(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174519
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20221116BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/01 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080362
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】白嶋 仁
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555BA23
5E555BB23
5E555BC30
5E555BE10
5E555CA13
5E555CB12
5E555DA24
5E555FA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】比較的質量が大きい操作ユニットに対し、振動発生装置からの振動エネルギーを効果的に与え、操作ユニットを操作している指に良好な操作感触を与えることができる入力装置を提供する。
【解決手段】入力装置は、振動発生装置の振動周期を、最初は長い周期T0でその後に短い周期T1とし、振動発生装置から操作ユニットに作用する加振力(i)の所定の作用方向(X2方向)に向く極大値Pd4の時刻を、操作ユニットの振動の加速度(ii)の同じ作用方向(X2方向)に向く極大値P4の時刻に一致させる。これにより、操作ユニットに発生する加速度の振幅の最大値Pmaxを拡大することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指で操作される入力検知部を有する操作ユニットと、支持装置と、前記操作ユニットと前記支持装置とを連結する弾性支持機構と、前記操作ユニットを振動させて操作している指に操作感触を与える振動発生装置と、が設けられた入力装置において、
前記振動発生装置に与えられる駆動信号の周期を設定する制御部が設けられており、
前記制御部では、
前記振動発生装置の始動により振動を開始した前記操作ユニットの加速度の作用方向と、前記振動発生装置から前記操作ユニットに作用する加振力の作用方向とが一時的に一致するように、前記駆動信号の周期が設定されることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記操作ユニットの加速度が前記作用方向で極大値となる時刻と、前記振動発生装置から前記操作ユニットに作用する加振力が前記作用方向で極大値となる時刻とを一致させまたはほぼ一致させる請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記振動発生装置で発生する振動の周期を途中で短くし、周期が短くなったときに、前記操作ユニットの加速度の作用方向と、前記操作ユニットに作用する加振力の作用方向とを一致させる請求項1または2記載の入力装置。
【請求項4】
前記操作ユニットの加速度が3回目の極大値となる時刻から6回目の極大値となる時刻の間に、前記操作ユニットの加速度の作用方向と、前記操作ユニットに作用する加振力の作用方向とを一致させる請求項1ないし3のいずれかに記載の入力装置。
【請求項5】
前記操作ユニットに加速度センサが設けられ、
前記制御部では、前記加速度センサからの検知出力を参照して、前記駆動信号の周期を設定する請求項1ないし4のいずれかに記載の入力装置。
【請求項6】
前記制御部では、前記操作ユニットの振動特性に合わせて、前記駆動信号の周期を設定する請求項1ないし4のいずれかに記載の入力装置。
【請求項7】
前記操作ユニットに温度センサが設けられ、
前記制御部では、前記温度センサからの検知出力を参照して、前記駆動信号の周期を補正する請求項1ないし6のいずれかに記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的質量が大きい操作ユニットを指で操作したときに、指に大きなエネルギーの操作感触を与えることができる入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タッチパネルに振動手段が搭載された画像形成装置に関する発明が記載されている。この画像形成装置には、振動波形設定手段が設けられ、振動波形設定手段により異なる振動波形が設定される。また、音出力時間設定手段、音周波数設定手段、振動開始時間設定手段などが設けられている。これら設定手段は、タッチパネルに表示されるキーごとに個別に設定され、またはキーを一括して設定される。タッチパネルが指などで押され、これがキー選択検知手段で検知されると、前記設定手段の設定に応じてタッチパネルが振動する。
