩Sの表面の上下位置の差が小さいため、X線検出部44は、肩Sに接触し易いと考えられる。また、例えば、撮影対象者Mがなで肩、首が長い体型である場合等には、歯列弓Arcの高さ位置に対して肩Sの表面の上下位置の差が上記の場合よりも大きい。このため、X線検出部44は、肩Sに接触し難いと考えられる。
【0142】
よって、第1旋回軌道R1によるパノラマX線撮影については、大部分の体格を有する撮影対象者Mを対象として実施できると考えられるのに対し、第2旋回軌道R2によるパノラマX線撮影については、体格に応じて実施可能な場合と実施困難な場合とが生じ得る。
【0143】
ユーザーは、撮影対象者Mの体格を観察し、あるいは、実際にX線検出部44を試行的に旋回させる等して、第2旋回軌道R2を設定した場合、X線検出部44が撮影対象者Mに接触するかどうかを判断する。そして、第2旋回軌道R2が適用可能であれば、第2旋回軌道R2を設定して(ステップS2、S3参照)、第2旋回軌道R2によるパノラマX線撮影を行うことができる。
【0144】
このように構成されたX線撮影装置20によると、撮影制御部100は、同一の撮影対象者Mに対するX線検出部44のパノラマ旋回軌道として、第1旋回軌道R1と第2旋回軌道R2とを設定可能に構成されている。この第2旋回軌道R2は、頭部Pの前方及び側方において、第1旋回軌道R1よりも頭部Pの表面に近接した軌道とされている。このため、X線検出部44を第2旋回軌道R2に沿って旋回させることで、X線検出部44を頭部Pの表面近く、即ち、歯列弓Arc近くに沿って移動させることができる。これにより、歯列弓Arcを透過したX線の像が鮮明にX線検出器45の検出面に映り込み、パノラマX線画像の解像度を向上させることができる。また、第2旋回軌道R2ではX線検出部44が撮影対象者Mの肩S等に接触する可能性がある場合には、X線検出部44を第1旋回軌道R1に沿って旋回させることで、撮影対象者Mに対するX線検出部44の接触を回避しつつ、パノラマX線撮影を行うことができる。
【0145】
また、被写体保持部32が前歯領域固定部としてチンレスト33を含み、撮影制御部100が、第2旋回軌道R2として、当該チンレスト33の前方において第1旋回軌道R1よりもチンレスト33に近接した軌道を設定すれば、チンレスト33によって正確に位置付された前歯領域Paをパノラマ撮影することができる。
【0146】
また、駆動機構60として、旋回機構62と、軸移動機構70とを含む構成を採用すれば、旋回機構62によって旋回アーム40旋回させる際に、軸移動機構70によって旋回軸部96を移動させる軌道を変更することによって、X線検出部44の旋回軌道を第1旋回軌道R1と第2旋回軌道R2とに切替えることができる。
【0147】
第1旋回軌道R1として、標準的な頭部Pに適応する軌道が設定されれば、通常は、第1旋回軌道R1によってパノラマX線撮影を行うことができる。そして、より解像度を向上させたいといった必要性、X線検出部44が頭部P又は肩Sに接触しないといった状況が確認された場合等に応じて、第2旋回軌道R2によるパノラマX線撮影を行うことができる。
【0148】
また、第2旋回軌道R2として、頭部Pの前方において、頭部Pの表面から10cm以内の位置を経由する軌道が設定されれば、パノラマX線画像の解像度、特に、前歯領域Paにおける解像度を向上させることができる。
【0149】
また、第2旋回軌道R2として、全体に亘って頭部Pの表面から10cm以内の位置を経由する軌道が設定されれば、パノラマX線画像の全体の解像度を向上させることができる。
【0150】
また、第2旋回軌道R2として、前歯領域Paの前方範囲における部分軌道が、他の範囲における部分軌道よりも頭部Pの表面に近づく軌道であれば、X線検出部44を前歯領域Paに近づけることができ、前歯領域を表すパノラマX線画像の解像度をより向上させることができる。
【0151】
また、第2旋回軌道R2として、頭部Pの前方における頭部Pの表面に対する距離よりも、頭部Pの側方における頭部Pの表面に対する距離の方が大きい軌道が設定されれば、X線検出部44が肩Sとの接触を回避しつつ旋回し易い。第1旋回軌道R1としても、同様に、頭部Pの前方における頭部Pの表面に対する距離よりも、頭部Pの側方における頭部Pの表面に対する距離の方が大きい軌道が設定されれば、X線検出部44が肩Sとの接触を回避しつつ旋回し易い。
【0152】
<変形例>
上記第1実施形態の変形例について説明する。上記実施形態では、第2旋回軌道R2を規定する第2旋回軌道情報104cが記憶部104に事前に設定記憶されている例が説明された。撮影制御部100が、撮影対象者Mの個体の体格データに従い、個体別に第2旋回軌道R2を設定してもよい。
【0153】
図13は本変形例に係る撮影制御部100の処理例を示すフローチャートである。
【0154】
