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特開2022-17454湾曲した針を介する治療剤の網膜下投与のための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017454
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】湾曲した針を介する治療剤の網膜下投与のための装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
A61F9/007 170
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179357
(22)【出願日】2021-11-02
(62)【分割の表示】P 2018567011の分割
【原出願日】2017-03-09
(31)【優先権主張番号】62/305,767
(32)【優先日】2016-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/438,918
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520404610
【氏名又は名称】ジャイロスコープ・セラピューティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー・トーマス・イー
(72)【発明者】
【氏名】コー・ベンジャミン・エル
(72)【発明者】
【氏名】カーン・イサック・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】プライス・ダニエル・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】オーベルキルヒャー・ブレンダン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】キーン・マイケル・エフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】上脈絡膜アプローチから患者の眼に治療剤を網膜下投与するための処置で使用するように構成された器具を提供する。
【解決手段】装置(10)は、本体(20)、カニューレ(50)、及び針を含む。カニューレは、可撓性で本体から遠位に延びる。針はカニューレ内に摺動可能に配置されている。針は、鋭利な遠位先端と湾曲部分を含む。針が近位位置と遠位位置との間でカニューレに対して並進するように構成される。針が近位位置にあるときに遠位先端がカニューレの内側に位置するように構成される。遠位先端は、針が遠位位置にあるときにカニューレの外側に配置されるように構成される。針は、湾曲部分を湾曲に沿って延びるように弾性的に付勢される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)本体、
(b)前記本体から遠位に延びるカニューレであって、可撓性であり、患者の眼の強膜と脈絡膜に外傷を与えることなく、前記強膜と前記脈絡膜との間でカニューレを前進させることができるように、強膜層と脈絡膜層との間に分離を提供するように構成された遠位端を備え、側方開口部を含む、前記カニューレ、及び
(c)前記カニューレに摺動可能に配置された針であって、
(i)鋭利な遠位先端部であって、前記針が近位位置と遠位位置との間で前記カニューレに対して並進するように構成され、前記針が前記近位位置にあるときに前記遠位先端部が前記カニューレの内側に位置するように構成され、前記遠位先端部は、前記針が前記遠位位置にあるときに前記カニューレの外側に配置されるように構成されている、鋭利な前記遠位先端部と、
(ii)湾曲部分であって、前記針が前記湾曲部分にわたる湾曲部に沿って延びるように弾性的に付勢される、前記湾曲部分と、
(iii)直線状の近位部分と、
(iv)直線状の遠位部分であって、前記湾曲部分が前記直線状の近位部分と前記直線状の遠位部分との間に長手方向に配置されていることを特徴とする、遠位部分と、
を含む針と、
を含む装置。
【請求項2】
(i)前記カニューレの前記遠位端は閉鎖された遠位端であり、
前記カニューレが、
(ii)前記閉鎖された遠位端の近位に配置されている側方開口部を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記カニューレがランプ機構を更に含み、前記ランプ機構が前記カニューレの内部領域から前記側方開口部まで延在する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記湾曲部分が、一定の曲率半径を画定するように弾性的に付勢されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記曲率半径が7mm~12mmであり、好ましくは、4mm~15mmであり、更に好ましくは、9mm~10mmである、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記湾曲部分は、前記針が前記カニューレに対して遠位に前進する距離に基づいて、前記遠位先端部を前記カニューレの長手軸に対して、徐々に増加する出口角で位置決めするように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記湾曲部分は、第1の湾曲領域と第2の湾曲領域とを含み、前記第1の湾曲領域は、前記針の遠位部分の近くに配置され、前記第2の湾曲領域は、前記第1の湾曲領域の近位に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
0063
前記第1の湾曲領域が第1の曲率半径を備え、前記第2の湾曲領域が第2の曲率半径を備え、前記第2の曲率半径が前記第1の曲率半径よりも大きい、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の湾曲領域が前記カニューレに曲率を付与しないように構成され、前記第2の湾曲領域が前記カニューレに曲率を付与するように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記カニューレの前記遠位端が開放遠位端であり、前記針が遠位位置にあるときに、前記針が前記カニューレの前記開放遠位端から突出するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
液体治療剤の供給源をさらに備え、前記針が治療剤を送達するように動作可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記本体は、
(i)針アクチュエータであって、前記針を前記カニューレに対して長手方向に駆動するように動作可能である針アクチュエータ、及び、
(ii)弁部材であって、前記液体治療剤の供給源から前記針への流体連通を選択的に提供するように動作可能である、弁部材を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記針の遠位先端部が、前記針が前記遠位位置にあるときに前記側方開口部を越えて延びるように構成されており、
前記針の前記湾曲部が、前記針が前記遠位位置にあるときに、前記針の前記側方開口部を越えて延びる部分に斜めの出口角を提供するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項14】
前記湾曲部分は、前記針が前記近位位置にあるときに、前記カニューレ内で直線状の構成に変形するように更に構成されている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記カニューレは、強膜及び脈絡膜の輪郭に適合するのに十分に可撓性であるが、座屈せずに強膜と脈絡膜との間を前進させるのに十分な柱強度を有することを歪みを伴わずに進むのを可能にするのに十分な柱強度を有する、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本願は、2016年3月9日に出願された「Curved Needle Choroidal Penetration」という名称である米国仮特許出願第62/305,767号に対する優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
人間の眼にはいくつかの層が備わっている。白い外側の層は強膜で、脈絡膜の層を取り囲んでいる。脈絡膜層の内側に網膜がある。強膜はコラーゲン及び弾性繊維を含み、脈絡膜及び網膜を保護する。脈絡膜層は、網膜に酸素及び栄養を与える脈管構造を含む。網膜は、桿体及び錐体を含む感光性組織を含む。網膜黄斑は、眼球の後ろ側の網膜の中心に位置し、一般に、水晶体の中心及び眼の角膜を通る軸(すなわち、光軸)を中心とする。網膜黄斑は、特に錐体細胞を介して、中心視力をもたらす。
【0003】
黄斑変性症は網膜黄斑を損なう病状であり、黄斑変性症を患う者達が、ある程度の周辺視力を維持しながら、中心視力の喪失または劣化を経ることがある。黄斑変性症は、加齢(「AMD」としても知られる)及び遺伝学などの様々な要因によって引き起こされる可能性がある。黄斑変性症は、「ドライ型」(非滲出型)の形態で起こることがあり、ドルーゼンとして知られる細胞のデブリが網膜と脈絡膜との間に蓄積し、その結果、地図状萎縮の領域になる。黄斑変性症はまた、網膜の後ろの脈絡膜から血管が成長する「ウェット型」(滲出型)の形態でも起こり得る。黄斑変性症を患う人々は、ある程度の周辺視力を保持することができるが、中心視力の喪失が、生活の質に重大な悪影響を及ぼし得る。さらに、残りの周辺視力の質が低下することもあり、場合によっては消失することもある。したがって、黄斑変性症によって引き起こされる視力の喪失を防止または逆転させるために、黄斑変性症の治療を提供することが望ましい場合がある。いくつかの場合には、網膜黄斑の近くの地図状萎縮の領域に直接隣接する網膜下の層(網膜の神経感知層の下で、網膜色素上皮の上)に治療物質を送達することなどによって、高度に局在化した様式でそのような治療を提供することが望ましい場合もある。しかし、網膜黄斑は眼球の後ろ及び網膜の繊細な層の下にあるので、実際的な方法で網膜黄斑に接近することが困難な場合がある。
