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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174561
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】柱脚構造、及び建築物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20221116BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20221116BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20221116BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20221116BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
E04B1/24 R
E04B1/58 511H
E04G21/18 C
E04H9/02 331E
F16F15/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080440
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 祥子
(72)【発明者】
【氏名】小田島 暢之
(72)【発明者】
【氏名】田渕 浩司
(72)【発明者】
【氏名】林 裕真
【テーマコード(参考)】
2E125
2E139
2E174
3J048
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AB16
2E125AC16
2E125AG43
2E125BA02
2E125BF05
2E125CA05
2E125CA13
2E125EA02
2E139AA01
2E139AC19
2E139CA21
2E139CC02
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA12
2E174DA57
3J048AA07
3J048BG04
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】柱と基礎躯体との間に柱の鉛直方向の位置を調整する調整板が配置されている構成において、柱から基礎躯体への水平力の伝達効率が低下するのを抑制することを課題とする。
【解決手段】柱脚構造は、一の柱を支持しているベースプレートと、基礎躯体に取り付けられた支持プレートとの間に重ねられる共に平面視でベースプレートと比して小さくされ、挿抜されることで一の柱における鉛直方向の位置が調整される調整板を備えている。さらに、柱脚構造は、平面視で調整板の外側に配置され、ベースプレートを基礎躯体側へ押し付ける押付部材を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に設けられた複数の柱の内少なくとも一の柱を支持しているベースプレートと、
前記ベースプレートの下方に配置され、基礎躯体に取り付けられた支持プレートと、
前記支持プレートと前記ベースプレートとの間に重ねられる共に平面視で前記ベースプレートと比して小さくされ、挿抜されることで前記一の柱における鉛直方向の位置が調整される調整板と、
前記調整板に形成された貫通孔に挿入され、前記一の柱を前記基礎躯体に取り付けているアンカーボルトと、
平面視で前記調整板の外側に配置され、前記ベースプレートを前記基礎躯体側へ押し付けている押付部材と、
を備える柱脚構造。
【請求項2】
前記押付部材は、下端部分が前記支持プレートに固定され、上方へ延びて前記ベースプレートに形成された貫通孔に挿入された押付ボルトと、前記ベースプレートから上方へ突出した部分の前記押付ボルトに締め付けられているナットと、
を備える請求項1に記載の柱脚構造。
【請求項3】
前記押付ボルトは、複数設けられ、平面視で前記調整板を囲むように配置されている、
請求項2に記載の柱脚構造。
【請求項4】
前記ベースプレートは、滑り支承を介して前記一の柱を支持している、
請求項1~3の何れか1項に記載の柱脚構造。
【請求項5】
一の柱の上端と他の柱の上端とを連結する梁と、
前記一の柱の脚部を構成する請求項1~4の何れか1項に記載の柱脚構造と、
を備える建築物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱の脚部構造、及びこの脚部構造を備えた建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軟弱地盤における建物施工方法が記載されている。具体的には、建屋の柱脚の下端に設けられたベースプレートと躯体との間には、それぞれの箇所に応じて所定の厚みになるように、レベル調整板が配置されている。このレベル調整板は、所定の方向から挿抜自在に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-146596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の柱を有する建築物において、不同沈下によって一の柱の鉛直方向の位置が他の柱の鉛直方向の位置に対して相対的に移動してしまうことがある。これにより、柱には、強制変位、及び強制変位よって発生する強制応力が生じる。
