(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174500
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】操船システムおよび船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 25/42 20060101AFI20221116BHJP
B63H 20/00 20060101ALI20221116BHJP
B63H 21/21 20060101ALI20221116BHJP
B63H 25/24 20060101ALI20221116BHJP
B63H 20/20 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B63H25/42 B
B63H20/00 803
B63H21/21
B63H25/24 Z
B63H25/42 G
B63H20/20 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080339
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】井上 宏
(57)【要約】
【課題】船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われてから船舶の回頭方向が逆転するまでの時間を短縮することが可能な操船システムおよび船舶を提供する。
【解決手段】この操船システム100では、第2制御部42(制御部)は、船舶110が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、ジョイスティック33(操作部)に対して船舶110を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、推進力発生部10による推進力の方向を逆方向に変更する推進力逆方向制御を行うように構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶を操縦するための操作部と、
前記操作部に対するユーザの操作に基づいて、推進力発生部による推進力および転舵機構部による転舵を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、前記操作部に対して前記船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、前記推進力発生部による推進力の方向を逆方向に変更する推進力逆方向制御を行うように構成されている、操船システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、前記操作部に対して前記船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、前記転舵機構部による転舵角を維持した状態で前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項1に記載の操船システム。
【請求項3】
前記操作部は、前記船舶を右回りに回頭するために中立位置から右回りに回動されるとともに、前記船舶を左回りに回頭するために前記中立位置から左回りに回動されるジョイスティックであり、
前記制御部は、前記ジョイスティックが右回りまたは左回りの一方に回動され前記船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、前記ジョイスティックが右回りまたは左回りの他方に回動された場合に、前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項1または2に記載の操船システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態において、前記ジョイスティックが前記中立位置に戻された場合に、前記転舵機構部による転舵角が左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方から基準位置に戻るように前記転舵機構部を制御するとともに、前記転舵機構部による転舵角が前記基準位置に戻る前に、前記ジョイスティックが右回りおよび左回りの他方に回動された場合に、前記転舵機構部による転舵角を左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方に戻した状態で、前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項3に記載の操船システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態に所定の第1時間よりも短い時間で切り替わった場合に、前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項4に記載の操船システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態に切り換わる途中で前記ジョイスティックが前記中立位置に位置する時間が所定の第2時間よりも短い場合に、前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項4に記載の操船システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、前記操作部に対して前記船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、前記操作部に対する操作量の大きさに対する前記推進力発生部による推進力の大きさが略同じになるように前記推進力発生部による推進力を調整しながら、前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項8】
前記操作部は、前記船舶を右回りに回頭するために中立位置から右回りに回動されるとともに、前記船舶を左回りに回頭するために前記中立位置から左回りに回動されるジョイスティックであり、
前記制御部は、前記ジョイスティックの回動量の大きさに応じて前記船舶を回頭するための前記推進力発生部による推進力の大きさを制御するように構成されており、前記ジョイスティックが右回りまたは左回りの一方に回動され前記船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、前記ジョイスティックに対して前記船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、前記ジョイスティックの回動量の大きさに対する前記推進力発生部による推進力の大きさが略同じになるように前記推進力発生部による推進力を調整しながら、前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項7に記載の操船システム。
【請求項9】
前記制御部は、モータにより駆動する電動の推進器である前記推進力発生部に対して前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項10】
前記操作部に対して前記船舶を右回りまたは左回りに回頭させるための操作が行われた場合の前記転舵機構部による転舵角は、略60度以上略80度以下に設定されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記操作部に対するユーザの操作に基づいて、前記船舶において船体に1つのみが取り付けられた船外機に設けられる前記推進力発生部に対して前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記推進力発生部による推進力の方向が逆方向に変更された状態において、前記操作部に対して前記船舶を右回りおよび左回りの一方に回頭させるための操作が行われた場合に、再び前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項13】
船体と、
前記船体に取り付けられる船舶推進装置と、を備える船舶であって、
前記船舶推進装置は、
前記船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部と、
前記推進力発生部を転舵する転舵機構部と、を備え、
前記船体は、
前記船舶を操縦するための操作部と、
前記操作部に対するユーザの操作に基づいて、前記推進力発生部による推進力および前記転舵機構部による転舵を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、前記操作部が前記船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、前記推進力発生部による方向を逆方向に変更する推進力逆方向制御を行うように構成されている、船舶。
【請求項14】
前記制御部は、前記船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、前記操作部に対して前記船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、前記転舵機構部による転舵角を維持した状態で前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項13に記載の船舶。
【請求項15】
前記操作部は、前記船舶を右回りに回頭するために中立位置から右回りに回動されるとともに、前記船舶を左回りに回頭するために前記中立位置から左回りに回動されるジョイスティックであり、
前記制御部は、前記ジョイスティックが右回りまたは左回りの一方に回動され前記船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、前記ジョイスティックが右回りまたは左回りの他方に回動された場合に、前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項13または14に記載の船舶。
【請求項16】