ステップS11は、上記ステップS1と同様である。ステップS11後のステップS12では、第2旋回軌道R2の設定変更の有無が判定される。操作表示部110等へのタッチ操作等に応じて第2旋回軌道R2への設定変更指示が入力されると、第2旋回軌道R2の設定変更有りと判定され、ステップS13に進み、設定変更指示の入力が無い場合、ステップS15に進む。
【0155】
ステップS13及びステップS14では、頭部Pの表面形状を検出する頭部表面形状検出部として上記撮像装置22を利用し、当該撮像装置22の検出結果に応じて、第2旋回軌道R2を設定する。
【0156】
すなわち、ステップS13では、撮像装置22によって被写体保持部32によって保持された頭部P及び肩Sを撮像する。例えば、撮影対象者Mに接触し難い第1旋回軌道R1に沿ってX線検出部44を旋回させて、頭部Pを複数箇所方向から撮像した画像データを検出結果としてもよい。撮影データには肩Sが含まれていてもよい。この画像データには、頭部Pの表面形状が含まれるため、当該画像データは、撮影対象者Mの頭部Pに係る体格を含む体格データの一例である。
【0157】
次ステップS14において、頭部Pの表面形状に基づいて第2旋回軌道R2を設定する。
【0158】
ステップS13及びS14についてより具体的な例を説明する。まず、旋回アーム40及びX線検出部44に対する撮像装置22の位置関係は既知情報とすることができる。このため、図14に示すように、頭部Pを撮像した画像データに基づいて、X線検出部44に対する頭部Pの表面形状を表す頭部表面形状データを生成することができる。頭部Pを撮像した画像データは、頭部Pを複数方向から撮像した画像データとしてもよい。例えば、頭部Pを前方から、または後方から撮像した画像データと、頭部Pを左側から、または右側から撮像した画像データとの組合せとすることができる。頭部表面形状データに表される頭部Pの水平断面は、頭部Pの水平断面のうち最も大きく広がる部分、例えば、鼻の頂部を通る水平断面であってもよい。この頭部表面形状データにおいて、X線検出部44が頭部Pに接触し難い第2旋回軌道R2を設定することができる。例えば、頭部Pの表面前方から10cm以下の所定距離を通過する通過点を設定し、当該通過点を通る曲線を第2旋回軌道R2とし設定してもよい。また、例えば、頭部Pにおける歯列弓Arc周りの複数箇所において、頭部Pの表面から10cm以下の所定距離を通過する複数の通過点を設定し、当該複数の通過点を通る曲線を第2旋回軌道R2とし設定してもよい。また、例えば、予め第2旋回軌道R2の候補軌道が複数設定されて記憶部104に記憶されており、頭部表面形状データに基づいて、複数の候補軌道のうちX線検出部44が頭部Pに接触せずに頭部Pの表面の最も近くを通ることができるものが第2旋回軌道R2として設定されてもよい。また、例えば、予め第2旋回軌道R2の初期候補軌道が設定されて記憶部104に記憶されており、初期候補軌道を順次大きく又は小さくしていって(例えば、初期候補軌道に対して所定距離(例えば、1cm)頭部Pに近い位置又は遠い位置を通過する軌道を順次設定していって)、頭部表面形状データに基づいて、X線検出部44が頭部Pに接触せずに頭部Pの表面の最も近くを通ることができるようになる軌道を特定し、その軌道を第2旋回軌道R2として設定してもよい。
【0159】
撮影対象者Mの個体に応じた第2旋回軌道R2の設定は、当該撮影対象者Mを事前に撮影したX線画像データ、例えば、セファロ撮影データに基づいてなされてもよい。正面セファロ撮影データには頭部Pの左右部位が写り込み、側面セファロ撮影データには頭部Pの前方部位が写り込んでいるため、セファロ撮影データに基づいて、頭部Pの左右部位及び前方部位の位置を判別し、上記と同様に、第2旋回軌道R2を設定することができる。セファロ撮影データも体格データの一例である。セファロ撮影データにも頭部Pの表面形状が写り込むため、セファロ撮影データを撮影するX線検出器45は頭部表面形状検出部の一例として利用され得る。
【0160】
可視光画像及びX線画像のいずれにおいても、エッジ抽出画像処理等の画像認識処理を行うことで、頭部Pの表面又は境界が自動で抽出され得る。しかしながら、頭部Pの表面又は境界の指定が、ユーザーによるポインタの指定等によってなされてもよい。
【0161】
頭部表面形状検出部として頭部Pの表面形状を検出する装置は、スマートフォン、タブレット端末装置等の撮像装置を有する携帯端末装置300であってもよい(図2参照)。携帯端末装置300が頭部PとX線撮影装置20における基準部位とが写り込んだ画像を撮像し、当該撮像画像に基づいて画像処理等を施すことで、X線撮影装置20における頭部Pの表面位置を認識できる。これにより、上記と同様に、個体別に第2旋回軌道R2等を設定することができる。
【0162】
また、例えば、旋回アーム40に、頭部Pの表面、特に、前方部位及び側方部位を検出する可視光センサ又はレーザセンサが組込まれており、当該センサの出力に基づいて頭部Pの表面位置、特に、前方部位及び側方部位が検出されてもよい。それらの検出結果を含むデータは、体格データの一例である。それらの検出結果に基づいて、旋回アーム40及びX線検出部44に対する頭部Pの表面位置、特に、前方部位及び側方部位が特定されるため、上記と同様に、第2旋回軌道R2が設定され得る。