【0005】
従来この対策として、一の柱の下端と基礎躯体との間に柱の鉛直方向の位置を調整する調整板が挿抜自在に配置されている。具体的には、調整板は複数重ねられており、アンカーボルトが、この調整板に形成された貫通孔に挿入された状態で、柱を基礎躯体に取り付けている。
【0006】
ここで、柱に負荷される長期鉛直軸力だけでは、一の調整板と他の調整板との間に生じる摩擦力が弱い場合がある。このような場合に、水平方向の外力が柱に負荷されると、一の調整板が他の調整板に対して水平方向へずれてしまい、柱から基礎躯体への水平力の伝達効率が低下してしまう。
【0007】
本発明の課題は、柱と基礎躯体との間に柱の鉛直方向の位置を調整する調整板が配置されている構成において、柱から基礎躯体への水平力の伝達効率が低下するのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の柱脚構造は、建築物に設けられた複数の柱の内少なくとも一の柱を支持しているベースプレートと、前記ベースプレートの下方に配置され、基礎躯体に取り付けられた支持プレートと、前記支持プレートと前記ベースプレートとの間に重ねられる共に平面視で前記ベースプレートと比して小さくされ、挿抜されることで前記一の柱における鉛直方向の位置が調整される調整板と、前記調整板に形成された貫通孔に挿入され、前記一の柱を前記基礎躯体に取り付けているアンカーボルトと、平面視で前記調整板の外側に配置され、前記ベースプレートを前記基礎躯体側へ押し付けている押付部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る構成によれば、一の柱を支持しているベースプレートと、基礎躯体に取り付けられた支持プレートとの間には、挿抜されることで一の柱の鉛直方向の位置が調整される調整板が重ねられている。さらに、平面視で調整板の外側には、ベースプレートを基礎躯体側へ押し付ける押付部材が配置されている。
【0010】
このように、押付部材がベースプレートを基礎躯体側へ押し付けることで、押し付けられない場合と比して、一の調整板と他の調整板との間に生じる摩擦力が強くなる。これにより、一の柱と基礎躯体との間に一の柱の鉛直方向の位置を調整する調整板が配置されている構成において、一の柱から基礎躯体への水平力の伝達効率が低下するのを抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の柱脚構造は、請求項1に記載の柱脚構造において、前記押付部材は、下端部分が前記支持プレートに固定され、上方へ延びて前記ベースプレートに形成された貫通孔に挿入された押付ボルトと、前記ベースプレートから上方へ突出した部分の前記押付ボルトに締め付けられているナットと、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る構成によれば、ナットを押付ボルトに締め込むことで、ベースプレートが基礎躯体側へ押し付けられる。このように簡易な構成で、ベースプレートを基礎躯体側へ押し付けることができる。
【0013】
請求項3に記載の柱脚構造は、請求項2に記載の柱脚構造において、前記押付ボルトは、複数設けられ、平面視で前記調整板を囲むように配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る柱脚構造によれば、押付ボルトは、平面視で調整板を囲むように配置されている。これにより、ベースプレート全体を基礎躯体側へ押し付けることができる。
【0015】
請求項4に記載の柱脚構造は、請求項1~3の何れか1項に記載の柱脚構造において、 前記ベースプレートは、滑り支承を介して前記一の柱を支持していることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る柱脚構造によれば、ベースプレートは、滑り支承を介して一の柱を支持している。このため、滑り支承が設けられていない場合と比して、一の柱からベースプレートへの水平力の伝達効率が低下する。このため、重なり合う一の調整板と他の調整板とが水平方向でずれてしまうのを抑制することができる。
【0017】