前記制御部は、前記ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態において、前記ジョイスティックが前記中立位置に戻された場合に、前記転舵機構部による転舵角が左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方から基準位置に戻るように前記転舵機構部を制御するとともに、前記転舵機構部による転舵角が前記基準位置に戻る前に、前記ジョイスティックが右回りおよび左回りの他方に回動された場合に、前記転舵機構部による転舵角を左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方に戻した状態で、前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項15に記載の操船システム。
【請求項17】
前記制御部は、前記ジョイスティックが前記船舶を右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態に所定の第1時間よりも短い時間で切り替わった場合に、前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項16に記載の船舶。
【請求項18】
前記制御部は、前記ジョイスティックが前記船舶を右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態に切り換わる途中で前記ジョイスティックが前記中立位置に位置する時間が所定の第2時間よりも短い場合に、前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項16に記載の船舶。
【請求項19】
前記制御部は、前記船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、前記操作部に対して前記船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、前記操作部に対する操作量の大きさに対する前記推進力発生部による推進力の大きさが略同じになるように前記推進力発生部による推進力を調整しながら、前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項13~18のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項20】
前記操作部は、前記船舶を右回りに回頭するために中立位置から右回りに回動されるとともに、前記船舶を左回りに回頭するために前記中立位置から左回りに回動されるジョイスティックであり、
前記制御部は、前記ジョイスティックの回動量の大きさに応じて前記船舶を回頭するための前記推進力発生部による推進力の大きさを制御するように構成されており、前記ジョイスティックが右回りまたは左回りの一方に回動され前記船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、前記ジョイスティックに対して前記船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、前記ジョイスティックの回動量の大きさに対する前記推進力発生部による推進力の大きさが略同じになるように前記推進力発生部による推進力を調整しながら、前記推進力逆方向制御を行うように構成されている、請求項19に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操船システムおよび船舶に関し、特に、操作部に対するユーザの操作に基づいて船舶を回頭させることが可能な操船システムおよび船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作部に対するユーザの操作に基づいて船舶を回頭させることが可能な船舶が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、船舶を操縦するためのジョイスティック(操作部)と、ジョイスティックに対するユーザの操作に基づいて、推進力発生部による推進力の発生および転舵機構部による転舵を制御する船体ECU(Electronic Control Unit)と、を備える船舶が開示されている。上記特許文献1に記載の船舶では、ジョイスティックが中立位置から右回りに回動された場合に、船体ECUは、推進力発生部を基準位置(推進力発生部による推進力の方向が船舶の前後方向と平行になる位置)から左舷方向に所定の転舵角だけ転舵させた状態で、推進力発生部による推進力を発生させるように、転舵機構部および推進力発生部を制御する。これにより、船舶が右回りに回頭される。同様に、ジョイスティックが中立位置から左回りに回動された場合に、船体ECUは、推進力発生部を基準位置に対して右舷方向に所定の転舵角だけ転舵させた状態で、推進力発生部による推進力を発生させるように、転舵機構部および推進力発生部を制御する。これにより、船舶が左回りに回頭される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の船舶では、船舶が右回りに回頭している状態(ジョイスティックが中立位置から右回りに回動している状態)において、船舶を左回りに回頭させるための操作が行われた場合(ジョイスティックが中立位置から左回りへ回動された場合)、推進力発生部による推進力を一旦停止させた後、推進力発生部を基準位置に対して左舷方向の回動位置から右舷方向の回動位置まで転舵させたうえで、推進力発生部による推進力を再度発生させる必要がある。なお、船舶が左回りに回頭している状態において、船舶を右回りに回頭させるための操作が行われた場合も同様である。すなわち、上記特許文献1に記載の船舶では、船舶の回頭方向を逆転させる際に、推進力発生部が基準位置に対して右舷方向の回動位置および左舷方向の回動位置の一方から他方に転舵するための(たとえば、数秒の)時間が必要となる。このため、船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われてから船舶の回頭方向が逆転するまでの時間を短縮したいという要望がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われてから船舶の回頭方向が逆転するまでの時間を短縮することが可能な操船システムおよび船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による操船システムは、船舶を操縦するための操作部と、操作部に対するユーザの操作に基づいて、推進力発生部による推進力および転舵機構部による転舵を制御する制御部と、を備え、制御部は、船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、操作部に対して船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、推進力発生部による推進力の方向を逆方向に変更する推進力逆方向制御を行うように構成されている。
【0008】
この発明の第1の局面による操船システムでは、上記のように、制御部は、船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、操作部に対して船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、推進力発生部による推進力の方向を逆方向に変更する推進力逆方向制御を行うように構成されている。これにより、船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、推進力発生部による推進力の方向を逆方向に変更することによって、推進力発生部を基準位置に対して右舷方向の回動位置および左舷方向の回動位置の一方から他方に転舵しなくても、船舶の回頭方向を逆転させることができる。すなわち、船舶の回頭方向を逆転させる際に、推進力発生部が基準位置に対して右舷方向の回動位置および左舷方向の回動位置の一方から他方に転舵するための(たとえば、数秒の)時間が不要となる。その結果、転舵が不要な分、船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われてから船舶の回頭方向が逆転するまでの時間を短縮することができる。
【0009】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、操作部に対して船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、転舵機構部による転舵角を維持した状態で推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、転舵機構部による転舵角を維持した状態で推進力逆方向制御を行うことによって、転舵機構部による転舵角が変化した状態で推進力逆方向制御が行われる場合と比較して、推進力発生部による推進力の方向を逆方向に変更した後の推進力発生部による推進力の制御が複雑になるのを抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、操作部は、船舶を右回りに回頭するために中立位置から右回りに回動されるとともに、船舶を左回りに回頭するために中立位置から左回りに回動されるジョイスティックであり、制御部は、ジョイスティックが右回りまたは左回りの一方に回動され船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、ジョイスティックが右回りまたは左回りの他方に回動された場合に、推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ジョイスティックに対する操作方向(回動方向)と、船舶を回頭する方向とが等しくなるので、ジョイスティック(操作部)に対する船舶の回頭方向を逆転させるための操作を直感的に分かり易い状態で行うことができる。
【0011】
