(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174555
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20221116BHJP
E02F 3/43 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F3/43 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080434
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】筒井 謙一
(72)【発明者】
【氏名】磯部 浩之
(72)【発明者】
【氏名】岡野 康雄
(72)【発明者】
【氏名】阿部 京太郎
(72)【発明者】
【氏名】平澤 茂
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA02
2D003DA04
2D003DB03
2D015HA03
2D015HB03
(57)【要約】
【課題】フロントの左右方向への衝撃が加速度センサに伝わるのを抑え、フロントの前後方向および上下方向の加速度を加速度センサによって正確に検出する。
【解決手段】油圧ショベル1のフロント13を構成するブーム14の側面板14Aに、シートスクリュ15を設け、加速度センサ22は、ブーム14の側面板14Aとの間にゴム板32を挟んだ状態でシートスクリュ15に固定する。これにより、フロント13に対し左右方向に衝撃が作用したとしても、ゴム板32によって衝撃が吸収され、加速度センサ22に過大な衝撃が伝わるのを抑えることができる。一方、加速度センサ22は、ブーム14の側面板14Aに設けられたシートスクリュ15に直接固定されるので、ブーム14が移動するときの前後方向および上下方向の加速度を、加速度センサ22によって正確に検出することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、基端が前記上部旋回体に回動可能に取付けられたフロントと、前記フロントに取付けられた加速度センサとを備えた建設機械において、
前記フロントのうち前記上部旋回体に対して前記フロントが回動する方向と直交する方向の側面には、当該側面から突出してセンサ取付部材が設けられており、
前記加速度センサは、前記センサ取付部材に固定されており、
前記センサ取付部材に固定された前記加速度センサと前記フロントの前記側面との間の隙間に前記加速度センサと前記フロントの前記側面とに挟まれた状態で配置される弾性体を備えたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記加速度センサが取付けられるセンサ基板をさらに備え、
前記加速度センサは、前記センサ基板を介して前記センサ取付部材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記センサ取付部材は、前記フロントの前記側面に互いに間隔をもって2個設けられ、
前記加速度センサは、前記2個のセンサ取付部材に掛け渡した状態で固定されることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記加速度センサと前記弾性体とは、前記上部旋回体に対して前記フロントが回動する方向と直交する方向に互いに重なり合うように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
前記センサ基板は、前記フロントの前記側面との間に前記弾性体を挟んだ状態で前記センサ取付部材に固定され、
前記加速度センサは、前記センサ基板にセンサ用ボルトを用いて締結され、
前記弾性体には、前記センサ基板から突出した前記センサ用ボルトの先端側が係合するボルト係合部が設けられ、
前記加速度センサを前記センサ基板に締結した状態で前記センサ用ボルトの先端側を前記弾性体の前記ボルト係合部に係合させることにより、前記フロントの前記側面と前記センサ基板との間に前記弾性体を保持することを特徴とする請求項2に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体を備えている。上部旋回体の前側には、例えばバケットを有する作業用のフロントが回動可能に設けられ、このフロントを用いて土砂の掘削作業等の土木作業が行われる。
【0003】