【0163】
第2旋回軌道R2は、ユーザーの設定によって、個体別に設定されてもよい。例えば、予め第2旋回軌道R2の候補軌道が複数設定されて記憶部104に記憶されており、ユーザーが、大人サイズ、子供サイズの区別、又は、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズの区別を入力することで、当該入力されたサイズに応じた候補軌道が第2旋回軌道R2として設定されてもよい。
【0164】
また、撮影対象者Mの肩Sが標準的な位置よりも高い場合には、頭部Pの側方でより遠回りになるように第2旋回軌道R2が設定されてもよい。この場合には、後で説明するように、頭部Pの側方でX線検出部44を上昇させる動きが付加されてもよい。
【0165】
ステップS12において第2旋回軌道R2の設定変更無しと判定された場合、及び、ステップS14において第2旋回軌道R2が設定された後、ステップS15に進む。ステップS15では、ステップS4と同様に、撮影開始の受付の有無が判定される。撮影開始の受付無しと判定されると、ステップS12に戻り、撮影開始の受付有りと判定されると、ステップS16に進む。
【0166】
ステップS16では、ステップS5と同様に、設定された旋回軌道に応じて、X線検出部44を旋回させつつ、パノラマX線撮影を行う。これにより、撮影対象者Mの個別の体格に応じて設定された第2旋回軌道R2に基づいて、X線検出部44を旋回させてパノラマX線撮影を行うことができる。
【0167】
この変形例によると、撮影制御部100が、撮影対象者Mの個体の体格データに従い、個体別に第2旋回軌道R2を設定することができる。このため、個体の体格に応じて、X線検出部44をなるべく頭部Pに接近させてパノラマX線撮影を行って、高解像度のパノラマX線画像を得ることができる。
【0168】
この場合において、撮像装置22等の頭部表面形状検出部の検出結果に基づいて第2旋回軌道R2を設定することで、容易に第2旋回軌道R2が設定され得る。また、当該検出結果に基づき、頭部Pの表面の直ぐ近くを通るような第2旋回軌道R2が容易に設定され得る。
【0169】
また、第2旋回軌道R2として、頭部Pの表面から10cm以内の位置を経由する軌道が設定されることで、パノラマX線画像の解像度がより向上する。
【0170】
本変形例では、第2旋回軌道R2が個体別に設定される例が説明されたが、第1旋回軌道R1よりも頭部Pから遠い位置を旋回する第1旋回軌道R1についても上記と同様に個体別に設定されてもよい。
【0171】
図13のフローチャートでは、ステップS12において第2旋回軌道R2の設定変更の有無の判定を行い、ステップS13で頭部Pの表面形状を検出してステップS14で第2旋回軌道R2を設定したが、進行を全自動としてもよい。すなわち、ステップS12を略し、まずステップS13で頭部の表面形状を検出して、第2旋回軌道R2による撮影が可能か否かを撮影制御部100が自動判定し、可能であれば第2旋回軌道R2の設定を行い、可能でなければ第1旋回軌道R1の設定を維持するようにしてもよい。この場合、ステップ15でNOの場合はステップ15の直前に戻るループとしてよい。
【0172】
{第2実施形態}
第2実施形態に係るX線撮影装置200について説明する。なお、本実施の形態の説明において、第1実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。図15はX線撮影装置200の電気的構成の一例を示すブロック図である。
【0173】
第2実施形態では、パノラマX線撮影中にX線検出部44を上下変位させる例が説明される。すなわち、撮影対象者Mの体格によっては、X線検出部44が頭部Pに接触しないとしても、肩Sに接触し得る場合が生じ得る。このような場合においても、X線検出部44を歯列弓Arcに接近させてパノラマX線撮影を行い、より高解像度のパノラマX線画像を得ることが望まれる場合が生じ得る。このような場合においても、パノラマX線撮影中にX線検出部44を上下変位させる。特に、X線検出部44が頭部Pの側方の肩S上を通る部分で、X線検出部44を上方に変位させる。これにより、X線検出部44が肩Sに接触することが回避され、X線検出部44が頭部Pに近い第2旋回軌道R2で旋回することができる。この場合の第2旋回軌道R2はパノラマX線撮影中のX線検出部44の鉛直方向の移動の変位量がゼロより大の旋回昇降軌道RELの例である。
【0174】
このX線撮影装置200では、記憶部104に格納された撮影プログラム204aは、上記撮影プログラム104aの処理機能に加えて、パノラマX線撮影中におけるX線検出部44の上下変位パターンを設定し、パノラマX線撮影中に当該上下変位パターンに基づいてX線検出部44を上下変位させるように鉛直駆動部82等を制御する機能を有する。また、記憶部104は、パノラマX線撮影中におけるX線検出部44の変位動作を設定するための上下変位情報204dを記憶する。プロセッサ102は、撮影プログラム204aに従って処理を実行することにより、上記第1実施形態における機能に加えて、上下変位情報204dに基づいて上下変位パターンを設定する上下変位設定部102gを含む。
