(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174473
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】廃棄物中の有価金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
B02C 15/04 20060101AFI20221116BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20221116BHJP
B09B 3/30 20220101ALI20221116BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20221116BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20221116BHJP
B03C 1/005 20060101ALI20221116BHJP
B03C 1/02 20060101ALI20221116BHJP
B03C 1/10 20060101ALI20221116BHJP
B03C 1/14 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B02C15/04
B09B5/00 N ZAB
B09B3/00 Z
C22B1/00 601
B03C1/00 B
B03C1/005
B03C1/02 A
B03C1/10 A
B03C1/14 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080292
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 洸
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 建
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
(72)【発明者】
【氏名】吉川 知久
【テーマコード(参考)】
4D004
4D063
4K001
【Fターム(参考)】
4D004AA31
4D004AA36
4D004BA02
4D004BA05
4D004CA04
4D004CA07
4D004CA09
4D004CB13
4D063EE03
4D063EE12
4D063GA02
4D063GA06
4D063GA07
4D063GA10
4D063GC12
4D063GC17
4D063GC19
4D063GC32
4D063GC40
4D063GD02
4D063GD04
4D063GD15
4D063GD16
4K001AA01
4K001AA02
4K001AA04
4K001AA08
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA20
4K001AA30
4K001AA41
4K001BA22
4K001CA01
4K001CA04
(57)【要約】
【課題】有価金属含有廃棄物から高品位の有価金属を効率よく回収する方法を提供すること。
【解決手段】有価金属含有廃棄物と、石灰石及びケイ石から選択される1以上のセメント原料とを含む混合物をローラーミルで粉砕し、ミル精粉とミル排石を回収する第1の粉砕工程と、
前記ミル排石を粉砕する第2の粉砕工程と、
前記第2の粉砕工程で得られた排石を磁力選別し、磁着物と非磁着物とに分離する磁力選別工程と、
前記非磁着物を有価金属として回収する回収工程
含む、廃棄物中の有価金属の回収方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価金属含有廃棄物と、石灰石及びケイ石から選択される1以上のセメント原料とを含む混合物をローラーミルで粉砕し、ミル精粉とミル排石を回収する第1の粉砕工程と、
前記ミル排石を粉砕する第2の粉砕工程と、
前記第2の粉砕工程で得られた排石を磁力選別し、磁着物と非磁着物とに分離する磁力選別工程と、
前記非磁着物を有価金属として回収する回収工程
含む、廃棄物中の有価金属の回収方法。
【請求項2】
前記有価金属含有廃棄物が焼却灰を含む、請求項1記載の回収方法。
【請求項3】
前記有価金属含有廃棄物の粒径が40mm以下である、請求項1又は2記載の回収方法。
【請求項4】
前記第2の破砕工程の粉砕が自生粉砕である、請求項1~3のいずれか1項に記載の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物中の有価金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ焼却灰、廃プラスチック、シュレッダーダスト等の廃棄物をセメント原料として有効利用する試みがなされている。これら廃棄物には、有価金属、例えば、金、銀、銅、パラジウム、白金といった貴金属が含まれているため、資源の有効活用の観点から、これら有価金属を回収することが望ましいが、回収に要するコストが高くなる。
