(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174538
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】化石資源増量装置
(51)【国際特許分類】
C10L 1/32 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
C10L1/32 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080404
(22)【出願日】2021-05-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】513126851
【氏名又は名称】ガルファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000073
【氏名又は名称】特許業務法人プロテック
(74)【代理人】
【識別番号】100167070
【弁理士】
【氏名又は名称】狹武 哲詩
(74)【代理人】
【識別番号】100108051
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 生央
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸二
【テーマコード(参考)】
4H013
【Fターム(参考)】
4H013DC07
(57)【要約】
【課題】化石資源に水、混合剤、触媒等を加え所定の処理を施すことで、化石資源を増量し、その混合状態が長期間保持可能であり、かつ、十分なエネルギー発生効率を保持できる化石資源増量装置及び化石資源増量方法を提供する。
【解決手段】原材料である水を貯蔵する水タンク、原材料である混合剤を貯蔵する混合剤タンク、原材料であるオイルを貯蔵するオイルタンク、水と混合剤とを混合ないし反応させる混合タンク、前記混合タンクで得られた生成物とオイルとを混合ないし反応させる希釈タンク、前記希釈タンクで得られた生成物をろ過するための1以上のフィルタ、を有することを特徴とする化石資源増量装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原材料である水を貯蔵する水タンクと、
原材料である混合剤を貯蔵する混合剤タンクと、
原材料であるオイルを貯蔵するオイルタンクと、
水と混合剤とを混合ないし反応させる混合タンクと、
前記混合タンクで得られた生成物とオイルとを混合ないし反応させる希釈タンクと、
前記希釈タンクで得られた生成物をろ過するための1以上の固・液分離フィルタ及び1以上の油・水分離フィルタと、
を有することを特徴とする化石資源増量装置。
【請求項2】
前記希釈タンクで得られた生成物をろ過するための1以上の沈降式凝集分離装置を有することを特徴とする請求項1に記載の化石資源増量装置。
【請求項3】
前記混合タンク及び前記希釈タンクは、内容物を適切な温度・圧力・撹拌状態に保持するための保温・保圧・撹拌手段を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の化石資源増量装置。
【請求項4】
原材料である水を貯蔵する水タンクと、
原材料である混合剤を貯蔵する混合剤タンクと、
原材料であるオイルを貯蔵するオイルタンクと、
水と混合剤とを混合ないし反応させる混合タンクと、
前記混合タンクで得られた生成物とオイルとを混合ないし反応させる希釈タンクと、
前記希釈タンクで得られた生成物をろ過するための1以上の固・液分離フィルタ及び1以上の油・水分離フィルタと、
を有する化石資源増量装置を用いた化石資源増量方法であって、
原材料である水として、溶存塩化物量0.1mg/L以下、硬度100~1000mg/L、酸化還元電位-876~-795mV、pH10.3~11.7、溶存水素量1.3ppm~1.9ppmである水を前記水タンクに準備し、
原材料である混合剤として、活性炭(粒度1~6um程度)、カーボンナノチューブ(直径0.1um未満、アスペクト比5以上)、シリコンナノ構造体担持ロジウムナノ粒子触媒(高さ5~10um、シリコンワイヤー幅10~100nm)のうち1種類以上を含む無機触媒材料と、ポンガミア油、ジャトロファ油、オウレンボク油、カシューナッツ穀油、ブンカンカ油、廃糖油のうち1種類以上を含む植物系の非食用油とを十分に攪拌混合した混合剤を前記混合剤タンクに準備し、
原材料であるオイルとして、軽油、重油又は灯油を前記オイルタンクに準備し、
前記水タンクからの水と、前記混合剤タンクからの混合剤とを前記混合タンクに導入し、
前記混合タンクにおいて、前記導入された水と混合剤とを混合ないし反応させ、水と混合剤が完全に融合した状態の生成物を得て、
当該混合タンクで得られた生成物と、前記オイルタンクからのオイルとを前記希釈タンクに導入し、
前記希釈タンクにおいて、前記導入された生成物とオイルとを混合ないし反応させ、
前記希釈タンクで得られた生成物から、前記固・液分離フィルタにより固体を分離し、前記油・水分離フィルタにより水分を分離することで最終生成物を得る
ことを特徴とする化石資源増量方法。
【請求項5】
前記化石資源増量装置は、前記希釈タンクで得られた生成物をろ過するための1以上の沈降式凝集分離装置をさらに有しており、
前記希釈タンクで得られた生成物から、前記固・液分離フィルタにより固体を分離し、前記油・水分離フィルタにより水分を分離した後に、前記沈降式凝集分離装置によりろ過を行うことで最終生成物を得ることを特徴とする請求項4に記載の化石資源増量方法。
【請求項6】
前記化石資源増量方法によって得られた最終生成物を原材料であるオイルとして用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の化石資源増量方法。