【0004】
眼を治療するために様々な外科的方法及び器具が作製され使用されているが、本発明者らに先立って、添付の特許請求の範囲に記載された発明を製作または使用した者は誰もいないと考えられる。
【0005】
本明細書は、本技術を特に指摘し明確に主張する特許請求の範囲で結論づけられているが、本技術は、添付の図面と併せてなされる以下の特定の例の説明からよりよく理解されると考えられる。それにおいて、類似した参照番号は同一の要素を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】上脈絡膜アプローチからの治療剤の網膜下投与のための例示的な器具の斜視図を示す。
図2図1の器具に組み込むことができる例示的なカニューレの遠位端の斜視図を示す。
図3A図2のカニューレの側断面図を示す。第1の長手方向位置に針を備え、図2の線3-3に沿って得られた断面図である。
図3B図2のカニューレの側断面図を示す。第2の長手方向位置に針を備え、図2の線3-3に沿って得られた断面図である。
図4A】眼にシャンデリアが設置された患者の眼の断面図を示す。
図4B】眼に縫合糸ループが取り付けられ、強膜切開術が行われている、図4Aの眼の断面図を示す。
図4C】強膜切開術の開口部を通して、図1の器具が眼の強膜と脈絡膜との間に挿入される、図4Aの眼の断面図を示す。
図4D】眼の後部、強膜と脈絡膜との間で直接的に視覚化した図1の器具を備える、図4Aの眼の断面図を示す。
図4E図1の器具の針が眼の後部で直接的に視覚化されて前進し、脈絡膜の外面を押して脈絡膜を「テント」させる、図4Aの眼の断面図を示す。
図4F】針が眼の後部で直接視覚化されている先導濾過胞を施与し、針が強膜と脈絡膜との間にあり、脈絡膜と網膜との間の網膜下腔に先導濾過胞を備える、図4Aの眼の断面図を示す。
図4G】針が眼の後部、強膜と脈絡膜との間において、眼に治療剤を投与する、図4Aの眼の断面図を示す。
図5A図4Eに示す状態で描かれる図4Aの眼の詳細な断面図を示す。
図5B図4Fに示す状態で描かれる図4Aの眼の詳細な断面図を示す。
図5C図4Gに示す状態で描かれる図4Aの眼の詳細な断面図を示す。
図6】眼の後部、強膜と脈絡膜との間に図1の器具を備え、器具のカニューレが強膜と脈絡膜との間の実質的な分離をもたらす、図4Aの眼の断面図を示す。
図7】器具のカニューレが強膜と脈絡膜との間の実質的な分離をもたらし、器具の針が遠位位置に前進している、眼の後部、強膜と脈絡膜との間にある図1の器具のカニューレの遠位端の拡大図を示す。
図8図1の器具内に組み込める例示的な代替の針の遠位端の側面図を示す。
図9A図2の線3-3に沿って得られた断面で、図8の針が第1の長手方向位置にある、図2のカニューレの側断面図を示す。
図9B図2の線3-3に沿って得られた断面で、図8の針が第2の長手方向位置にある、図2のカニューレの側断面図を示す。
図9C図2の線3-3に沿って得られた断面で、図8の針が第3の長手方向位置にある、図2のカニューレの側断面図を示す。
図10図8の針がカニューレに配置され、器具のカニューレが強膜と脈絡膜との間の実質的な分離をもたらし、図8の針が遠位位置に前進している、眼の後部、強膜と脈絡膜との間にある図1の器具のカニューレの遠位端の拡大図を示す。
図11A図1の器具に組み込むことができる例示的な代替のカニューレに配置された、針を近位位置に備えた、図8の針の側断面図を示す。
図11B図11Aのカニューレに配置された、針を遠位位置に備えた、図8の針の側断面図を示す。
【0007】
図面は、決して限定することを意図するものではなく、本技術の様々な実施形態が、図面に必ずしも示されていないものを含め、様々な他の方法で実施され得ることが企図される。本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する添付の図面は、本技術のいくつかの態様を示し、説明と共に、本技術の原理を説明するのに役立つ。しかし、その技術は示された正確な構成に限定されないことが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本技術の特定の例についての以下の説明は、その範囲を限定するために使用するべきではない。本技術の他の例、特徴、態様、実施形態、及び利点は、例としての、本技術を実施するために企図される最良の形態の1つである以下の説明から、当業者に明らかになる。気付かれるように、本明細書に記載の技術は、すべて本技術から逸脱することなく、他の異なる明瞭な態様も可能である。したがって、図面及び説明は、本質的に例示的であるものとみなし、また制限するものではないとみなすべきである。
【0009】
本明細書に記載された教示、表現、実施形態、例などのいずれか1つ以上を、本明細書で説明する他の教示、表現、実施形態、例などのいずれか1つ以上と組み合わせてもよいことがさらに理解される。したがって、以下に説明する教示、表現、実施形態、例などは、互いに独立して見るべきものではない。本明細書の教示を組み合わせることができる様々な適切な方法は、本明細書の教示を考慮して、当業者にとって容易に明らかとなる。そのような改変及び変形は、特許請求の範囲内に含まれることを意図している。
【0010】
開示を明確にするために、本明細書では、「近位」及び「遠位」という用語は、遠位の外科用エンドエフェクタを有する外科用器具を把持している外科医または他の操作者に関して定義されている。「近位」という用語は、外科医または他の操作者のより近傍にある要素の位置を示し、「遠位」という用語は、外科用器具の外科用エンドエフェクタのより近傍にあり、外科医または他の操作者からより離れている要素の位置を示している。
【0011】
I. 治療剤の網膜下投与のための例示的な器具
図1は、上脈絡膜アプローチから患者の眼に治療剤を網膜下投与するための処置で使用するように構成された例示的な器具(10)を示す。器具(10)は、本体(20)と、本体(20)から遠位に延びる可撓性カニューレ(50)とを含む。本例のカニューレ(50)は、略矩形の断面を有するが、任意の他の適切な断面の外形(例えば、楕円形など)を使用してもよい。カニューレ(50)は、より詳細に後述するように、カニューレ(50)内で摺動可能な針(100)を支持するように、概して構成されている。
【0012】
本例では、カニューレ(50)は、PEBAXの商標で製造され得るポリエーテルブロックアミド(PEBA)などの可撓性材料を含む。当然、任意の他の適切な材料、または材料の組み合わせを使用することもできる。また、本例では、カニューレ(50)は、約80mmの長さを有しながら、約2.0mm×0.8mmという断面の外形の寸法を有する。あるいは、任意の他の適切な寸法を使用することができる。より詳細に後述するように、カニューレ(50)は、患者の眼の特定の構造及び輪郭に適合するには十分に可撓性であるが、カニューレ(50)は、患者の眼の強膜と脈絡膜との間をカニューレ(50)が歪みを伴わずに進むのを可能にするのに十分な柱強度を有する。単に例として、カニューレ(50)は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2015年8月13日に公開された「Method and Apparatus for Subretinal Administration of Therapeutic Agent」という名称の米国特許出願公開第2015/0223977号の教示の少なくとも一部に従って構成及び動作可能にし得る。
【0013】
図2図3B及び図6に見られるように、カニューレ(50)は、本体(52)と、閉鎖された遠位端(54)と、遠位端(54)の近位に配置された側方開口部(56)とを含む。本例では、遠位端(54)は丸い形状を有する。遠位端(54)は、任意の適切な種類の湾曲を有してもよいことを理解されたい。遠位端(54)は、任意の他の適切な種類の形状(例えば、斜角など)を有してよいことも理解されたい。本例では、遠位端(54)は、強膜や脈絡膜の層に外傷を与えないが、強膜と脈絡膜の層の間の分離をもたらして、係る層の間でカニューレ(50)を前進させることができるように構成される。本例においても、図3A図3Bに最もよく見られるように、側方開口部(56)を画定する本体領域(52)は射角になっている。あるいは、側方開口部(56)の縁部は、他の任意の適切な構成を有してもよい。
【0014】
図3A図3Bに最もよく示されているように、針ガイド(60)がカニューレ(50)の中空内部に配置されている。単に例として、針ガイド(60)は、プレス嵌めまたは締まり嵌めによって、接着剤によって、機械的係止機構によって、及び/または任意の他の適切な様式で、カニューレ(50)内に固定できる。針ガイド(60)は、カニューレ(50)の側方開口部(56)に至る湾曲した遠位端(62)を含み、針ガイド(60)の内腔(64)が側方開口部(56)で遠位に終端するようにする。遠位端(62)の近位にある針ガイド(60)の部分は実質的に直線状である。針ガイド(60)は、プラスチック、ステンレス鋼、及び/または任意の他の適切な生体適合性材料(複数可)で形成することができる。
【0015】