【0003】
従来、廃棄物から有価金属を効率よく回収すべく種々の検討がなされている。例えば、有価金属含有廃棄物を、所定粒径分布を有するミル精粉と、前記所定粒径分布よりも大径側にある粒径分布を有する粗粉を含むミル排石に竪型ローラーミルで粉砕する工程において、ミル排石中の有価金属の含有率が廃棄物中の有価金属の含有率よりも高くなるように粉砕し、得られたミル排石を選別して有価金属を回収する方法が提案されている(特許文献1)。また、有価金属含有廃棄物から嵩密度が1.3t/m3以上のミル排石が得られるように前記廃棄物を竪型ローラーミルで粉砕し、得られたミル排石を選別して有価金属を回収する方法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-89196号公報
【特許文献2】特開2021-1362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載の方法は、有価金属が濃縮されたミル排石を回収することが可能であるが、原料は有価金属含有廃棄物である都市ごみ等の焼却灰を対象としており、当該手法で回収されるミル精粉はエコセメント原料を想定している。
一方、普通セメントの原料化に際しては、セメント原料と同時粉砕処理しながら、ミル精粉と有価金属が濃縮したミル排石を回収できることが好ましい。また、普通セメントの原料粉砕工程において、竪型ローラーミルを使用して有価金属含有廃棄物を含む粘土原料と、石灰石等のセメント原料との同時粉砕が可能であるが、有価金属の回収に適した粉砕条件に設定することが難く、また回収したミル排石に石灰石等がコンタミネーションするため、有価金属の品位が低下しやすい。
【0006】
本発明の課題は、有価金属含有廃棄物から高品位の有価金属を効率よく回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、有価金属含有廃棄物と、石灰石及びケイ石から選択されるセメント原料を含む混合物の形態としたうえで、該混合物をローラーミルで粉砕し、得られたミル排石を更に粉砕し、得られた排石を磁力選別することで、非磁着物を有価金属として効率よく回収できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔4〕を提供するものである。
〔1〕有価金属含有廃棄物と、石灰石及びケイ石から選択される1以上のセメント原料とを含む混合物をローラーミルで粉砕し、ミル精粉とミル排石を回収する第1の粉砕工程と、
前記ミル排石を粉砕する第2の粉砕工程と、
前記第2の粉砕工程で得られた排石を磁力選別により磁着物と非磁着物とに分離する磁力選別工程と、
前記非磁着物を有価金属として回収する回収工程
含む、廃棄物中の有価金属の回収方法。
〔2〕前記有価金属含有廃棄物が焼却灰を含む、前記〔1〕に記載の回収方法。
〔3〕前記有価金属含有廃棄物の粒径が40mm以下である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の回収方法。
〔4〕前記第2の破砕工程の粉砕が自生粉砕である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の回収方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有価金属含有廃棄物から高品位の有価金属を効率よく回収することができる。また、本発明方法においては、有価金属含有廃棄物とセメント原料とを同時粉砕することから、ミル精粉を普通セメント原料として有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の廃棄物中の有価金属の回収方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】比較例1で実施した廃棄物中の有価金属の回収方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の廃棄物中の有価金属の回収方法は、第1の粉砕工程、第2の粉砕工程、磁力選別工程及び回収工程を備えるものである。以下、各工程について詳細に説明する。なお、本発明の廃棄物中の有価金属の回収方法の一例を
図1に示す。
【0012】
(準備工程)
有価金属含有廃棄物(以下、単に「廃棄物」とも称する。)としては、例えば、焼却灰、建設発生土を挙げることができる。焼却灰としては、例えば、都市ごみや産業廃棄物を焼却して得られる灰が挙げられ、具体的には、汚泥、廃プラスチック、金属くず、ガラスくず、コンクリートくず、陶磁器くず、鉱さい、がれき等の産業廃棄物の他、廃自動車や廃家電製品の破砕によって発生するシュレッダーダスト、一般廃棄物を焼却して得られる灰を使用することができる。建設発生土としては、例えば、建設工事や土木工事に伴い副次的に発生する土砂や汚泥を使用することができる。