【請求項7】
前記化石資源増量装置は、前記原材料である混合剤を事前調整し前記混合剤タンクに供給するための混合剤製造装置をさらに有しており、
前記混合剤製造装置において、前記植物系の非食用油を所定温度に加熱し、前記無機触媒材料を加え、所定圧力に加圧して所定時間攪拌して得られる前記原材料である混合剤を、所定温度に保った状態で、前記混合剤タンクに供給することを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の化石資源増量方法。
【請求項8】
原材料である混合剤は、体積比95.0~97.0%の植物系の非食用油と、体積比4.7~2.9%の活性炭及びカーボンナノチューブと、体積比0.3~0.1のシリコンナノ構造体担持ロジウムナノ粒子触媒とをと含むことを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載の化石資源増量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化石資源に水、混合剤(植物系の非食用油と活性炭及びカーボンナノチューブと触媒)を加え所定の処理を施すことで化石資源を増量することができる化石資源増量装置及び化石資源増量方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油や石炭、天然ガスといった化石資源(化石燃料)は、いずれ確実に枯渇すると想定され、代替エネルギーの模索または開発が進められているが、化石資源は現在社会のあらゆる場面において、なお主要なエネルギーとして用いられ人類の生命活動を支えている。この状況に対しては世界的な取り組みが進められているが、各国の足並みは必ずしも揃わず、我が国においても遅れてはおらずとも必ずしも先進的とは言えない状況であることを鑑みれば、国力維持発展のための産業活動を継続するエネルギー要素として、当面は化石資源への依存度は高い状態が続かざるを得ないと考えられる。
また、これまでも産業界では、燃料費が製造コストの大部分を占めており、その価格変動リスクへの対策としてもかかる取り組みが広く行われている。温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルの達成を目指す全世界の潮流に沿って脱炭素社会の実現に貢献するための取り組みとしても、諸施策が試行されている。しかしながら、現行技術では機器類等の使用動力を低減化するなどの対処方法には限界がある。そこで、炭素燃料の燃焼効率を成分構成の増量により向上せしめ、化石資源の効率的活用を実現することで、結果的に燃焼による二酸化炭素の排出の削減につなげることを目的とし、石油等の化石資源そのものの増量による化石資源の総量消費の削減並びに排出ガス削減を実現する成分構成の実現といった解決法、すなわち石油等の化石資源そのものを増量するという解決法が研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-39953号公報
【特許文献2】特許第6598282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、燃料油に水を混合し一定期間分離しない状態とするいわゆるエマルジョン燃料の製法が提案されている。混合状態が保たれている間は、安定した高カロリーの燃料であるとされている。しかしながら、いずれは油水分離が生じるという問題点は解決されていない。また、水を添加することによりエネルギー発生効率がどの程度低下するのか、使用機器への負荷や環境負荷(例えば、SOx、NOx、残留炭素の発生量)がどの程度か、どの程度保管可能なのかといった点は十分に検証されていない。
【0005】
特許文献2には、石油系可燃油に水、活性炭、脂肪油を混合して処理することにより体積増加した可燃油を得る方法が提案されている。しかしながら、その得られた可燃油について、エネルギー効率の良否は全く検討されていない。体積が増量したとしてもエネルギー効率が下がるようであれば、あるいは、使用機器への負荷や環境負荷が抑制できないようであれば、実利的に有用な技術とは考えられない。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、化石資源に水、混合剤、触媒等を加え所定の処理を施すことで、化石資源を増量し、その混合状態が長期間保持可能であり、かつ、使用機器への負荷や環境負荷が低く、十分なエネルギー発生効率を保持できる化石資源増量装置及び化石資源増量方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の解決課題に鑑み鋭意研究の結果、
軽油、重油等の化石資源対し、
・植物系の非食用油及び無機触媒からなる混合剤
・所定の性質を有する水
を所定条件で混合し処理することで、増量された化石資源が得られることを発見した。こうして得られた化石資源は、その混合状態が長期間保持可能であり、かつ、元の化石資源とほぼ遜色ないエネルギー発生効率を有することが確認され、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、原材料である水を貯蔵する水タンクと、原材料である混合剤を貯蔵する混合剤タンクと、原材料であるオイルを貯蔵するオイルタンクと、水と混合剤とを混合ないし反応させる混合タンクと、前記混合タンクで得られた生成物とオイルとを混合ないし反応させる希釈タンクと、前記希釈タンクで得られた生成物をろ過するための1以上の固・液分離フィルタ及び1以上の油・水分離フィルタと、を有することを特徴とする化石資源増量装置を提供するものである。