この場合、好ましくは、制御部は、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態において、ジョイスティックが中立位置に戻された場合に、転舵機構部による転舵角が左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方から基準位置に戻るように転舵機構部を制御するとともに、転舵機構部による転舵角が基準位置に戻る前に、ジョイスティックが右回りおよび左回りの他方に回動された場合に、転舵機構部による転舵角を左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方に戻した状態で、推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態へ変化した場合(船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われた場合)の制御(推進力逆方向制御)を、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から中立位置へ戻った場合(船舶を停止させるための操作が行われた場合)の制御と区別して行うことができる。なお、基準位置は、推進力発生部による推進力の方向が船舶の前後方向と平行になる位置である。
【0012】
上記制御部が転舵機構部による転舵角が基準位置に戻る前にジョイスティックが右回りおよび左回りの他方に回動された場合に転舵機構部による転舵角を左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方に戻した状態で推進力逆方向制御を行う構成において、好ましくは、制御部は、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態に所定の第1時間よりも短い時間で切り替わった場合に、推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態へ変化した場合(船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われた場合)と、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から中立位置へ戻った場合(船舶を停止させるための操作が行われた場合)とを、容易に区別することができる。その結果、船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われた場合に船舶を停止させる制御が行われてしまうのを防止することができるとともに、船舶を停止させるための操作が行われた場合に船舶の回頭方向を逆転させるための制御が行われてしまうのを防止することができる。
【0013】
上記制御部が転舵機構部による転舵角が基準位置に戻る前にジョイスティックが右回りおよび左回りの他方に回動された場合に転舵機構部による転舵角を左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方に戻した状態で推進力逆方向制御を行う構成において、好ましくは、制御部は、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態に切り換わる途中でジョイスティックが中立位置に位置する時間が所定の第2時間よりも短い場合に、推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態へ変化した場合(船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われた場合)と、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から中立位置へ戻った場合(船舶を停止させるための操作が行われた場合)とを、容易に区別することができる。その結果、船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われた場合に船舶を停止させる制御が行われてしまうのを防止することができるとともに、船舶を停止させるための操作が行われた場合に船舶の回頭方向を逆転させるための制御が行われてしまうのを防止することができる。
【0014】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、操作部に対して船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、操作部に対する操作量の大きさに対する推進力発生部による推進力の大きさが略同じになるように推進力発生部による推進力を調整しながら、推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、操作部に対する操作量の大きさに対する推進力発生部による推進力の大きさが推進力が発生する方向によって異なる場合でも、操作部に対する操作量の大きさに対する推進力発生部による推進力の大きさが異ならないように推進力を調整して、船舶の回頭方向を逆転させることができる。なお、一般的に、船舶を前進させる際の推進力発生部による推進力の大きさと、船舶を後進させる際の推進力発生部による推進力の大きさとを異ならせるため、操作部に対する同一の操作量の大きさに対して、推進力が推進力発生部において前向きに発生している場合の推進力の大きさと、推進力が推進力発生部において後向きに発生している場合の推進力の大きさとは、互いに異なっている。
【0015】
この場合、好ましくは、操作部は、船舶を右回りに回頭するために中立位置から右回りに回動されるとともに、船舶を左回りに回頭するために中立位置から左回りに回動されるジョイスティックであり、制御部は、ジョイスティックの回動量の大きさに応じて船舶を回頭するための進力発生部による推進力の大きさを制御するように構成されており、ジョイスティックが右回りまたは左回りの一方に回動され船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、ジョイスティックに対して船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、ジョイスティックの回動量の大きさに対する推進力発生部による推進力の大きさが略同じになるように推進力発生部による推進力を調整しながら、推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ジョイスティックに対する操作方向(回動方向)と、船舶を回頭する方向とが等しくなるので、ジョイスティック(操作部)に対する船舶の回頭方向を逆転させるための操作を直感的に分かり易い状態で行うことができる。また、ジョイスティック(操作部)の回動量の大きさに対する推進力発生部による推進力の大きさが推進力が発生する方向によって異なる場合でも、ジョイスティック(操作部)の回動量の大きさに対する推進力発生部による推進力の大きさが異ならないように推進力を調整して、船舶の回頭方向を逆転させることができる。
【0016】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、モータにより駆動する電動の推進器である推進力発生部に対して推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、電動により駆動する船舶において、船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われてから船舶の回頭方向が逆転するまでの時間を短縮することができる。また、モータは、エンジンとは異なり、CO2を直接排出することがないので、SDGs(Sustainable Development Goals)の観点から好ましい装置構成にすることができる。
【0017】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、操作部に対して船舶を右回りまたは左回りに回頭させるための操作が行われた場合の転舵機構部による転舵角は、略60度以上略80度以下に設定されている。このように構成すれば、転舵機構部による転舵角が略60度以上略80度以下に設定されていることによって、船舶を回頭させる際の船舶の回転半径を比較的小さくすることができる。なお、本願発明者は、船舶を回頭させる際に、転舵機構部による転舵角が略60度以上略80度以下の場合に、船舶の回転半径が比較的小さくなることを実験により確認済みである。
【0018】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、操作部に対するユーザの操作に基づいて、船舶において船体に1つのみが取り付けられた船外機に設けられる推進力発生部に対して推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、船体に1機の船外機が取り付けられた船舶(1機掛けの船外機艇)において、船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われてから船舶の回頭方向が逆転するまでの時間を短縮することができる。
【0019】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、推進力発生部による推進力の方向が逆方向に変更された状態において、操作部に対して船舶を右回りおよび左回りの一方に回頭させるための操作が行われた場合に、再び推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、船舶の回頭方向を逆転させるための操作が再び行われた場合でも、船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われてから船舶の回頭方向が逆転するまでの時間を短縮しながら、再び船舶の回頭方向を逆転させることができる。
【0020】