【0175】
図16はX線撮影装置200の撮影制御部202の処理例を示すフローチャートである。
【0176】
パノラマ撮影モード処理が開始されると、ステップS21において、第1旋回軌道情報104bに基づき第1旋回軌道R1を初期軌道として設定する。このため、旋回軌道に関する特別な指示が無い場合、X線検出部44を第1旋回軌道に沿って旋回させるパノラマX線撮影がなされる。また、上下変位無しを初期動作として設定する。このため、上下変位量を変更する旨の特別な指示が無い場合、X線検出部44は上下変位せずに、パノラマX線撮影を行う。
【0177】
次ステップS22において、上記ステップS2と同様に、第2旋回軌道R2への設定変更の有無が確認される。第2旋回軌道R2への設定変更有りと判定されると、ステップS23に進み、設定変更無しと判定されると、ステップS23を飛ばして、ステップS24に進む。
【0178】
ステップS23では、上記ステップS3と同様の処理がなされる。
【0179】
ステップS24では、上下変位量の設定の有無が判定される。上下変位量の設定は、例えば、例えば、操作表示部110を通じてなされる。例えば、操作表示部110に、上下変位量の設定変更用のアイコンが表示され、当該アイコンをタッチすることで、上下変位量の設定変更有りと判定されると、ステップS25に進み、設定変更無しと判定されると、ステップS25を飛ばして、ステップS26に進む。
【0180】
ステップS25では、設定された上下変位量に基づいて、上下変位パターンを設定する。
【0181】
ここで、上下変位情報204dの一例について説明しておく。上下変位情報204dは、例えば、図17に示すように、パノラマX線撮影中におけるX線検出部44の旋回角にX線検出部44の高さ情報を対応付けた上下変位パターン204d1を含む。当該上下変位パターン204d1データは、データ列によって表現されてもよいし、旋回角を変数とする式によって表現されてもよい。旋回角の初期位置を頭部Pの左右方向(X方向)中央の前方位置、当該初期位置から時計回り方向を+方向、反時計回りを-方向とすると、旋回角0゜で最も高さが小さく、旋回角±90゜で最も高さが大きくなるように設定される。X線検出部44が頭部Pの側方に位置する旋回角(例えば±90゜)では、X線検出部44の高さhm[mm]が肩Sの高さhs[mm]を超えるように設定される。旋回角0゜と旋回角±90゜との間では、高さがカーブを描きつつ滑らかに変化するように設定される。旋回角が旋回角±90゜を超えた範囲では、旋回角±90゜における高さが維持されてもよいし、当該高さが小さくなるように変化してもよい。撮影制御部202は、初期に位置付されたX線検出部44の高さ位置を旋回角0゜における高さとして、X線検出部44の高さ位置を調整するとよい。
【0182】
撮影制御部100は、上下変位パターン204d1に沿って鉛直駆動部82によりX線検出部44に上下移動を付加する駆動の制御を行う。鉛直駆動部82は旋回アーム40を頭部Pに対して上下移動させる機構として機能する。
【0183】
上下変位情報204dとして、上下変位パターン204d1を1つだけ含んでいてもよい。この場合、ステップS24においては、上下変位を行うか否かの設定が入力され、ステップS25においては、当該1つの上下変位パターン204d1が上下変位パターンとして設定される。
【0184】
上下変位情報204dとして、複数の上下変位パターン204d1、204d2、204d3を含んでもよい。複数の上下変位パターン204d1、204d2、204d3は、互いに高さの差が異なっている。上下変位パターン204d1、204d2、204d3はX線検出部44の鉛直方向の移動に関しては昇降情報の例と考えてもよい。図17では、旋回角±90゜の位置において、上下変位パターン204d2の高さが最も大きく、上下変位パターン204d3の高さが最も小さく、上下変位パターン204d1の高さがそれらの中間である。このため、撮影対象者Mの肩Sの位置に応じて、上下変位パターン204d1、204d2、204d3のいずれかを適用することで、X線検出部44が肩Sと接触することを回避し得る範囲でX線検出部44の上下変位をなるべく少なくしつつ、X線検出部44を頭部Pに近づけてパノラマX線撮影を行うことができる。図示の例では、旋回角±90゜の位置において、肩Sの位置が上下変位パターン204d3よりも高いので、上下変位パターン204d1か204d2が選択されることとなる。
【0185】
X線検出部44が頭部Pの前方にあるときのX線検出部44の頭部Pに対する高さを高さFHとし、X線検出部44が頭部Pの側方にあるときのX線検出部44の頭部Pに対する高さを高さSHとする。高さFHと高さSHの差を高低差FSとする。したがって、上下変位パターン204d2は上下変位パターン204d3より高低差FSが大であり、上下変位パターン204d3は上下変位パターン204d2より高低差FSが小である。