本発明の化石資源増量装置は、さらに、前記希釈タンクで得られた生成物をろ過するための1以上の沈降式凝集分離装置を有することを特徴とする。
これにより、より精製され各種品質基準をクリア可能な最終生成物が得られる。
本発明の化石資源増量装置において、前記混合タンク及び前記希釈タンクは、内容物を適切な温度・圧力・撹拌状態に保持するための保温・保圧・撹拌手段を有していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、原材料である水を貯蔵する水タンクと、原材料である混合剤を貯蔵する混合剤タンクと、
原材料であるオイルを貯蔵するオイルタンクと、水と混合剤とを混合ないし反応させる混合タンクと、前記混合タンクで得られた生成物とオイルとを混合ないし反応させる希釈タンクと、前記希釈タンクで得られた生成物をろ過するための1以上の固・液分離フィルタ及び1以上の油・水分離フィルタと、を有する化石資源増量装置を用いた化石資源増量方法であって、原材料である水として、溶存塩化物量0.1mg/L以下、硬度100~1000mg/L、酸化還元電位-876~-795mV、pH10.3~11.7、溶存水素量1.3ppm~1.9ppmである水を前記水タンクに準備し、原材料である混合剤として、活性炭(粒度1~6um程度)、カーボンナノチューブ(直径0.1um未満、アスペクト比5以上)、シリコンナノ構造体担持ロジウムナノ粒子触媒(高さ5~10um、シリコンワイヤー幅10~100nm)のうち1種類以上を含む無機触媒材料と、ポンガミア油、ジャトロファ油、オウレンボク油、カシューナッツ穀油、ブンカンカ油、廃糖油のうち1種類以上を含む植物系の非食用油とを十分に攪拌混合した混合剤を前記混合剤タンクに準備し、原材料であるオイルとして、軽油、重油又は灯油を前記オイルタンクに準備し、前記水タンクからの水と、前記混合剤タンクからの混合剤とを前記混合タンクに導入し、前記混合タンクにおいて、前記導入された水と混合剤とを混合ないし反応させ、水と混合剤が完全に融合した状態の生成物を得て、当該混合タンクで得られた生成物と、前記オイルタンクからのオイルとを前記希釈タンクに導入し、前記希釈タンクにおいて、前記導入された生成物とオイルとを混合ないし反応させ、前記希釈タンクで得られた生成物から、前記固・液分離フィルタにより固体を分離し、前記油・水分離フィルタにより水分を分離することで最終生成物を得ることを特徴とする化石資源増量方法を提供するものである。
本発明の化石資源増量方法において、前記化石資源増量装置は、前記希釈タンクで得られた生成物をろ過するための1以上の沈降式凝集分離装置をさらに有しており、前記希釈タンクで得られた生成物から、前記固・液分離フィルタにより固体を分離し、前記油・水分離フィルタにより水分を分離した後に、前記沈降式凝集分離装置によりろ過を行うことで最終生成物を得ることを特徴とする。
これにより、より精製され各種品質基準をクリア可能な最終生成物が得られる。
また、本発明の化石資源増量方法によって得られた最終生成物を、さらに原材料であるオイルとして用いて燃料増量を行うことも可能である。
本発明の化石資源増量方法において、前記化石資源増量装置は、前記原材料である混合剤を事前調整し前記混合剤タンクに供給するための混合剤製造装置をさらに有しており、前記混合剤製造装置において、前記植物系の非食用油を所定温度に加熱し、前記無機触媒材料を加え、所定圧力に加圧して所定時間攪拌して得られる前記原材料である混合剤を、所定温度に保った状態で、前記混合剤タンクに供給することを特徴とする。
本発明の化石資源増量方法において、原材料である混合剤は、体積比95.0~97.0%の植物系の非食用油と、体積比4.7~2.9%の活性炭及びカーボンナノチューブと、体積比0.3~0.1のシリコンナノ構造体担持ロジウムナノ粒子触媒とをと含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上、説明したように、本発明の化石資源増量装置及び化石資源増量方法によれば、化石資源を増量し、その混合状態が長期間保持可能であり、かつ、十分なエネルギー発生効率を保持できる化石資源増量装置及び化石資源増量方法が提供される。また、環境負荷も所定基準内に収まることが確認されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる化石資源増量装置の構成を模式的に示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる化石資源増量装置の配管構成等を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる化石資源増量装置を用いて、化石資源を増量する方法について、その具体的な処理手順を示すフロー図である。
【
図4】原材料の水について、混合剤との融合度合の評価を行った試験結果を示す表である。
【
図5】原材料の水について、混合剤との融合度合の評価を行った試験結果を示す表である。
【
図6】原材料の水について、混合剤との融合度合の評価を行った試験結果を示す表である。
【
図7】元油の増量具合についての試験結果を示す表である。
【
図8】完全自動化した専用の製造工場において製造実験を行った結果を示す。
【
図9】実施例における原材料オイルである軽油について、外部団体により成分分析試験を行った結果を示す図である。
【
図10】実施例で得られた最終生成物について、外部団体により成分分析試験を行った結果を示す図である。
【
図11】原材料オイルである軽油と、実施例で得られた最終生成物のそれぞれについて、ガスクロマトグラフー飛行時間型質量分析を行った結果を示す図である。
【
図12】原材料オイルである軽油と、実施例で得られた最終生成物のそれぞれについて、ガスクロマトグラフー飛行時間型質量分析を行った結果を示す図である。
