(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174482
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】検査システム、検査方法、及びセンサタグ
(51)【国際特許分類】
G01N 22/00 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
G01N22/00 Q
G01N22/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080306
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎田 一平
(72)【発明者】
【氏名】並川 威人
(72)【発明者】
【氏名】平岡 三郎
(57)【要約】
【課題】非破壊で且つ簡易な手法で、検査対象物中の含有物のサイズを検査することを可能とする検査システムを提供すること。
【解決手段】検査対象物M中の含有物Maのサイズを検査する検査システムであって、金属パターンによって形成され、所定周波数の電磁波に共振する共振器10Qを有し、共振器10Qに重なるように含有物Maが配置された状態を検知するセンサタグ1と、検査対象物Mとセンサタグ1との相対位置が異なる複数の位置で、センサタグ1に対して電磁波を送信すると共にその反射波を受信して、反射波の周波数スペクトルを取得するリーダー2と、リーダー2により複数の位置それぞれで取得された周波数スペクトルに基づいて、検査対象物M中の含有物Maのサイズを検査する解析装置3と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物中の含有物のサイズを検査する検査システムであって、
金属パターンによって形成され、所定周波数の電磁波に共振する共振器を有し、前記共振器に重なるように前記含有物が配置された状態を検知するセンサタグと、
前記検査対象物と前記センサタグとの相対位置が異なる複数の位置で、前記センサタグに対して電磁波を送信すると共にその反射波を受信して、前記反射波の周波数スペクトルを取得するリーダーと、
前記リーダーにより前記複数の位置それぞれで取得された前記周波数スペクトルに基づいて、前記検査対象物中の前記含有物のサイズを検査する解析装置と、
を備える、検査システム。
【請求項2】
前記検査対象物は、前記含有物として線状又は繊維状の導体を含有する樹脂材である、
請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記検査対象物は、前記含有物として炭素繊維を含有する樹脂材である、
請求項1又は2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記解析装置は、前記含有物のサイズに係る検査結果として、前記含有物のサイズの推定値を出力する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項5】
前記解析装置は、前記含有物のサイズに係る検査結果として、前記含有物が所定以上のサイズを有するか否かの判定結果を出力する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項6】
前記解析装置は、前記リーダーにより前記複数の位置それぞれで取得された前記周波数スペクトルに基づいて、前記共振器の共振ピークのピークシフトが生じているときの前記検査対象物と前記センサタグとの相対位置を特定し、当該相対位置から前記検査対象物中の前記含有物のサイズを検査する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項7】
前記検査対象物又は前記センサタグを移動可能に支持し、前記共振器の上方又は下方を前記含有物が通過するように、前記検査対象物又は前記センサタグを第1方向に移動させる移動装置を更に備える、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項8】
前記検査対象物は、前記含有物の長手方向が前記第1方向を向くように支持され、
前記センサタグは、前記共振器の短手方向が前記第1方向を向くように支持されている、
請求項7に記載の検査システム。
【請求項9】
前記共振器は、金属層中に形成されたスロットによって構成され、
前記移動装置は、少なくとも一部の区間で前記含有物が前記スロットを跨ぐように、前記検査対象物又は前記センサタグを移動させる、
請求項7又は8に記載の検査システム。
【請求項10】
前記スロットは、I字形状を呈する、
請求項9に記載の検査システム。
【請求項11】
前記スロットは、前記共振器の短手方向におけるスロット溝の幅が不均一な形状を呈する、
請求項9に記載の検査システム。
【請求項12】
前記スロットは、三角形状又台形状を呈する、
請求項11に記載の検査システム。
【請求項13】
前記共振器は、U字形状又はV字形状のストリップ導体によって構成され、
前記移動装置は、少なくとも一部の区間で前記含有物が前記ストリップ導体のU字又はV字の一端と他端とを跨ぐように、前記検査対象物又は前記センサタグを移動させる、
請求項7又は8に記載の検査システム。
【請求項14】
前記ストリップ導体は、前記第1方向に沿って、前記第1方向に直交する方向の前記ストリップ導体のU字又はV字の一端と他端の幅が変化する形状を呈する、
請求項13に記載の検査システム。
【請求項15】
前記移動装置は、前記共振器の上方又は下方を前記含有物が通過するように、前記検査対象物又は前記センサタグを前記第1方向に移動させた後、前記共振器の上方又は下方を前記含有物が通過するように、前記検査対象物又は前記センサタグを第2方向に移動させ、
前記解析装置は、
前記移動装置が前記検査対象物又は前記センサタグを前記第1方向に移動させたときに、前記第1方向に沿った前記複数の位置それぞれで取得される前記周波数スペクトルに基づいて、前記含有物の前記第1方向におけるサイズを検査し、
前記移動装置が前記検査対象物又は前記センサタグを前記第2方向に移動させたときに、前記第2方向に沿った前記複数の位置それぞれで取得される前記周波数スペクトルに基づいて、前記含有物の前記第2方向におけるサイズを検査する、
請求項7乃至14のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項16】
前記センサタグは、短手方向の幅が互いに異なる複数の前記共振器を有し、
前記解析装置は、前記リーダーにより前記複数の位置それぞれで取得された前記周波数スペクトルに基づいて、複数の前記共振器それぞれにおいて共振ピークのピークシフトが生じているか否かを判定し、当該判定結果に基づいて、前記検査対象物中の前記含有物のサイズを検査する、
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項17】
複数の前記共振器は、前記共振器の短手方向の向きを第1方向に揃えて、前記第1方向に沿って並べられており、且つ、互いに異なる共振周波数を有する、
請求項16に記載の検査システム。
【請求項18】
前記センサタグは、前記共振器の短手方向の幅を可変に構成されている、
請求項1乃至17のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項19】
前記センサタグは、同一平面内に隣接して配された二枚の金属板を有し、
前記共振器は、前記二枚の金属板を突き合わせた際に、その間に形成されるスロット構造によって構成され、前記二枚の金属板の少なくとも一方が移動可能に構成されている、
請求項18に記載の検査システム。
【請求項20】
前記センサタグに対向して配設されたインク吐出部を更に備え、
前記インク吐出部から前記共振器を形成する導体領域又はスロット領域に対して導電性インクを吐出することで、前記共振器の短手方向の幅を設定変更する、
請求項18に記載の検査システム。
【請求項21】
前記センサタグ及び/又は前記検査対象物は、移動可能に支持されており、
前記センサタグ及び/又は前記検査対象物は、前記リーダーにより前記周波数スペクトルの取得処理が実行される際に、前記センサタグが前記検査対象物の検査面に対して当接するように移動制御される、
請求項1乃至20のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項22】
前記検査対象物は、樹脂材の成形部品であって、
前記検査システムは、前記成形部品を製造した後の品質管理プロセスに適用される、