近年では、IoT(Internet of Things)を用いた情報化施工が土木作業にも導入されている。この情報化施工に対応した油圧ショベルは、フロントの姿勢、例えばバケットに設けられた掘削爪の先端(爪先)の位置を検出するセンサを搭載している。そして、センサによって検出された爪先の位置に基づいてフロントの動作が制御されることにより、想定される施工範囲を逸脱しないように、半自動操作施工が行われる(特許文献1参照)。
【0004】
油圧ショベルに搭載されたバケットの爪先の位置(フロントの姿勢)を検出するセンサは、例えばフロントが作動(回動)するときの加速度を検出する加速度センサ、回動角度を検出する角度センサ等によって構成され、通常、フロントに取付けられている。しかし、油圧ショベルのフロントには、掘削作業等を行うときに衝撃、振動が繰返して作用するため、フロントに取付けられたセンサにも衝撃、振動が伝わる。
【0005】
特に、油圧ショベルのフロントは、構造上の組立公差や経年劣化によって左右方向へのガタ(以下、横ガタ)が生じる傾向がある。このため、掘削作業時には、フロントに加わる左右方向への衝撃、振動が大きくなり、この大きな衝撃、振動がフロントに取付けられた加速度センサに伝わることにより、加速度センサに大きな負荷が作用するという問題がある。
【0006】
このような、油圧ショベルのフロントに取付けられたセンサに伝わる振動を吸収する技術として、フロントと角度検出器との間に防振ゴムを介在させて振動を吸収する構成が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-50541号公報
【特許文献2】実開昭59-014009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、バケットの爪先の位置を検出するために加速度センサを備えた油圧ショベルにおいて、従来技術のようにフロントと加速度センサとの間にゴム等の弾性体を設けた場合には、フロントから加速度センサに伝わる全方向成分(上下、前後、左右)の加速度が、弾性体によって吸収、減衰されてしまう。このため、フロントの動作時の加速度と、弾性体を介してフロントに取付けられた加速度センサが検出する加速度とにずれが生じてしまう。特に、半自動操作施工を行う油圧ショベルでは、加速度センサにより検出された加速度を用いて爪先の位置を演算し、算出された爪先位置に基づいて半自動操作施工を行っている。このため、正確な爪先位置が定まらないと、油圧ショベルを用いた半自動操作施工によって形成される施工面が、想定される施工面とは異なってしまうという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、フロントの左右方向への衝撃、振動が加速度センサに伝わるのを抑え、フロントの前後方向および上下方向の加速度を加速度センサによって正確に検出することができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、自走可能な下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、基端が前記上部旋回体に回動可能に取付けられたフロントと、前記フロントに取付けられた加速度センサとを備えた建設機械において、前記フロントのうち前記上部旋回体に対して前記フロントが回動する方向と直交する方向の側面には、当該側面から突出してセンサ取付部材が設けられており、前記加速度センサは、前記センサ取付部材に固定されており、前記センサ取付部材に固定された前記加速度センサと前記フロントの前記側面との間の隙間に前記加速度センサと前記フロントの前記側面とに挟まれた状態で配置される弾性体を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フロントに対し左右方向への衝撃が作用したとしても、フロントの側面と加速度センサとの間に挟まれた弾性体によって衝撃が吸収されることにより、加速度センサに過大な衝撃、振動が伝わるのを抑えることができる。一方、加速度センサは、フロントの側面に設けられたセンサ取付部材に弾性体を介在させることなく直接的(リジット)に固定されるので、爪先位置を演算する上で重要なフロントの前後方向および上下方向の加速度を、加速度センサによって正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態による油圧ショベルを示す左側面図である。
【
図3】ブームの側面板に取付けられたシートスクリュ、センサ基板、加速度センサ、ゴム板、センサカバー等を示す分解斜視図である。
【