【0186】
上下変位情報204dとして、上下変位パターン204d1、204d2、204d3を複数含む場合、ステップS24においては、ユーザーが体格等を観察していずれの上下変位パターン204d1、204d2、204d3を適用するかを設定入力し、あるいは、どの程度上下変位させるかを入力する。ステップS25においては、選択されたパターンに応じて、上下変位パターン204d1、204d2、204d3を読出して上下変位パターンとして設定するか入力された上下変位量に応じた上下変位パターンを設定する。このようにして、X線検出部44の旋回軌道Rにおける高低差の設定を変更可能とする。
【0187】
ステップS26では、ステップS4と同様に、撮影開始の受付の有無が判定される。撮影受付無しと判定されると、ステップS22に戻り、ステップS22以降の処理を繰返す。撮影受付有りと判定されると、ステップS27に進む。
【0188】
ステップS27では、設定された旋回軌道に応じて、X線検出部44を旋回させつつ、パノラマX線撮影を行う。すなわち、設定された第1旋回軌道情報104b又は第2旋回軌道情報104cに応じて、旋回機構62及び軸移動機構70を制御してX線検出部44を第1旋回軌道R1又は第2旋回軌道R2に沿って旋回させる。この際、上下変位パターンが設定されている場合、X線検出部44の旋回に同期して、鉛直駆動部82を制御して旋回アーム40を上下方向に移動させ、もって、上下変位パターンに従ってX線検出部44を上下変位させる。この際、保持部駆動部36を制御することで、被写体保持部32を旋回アーム40の移動方向とは上下逆に変位させ、被写体保持部32の高さ位置を一定に保つとよい。これにより、X線撮影データが得られる。画像処理装置180は、当該X線撮影データに基づきパノラマX線画像を生成する。
【0189】
X線検出部44を上記上下変位パターン204d1、204d2、204d3に応じて上下変位させた場合、側面視において前方から後方に向けて徐々に上方に向う領域が映り込んだ斜めパノラマX線画像が生成される。歯列弓Arcは、側面視において前方から後方に向けて徐々に上方に向うように延在しているため、斜めパノラマX線画像においても、歯列弓Arcは十分に写り込むことができる。
【0190】
<パノラマX線撮影例>
図18に示すように、互いに異なる体格を有する撮影対象者M(1)、M(2)、M(3)を例として、パノラマX線撮影例を説明する。撮影対象者M(1)、M(2)は、互いに異なる身長を有しており、撮影対象者M(1)の身長H(1)は、撮影対象者M(2)の身長H(2)よりも大きい。撮影対象者M(1)、(2)は頭部Pに対して標準的な下がり方の肩S(1)、S(2)を有している。撮影対象者M(3)の身長H(3)は、撮影対象者M(1)、M(2)の身長H(1)、H(2)よりも大きい。撮影対象者M(3)の肩S(3)は怒り肩である。撮影対象者M(3)の頭部Pに対する肩S(3)の相対位置は、撮影対象者M(1)、M(2)の頭部Pに対する肩S(1)、S(2)の相対位置よりも上の位置にある。
【0191】
X線検出部44を第1旋回軌道R1に沿って旋回させてパノラマX線撮影を行う場合を考える。
【0192】
撮影対象者M(1)を対象とすると、図19に示すように、X線検出部44は、頭部Pの側方においても当該頭部Pから離れた位置を通る。第1旋回軌道R1に従って頭部Pの側方から離れた位置では、肩S(1)は頭部Pの顎先等よりも下方に位置する。このため、X線検出部44は、頭部Pの側方でも肩S(1)に接触し難い。従って、X線検出部44を上下変位させなくても、X線検出部44を頭部P周りに旋回させてパノラマX線撮影を行うことができる。
【0193】
撮影対象者M(2)を対象とすると、図20に示すように、撮影対象者M(2)の身長H(2)に応じて、X線発生部42及びX線検出部44を保持する旋回アーム40と、被写体保持部32とを、図19に示す場合よりも下方に位置させる。この状態で、図18に示す場合と同様に、パノラマX線撮影を行うことができる。
【0194】
撮影対象者M(3)を対象とすると、図21に示すように、X線検出部44は、頭部Pの側方においても当該頭部Pから離れた位置を通る。撮影対象者M(3)が怒り肩等の体格を有する場合、第1旋回軌道R1に従って頭部P(1)の側方から離れた位置においても、肩S(3)は頭部Pの顎先等の高さ位置近傍に位置する可能性がある。
【0195】
この場合、X線検出部44は、頭部Pの側方で肩S(3)に接触する可能性がある(図21のX線検出部44(L)の位置参照)。このような場合、X線検出部44が頭部Pの側方に位置する状態で、X線検出部44を、肩S(3)と接触しない高さ位置(X線検出部44(H)の最下端位置参照)に配置した状態で、上下変位させずに、パノラマX線撮影を行うことも考えられる。しかしながら、この場合、X線検出部44の最下端が顎先よりも上側に位置してしまい、パノラマX線画像において、歯列弓Arcの前方下端部が写り込まなくなる可能性がある。