請求項1乃至21のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項23】
金属パターンによって形成され、所定周波数の電磁波に共振する共振器を有するセンサタグと、前記センサタグに対して電磁波を送信すると共にその反射波を受信して、前記反射波の周波数スペクトルを取得するリーダーと、を用いた検査方法であって、
前記センサタグにて、前記共振器に重なるように前記含有物が配置された状態を検知し、
前記リーダーにて、前記検査対象物と前記センサタグとの相対位置が異なる複数の位置で、前記センサタグに対して電磁波を送信すると共にその反射波を受信して、前記反射波の周波数スペクトルを取得して、前記リーダーにより前記複数の位置それぞれで取得された前記周波数スペクトルに基づいて、前記検査対象物中の前記含有物のサイズを検査する、
検査方法。
【請求項24】
タグを動作させることで複数の幅の情報を利用できるセンサタグ。
【請求項25】
金属層中に形成されたスロットによって構成され、所定周波数の電磁波に共振する共振器を有し、前記スロットが、前記共振器の短手方向におけるスロット溝の幅が不均一な形状を呈する、
請求項24に記載のセンサタグ。
【請求項26】
前記スロットは、三角形状又台形状を呈する、
請求項25に記載のセンサタグ。
【請求項27】
ストリップ導体によって構成され、所定周波数の電磁波に共振する共振器を有し、
前記共振器の短手方向における前記ストリップ導体のU字又はV字の一端と他端の幅が、前記共振器の長手方向の位置によって変化する形状を呈する、
請求項24に記載のセンサタグ。
【請求項28】
同一平面内に隣接して配された二枚の金属板を有し、
前記二枚の金属板を突き合わせた際に、その間に形成されるスロット構造によって、所定周波数の電磁波に共振する共振器が構成され、前記二枚の金属板の少なくとも一方が移動可能に構成されている、
請求項24に記載のセンサタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査システム、検査方法、及びセンサタグに関する。
【背景技術】
【0002】
材料開発の分野では、樹脂材料中に意図的に、主成分の樹脂材料とは物性の異なる異種材料(フィラーとも称される)を含有させて、材料強度を高めたりする技術が用いられることがある。
【0003】
近年、この種の技術の適用例として、炭素繊維強化樹脂(Carbon Fiber Reinforced Plastics:CFRP)が注目を集めている。炭素繊維強化樹脂は、熱可塑性樹脂中に炭素繊維を含有させることで、軽量で頑丈な材料特性を実現しており、自動車や航空機の部品等、様々な分野で活用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の混合材料においては、製造後の樹脂材料中の含有物のサイズが、材料特性に影響を与える。例えば、炭素繊維強化樹脂を用いた部品は、一般に射出成形にて成形されるが、成型物の形状によっては、成型物中で、部位毎に炭素繊維の長さにバラつきが生じることがある。成型物中の炭素繊維の長さは、成型物の機械的強度に直結するため(典型的には、炭素繊維が短いと機械的強度が弱くなる)、このような成型物中の炭素繊維の長さのバラつきは、成型物全体としての機械的強度の信頼性を低下させるものとなる。
【0006】
このような背景から、炭素繊維強化樹脂等の製造現場の品質管理プロセスとして、成型物の内部の含有物のサイズを、非破壊で検査する検査システムが求められている。
【0007】
成型物内部の含有物の状態を非破壊で検査する手段としてX線検査装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。X線検査は非接触検査ではあるが、X線暴露による検査対象物へのダメージの可能性を有している。又、X線検査は、検査に時間を要するため、X線装置は、製造現場の品質管理プロセスには適合性が低い。
【0008】
本開示は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、非破壊で且つ簡易な手法で、検査対象物中の含有物のサイズを検査することを可能とする検査システム、検査方法、及びセンサタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
検査対象物中の含有物のサイズを検査する検査システムであって、
金属パターンによって形成され、所定周波数の電磁波に共振する共振器を有し、前記共振器に重なるように前記含有物が配置された状態を検知するセンサタグと、
前記検査対象物と前記センサタグとの相対位置が異なる複数の位置で、前記センサタグに対して電磁波を送信すると共にその反射波を受信して、前記反射波の周波数スペクトルを取得するリーダーと、
前記リーダーにより前記複数の位置それぞれで取得された前記周波数スペクトルに基づいて、前記検査対象物中の前記含有物のサイズを検査する解析装置と、
を備える、検査システムである。
【0010】
又、他の局面では、
金属パターンによって形成され、所定周波数の電磁波に共振する共振器を有するセンサタグと、前記センサタグに対して電磁波を送信すると共にその反射波を受信して、前記反射波の周波数スペクトルを取得するリーダーと、を用いた検査方法であって、
前記センサタグにて、前記共振器に重なるように前記含有物が配置された状態を検知し、
前記リーダーにて、前記検査対象物と前記センサタグとの相対位置が異なる複数の位置で、前記センサタグに対して電磁波を送信すると共にその反射波を受信して、前記反射波の周波数スペクトルを取得して、前記リーダーにより前記複数の位置それぞれで取得された前記周波数スペクトルに基づいて、前記検査対象物中の前記含有物のサイズを検査する、
検査方法である。
【0011】
又、他の局面では、
タグを動作させることで複数の幅の情報を利用できるセンサタグである。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る検査システムによれば、非破壊で且つ簡易な手法で、検査対象物中の含有物のサイズを検査することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る検査システムの全体構成を示す図
【
図2】一実施形態に係る検査システムの全体構成を示す図
【
図3】一実施形態に係るセンサタグの具体的構成の一例を示す図
【
図4】一実施形態に係るセンサタグの反射波スペクトル(反射波の周波数スペクトル)の一例を示す図
【
図5】成形部品(即ち、炭素繊維)が自身の直上(又は直下)を通過した際におけるセンサタグの反射波スペクトルの変化の一例を示す図
【
図6】共振器(ここでは、スロット型共振器)が、外部から照射された電磁波と共振するときに、共振器に通流する電流の強度分布を示す図
【
図7】一実施形態に係るセンサタグの配設態様の一例を示す図
【
図8】一実施形態に係る解析装置が炭素繊維の長さを推定する手法の一例について説明する図
【
図9】一実施形態に係る検査システムの動作例を示すフローチャート
【
図10】変形例1に係る検査システムの構成を示す図
【
図11】変形例2に係る検査システムの構成を示す図
【
図13】変形例3に係るセンサタグを用いた含有物のサイズ検査の処理について説明する図
【
図14】変形例4に係る検査システムのセンサタグの構成を示す図
【
図15C】
図15Aに示す共振器を用いた炭素繊維の長さの検査方法の他の一例を示す図
【
図16A】変形例5の他の態様に係る共振器の構成を示す図
【
図16C】
図16Aに示す共振器を用いた炭素繊維の長さの検査方法の他の一例を示す図
【
図18】変形例7に係る検査システムの構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<検査システムの全体構成>
以下、本開示の一実施形態に係る検査システム(以下、「検査システムU」と称する)の構成について説明する。
【0016】
図1、
図2は、検査システムUの全体構成を示す図である。
【0017】
検査システムUは、例えば、炭素繊維を含有する樹脂材料(例えば、CFRP)で成形された成形部品を製造する製造ライン中の品質管理プロセスに組み込まれ、成形部品(以下、「検査対象物M」又は「成形部品M」と称する)に含有する炭素繊維(以下、「炭素繊維Ma」又は「含有物Ma」と称する)の長さを検査する。
【0018】
尚、成形部品Mは、例えば、炭素繊維Maが所定の一方向を向くように射出成形されている。そのため、成形部品M中では、所定方向(