図4】ブームの側面板、シートスクリュ、センサ基板、加速度センサ、ゴム板、センサカバー等を
図1中の矢示IV-IV方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る建設機械の実施形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、
図1ないし
図4を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施形態では、油圧ショベルの走行方向を前後方向とし、走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0014】
建設機械の代表例である油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、基端が上部旋回体3に回動可能に取付けられた後述する作業用のフロント13とを備えている。油圧ショベル1は、下部走行体2によって作業現場を走行し、上部旋回体3を旋回させつつフロント13を回動させることにより、土砂の掘削作業等を行う。
【0015】
上部旋回体3は、下部走行体2上に旋回装置4を介して旋回可能に設けられている。上部旋回体3は、旋回フレーム5、カウンタウエイト6、キャブ7、外装カバー8、作動油タンク9、燃料タンク10等を含んで構成されている。
【0016】
旋回フレーム5は、上部旋回体3のベースを構成している。
図2に示すように、旋回フレーム5は、底板5Aと、底板5A上に立設され、左右方向に所定の間隔をもって前後方向に延びた左縦板5Bおよび右縦板5Cと、底板5Aの左右両側に配置され前後方向に延びた左サイドフレーム5Dおよび右サイドフレーム(図示せず)とを含んで構成されている。左縦板5Bおよび右縦板5Cの前側には、後述するブーム14およびブームシリンダ19の基端が回動可能に取付けられている。
【0017】
カウンタウエイト6は、旋回フレーム5の後端側に設けられている。カウンタウエイト6は、その後面が円弧状をなす重量物として形成され、フロント13との重量バランスを保っている。
【0018】
キャブ7は、旋回フレーム5の左縦板5Bよりも左側に位置して旋回フレーム5の左前側に設けられている。キャブ7は、運転室を画成するボックス状に形成され、その内部にはオペレータが座る運転席(図示せず)が設けられている。また、運転席の前側には、油圧ショベル1の走行動作を制御する走行用レバーおよびペダル装置(図示せず)が設けられ、運転席の左右方向の両側には、上部旋回体3の旋回動作、およびフロント13の動作を制御する操作レバー装置(図示せず)が設けられている。
【0019】
外装カバー8は、カウンタウエイト6の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。外装カバー8は、左後側面ドア8Aと、左前側面ドア8Bと、右側面ドア8Cと、上面カバー8Dと、エンジンカバー8Eとを含んで構成され、旋回フレーム5上に設けられたサポート部材(図示せず)によって支持されている。外装カバー8の内部には機械室が形成され、この機械室内には、旋回フレーム5に搭載されたエンジン、油圧ポンプ、熱交換器等の搭載機器(いずれも図示せず)が収容されている。
【0020】
作動油タンク9は、旋回フレーム5の右縦板5Cよりも右側に位置して旋回フレーム5に設けられている。作動油タンク9は、下部走行体2の走行モータ、上部旋回体3の旋回モータ、フロント13の各シリンダ19,20,21等の油圧アクチュエータに供給される作動油を貯留している。燃料タンク10は、旋回フレーム5の右縦板5Cよりも右側で、かつ作動油タンク9の前側に隣接して設けられている。燃料タンク10は、エンジンに供給される燃料を貯留している。
【0021】
2基のアンテナ装置11,12は、左右方向に離間して上部旋回体3に設けられている。一方(左側)のアンテナ装置11は、上面カバー8Dの左前側に立設され、他方(右側)のアンテナ装置12は、上面カバー8Dの右側に立設されている。これら2基のアンテナ装置11,12は、例えばGNSSアンテナにより構成され、上部旋回体3に搭載されたコントローラ(図示せず)に接続されている。
【0022】
作業用のフロント13は、上部旋回体3の前側に回動可能に取付けられている。フロント13は、後述するブーム14、アーム16、バケット17、バケットリンク18、ブームシリンダ19、アームシリンダ20、バケットシリンダ21等により構成されている。フロント13は、各シリンダ19、20、21を伸縮させることにより、上部旋回体3に対して上下方向ないし前後方向に回動しつつ、バケット17を用いて土砂の掘削作業等を行う。