【
図13】原材料オイルである軽油と、実施例で得られた最終生成物のそれぞれについて、ガスクロマトグラフー飛行時間型質量分析を行った結果を示す図である。
【
図14】原材料オイルである軽油と、実施例で得られた最終生成物のそれぞれについて、ガスクロマトグラフー飛行時間型質量分析を行った結果を示す図である。
【
図15】市販の軽油と、実施例で得られた最終生成物のそれぞれについて、自動車の燃料として使用した場合の排気ガス測定を行った結果を示す図である。
【
図16】市販の軽油と、実施例で得られた最終生成物のそれぞれについて、自動車の燃料として使用した場合の燃費測定試験を行った結果を示す図である。
【
図17】市販の軽油と、実施例で得られた最終生成物のそれぞれについて、自動車の燃料として使用した場合のばい煙量測定を行った結果を示す図である。
【
図18】最終生成物を元油として利用した完全自動化プラントの実施例を示す図である。
【
図19】実施例において用いた混合剤製造装置の例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の化石資源増量装置及び化石資源増量方法を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1~
図19は、本発明の実施の形態を例示する図である。
【0013】
化石資源増量装置の全体構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる化石資源増量装置の構成を模式的に示す概略図である。
図1において、本実施形態の化石資源増量装置は、材料供給手段として、還元水素水発生装置を有し、材料タンクとして、水タンク、混合剤タンク、オイルタンクを有し、反応用タンクとして、混合タンク、希釈タンクを有しており、各タンクは、内容物を適切な温度・圧力・撹拌状態等の条件に保持するための手段を備えている。また、中間・最終生成物の一時貯蔵用タンクとして、貯蔵タンク、最終生成物タンクを有している。また、反応生成物をろ過するための装置として、フィルタプレス(固・液分離フィルタ装置)、油・水分離装置、沈降式凝集分離装置を有している。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態にかかる化石資源増量装置の配管構成等を模式的に示す図である。
図2における「ケミカル貯蔵タンク」、「ペーストタンク」は、それぞれ、
図1における「混合剤タンク」、「混合タンク」に相当する。
また、
図2では、「ケミカル貯蔵タンク」、「ペーストタンク」をそれぞれ2個設置している。3種類のろ過装置(フィルタプレス、油・水分離装置、沈降式凝集分離装置)もそれぞれ2個設置している。このように、
図1に示す装置全体構成を本質的に変えない範囲で、製造設備の都合上、あるいは、製造工程の効率化のため、各装置の構成を変更することができる。さらに、図示しない、原材料を調整するための装置を備えていることもある。
【0015】
次に、本実施形態の化石資源増量装置を用いて、化石資源を増量する方法について説明する。
図3は、その具体的な処理手順を示すフロー図であり、以下、この図面に沿って各処理手順を説明する。
【0016】
原材料の調整
材料タンクである水タンク、混合剤タンク、オイルタンクのそれぞれに供給される原材料について説明する。
尚、以下において、水の硬度については、日本国で一般的に使用されている以下の計算式から算出している。
硬度[mg/L]=(カルシウム量[mg/L]×2.5)+(マグネシウム量[mg/L]×4.1)
1)水
水タンクに供給される水は、一定範囲の酸化還元電位、一定範囲のpH、一定範囲の溶存水素量、一定範囲の溶存塩化物量、一定範囲の硬度を有している。
具体的には、以下の基準範囲内の水を用いる。これらは、出願人が経験的に割り出した好適な数値範囲であるが、さらに実験的に判明した好適な数値範囲については後述する。
酸化還元電位 -900mV以上、-600mV以下(-900mV~-600mV)
pH 10.0以上、12.0以下(10.0~12.0)
溶存水素量 1.1ppm以上、1.9ppm以下(1.1ppm~1.9ppm)
溶存塩化物量 0.1mg/L以下
硬度 100mg/L以上、1000mg/L以下(100mg/L~1000mg/L)
上記の性質を持つ水を得るには、天然水、水道水等を化学的・物理的に処理する方法のほか、純水を原材料とし添加物等で調整する方法もある。
2)混合剤
混合剤は、1種類以上の無機触媒材料と、1種類以上の植物系の非食用油とを含んでいる。
無機触媒材料は、例えば、活性炭(粒度1~6um程度)、カーボンナノチューブ(直径0.1um未満、アスペクト比5以上)、シリコンナノ構造体担持ロジウムナノ粒子触媒(SiNA-Rh)(高さ5~10um、シリコンワイヤー幅10~100nm)などである。
植物系の非食用油は、例えば、ポンガミア油、ジャトロファ油、オウレンボク油、カシューナッツ穀油、ブンカンカ油、廃糖油などである。
これらの材料は、事前によく混合された状態であることを必要とする。また、本実施形態の化石資源増量装置を完全自動運転で大量製造させるためには、事前に混合剤を製造し安定供給できる設備が必要である。
その混合剤製造装置の例としては、
図19に示す装置のように、植物系の非食用油をまず加え50℃~60℃まで加熱し、ディスパ羽根の回転軸方向に攪拌するモーターにて360回転/分で5分間攪拌し、活性炭を加え、20分~30分攪拌し、無機触媒材料を加え、容器内を圧力0.2Mpa程度に加圧し攪拌を10分~15分行うというものである。製造した混合剤は、30℃~40℃で保温する。
3)オイル
オイル、すなわち増量される対象となる化石資源は、軽油、重油、灯油など鉱物油を加工して得られるものである。