本例の針(100)は、鋭い遠位先端(102)を有し、内腔(104)を画定する。本例の遠位先端(102)は、ランセットの形状を有する。いくつかの他の変形例では、遠位先端(102)は、3斜角形状、またはその開示が参照により本明細書に組み込まれる、2015年8月13日に公開された、「Method and Apparatus for Subretinal Administration of Therapeutic Agent」という名称の米国特許出願公開第2015/0223977号に記載されているような他の任意の形状を有する。遠位先端(102)がとり得るさらに他の適切な形態は、本明細書の教示を考慮して、当業者に明らかとなろう。本例の針(100)は、以下により詳細に後述するように、針(100)が患者の眼の組織構造を貫く際の偶発的な外傷を最小限にするほど小さいが、治療剤を送達するように寸法決めされたステンレス鋼の皮下注射針を備えている。本例ではステンレス鋼が使用されているが、ニチノールなどを非限定的に含む任意の他の適切な材料(複数可)を使用してもよいことを理解されたい。
【0016】
単に例として、針(100)は、内径100μmの35ゲージであってもよいが、他の適切なサイズを使用してもよい。例えば、針(100)の外径は、27ゲージ~45ゲージの範囲内、または、より具体的には30ゲージ~42ゲージの範囲内、または、より具体的には32ゲージ~39ゲージの範囲内にあり得る。他の、単なる説明的な例として、針(100)の内径は、約50μm~約200μmの範囲内に、または、より具体的には約50μm~約150μmの範囲内に、または、より具体的には約75μm~約125μmの範囲内にあり得る。
【0017】
針(100)は、針ガイド(60)の内腔(64)内に摺動可能に配置される。針ガイド(60)は、カニューレ(50)の側方開口部(56)を通ってカニューレ(50)の長手軸(LA)に対して斜めに配向された出口軸(EA)に沿って、針(100)を上方に向けるよう概して構成される。これは、図3A図3Bに続けて描写して示している。図3Aは、近位位置にある針(100)を示している(針(100)の遠位先端(102)が針ガイド(60)の内腔(64)に完全に収容されている)。図3Bは、遠位位置にある針(100)を示す(針(100)の遠位先端(102)が針ガイド(60)の外側にある)。針(100)は可撓性であるが、本例の針(100)は弾性的に付勢されて直線状の形態をとる。したがって、図3Bに示すように、カニューレ(50)及び針ガイド(60)の外側に延びる針(100)の部分は、実質的に直線状であり、出口軸(EA)に沿って延びている。特に、カニューレ(50)及び針ガイド(60)の外側に延びる針(100)の部分の少なくとも実質的な長さは、出口軸(EA)と同軸に整列している。
【0018】
図3A図3Bの出口軸(EA)の描写は、説明のためだけに幾分誇張して示し得ることを理解されたい。いくつかの変形例では、湾曲した遠位端(62)は、カニューレ(50)から遠位方向に、カニューレ(50)の長手軸(LA)に対して約7°~約9°の角度で延びている出口軸(EA)に沿って、針(100)を向けるよう構成される。このような角度は、針が確実に脈絡膜内へと貫く方向に針(100)を偏向させ、(脈絡膜を貫くのに対し)上脈絡膜腔を通って脈絡膜の下に針(100)が続く可能性、及び網膜穿孔の可能性を最小限に抑えるために、望ましい可能性があることを理解されたい。さらに単に例として、湾曲した遠位部分(88)は、カニューレ(50)の長手軸(LA)に対して約5°~約30°の範囲内、またはより具体的にはカニューレ(50)の長手軸(LA)に対して約5°~約20°の範囲内、またはより具体的には、カニューレ(50)の長手軸(LA)に対して約5°~約10°の範囲内の角度で配向された出口軸(EA)に沿って、カニューレ(50)を出るよう針(100)を駆動し得る。
【0019】
図1に示すように、本例の器具(10)は、本体(20)の近位端に配置された作動ノブ(26)をさらに備える。作動ノブ(26)は、本体(20)に対して回転可能であり、それにより針(100)をカニューレ(50)に対して長手方向に選択的に並進させる。特に、作動ノブ(26)は、針(100)をカニューレ(50)に対して遠位方向に駆動する第1の角度方向、及びカニューレ(50)に対して近位方向に針(100)を駆動するための第2の角度方向に回転可能である。単に例として、器具(10)は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2015年8月13日に公開された「Method and Apparatus for Subretinal Administration of Therapeutic Agent」という名称である米国特許出願公開第2015/0223977号の教示の少なくとも一部に従って、ノブ(26)を介してそのような機能を提供することができる。あるいは、針(100)をカニューレ(50)に対して長手方向に駆動するための、任意の他の適切な種類の作動機構(複数可)を使用してもよい。
【0020】
本例では、ノブ(26)は、患者の眼内での所定の貫入量まで、針(100)をカニューレ(50)に対する位置へと前進させるのに相応する運動の完全な範囲にわたって回転可能である。言い換えれば、ノブ(26)がもはや回転できなくなるまで、またはノブ(26)がクラッチ組立体で滑動するか「フリーホイーリング」し始めるまで操作者がノブ(26)を回転させ、患者の眼内で針(100)を適切に配置するように、器具(10)は構成されている。いくつかの例では、針(100)のカニューレ(50)に対する所定の量の前進は、約0.25mm~約10mmであり、または、より具体的には、約0.1mm~約10mmの範囲内、または、より具体的には約2mm~約6mmの範囲内、または、より具体的には約4mmまでである。
【0021】
加えて、または代わりに、器具(10)は、針(100)がカニューレ(50)に対して特定の所定の距離を前進したときに、操作者に指示する特定の触覚フィードバック機構を備えていてもよい。したがって、器具のしるしの直接的な視覚化に基づき、及び/または器具(10)からの触覚フィードバックに基づいて、患者の眼内への針(100)の所望の侵入深さを、操作者は判定できる。当然、このような触覚フィードバック機構は、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかになるように、本例と組み合わせることができる。
【0022】
また、図1に示すように、一対の供給管(30、40)は、アクチュエータノブ(26)から近位方向に延びている。本例では、第1の供給管(30)は、濾過胞流体(340)(例えば、BSS)の供給源と連結するように構成されている。それに対して、第2の供給管(40)は、治療剤(341)の供給源と連結するように構成されている。各流体供給管(30、40)は、流体供給管(30、40)がそれぞれの流体供給源に連結できるようにする従来のルアー機構及び/または他の構造を含み得ることを理解されたい。流体供給管(30、40)は、作動アーム(24)を含む弁組立体に通じている。作動アーム(24)は、弁組立体の状態を選択的に変化させるよう旋回自在である。作動アーム(24)の旋回位置に基づいて、弁組立体は、流体供給管(30、40)から針(100)の内腔(104)へ流体の供給を、選択的にピンチさもなければ開閉するように動作可能である。このように、作動アーム(24)は、針(100)を介して濾過胞流体(340)及び治療剤(341)の送達を選択的に制御するように動作可能である。単に例として、弁組立体は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2015年8月13日公開の「Method and Apparatus for Subretinal Administration of Therapeutic Agent」という名称である米国特許出願公開第2015/0223977号の教示の少なくとも一部に従って構成され、かつ作動可能であってもよい。針(100)を介した流体の送達を制御するために使用され得る他の適切な機構及び構成は、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかになる。
【0023】
器具(10)の機構及び操作可能性は、数多くの方法で変更可能であることを理解されたい。単に例として、より詳細に後述するように、針(100)は針(200)で置き換えることができる。さらに、カニューレ(50)は、より詳細に後述するように、カニューレ(400)で置き換えることができる。