【0023】
フロント13のブーム14は、上部旋回体3の旋回フレーム5に回動可能に取付けられている。具体的には、ブーム14の基端は、旋回フレーム5を構成する左縦板5Bおよび右縦板5Cの前端側に連結ピンを用いて回動可能にピン結合されている。ブーム14は、左右方向に一定の間隔を保った状態で前後方向に延びる左右の側面板14Aと、左右の側面板14Aの上端を連結する上面板14Bと、上面板14Bと上下方向で対面し左右の側面板14Aの下端を連結する下面板14Cとにより構成されている。ブーム14は、左右の側面板14Aと、上面板14Bと、下面板14Cとによって囲まれた四角形の閉断面構造をなす箱型構造体として形成され、緩やかな山形に屈曲しつつ前後方向に延びている。
【0024】
ここで、ブーム14の左右の側面板14Aは、上部旋回体3に対してフロント13が回動する方向(前後方向ないし上下方向)と直交する方向(左右方向)の側面を構成し、左側の側面板14Aには、後述する加速度センサ22が取付けられている。
図3および
図4に示すように、ブーム14の左側の側面板14Aには、前後に離間して2個のシートスクリュ15が設けられている。
【0025】
センサ取付部材としての2個のシートスクリュ15は、ブーム14の左側の側面板14Aに前後に離間して設けられている。これら前後のシートスクリュ15は、例えば直方体状をなす棒鋼(角鋼)を用いて形成され、ブーム14の長さ方向に離間して互いに平行となるように配置された状態で、側面板14Aの表面に溶接等の手段を用いて固定されている。これにより、前後のシートスクリュ15は、前後方向に一定の間隔をもって平行に配置され、側面板14Aの表面から突出している。シートスクリュ15の長さ方向の両端には、板厚方向に貫通するボルト孔(雌ねじ孔)15Aが形成されている。前後のシートスクリュ15には、後述するセンサ基板26を介して加速度センサ22が固定されている。
【0026】
アーム16は、ブーム14の先端に回動可能に取付けられている。アーム16も、ブーム14と同様に、左右の側面板16Aと、上面板16Bと、下面板16Cとによって囲まれた四角形の閉断面構造をなす箱型構造体として形成され、前後方向に延びている。ここで、アーム16の左右の側面板16Aは、上部旋回体3に対してフロント13が回動する方向(前後方向ないし上下方向)と直交する方向(左右方向)の側面を構成し、左側の側面板16Aには、後述する加速度センサ23が取付けられている。
【0027】
バケット17は、アーム16の先端に回動可能に取付けられている。バケット17は、内部が土砂収容部となったバケット本体17Aと、バケット本体17Aのカッティングエッジに取付けられた複数の掘削爪17Bとを有している。バケット17は、アーム16の先端で回動することにより掘削爪17Bによって土砂を掘削し、掘削した土砂をバケット本体17Aの内部(土砂収容部)に収容する。
【0028】
バケットリンク18は、アーム16の先端側とバケット17との間に設けられている。バケットリンク18は、一端がアーム16の先端側に連結された後リンク18Aと、一端が後リンク18Aの他端に連結され、他端がバケット17に連結された前リンク18Bとにより構成されている。ここで、バケットリンク18を構成する後リンク18A、前リンク18Bは、それぞれ上部旋回体3に対してフロント13が回動する方向(前後方向ないし上下方向)と直交する方向(左右方向)の側面を構成する左右の側面18A1、18B1を有し、後リンク18Aの側面18A1には、後述する加速度センサ24が取付けられている。
【0029】
ブームシリンダ19は、旋回フレーム5の左縦板5Bおよび右縦板5Cとブーム14との間に設けられている。ブームシリンダ19は、ブーム14を挟んで左右に1本づつ設けられている。これら2本のブームシリンダ19を伸縮させることにより、ブーム14は上部旋回体3(旋回フレーム5)に対して前後方向ないし上下方向に回動する。
【0030】
アームシリンダ20は、ブーム14とアーム16との間に設けられている。アームシリンダ20を伸縮させることにより、アーム16はブーム14に対して前後方向ないし上下方向に回動する。バケットシリンダ21は、アーム16とバケットリンク18(後リンク18Aと前リンク18Bとの連結部)との間に設けられている。バケットシリンダ21を伸縮させることにより、バケット17はアーム16に対して前後方向ないし上下方向に回動する。
【0031】