【0003】
特許文献2に、タッチパッドを有する自動車用の操作装置に関する発明が記載されている。この操作装置は、タッチパッドの操作面が指で操作されると、アクチュエータが駆動されて操作面に触覚が生じる。アクチュエータに与えられるPWM信号の強度や開始周波数や周波数プロファイルなどのパラメータを選択することにより、機械的に支持されているタッチパッドの操作面を、大幅に加速し、続いて大幅に減速させる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-150865号公報
【特許文献2】特表2019-516194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1と特許文献2には、操作面に触れた指に振動による触覚を与える技術が記載されている。しかし、これら特許文献には、操作ユニットに振動エネルギーを効果的に伝達するための技術的手段が記載されていない。例えば、車載用などの大型の操作ユニットは質量が大きく慣性力も大きく作用するため、振動の立ち上がりから短時間で操作ユニットに大きな加速度を発生させるのが難しく、操作ユニットを操作している指に切れの良いシャープな感触を与えることができない。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、比較的質量の大きい操作ユニットに対しても、振動の立ち上がりの直後に大きな加速度を発生させて、操作者の指に分かりやすい操作感触を与えることが可能な入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、指で操作される入力検知部を有する操作ユニットと、支持装置と、前記操作ユニットと前記支持装置とを連結する弾性支持機構と、前記操作ユニットを振動させて操作している指に操作感触を与える振動発生装置と、が設けられた入力装置において、
前記振動発生装置に与えられる駆動信号の周期を設定する制御部が設けられており、
前記制御部では、
前記振動発生装置の始動により振動を開始した前記操作ユニットの加速度の作用方向と、前記振動発生装置から前記操作ユニットに作用する加振力の作用方向とが一時的に一致するように、前記駆動信号の周期が設定されることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の入力装置は、前記操作ユニットの加速度が前記作用方向で極大値となる時刻と、前記振動発生装置から前記操作ユニットに作用する加振力が前記作用方向で極大値となる時刻とを一致させまたはほぼ一致させることが好ましい。
【0009】
本発明の入力装置は、前記振動発生装置で発生する振動の周期を途中で短くし、周期が短くなったときに、前記操作ユニットの加速度の作用方向と、前記操作ユニットに作用する加振力の作用方向とを一致させるものとして構成できる。
【0010】
本発明の入力装置は、前記操作ユニットの加速度が3回目の極大値となる時刻から6回目の極大値となる時刻の間に、前記操作ユニットの加速度の作用方向と、前記操作ユニットに作用する加振力の作用方向とを一致させることが好ましい。
【0011】
本発明の入力装置は、前記操作ユニットに加速度センサが設けられ、
前記制御部では、前記加速度センサからの検知出力を参照して、前記駆動信号の周期を設定するものである。
【0012】
または、本発明の入力装置は、前記制御部では、前記操作ユニットの振動特性に合わせて、前記駆動信号の周期を設定するものであってもよい。
【0013】
本発明の入力装置は、前記操作ユニットに温度センサが設けられ、
前記制御部では、前記温度センサからの検知出力を参照して、前記駆動信号の周期を補正することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の入力装置は、振動発生装置から操作ユニットへの振動エネルギーの伝達効率が良くなり、比較的質量が大きい大型の操作ユニットであっても、振動を開始した直後に大きな加速度を与えることができる。その結果、操作している指に明確な操作感触を与えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の入力装置の外観を示す斜視図、
【
図2】
図1に示される入力装置をII-II線で切断した断面図、
【
図4】実施形態の入力装置の駆動制御の一例を示す線図、
【
図5A】実施形態の入力装置の駆動制御の他の一例を示す線図、