さらに、器具(10)は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2015年8月13日に公開された「Method and Apparatus for Subretinal Administration of Therapeutic Agent」という名称である米国特許出願公開第2015/0223977号;その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2015年12月10日に公開された「Therapeutic Agent Delivery Device with Convergent Lumen」という名称である米国特許出願公開第2015/0351958号;その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2015年12月10日に公開された「Sub-Retinal Tangential Needle Catheter Guide and Introducer」という名称である米国特許出願公開第2015/0351959号;その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2016年3月17日に公開された「Method and Apparatus for Sensing Position Between Layers of an Eye」という名称である米国特許出願公開第2016/0074212号;その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2016年3月17日に公開された「Motorized Suprachoroidal Injection of Therapeutic Agent」という名称である米国特許出願公開第2016/0074217号;その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2016年3月17日に公開された「Therapeutic Agent Delivery Device with Advanceable Cannula and Needle」という名称である、米国特許出願公開第2016/0074211号;及び/またはその開示が参照により本明細書に組み込まれる、2016年3月24日に公開された「Therapeutic Agent Delivery Device」という名称である米国特許出願公開第2016/0081849号の教示の少なくとも一部に従って修正してもよい。他の適切な修正は、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかになる。
【0024】
II. 治療剤の網膜下投与のための例示的な処置
図4A図5Cは、上述の器具(10)を用いた上脈絡膜アプローチにより治療剤を網膜下送達するための例示的な処置を示す。単に例として、本明細書に記載の方法は、黄斑変性症及び/または他の眼の症状を治療するために使用できる。本明細書に記載される処置は、加齢性黄斑変性症の治療に関して論じられているが、その限定は意図も示唆もしていないことを理解されたい。例えば、いくつかの単なる例示的な代替処置では、本明細書に記載される同じ技術を、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症及び/または他の眼の疾患を治療するために使用することができる。さらに、本明細書に記載の処置を用いて、ドライ型加齢黄斑変性症またはウェット型加齢黄斑変性症のいずれかを治療できることを理解されたい。
【0025】
本例で処置は、操作者が、検鏡、及び/または固定に適した任意の他の器具を使用して、患者の眼(301)を取り囲む組織(例えば眼瞼)を固定することにより始まる。眼(301)を取り囲む組織に関して本明細書に記載される固定化の間、眼(301)自体が依然として自由に動くことができる旨を理解されたい。眼(301)を取り囲む組織が固定された後、眼球シャンデリアポート(314)が図4Aに示すように眼(301)に挿入され、眼(301)の内部を瞳孔を通して見るとき、眼内照明を提供する。本例では、眼球シャンデリアポート(314)は、下側内側象限に配置され、それにより、上側側頭象限の強膜切開術が実施され得る。眼球シャンデリアポート(314)は、光を眼(301)の内部に導くように配置され、少なくとも網膜の一部分(例えば、黄斑の少なくとも一部分を含む)を照らす。理解されるように、そのような照明は、治療剤の送達を標的としている眼(301)の領域に対応する。
【0026】
本例では、図4Aに示す段階でシャンデリアポート(314)のみが挿入され、まだ光ファイバ(315)をポート(314)に挿入していない。いくつかの他の変形例では、光ファイバ(315)をこの段階でシャンデリアポート(314)に挿入することができる。いずれの場合でも、顕微鏡を任意に利用して眼を視覚的に検査して、眼球シャンデリアポート(314)の標的部位に対する適切な位置決めを確認することができる。図4Aは、眼球シャンデリアポート(314)の特定の配置を示しているが、眼球シャンデリアポート(314)は、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかになるように、他の任意の配置を有することができる旨を理解されたい。
【0027】
眼球シャンデリアポート(314)が位置決めされたら、結膜のフラップを切開し、フラップを後方に引っ張ることにより結膜を切り裂くことによって、強膜(304)に接近することができる。このような切り裂きが完了した後、強膜(304)の露出させた表面(305)は、出血を最小限に抑えるために、焼灼ツールを用いて任意にブランチングすることができる。結膜を切り裂き終えたら、強膜(304)の露出させた表面(305)は、WECK-CELまたは他の適切な吸収装置を用いて随意に乾燥させることができる。次いで、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2015年8月13日に公開された「Method and Apparatus for Subretinal Administration of Therapeutic Agent」という名称の米国特許出願公開第2015/0223977号に記載されているように、眼(301)をマークするためにテンプレートを使用してもよい。操作者は、その後、図4Bに示すように、テンプレートを使用して作成された視覚ガイドを使用して、縫合糸ループ組立体(332)を取り付け、通例のメス(313)または他の適切な切断器具を使用して、強膜切開術を行うことができる。強膜切開術の処置では、眼(301)の強膜(304)を通して小さな切開を形成する。強膜切開術は、脈絡膜(306)の貫通を避けるために特別の注意を払って行われる。したがって、強膜切開術の処置により、強膜(304)と脈絡膜(306)との間の空間への接近がなされる。切開が眼(301)で行われると、鈍い切り裂きを随意に行い、強膜(304)を脈絡膜(306)から局所的に分離することができる。このような切り裂きは、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかになるように、小型の鈍く細長い器具を使用して行うことができる。
【0028】
強膜切開術の処置が行われると、操作者は、切開部(316)を通って強膜(304)と脈絡膜(306)との間の空間に、器具(10)のカニューレ(50)を挿入することができる。図4Cにおいてわかるように、カニューレ(50)は、縫合糸ループ組立体(332)を通って切開部に向けられる。縫合糸ループ組立体(332)は、挿入する間カニューレ(50)を安定化できる。さらに、縫合糸ループ組立体(332)は、カニューレ(50)を切開部に対して略接線方向に維持する。そのような接線方向にすることで、切開部を経るようにカニューレ(50)を誘導するときに、外傷を少なくすることができる。カニューレ(50)を、縫合糸ループ組立体(332)に通して切開部に挿入するとき、操作者は、カニューレ(50)を非外傷的経路に沿ってさらに誘導するために鉗子または他の器具を使用することができる。当然、鉗子または他の器具の使用は任意に過ぎず、いくつかの例では省略することができる。
【0029】
図示されていないが、いくつかの例では、カニューレ(50)は、様々な深さの挿入を示すためにカニューレ(50)の表面に1つ以上のマーカを含むことができることを理解されたい。単に任意であるが、カニューレ(50)を非外傷的経路に沿って誘導しているとき、操作者が適切な挿入の深さを識別するのを促す際に、係るマーカが望ましい場合がある。例えば、操作者は、カニューレ(50)が眼(301)に挿入される深さの指標として、縫合糸ループ組立体(332)及び/または強膜(304)の切開部に対するそのようなマーカの位置を視覚的に観ることができる。単に例として、1つのそのようなマーカは、カニューレ(50)を挿入する深さ約6mmに対応していてよい。
【0030】
図4Dに示すように、カニューレ(50)が眼(301)の中に少なくとも部分的に挿入されると、操作者は、光ファイバ(315)がまだこの段階で挿入されていなければ、光ファイバ(315)を眼球シャンデリアポート(314)に挿入することができる。眼球シャンデリアポート(314)が定位置にあり、光ファイバ(315)と共に組み立てられた状態で、操作者は、光ファイバ(315)を介して光を導くことによって眼球シャンデリアポート(314)を活性化し、眼(301)の照明を提供し、それにより眼(301)の内部を視覚化することができる。網膜(308)の地図状萎縮の領域に対して確実に適切な位置決めをするために、この時点でカニューレ(50)の位置決めをさらに調整することが、任意になされ得る。いくつかの例において、例えば、瞳孔を介する眼(301)の内部の視覚化を最適化するために、縫合糸ループ組立体(332)を引っ張って、眼(301)の瞳孔を操作者の方に向けるなどによって、操作者が眼球(301)を回転させることを望む場合がある。
【0031】
図4C図4Dは、治療剤の送達部位まで強膜(304)と脈絡膜(306)との間を誘導するときのカニューレ(50)を示す。本例では、送達部位は、網膜(308)の地図状萎縮の領域に隣接する眼(301)の概ね後部の領域に対応する。特に、本例の送達部位は、神経感覚網膜と網膜色素上皮層との間の潜在的な空間において、網膜黄斑より上方にある。単に例として、操作者は、カニューレ(50)が図4C図4Dに示されている動作範囲内を前進しているときに、ファイバ(315)とポート(314)による照明を伴い、眼(301)の瞳孔を経て方向付けられる顕微鏡を介した直接的な視覚化に頼ることができる。カニューレ(50)は、眼(301)の網膜(308)及び脈絡膜(306)を介して少なくとも部分的に視認可能にし得る。目視での追跡は、光ファイバを使用してカニューレ(50)の遠位端を通る可視光を放出する変形例において改良できる。
【0032】