フロント13を構成するブーム14の左側の側面板14Aには、ブーム14の加速度を検出する加速度センサ22が取付けられている。アーム16の左側の側面板16Aには、アーム16の加速度を検出する加速度センサ23が取付けられている。また、バケットリンク18を構成する後リンク18Aの左側の側面18A1には、バケットリンク18の動作に連動するバケット17の加速度を検出する加速度センサ24が取付けられている。また、上部旋回体3には、作業現場での油圧ショベル1の傾きを検出する車体傾斜角センサ25が設けられている。
【0032】
これらの加速度センサ22、23、24、および車体傾斜角センサ25は、油圧ショベル1を用いた半自動操作施工を行うときに、地面を施工するフロント13の姿勢、即ち、バケット17に設けられた掘削爪17Bの先端(爪先)の位置を検出するもので、上部旋回体3に搭載されたコントローラ(図示せず)に接続されている。そして、コントローラは、加速度センサ22、23、24によって検出されたブーム14、アーム16、バケット17の加速度、および車体傾斜角センサ25によって検出された油圧ショベル1(上部旋回体3)の傾き等に基づいて、掘削爪17Bの爪先の位置を演算し、例えば施工すべき地面の3次元データと演算された掘削爪17Bの爪先の位置情報とを対比しながら、フロント13の動作を制御する。
【0033】
ここで、フロント13を用いた掘削作業時には、バケット17の掘削爪17Bに大きな衝撃が作用する。フロント13は、組立公差や経年劣化による横ガタを有しているため、掘削爪17Bに作用する大きな衝撃によって加速度センサ22,23,24に伝わる左右方向への過大な衝撃、振動を抑える必要がある。一方、掘削作業時にフロント13のブーム14、アーム16、バケット17が上下方向および上下方向に移動するときの加速度は、正確な爪先位置を演算するために加速度センサ22、23、24によって正確に検出する必要がある。
【0034】
このため、本実施形態では、フロント13に対する加速度センサ22、23、24の取付構造が工夫され、加速度センサ22、23、24に過大な衝撃、振動が伝わるのを抑えるようになっている。これら加速度センサ22、23、24は、同様の取付構造によってフロント13に取付けられているので、以下、ブーム14に対する加速度センサ22の取付構造を説明し、加速度センサ23、24の取付構造の説明は省略する。
【0035】
図3および
図4は、ブーム14の左側の側面板14Aに対する加速度センサ22の取付構造を示している。加速度センサ22は、直方体のブロック状に形成され、加速度センサ22の底部側には、前取付フランジ22Aおよび後取付フランジ22Bが前後方向に張出して設けられている。前取付フランジ22Aには、板厚方向に貫通する1個のボルト挿通孔22Cが設けられ、後取付フランジ22Bには、板厚方向に貫通する2個のボルト挿通孔22Dが設けられている。
【0036】
センサ基板26は、加速度センサ22の底部に取付けられている。センサ基板26は、鋼板材等を用いて前後方向に延びる長方形の平板状に形成され、ブーム14の側面板14Aに固定されたシートスクリュ15の長さ寸法と同等の幅寸法を有し、前後のシートスクリュ15に掛け渡される長さ寸法を有している。センサ基板26は、加速度センサ22よりも大きな長さ寸法を有し、加速度センサ22と同等の幅寸法を有している。
【0037】
センサ基板26には、長さ方向の両端側に2個ずつ(合計4個)配置されたボルト挿通孔26Aと、これら4個のボルト挿通孔26Aの内側に配置された3個のボルト孔(雌ねじ孔)26Bとが、それぞれ板厚方向に貫通して形成されている。4個のボルト挿通孔26Aは、前後のシートスクリュ15に2個づつ設けられたボルト孔15Aに対応している。3個のボルト孔26Bは、加速度センサ22の前取付フランジ22Aに設けられたボルト挿通孔22C、および後取付フランジ22Bに設けられたボルト挿通孔22Dに対応している。
【0038】
加速度センサ22の前取付フランジ22Aに設けられたボルト挿通孔22C、および後取付フランジ22Bに設けられたボルト挿通孔22Dには、それぞれセンサ用ボルト27が挿通される。これら3本のセンサ用ボルト27を、センサ基板26のボルト孔26Bに螺着することにより、加速度センサ22がセンサ基板26に締結される。センサ用ボルト27の長さは、センサ基板26に加速度センサ22を締結した状態で、センサ用ボルト27の先端側が、センサ基板26からブーム14の側面板14A側に突出する長さに設定されている。
【0039】