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1と
図2に示される入力装置1は車載用である。Z1-Z2方向が前後方向である。Z1方向が車室内に向く前方向で車両の後方であり、Z2方向が後方で車両の進行方向である。Y1-Y2方向が上下方向で、X1-X2方向が左右方向である。X1-X2方向は、操作ユニット10の振動方向で、操作感触を発生する加速度の作用方向である。
【0017】
入力装置1は操作ユニット10と、操作ユニット10を支持する支持装置20を有している。支持装置20は自動車の車室内のZ2側に位置するインストルメントパネルやダッシボードに設けられた支持基台に固定される。
図2に示されるように、操作ユニット10と支持装置20は弾性支持機構2によって連結されている。弾性支持機構2によって、支持装置20に対して操作ユニット10が少なくとも左右方向(X1-X2方向)および前後方向(Z1-Z2方向)へ相対的に動くことができるように弾性支持されている。
【0018】
図2に示される弾性支持機構2は、板ばね3とゴム部材4とで構成されている。板ばね3の撓み変形によって、支持装置20に対して操作ユニット10が左右方向(X1-X2方向)と前後方向(Z1-Z2方向)へ移動できる。ゴム部材4は、支持装置20と操作ユニット10との対向空間を囲むように設けられている。
図3の回路ブロック図では、弾性支持機構2の弾性係数を形成する弾性部2kと粘性抵抗係数を形成する粘性抵抗部2cが示されている。
図2は、弾性支持機構2の一例を示しており、弾性支持機構2は、コイルばねのみで構成されていてもよいし、コイルばねとゴム部材との組み合わせ、さらにはコイルばねと板ばねとの組み合わせなどで構成されていてもよい。
図6の振動系をモデル化した説明図では、操作ユニット10の質量が(m
m)で示され、弾性部2kの弾性係数が(k
m)、粘性抵抗部2cの粘性抵抗係数が(c
m)で示されている。
【0019】
操作ユニット10は合成樹脂材料や軽金属材料で形成されたユニットケース11を有している。ユニットケース11の内部に表示装置12が収納されている。表示装置12はカラー液晶表示装置であり、その表示画面12aがユニットケース11のZ1方向に向く前面に現れている。カラー液晶表示装置は透過型の液晶表示セルを有しており、ユニットケース11の内部には、液晶表示セルの後方(Z2側)に対向するバックライト装置が収納されている。バックライト装置は、LEDなどの光源と、光源から発せられる照明光を液晶表示セルに与える導光部材を有している。なお、表示装置12が、エレクトロルミネッセンス表示装置であってもよい。
【0020】
操作ユニット10には、表示画面12aの前方(Z1方向)を覆う透明なカバーパネルが設けられており、カバーパネルのZ2方向に向く内面に第1入力検知部となるタッチセンサ13が設けられている。タッチセンサ13は、カバーパネルに貼られた透明基板と、透明基板の面に形成された複数の透明電極を有している。指が表示画面12aに接触すると、接近している透明電極間で検知される相互容量の変化、または個々の透明電極で検知される自己容量の変化に基づき、表示画面12aにおいて指が接触した箇所のX-Y平面での座標位置を示す検知出力を得ることができる。
【0021】
図2に示されるように、支持装置20に第2入力検知部となる押圧力センサ5が設けられている。押圧力センサ5は、指などで操作ユニット10が後方(Z2方向)へ押されたときに検知出力を得る。押圧力センサ5は、機械的押圧スイッチであり、押圧力を受けるアクチュエータ5aが操作ユニット10の背面に向けられている。押圧力センサ5としては、操作ユニット10が後方に向けて押されたときに歪みを生じる弾性梁と前記撓みを検知する撓みゲージとを有する圧力センサ、あるいは押圧力に応じて出力電圧が変化する圧電素子などを使用することができる。
【0022】
図2に示されるように、操作ユニット10の後方(Z2方向)に向く背面に振動発生装置30が設けられている。振動発生装置30は、操作ユニット10のユニットケース11に固定された駆動ケース31を有している。駆動ケース31の内部に、板ばねやコイルばねなどの弾性支持機構によってX1-X2方向へ移動自在に支持された振動子が設けられている。振動子は磁芯と磁芯に巻かれたコイルを有し、駆動ケース31の内部には、磁芯に対向する永久磁石が固定されている。
図6に示される振動系をモデル化した説明図では、振動子の質量が(m
a)で示され、振動子を支持する弾性支持機構の弾性係数が(k
a)で示され、粘性係数が(c
a)で示されている。
【0023】