請求項5に記載の建築物は、一の柱の上端と他の柱の上端とを連結する梁と、前記一の柱の脚部を構成する請求項1~4の何れか1項に記載の柱脚構造と、を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る建築物によれば、一の柱の脚部には、請求項1~4の何れか1項に記載の柱脚構造が設けられている。例えば、不同沈下によって他の柱が鉛直方向の下方へ移動した場合に、一の柱の脚部に設けられた柱脚構造の調整板を抜き取ることで、一の柱が鉛直方向の下方へ移動する。これにより、一の柱、他の柱、及び梁に、強制変位、及び強制変位よって発生する強制応力が生じるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、柱と基礎躯体との間に柱の鉛直方向の位置を調整する調整板が配置されている構成において、柱から基礎躯体への水平力の伝達効率が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(A)(B)本発明の第1実施形態に係る建築物を示した模式図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る柱脚構造を示し、図5におけるA-A線断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る柱脚構造を示した斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る柱脚構造を示した平面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る柱脚構造の調整板を示した断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る柱脚構造を示した断面図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る柱脚構造を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る柱脚構造、及び建築物について図1図5に従って説明する。なお、図中に示す矢印Hは、鉛直方向であって建物高さ方向を示し、矢印Wは、水平方向であって、建物幅方向示し、矢印Lは、水平方向であって、建物奥行方向を示す。なお、矢印Wと矢印Lとは、互いに直交する。
【0022】
(建築物140)
建築物140は、図1(A)に示されるように、鋼管柱100と、鋼管柱100に対して建物幅方向に離間して配置された鋼管柱110と、梁120とを備えている。また、鋼管柱100及び鋼管柱110は、断面矩形筒状とされている。さらに、梁120は、建物幅方向へ延びており、鋼管柱100の上端と鋼管柱110の上端とを連結させている。なお、鋼管柱100は、一の柱の一例であって、鋼管柱110は、他の柱の一例である。
【0023】
(柱脚構造10)
柱脚構造10は、図2図3に示されるように、鋼管柱100を支持しているベースプレート12と、基礎躯体150に一部が埋め込まれている支持プレート16と、複数の調整板36とを備えている。なお、支持プレート16については、基礎躯体150に直接又は間接的に取り付けられていればよく、例えば、調整モルタルを用いてかさ上げされていてもよい。
【0024】
また、柱脚構造10は、鋼管柱100を基礎躯体150に取り付けているアンカーボルト20と、アンカーボルト20に締め付けられたナット22とを備えている。さらに、柱脚構造10は、ベースプレート12を基礎躯体150側へ押し付けている押付ボルト26と、押付ボルト26に締め付けられたナット28とを備えている。
【0025】
〔ベースプレート12〕
鋼管柱100を支持しているベースプレート12は、鋼管柱100の下端に取り付けられており、平面視で矩形状とされている。また、矩形状とされた鋼管柱100の夫々の角部には、図3図4に示されるように、2枚のウイングプレート102が溶接によって取り付けられている。具体的には、鋼管柱100の夫々の角部には、平面視で互いに直交するように2枚のウイングプレート102の一辺が溶接によって取り付けられている。そして、ベースプレート12は、鋼管柱100の下端、及びウイングプレート102の他辺に溶接によって取り付けられている。
【0026】
また、ベースプレート12には、図2に示されるように、アンカーボルト20の上端部分が挿入された複数の貫通孔12aと、押付ボルト26の上端部分が挿入された複数の貫通孔12bが形成されている。具体的には、図4に示されるように、平面視で鋼管柱100を囲むように、12個の貫通孔12aが形成されており、12個の貫通孔12aを囲むように、8個の貫通孔12bが形成されている。より具体的には、12個の貫通孔12aは、平面視で矩形となるように等間隔に配置されており、8個の貫通孔12bは、平面視で矩形となるように等間隔に配置されている。
【0027】
〔支持プレート16〕
支持プレート16は、図2に示されるように、ベースプレート12の下方に配置されている。さらに、支持プレート16は、平面視で矩形状とされており、前述したように、基礎躯体150に一部が埋め込まれている。
【0028】
また、支持プレート16には、アンカーボルト20の下端部分が挿入された複数の貫通孔16aと、押付ボルト26の下端部分が挿入された貫通孔16bとが形成されている。具体的には、平面視でベースプレート12の貫通孔12aと重なるように、支持プレート16の貫通孔16aが形成され、平面視でベースプレート12の貫通孔12bと重なるように、支持プレート16の貫通孔16bが形成されている。
【0029】
〔アンカーボルト20 ナット22〕