センサカバー28は、加速度センサ22を覆った状態でセンサ基板26に取付けられている。センサカバー28は、センサ基板26よりも一回り大きな長方形の枠状をなす周壁板28Aと、周壁板28Aの上端を閉塞する上板28Bとにより構成されている。上板28Bには、その対角に位置する2個のボルト挿通孔28Cが設けられ、これら2個のボルト挿通孔28Cは、センサ基板26の対角に位置する2個のボルト挿通孔26Aに対応している。
【0040】
センサカバー28のボルト挿通孔28Cには、長尺ボルト29が挿通され、これら2本の長尺ボルト29には、それぞれセンサカバー28の内部で円筒状のスペーサ30が挿通される。スペーサ30は、センサ基板26とセンサカバー28の上板28Bとの間に配置され、両者間に加速度センサ22の収容スペースを確保する。センサカバー28は、センサ基板26をシートスクリュ15に固定するときに、このセンサ基板26と一緒にシートスクリュ15に固定(共締め)される。
【0041】
センサカバー28のボルト挿通孔28Cおよびスペーサ30に挿通された2本の長尺ボルト29は、センサ基板26の一方の対角に位置する2個のボルト挿通孔26Aに挿通される。これら2本の長尺ボルト29は、前後のシートスクリュ15に設けられた2個のボルト孔15Aの一方にスペーサ30を介して螺着される。また、センサ基板26の他方の対角に位置する2個のボルト挿通孔26Aには、それぞれ長尺ボルト29よりも短いボルト31が挿通される。これら2本のボルト31は、前後のシートスクリュ15に設けられた2個のボルト孔15Aの他方に螺着される。
【0042】
このように、センサ基板26は、前後(2個)のシートスクリュ15に掛け渡された状態で固定されるので、ブーム14の側面板14Aとセンサ基板26との間隔が均等化されている。加速度センサ22は、センサ基板26を介してシートスクリュ15に固定され、ブーム14の側面板14Aとセンサ基板26との間には、後述のゴム板32が挟まれている。また、センサカバー28は、センサ基板26と一緒にシートスクリュ15に固定されている。
【0043】
弾性体としてのゴム板32は、ブーム14の側面板14Aと加速度センサ22との間の隙間に弾性変形可能に設けられている。ゴム板32は、例えばクロロプレンゴム(CR)等の耐候性、耐老化性、耐油性等に優れたゴム材料を用いて長方形の板状に形成されている。ゴム板32は、前後のシートスクリュ15の間隔よりも小さい長さ寸法を有し、シートスクリュ15の長さ寸法と同等の幅寸法を有し、かつブーム14の側面板14Aからのシートスクリュ15の突出高さより僅かに大きな厚さ寸法を有している。
【0044】
具体的には、加速度センサ22にはセンサ基板26が固定されているので、センサ基板26を前後のシートスクリュ15に掛け渡した状態で、このセンサ基板26とブーム14の側面板14Aとの間にゴム板32が挟まれて設けられている。この場合、ブーム14の側面板14Aとセンサ基板26との間隔は均等化され、ゴム板32は側面板14Aとセンサ基板26との間で均等に押し潰されるので、両者間に挟まれるゴム板32に対して板厚方向に一定の初期荷重が付与されている。また、加速度センサ22とゴム板32とは、上部旋回体3に対してフロント13が回動する方向と直交する方向に互いに重なり合うように配置されている。これにより、ブーム14に作用する左右方向への衝撃によって加速度センサ22に伝わる振動をゴム板32全体で吸収できる構成となっている。
【0045】
このように、掘削作業時にフロント13に対し左右方向に衝撃が作用したとしても、ブーム14の側面板14Aと加速度センサ22との間に挟まれたゴム板32が弾性変形することにより衝撃が吸収され、加速度センサ22に過大な衝撃、振動が伝わるのを抑えることができる構成となっている。一方、加速度センサ22が取付けられたセンサ基板26は、ブーム14の側面板14Aに設けられた前後のシートスクリュ15に、ゴム板32等の弾性体を介在させることなく直接的(リジット)に固定される。これにより、掘削作業時にブーム14が前後方向および上下方向に移動するときの加速度を、弾性体での減衰、吸収をさせずにブーム14と一体となった加速度センサ22によって正確に検出することができる構成となっている。
【0046】
また、ゴム板32には、ボルト係合部としての2個のボルト係合孔32Aが設けられている。これら2個のボルト係合孔32Aは、センサ基板26に加速度センサ22を締結する3本のセンサ用ボルト27のうち2本が挿入(係合)される。即ち、加速度センサ22の後取付フランジ22Bのボルト挿通孔22Dに挿通された2本のセンサ用ボルト27の先端側は、センサ基板26から突出し、ゴム板32のボルト係合孔32Aに挿入される。一方、加速度センサ22の前取付フランジ22Aのボルト挿通孔22Cに挿通された1本のセンサ用ボルト27の先端側は、センサ基板26からゴム板32の前端32Bに隣接した位置に突出する。