振動発生装置30の振動子に巻かれたコイルに交番電流である駆動信号が供給され、磁芯に生じる磁化の極性が変化すると、永久磁石の極性と、磁芯において変化する極性との間に生じる磁気吸引力と磁気反発力により、振動子がX1-X2方向に往復移動させられる。振動発生装置30の振動子がX1方向とX2方向へ移動すると、そのときの加速度と振動子の質量とから得られる力である加振力が操作ユニット10に作用し、所定の質量を有する操作ユニット10にX1方向とX2方向の加速度が発生する。
【0024】
振動発生装置30の他の構造としては、例えば、質量分布が偏った回転分銅と、この回転分銅を回転させるモータとを有したものであってもよい。この振動発生装置では、モータで回転分銅を回転させることで、操作ユニット10にX1方向への加振力の成分と、X2方向への加振力の成分を作用させることができる。
【0025】
図3の回路ブロック図に示されるように、操作ユニット10に、X1-X2方向への加速度を検知する加速度センサ15が設けられている。また、操作ユニット10には温度センサ14が設けられている。温度センサ14によって、操作ユニット10の周辺の温度が検知される。この温度検知により、振動発生装置30で発生するX1方向とY2方向への振動の周期などの補正が行われる。表示装置12として使用されるカラー液晶表示装置では、駆動環境温度を検知する温度センサが装備され、検知した温度に応じて表示画像の輝度などを補正し表示セルが高温になるのを防止するのが一般的である。
図2に示される温度センサ14として、表示装置12に装備された温度センサを兼用することも可能である。
【0026】
入力装置1の支持装置20に回路基板が設けられ、回路基板に電子回路を構成するICなどの電子素子が実装されている。
図3の回路ブロック図に示されるように、前記電子回路に制御部21が設けられている。制御部21はCPUとメモリとで構成されている。電子回路にパルス発生部22が設けられている。パルス発生部22はPWMジェネレータであり、矩形波(パルス電圧)が生成されて制御部21に与えられる。制御部21で変調された矩形波が加振ドライバ23に与えられると、加振ドライバ23で矩形波が三角関数の変化に近似したアナログの駆動信号に変換される。この駆動信号が、加振ドライバ23から振動発生装置30内のコイルに与えられる。電子回路は表示ドライバ24と操作検知回路25を有している。制御部21から画像生成信号が表示ドライバ24に与えられ、表示ドライバ24から表示装置12に画像信号が与えられる。第1入力検知部であるタッチセンサ13の検知信号は操作検知回路25に与えられ、第2入力検知部である押圧力センサ5の検知信号も操作検知回路25に与えられる。タッチセンサ13と押圧力センサ5の検知出力に基づいて、操作検知回路25から制御部21に操作信号が与えられる。また、操作ユニット10に搭載された加速度センサ15の検知信号および温度センサ14の検知信号も制御部21に与えられる。
【0027】
次に、前記入力装置1の動作を説明する。
制御部21で、所定の画像を形成する画像生成信号が表示ドライバ24に与えられ、表示ドライバ24から表示装置12に画像信号が与えられて、操作ユニット10では、前方Z1方向に向く表示画面12aに画像が表示される。この表示画像には、複数のメニューや複数の操作キーなどの操作指示部を示す画像が含まれる。
【0028】
図2に示されるように、操作者が表示画像を確認しながら、指を表示画面12aに接近させまたは接触させると、第1入力検知部であるタッチセンサ13で指の位置が検知され、操作検知回路25から制御部21に操作信号が与えられ、制御部21において、表示画像のどの部分が指で指示されているのかを認識する。指でいずれかの操作指示部を指示し、そのまま指で操作ユニット10をZ2方向へ押すと、弾性支持機構2が変形し、操作ユニット10が後方へ移動し、第2入力検知部である押圧力センサ5が動作し、その検知信号に基づく操作信号が制御部21に与えられる。制御部21では、操作信号が得られると、指示された操作支持部の画像の内容に基づいて所定の操作が行われたと認識する。これと同時に、制御部21から加振ドライバ23に矩形波が与えられ、加振ドライバ23から振動発生装置30内のコイルに駆動信号(駆動電圧)が与えられて、振動発生装置30内の振動子がX1-X2方向へ振動する。振動発生装置30の振動による加振力が操作ユニット10に与えられ、操作ユニット10がX1-X2方向への加速度を発生し、この加速度が操作感触として操作者の指に与えられる。
【0029】
図4の線図は、操作ユニット10に与えられる加振力の制御の一例を示している。
図4では、振動発生装置30から操作ユニット10に作用する加振力(i)の変化が破線で示されている。加振力(i)に関しては、