カニューレ(50)を図4Dに示されるように送達部位に前進させると、操作者は、ノブ(26)を作動させることによって、上記のように器具(10)の針(100)を前進させることができる。図4E及び図5Aに見られるように、針(100)を、網膜(308)を貫かずに脈絡膜(306)を穿刺するように、カニューレ(50)に対して前進させる。脈絡膜(306)を貫く直前に、針(100)は、直接視覚化すると、脈絡膜(306)の表面に「テント」しているように見える。言い換えれば、針(100)は、テントの屋根を変形させるテントの支柱に似た外観を提示しながら、脈絡膜(306)を上方に押すことによって、脈絡膜(306)を変形させることができる。このような視覚的現象は、脈絡膜(306)を穿刺しそうであるかどうかを識別し、最終的な穿刺の位置を識別するために操作者によって使用され得る。「テント」及びその後の脈絡膜(306)の穿刺を開始するのに十分な針(100)の特定の量の前進は、複数の因子、例えば限定されるものではないが、全身の患者の解剖学的構造、局所的な患者の解剖学的構造、操作者の好み、及び/または他の因子により決定し得るような任意の適切な量であってよい。上述したように、針(100)の前進の単なる例示的な範囲は、約0.25mm~約10mm、または、より具体的には約2mm~約6mmであり得る。
【0033】
本例では、上述したテント効果を視覚化することによって、針(100)が適切に前進したことを操作者が確認した後、操作者は針(100)がカニューレ(50)に対して前進するときに緩衝塩類溶液(BSS)や他の類似した溶液を注入する。そのようなBSSは、針(100)が脈絡膜(306)を通って前進するときに、針(100)の前方に先導濾過胞(340)を形成することができる。先導濾過胞(340)は、2つの理由から望ましいことがある。第1に、図4F及び図5Bに示すように、先導濾過胞(340)は、針(100)を送達部位に適切に配置させたときを示す、操作者へのさらなる視覚的インジケータを提示することができる。第2に、針(100)が脈絡膜(306)を貫いた後に、先導濾過胞(340)が針(100)と網膜(308)との間に障壁を設けることができる。このような障壁は、網膜壁を外向きに押すことができ、それにより、針(100)を送達部位に前進させる際の網膜穿孔のリスクを最小にする。いくつかの変形例では、針(100)から先導濾過胞(340)を押し出すために、フットペダルを作動させる。あるいは、針(100)から先導濾過胞(340)を駆動するために使用できる他の適切な機構は、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかになる。
【0034】
操作者が先導濾過胞(340)を視覚化すると、操作者は、BSSの注入を停止して、図4F及び図5Bでわかるように流体のポケットを残すことができる。次に、治療剤(341)は、本明細書に引用される様々な文献に記載されているように、注射器または他の流体送達デバイスを作動させることによって注入できる。送達される特定の治療剤(341)は、眼の状態を治療するように構成された任意の適切な治療剤であり得る。いくつかの単なる例示的な好適な治療剤には、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかになるように、より小さいまたは大きな分子を有する薬物、治療用細胞溶液、特定の遺伝子治療用溶液、組織プラスミノーゲン活性化因子、及び/または任意の他の適切な治療剤が含まれ得るが、必ずしもこれらに限定されない。単に例として、治療剤(341)は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2008年8月19日に発行された「Treatment of Retinitis Pigmentosa with Human Umbilical Cord Cells」という名称の米国特許第7,413,734号の教示の少なくとも一部に従って提供され得る。治療剤(341)を送達するために使用することに加えて、または代替として、器具(10)及びその変形を使用して排液をし、かつ/または他の手術を行うことができる。
【0035】
本例では、送達部位に最終的に送達される治療剤(341)の量は約50μLであるが、他の任意の適切な量を送達してもよい。いくつかの変形例では、薬剤(341)を針(100)から押し出すためにフットペダルが作動される。あるいは、針(100)から薬剤(341)を押し出すために使用され得る他の適切な機構は、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかになる。治療剤(341)の送達は、図4G及び図5Cに見られるように、流体のポケットの拡張によって視覚化され得る。図示しているように、治療剤(341)が上脈絡膜網膜下腔(surprachoroidal, subretinal space)に注入されるとき、治療剤(341)は本質的に先導濾過胞(340)の流体と混合する。
【0036】
送達が完了すると、針(100)は、針(100)を前進させるのに利用したのと反対の方向にノブ(26)を回転させることによって後退させることができる。次いでカニューレ(50)を眼(301)から引き抜くことができる。針(100)のサイズに起因して、針(100)が脈絡膜(306)を貫通した部位は、それ自体が封止し、脈絡膜(306)を通って送達部位を封止するためにさらなる工程を必要としないようになる、という点を理解されたい。縫合糸ループ組立体(332)及びシャンデリア(314)を取り外し、強膜(304)の切開部を任意の適切な従来技術を用いて閉鎖することができる。
【0037】
上記のように、黄斑変性症を有する患者を治療するために、上記の処置を実施してもよい。そのようないくつかの例では、針(100)によって送達される治療剤(341)は、産後の臍及び胎盤に由来する細胞を含み得る。上述したように、また単に例として、治療剤(341)は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2008年8月19日に発行された、「Treatment of Retinitis Pigmentosa with Human Umbilical Cord Cells」という名称である米国特許第7,413,734号の教示の少なくとも一部に従って提供されてもよい。あるいは、針(100)は、米国特許第7,413,734号及び/または本明細書の他の箇所に記載されているものに加えて、またはその代わりに、任意の他の適切な物質(複数可)を送達するために使用されてもよい。単なる例として、治療剤(341)は、小分子、大分子、細胞、及び/または遺伝子療法を含むがこれらに限定されない様々な種類の薬物を含み得る。また、黄斑変性症は、本明細書に記載される処置によって治療され得る状態の単なる1つの説明的な例に過ぎないことを理解されたい。本明細書に記載された器具及び処置を使用して取り組むことができる他の生物学的条件は、当業者に明らかであろう。
【0038】
上述した処置はまた、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2015年8月13日に公開された「Method and Apparatus for Subretinai Administration of Therapeutic Agent」という名称の米国特許出願公開第2015/0223977号;その開示が参照により本明細書に組み込まれる2015年12月10日に公開された「Therapeutic Agent Delivery Device with Convergent Lumen」という名称である米国特許出願公開第2015/0351958号;その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2015年12月10日に公開された「Sub-Retinal Tangential Needle Catheter Guide and Introducer」という名称である米国特許出願公開第2015/0351959号;その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2016年3月17日公開の「Method and Apparatus for Sensing Position Between Layers of an Eye」という名称である米国特許出願公開第2016/0074212号;その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2016年3月17日に公開された、「Motorized Suprachoroidal Injection of Therapeutic Agent」という名称である米国特許出願公開第2016/0074217号;その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2016年3月17日公開の「Therapeutic Agent Delivery Device with Advanceable Cannula and Needle」という名称である米国特許出願公開第2016/0074211号;及び/またはその開示が参照により本明細書に組み込まれる、2016年3月24日公開の「Therapeutic Agent Delivery Device」という名称である米国特許出願公開第2016/0081849号のいずれかの教示に従って実行されてもよいことも理解されたい。
【0039】
III. 器具のための例示的な代替針