【0013】
本工程で使用する廃棄物は、その性状に合わせて、含水率や粒度の調整を行ってもよい。これにより、ハンドリング性を向上させることができる。
例えば、廃棄物の含水率の調整には、廃棄物を乾燥機で乾燥し、水分を除去すればよい。乾燥後の廃棄物の含水率は、ハンドリング性向上の観点から、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0014】
また、廃棄物の粒度調整には、例えば、廃棄物を、必要により破砕機で破砕した後、磁力選別機で磁着物を除去し、分級機で篩分けして所望の粒度の廃棄物を採取すればよい。
破砕機としては、例えば、ジョークラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロールクラッシャー、ロータリークラッシャーが挙げられる。なお、破砕機には、粒度調整のために、所望する篩目のスクリーンを装着するか、あるいはスクリーンを装着しない場合には、固定歯、回転歯、内壁等を所望するクリアランスに調整すればよい。
【0015】
磁力選別は、磁力選別機を用いることができる。これにより、廃棄物中の粗大な金属ガラを除去することができる。磁力選別機は、市販の装置を用いることが可能であり、ドラム式、プーリー式及び吊下げ式のいずれでもよく、特に限定されない。磁力選別機の表面磁束密度は、磁着物除去の観点から、700~10000ガウスが好ましく、1000~7500ガウスがより好ましく、1500~5000ガウスが更に好ましい。
【0016】
分級機としては、例えば、振動式、面内運動式、回転式、固定式等の分級機を使用することが可能であり、所望の篩目を装着すればよい。
【0017】
粒度調整後の廃棄物は、粒径が40mm以下であることが好ましく、30mm以下がより好ましく、20mm以下が更に好ましい。
【0018】
〔第1の工程〕
第1の粉砕工程は、廃棄物と、石灰石及びケイ石から選択される1以上のセメント原料とを含む混合物をローラーミルで粉砕し、ミル精粉とミル排石を回収する工程である。ここで、本明細書において「精粉」とは、粉砕時に気流によって排出される微粉をいい、また「排石」とは、粉砕により気流で排出される粉体とならない粒状、塊状の固体をいう。
【0019】
本工程においては、先ず廃棄物と、石灰石及びケイ石から選択される1以上のセメント原料とを含む混合物を調製する。
セメント原料には、石灰石及びケイ石以外のセメント原料(以下、「他のセメント原料」という)が含まれていても構わない。他のセメント原料としては、例えば、製鋼スラグ等の鉄原料や、石炭灰等を挙げることができる。例えば、本工程においては、焼却灰及び建設発生土から選択される廃棄物と、石灰石及びケイ石から選択される1以上のセメント原料と、石炭灰及び製鋼スラグから選択される1以上の他のセメント原料とを含む混合物を使用することができる。
混合物の調製は、廃棄物とセメント原料を任意の順序でローラーミルに投入すればよく、破砕時に両者がローラーミル内に共存した状態にあればよい。
【0020】
混合物中の廃棄物の含有量は、セメント原料の粉砕効率、有価金属の回収効率の観点から、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上が更に好ましく、そして15質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0021】
ローラーミルとしては、複数個のローラと回転するテーブルとの間で混合物を圧縮、剪断しながら粉砕する装置であれば特に限定されず、市販の装置を使用することができる。粉砕された混合物は上部のセパレータで分級され、ミル精粉を得ると共に、粒径の大きい混合物は再びローラとテーブルで粉砕される。テーブルの周囲にはダムリングが設けられ、ダムリングを超えて落下して排出されるのがミル排石である。なお、本工程で得られたミル精粉は、セメント原料として普通セメント製造工程における焼成工程に送ることができる。
【0022】
粉砕時間は廃棄物の種類や製造スケール等により適宜設定可能であるが、セメント原料としての粉砕効率、有価金属の回収効率の観点から、通常100~400t/hであり、好ましくは200~300t/hである。
【0023】
〔第2の粉砕工程〕
本工程は、第1の粉砕工程で得られたミル排石を粉砕する工程である。これにより、有価金属が濃縮された排石を得ることができる。