図1では、プラスX方向)に沿って延在する同じ長さの炭素繊維Maが、横方向(
図1では、プラスX方向に直交する方向)に束状になって存在している。
【0019】
検査システムUは、センサタグ1と、リーダー2と、解析装置3と、移動装置4と、を備えている。
【0020】
ここで、センサタグ1は、金属パターンによって形成され、所定周波数の電磁波に共振する共振器10Q(
図3を参照)を有する。共振器10Qは、自身に重なるように炭素繊維Maが配置された状態に感応して共振状態が変化するように構成され、これに伴って外部(ここでは、リーダー2)から照射された電磁波に対する反射特性(以下、「センサタグ1の電磁波反射特性」又は「センサタグ1の反射波スペクトル」とも称する)を変化させる。
【0021】
リーダー2は、移動装置4が成形部品M又はセンサタグ1を移動させている際、成形部品Mとセンサタグ1との相対位置が異なる複数の位置で、センサタグ1に対して電磁波を送信すると共にその反射波を受信し、センサタグ1の反射波スペクトルを取得する。そして、解析装置3が、リーダー2により複数の位置で取得される反射波スペクトルを解析することで、成形部品M中の炭素繊維Maのサイズを推定する。
【0022】
検査システムUにおいては、移動装置4が、成形部品M又はセンサタグ1を移動可能に支持し、センサタグ1の上方又は下方を成形部品Mが通過するように、成形部品M又はセンサタグ1を、+X方向に移動させる構成となっている。例えば、移動装置4は、ベルトコンベア41によって構成され、当該ベルトコンベア41にて、自身の上面に載置した成形部品Mを+X方向に移動させる構成となっている。そして、成形部品M中の炭素繊維Maのサイズは、ベルトコンベア41の下方に、成形部品Mに対向するように配設されたセンサタグ1にて検出される。
【0023】
尚、検査システムUは、例えば、UWB帯域、ミリ波帯域又はサブミリ波帯域の周波数帯域(3.1GHz~3THzの範囲)の電磁波を用いることを基調として構築されている。即ち、かかる帯域の電磁波に応答するようにセンサタグ1を構成すると共に、かかる帯域の電磁波を送受信するようにリーダー2を構成している。かかる帯域の電磁波は、波長が短い上、樹脂材料に対して透過性を有し、電磁波の指向特性(即ち、直進性)が高く、且つ、検出時の周波数分解能も高いという特性を有する。かかる帯域の電磁波を用いることで、樹脂材料中の炭素繊維Maの状態を把握する際に高い分解能を実現することが可能となる。
【0024】
<センサタグ1の構成>
図3~
図6を参照して、センサタグ1の構成の一例について説明する。
【0025】
図3は、センサタグ1の具体的構成の一例を示す図である。
図4は、リーダー2により取得されるセンサタグ1の反射波スペクトル(反射波の周波数スペクトル)の一例を示す図である。尚、
図4のプロットは、リーダー2に取得された各送信周波数における反射波強度のデータである。
図5は、成形部品M(即ち、炭素繊維Ma)が自身の直上(又は直下)を通過した際におけるセンサタグ1の反射波スペクトルの変化の一例を示す図である。
【0026】
センサタグ1は、例えば、金属パターンによって形成されたチップレスセンサタグであり、外部から送信された所定周波数の電磁波に共振する共振器10Qによって構成される。共振器10Qは、例えば、板状、シート状、箔状、又は層状の金属材料11(例えば、アルミ材や銅材等)の金属パターンによって形成されている。尚、センサタグ1は、金属材料11が形成される基材を有していてもよい。
【0027】
本実施形態に係る共振器10Qは、板状の金属材料11に形成された長方形状のスロット10により構成されている(以下、「スロット型共振器」とも称する)。
【0028】
共振器10Qは、外部から所定の周波数の電磁波が照射された際に共振し、当該電磁波を吸収又は反射(本実施形態では、吸収)する。つまり、センサタグ1は、リーダー2から電磁波を照射された際に、共振器10Qの共振周波数に合致する周波数の電磁波を吸収し、それ以外の周波数の電磁波が照射された場合には反射する反射スペクトルを有する(
図4を参照)。
【0029】
共振器10Qの共振周波数は、共振器10Qの形状で定まる。本実施形態に係る共振器10Qは、周波数f1に対応する波長の略λ1/2程度の長さの長方形状のスロット10により構成され、周波数f1が共振周波数となっている。
図4の反射波スペクトル中の周波数f1における共振ピークは、共振器10Qの共振による電力損失(吸収)を表している。
【0030】
但し、共振器10Qの形態は、
図3の態様に限定されない。共振器10Qは、例えば、三角形状又は台形状のスロット構造によって構成されてもよいし(後述する
図15を参照)、U字形状又はV字形状のストリップ導体に構成されてもよい(後述する
図13、
図14を参照)。
【0031】
又、本実施形態に係るセンサタグ1は、それ自身で独立したセンサタグ1として構成されているが、移動装置4のベルトコンベア41等に塗布形成されたものであってもよい。
【0032】
検査システムUにおいて、センサタグ1は、例えば、移動装置4のベルトコンベア41の下面側に、ベルトコンベア41とは別体の支持部材(図示せず)に支持されている。より具体的には、センサタグ1は、共振器10Qの上面が、ベルトコンベア41(即ち、成形部品M)と対向し、共振器10Qの下面が、リーダー2の送信アンテナ及び受信アンテナと対向するように支持されている。
【0033】
ここで、センサタグ1の向きは、共振器10Qの短手方向(ここでは、スロット10の短手方向を意味する。以下同じ)が+X方向(成形部品Mの移動方向)を向くように調整されている。そして、センサタグ1は、共振器10Qの短手方向が、炭素繊維Maの配置状態に感応するための感応方向(即ち、炭素繊維Maのサイズを検査するための検査方向)として設定されている。そして、共振器10Qは、成形部品M(即ち、炭素繊維Ma)が自身の上面に到達し、炭素繊維Maがスロット10を跨ぐように配置されたときに、これに感応して共振状態を変化させ、電磁波反射特性を変化させる。
【0034】
尚、センサタグ1(即ち、共振器10Q)の電磁波反射特性は、典型的には、リーダー2から電磁波を照射された際に発生するセンサタグ1の反射波の強度、又は、センサタグ1の共振周波数によって、規定される。換言すると、センサタグ1が示す炭素繊維Maの存在位置情報(ここでは、炭素繊維Maがスロット10を跨いで存在するか否かを示す情報)は、センサタグ1の反射波スペクトルのパターン(例えば、共振ピークの位置、及び共振ピークのピーク強度)により表現される。
【0035】
ここで、
図5、
図6を参照して、センサタグ1にて、炭素繊維Maの長さを検出する原理について、説明する。
【0036】
本願の発明者らは、共振器10Qの特性を調査している中で、共振器10Qは、炭素繊維Ma(即ち、導体)がスロット10を跨いで存在するか否か(スロット10の短手方向を跨ぐことを意味する。以下同じ)を高感度に検知可能である、という知見を得た。本願発明における炭素繊維Maのサイズ検出の原理は、この新たな知見を利用したものである。
【0037】
図5は、センサタグ1の共振器10Q上に、炭素繊維Maがスロット10を跨ぐように存在しない場合の反射波スペクトル(点線)と、センサタグ1の共振器10Q上で、炭素繊維Maがスロット10を跨ぐように存在する場合の反射波スペクトル(実線)と、を示している。尚、
図5の左図は、センサタグ1と、成形部品M中の炭素繊維Ma(成形部品Mについては図示せず)との位置関係を平面視した図である。
【0038】
図5に示すように、センサタグ1の共振器10Q上で、スロット10を跨ぐように炭素繊維Maが存在する場合、反射波スペクトルは、センサタグ1の共振器10Q上に、炭素繊維Maが存在しない場合と比較して、共振ピークの位置(即ち、共振周波数)がシフト(ここでは、低周波数側へのシフト)すると共に、共振ピークのピーク値は小さくなる。
【0039】
これは、センサタグ1の共振器10Q上で、スロット10を跨ぐように炭素繊維Maが存在する場合には、共振器10Qに通流する電流の経路に変化が生じるためであると考えられる。尚、本実施形態に係る成形部品Mの主成分材料たる樹脂材料は、典型的には電磁波透過特性を有する誘電体であり、当該樹脂材料中に含有する炭素繊維Maは、導体である。そのため、成形部品Mがセンサタグ1上を通過する際、成形部品Mの主成分材料たる樹脂材料は、高周波の電磁波(電磁界)に対しては、実質的に透過物となり、炭素繊維Maが、共振器10Qとの間で電流の授受を行う。
【0040】