いくつかの変数は、針(100)の出口角(EA)と任意の所与の患者の脈絡膜(306)との間の関係に影響を及ぼし得る。脈絡膜(306)及び網膜(308)は非常に薄く、構造的完全性が比較的少ないことを理解されたい。したがって、非常に可撓性のあるカニューレ(50)が使用される場合でさえ、カニューレ(50)が脈絡膜(306)と強膜(304)との間に挿入されるとき、カニューレ(50)が脈絡膜(306)と強膜(304)との間の実質的な分離をもたらす傾向がある可能性がある。分離度は、患者によって異なる可能性がある(例えば、正常な解剖学的変化に基づいて、及び/または患者の病状に基づいてなど)。分離が真に実質的なものである場合には、針(100)の出口角(EA)は、遠位先端(102)が脈絡膜(306)を完全に通るには不十分であり得る。言い換えれば、針(100)は、脈絡膜(306)を完全に貫くことなく上脈絡膜腔を通り続けることができる。
【0040】
図6は、カニューレ(50)が、脈絡膜(306)及び網膜(308)を、強膜(304)から離して、実質的な空隙(305)が強膜(304)と脈絡膜(306)との間に画定される箇所まで上昇させる例示的なシナリオを示す。また、図6に示すように、出口角(EA)が配向されて、針(100)が脈絡膜(306)を貫かず、さらに針(100)が最終的に強膜(304)と係合するようにする。図7は、この出口角(EA)に沿って遠位に前進した針(100)を示す。図示しているように、針(100)は、脈絡膜(306)を突破することなく、脈絡膜(306)に沿って接線方向に通る。いくつかの他の例では、針(100)は脈絡膜(306)を部分的に通り、脈絡膜(306)と網膜(308)との間の網膜下腔に到達することなく脈絡膜(306)を直ちに出ることができる。
【0041】
針(100)が完全に遠位に前進しているにも関わらず、針(100)が脈絡膜(306)を完全に貫いていないと操作者が判断した場合(例えば、上記のような脈絡膜の「テント」が認められないことに基づいて)、操作者は、出口角(EA)に対してより良好な向きを提供するために針(100)を近位に後退させ、カニューレ(50)及び/または器具(10)の別の部分をわずかに再配置し、その後針(100)を再度遠位に前進させるよう試みることができる。このような努力をしても、針(100)を用いて脈絡膜(306)を首尾よく貫くことは、依然として非常に困難、または一部の場合において不可能でさえあり得る。再配置の努力が成功する場合でも、成功率が操作者の技能に大きく依存する可能性があり、再配置する作業により処置の時間が追加されることになる。さらに、再配置することにより、組織の外傷のリスクが高まり、濾過胞が潰れるリスクが増大し、かつ/または細胞が上脈絡膜内へと放出されるリスクが増大する可能性がある。
【0042】
針ガイド(60)を単に修正してより急な出口角(EA)をもたらすことによって上記の問題に対処することは明らかなことであるように思われる。しかし、この種の修正は多くの患者にとって不適切である可能性がある。特に、針ガイド(60)の遠位端(62)においてより顕著な屈曲をもたらすことによって出口角(EA)を増大させると、一部の患者、特に、空隙(305)が存在しない場合を含む、図6図7に示している空隙(305)ほど突き出していない、空隙(305)が強膜(304)と脈絡膜(306)との間でカニューレ(50)により作り出された者において、針(100)が網膜(308)を穿孔するリスクが上昇し得る。したがって、実質的に網膜(308)を貫くリスクを増大させることなく脈絡膜(306)を貫く際により一貫性を付与する、さらに微妙な解決策を提供することが望ましい場合がある。そのような解決策は、患者全体の解剖学的変化のより良好な調整をもたらし、操作者のテクニック及び専門知識の差異に適合し、必要とされる操作者の訓練のレベルを最小限にすることができる。
【0043】
図8は、針(100)の代わりに器具(10)に組み込むことができる例示的な代替針(200)を示す。いくつかの例において、器具(10)の他の任意の局面を修正させずに、針(200)を針(100)の代わりにすることができる。本例の針(200)は、ちょうど上述した遠位先端(102)のように構成され動作可能な遠位先端(202)を有する。図9A図9Cに示すように、針(200)はまた、上記の内腔(104)と同様に構成され動作可能な内腔(204)を画定する。しかし、針(100)とは異なり、本例の針(200)は、実質的に直線状の近位部分(210)、実質的に直線状の遠位部分(212)、及び近位部分(210)と遠位部分(212)の間に位置する屈曲部分(214)を含む。本例では、針(200)はニチノールで形成されているが、任意の他の適切な材料(複数可)(例えば、ステンレス鋼など)を使用してもよいことを理解されたい。
【0044】
針(200)は、予め形成された機構として屈曲部分(214)を提供するように構成される。針(200)が弾性的に偏向されて図6に示す構成をとるようにしている。単に例として、屈曲部分(214)は、約4mm~約15mmの一定の曲率半径、約7mm~約12mmの一定の曲率半径、約8mm~約11mmの一定の曲率半径、または約9mm~約10mmの一定の曲率半径を有するように構成してもよい。いくつかの変形例では、屈曲部分(214)は約10.5mmの曲率半径を有する。いくつかの他の変形例では、屈曲部分(214)は、約10.0mmの曲率半径を有する。いくつかの他の変形例では、屈曲部分(214)は約9.5mmの曲率半径を有する。半径が小さすぎると、網膜(308)を穿孔するリスクが増大する場合があるため、また半径が大きすぎる場合、針(200)はまだ脈絡膜(306)を完全に貫くことができないため、曲率半径を注意深く選択しなければならないことを理解されたい。
【0045】
本例では、屈曲部分(214)の曲率半径は一定であるが、いくつかの他の変形例では、曲率半径が可変であってもよい。例えば、針(200)のいくつかの変形例は、針(200)が遠位に延びた位置にあるときでさえ、針(200)が遠位に延びた位置にあるときにカニューレ(50)から遠位に延びる針(200)の領域において、より小さな曲率半径を伴いながら、カニューレ(50)に配置されたままである針(200)の領域において、より大きい曲率半径を提供することができる。この種の構成は、カニューレ(50)にわずかな前屈を与えることができ、それがさらに、カニューレ(50)が強膜(304)の湾曲した内壁に適合するのを助長することができ、それがひいては空隙(305)の発生率(または大きさ)を減少させることができる。
【0046】
図9A図9Cに示すように、針(200)は、カニューレ(50)内の針ガイド(60)に摺動可能に配置されている。図9Aは、部分的に前進した状態の針(200)を示しているが、針(200)は、遠位先端(202)が側方開口部(56)を通って突出しないように針ガイド(60)内でさらに近位に後退してもよいことを理解されたい。図9Aに示すように、針(200)が側方開口部(56)を介してカニューレ(50)を出始めたとき、針(200)の遠位に突出した部分は第1の出口軸(EA)に沿って配向される。この段階では、屈曲部分(214)及び遠位部分(212)の一部が針ガイド(60)内に依然として含まれ、針(200)が図8に示す構成に達するのを針ガイド(60)が防止する。
【0047】
操作者がカニューレ(50)に対して遠位に針(200)を前進させ続けると、針(200)のより多くの部分が図9Bに示すように側方開口部(56)から遠位に突出する。針(200)の弾性の付勢により、針(200)のその時により長い突出部分は、第2の出口軸(EA)に沿って配向される。第2の出口軸(EA)は、第1の出口軸(EA)と長手軸(LA)との間に画定される角度よりも大きい、長手軸(LA)との角度を規定する。図9Cに示すように、操作者がカニューレ(50)に対して遠位に針(200)をさらに前進させ続けると、針(200)のさらに多くの部分が側方開口部(56)から遠位に突出する。針(200)の弾性の付勢のために、針(200)のその時により長い突出部分は、第3の出口軸(EA)に沿って配向される。第3の出口軸(EA)は、第2の出口軸(EA)と長手軸(LA)との間に画定される角度よりも大きい、長手軸(LA)との角度を規定する。したがって、さらに針(200)が前進するほど、出口軸(EA)と長手軸(LA)との間に画定される角度がより大きくなる。図9A図9Cにおける出口軸(EA、EA、EA)の描写は、説明の目的だけのために、幾分か誇張している場合がある旨を理解されたい。
【0048】
図10に示すように、針(200)は、カニューレが強膜(304)と脈絡膜(306)との間に実質的な空隙(305)を形成する場合に特に有用であり得る。図10の空隙(305)が、図7の空隙(305)と実質的に同じであることを理解されたい。上述したように、図7の空隙(305)のために、及び解剖学的構造と器具(10)構造との間の関連する関係において、針(100)は脈絡膜(306)を貫通することができない。しかし、図10に示すように、空隙(305)及び解剖学的構造と器具(10)構造との関連する関係があるにもかかわらず、針(200)の湾曲により針(200)が脈絡膜(306)を貫通できる。
【0049】
上述したように、針(200)の出口角(EA)は、針(200)がカニューレ(50)から延びる程度に基づいて変化する。出口角(EA)におけるこの変化は、操作者が針(200)の伸長量を制御することによって最適な出口角(EA)を制御できるようにすることを理解されたい。これは、一部の患者にとってはより浅い角度(より少ない伸長)、及び他の患者にとってはより急な角度(より長い伸長)が、比較的安全かつ効率的な様式での脈絡膜(306)の貫入をより一貫して達成できるようにし、その他の緩和策の必要性を減らし、または別段に図7に示すシナリオから必要とされる回避策の必要性を減らす。
【0050】
IV. 器具用の例示的なカニューレ針