図4の横軸が時間を示し縦軸が力の大きさを示している。中心線Oで加振力(i)がゼロであり、縦軸に沿って図示上方に向かうにしたがってX1方向へ作用する加振力が大きくなり、図示下方に向かうにしたがってX2方向へ作用する加振力が大きくなる。
図4では、振動発生装置30からの振動力を受けて振動している操作ユニット10の慣性力の加速度(ii)の変化が実線で示されている。
図4では、中心線Oで加速度がゼロであり、縦軸に沿って図示上方に向かうにしたがってX1方向へ向かう加速度が大きくなり、図示下方に向かうにしたがってX2方向へ向かう加速度が大きくなる。
図4の制御例では、振動発生装置30で発生する加振力(i)の極大値がPd1,Pd2,Pd3,Pd4の4回現れ、その後に振動発生装置30が停止する。すなわち、振動発生装置30は振動子が2周期だけ駆動される。振動発生装置30から加振力を受けて操作ユニット10が振動するときの、操作ユニット10に作用する加速度(ii)の極大値は、P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,・・・の順に現れる。
【0030】
図2と
図6に示されているように、入力装置1では、支持装置20に対して、所定質量の操作ユニット10が、弾性部2kと粘性抵抗部2cを介してX1-X2方向へ振動自在に支持された自由振動系を構成している。
図6では、振動原理を説明するために、操作ユニット10と振動子の振動方向(X方向)を図示上下方向としている(
図6のx
a方向とx
m方向)。この自由振動系では、操作ユニット10のX1-X2方向への変位の位相と、操作ユニット10の加速度(ii)の変化の位相とが「π」だけずれている。したがって、操作ユニット10の振動時の変位の方向(振幅が大きくなる方向)は、
図4に示される加速度(ii)が作用する方向と逆向きである。また、振動発生装置30内も振動子のX1-X2方向への変位の位相と、振動子が発生する加振力の方向(加速度の方向と同じ)も逆向きである。
【0031】
図4に示されるように、振動発生装置30で発生する加振力(i)が操作ユニット10に作用すると、操作ユニット10が振動を開始し、振動発生装置30が停止した後は、操作ユニット10が慣性で振動を継続する。
図4では、振動し始めた操作ユニット10の加速度(ii)が3回目の極大値P3となる時刻が(t)である。振動発生装置30から力を受けて振動を開始した操作ユニット10は、その質量が大きく、また弾性支持機構2の弾性係数と粘性係数の影響が大きいため、始動時から時刻(t)付近までの期間が過渡振動期間となり、時刻(t)付近からまたは時刻(t)からしばらく経過してから、定常振動期間となる。定常振動期間では振動の周期が一定であり、また振幅が徐々に減衰する。
【0032】
制御部21でパルス発生部22から得られた矩形波が変調されて加振ドライバ23に与えられ、加振ドライバ23において矩形波からアナログ変換された駆動電圧が振動発生装置30に与えられる。制御部21内のメモリには、駆動電圧の位相と振動発生装置30で発生する加振力の位相とのずれ量が記憶されており、制御部21では前記ずれ量を加味した制御により駆動電圧の位相が決められ、これにより振動発生装置30から操作ユニット10に作用する加振力(i)の位相を任意に設定できるようになっている。
【0033】
振動発生装置30の振動子の質量(ma)と弾性支持機構の弾性係数(ka)とで決まる振動子の固有振動数と、操作ユニット10の質量(mm)と弾性部2kの弾性係数(km)とで決まる操作ユニット10の固有振動数は、互いに近似するように、好ましくは互いに一致するように設定されている。振動発生装置30内のコイルに与えられる駆動電圧の周期は、振動発生装置30の固有振動数と操作ユニット10の固有振動数のいずれかに一致させるか、または振動発生装置30の固有振動数と操作ユニット10の固有振動数との中間の値となるように設定される。駆動電圧の周期を、振動発生装置30の振動子の固有振動数に近似させ、好ましくは一致させることで、振動子の振動により発生する加振力の絶対値を大きくすることができる。また、駆動電圧を操作ユニット10の固有振動数に近似させ、好ましくは一致させることで、振動発生装置30から加振力を受けた操作ユニット10の振動の応答性が良くなる。
【0034】
図6に示されるように、支持装置20に操作ユニット10が弾性支持され、操作ユニット10に固定された振動発生装置30内で振動子が弾性支持された機械化モデルは、2つの自由振動系が連結された複段振動系を構成している。そのため、振動発生装置30内の振動子の振動周期に対し、振動発生装置30から操作ユニット10に作用する加振力(