また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面による船舶は、船体と、船体に取り付けられる船舶推進装置と、を備える船舶であって、船舶推進装置は、船舶を推進するための推進力を発生する推進力発生部と、推進力発生部を転舵する転舵機構部と、を備え、船体は、船舶を操縦するための操作部と、操作部に対するユーザの操作に基づいて、推進力発生部による推進力および転舵機構部による転舵を制御する制御部と、を備え、制御部は、船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、操作部に対して船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、推進力発生部による推進力の方向を逆方向に変更する推進力逆方向制御を行うように構成されている。
【0021】
この発明の第2の局面による船舶では、上記のように、上記第1の局面による操船システムと同様に、制御部は、船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、操作部に対して船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、推進力発生部による推進力の方向を逆方向に変更する推進力逆方向制御を行うように構成されている。これにより、上記第1の局面による操船システムと同様に、船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、推進力発生部による推進力の方向を逆方向に変更することによって、推進力発生部を基準位置に対して右舷方向の回動位置および左舷方向の回動位置の一方から他方に転舵しなくても、船舶の回頭方向を逆転させることができる。その結果、上記第1の局面による操船システムと同様に、転舵が不要な分、船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われてから船舶の回頭方向が逆転するまでの時間を短縮することができる。
【0022】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、制御部は、船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、操作部に対して船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、転舵機構部による転舵角を維持した状態で推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、転舵機構部による転舵角を維持した状態で推進力逆方向制御を行うことによって、転舵機構部による転舵角が変化した状態で推進力逆方向制御が行われる場合と比較して、推進力発生部による推進力の方向を逆方向に変更した後の推進力発生部による推進力の制御が複雑になるのを抑制することができる。
【0023】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、操作部は、船舶を右回りに回頭するために中立位置から右回りに回動されるとともに、船舶を左回りに回頭するために中立位置から左回りに回動されるジョイスティックであり、制御部は、ジョイスティックが右回りまたは左回りの一方に回動され船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、ジョイスティックが右回りまたは左回りの他方に回動された場合に、推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、ジョイスティックに対する操作方向(回動方向)と、船舶を回頭する方向とが等しくなるので、ジョイスティック(操作部)に対する船舶の回頭方向を逆転させるための操作を直感的に分かり易い状態で行うことができる。
【0024】
この場合、好ましくは、制御部は、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態において、ジョイスティックが中立位置に戻された場合に、転舵機構部による転舵角が左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方から基準位置に戻るように転舵機構部を制御するとともに、転舵機構部による転舵角が基準位置に戻る前に、ジョイスティックが右回りおよび左回りの他方に回動された場合に、転舵機構部による転舵角を左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方に戻した状態で、推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態へ変化した場合(船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われた場合)の制御(推進力逆方向制御)を、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から中立位置へ戻った場合(船舶を停止させるための操作が行われた場合)の制御と区別して行うことができる。
【0025】
上記制御部が転舵機構部による転舵角が基準位置に戻る前にジョイスティックが右回りおよび左回りの他方に回動された場合に転舵機構部による転舵角を左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方に戻した状態で推進力逆方向制御を行う構成において、好ましくは、制御部は、ジョイスティックが船舶を右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態に所定の第1時間よりも短い時間で切り替わった場合に、推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態へ変化した場合(船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われた場合)と、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から中立位置へ戻った場合(船舶を停止させるための操作が行われた場合)とを、容易に区別することができる。その結果、上記第1の局面による操船システムと同様に、船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われた場合に船舶を停止させる制御が行われてしまうのを防止することができるとともに、船舶を停止させるための操作が行われた場合に船舶の回頭方向を逆転させるための制御が行われてしまうのを防止することができる。
【0026】
上記制御部が転舵機構部による転舵角が基準位置に戻る前にジョイスティックが右回りおよび左回りの他方に回動された場合に転舵機構部による転舵角を左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方に戻した状態で推進力逆方向制御を行う構成において、好ましくは、制御部は、ジョイスティックが船舶を右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態に切り換わる途中でジョイスティックが中立位置に位置する時間が所定の第2時間よりも短い場合に、推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態へ変化した場合(船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われた場合)と、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から中立位置へ戻った場合(船舶を停止させるための操作が行われた場合)とを、容易に区別することができる。その結果、上記第1の局面による操船システムと同様に、船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われた場合に船舶を停止させる制御が行われてしまうのを防止することができるとともに、船舶を停止させるための操作が行われた場合に船舶の回頭方向を逆転させるための制御が行われてしまうのを防止することができる。
【0027】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、制御部は、船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、操作部に対して船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、操作部に対する操作量の大きさに対する前進力発生部による推進力の大きさが略同じになるように推進力発生部による推進力を調整しながら、推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、操作部に対する操作量の大きさに対する推進力発生部による推進力の大きさが推進力が発生する方向によって異なる場合でも、操作部に対する操作量の大きさに対する推進力発生部による推進力の大きさが異ならないように推進力を調整して、船舶の回頭方向を逆転させることができる。
【0028】