図6は、共振器10Q(ここでは、スロット型共振器)が、外部から照射された電磁波と共振するときに、共振器10Qに通流する電流の強度分布を示す図である。
図6の電流分布は、電磁界解析シミュレーションによって算出したものである。尚、
図6では、3つの共振器10Qのうち、中央に存在する共振器10Q(
図6中のSLOT II)のみが共振した状態を示している。
【0041】
図6から分かるように、共振器10Qが、外部から照射された電磁波と共振するとき、共振器10Qを形成するスロット10(
図6中のSLOT II)の周囲には、スロット10を取り巻くような共振電流が流れる。共振時には、電磁波エネルギーは、センサタグ1に吸収されるため、反射波スペクトルにおいては、下凸のピークが共振周波数の位置に現れる。このとき、スロット10を跨がるように炭素繊維Maが存在すると、炭素繊維Maを介した別の電流経路(例えば、スロット10の長辺の一辺側⇒炭素繊維Ma⇒スロット10の長辺の他辺側⇒スロット10の長辺の一辺側により形成される循環経路)が発生することになる。その結果、このときの共振器10Qの共振周波数は、共振器10Qの共振器長(ここでは、スロット10の長手方向のサイズ)から規定される共振周波数からシフトすることになる。又、このときの共振電流は、電流ロスを伴ったものとなるため、共振ピークのピーク値は小さくなる。
【0042】
但し、共振ピークのピークシフトは、センサタグ1の共振器10Q上で、スロット10を跨ぐように炭素繊維Maが存在する場合に限って発生し、スロット10上に炭素繊維Maが存在しても、当該炭素繊維Maがスロット10を跨いでいない場合には、発生しない。そのため、例えば、炭素繊維Maの長さがスロット10の短手方向の幅よりも短い場合や、炭素繊維Maがスロット10の一辺側の上には掛かっていても他辺側の上まで掛かっていない場合には、共振ピークのピークシフトは、発生しない。これは、炭素繊維Maがスロット10を跨いでいない状態のときには、センサタグ1上に炭素繊維Maを介した別の電流経路が発生せず、共振器10Qに通流する電流の経路に変化が生じないためであると考えられる。
【0043】
又、共振ピークのピークシフトは、典型的には、検査対象物M中の含有物Maが導体である場合に限って発生し、含有物Maが絶縁物の場合には発生しない。これは、検査対象物M中の含有物Maがスロット10を跨いで存在していても、含有物Maが絶縁物の場合には、センサタグ1上に含有物Maを介した別の電流経路が発生せず、共振器10Qに通流する電流の経路に変化が生じないためであると考えられる。但し、含有物Maが導体であれば、炭素繊維のように含有物Maの導電率が小さい物体であっても、共振ピークのピークシフトの発現が観察される。
【0044】
このように、センサタグ1が示す反射波スペクトル中において、共振ピークのピークシフトが生じているか否かは、炭素繊維Maが、スロット10を跨ぐ位置に存在するか否かを示す指標となる。本実施形態に係る検査システムUにおいては、この指標を利用して、成形部品M中の炭素繊維Maの長さを推定する(後述する
図8を参照)。
【0045】
尚、スロット10を跨がるように炭素繊維Maが存在する場合の共振ピークのピークシフトの態様(シフト方向及びシフト量)は、成形部品Mの主成分の樹脂材料の誘電率、炭素繊維Maと共振器10Qとの間の空間幅、及び、炭素繊維Maがスロット10上を通過する位置等によって変化する。そのため、反射波スペクトルから炭素繊維Maがスロット10を跨ぐ位置に存在するか否かを判定する際には、予め実験等で、同一の条件下での共振ピークのピークシフトの態様を把握した上で行うのが好ましい。
【0046】
本実施形態に係る検査システムUでは、センサタグ1は、移動装置4のベルトコンベア41の下面側に配設された支持部材(図示せず)に固定され、移動装置4のベルトコンベア41の上面側を移送される成形部品Mと対向するように配設されている。
【0047】
図7は、センサタグ1の配設態様の一例を示す図である。
【0048】
リーダー2にて反射波スペクトルの取得処理が実行される際、センサタグ1は、成形部品Mと非接触状態であってもよいが、リーダー2にて良好なSN比の反射波スペクトルを取得する観点からは、センサタグ1は、成形部品Mと接触状態であるのが好ましい。特に、センサタグ1は、
図7に示すように、センサタグ1を支持する支持部材の移動により、成形部品Mに対して近接可能及び離間可能に配設されるのが好ましい。尚、
図7に示す態様では、センサタグ1を支持する支持部材が上下動するように構成され、これに伴って、センサタグ1が成形部品Mの検査位置に密着した状態とすることが可能となっている。
【0049】
これによって、リーダー2にて反射波スペクトルの取得処理が実行される際には、センサタグ1を、成形部品Mの検査面に対して当接させることが可能となる。尚、センサタグ1は、金属パターンで形成される簡易な構成であるため、湾曲状態で配設することも可能である。そのため、成形部品Mが立体的な形状を有する場合にも、センサタグ1を、成形部品Mの立体形状に沿って、成形部品Mの検査面に対して当接させることが可能である。
【0050】
<移動装置4の構成>
移動装置4は、センサタグ1又は成形部品Mを移動させて、センサタグ1(即ち、共振器10Q)と成形部品M中の炭素繊維Maとの相対位置を変化させるための手段である。
【0051】
移動装置4は、例えば、ベルトコンベア41によって構成され、当該ベルトコンベア41にて、自身の上面に載置した成形部品Mを+X方向に移動させる。この際、移動装置4は、例えば、炭素繊維Maと共振器10Qとが対向した状態で、センサタグ1の共振器10Qの上方又は下方を炭素繊維Maが通過するように、成形部品Mを+X方向に移動させる(
図1を参照)。即ち、移動装置4は、少なくとも一部の区間で、成形部品M中の炭素繊維Maが、共振器10Qの短手方向の一端及び他端を通過するように(即ち、スロット10を跨がるように)、成形部品Mを移動させる。
【0052】
これにより、リーダー2により取得される反射波スペクトルの推移から、炭素繊維Maが共振器10Qの短手方向(即ち、スロット10の短手方向)を跨がって通過している期間の特定が可能となり、これによって、炭素繊維Maの+X方向のサイズ(即ち、炭素繊維Maの長さ)の推定が可能となる。
【0053】
換言すると、移動装置4は、炭素繊維Maの長手方向が+X方向(成形部品Mの移動方向)に揃った状態で、成形部品Mを移動させるのが好ましい。これによって、炭素繊維Maの長さの検査を容易に行うことが可能となる(
図8を参照して後述)。
【0054】
尚、成形部品Mは、例えば、射出成形等によって、炭素繊維Maが所定方向を向くように成形されている。つまり、成形部品M中では、±X方向に沿って延在する同じ長さの炭素繊維Maが、横方向(±Y方向)に束状になって存在している。そして、本実施形態に係る検査システムUでは、ユーザが、成形部品Mを適宜な向きで移動装置4上に載置することで、炭素繊維Maの向きが+X方向となるように、成形部品Mを移送させる構成となっている。
【0055】
又、移動装置4は、より好ましくは、成形部品M中の炭素繊維Maの向きを特定するための撮像装置を有する構成とする。これによって、移動装置4上を移動させる成形部品Mの姿勢調整が可能となり、より高精度に、炭素繊維Maの長さを検査することができる。尚、かかる撮像装置としては、例えば、成形部品Mの内部構造を観察する超音波式撮像装置やX線式撮像装置を用いることができる。
【0056】
又、移動装置4は、より好ましくは、炭素繊維Maが共振器10Qの長手方向の中心位置を通過するように、成形部品Mを移動させる。共振器10Qに通流する電流は、共振器10Qの長手方向の中心位置が最大となるため(
図6を参照)、炭素繊維Maがこの位置を通過させるように、成形部品Mを移動させることで、反射波スペクトル上における共振ピークのピーク位置のシフト(
図8を参照して後述)をより鮮明に引き起こすことが可能となる。
【0057】
尚、移動装置4は、例えば、リーダー2等と相互にデータ通信しながら、ベルトコンベア41の動作制御を実行する制御部40を有していてもよい。
【0058】
尚、本実施形態に係る検査システムUでは、移動装置4にて、成形部品Mを移動させる構成となっているが、移動装置4にて、センサタグ1を移動可能に支持し、センサタグ1を+X方向に移動させる構成としてもよい。換言すると、成形部品Mと共振器10Qとの相対位置を所定方向に変化させられる構成であれば、移動装置4は、成形部品M又はセンサタグ1のいずれを移動させてよい(例えば、後述する
図19を参照)。
【0059】