図4の破線で示される加振力)(i)に位相の遅れが発生する。その結果、
図4に示されるように、振動発生装置30で発生した振動により操作ユニット10に作用する加振力(i)の位相と、振動を開始した操作ユニット10の加速度(ii)の位相との間にずれが生じやすい。
図4では、破線で示される加振力(i)の位相が、既に振動を介している操作ユニット10の加速度(ii)の位相よりも遅れを生じている。そこで、
図4に示されるように、加振力(i)の変化の周期T0が1周期程度または1.5周期程度あるいは2周期程度経過した後に、加振力(i)の変化が前記周期T0よりも短い周期T1となるように駆動電圧の周波数を変化させる。
図4の制御例では、周期T0の加振力(i)が1周期経過した後に、周期T1に変化している。
【0035】
操作ユニット10に作用する加振力(i)の変化を周期T0から周期T1へ短くなるように変調することで、加振力(i)が極大値Pd4となる時刻において、操作ユニット10の加速度(ii)のX2方向での作用方向と、操作ユニット10に作用する加振力(i)のX2方向での作用方向とを一時的に一致させている。最も好ましい実施形態として、
図4に示される制御例では、操作ユニット10の加速度(ii)が極大値P4となる時刻と、操作ユニット10に作用する加振力(i)が極大値Pd4となる時刻とを一致させている。なお、極大値P4の時刻と極大値Pd4の時刻とを完全に一致させなくても、操作ユニット10の加速度(ii)のX2方向での作用方向と、操作ユニット10に作用する加振力(i)のX2方向での作用方向とを一時的に一致させることは可能である。
【0036】
自由振動系では、振動の位相が加速度の位相に対し「π」だけずれるため、加速度(ii)がX2方向の極大値P4となるとき、操作ユニット10はX1方向へ変位した最大振幅の位置となる。振動発生装置30から操作ユニット10に作用する加振力(i)がX2方向の極大値Pd4となるとき、振動子のX2方向への加速度も最大値となり、このとき振動発生装置30内の振動子もX1方向へ変位した最大振幅の位置となる。すなわち、操作ユニット10がX1方向への最大振幅の位置となったときに、振動発生装置30内の振動子もX1方向への最大振幅の位置となる。
【0037】
操作ユニット10に作用する加振力(i)の向きと、慣性力で振動している操作ユニット10の加速度(ii)の作用方向とを、X2方向に向けて一致させ、好ましくは、
図4に示されるように、操作ユニット10に作用する加振力(i)のX2方向への極大値Pd4の時刻を、操作ユニット10の加速度(ii)のX2方向への極大値P4の時刻に一時的に一致させることで、振動発生装置30から操作ユニット10に大きな振動エネルギーを伝達することができ、操作ユニット10の加速度の振幅の最大値Pmaxを一時的に拡大することができる。これにより、比較的質量の大きい操作ユニット10をX1-X2方向へ大きな振幅で振動させて、操作している指に操作感触を効果的に与えることが可能になる。
【0038】
図4に示される駆動制御例では、操作ユニット10のX1-X2方向の加速度(ii)が4回目の極大値P4となるときに、加振力(i)の作用方向を加速度(ii)の作用方向に一致させている。操作ユニット10が振動を開始してから時刻(t)付近までのしばらくの間は過渡振動期間であり、この期間で加振力(i)の作用方向を操作ユニット10の加速度(ii)の作用方向に一致させても、操作ユニット10の加速度を拡大させるのが難しい。例えば、操作ユニット10の加速度(ii)の最初の極大値P1付近で、操作ユニット10に作用する加振力(i)の作用方向と操作ユニット10の加速度(ii)の作用方向とをX1方向へ一致させたとしても、操作ユニット10の加速度を拡大する効果が低くなる。そのため、加振力(i)の作用方向を、操作ユニット10の加速度(ii)の作用方向に一致させる時刻を、過渡振動期間の後半または、過渡振動期間後の定常振動期間の開始後に合わせることが好ましい。例えば、操作ユニット10におけるX1-X2方向の加速度(ii)が3回目の極大値P3となった以後に、または
図4に示されるように、4回目の極大値P4となった以後に、操作ユニット10に作用する加振力(i)が作用する方向を、操作ユニット10の加速度(ii)の方向に一時的に合わせることが好ましい。
【0039】
ただし、操作指示の開始直後に指に操作感触を直ちに感じさせるためには、振動開始時刻から、操作ユニット10に作用する加振力(i)の作用方向を操作ユニット10の加速度(ii)の作用方向に合わせる時刻までの時間が、長くなりすぎないことが好ましい。そのためには、操作ユニット10の加速度(ii)が5回目の極大値P5となるまでの間に、あるいは6回目の極大値P6となるまでの間に、操作ユニット10に作用する加振力(i)の作用方向を操作ユニット10の加速度(ii)の作用方向に合わせることが好ましい。