【0017】
材料タンク準備工程
材料タンクである水タンク、混合剤タンク、オイルタンクのそれぞれに適量の原材料を供給し、適切な温度・圧力・撹拌状態等の条件に保持する。
この工程は必須ではないが、これら原材料の投入先のタンクですぐに反応できるように、条件を整えておくのが製造効率上好ましい。特に、混合剤タンクには、常時、無機触媒材料と植物系の非食用油とが十分に混合された必要量の混合剤を供給する(このために、混合装置を前段階に設置してもよい)。
【0018】
混合タンクにおける混合工程
混合タンクを適切な温度・圧力等の条件にしておく。水タンク、混合剤タンクから所定量の水、混合剤を混合タンクに投入する。この投入は、混合タンクを水タンク、混合剤タンクよりも負圧にしておき、配管経由で吸引する形でもよい。
水、混合剤を所定の温度・圧力下で、所定時間、所定条件で撹拌する。
【0019】
希釈タンクにおける希釈工程
希釈タンクを適切な温度・圧力等の条件にしておく。混合タンク、オイルタンクから所定量の被混合物、オイルを希釈タンクに投入する。この投入は、上記同様、希釈タンクへの吸引でもよい。製造効率上は、混合タンク内の被混合物の全量と、それに所定比率応じた量のオイルを投入(吸引)するのが好ましい。
混合物、オイルを所定の温度・圧力下で、所定時間、所定条件で撹拌する。
撹拌後の中間生成物は、貯蔵タンクに一時貯蔵される。
【0020】
各種フィルタによるろ過工程
貯蔵タンクの中間生成物を取り出して、3種類のろ過装置を順に通過させる。
1つ目のフィルタプレス(固・液分離フィルタ装置)では、固体として主に無機触媒材料を分離し除去する。
2つ目の油・水分離装置では、油分から水分を分離し除去する。尚、本発明では、乳化剤を添加したり機械的な乳化処理を行うことはないため、この時点で含まれる水分のほぼ全量が除去されるものと考えられる。
3つ目の沈降式凝集分離装置では、その他の不純物を除去する。具体的には、無機触媒材料に含まれていた残留炭素分を分離し除去する。
【0021】
品質チェック工程
これらのフィルタを通過した液体は、最終生成物タンクに貯蔵される。
この最終生成物タンクに得られた生成物を用いて、品質チェックを行う。
品質チェックの対象項目は、例えば、エネルギー発生効率、環境負荷等発生の有無、長期保存性能、油水分離の可能性の有無などであるが、この他にも、最終製品として完成するためのあらゆるチェックを行うことが考えられる。
以上の工程を経て、最終生成物が得られる。
【実施例0022】
以下、上記の実施形態に基づき、化石資源増量装置を用いて、化石資源を増量する実験を様々な条件下で行った結果と、原材料、実施条件、生成物の特性などに関する考察を述べる。
【0023】
原材料の性質と配合に関する考察
1)水
原材料の水について、酸化還元電位、pH、溶存水素量、溶存塩化物量、硬度の変化による、混合剤との融合度合について評価を行った。
原材料の水の性質測定のために使用した測定機器は以下の通りである。
PH測定 「EA-2」 EACHEN社製
溶存水素濃度判定試薬 Miz株式会社
酸化還元電位計 「YK-23RP」 株式会社マザーツール
残留塩素計 「EW-520-WH」 株式会社タニタ
ポータブル全硬度計 「HI96735」 トンナ社製
水と混合剤との融合度合の評価方法は、ステンレスシャーレ(φ120×25×0.8mm)に適量の混合剤を入れ、適量の原材料の水を2~3回に分けて投入し約10分間スプーン等で混合した時の混合状態を観察したものである。混合により水と混合剤が交わってスラリー状態(黒色ペースト状)になる。水と混合剤との融合度合が不十分な場合は、スラリー表面に水滴もしくは水塊が見られる。水滴もしくは水塊が全く見られない場合を融合度合100%とし、それ未満の融合度合は目視で評価した。
本発明において所望の最終生成物を得るためには、水と混合剤との融合度合がほぼ完全となっているのが不可欠であることを、出願人は経験的に知得しており、以下の試験では、融合度合100%(目視ではスラリーから分離する水分がない状態)の場合のみを好適なものと判定している。
【0024】
1A)塩素濃度
原材料の水について、
酸化還元電位を好適範囲である-780~-710mV、
pHを好適範囲である10.1~10.6、
溶存水素量を好適範囲である1.1ppm~1.4ppm、
硬度を好適範囲である60mg/L
とした上で、
溶存塩化物量を0.0~0.5mg/Lまで変化させたサンプルを用いて、混合剤との融合度合の評価を行った。
図4は、その試験結果を示す表である。この試験結果から、溶存塩化物量は、0.1mg/L以下とすべきことが分かった。
1B)硬度
原材料の水について、
酸化還元電位を好適範囲である-805~-710mV、
pHを好適範囲である10.1~10.5、
溶存水素量を好適範囲である1.1ppm~1.4ppm、
溶存塩化物量を好適範囲である0.1mg/L
とした上で、
硬度を0~1000 mg/Lまで変化させたサンプルを用いて、混合剤との融合度合の評価を行った。
図5は、その試験結果を示す表である。この試験結果から、硬度は、100~1000 mg/Lとすべきことが分かった。
1C)酸化還元電位、pH、溶存水素量
原材料の水について、
溶存塩化物量を好適範囲である0.1mg/L、
硬度を好適範囲である100mg/L
とした上で、酸化還元電位、pH、溶存水素量を変化させたサンプルを用いて、混合剤との融合度合の評価を行った。
図6は、その試験結果を示す表である。この試験結果から、
酸化還元電位は-876~-795mV、
pHは10.3~11.7、
溶存水素量は1.3ppm~1.9ppm
とするのが好ましいことが分かった。
【0025】
燃料増量に関する考察
各種の植物系非食用油を利用した場合について比較検討した。
原材料の水について、