上述のように、カニューレ(50)は、閉鎖された遠位端(54)、及び遠位端(54)の近位に配置された側方開口部(56)を含む。いくつかの例では、開口した遠位端を有し、側方開口部がない代替のカニューレを設けることが望ましい場合がある。単に例として、これによって、単純化した製造プロセスを得ることができる。針の遠位先端がカニューレの長手軸に対して傾斜した軸に沿って配向されるように針をカニューレから出すことが依然として望ましいことがあるので、カニューレが開口した遠位端を有する変形例において、予め形成された湾曲部を有する針を使用することが望ましいことがある。
【0051】
図11Aは、カニューレ(50)の代わりに器具(10)に容易に組み込むことができる例示的な代替カニューレ(400)を示す。この例のカニューレ(400)は、可撓性本体(402)及び遠位開口部(406)を有する。遠位開口部(406)は、本例では、カニューレ(400)の長手軸に同軸に配置されている。一部の他の変形例では、遠位開口部(406)は、カニューレ(400)の長手軸から偏向している。単に例として、カニューレ(400)は、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)及び/または任意の他の適切な種類(複数可)の材料(複数可)で形成することができる。カニューレ(50)のように、本例のカニューレ(400)は、歪みを伴わずに患者の眼の強膜(306)と脈絡膜(308)との間を遠位に進めるように十分な柱強度を有する。
【0052】
インサート(408)は、カニューレ(400)内に配置される。インサート(408)は、プレス嵌めまたは締り嵌め、接着剤、機械的係止機構、及び/または他の任意の適切な方法でカニューレ(400)内に固定することができる。本例では、インサート(408)はポリイミド材料で形成されているが、任意の他の適切な生体適合性材料(複数可)を使用してもよいことを理解されたい。本例のインサート(408)は実質的に直線状であるが、カニューレ(400)と共に曲がることができる。針(200)は、インサート(408)によって形成される内腔(410)内に摺動可能に配置される。図11Aに示すように、針(200)が近位位置にあるとき、針(200)の遠位先端(202)は、内腔(410)内に完全に収容されている。この段階では、針(200)が実質的に直線状の構成で応力を受けて保持されるように、インサート(408)が針(200)を拘束する。針(200)が図11Bに示すような遠位位置にあるとき、針の遠位先端(202)がカニューレ(400)の遠位に配置されている。この段階で、針(200)の遠位部分(212)がカニューレ(400)の長手軸に対して傾斜した出口軸に沿って配向されるように、湾曲部分(214)は露出させる。この構成及び向きは、遠位先端(202)を網膜下腔(すなわち、脈絡膜(306)と網膜(308)との間)に配置することができることを理解されたい。
【0053】
V. 例示的な組み合わせ
以下の例は、本明細書の教示を組み合わせたり適用したりすることができる様々な網羅していない方法に関する。以下の例は、本願または本願に後続する出願の際にいつでも提示され得るいかなる特許請求の範囲をも限定することを意図していない旨を理解されたい。いかなる棄権も意図していない。以下の例は単なる例示目的で提示されているにすぎない。本明細書の様々な教示は、多数の他の方法で構成され、適用され得ることを企図している。また、いくつかの変形例は、以下の例で言及される特定の特徴を省略できることを企図している。したがって、後に発明者、または発明者に関心を有する後継者によって別段にかように明示されない限り、以下に言及する態様または特徴のいずれも重要とみなされるべきではない。本願または本願に関連する後続の提出書類に提示されているクレームに、以下に述べる以外の追加の特徴が含まれている場合は、これらの追加された特徴は特許性に関連する理由で追加したと見なさないものとする。
【0054】
例1
(a)本体、(b)前記本体から遠位に延びるカニューレであって、可撓性である前記カニューレ、及び(c)前記カニューレに摺動可能に配置された針であって、(i)鋭利な遠位先端であって、前記針が近位位置と遠位位置との間で前記カニューレに対して並進するように構成され、前記針が前記近位位置にあるときに前記遠位先端が前記カニューレの内側に位置するように構成され、前記遠位先端は、前記針が前記遠位位置にあるときに前記カニューレの外側に配置されるように構成されている、前記鋭利な遠位先端と、(ii)湾曲部分であって、前記針が前記湾曲部分にわたる湾曲部に沿って延びるように弾性的に付勢される、前記湾曲部分とを含む前記針を含む装置。
【0055】
例2
前記カニューレは、(i)閉鎖された遠位端、及び(ii)前記閉鎖された遠位端の近位に配置された側方開口部を含む、例1の装置。
【0056】
例3
前記カニューレが、ランプ機構をさらに含み、前記ランプ機構が、前記カニューレの内部領域から前記側方開口部まで延在する、例2の装置。
【0057】
例4
前記湾曲部分が、一定の曲率半径を画定するように弾性的に付勢されている、例1~3のいずれか1つ以上の装置。
【0058】
例5
前記曲率半径が約7mm~約12mmである、例4の装置。
【0059】
例6
前記曲率半径が約4mm~約15mmである、例4の装置。
【0060】
例7
前記曲率半径が約9mm~約10mmである、例4の装置。
【0061】
例8
前記湾曲部分は、前記針が前記カニューレに対して遠位に前進する距離に基づいて、前記遠位先端を前記カニューレの長手軸に対して、徐々に増加する出口角で位置決めするように構成されている、例1~7のいずれか1つ以上の装置。
【0062】
例9
前記湾曲部分は、第1の湾曲領域と第2の湾曲領域とを含み、前記第1の湾曲領域は、前記針の遠位部分の近くに配置され、前記第2の湾曲領域は、前記第1の湾曲領域の近位に配置されている、例1~8のいずれか1つ以上の装置。
【0063】
例10
前記第1の湾曲領域が第1の曲率半径を有し、前記第2の湾曲領域が第2の曲率半径を有し、前記第2の曲率半径が前記第1の曲率半径よりも大きい、例9の装置。
【0064】
例11
前記第1の湾曲領域が前記カニューレに湾曲を付与しないように構成され、前記第2の湾曲領域が前記カニューレに湾曲を付与するように構成されている、例9~10のいずれか1つ以上の装置。
【0065】
例12
前記針は、直線状の近位部分と直線状の遠位部分とをさらに含み、前記湾曲部分が、前記直線状の近位部分と前記直線状の遠位部分との間に長手方向に配置されている、例1~11のいずれか1つ以上の装置。
【0066】
例13
前記カニューレが、開口遠位端を画定する、例1~12のいずれか1つ以上の装置。
【0067】
例14
前記針は、前記針が前記遠位位置にあるときに、前記カニューレの前記開口遠位端から突出するように構成されている、例13の装置。
【0068】
例15
液体治療剤の供給源をさらに備え、前記針が前記液体治療剤を送達するように動作可能である、例1~14のいずれか1つ以上の装置。
【0069】
例16
前記本体は、(i)針アクチュエータであって、前記針を前記カニューレに対して長手方向に駆動するように動作可能である前記アクチュエータ、及び(ii)弁部材であって、前記液体治療剤の供給源から前記針への流体連通を選択的に提供するように動作可能である前記弁部材を含む、例15の装置。
【0070】
例17
(a)本体、(b)前記本体から遠位に延びるカニューレであって、可撓性であり、(i)閉鎖された遠位端と、(ii)前記閉鎖された遠位端の近位に位置する側方開口部とを含む前記カニューレ、及び(c)前記カニューレに摺動可能に配置された針であって、(i)鋭利な遠位先端であって、前記針が近位位置と遠位位置との間で前記カニューレに対して並進するように構成され、前記針が前記近位位置にあるときに前記遠位先端が前記カニューレの内側に位置するように構成され、前記針が前記遠位位置にあるときに前記遠位先端が前記側方開口部を越えて延びるように構成されている、前記鋭利な遠位先端と、(ii)湾曲部分であって、前記針が前記遠位位置にあるときに前記側方開口部を越えて延びる前記針の一部分に斜めの出口角を設けるように構成されている前記湾曲部分とを含む前記針を含む装置。
【0071】
例18
前記湾曲部分は、湾曲形状をとるように弾性的に付勢され、前記湾曲部分は、前記針が前記近位位置にあるときに前記カニューレ内で実質的に直線状の形状に変形するようにさらに構成されている、例17の装置。
【0072】
例19
患者の眼に治療剤を投与する方法であって、前記眼が強膜、脈絡膜及び網膜を含み、前記方法が、(a)前記強膜と前記脈絡膜との間に可撓性カニューレを挿入すること、(b)針を前記カニューレに対して前進させ、それによって前記針の遠位先端で前記脈絡膜を貫通させることであって、前記針が予め形成された湾曲部を含み、前記湾曲部が前記脈絡膜の標的領域に向かって前記針を誘導する、こと、及び(c)前記針を介して前記脈絡膜と前記網膜との間の領域に前記治療剤を投与することを含む方法。
【0073】
例20
前記針を前進させる行為が、(i)前記針を前記カニューレに対して第1の長手方向位置に前進させることであって、前記針は前記第1の長手方向位置で前記カニューレに対して第1の出口角を画定する、こと、及び(ii)前記針を前記カニューレに対して第2の長手方向位置にさらに遠位に前進させることであって、前記針は、前記第2の長手方向位置で前記カニューレに対して第2の出口角を画定し、前記第2の出口角は前記第1の出口角より大きい、こと、を含む、例19の方法。
【0074】
VI. その他
本明細書に記載される器具のいずれかの変形例は、上記のものに加えて、またはその代わりに、様々な他の特徴を含むことができることを理解されたい。単に例として、本明細書のデバイスのいずれも、本明細書に参考として組み込まれる様々な参考文献のいずれかに開示された1つまたは複数の様々な特徴を含むことができる。