アンカーボルト20は、12個設けられて鉛直方向に延びており、図4に示されるように、平面視で鋼管柱100を囲むように配置されている。そして、アンカーボルト20の下端部分は、図2に示されるように、支持プレート16の貫通孔16aに挿入されると共に基礎躯体150の内部に埋め込まれている。
【0030】
さらに、アンカーボルト20の上端部分は、ベースプレート12の貫通孔12aに挿入されてベースプレート12の上方へ突出している。そして、アンカーボルト20においてベースプレート12の上方へ突出して部分に、ナット22が締め付けられている。また、支持プレート16とベースプレート12との間には、複数の調整板36が重ねられた状態で配置されている。
【0031】
この構成において、ナット22をアンカーボルト20に締め込むことで、鋼管柱100が複数の調整板36を介して基礎躯体150に取り付けられるようになっている。
【0032】
〔調整板36〕
調整板36は、所謂フィラープレートであって、複数設けられ、図2に示されるように、ベースプレート12と支持プレート16との間に重ねられた状態で配置されている。本実施形態では、調整板36の厚さは、一例として40〔mm〕とされている。そして、調整板36の外形は、図4に示されるように、平面視で鋼管柱100と比して大きく、かつ、平面視でベースプレート12と比して小さい矩形状とされている。
【0033】
また、調整板36は、図5に示されるように、中央部分が矩形状にくり抜かれている。さらに、調整板36には、アンカーボルト20(図2参照)が夫々挿入されている12個の貫通孔40が形成されている。この貫通孔40は、平面視で矩形となるように等間隔に配置されている。
【0034】
また、調整板36は、8個の板部38に分割されている。具体的には、複数の貫通孔40が並ぶことで形成された矩形の外側に4個の板部38が配置され、内側に4個の板部38が配置されている。そして、8個の板部38は、短冊状とされている。
【0035】
外側の4個の板部38については、建物奥行方向(矢印L方向)に対向して2個の板部38(以下「板部38a」と記載することがある)が配置され、建物幅方向(矢印W方向)に対向して2個の板部38(以下「板部38b」と記載することがある)が配置されている。そして、板部38aは、板部38bと比して長くされており、一対の板部38aの間に、板部38bが夫々配置されている。
【0036】
内側の4個の板部38については、建物奥行方向に対向して2個の板部38(以下「板部38c」と記載することがある)が配置され、建物幅方向に対向して2個の板部38(以下「板部38d」と記載することがある)が配置されている。そして、板部38dは、板部38cと比して長くされており、一対の板部38dの間に、板部38cが夫々配置されている。
【0037】
この板部38a、38b、38c、38dには、貫通孔40を形成するための円弧状の縁部が夫々形成されている。換言すれば、板部38に形成された縁部を組み合わせることで、調整板36の貫通孔40が形成されている。
【0038】
この構成において、ベースプレート12を基礎躯体150側へ押し付ける押付力が弱められると、板部38a、38b、38c、38dが、ベースプレート12と支持プレート16との間から別々に挿抜されるようになっている。換言すれば、調整板36が、ベースプレート12と支持プレート16との間から挿抜されるようになっている。そして、調整板36が、ベースプレート12と支持プレート16との間から挿抜されることで、鋼管柱100の鉛直方向の位置が調整されるようになっている。
【0039】
〔押付ボルト26 ナット28〕
押付ボルト26は、8個設けられており、図4に示されるように、平面視でアンカーボルト20及び調整板36を囲むように配置されている。さらに、押付ボルト26は、図2に示されるように、鉛直方向に延びている。そして、押付ボルト26の下端部分は、支持プレート16の貫通孔16bに挿入され、押付ボルト26の頭部26aは、支持プレート16の下側に配置されている。これにより、押付ボルト26の下端部分が支持プレート16に固定されている。
【0040】
さらに、押付ボルト26の上端部分は、ベースプレート12の貫通孔12bに挿入されてベースプレート12の上方へ突出している。そして、押付ボルト26においてベースプレート12の上方へ突出して部分に、ナット28が締め付けられている。
【0041】
この構成において、ナット28を押付ボルト26に締め込むことで、ベースプレート12が基礎躯体150側へ押し付けられ、一の調整板36と他の調整板36との間に生じる摩擦力が強くなるようになっている。
【0042】
(作用)
図1(A)(B)に示されるように、不同沈下によって鋼管柱100の鉛直方向の位置が鋼管柱110の鉛直方向の位置に対して相対的に移動してしまうことがある。具体的には、鋼管柱110の鉛直方向の位置が鋼管柱100の鉛直方向の位置に対して下方へ移動してしまうことがある。これにより、鋼管柱100、鋼管柱110、及び梁120に対して、強制変位、及び強制変位よって発生する強制応力が生じる。
【0043】
このような場合に、図2に示す鋼管柱100の下端に設けられた柱脚構造10の調整板36を抜き取る。具体的には、ナット22、及びナット28を緩めた状態で、鋼管柱100をジャッキアップする。この状態で、図5に示す板部38a、38b、38c、38dを別々に抜き取る。鋼管柱100の下方への移動量に対応する枚数の調整板36を抜き取る。