酸化還元電位を好適範囲である-720~-680mV、
pHを好適範囲である10.1~11.1、
溶存水素量を好適範囲である1.0ppm~1.5ppm、
溶存塩化物量を好適範囲である0.1mg/L以下、
硬度を好適範囲である100mg/L~1000mg/L
とした還元水素水250mLを用いた。
無機触媒材料として、
活性炭(粒度1~6um)1.2g、
カーボンナノチューブ50mg、
触媒SiNA-Rh 50mg、
を用いた。
混合剤として、
A)ホウレンボク油、ジャトロファ油、ブンカンカ油又はポンガミア油20mLと、上記無機触媒材料とを、ホモジナイザーを用いて50~60℃で攪拌したもの、
B)ホウレンボク油、ジャトロファ油、ブンカンカ油又はポンガミア油10mLと、カシューナッツ穀油6mL、又はカシューナッツ穀油3mL及び廃糖油3mLとを、ホモジナイザーを用いて50~60℃で攪拌したもの
を調整し、これらを混ぜて十分に攪拌したものを用いた。
つまり、混合剤として、4種類のいずれか植物系非食用油と、カシューナッツ穀油又はカシューナッツ穀油と廃糖油の混合物とを組み合わせて、合計8通りのサンプルを作製した。
上記の各々の混合剤に上記の還元水素水250mLを加えて十分に撹拌しスラリーを作成する。これに事前に50℃で加熱した軽油460mLを加えて、スラリーの状態を維持させながら10分間攪拌する。全体の混合物から活性炭等の濾過紙により固形物をろ過し、油・水分離をして、油分として生成物を得た。
図7は、その実験結果を示す表である。
この試験結果から、燃料油の軽油460mLに対して、570~724mLの油分としての生成物が得られたことが分かる。
また、この実験において用いた混合剤に含まれる各成分量を体積換算したところ、体積比95.0~97.0%の植物系の非食用油、体積比4.7~2.9%の活性炭及びカーボンナノチューブ、体積比0.3~0.1の触媒SiNA-Rhから混合剤が構成されていることが分かった。
【0026】
完全自動化プラントにおける実施例
上記の考察に基づき、製造工程を完全自動化した専用の製造工場において、製造実験を行った。
原材料である水として、
酸化還元電位を好適範囲である-770~-731mV、
pHを好適範囲である11.36~11.79、
溶存水素量を好適範囲である1.40ppm~1.60ppm、
溶存塩化物量を好適範囲である0.1mg/L以下、
硬度を好適範囲である100mg/L~1000mg/L
とした還元水素水50.0Lを水タンクに準備した。
混合剤として、ポンガミア油、カシューナッツ穀油と、無機触媒材料(活性炭、カーボンナノチューブ、触媒SiNA-Rhを含む)とを、上記「燃料増量に関する考察」及び
図7の例(8)におけるのと同様の配合で、上記の混合剤製造装置を用いて調整した。この混合剤11.0Lを混合剤タンクに準備した。50℃~75℃で加熱・攪拌している。
原材料オイルとして、市販の軽油114.3Lをオイルタンクに準備した。50℃~75℃で加熱・攪拌している。
混合タンクを真空ポンプにより減圧-100kgにして、混合剤11.0Lと還元水素水50.0Lを同時に混合タンク吸引した。但し、還元水素水の吸引は、5L吸引を70秒間6回、2L吸引を30秒間10回と断続的に行った。
混合剤吸引開始後、希釈タンクを真空ポンプにより減圧-150kgにして、軽油114.3Lを希釈タンクに吸引し、温度50℃で攪拌しておく。
混合タンクにおいて、還元水素水投入完了後、混合物を100秒間攪拌した後、これを全て希釈タンクに吸引した。その後、希釈タンクで200秒間攪拌を行った。その後、希釈タンの内容物を全て貯蔵タンクに吸引した。
貯蔵タンクの内容物を、フィルタプレス、油・水分離装置に送液し、これらにおいて、油性生成分以外の不要な水分を水ドレインに排出させた。その生成物は沈降式凝集分離装置に送液した。沈降式凝集分離装置において、主に無機触媒材料由来の炭素成分や固形物をろ過し、最終生成物を得た。
この正常実験を10回行った。
図8は、その実験結果を示す表である。
この試験結果から、原材料オイルである軽油に対して、44~55%増量された最終生成物が得られたことが分かる。
【0027】
最終生成物の成分分析
原材料オイルである軽油と、上記の「完全自動化プラントにおける実施例」及び
図8の例(1)において得られた最終生成物とのそれぞれについて、外部団体により成分分析試験を行った。その結果を
図9、
図10に示す。
これらの試験結果から、この最終生成物は、原材料オイルである軽油とほぼ同等な成分・性質を有しており、かつ、総発熱量も同等であることが確認された。すなわち、この最終生成物は、原材料オイルである軽油と同等の品質要求値をクリアしており、かつ、同等の発熱量の燃料として有用なものであることが確認された。
但し、
図10に示すように、この最終生成物の10%残油の残留炭素分は、質量比0.32%であった。我が国の日本工業規格によれば、この指標値は質量比0.1%以下であるのが好ましいとされており、出願人は、無機触媒材料の粒度分布を調整したり、ろ過材のフィルタを精密なものにするなどして、この要求を満たすべくさらに試験研究を進めている。
【0028】
ガスクロマトグラフー飛行時間型質量分析
原材料オイルである軽油と、上記の「完全自動化プラントにおける実施例」及び
図8の例(1)において得られた最終生成物とのそれぞれについて、ガスクロマトグラフー飛行時間型質量分析JMS-T200GC AccuTOF GCx-plusを用いて、FD測定の実施を行った。原材料オイルである軽油に含まれていた高分子の数量や性質の変化に注目したものである。
測定材料として
Sample-1 原油(軽油)
Sample-2 EVOLU OIL(最終生成物)
サンプルの試験を行った。
測定条件は下記の通りである。
イオン化法:FD?