この場合、好ましくは、操作部は、船舶を右回りに回頭するために中立位置から右回りに回動されるとともに、船舶を左回りに回頭するために中立位置から左回りに回動されるジョイスティックであり、制御部は、ジョイスティックの回動量の大きさに応じて船舶を回頭するための進力発生部による推進力の大きさを制御するように構成されており、ジョイスティックが右回りまたは左回りの一方に回動され船舶が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、ジョイスティックに対して船舶を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、ジョイスティックの回動量の大きさに対する推進力発生部による推進力の大きさが略同じになるように推進力発生部による推進力を調整しながら、推進力逆方向制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による操船システムと同様に、ジョイスティックに対する操作方向(回動方向)と、船舶を回頭する方向とが等しくなるので、ジョイスティック(操作部)に対する船舶の回頭方向を逆転させるための操作を直感的に分かり易い状態で行うことができる。また、上記第1の局面による操船システムと同様に、ジョイスティック(操作部)の回動量の大きさに対する推進力発生部による推進力の大きさが推進力が発生する方向によって異なる場合でも、ジョイスティック(操作部)の回動量の大きさに対する推進力発生部による推進力の大きさが異ならないように推進力を調整して、船舶の回頭方向を逆転させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、上記のように、船舶の回頭方向を逆転させるための操作が行われてから船舶の回頭方向が逆転するまでの時間を短縮することが可能な操船システムおよび船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態による船舶を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態による船舶推進装置を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態による操船システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態による船舶推進装置の転舵機構部の構成を示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態による船舶を操縦するためのジョイスティックを示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態による船舶を回頭させる際のジョイスティックの状態および船舶推進装置の状態を説明するための1つ目の図である。
【
図7】本発明の一実施形態による船舶を回頭させる際のジョイスティックの状態および船舶推進装置の状態を説明するための2つ目の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1~
図7を参照して、本発明の一実施形態による操船システム100および船舶110の構成について説明する。操船システム100は、船舶110を操縦(操船)するためのシステムである。操船システム100は、船舶110に設けられている。なお、図中のFWDおよびBWDは、それぞれ、船舶110の前方および後方を示している。
【0033】
(船舶の全体構成)
図1に示すように、船舶110(操船システム100(
図3参照))は、船体111と、船外機112と、を備える。船外機112は、船体111の後方に取り付けられている。また、船外機112は、船舶110において船体111に1つのみが取り付けられている。すなわち、船舶110は、1機掛けの船外機艇である。船舶110は、比較的小型の船舶である。船舶110は、たとえば、運河や湖沼等において遊覧等に用いられる船舶である。なお、船外機112は、特許請求の範囲の「船舶推進装置」の一例である。
【0034】
図2(A)に示すように、船外機112は、船舶110(
図1参照)を推進するための推進力F(
図1参照)を発生する推進力発生部10と、推進力発生部10を転舵する転舵機構部20と、を備える。なお、「推進力発生部10を転舵する」とは、船外機112における(ひいては船舶110における)推進力発生部10の向きを変更することを意味する。
【0035】
推進力発生部10は、プロペラ11を含む。また、
図3に示すように、推進力発生部10は、モータ12を含む。推進力発生部10は、モータ12の回転に伴ってプロペラ11(
図2(A)参照)が回転することにより、推進力F(
図1参照)を発生させる。すなわち、推進力発生部10は、モータ12により駆動する電動の推進器である。なお、プロペラ11が正回転している場合は、推進力Fの方向が推進力発生部10において前向きとなる。また、プロペラ11が逆回転している場合は、推進力Fの方向が推進力発生部10において後向きとなる。
【0036】
図4に示すように、転舵機構部20は、モータ21と、推進力発生部10(
図2(A)参照)に固定された転舵軸22と、モータ21の回転力を転舵軸22に伝達するための複数のギア部材23と、を含む。転舵軸22は、シャフト状の部材である。モータ21は、ブラシ付き直流モータである。複数のギア部材23は、平歯車23aと、平歯車23bと、平歯車23cと、平歯車23dと、ウォームギア23eと、ウォームホイール23fと、を含む。
【0037】
平歯車23aは、モータ21の回転軸と共に同軸で回転するように、モータ21の回転軸に固定されている。平歯車23bは、平歯車23aと噛合されている。平歯車23cは、平歯車23bと共に同軸で回転するように、平歯車23bに固定されている。平歯車23dは、平歯車23cと噛合されている。ウォームギア23eは、平歯車23dと共に回転するように、平歯車23dに固定されている。ウォームホイール23fは、ウォームギア23eと噛合されている。ウォームホイール23fは、転舵軸22と共に転舵中心軸A1を中心に同軸で回転するように、転舵軸22に固定されている。
【0038】
そして、転舵機構部20は、モータ21の回転に伴って、転舵軸22が回転することにより、推進力発生部10(
図2(A)参照)を転舵する。なお、転舵機構部20では、モータ21の回転は、複数のギア部材23によって、(たとえば、略1/400の減速比で)減速して転舵軸22に伝達されるように構成されている。
【0039】
これにより、
図2(B)に示すように、転舵機構部20は、推進力発生部10を、基準位置P10(
図2(A)の状態)から右舷方向に転舵(右回りに回動)することができる。また、
図2(C)に示すように、転舵機構部20は、推進力発生部10を、基準位置P10から左舷方向に転舵(左回りに回動)することができる。なお、
図1に示すように、基準位置P10は、推進力発生部10による推進力Fの方向が船舶110の前後方向と平行になる位置である。
【0040】
これにより、推進力発生部10による推進力Fの方向を船体111(
図1参照)に対して(推進力発生部10が転舵可能な所定の角度範囲内で)所望の方向に変更することができる。なお、
図1では、推進力発生部10が基準位置P10に位置する状態、および、推進力発生部10が基準位置P10から転舵角θだけ左舷方向に転舵している状態かつ推進力Fの方向が推進力発生部10において前向きの状態を、それぞれ、破線および実線で示している。
【0041】
図3に示すように、船体111は、船舶110(
図1参照)を操縦するための操作部30を備える。操作部30は、ユーザ(船舶110の使用者)の操作を受け付けるように構成されている。操作部30は、リモートコントローラ31と、ステアリングホイール32と、ジョイスティック33と、を含む。なお、ジョイスティック33は、特許請求の範囲の「操作部」の一例である。
【0042】
リモートコントローラ31には、レバーが設けられており、レバーが操作されることにより、推進力発生部10による推進力F(
図1参照)の大きさ(プロペラ11(
図1参照)の回転数)、および、推進力発生部10における推進力Fの向き(プロペラ11の回転方向)が調整される。また、ステアリングホイール32は、回動可能に構成されており、ステアリングホイール32が回動されることにより、転舵機構部20による推進力発生部10による転舵(推進力発生部10の向き)が調整される。これにより、リモートコントローラ31に対する操作とステアリングホイール32に対する操作との組み合わせにより、船舶110(
図1参照)の並進移動(船体111(
図1参照)の向きを維持したまま、前進、後進、横移動、斜め移動)や旋回等を行うことができる。
【0043】
図5に示すように、ジョイスティック33は、台座33aと、レバー部33bと、を含む。レバー部33bは、台座33aに対して傾倒および回動が可能なように取り付けられている。レバー部33bは、ユーザにより操作されていない状態では、中立位置P20に自動的に復帰するように、ばね等の付勢部材により付勢されている。なお、中立位置P20では、レバー部33bが直立した状態かつ回動されていない状態となっている。
【0044】
ジョイスティック33に対する操作は、レバー部33bを傾倒する操作と、レバー部33bを傾倒かつ回動する操作と、レバー部33bを回動する操作との3つに大別される。
【0045】
レバー部33bを傾倒する操作は、船舶110(
図1参照)を並進移動させるための操作である。すなわち、レバー部33bを傾倒する操作が行われると、レバー部33bの傾倒量に応じて、推進力発生部10(
図2参照)による推進力F(
図1参照)の大きさ(プロペラ11(
図1参照)の回転数)が調整されるとともに、レバー部33bの傾倒方向に応じて、推進力発生部10における推進力Fの向き(プロペラ11の回転方向)および転舵機構部20(
図2参照)による推進力発生部10の転舵(推進力発生部10の向き)が調整される。
【0046】
また、レバー部33bを傾倒かつ回動する操作は、船舶110(
図1参照)を旋回させるための操作である。すなわち、レバー部33bを傾倒かつ回動する操作が行われると、船舶110が旋回するように、レバー部33bの傾倒量に応じて、推進力発生部10(
図2参照)による推進力F(
図1参照)の大きさ(プロペラ11(
図1参照)の回転数)が調整されるとともに、レバー部33bの傾倒方向、回動方向および回動量に応じて、推進力発生部10における推進力Fの向き(プロペラ11の回転方向)および転舵機構部20(
図2参照)による推進力発生部10の転舵(推進力発生部10の向き)が調整される。
【0047】
また、レバー部33bを回動する操作は、船舶110(
図1参照)を回頭(船体111(
図1参照)の向きをその場で変更)させるための操作である。すなわち、レバー部33bを回動する操作が行われると、船舶110が回頭するように、レバー部33bの回動量に応じて、推進力発生部10(
図2参照)による推進力F(
図1参照)の大きさ(プロペラ11(
図1参照)の回転数)が調整されるとともに、レバー部33bの回動方向に応じて、転舵機構部20(
図2参照)による推進力発生部10の転舵(推進力発生部10の向き)が調整される。
【0048】
本実施形態では、ジョイスティック33に対して船舶110(
図1参照)を右回りまたは左回りに回頭させるための操作が行われた場合の転舵機構部20(
図2参照)による転舵角θ(