【0075】
本明細書に記載された教示、表現、実施形態、例などのいずれか1つまたは複数は、本明細書に記載される他の教示、表現、実施形態、例などの任意の1つまたは複数と組み合わされ得ることを理解されたい。したがって、上述の教示、表現、実施形態、例などは、互いに独立して見るべきではない。本明細書の教示を組み合わせることができる様々な適切な方法は、本明細書の教示を考慮して当業者に容易に明らかになる。そのような修正及び変形は、特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0076】
参照により本明細書に組み込まれると言われるすべての特許、刊行物または他の開示の資料は、組み込まれた資料が本開示に記載されている存在している定義、声明、または他の開示の資料と衝突が生じない程度にのみ、全体または部分が本明細書に組み込まれることを認識されたい。したがって、必要な程度まで、本明細書に明示して記載された開示は、参照により本明細書に組み込まれている矛盾するすべての資料よりも優先する。本明細書において参照により組み込まれると言われているが、本明細書に記載されている存在している定義、声明、または他の開示の資料と矛盾する任意の資料またはその一部分は、組み込まれた資料と存在する開示の資料との間でいかなる衝突も生じない程度に組み込むのみである。
【0077】
上述した変形例は、1回使用した後に処分するように設計しても、複数回使用するように設計してもよい。いずれかまたは両方のケースで、変形例は、少なくとも1回使用した後に、再使用のために再調整することができる。再調整には、デバイスの分解、その後の特定のピースの洗浄または交換、及びその後の再組立の工程の任意の組み合わせが含まれ得る。特に、デバイスのいくつかの変形例は、分解してもよく、デバイスの任意の数の特定のピースまたは部品を、任意の組み合わせで選択的に交換または取り外してもよい。特定の部品を洗浄及び/または交換する際には、修理施設で、または作業の直前に作業者が後続的に使用するために、一部の変形例のデバイスを再組立することができる。当業者は、デバイスの再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組立のための様々な技術を利用し得ることを理解するであろう。そのような技術の使用、及び得られた再調整済みのデバイスは、すべて本願の範囲内にある。
【0078】
単に例として、本明細書に記載の変形例は、処置の前及び/または後に滅菌することができる。1つの滅菌技術において、デバイスは、プラスチックやTYVEKバッグなどの密閉された密封容器に入れられる。次いで、容器及びデバイスは、ガンマ線、X線、または高エネルギー電子のような、容器を貫通することができる放射線の場に置いてもよい。放射線は、デバイス上及び容器内の細菌を死滅させることができる。次いで、滅菌されたデバイスは、後に使用するために滅菌容器に保存してもよい。また、ベータ線またはガンマ線、エチレンオキシド、または水蒸気を含むがこれに限定されない当技術分野で知られている任意の他の技術を用いて、デバイスを滅菌してもよい。
【0079】
本発明の様々な実施形態を示し説明したが、本明細書に記載の方法及びシステムのさらなる適合は、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者による適切な改変によって達成され得る。そのような潜在的な改変のいくつかが言及されており、その他は当業者には明らかであろう。例えば、上で論じた例、実施形態、形状、材料、寸法、比率、工程などは例示的なものであり、必須ではない。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲の観点で考慮されるべきであり、本明細書及び図面に示され記載された構造及び動作の詳細に限定されないことが理解される。
【0080】
〔実施の態様〕
(1) (a)本体、
(b)前記本体から遠位に延びるカニューレであって、可撓性である前記カニューレ、及び
(c)前記カニューレに摺動可能に配置された針であって、
(i)鋭利な遠位先端であって、前記針が近位位置と遠位位置との間で前記カニューレに対して並進するように構成され、前記針が前記近位位置にあるときに前記遠位先端が前記カニューレの内側に位置するように構成され、前記遠位先端は、前記針が前記遠位位置にあるときに前記カニューレの外側に配置されるように構成されている、前記鋭利な遠位先端と、
(ii)湾曲部分であって、前記針が前記湾曲部分にわたる湾曲部に沿って延びるように弾性的に付勢される、前記湾曲部分と
を含む前記針
を含む装置。
(2) 前記カニューレは、
(i)閉鎖された遠位端、及び
(ii)前記閉鎖された遠位端の近位に配置された側方開口部
を含む、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記カニューレが、ランプ機構をさらに含み、前記ランプ機構が、前記カニューレの内部領域から前記側方開口部まで延在する、実施態様2に記載の装置。
(4) 前記湾曲部分が、一定の曲率半径を画定するように弾性的に付勢されている、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記曲率半径が約7mm~約12mmである、実施態様4に記載の装置。
【0081】
(6) 前記曲率半径が約4mm~約15mmである、実施態様4に記載の装置。
(7) 前記曲率半径が約9mm~約10mmである、実施態様4に記載の装置。
(8) 前記湾曲部分は、前記針が前記カニューレに対して遠位に前進する距離に基づいて、前記遠位先端を前記カニューレの長手軸に対して、徐々に増加する出口角で位置決めするように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記湾曲部分は、第1の湾曲領域と第2の湾曲領域とを含み、前記第1の湾曲領域は、前記針の遠位部分の近くに配置され、前記第2の湾曲領域は、前記第1の湾曲領域の近位に配置されている、実施態様1に記載の装置。
(10) 前記第1の湾曲領域が第1の曲率半径を有し、前記第2の湾曲領域が第2の曲率半径を有し、前記第2の曲率半径が前記第1の曲率半径よりも大きい、実施態様9に記載の装置。
【0082】
(11)前記第1の湾曲領域が前記カニューレに湾曲を付与しないように構成され、前記第2の湾曲領域が前記カニューレに湾曲を付与するように構成されている、実施態様9に記載の装置。
(12) 前記針は、直線状の近位部分と直線状の遠位部分とをさらに含み、前記湾曲部分が、前記直線状の近位部分と前記直線状の遠位部分との間に長手方向に配置されている、実施態様1に記載の装置。
(13) 前記カニューレが、開口遠位端を画定する、実施態様1に記載の装置。
(14) 前記針は、前記針が前記遠位位置にあるときに、前記カニューレの前記開口遠位端から突出するように構成されている、実施態様13に記載の装置。
(15) 液体治療剤の供給源をさらに備え、前記針が前記液体治療剤を送達するように動作可能である、実施態様1に記載の装置。
【0083】
(16) 前記本体は、
(i)針アクチュエータであって、前記針を前記カニューレに対して長手方向に駆動するように動作可能である前記アクチュエータ、及び
(ii)弁部材であって、前記液体治療剤の供給源から前記針への流体連通を選択的に提供するように動作可能である前記弁部材
を含む、実施態様15に記載の装置。
(17) (a)本体、
(b)前記本体から遠位に延びるカニューレであって、可撓性であり、
(i)閉鎖された遠位端と、
(ii)前記閉鎖された遠位端の近位に位置する側方開口部と
を含む前記カニューレ、及び
(c)前記カニューレに摺動可能に配置された針であって、
(i)鋭利な遠位先端であって、前記針が近位位置と遠位位置との間で前記カニューレに対して並進するように構成され、前記針が前記近位位置にあるときに前記遠位先端が前記カニューレの内側に位置するように構成され、前記針が前記遠位位置にあるときに前記遠位先端が前記側方開口部を越えて延びるように構成されている、前記鋭利な遠位先端と、
(ii)湾曲部分であって、前記針が前記遠位位置にあるときに前記側方開口部を越えて延びる前記針の一部分に斜めの出口角を設けるように構成されている前記湾曲部分と
を含む前記針
を含む装置。
(18) 前記湾曲部分は、湾曲形状をとるように弾性的に付勢され、前記湾曲部分は、前記針が前記近位位置にあるときに前記カニューレ内で実質的に直線状の形状に変形するようにさらに構成されている、実施態様17に記載の装置。
(19) 患者の眼に治療剤を投与する方法であって、前記眼が強膜、脈絡膜及び網膜を含み、前記方法が、
(a)前記強膜と前記脈絡膜との間に可撓性カニューレを挿入すること、
(b)針を前記カニューレに対して前進させ、それによって前記針の遠位先端で前記脈絡膜を貫通させることであって、前記針が予め形成された湾曲部を含み、前記湾曲部が前記脈絡膜の標的領域に向かって前記針を誘導する、こと、及び
(c)前記針を介して前記脈絡膜と前記網膜との間の領域に前記治療剤を投与すること
を含む方法。
(20) 前記針を前進させる行為が、
(i)前記針を前記カニューレに対して第1の長手方向位置に前進させることであって、前記針は前記第1の長手方向位置で前記カニューレに対して第1の出口角を画定する、こと、及び
(ii)前記針を前記カニューレに対して第2の長手方向位置にさらに遠位に前進させることであって、前記針は、前記第2の長手方向位置で前記カニューレに対して第2の出口角を画定し、前記第2の出口角は前記第1の出口角より大きい、こと
を含む、実施態様19に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B