カソード電圧:-10KV
エミッタ電流:0mA→51.2 mA/min →40mA
質量範囲:m/z 35-1600
スペクトル記録間隔:0.4sec
各サンプルともにFDでTICクロマトグラムと溶出成分のマススペクトルを
図11~
図14に示す。
図11は、原油(軽油)のTICクロマトグラムと溶出成分(1.2)のマススペクトルを示す。
図12は、EVOLU OIL(最終生成物)のTICクロマトグラムと溶出成分(1.2)のマススペクトルを示す。
図13は、原油(軽油)とEVOLU OIL(最終生成物)の比較で、TICクロマトグラムと溶出成分の全領域のマススペクトルを示す。MnとMwを算出している。(m/z125-1600)
図14は、各サンプルの溶出成分(軽油成分)のマススペクトルを示す。Mn (数平均分子量)、Mw(重量平均分子量)、PD(分散度)を算出している。(m/z150-700)
それぞれの高分子の数は、以下の通りである。
Samle-1:原油の全領域スペクトル :3,367
Samle-1_1:原油の溶出成分1のスペクトル :1,616
Samle-1_2:原油の溶出成分1のスペクトル :1,755
Samle-2:EVOLU OILの全領域スペクトル :1,944
Samle-2_1:EVOLU OILの溶出成分1のスペクトル :393
Samle-2_2:EVOLU OILの溶出成分2のスペクトル :1,230
【0029】
<データから推察される事象>
<1>全領域では、MnもMwもEVOLU OILの方が質量が大きい。
原油とEVOLU OILの比較
TICクロマトグラムと溶出成分の全領域のマススベクトルを示す。
また、MnとMwを算出した。(m/z125-1600)
【表1】
<2>軽油成分だけでは、MnもMwも原油の方が質量は大きいが、その差は、それほど大きくはない。分散度は、ほぼ同じ。
各サンプルの溶出成分1(軽油成分)のマススベクトルを示す。
Mn、Mw、PD(分散度)を算出した。(m/z150-700)
【表2】
<3>「溶出成分1(=軽油成分)」における高分子の数には、大きな差がある。
Samle-1_1:原油の溶出成分1のスペクトル :1,616
Samle-2_1:EVOLU OILの溶出成分1のスペクトル :393
上記<2>に示す通り、それぞれの軽油成分の質量は、ほぼ同じであるのに、EVOLU OILの高分子の数は、約1/4に減少している理由は何か?この事は全く予期しなかった現象である。ただし、双方のカロリーは、ほぼ同じ。(
図9、
図10)
未だ推察の域を出ないが、混合剤との反応により、軽油の高分子の構造に変化が起こっているのではないかと思われる。そして、より安定な高分子統合が行われたと考えられる。
<4>
図13のマススペクトルで、原油と本発明の方法により得られた生成物と比較すると、m/z125-1600の領域で見られる主要なピークは互いに類似しており、m/z858付近で細かい山が見られるが、混合剤の植物系非食用油と思われる。
【0030】
排気ガス測定試験及び燃費測定試験
原材料オイルである軽油(すなわち市販の軽油)と、上記の「完全自動化プラントにおける実施例」及び
図8の例(1)において得られた最終生成物とのそれぞれについて、自動車の燃料として使用した場合の、排気ガス測定及び燃費測定試験を行った。その結果を、
図15、
図16に示す。
車両はトヨタ ハイエース3000ccのディーゼル車を使用し、測定器オパシメータ(有害物質である粒子状物質(PM)が排気ガスにどれだけ含まれているかを測定する装置)を使用して、測定を行った。
市販の軽油では測定値が0.01m-1であったのに対し、生成物では測定値0.00と粒子状物質は含まれないという結果が得られた(
図15)。
次に、車輌走行試験を行った。マツダ アテンザ2000ccディーゼル車を使用し、最終生成物を燃料に使用して走行試験を行ったところ、通常燃料使用時に比較して燃費が15.7%の燃費向上が確認された(
図15、
図16)。
【0031】
排気塔のガス分析測定
原材料オイルである軽油(すなわち市販の軽油)と、上記の「完全自動化プラントにおける実施例」及び
図8の例(1)において得られた最終生成物とのそれぞれについて、ばい煙量測定を行った。その結果を、
図17に示す。