【0040】
以上から、操作ユニット10の加速度(ii)に3回目の極大値P3が現れる時刻と6回目の極大値P6が現れる時刻との間で、操作ユニット10に作用する加振力(i)の作用方向を、振動を開始している操作ユニット10の加速度(ii)の作用方向に合わせることが好ましい。
【0041】
図3に示される入力装置1では、操作ユニット10に加速度センサ15が設けられており、操作ユニット10に生じる加速度が加速度センサ15で検知され、その検知出力が制御部21に与えられる。制御部21では、加速度センサ15の検知出力を参照して、振動発生装置30に与えられる駆動信号の周波数を周期T0から周期T1に切替えるタイミングおよび周期T1が設定される。その結果、
図4に示されるように、振動発生直後において、振動発生装置30から操作ユニット10に作用するX2方向の加振力(i)が極大値Pd4となる時刻と、操作ユニット10のX2方向の加速度(ii)の極大値P4となる時刻とを一致させる制御が容易になる。
【0042】
また、操作ユニット10に設けられた温度センサ14によって操作ユニットおよびその周辺の温度が検知され、その検知出力が制御部21に与えられる。弾性支持機構2の弾性部2kの弾性係数(km)や粘性抵抗部2cの粘性係数(cm)、ならびに振動発生装置30の内部の振動子の振動特性(ka、ca)などは、温度による影響を受けやすく、また振動発生装置30から操作ユニット10への振動伝達効率も温度による影響を受けやすい。そこで、制御部21では、温度センサ14からの検知出力を参照して、振動発生装置30に与えられる駆動信号の周波数の変調の補正や周期をT0からT1に切替えるタイミングを補正することが好ましい。
【0043】
なお、本発明では、加速度センサ15を設けることなく、制御部21において、操作ユニット10の振動特性に応じて、振動発生装置30から操作ユニット10に作用する加振力(i)の周期およびその変調(駆動電圧の変調)を予め固定値に近い状態で設定しておいてもよい。この場合も、温度センサ14からの検知信号に基づいて、温度変化に応じて、設定されている前記加振力(i)の周期の変調を補正することが好ましい。
【0044】
図5Aに本発明の実施形態の入力装置1における駆動制御の他の一例が示されている。
図5Aの駆動制御例では、操作ユニット10に作用する加振力(i)を、最初の1周期で長い周期T0とし、その後の2周期で短い周期T1となるように、加振力(i)の変化が全部で3周期となるように駆動している。そして、操作ユニット10に作用するX2方向の加振力(i)が6回目の極大値Pd6となる時刻を、操作ユニット10のX2方向の加速度(ii)が4回目の極大値P4となる時刻に一致させている。これにより、操作ユニット10の加速度(ii)の振幅の最大値Pmaxを拡大している。
【0045】
図5B、
図5Cには、比較例となる入力装置の制御例が示されている。
図5Bに示される比較例では、振動発生装置30を一定の周期で1周期のみ駆動している。この駆動制御では、過渡振動期間の後半や定常振動期間の初期以降に、操作ユニット10に作用する加振力の方向と、操作ユニット10の加速度の作用方向を一致させることができず、操作ユニット10の加速度(ii)の最大値Pmaxを拡大することが難しい。
【0046】
図5Cに示される比較例では、振動発生装置30を一定の周期で2周期駆動している。そのため、
図5Bの比較例よりも操作ユニット10の加速度(ii)の最大値Pmaxを拡大することが可能である。ただし、
図5Aに示される実施形態と
図5Cに示される比較例において、振動を開始してから同じ時間Taを経過したときの加速度(ii)の減衰幅Pminを比較すると、
図5Cの比較例の方が
図5Aの実施形態よりも減衰幅Pminが大きい。すなわち
図5Cに示される比較例は、操作ユニット10の加速度が大きくなるまでの立ち上がり時間が長くなり、定常振動での減衰率も小さくなるため、操作している指にシャープな操作感触を与えることが難しい。
【符号の説明】
【0047】
1 入力装置
2 弾性支持機構
5 押圧力センサ(第2入力検知部)
10 操作ユニット
12 表示装置
13 タッチセンサ(第1入力検知部)
15 加速度センサ
20 支持装置
21 制御部
30 振動発生装置。
(i) 振動発生装置から操作ユニットに作用する加振力
(ii) 操作ユニットの加速度
T1,T2 振動発生装置の加速度の周期