図1参照)は、略60度以上略80度以下に設定されている。具体的には、レバー部33bを回動する操作が行われると、レバー部33bの回動量に関係なく、転舵機構部20は、推進力発生部10を所定の転舵角θで転舵させる。所定の転舵角θは、予め、略60度以上略80度以下の範囲から一意に(たとえば、70度に)設定されている。なお、船舶110の回頭の詳細に関しては、後述する。
【0049】
図3に示すように、操船システム100は、第1制御部41と、第2制御部42と、制御切換部43と、を備える。第1制御部41、第2制御部42および制御切換部43は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む回路基板である。なお、第2制御部42は、特許請求の範囲の「制御部」の一例である。
【0050】
第1制御部41は、リモートコントローラ31およびステアリングホイール32に対するユーザの操作に基づいて、推進力発生部10による推進力F(
図1参照)および転舵機構部20による転舵を制御するように構成されている。また、第2制御部42は、ジョイスティック33に対するユーザの操作に基づいて、推進力発生部10による推進力Fおよび転舵機構部20による転舵を制御するように構成されている。
【0051】
第1制御部41および第2制御部42は、推進力発生部10による推進力F(
図1参照)および転舵機構部20による転舵をPI制御によってフィードバック制御するように構成されている。具体的には、推進力発生部10は、推進力制御部13と、回転数センサ14と、を含む。推進力制御部13は、たとえば、モータドライバおよびインバータを含む。回転数センサ14は、モータ12の回転数を検出するように構成されている。そして、第1制御部41および第2制御部42は、回転数センサ14により検出されたモータ12の回転数が目標値となるように、推進力制御部13を介して、モータ12の回転数を制御する。
【0052】
また、転舵機構部20は、転舵制御部24と、舵角センサ25と、を含む。転舵制御部24は、たとえば、モータドライバを含む。舵角センサ25は、転舵軸22(
図4参照)の回転角度を検出するように構成されている。
図4に示すように、転舵機構部20には、センサギア26が設けられている。センサギア26は、平歯車26aと、平歯車26bと、を含む。平歯車26aは、ウォームホイール23fと共に同軸で回転するように、ウォームホイール23fに固定されている。平歯車26bは、平歯車26aと噛合されているとともに、舵角センサ軸A2を中心に回転するように配置されている。
図4には図示しないが、舵角センサ25は、平歯車26bの近傍に配置されており、平歯車26bの回転量を検出するように構成されている。舵角センサ25は、たとえば、光学式センサ、磁気センサ等である。そして、
図3に示すように、第1制御部41および第2制御部42は、舵角センサ25により検出された転舵軸22の回動角度が目標値となるように、転舵制御部24を介して、モータ21の回転数を制御する。
【0053】
制御切換部43は、第1制御部41によって、推進力発生部10による推進力F(
図1参照)および転舵機構部20による転舵を制御する状態と、第2制御部42によって、推進力発生部10による推進力Fおよび転舵機構部20による転舵を制御する状態と、を切り換えるように構成されている。
図5に示すように、ジョイスティック33の台座33aには、ジョイスティックモードスイッチ33cが設けられている。制御切換部43は、ジョイスティックモードスイッチ33cが押下されることにより、操船システム100がジョイスティック33に対する操作を受け付ける状態(ジョイスティックモード)と、ジョイスティック33に対する操作を受け付けない状態と、を切り換えるように構成されている。
【0054】
(船舶の回頭の詳細)
図6(A)に示すように、船舶110を右回りに回頭させるための操作が行われた場合(ユーザにより右回頭指示があった場合)、第2制御部42(
図3参照)は、推進力発生部10を左舷方向に転舵(左回りに回動)するとともに、推進力発生部10(
図2参照)において前向きの推進力Fを発生させるように、推進力発生部10および転舵機構部20(
図2参照)を制御する。なお、「船舶110を右回りに回頭させるための操作」とは、ジョイスティック33が中立位置P20(
図6(B)の状態)から右回りに回動されることに相当する。すなわち、ジョイスティック33は、船舶110を右回りに回頭するために中立位置P20から右回りに回動される。そして、推進力発生部10が左舷方向に転舵された状態で、推進力発生部10において前向きの推進力Fが発生している間は、船舶110が右回りに回頭する。なお、右回頭指示の継続中は、船舶110が右回りに回頭する状態が維持される。
【0055】
また、
図6(B)に示すように、船舶110が右回りに回頭する状態(
図6(A)の状態)において、ユーザによる指示がなくなった場合、第2制御部42(
図3参照)は、推進力発生部10(
図2参照)による推進力Fを停止するとともに、推進力発生部10を基準位置P10に転舵する(基準位置P10に戻す)ように、推進力発生部10および転舵機構部20(
図2参照)を制御する。なお、「ユーザによる指示がなくなった」とは、ジョイスティック33が中立位置P20に戻されたことに相当する。すなわち、本実施形態では、第2制御部42は、ジョイスティック33が右回りおよび左回りの一方に回動された状態において、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された場合に、転舵機構部20による転舵角θが左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方から基準位置P10に戻るように転舵機構部20を制御するように構成されている。
【0056】
また、
図6(C)に示すように、船舶110を左回りに回頭させるための操作が行われた場合(ユーザにより左回頭指示があった場合)、第2制御部42(
図3参照)は、推進力発生部10(
図2参照)を右舷方向に転舵(右回りに回動)するとともに、推進力発生部10において前向きの推進力Fを発生させるように、推進力発生部10および転舵機構部20(
図2参照)を制御する。なお、「船舶110を左回りに回頭させるための操作」とは、ジョイスティック33が中立位置P20(
図6(B)の状態)から左回りに回動されることに相当する。すなわち、ジョイスティック33は、船舶110を左回りに回頭するために中立位置P20から左回りに回動される。そして、推進力発生部10が右舷方向に転舵された状態で、推進力発生部10において前向きの推進力Fが発生している間は、船舶110が左回りに回頭する。なお、左回頭指示の継続中は、船舶110が左回りに回頭する状態が維持される。
【0057】
また、
図6(B)に示すように、船舶110が左回りに回頭する状態(
図6(C)の状態)において、ユーザによる指示がなくなった場合、第2制御部42(
図3参照)は、推進力発生部10(
図2参照)による推進力Fを停止するとともに、推進力発生部10を基準位置P10に転舵する(基準位置P10に戻す)ように、推進力発生部10および転舵機構部20(
図2参照)を制御する。
【0058】
ここで、本実施形態では、
図7(A)および
図7(B)に示すように、第2制御部42(
図3参照)は、(ジョイスティック33が右回りまたは左回りの一方に回動され)船舶110が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、ジョイスティック33に対して船舶110を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合(ジョイスティック33が右回りまたは左回りの他方に回動された場合)に、推進力発生部10(
図2参照)による推進力Fの方向を逆方向に変更する推進力逆方向制御を行うように構成されている。
【0059】
具体的には、
図7(A)および
図7(B)に示すように、船舶110が右回りに回頭する状態(ユーザにより右回頭指示が継続している状態)(
図7(A)の状態)において、船舶110を左回りに回頭させるための操作が行われた場合(ユーザにより左回頭指示があった場合)、第2制御部42(
図3参照)は、推進力発生部10(
図2参照)が左舷方向に転舵された状態を維持したまま、推進力発生部10において後向きの推進力Fを発生させる(プロペラ11を逆回転させる)(
図7(B)の状態)ように、推進力発生部10および転舵機構部20(
図2参照)を制御する。そして、推進力発生部10が左舷方向に転舵された状態で、推進力発生部10において後向きの推進力Fが発生している間は、船舶110が左回りに回頭する。すなわち、推進力発生部10が左舷方向に転舵された状態で、船舶110が右回りに回頭する場合も左回りに回頭する場合もある。
【0060】
なお、船舶110が左回りに回頭する状態(ユーザにより左回頭指示が継続している状態)(
図7(B)の状態)において、船舶110を右回りに回頭させるための操作が行われた場合(ユーザにより右回頭指示があった場合)も、第2制御部42(
図3参照)は、左右を逆転させた同様の制御を行う。すなわち、推進力発生部10が右舷方向に転舵された状態で、船舶110が左回りに回頭する場合も右回りに回頭する場合もある。以下の説明では、船舶110が左回りに回頭する状態(
図7(B)の状態)において、船舶110を右回りに回頭させるための操作が行われた場合の詳細を省略する。
【0061】
また、本実施形態では、第2制御部42(
図3参照)は、船舶110が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、ジョイスティック33に対して船舶110を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、転舵機構部20(
図2参照)による転舵角θ(
図1参照)を維持した状態で推進力逆方向制御を行うように構成されている。具体的には、第2制御部42は、船舶110が右回りに回頭する状態(
図7(A)の状態)において、船舶110を左回りに回頭させるための操作が行われた場合、第2制御部42は、推進力発生部10(