第2の破砕工程で使用する粉砕機は、粉砕された微粉を気流にて選択的に排出する機構及び排石機構を有するものであれば、任意のものを使用できる。例えば、ローラーミル、竪型衝撃式破砕機、自生粉砕機を挙げることができる。中でも、自生粉砕機を使用することで、脆性材料である石灰石等(非金属)を選択的に粉砕されるため、これらが微粉化されセメント原料へ移行しやすくなり、またセメント原料中へ粉砕された金属が混入することによるセメント品質低下を抑制することができる。自生粉砕機としては、掻き上げ用のバーが内側に装着された容器を転動し、試料間や試料とケーシング間での衝突により粉砕する自生粉砕ミルや、ローターを高速回転させ、上部から投入した原料と装置内に充填した原料との衝突により破砕する竪型自生破砕機を使用することが好ましい。なお、ローラーミルは、第1の粉砕工程と同様のものを使用することができる。
また、本工程における粉砕は、半自生粉砕でも構わない。ここで、本明細書において「半自生粉砕」とは、自生粉砕において原料に補助的に粉砕媒体を混合使用する場合をいう。粉砕媒体としては、ボール等の公知のものを使用することができるが、後述する磁力選別工程において回収された磁着物を媒体として使用しても構わない。
【0024】
粉砕時間は廃棄物の種類や製造スケール等により適宜設定可能であるが、有価金属の回収効率の観点から、通常1~10t/hであり、好ましくは2~5t/hである。
【0025】
〔磁力選別工程〕
本工程は、第2の破砕工程で得られた排石を磁力選別により非磁着物と磁着物とに分離する工程である。
磁力選別には、公知の磁力選別機を用いることが可能であり、例えば、ドラム式、プーリー式及び吊下げ式のいずれでもよく、特に限定されない。
磁力選別では、例えば、内側に永久磁石が配置されたドラム上に重産物を供給し、重産物に含まれる磁着物がドラム表面に吸着され、ドラムの回転により運ばれ、磁着物排出口から排出される。他方、重産物に含まれる非磁着物は、ドラムの回転によりドラム表面より離反・落下し、非磁着物排出口から排出される。
【0026】
磁力選別機の表面磁束密度は、非磁着物と磁着物との分離促進の観点から、700~10000ガウスが好ましく、1000~7500ガウスがより好ましく、1500~5000ガウスが更に好ましい。
【0027】
〔回収工程〕
本工程においては、非磁着物を有価金属として回収する工程である。これにより、有価金属を高品位で収率よく回収できる。なお、磁着物は、鉄鋼原料として利用することができる。
【0028】
このように廃棄物を処理することで、廃棄物から高品位の有価金属を効率よく回収することができる。
【実施例0029】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0030】
金属成分の分析はマット融解による前処理を行った分析対象物を100μm以下に粉砕したものに対し、表1に示す方法で分析を行った。
【表1】
【0031】
実施例1
図1に示すフローチャートにしたがって焼却主灰を処理した。具体的には、以下のとおりである。
【0032】
(準備工程)
焼却主灰を衝撃式破砕機で破砕後、吊下げ式磁力選別機及びドラム式磁力選別機にて粗大な金属ガラを除去し、振動篩で粒径20mm以下の試料を準備した。
(第1の粉砕工程)
乾燥質量割合で、70~80質量%の石灰石、5~15質量%(うち焼却主灰0.5~2.3質量%)の粘土、1~2質量%の鉄原料(製鋼スラグ等)、4~5質量%のケイ石、5~10質量%の他のセメント原料(石炭灰等)を調合し、竪型ローラーミルに投入し10日間連続して粉砕した。なお、粘土は事前に乾燥機を用いて水分含量を10%以下まで調整した。
竪型ローラーミルでは、前述した原料の粉砕を行い、気流にて回収されるミル精粉をセメント原料として回収した。粉砕後に被粉砕物としてミル下部から排出されるミル排石を回収した。
(第2の粉砕工程)
回収したミル排石に対し、自生粉砕機を用い、粉砕処理を行った。自生粉砕機として、装置の転動により原料同士の衝突、圧縮によって粉砕を進行させ、粉砕した100μm以下の微粉を気流排出によって回収する機構の気流排出型自生粉砕ミルを用いた。
粉砕処理実施後、粉砕により気流で排出される粉体とならない粒状、塊状の固体を排石として取り出して回収した。
(磁力選別工程)
排石を磁力選別機にて処理し、磁着物と非磁着物とに分離した。なお、磁力選別は、1000Gの吊下げ式を用いた。
(回収工程)
非磁着物を回収し、有価金属として金、銀、銅、パラジウム、白金、鉄、アルミニウム、亜鉛、クロム、鉛の分析を行った。その結果を表2に示す。評価は10日分の連続処理時に1回/日サンプリングを行った10回の評価結果の平均値、最大値、最小値を示した。
【0033】
比較例1
図2のフローチャートに示されるとおり、第2の粉砕工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同じ焼却主灰を用いて処理を行った。そして、非磁着物を回収し、有価金属として金、銀、銅、パラジウム、白金、鉄、アルミニウム、亜鉛、クロム、鉛の分析を行った。その結果を表2に示す。
【0034】
【0035】
表2から、第1の粉砕工程で得られたミル排石を、更に第2の粉砕工程に供することで、貴金属をより多く回収できることが分かる。