その結果、硫黄酸化物(SOx)は、軽油0.0004m3/Hであるのに対して、最終生成物0.0003m3/Hと低減していることが確認された。窒素酸化物(NOx)は、軽油25ppmであるのに対して、最終生成物22ppmと低減していることが確認された。その他の測定指標については、両者ほぼ同等の数値であった。
【0032】
反応条件に関する考察
1)混合タンクにおける混合工程の反応条件
事前に用意した混合剤は、温度50~75℃で加熱し撹拌した状態で、混合タンクを真空にて
減圧-100kgで設定し、同時に混合剤を混合タンクに吸引する。同時に撹拌しながら還元
水素水を出来るだけ小きざみに15~20回に分けて吸引する。その後100秒撹拌する。
還元水素水を小きざみに吸引するのは、混合剤を還元水素水との分解の反応が高くなり
混合剤と結合し易くなる。この状態の時は、活性炭と植物油と還元水素水と反応して微小な気泡が表面に出ている状態が出来上がりである。
2)希釈タンクにおける希釈工程の反応条件
希釈タンクを減圧-100~150kgにして、混合剤を吸引し、減圧-150kgの設定に達したところで、軽油を吸引する。この状態は混合剤によって、軽油の炭素(C)間の結合を切断し
水素(H)と結合するという化学反応がおこる。還元水素水が植物油と軽油と反応し、新しい同じ成分の軽油の生成物ができる。
【0033】
化学反応に関する考察
化石資源(化石燃料)の軽油または重油等は、アルカンのクラスに含む。
アルカンの化学特徴は、分子の中の原子と原子の連結(C-CまたはC-Hの連結)は強く壊し難い性質を持つ。そこで、一般的な水に電気的作用により、PH10以上の電解水、溶存水素濃度1.1ppm以上、酸化還元電位-700mv以下、残留塩素濃度0.1mg/L以下、硬度100mg/L以上の“還元水素水”を作る。
還元水素水でpHが高くなると、分解の反応が高くなり混合剤との結合がし易くなる。水と油は化学の特徴が全く違うため、水に油を入れても交わることはなく、化学反応も起きない。軽油または重油等と水とが、化学反応出来るように還元水素水で調整した混合剤が必要である。
混合剤によって炭素(C)間の結合を切断し、水素(H)と結合するという化学反応がおこる。
生成物反応の化学式
【化1】
軽油または重油等を新開発の混合剤により炭素(C)間の連結が切断され、水素と結合の反応し、炭化水素1分子と水素1分子であったものが、炭化水素2分子に分解する。
分解した炭化水素の分子は分解前より小さくなるが、水は炭化水素より小さい上に、極性(水素がプラスに帯電、酸素がマイナスに帯電)により、分子間の距離が近いため(炭化水素は無極性で全体的に電気的な力が働かないが、分子間が近づいた場合は、水素の陽子同士が反発)反応後は体積が幾らか増えることになる。(水の比重は1であるが、軽油は0.82である。水が軽油になるので反応後は体積が増える。)
水の構造、性質に着目し、分解の反応が高くなる還元水素水(PH10以上の電解水、溶存水素濃度1.1ppm以上、酸化還元電位-700mv以下、残留塩素濃度0.1mg/L以下、硬度100mg/L以上)を製造し、還元水素水、軽油および重油等、混合剤を、温度、圧力、撹拌状態の条件を保持する機械設備で化学反応させて特殊ろ過設備でろ過した製品が生成物となる。
【0034】
最終生成物を元油として利用した完全自動化プラントの実施例
図18の実施例は、完全自動化した専用の製造工場において行った。
図8の(1)で得られた生成物を再度オイルタンクに市販の軽油のかわりに生成物を入れ、混合剤の量を
図7の(8)の実施例より混合剤の量を20~30%増加した他は
図8の実施例(1)と同様の作業手順で行った。いずれも高い増加率で生成物が得られた。
【0035】
以上、本発明の化石資源増量装置及び化石資源増量方法について、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態における化石資源増量装置の構成及び機能、原材料の選定と配合、反応工程といった点に様々な変更・改良を加えることが可能である。
特許文献2には、石油系可燃油に水、活性炭、脂肪油を混合して処理することにより体積増加した可燃油を得る方法が提案されている。しかしながら、その得られた可燃油について、エネルギー効率の良否の検討は不十分である。体積が増量したとしてもエネルギー効率が下がるようであれば、あるいは、使用機器への負荷や環境負荷が抑制できないようであれば、実利的に有用な技術とは考えられない。