図2参照)が左舷方向に所定の転舵角θだけ転舵された状態を維持したまま、推進力発生部10において後向きの推進力Fを発生させる(プロペラ11を逆回転させる)(
図7(B)の状態)ように、推進力発生部10および転舵機構部20を制御する。すなわち、第2制御部42は、推進力逆方向制御の前後で、推進力発生部10が転舵されないように、転舵機構部20を制御する。
【0062】
また、本実施形態では、第2制御部42(
図3参照)は、転舵機構部20(
図2参照)による転舵角θ(
図1参照)が基準位置P10に戻る前に、ジョイスティック33が右回りおよび左回りの他方に回動された場合に、転舵機構部20による転舵角θを左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方に戻した状態で、推進力逆方向制御を行うように構成されている。具体的には、ジョイスティック33が右回りに回動された状態において、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された場合、直ぐに、転舵機構部20による転舵角θが基準位置P10に戻り始める。ジョイスティック33を回動させるための時間に対して転舵機構部20による転舵には比較的長い(たとえば、数秒の)時間が掛かるので、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された後、直ぐに左回りに回動された場合(船舶110の回頭方向を逆転させるための操作が行われた場合)、転舵機構部20による転舵角θは左舷方向の回動位置から基準位置P10に戻っていない。したがって、第2制御部42は、転舵機構部20による転舵角θを、(基準位置P10に対して逆方向にある)右舷方向の回動位置よりも近い左舷方向の回動位置に転舵させた状態(元の回動位置に戻した状態)で、推進力逆方向制御を行う。
【0063】
また、本実施形態では、第2制御部42(
図3参照)は、ジョイスティック33が右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態に所定の第1時間よりも短い時間で切り替わった場合に、推進力逆方向制御を行うように構成されている。具体的には、第2制御部42は、ジョイスティック33が右回りに回動された状態(
図7(A)の状態)において、ジョイスティック33が中立位置P20側に回動を開始してから、第1時間(たとえば、数秒)よりも短い時間で、ジョイスティック33が左回りに回動された状態に切り換わった場合に、推進力逆方向制御を行う。一方、第2制御部42は、ジョイスティック33が右回りに回動された状態(
図7(A)の状態)において、ジョイスティック33が中立位置P20側に回動を開始してから第1時間(たとえば、数秒)の間に、ジョイスティック33が左回りに回動された状態に切り換わらない場合(すなわち、中立位置P20に戻る場合)には、推進力逆方向制御を行わない。
【0064】
また、本実施形態では、第2制御部42(
図3参照)は、ジョイスティック33が右回りまたは左回りの一方に回動され船舶110が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、ジョイスティック33に対して船舶110を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、ジョイスティック33の回動量の大きさ(ジョイスティック33に対する操作量の大きさ)に対する推進力発生部10(
図2参照)による推進力Fの大きさが略同じになるように推進力発生部10による推進力Fを調整しながら、推進力逆方向制御を行うように構成されている。具体的には、第2制御部42は、ジョイスティック33の回動量の大きさに応じた大きさで、推進力発生部10(
図2参照)による推進力Fを発生させる。また、船舶110を前進させる際の推進力発生部10による推進力Fの大きさと、船舶110を後進させる際の推進力発生部10による推進力Fの大きさとを異ならせるために、同一のジョイスティック33の回動量の大きさに対して、推進力Fが推進力発生部10において前向きに発生している場合(プロペラ11が正回転している場合)の推進力Fの大きさと、推進力Fが推進力発生部10において後向きに発生している場合(プロペラ11が逆回転している場合)の推進力Fの大きさとは、互いに異なっている。したがって、推進力発生部10における推進力Fの方向を逆方向に変更した場合(プロペラ11を逆回転させた場合)に、同一のジョイスティック33の回動量に対して、推進力発生部10における推進力Fの大きさが推進力逆方向制御の前後で互いに異ならないように、推進力発生部10による推進力Fが調整される。
【0065】
また、本実施形態では、第2制御部42(
図3参照)は、推進力発生部10による推進力Fの方向が逆方向に変更された状態において、ジョイスティック33に対して船舶110を右回りおよび左回りの一方に回頭させるための操作が行われた場合に、再び推進力逆方向制御を行うように構成されている。すなわち、ジョイスティック33に対して船舶110の回頭方向を逆転させるための操作が繰り返し行われた場合、推進力逆方向制御が連続して行われる。
【0066】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、船舶110が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、ジョイスティック33に対して船舶110を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、推進力発生部10による推進力Fの方向を逆方向に変更する推進力逆方向制御を行うように構成されている。これにより、船舶110が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、推進力発生部10による推進力Fの方向を逆方向に変更することによって、推進力発生部10を基準位置P10に対して右舷方向の回動位置および左舷方向の回動位置の一方から他方に転舵しなくても、船舶110の回頭方向を逆転させることができる。すなわち、船舶110の回頭方向を逆転させる際に、推進力発生部10が基準位置P10に対して右舷方向の回動位置および左舷方向の回動位置の一方から他方に転舵するための(たとえば、数秒の)時間が不要となる。その結果、転舵が不要な分、船舶110の回頭方向を逆転させるための操作が行われてから船舶110の回頭方向が逆転するまでの時間を短縮することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、船舶110が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、ジョイスティック33に対して船舶110を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、転舵機構部20による転舵角θを維持した状態で推進力逆方向制御を行うように構成されている。これにより、転舵機構部20による転舵角θを維持した状態で推進力逆方向制御を行うことによって、転舵機構部20による転舵角θが変化した状態で推進力逆方向制御が行われる場合と比較して、推進力発生部10による推進力Fの方向を逆方向に変更した後の推進力発生部10による推進力Fの制御が複雑になるのを抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、ジョイスティック33は、船舶110を右回りに回頭するために中立位置P20から右回りに回動されるとともに、船舶110を左回りに回頭するために中立位置P20から左回りに回動される。そして、第2制御部42は、ジョイスティック33が右回りまたは左回りの一方に回動され船舶110が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、ジョイスティック33が右回りまたは左回りの他方に回動された場合に、推進力逆方向制御を行うように構成されている。これにより、ジョイスティック33に対する操作方向(回動方向)と、船舶110を回頭する方向とが等しくなるので、ジョイスティック33に対する船舶110の回頭方向を逆転させるための操作を直感的に分かり易い状態で行うことができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、ジョイスティック33が右回りおよび左回りの一方に回動された状態において、ジョイスティック33が中立位置P20に戻された場合に、転舵機構部20による転舵角θが左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方から基準位置P10に戻るように転舵機構部20を制御するとともに、転舵機構部20による転舵角θが基準位置P10に戻る前に、ジョイスティック33が右回りおよび左回りの他方に回動された場合に、転舵機構部20による転舵角θを左舷方向の回動位置および右舷方向の回動位置の一方に戻した状態で、推進力逆方向制御を行うように構成されている。これにより、ジョイスティック33が右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態へ変化した場合(船舶110の回頭方向を逆転させるための操作が行われた場合)の制御(推進力逆方向制御)を、ジョイスティック33が右回りおよび左回りの一方に回動された状態から中立位置P20へ戻った場合(船舶110を停止させるための操作が行われた場合)の制御と区別して行うことができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、ジョイスティック33が右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態に所定の第1時間よりも短い時間で切り替わった場合に、推進力逆方向制御を行うように構成されている。これにより、ジョイスティック33が右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態へ変化した場合(船舶110の回頭方向を逆転させるための操作が行われた場合)と、ジョイスティック33が右回りおよび左回りの一方に回動された状態から中立位置P20へ戻った場合(船舶110を停止させるための操作が行われた場合)とを、容易に区別することができる。