<リーダー2の構成>
リーダー2は、移動装置4が成形部品Mを移動させている際、成形部品Mとセンサタグ1との相対位置が異なる複数の位置で(例えば、センサタグ1と成形部品Mとの相対位置が異なる位置を取る毎に)、センサタグ1に対して電磁波を送信すると共にその反射波を受信し、センサタグ1の反射波スペクトルを取得する。
【0060】
リーダー2は、送信部21、受信部22、及び、制御部23を備えている(
図2を参照)。
【0061】
送信部21は、センサタグ1に対して所定の周波数の電磁波を送信する。送信部21は、例えば、送信アンテナ、及び発振器等を含んで構成される。
【0062】
送信部21は、例えば、単一の周波数にピーク強度を有する正弦波状の電磁波を送信する。そして、送信部21は、送信アンテナから送信させる電磁波の送信周波数を時間的に変化させ、予め設定した所定周波数帯域内の周波数スイープを行う。送信部21は、例えば、UWB帯域、ミリ波帯域又はサブミリ波帯域の周波数帯域(3.1GHz~3THzの範囲)内で、例えば、500MHz以下の帯域幅毎、好ましくは10MHzの帯域幅毎にステップ状に送信周波数を変化させながら、周波数スイープを行う。尚、送信部21が送信する電磁波の周波数帯域は、センサタグ1の共振器10Qの共振周波数が含まれるように設定される。
【0063】
尚、送信部21は、周波数スイープに代えて、所定周波数帯において特定の強度プロファイルを有する電磁波を一括して照射を行ってもよい(即ち、インパルス方式)。
【0064】
送信部21から送信する電磁波は、直線偏波又は円偏波のいずれであってもよい。共振器10Qとして、
図3に示すようなスロット型共振器を用いる場合には、共振電流を最大化する観点から、送信部21から送信する電磁波としては、±X方向に偏波方向を有する直線偏波の電磁波を用いるのが好ましい。
【0065】
受信部22は、例えば、受信アンテナ、及び受信アンテナが取得した反射波の受信信号に基づいて、反射波の強度や位相を検出する受信信号処理回路等を含んで構成される。そして、受信部22は、受信アンテナにて、送信部21が電磁波を送信した際に発生するセンサタグ1からの反射波を受信し、受信信号処理回路にて、反射波の受信信号を受信処理して、電磁波の各送信周波数において検出される反射波の強度から、センサタグ1の反射波スペクトル(周波数スペクトル)を生成する。
【0066】
尚、送信部21及び受信部22の信号処理回路は、ベクトルネットワークアナライザによって、一体的に構成されてもよい。
【0067】
制御部23は、例えば、CPU、ROM、RAM、入力ポート、及び出力ポート等を含んで構成されるコンピュータであり、リーダー2を統括制御する。制御部23は、例えば、移動装置4が成形部品Mを移動させている際、センサタグ1と成形部品Mとの相対位置が異なる複数の位置で、センサタグ1の反射波スペクトルを取得するべく、所定の時間間隔で、送信部21及び受信部22に上記した処理を実行させる。
【0068】
制御部23は、解析装置3及び移動装置4と通信接続されており、解析装置3及び移動装置4と相互にデータ通信する構成となっている。
【0069】
制御部23は、例えば、センサタグ1の反射波スペクトルを取得するタイミングにあわせて、移動装置4に移動停止指令を送信して、ベルトコンベア41の移動を一時停止させてもよい。尚、
図7に示したように、リーダー2にてセンサタグ1の反射波スペクトルを取得する際に、センサタグ1を移動させて成形部品Mに当接させる処理を行う場合には、制御部23は、当該タイミングにあわせて、センサタグ1を移動させるように、センサタグ1を支持する支持部材の駆動部(図示せず)に対して駆動指令を送信してもよい。
【0070】
又、制御部23は、例えば、受信部22で得られた反射波スペクトルのデータを、適宜なタイミングで解析装置3に送信する。
【0071】
<解析装置3の構成>
解析装置3は、成形部品Mとセンサタグ1との相対位置が異なる複数の位置で、リーダー2にて取得される反射波スペクトルに基づいて、炭素繊維Maの長さを推定する。
【0072】
解析装置3は、例えば、CPU、ROM、RAM、入力ポート、及び出力ポート等を含んで構成されるコンピュータであり、リーダー2及び移動装置4それぞれと相互にデータ通信可能に構成されている。但し、解析装置3とリーダー2とは、一体的に構成されてもよい。
【0073】
解析装置3の後述する各機能は、例えば、CPUがROM、RAM、及び記憶部30D等に記憶された制御プログラムや各種データを参照することによって実現される。但し、各機能の一部又は全部は、CPUによる処理に代えて、又は、これと共に、DSP(Digital Signal Processor)や、専用のハードウェア回路(例えば、ASIC又はFPGA)による処理によって実現されてもよい。
【0074】
解析装置3は、炭素繊維Maの長さを推定するための各種演算処理を行う演算部30と、演算部30の演算処理に用いる各種データを記憶する記憶部30Dと、を有する。記憶部30Dには、例えば、リーダー2にて取得された反射波スペクトルのデータ、反射波スペクトルを解析するための学習モデルのデータ、及び、移動装置4によるベルトコンベア41の移動制御データ等が記憶されている。尚、移動装置4の移動制御データは、例えば、ベルトコンベア41の移動速度やベルトコンベア41の移動量に係るデータであって、ベルトコンベア41にて成形部品Mを移動させている際の成形部品Mの位置を特定するために用いられるデータである。
【0075】
解析装置3は、例えば、移動装置4が成形部品Mを移動させた際に取得される反射波スペクトルの推移から、共振ピークのピーク位置が基準位置(即ち、共振器10Q上に炭素繊維Maが存在しないときの共振周波数)からピークシフトしている期間を特定する。そして、解析装置3は、例えば、共振ピークのピーク位置のピークシフトが生じているときの成形部品Mの移動位置を特定することで、炭素繊維Maの長さを推定する。
【0076】
尚、共振ピークのピークシフトの発生の有無を判定する手法としては、反射波スペクトルから共振ピークのピーク位置を特定する手法を用いてもよいが、反射波スペクトルのスペクトルパターンを用いたパターン認識を用いてもよい。パターン認識を用いた手法としては、ロバスト性の観点から、機械学習を基調とした手法が特に有用である。この場合、検査システムUにおける検査条件と同一の条件下で生成された学習データを用いて、共振ピークのピークシフトの発生の有無を判定する用に最適化された学習モデルを用いればよい。
【0077】
図8は、解析装置3が炭素繊維Maの長さを推定する手法の一例について説明する図である。
図8の右図には、成形部品Mの初期位置からの移動距離毎の反射波スペクトルを示している。
【0078】
まず、移動装置4が、成形部品Mを移動させたときに、リーダー2に取得されるセンサタグ1の反射波スペクトルの挙動について説明する。
【0079】
炭素繊維Maの長さを検査する際、移動装置4は、成形部品Mを少しずつ+X方向に移動させる。上記したように、センサタグ1の反射波スペクトルは、炭素繊維Maがスロット10を跨がるように配置された時に変化する。移動装置4は、スペクトル変化後も、成形部品Mを+X方向に移動させる。成形部品Mを移動させても反射波スペクトルのパターンが変化後のままの間は、まだ炭素繊維Maがスロット10を跨がるように配置されていることを意味する。そして、炭素繊維Maがスロット10を跨がらない状態となった時(即ち、炭素繊維Maの後端がスロット10を通過し終えた時)、反射波スペクトルは、元の反射波スペクトルに戻る。
【0080】
このように、センサタグ1の反射波スペクトルは、成形部品Mを+X方向に移動させている際、炭素繊維Maがスロット10を跨がるように配置されている間にのみ、共振ピークのピークシフトが生じる。これより、共振ピークのピークシフトが生じている間の成形部品Mの移動距離(
図8中のL2)を記録しておき、スロット10の幅(
図8中のL1)と足し合わせることで、炭素繊維Maの長さ(
図8中のL0)を推定できることが分かる。
【0081】
具体的には、
図8では、成形部品Mの移動距離が2mm~3mmのときに、反射波スペクトルの共振ピークにピークシフトが生じている。ここで、共振器10Qのスロット10の幅L1を、1mmとする。そうすると、炭素繊維Maの長さ(
図8中のL0)は、共振ピークのピークシフトが生じている間の成形部品Mの移動距離(
図8中のL2)1mm(=3mm-2mm)と、共振器10Qのスロット10の幅(