【0196】
そこで、上記ステップS24、S25で説明したように上下変位パターンを設定し、ステップS27で説明したように、X線検出部44が、頭部Pの前方で低くなり、頭部Pの側方で高くなるように、X線検出部44を上下変位させる。これにより、X線検出部44が肩Sに接触することを回避しつつ、X線検出部44を第1旋回軌道R1に沿って旋回させることができる。これにより、X線検出部44が肩S(3)に接触することを回避しつつ、歯列弓Arcの前方下端部が写り込んだパノラマX線画像を生成することができる。
【0197】
X線検出部44を第2旋回軌道R2に沿って旋回させてパノラマX線撮影を行う場合を考える。
【0198】
撮影対象者M(1)を対象とする場合が図22に示される。X線検出部44は、頭部Pの側方において、図22に示す場合よりも頭部Pに近い位置を通る。この位置において、肩S(1)が顎先等よりも下方にあれば、X線検出部44が通過する頭部Pの側方位置でも、X線検出部44が肩S(1)に接触しない可能性がある。この場合、X線検出部44を上下変位させずに、X線検出部44を頭部P周りに旋回させてパノラマX線撮影を行うことができる。
【0199】
しかしながら、頭部Pの側方におけるX線検出部44の通過位置が肩S(1)の上面に極近い位置である場合が想定される。このような場合、撮影対象者M(1)の僅かな動きに起因する接触状態の発生に備えて、頭部Pの側方においてX線検出部44及び筐体を上方に変位させた方が好ましい場合も考えられる。また、肩S(1)の上側表面は頭部Pに近づくにつれて上方に向う形状となっている。このため、第2旋回軌道R2のうち頭部Pの側方部分の位置が頭部Pに近いほど、X線検出部44は肩S(1)に接触し易くなる。このため、設定される第2旋回軌道R2によっては、頭部Pの側方においてX線検出部44を上方に変位させた方が好ましい場合も考えられる。
【0200】
このような場合、図23に示されるX線検出部44(H)のように、X線検出部44が、頭部Pの前方で低くなり、頭部Pの側方で高くなるように、X線検出部44を上下変位させて、パノラマX線撮影を行うとよい。
【0201】
撮影対象者M(3)を対象とすると、図24に示すように、X線検出部44は、頭部Pの側方近くの位置を通る。撮影対象者M(3)が怒り肩等の体格を有する場合、第2旋回軌道R2に従った頭部Pの側方近くにおける肩S(3)の高さは、撮影対象者M(1)の場合よりも頭部Pの顎先等の高さに近づく。このため、X線検出部44は、頭部Pの側方で肩S(3)により接触し易くなる(図23のX線検出部44(L)参照)。
【0202】
そこで、上記ステップS24、S25で説明したように上下変位パターンを設定し、ステップS27で説明したように、X線検出部44が、頭部Pの前方で低くなり、頭部Pの側方で高くなるように、X線検出部44を上下変位させる(X線検出部44(H)参照)。これにより、X線検出部44が肩Sに接触することを回避しつつ、X線検出部44を第2旋回軌道R2に沿って旋回させることができる。これにより、X線検出部44が肩S(3)に接触することを回避しつつ、歯列弓Arcの前方下端部が写り込んだパノラマX線画像を生成することができる。
【0203】
このように、X線検出部44を上下変位させ、特に、頭部Pの側方で高くなり、頭部Pの前方で低くなるようにX線検出部44を上下変位させることで、X線検出部44が肩Sに接触することを回避しつつ、歯列弓Arcの前端部下部が写り込んだパノラマX線画像を得ることができる。
【0204】
通常、肩Sの上部表面は、頭部Pに向うのに従って、上方に向う形状となっているため、X線検出部44が第1旋回軌道R1よりも第2旋回軌道R2に沿って旋回する場合に、X線検出部44が肩Sに接触し易い。このため、X線検出部44を第2旋回軌道R2に沿って旋回する場合に、X線検出部44を上下変位させるとよい。
【0205】
また、第2旋回軌道R2を選択又は調整できる場合、第2旋回軌道R2として頭部Pに近い軌道が選択又は調整された場合に、X線検出部44を上下変位させてもよい。また、第2旋回軌道R2として頭部Pにより近い軌道が選択又は調整された場合に、X線検出部44の上下変位量を大きくするようにしてもよい。
【0206】
第1旋回軌道R1及び第2旋回軌道R2の両方において、X線検出部44が上下変位してもよい。この場合、第1旋回軌道R1よりも第2旋回軌道R2において、X線検出部44の上下変位量が大きくなるように設定されてもよい。
【0207】