その結果、船舶110の回頭方向を逆転させるための操作が行われた場合に船舶110を停止させる制御が行われてしまうのを防止することができるとともに、船舶110を停止させるための操作が行われた場合に船舶110の回頭方向を逆転させるための制御が行われてしまうのを防止することができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、ジョイスティック33が右回りまたは左回りの一方に回動され船舶110が右回りおよび左回りの一方に回頭している状態において、ジョイスティック33に対して船舶110を右回りおよび左回りの他方に回頭させるための操作が行われた場合に、ジョイスティック33の回動量の大きさ(ジョイスティック33に対する操作量の大きさ)に対する推進力発生部10による推進力の大きさが略同じになるように推進力発生部10による推進力Fを調整しながら、推進力逆方向制御を行うように構成されている。これにより、ジョイスティック33の回動量の大きさに対する推進力発生部10による推進力Fの大きさが推進力Fが発生する方向によって異なる場合でも、ジョイスティック33の回動量の大きさに対する推進力発生部10による推進力Fの大きさが異ならないように推進力を調整して、船舶110の回頭方向を逆転させることができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、モータ12により駆動する電動の推進器である推進力発生部10に対して推進力逆方向制御を行うように構成されている。これにより、電動により駆動する船舶110において、船舶110の回頭方向を逆転させるための操作が行われてから船舶110の回頭方向が逆転するまでの時間を短縮することができる。また、モータ12は、エンジンとは異なり、CO2を直接排出することがないので、SDGsの観点から好ましい装置構成にすることができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、ジョイスティック33に対して船舶110を右回りまたは左回りに回頭させるための操作が行われた場合の転舵機構部20による転舵角θは、略60度以上略80度以下に設定されている。これにより、転舵機構部20による転舵角θが略60度以上略80度以下に設定されていることによって、船舶110を回頭させる際の船舶110の回転半径を比較的小さくすることができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、ジョイスティック33に対するユーザの操作に基づいて、船舶110において船体111に1つのみが取り付けられた船外機112に設けられる推進力発生部10に対して推進力逆方向制御を行うように構成されている。これにより、船体111に1機の船外機112が取り付けられた船舶110(1機掛けの船外機艇)において、船舶110の回頭方向を逆転させるための操作が行われてから船舶110の回頭方向が逆転するまでの時間を短縮することができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、第2制御部42は、推進力発生部10による推進力Fの方向が逆方向に変更された状態において、ジョイスティック33に対して船舶110を右回りおよび左回りの一方に回頭させるための操作が行われた場合に、再び推進力逆方向制御を行うように構成されている。これにより、船舶110の回頭方向を逆転させるための操作が再び行われた場合でも、船舶110の回頭方向を逆転させるための操作が行われてから船舶110の回頭方向が逆転するまでの時間を短縮しながら、再び船舶110の回頭方向を逆転させることができる。
【0077】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0078】
たとえば、上記実施形態では、第2制御部42(制御部)を、再び推進力逆方向制御を行うように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部が、再び推進力逆方向制御を行わない(推進力逆方向制御を連続して行わない)ように構成してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、第2制御部42(制御部)を、船舶110において船体111に取り付けられた船外機112に設けられる推進力発生部10に対して推進力逆方向制御を行うように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部が、船舶において船体の内部に配置される船内機に設けられる推進力発生部に対して推進力逆方向制御を行うように構成してもよいし、船舶において一部が船体の内部に配置されるように船体に取り付けられる船内外機に設けられる推進力発生部に対して推進力逆方向制御を行うように構成してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、ジョイスティック33に対して船舶110を右回りまたは左回りに回頭させるための操作が行われた場合の転舵機構部20による転舵角θを、略60度以上略80度以下に設定した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ジョイスティックに対して船舶を右回りまたは左回りに回頭させるための操作が行われた場合の転舵機構部による転舵角を、60度未満に設定してもよいし、80度以上に設定してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、第2制御部42(制御部)を、モータ12により駆動する電動の推進器である推進力発生部10に対して推進力逆方向制御を行うように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部を、エンジンにより駆動する推進力発生部に対して推進力逆方向制御を行うように構成してもよいし、モータおよびエンジンにより駆動するハイブリッド型の推進力発生部に対して推進力逆方向制御を行うように構成してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、第2制御部42(制御部)を、ジョイスティック33の回動量の大きさ(ジョイスティック33に対する操作量の大きさ)に対する推進力発生部10による推進力Fの大きさが略同じになるように推進力発生部10による推進力Fを調整しながら、推進力逆方向制御を行うように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部を、ジョイスティックの回動量の大きさ(ジョイスティックに対する操作量の大きさ)に対する推進力発生部による推進力の大きさを略同じにするための推進力発生部による推進力の調整を行わずに、推進力逆方向制御を行うように構成してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、第2制御部42(制御部)を、ジョイスティック33が右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態に所定の第1時間よりも短い時間で切り替わった場合に、推進力逆方向制御を行うように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部を、ジョイスティックが右回りおよび左回りの一方に回動された状態から他方に回動された状態に切り換わる途中でジョイスティックが中立位置に位置する時間が所定の第2時間(たとえば、数百ミリ秒~数秒)よりも短い場合に、推進力逆方向制御を行うように構成してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、第2制御部42(制御部)を、転舵機構部20による転舵角θを維持した状態で推進力逆方向制御を行うように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部を、転舵機構部による転舵角を変化させた状態で推進力逆方向制御を行うように構成してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、特許請求の範囲の「操作部」として「ジョイスティック」を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、特許請求の範囲の「操作部」として「リモコン」や「ステアリングホイール」を適用してもよい。また、特許請求の範囲の「操作部」として、船舶を回頭するための「回頭スイッチ」を適用してもよい。その場合、操船システムが、船舶を右回りに回頭するための「右回頭スイッチ」と、船舶を左回りに回頭するための「左回頭スイッチ」と、を備えるように構成すればよい。
【0086】
また、上記実施形態では、推進力発生部10が左舷方向に転舵された状態で、船舶110が右回りに回頭する場合も左回りに回頭する場合もあるとともに、推進力発生部10が右舷方向に転舵された状態で、船舶110が左回りに回頭する場合も右回りに回頭する場合もある例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、船舶を回頭させる際の推進力発生部の転舵方向が左舷方向または右舷方向のいずれかに固定されていてもよい(船舶を回頭させる際の推進力発生部の転舵方向が常に同じ方向となるように構成されていてもよい)。たとえば、船舶を右回りに回頭させる場合および左回りに回頭させる場合のいずれも、推進力発生部の転舵方向が右舷方向であって、船舶を右回りに回頭させる場合および左回りに回頭させる場合に、推進力発生部において、それぞれ、推進力を前向きおよび後向きに発生させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0087】
10 推進力発生部
12 モータ
20 転舵機構部
33 ジョイスティック(操作部)
42 第2制御部(制御部)
100 操船システム
110 船舶
111 船体
112 船外機(船舶推進装置)
F (推進力発生部による)推進力
P20 (操作部の)中立位置
θ 転舵角