図8中のL1)1mmとを足し合わせて、2mmと推定することができる。そして、解析装置3は、炭素繊維Maの長さに係る検査結果として、炭素繊維Maのサイズの推定値を出力する。
【0082】
但し、解析装置3は、炭素繊維Maの長さに係る検査結果として、炭素繊維Maの長さに係る検査結果として、炭素繊維Maのサイズの推定値を出力する態様に代えて、炭素繊維Maのサイズが所定以上のサイズを有するか否かの判定結果を出力する構成であってもよい。この場合には、スロット10の幅(
図8中のL1)を、検査対象の長さと設定しておいてもよい。かかる態様とすることによって、解析装置3は、移動装置4の移動距離を特定することなく、反射波スペクトルの共振ピークにピークシフトが生じるか否かを判定することで、炭素繊維Maのサイズが所定以上のサイズを有するか否かを判定することが可能である。
【0083】
図9は、検査システムUの動作例を示すフローチャートである。
図9のフローチャートの処理は、例えば、リーダー2の制御部23が主体となって、解析装置3及び移動装置4を統括制御することで実行される。
【0084】
まず、ユーザからの検査開始指令にあわせて、移動装置4は、ベルトコンベア41を稼働させて、成形部品Mを+X方向に移動させる(ステップS10) 。
【0085】
次に、リーダー2は、所定の時間間隔で、ベルトコンベア41を一時停止させて、成形部品Mとセンサタグ1との相対位置が異なる複数の位置で、センサタグ1に対して電磁波を送信するとともに、反射波を受信して、センサタグ1の反射波スペクトルを取得する(ステップS20)。そして、リーダー2は、成形部品Mがセンサタグ1の上方を通過し終えるに移動するまで、センサタグ1の反射波スペクトルを取得する処理を繰り返し実行する。そして、リーダー2は、成形部品Mがセンサタグ1の上方を通過し終えた後、解析装置3に対して、センサタグ1の反射波スペクトルのデータを送信する。
【0086】
次に、解析装置3は、リーダー2にて取得された反射波スペクトルの推移を解析し、成形部品M中の炭素繊維Maの長さを推定する(ステップS30)。
【0087】
このステップS30において、解析装置3は、移動装置4から、成形部品Mの初期位置からの移動距離を示す移動制御データ(例えば、ベルトコンベア41の時間毎の移動量に係るデータ)を取得するとともに、リーダー2から、移動装置4が成形部品Mを移動させた際に取得されたセンサタグ1の反射波スペクトルの推移のデータを取得する。そして、解析装置3は、成形部品Mの移動位置と、センサタグ1の反射波スペクトルと、を対応付ける。次に、解析装置3は、センサタグ1の反射波スペクトルの推移から、共振ピークのピークシフトが生じているときの成形部品Mの移動位置(
図8では、2mm、2.5mm、3mm)を特定し、共振ピークのピークシフトが生じている間の成形部品Mの移動距離を算出するとともに、予め記憶部30D等に記憶された共振器10Qのスロット10の幅を読み出し、これらを足しあわせる。これによって、解析装置3は、炭素繊維Maの長さを推定する。
【0088】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る検査システムUは、
金属パターンによって形成され、所定周波数の電磁波に共振する共振器10Qを有し、共振器10Qに重なるように検査対象物M中の含有物Maが配置された状態を検知するセンサタグ1と、
検査対象物Mとセンサタグ1との相対位置が異なる複数の位置で、センサタグ1に対して電磁波を送信すると共にその反射波を受信して、前記反射波の周波数スペクトルを取得するリーダー2と、
リーダー2により前記複数の位置それぞれで取得された前記周波数スペクトルに基づいて、検査対象物M中の含有物Maのサイズを推定する解析装置3と、
を備えている。
【0089】
従って、本実施形態に係る検査システムUによれば、非破壊で且つ簡易な手法で、検査対象物M中の含有物Maのサイズを検査することが可能である。加えて、本実施形態に係る検査システムUは、検査対象物M全体中の含有物Maのサイズをライン作業として検査することが可能であるため、生産現場における品質管理プロセスに好適に適用可能である。
【0090】
(変形例1)
上記実施形態に係る検査システムUでは、移動装置4による成形部品Mの移動経路中に、1個のセンサタグ1のみを配設する態様を示したが、センサタグ1は、成形部品Mの移動経路の通過領域の周囲に複数配設されるのが好ましい。
【0091】
図10は、変形例1に係る検査システムUの構成を示す図である。尚、
図10では、説明の便宜として、センサタグ1とリーダー2のみを示している。
【0092】
図10では、成形部品Mを挟むように、成形部品Mの通過領域の上下に、2個のセンサタグ1が配設された態様を示している。そして、上側のセンサタグ1は、成形部品M中の上面側の含有物Maが自身に重なるように配置された状態に感応し、下側のセンサタグ1は、成形部品M中の下面側の含有物Maが自身に重なるように配置された状態に感応する。
【0093】
変形例1に係る検査システムUでは、かかる構成によって、成形部品M中の上面側に存在する炭素繊維Maの長さを検査すると共に、成形部品M中の下面側に存在する炭素繊維Maの長さを検査することを可能としている。
【0094】
尚、ここでは、成形部品Mの移動経路の通過領域の周囲に配設するセンサタグ1の個数を2個としているが、成形部品Mの外形に沿ってその個数を適宜設定するのが好ましい。これによって、成形部品M全体中の炭素繊維Maの長さを検査することが可能となる。
【0095】
(変形例2)
上記実施形態に係る検査システムUでは、検査対象物M中の含有物Maの特定の一方向のサイズ(上記では、炭素繊維Maの長さ)のみを検査する態様を示したが、検査システムUは、検査対象物M中の含有物Maの二以上の方向のサイズの検査を実施し得るように構成されてもよい。尚、本変形例は、検査対象物M中の含有物Maが、短手方向においてもある程度のサイズを有する対象物である場合に好適に適用される。
【0096】
図11は、変形例2に係る検査システムUの構成を示す図である。
図11では、上記実施形態と同一のセンサタグ1を用いて、含有物Maの幅(含有物Maの短手方向のサイズを表す。以下同じ)を検査する態様を示している。
【0097】
変形例2に係る検査システムUでは、移動装置4が、成形部品Mを回転可能に構成され、含有物Maの長さの検査処理の後、
図11に示すように、成形部品Mを90°回転させて、含有物Maの短手方向が+X方向を向いた状態とする。そして、移動装置4は、再度、含有物Maが共振器10Q上を通過するように、成形部品Mを+X方向に移動させる。
【0098】
リーダー2は、上記実施形態と同様、移動装置4が成形部品Mを移動させている間、成形部品Mと共振器10Qとの相対位置が異なる状態毎に、センサタグ1の反射波スペクトルを取得する。
【0099】
解析装置3は、リーダー2により取得される反射波スペクトルの推移に基づいて、含有物Maの幅を推定する。このときの推定方法自体は、
図9を参照して説明した通りである。つまり、解析装置3は、スペクトル変化時の移動距離を算出し、スロット10の幅と足し合わせることで、含有物Maの幅を推定する。
図11では、成形部品Mの移動距離が2.5mmのときのみに、反射波スペクトルの共振ピークにピークシフトが生じているので、スペクトル変化時の移動距離は、0mmである。ここで、共振器10Qのスロット10の幅を1mmとすると、解析装置3は、含有物Maの幅を、1mmと推定することができる。
【0100】
以上のように、変形例2に係る検査システムUによれば、成形部品M中の含有物Maの二以上の方向のサイズを検査することが可能である。尚、これによって、含有物Maの形状を推定することも可能である。
【0101】
尚、ここでは、移動装置4は、成形部品Mを回転させる構成としているが、回転対象は、センサタグ1であってもよい。但し、この場合、センサタグ1の回転角度に合わせて、リーダー2の偏波方向も回転させるのが好ましい(例えば、送信電磁波を、±X方向の直線偏波の電磁波から、±Y方向の直線偏波の電磁波とする)。
【0102】
(変形例3)
上記実施形態に係る検査システムUでは、センサタグ1が一個の共振器10Qのみを有する態様を示したが、センサタグ1は、短手方向の幅が互いに異なる複数個の共振器10Qを有する構成とするのが好ましい。
【0103】
図12は、変形例3に係る検査システムUのセンサタグ1の構成を示す図である。
図13は、変形例3に係るセンサタグ1を用いた含有物Maのサイズ検査の処理について説明する図である。
【0104】