【0047】
このように、センサ基板26に加速度センサ22を締結する3本のセンサ用ボルト27のうち2本は、ゴム板32のボルト係合孔32Aに挿入され、残りの1本は、ゴム板32の前端32Bに隣接した位置に突出する。これにより、ゴム板32は、センサ用ボルト27を利用して、側面板14Aとセンサ基板26との間に保持されている。
【0048】
上述したように、ブーム14の加速度を検出する加速度センサ22は、ブーム14の側面板14Aとの間にゴム板32を挟んだ状態で、側面板14Aに突設されたシートスクリュ15にセンサ基板26を介して固定されている。一方、アーム16の加速度を検出する加速度センサ23も、加速度センサ22と同様の取付構造によってアーム16の側面板16Aに取付けられ、バケット17の加速度を検出する加速度センサ24も、加速度センサ22と同様の取付構造によってバケットリンク18(後リンク18A)の側面18A1に取付けられている。
【0049】
本実施形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、油圧ショベル1を用いて掘削作業を行う場合には、オペレータは、キャブ7内に乗込み、走行レバーおよびペダル装置(図示せず)を操作することにより、油圧ショベル1を所望の作業場所まで自走させる。そして、オペレータは、操作レバー装置(図示せず)を操作することにより、上部旋回体3を旋回させつつ、フロント13のブーム14、アーム16、バケット17を回動させ、土砂の掘削作業を行う。
【0050】
油圧ショベル1を用いた半自動操作施工を行う場合には、コントローラ(図示せず)は、加速度センサ22、23、24によって検出されたブーム14、アーム16、バケット17の加速度、および車体傾斜角センサ25によって検出された油圧ショベル1の傾き等に基づいて、バケット17に設けられた掘削爪17Bの爪先の位置を演算する。そして、コントローラは、演算された掘削爪17Bの爪先の位置情報と施工すべき地面の3次元データとを対比しながら、フロント13の動作を制御する。これにより、油圧ショベル1を用いた半自動操作施工が行われる。
【0051】
ここで、フロント13を用いた掘削作業時には、バケット17の掘削爪17Bに大きな衝撃が作用する。フロント13は、組立公差や経年劣化による横ガタを有しているため、掘削爪17Bに作用する大きな衝撃によって加速度センサ22、23,24に伝わる左右方向への過大な衝撃、振動を抑える必要がある。
【0052】
これに対し、本実施形態によれば、加速度センサ22が取付けられたセンサ基板26をシートスクリュ15に固定した状態で、ブーム14の側面板14Aとセンサ基板26との間にゴム板32が挟まれている。これにより、掘削作業時にバケット17の掘削爪17Bに対し左右方向への衝撃が作用したとしても、ブーム14の側面板14Aと加速度センサ22との間に挟まれたゴム板32が弾性変形することにより、フロント13の組立公差や経年劣化によって生じる横ガタによる左右方向の振動が吸収される。この結果、加速度センサ22に過大な衝撃、振動が伝わるのを抑えることができ、加速度センサ22の耐久性を高めることができる。また、加速度センサ23、24についても、加速度センサ22と同様に、フロント13の左右方向に作用する衝撃、振動がゴム板の弾性変形によって吸収されるので、加速度センサ23、24に過大な衝撃、振動が伝わるのを抑えることができる。
【0053】
しかも、本実施形態によれば、加速度センサ22が取付けられたセンサ基板26は、ブーム14の側面板14Aに突設された前後のシートスクリュ15に、ゴム板32等の弾性体を介在させることなく直接的(リジット)に固定されている。この結果、ブーム14が移動するときの前後方向および上下方向の加速度を、ブーム14と一体となった加速度センサ22によって正確に検出することができる。また、加速度センサ23、24についても、加速度センサ22と同様に、アーム16の側面板16A、バケットリンク18(後リンク18A)の側面18A1に、それぞれ弾性体を介在させることなく直接的に固定されている。この結果、アーム16、バケット17が移動するときの前後方向および上下方向の加速度を正確に検出することができる。
【0054】