上下変位量は、肩Sの位置を検出する検出部からの検出結果に基づいて設定されてもよい。例えば、図25に示すように、撮像装置22によって撮影対象者Mの正面及び側面を撮像する。撮像画像220には、頭部P及び肩Sを含む正面像221、側面像222が写り込んでいる。撮影制御部202が撮像画像220に基づいて、エッジ抽出処理等を実行して肩Sの上側境界等を抽出する。そして、設定された第1旋回軌道R1又は第2旋回軌道R2の通過領域における肩Sの高さ位置等を認識する。さらに、撮影制御部202は、例えば、撮影対象者Mに対して初期設定されたX線検出部44の下端の高さ位置に対して、X線検出部44をどの程度上昇させれば肩Sへの接触を回避できるかを演算する。この演算結果に基づいて、X線検出部44の上下変位量を決定し、当該上下変位量に基づいて、上下変位パターンを設定することができる。
【0208】
第1旋回軌道R1を図9のように設定し、第2旋回軌道R2を図10のように設定してよく、頭部側方における第2旋回軌道R2の接近度を第1旋回軌道R1の接近度よりも高く設定してよい。この場合、第2旋回軌道R2の高低差FS2を第1旋回軌道R1の高低差FS1よりも大にしてよい。さらに、体格によって、第2旋回軌道R2の高低差FS2と第1旋回軌道R1の高低差FS1との差に大小をつけてもよい。例えば怒り肩の撮影対象者M(3)に対しては、標準的な下がり肩の撮影対象者M(1)よりも、第2旋回軌道R2の高低差FS2と第1旋回軌道R1の高低差FS1との差を大にするようにしてよい。
【0209】
図26は第2旋回軌道R2の別の設定例である。第1旋回軌道R1は図9に示されるものとし、図9に示される第1旋回軌道R1と図26に示される第2旋回軌道R2とが選択的に切り替えできるものとする。
【0210】
第2旋回軌道R2は、頭部Pの前方(少なくとも頭部Pの左右方向中央における前方)において、第1旋回軌道R1よりも頭部表面に近接した軌道に設定される。このため、第2旋回軌道R2を旋回するX線検出部44は、関心領域である歯列弓Arcの前歯領域により接近してX線を検出することができる。
【0211】
第2旋回軌道R2は頭部Pの前方でX線検出部44の頭部表面に対する接近度が第1旋回軌道R1よりも高い。また、第2旋回軌道R2は第1旋回軌道R1よりも前方近接比が高く、側方近接比が低い。
【0212】
図9に示される第1旋回軌道R1と図26に示される第2旋回軌道R2とが選択的に切り替えられる構成において、さらに、第2旋回軌道R2の高低差FS2を第1旋回軌道R1の高低差FS1よりも大に設定するようにしてもよい。これにより例えば撮影対象者の怒り肩の度合いがより強い場合でも対処可能である。
【0213】
また、図9に示される第1旋回軌道R1と図26に示される第2旋回軌道R2とが選択的に切り替えられる構成において、さらに別の第2旋回軌道R2も選択可能としてもよい。当該別の第2旋回軌道R2は、例えば図10に示される第2旋回軌道R2とし、図10に示される第2旋回軌道R2の高低差が他の旋回軌道よりも大となるように設定してもよい。これにより撮影対象者の頭部Pへのアプローチのバリュエーションを充実できる。
【0214】
X線検出部44の頭部表面に対する接近度について、第2旋回軌道R2の全域のうち、少なくとも一部が第1旋回軌道R1よりも大となるようにし、残る域が第1旋回軌道R1と同等であるか、第1旋回軌道R1よりも小となるように設定してよい。
【0215】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0216】
このように、本明細書及び図面は下記の各態様を開示する。
【0217】
第1の態様は、X線発生器を含むX線発生部と、X線検出器を含むX線検出部と、前記X線発生部と前記X線検出部とが対向するように前記X線発生部と前記X線検出部とを支持する支持部と、前記支持部を駆動する駆動機構と、撮影対象者を保持する被写体保持部と、前記X線発生部と前記X線検出部とが、前記X線発生部と前記X線検出部の間に前記被写体保持部に保持された前記撮影対象者の頭部を位置させた状態で、前記頭部の周りを旋回してパノラマX線撮影を行うように、前記駆動機構による前記支持部の動作を制御する旋回制御部とを備え、前記旋回制御部が、同一の前記撮影対象者に対する前記X線検出部のパノラマ旋回軌道として、第1旋回軌道と第2旋回軌道とを設定可能に構成され、前記第2旋回軌道は、前記頭部の前方及び側方において、前記第1旋回軌道よりも前記頭部の表面に近接した軌道である、パノラマX線撮影装置である。
【0218】
このパノラマX線撮影装置によると、X線検出部を第2旋回軌道に沿って旋回させることで、X線検出部を頭部の表面近くに沿って移動させることができる。これにより、パノラマX線画像の解像度を向上させることができる。第2旋回軌道ではX線検出部が撮影対象者の肩等に接触する可能性がある場合には、X線検出部を第1線回軌道に沿って旋回させることで、撮影対象者に対する接触を回避しつつ、パノラマX線撮影を行うことができる。
【0219】
第2の態様は、第1の態様に係るパノラマX線撮影装置であって、前記被写体保持部が、前記頭部のうちの前歯領域を固定する前歯領域固定部を含み、前記旋回制御部は、前記第2旋回軌道として、前記前歯領域固定部の前方において、前記第1旋回軌道よりも前記前歯領域固定部に近接した軌道を設定する。
【0220】