本変形例に係るセンサタグ1は、短手方向の幅が互いに異なる3個の共振器10Qを有している(以下では、「第1共振器10Qa」、「第2共振器10Qb」、「第3共振器10Qc」とも称する)。尚、ここでは、例えば、第1共振器10Qaの短手方向の幅(スロット10aの幅)L1aは0.1mm、第2共振器10Qbの短手方向の幅(スロット10bの幅)L1bは0.2mm、第3共振器10Qcの短手方向の幅(スロット10cの幅)L1cは0.3mmに設定されているものとする。
【0105】
第1共振器10Qa、第2共振器10Qb、及び第3共振器10Qcは、共振器10Qの短手方向が±X方向に向き、且つ、±X方向に沿って並んで配列されている。又、第1共振器10Qa、第2共振器10Qb、及び第3共振器10Qcは、互いに異なる共振周波数を有するように、長手方向の長さが互いに異なる。
【0106】
これによって、第1共振器10Qa、第2共振器10Qb、及び第3共振器10Qcそれぞれが、検査対象物M中の炭素繊維Maの長さを検査する別個のセンサタグとして機能する。そして、本変形例に係る検査システムUでは、(1)炭素繊維Maの長さが、第1共振器10Qaの幅(即ち、スロット10aの幅)以上であるか、(2)炭素繊維Maの長さが、第2共振器10Qbの幅(即ち、スロット10bの幅)以上であるか、(3)炭素繊維Maの長さが、第3共振器10Qcの幅(即ち、スロット10cの幅)以上であるか、という3つのセンサタグ情報をもとに、炭素繊維Maの長さを推定する。
【0107】
成形部品Mのサイズの検査時、移動装置4は、少しずつ成形部品Mを+X方向に移動させ、炭素繊維Maを、第1共振器10Qa、第2共振器10Qb、及び第3共振器10Qcそれぞれの上を通過させる。そして、リーダー2は、炭素繊維Maが、第1共振器10Qa、第2共振器10Qb、及び第3共振器10Qcそれぞれの上を通過するときの反射波スペクトルを取得する。
【0108】
尚、リーダー2は、第1共振器10Qa、第2共振器10Qb、及び第3共振器10Qcそれぞれと対向するように、別個の送信部21及び受信部22を有していてもよい。
【0109】
本変形例に係る検査システムUでは、第1共振器10Qa、第2共振器10Qb、及び第3共振器10Qcそれぞれの共振ピークのピーク位置で異なるサイズの検出が可能である。
【0110】
例えば、
図13の例では、炭素繊維Maが第1共振器10Qa上を通過した際には、第1共振器10Qはこれに感応して、共振ピークの位置をシフトさせているため、炭素繊維Maの長さは、第1共振器10Qaのスロット10aの幅(0.1mm)よりも大きいと分かる。又、炭素繊維Maが第2共振器10Qb上を通過した際には、第2共振器10Qbはこれに感応して、共振ピークの位置をシフトさせているため、炭素繊維Maの長さは、第2共振器10Qbのスロット10bの幅(0.2mm)よりも大きいと分かる。一方、炭素繊維Maが第3共振器10Qc上を通過した際には、第3共振器10Qcはこれに感応しておらず、共振ピークの位置をシフトさせていないため、炭素繊維Maの長さは、第2共振器10Qbのスロット10の幅(0.3mm)以下であると分かる。即ち、
図13の例では、炭素繊維Maの長さは、0.2mm~0.3mmであると推定することが可能である。
【0111】
尚、本変形例に係る検査システムUでは、第1共振器10Qa、第2共振器10Qb、及び第3共振器10Qcそれぞれの共振ピークのピーク位置の変化で、炭素繊維Maのサイズを推定することができるため、成形部品Mの位置を特定するための成形部品Mの移動距離の記憶は不要である。
【0112】
以上のように、変形例3に係る検査システムUによれば、移動装置4が汎用的なベルトコンベア41によって構成されているような場合(即ち、検査対象物Mを高精度に移動制御することが困難な場合)にも、検査対象物M中の含有物Maのサイズを精度良く検査することが可能である。
【0113】
尚、本変形例に係るセンサタグ1においては、複数の共振器10Qを、短手方向が±X方向に向き、且つ、±X方向に沿って並んで配列される。本願の発明者らの知見によると、かかる構成にあっては、隣接する共振器10Q同士が共振時に相互作用して、信号強度を増幅するように機能する(例えば、国際公開第2021/039662号を参照)。そのため、1個の共振器10Q単独で炭素繊維Maの長さを検査する場合よりも、反射波スペクトル中に表れる共振ピークのSN比を良好にすることが可能であり、高精度な検査処理にも資する。
【0114】
(変形例4)
上記実施形態では、センサタグ1に形成する共振器10Qとして、I字状のスロット共振器を示した。しかしながら、センサタグ1に形成する共振器10Qとしては、種々のパターンの共振器10Qを用いることが可能である。
【0115】
図14は、本変形例に係るセンサタグ1の構成を示す図である。又、
図14には、本変形例に係るセンサタグ1に電磁波を照射した際に得られる反射波スペクトルを示している。
図14の上図は、炭素繊維Maが共振器10Q上に存在しない場合の反射波スペクトルを示し、
図14の左図は、炭素繊維Maが共振器10Qの短手方向の幅を跨がっていない場合の反射波スペクトルを示し、
図14の右図は、炭素繊維Maが共振器10Qの短手方向の幅を跨がっている場合の反射波スペクトルを示している。
【0116】
本変形例では、センサタグ1に形成する共振器10Qとして、U字状のストリップ型の共振器10Qを用いた態様を示している。U字状のストリップ型の共振器10Qは、例えば、誘電体基板14上に形成されたU字状のストリップ導体13により構成される。尚、誘電体基板14の裏面には、信号強度を増幅する観点からベタ導体が配されてもよい。
【0117】
U字状のストリップ型共振器10Qは、典型的には、U字状のストリップ導体13の一端と他端との間の長さが、自身に照射された電磁波の略λ/2に相当する周波数の時に共振する。尚、ここでは、本変形例に係るセンサタグ1は、U字状のストリップ型共振の共振周波数に対応する電磁波が照射されたときに電磁波を反射し、それ以外の周波数の電磁波が照射されたときには当該電磁波のエネルギーを吸収又は透過させるように構成されている(
図14の反射波スペクトル中では、凸位置が共振ピーク位置に相当する)。
【0118】
図14から分かるように、本変形例に係るセンサタグ1においては、炭素繊維Maが、U字のストリップ型共振器10Qの短手方向の幅を跨がるように存在する場合(ここでは、U字の一端側及び他端側を跨いだ状態を意味する。以下同じ)、共振ピークのピーク位置にシフトが生じる。尚、ストリップ型共振器10Qにおいては、共振電流は、ストリップ導体13中を通流するため、平面視で、成形部品MがU字のストリップ導体13の一端側及び他端側と重なり合う状態となったときに、共振ピークのピーク位置にシフトが生じる。
【0119】
本変形例に係るセンサタグ1を用いた炭素繊維Maの長さの検査方法自体は、
図8を参照して説明した通りである。移動装置4にて、少しずつ成形部品M(又はセンサタグ1)を+X方向に移動させる。そして、炭素繊維Maが共振器10Qを跨がるように配置された時に、スペクトルが変化する。スペクトル変化後も、炭素繊維Maを+X方向に移動させる。そして、炭素繊維Maがスロット10を跨がらない状態となった時、反射波スペクトルは、元の反射波スペクトルに戻る。そして、解析装置3は、スペクトル変化時の移動距離を記録しておき、スロット10の幅の値と足し合わせることで、炭素繊維Maの長さを推定する。
【0120】
以上のように、変形例4に係る検査システムUによっても、非破壊で且つ簡易な手法で、検査対象物M中の含有物Maのサイズを検査することが可能である。
【0121】
(変形例5)
センサタグ1に形成する共振器10Qとしては、台形や三角形などの幅が不均一な構造を有する共振器10Qを採用してもよい。
【0122】
図15Aは、本変形例に係る共振器10Qの構成を示す図である。
図15Bは、
図15Aに示す共振器10Qを用いた炭素繊維Maの長さの検査方法の一例を示す図である。
図15Cは、
図15Aに示す共振器10Qを用いた炭素繊維Maの長さの検査方法の他の一例を示す図である。
【0123】
本変形例に係る共振器10Qは、V字状のストリップ型共振器であって、共振器10Qの短手方向の幅が不均一な構造を呈している。
【0124】
本変形例に係る共振器10Qを用いた検査システムUにおいては、例えば、
図15Bのように、共振器10Qは、長手方向を+X方向(検査対象物Mの移動方向)に向けた状態で配設され、検査対象物Mは、炭素繊維Maの長手方向を+X方向(検査対象物Mの移動方向)と直交する方向(即ち、±Y方向)に向けて移動装置4に移動させられる構成となっている。