かくして、本実施形態による油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、基端が上部旋回体3に回動可能に取付けられたフロント13と、フロント13に設けられた加速度センサ22とを備え、フロント13のブーム14のうち上部旋回体3に対してフロント13が回動する方向と直交する方向の側面板14Aには、当該側面板14Aから突出してシートスクリュ15が設けられており、加速度センサ22は、シートスクリュ15に固定されており、シートスクリュ15に固定された加速度センサ22とブーム14の側面板14Aとの間の隙間に、加速度センサ22とブーム14の側面板14Aとに挟まれた状態で配置されるゴム板32とを備えている。
【0055】
この構成によれば、フロント13に対し左右方向に衝撃が作用したとしても、ブーム14の側面板14Aと加速度センサ22との間に挟まれたゴム板32によって衝撃が吸収されることにより、加速度センサ22に過大な衝撃、振動が伝わるのを抑えることができる。一方、加速度センサ22は、ブーム14の側面板14Aに設けられたシートスクリュ15にゴム板32を介することなく直接的に固定されるので、ブーム14が移動するときの前後方向および上下方向の加速度を、加速度センサ22によって正確に検出することができる。
【0056】
実施形態では、加速度センサ22が取付けられるセンサ基板26をさらに備え、加速度センサ22は、センサ基板26を介してシートスクリュ15に固定されている。この構成によれば、加速度センサ22をセンサ基板26に取付けることにより、加速度センサ22の形状に関わらず、加速度センサ22を確実にシートスクリュ15に固定することができる。
【0057】
実施形態では、シートスクリュ15は、ブーム14の側面板14Aに互いに間隔をもって2個設けられ、加速度センサ22は、2個のシートスクリュ15に掛け渡した状態で固定される。この構成によれば、ブーム14の側面板14Aと加速度センサ22との間隔を均等化することができ、両者間に挟まれる弾性体に対して一定の初期荷重を付与することができる。
【0058】
実施形態では、加速度センサ22とゴム板32とは、上部旋回体3に対してフロント13が回動する方向と直交する方向に互いに重なり合うように配置されている。この構成によれば、ブーム14に作用する左右方向への衝撃によって加速度センサ22に伝わる振動を、ゴム板32全体で吸収することができるので、過大な衝撃、振動が加速度センサ22に伝わるのを、ゴム板32によって確実に阻止することができる。
【0059】
実施形態では、センサ基板26は、ブーム14の側面板14Aとの間にゴム板32を挟んだ状態でシートスクリュ15に固定され、加速度センサ22は、センサ基板26にセンサ用ボルト27を用いて締結され、ゴム板32には、センサ基板26から突出したセンサ用ボルト27の先端側が係合するボルト係合孔32Aが設けられ、加速度センサ22をセンサ基板26に締結した状態でセンサ用ボルト27の先端側をゴム板32のボルト係合孔32Aに係合させることにより、ブーム14の側面板14Aとセンサ基板26との間にゴム板32を保持する。この構成によれば、センサ用ボルト27を利用して、ゴム板32を側面板14Aとセンサ基板26との間に保持することができる。この結果、ブーム14の側面板14Aとセンサ基板26との間にゴム板32を配置するときの作業性を高めることができる。
【0060】
なお、実施形態では、加速度センサ22をセンサ基板26に締結し、ブーム14の側面板14Aに突設した前後のシートスクリュ15に、センサ基板26を取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばブーム14の側面板14Aに突設したシートスクリュ15に、加速度センサ22を直接的に取付け、この加速度センサ22と側面板14Aとの間にゴム板32を挟む構成としてもよい。
【0061】
また、実施形態では、バケット17の加速度を検出する加速度センサ24を、バケットリンク18を構成する後リンク18Aの側面18A1に取付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば前リンク18Bの側面18B1に加速度センサ24を取付ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
13 フロント
14 ブーム
14A,16A 側面板(側面)
15 シートスクリュ(センサ取付部材)
16 アーム
18 バケットリンク
18A1 側面
22、23、24 加速度センサ
26 センサ基板
27 センサ用ボルト
32 ゴム板(弾性体)
32A ボルト係合孔(ボルト係合部)