これにより、前歯領域固定部によって正確に位置付された前歯領域をパノラマ撮影することができる。
【0221】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るパノラマX線撮影装置において、前記駆動機構が、前記支持部を旋回軸部の軸回りに旋回させる旋回機構と、前記旋回軸部を前記旋回軸部の軸方向と交差する方向に移動させる旋回軸移動機構とを含む。
【0222】
この場合、旋回機構によって支持部を旋回させる際に、旋回軸移動機構によって旋回軸部を移動させることによって、X線検出部の旋回軌道を変更することができる。これにより、X線検出部を第1旋回軌道と第2旋回軌道とで切替えて旋回させることができる。
【0223】
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様に係るパノラマX線撮影装置において、前記旋回制御部が、前記第1旋回軌道として、標準的な頭部形状に適応する軌道を設定する。
【0224】
この態様によると、通常は、第1旋回軌道によってパノラマX線撮影を行うことができる。より解像度を向上させたい等の必要性、頭部接触、肩接触等が生じないといった状況等に応じて、第2旋回軌道によってパノラマX線撮影を行うことができる。
【0225】
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に係るパノラマX線撮影装置であって、前記旋回制御部は、前記第2旋回軌道として、前記頭部の前方において、前記頭部の表面から10cm以内の位置を経由する軌道を設定する。
【0226】
これにより、X線検出部を、頭部の前方において、頭部表面から10cm以内に近づけた第2パノラマ撮影軌道に沿って旋回させることで、パノラマX線画像の解像度をより向上させることができる。
【0227】
第6の態様は、第5の態様に係るパノラマX線撮影装置であって、前記旋回制御部は、前記第2旋回軌道として、全体に亘って、前記頭部の表面から10cm以内の位置を経由する軌道を設定する。
【0228】
この態様によると、全体に亘って頭部の表面から10cm以内にX線検出部を近づけて旋回させて、パノラマX線画像の解像度をより向上させることができる。
【0229】
第7の態様は、第6の態様に係るパノラマX線撮影装置であって、前記第2旋回軌道は、前記頭部の前歯領域の前方範囲における部分軌道が、他の範囲における部分軌道よりも前記頭部の表面に近づく軌道とされる。
【0230】
このように、X線検出部を前歯領域に近づけることで、前歯領域を表すパノラマX線画像の解像度をより向上させることができる。
【0231】
第8の態様は、第1から第7のいずれか1つの態様に係るパノラマX線撮影装置において、前記旋回制御部が、前記撮影対象者の個体の体格データに従い個体別に前記第2旋回軌道を設定する。
【0232】
この態様によると、個体の体格に応じて、X線検出部をなるべく頭部に接近させることができる。
【0233】
第9の態様は、第1から第8のいずれか1つの態様に係るパノラマX線撮影装置において、前記頭部の表面形状を検出する頭部表面形状検出部をさらに備え、前記旋回制御部が、前記頭部の表面形状検出部の検出結果に応じて、前記第2旋回軌道を設定する。
【0234】
これにより、頭部表面形状検出部の検出結果に応じて、第2旋回軌道が設定される。
【0235】
第10の態様は、第1から第9のいずれか1つの態様に係るパノラマX線撮影装置において、前記旋回制御部は、前記第1旋回軌道及び前記第2旋回軌道の少なくとも一方として、前記頭部の前方における前記頭部の表面に対する距離よりも、前記頭部の側方における前記頭部の表面に対する距離の方が大きい軌道を設定する。
【0236】
これにより、X線検出部が肩との接触を回避しつつ旋回することができる。
【0237】
上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0238】
20、200 X線撮影装置
22 撮像装置
30 撮影本体部
32 被写体保持部
33 チンレスト
34 ヘッドホルダ
40 旋回アーム
42 X線発生部
43 X線発生器
44 X線検出部
45 X線検出器
60 駆動機構
62 旋回機構
70 旋回軸移動機構
82 鉛直駆動部
100、202 撮影制御部
104 記憶部
104a、204a 撮影プログラム
104b 第1旋回軌道情報
104c 第2旋回軌道情報
110 操作表示部
110a 撮影設定受付部
204d 上下変位情報
204d1 上下変位パターン
204d2 上下変位パターン
204d3 上下変位パターン
M 撮影対象者
P 頭部
Pa 前歯領域
R1 第1旋回軌道
R2 第2旋回軌道
S 肩
X1 旋回軸
図1
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図3
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