【0125】
図14を参照して上記したように、炭素繊維Maが共振器10Qの幅を跨がるように置かれた時に、スペクトルが変化する。検査対象物Mが+X方向に移動した際、炭素繊維Maが共振器10Qを跨ぐ位置によって、共振電流が通流する長さが変化するため、反射波スペクトル中において共振ピーク(共振周波数)が表出する位置も変わることになる。そのため、炭素繊維Maが共振器10Qを跨いだ位置の幅の長さから、炭素繊維Maの長さに関する情報を取得できる。
【0126】
又、本変形例に係る共振器10Qを用いた炭素繊維Maの長さの検査は、
図15Cのような方法で実施することも可能である。
図15Cでは、共振器10Qは、短手方向を+X方向(検査対象物Mの移動方向)に向けた状態で配設され、検査対象物Mは、炭素繊維Maの長手方向を+X方向(検査対象物Mの移動方向)に向けて移動装置4に移動させられる構成となっている。そして、この検査方法では、移動装置4は、共振器10Qの±Y方向の位置をずらして、複数回に亘って(
図15Cでは、±Y方向の位置がP1、P2、P3の3箇所の位置で)、検査対象物M(炭素繊維Ma)を+X方向に沿って共振器10Q上を通過させる。尚、
【0127】
この際、同一のセンサタグ1内で共振器10Qの幅が異なるため、検査対象物Mを+X方向に移動させた際、共振器10Qを跨ぐ±Y方向の位置によって、スペクトルが変化する場合と変化しない場合とが観察されることになる。尚、
図15Cでは、±Y方向の位置がP1及びP2のときには、スペクトルが変化し、±Y方向の位置がP3のときには、スペクトルが変化しない態様を示しており、これにより、炭素繊維Maの長さは、±Y方向が位置P2における共振器10Qの幅以上であり、且つ、±Y方向が位置P3における共振器10Qの幅未満であると推定できる。つまり、
図15Cの方法では、共振器10Qの幅を跨ぐ移動を複数回実施することで、炭素繊維Maの長さを、〇〇mm以上で且つ××mm以下のように、推定することが可能である。
【0128】
尚、
図15A~
図15Cでは、共振器10Qとして、V字状のストリップ型共振器を用いた態様を示したが、本変形例に係る共振器10Qとしては、スロット型共振器を用いることも可能である。
【0129】
図16Aは、本変形例の他の態様に係る共振器10Qの構成を示す図である。
図16Bは、
図16Aに示す共振器10Qを用いた炭素繊維Maの長さの検査方法の一例を示す図である。
図16Cは、
図16Aに示す共振器10Qを用いた炭素繊維Maの長さの検査方法の他の一例を示す図である。
【0130】
【0131】
以上のように、変形例5に係る検査システムUによれば、1個の共振器10Qのみで、検査対象物Mの含有物Maのサイズを検査することが可能である。
【0132】
尚、本変形例に係る検査システムUでは、共振ピークのピーク位置の変化態様から、検査対象物Mの含有物Maのサイズを推定することができるため、検査対象物Mの位置を特定するための検査対象物Mの移動距離の記憶を省略することも可能である。
【0133】
(変形例6)
本開示に係るセンサタグ1としては、共振器10Qの短手方向の幅を変更可能な共振器10Qを採用してもよい。
【0134】
図17は、本変形例に係るセンサタグ1の構成を示す図である。尚、
図17では、センサタグ1を平面視した図を示している。
【0135】
本変形例に係るセンサタグ1は、同一平面内に隣接して配された二枚の金属板11a、11bを有し、共振器10Q(ここでは、スロット型共振器)は、金属板11aの縁部と金属板11bの縁部とを突き合わせた際に、その間に形成されるスロット10によって構成されている。そして、本変形例に係るセンサタグ1において、金属板11aと金属板11bの少なくとも一方は、金属板11aの縁部と金属板11bの縁部とを突き合わせる方向に沿って移動可能に構成される。これによって、スロット10の短手方向の幅が可変となっている。
【0136】
尚、
図17の左図は、金属板11aと金属板11bの間に、短手方向の幅がLt1のスロット10が形成された態様を示し、
図17の右図は、金属板11aと金属板11bの間に、短手方向の幅がLt2のスロット10が形成された態様を示している。
【0137】
上記したように、センサタグ1は、含有物Maがスロット10を跨いだ状態を検知するように構成されるため、スロット10の短手方向の幅は、検査対象物M中の含有物Maのサイズを推定する際の基準となる。この点、本変形例に係るセンサタグ1のように、スロット10の短手方向の幅を変更可能に構成することで、かかる基準を変更することが可能となる。これによって、例えば、移動装置4の移動距離を記憶することなく、1個のセンサタグ1で、検査対象物M中の含有物Maのサイズが基準値以上であるか否か等を検査することが可能となる。
【0138】
尚、
図17では、共振器10Qがスロット型共振器である場合にスロット10の短手方向の幅を変更可能とする構成を示したが、共振器10Qがストリップ型共振器である場合にも、移動可能な二枚の金属板11a、11bにて、共振器10Qの短手方向の幅を変更することが可能である。
【0139】
(変形例7)
本開示に係る検査システムUでは、インク吐出部5を用いて、共振器10Q(ここでは、スロット型共振器)の短手方向の幅を変更可能としてもよい。
【0140】
図18は、本変形例に係る検査システムUの構成を示す図である。
【0141】
本開示に係る検査システムUは、センサタグ1に対向して配設されたインク吐出部5を更に備える。そして、インク吐出部5から共振器10Qを形成する導体領域又はスロット領域に対して導電性インク5Tを吐出することで、共振器10Qの短手方向の幅を設定変更する。
【0142】
本変形例に係る検査システムUによっても、変形例6と同様に、共振器10Qの短手方向の幅を変更することが可能である。
【0143】
(変形例8)
本開示に係る検査システムUでは、移動装置4にて成形部品Mを移動させる構成に代えて、移動装置4にてセンサタグ1を移動させる構成であってもよい。
【0144】
図19は、本変形例に係る移動装置4の構成を示す図である。
【0145】
本変形例に係る移動装置4は、例えば、センサタグ1及びリーダー2を一体的に把持するロボットハンド42によって構成される。そして、移動装置4は、ロボットハンド42にて、成形部品M(即ち、炭素繊維Ma)とセンサタグ1(即ち、共振器10Q)とが対向した状態で、センサタグ1及びリーダー2を+X方向に移動させる。
【0146】
この際、成形部品Mは、例えば、所定位置に固定されたままの状態としてもよい。
【0147】
本変形例に係る検査システムUによれば、成形部品Mを所定位置に固定した状態で、成形部品M中の炭素繊維Maの長さの検査が可能である。そのため、本変形例に係る検査システムUは、成形部品Mが大きな構造物である場合等に有用である。
【0148】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、検査システムUを適用する検査対象物Mの一例として、炭素繊維を含有する樹脂材料を示した。しかしながら、検査システムUは、任意の検査対象物に適用可能である。検査対象物Mとしては、例えば、主成分がセラミックで構成された誘電体材料であってもよい。又、含有物Maとしては、例えば、カーボンナノチューブや導電性高分子等の線状又は繊維状の導体であってもよい。
【0149】
又、その他、含有物Maとしては、誘電体材料であってよい。含有物Maが誘電体材料である場合には、含有物Maが導体である場合のピークシフトの原理とは異なり、共振器10Qは、含有物Maが自身に重なるように配置されたときの、自身の周囲の誘電率の変化から共振ピークのピーク位置を変化させる。検査システムUは、この場合にも、移動装置4により、検査対象物Mが移動させられたときに得られる反射波スペクトルの推移から、含有物Maのサイズを把握することが可能である。
【0150】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本開示に係る検査システムによれば、非破壊で且つ簡易な手法で、検査対象物中の含有物のサイズを検査することが可能である。
【符号の説明】
【0152】
U 検査システム
1 センサタグ
10 スロット
10Q 共振器
11 金属材料
11a、11b 金属板
13 ストリップ導体
14 誘電体基板
2 リーダー
21 送信部
22 受信部
23 制御部
3 解析装置
30 演算部
30D 記憶部
4 移動装置
41 ベルトコンベア
42 ロボットハンド
5 インク吐出部
M 検査対象物(成形部品)
Ma 含有物(炭素繊維)