【0044】
そして、調整板36を抜き取った後、鋼管柱100をジャッキダウンし、ナット22、及びナット28をアンカーボルト20、及び押付ボルト26に締め込んで作業が終了する。これにより、鋼管柱100の鉛直方向の位置が、鋼管柱110の鉛直方向の位置と同等となる。
【0045】
(まとめ)
以上説明したように、建築物140においては、不同沈下によって鋼管柱110が下方へ移動した場合に、鋼管柱100の下端に設けられた柱脚構造10の調整板36を抜き取る。これにより、鋼管柱110の鉛直方向の位置が、鋼管柱110の鉛直方向の位置と同等となる。
【0046】
また、建築物140においては、鋼管柱100の鉛直方向の位置が、鋼管柱110の鉛直方向の位置と同等となることで、鋼管柱100、鋼管柱110、及び梁120に対して、強制変位、及び強制変位よって発生する強制応力が生じるのを抑制することができる。
【0047】
また、柱脚構造10においては、ナット28を押付ボルト26に締め込むことで、ベースプレート12が基礎躯体150側へ押し付けられる。これにより、押し付けられない場合と比して、一の調整板36と他の調整板36との間に生じる摩擦力を強くすることができる。なお、ナット22をアンカーボルト20に締め込むことで、一の調整板36と他の調整板36との間に生じる摩擦力を強くすることも考えられる。しかし、押付ボルト26、及びナット28においては、アンカーボルト20に対して外側(鋼管柱100から離れる側)でベースプレート12を基礎躯体150側へ押し付けることで、ベースプレート12を基礎躯体150側へ効率良く押し付けることができる。
【0048】
また、柱脚構造10においては、一の調整板36と他の調整板36との間に生じる摩擦力を強くすることで、重なり合う一の調整板36と他の調整板36とが水平方向でずれてしまうのを抑制することができる。
【0049】
また、柱脚構造10においては、一の調整板36と他の調整板36とが水平方向でずれてしまうのを抑制することで、鋼管柱100から基礎躯体150への水平力の伝達効率が低下するのを抑制することができる。
【0050】
また、柱脚構造10においては、押付ボルト26は、平面視で調整板36を囲むように配置されている。これにより、ベースプレート12全体を基礎躯体150側へ押し付けることができる。
【0051】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る柱脚構造、及び建築物について図6に従って説明する。なお、第2実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0052】
(構成)
第2実施形態の建築物340では、図6に示されるように、柱脚構造10のベースプレート12は、滑り支承220を介して鋼管柱200を支持している。鋼管柱200は、一の柱の一例である。
【0053】
鋼管柱200は、断面矩形筒状とされており、鋼管柱200の角部には、ウイングプレート202が溶接によって夫々取り付けられている。具体的には、鋼管柱200の夫々の角部には、平面視で互いに直交するように2枚のウイングプレート202の一辺が溶接によって取り付けられている。そして、鋼管柱200の下端、及びウイングプレート202の他辺には、平面視で矩形状とされた柱脚プレート212が溶接によって取り付けられている。
【0054】
また、柱脚プレート212とベースプレート12との間に、滑り支承220が配置されている。滑り支承220は、柱脚プレート212に固定された支承部220aと、支承部220aの下面に設けられた滑り材220bと、ベースプレート12に固定された滑り板220cとを備えている。
【0055】
(まとめ)
この構成において、滑り支承が設けられていない場合と比して、鋼管柱200からベースプレート12への水平力の伝達効率が低下する。このため、重なり合う一の調整板36と他の調整板36とが水平方向でずれてしまうのを抑制することができる。
【0056】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る柱脚構造、及び建築物について図7に従って説明する。なお、第3実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0057】
(構成)
第3実施形態に係る柱脚構造310では、図7に示されるように、押付ボルト26に締め付けられているナット28に対してベースプレート12の反対側に、押付ボルト26に締め付けられているナット328が設けられている。換言すれば、ナット28とナット328とで、ベースプレート12を挟み込んでいる。つまり、ベースプレート12の外周部分が、外周縁に沿って複数個所でナット28とナット328とによって挟み込まれている。
【0058】
(まとめ)
このように、ベースプレート12の外周部分が、外周縁に沿って複数個所でナット28とナット328とによって挟み込まれていることで、ベースプレート12の外周部分の鉛直方向の位置が決められる。これにより、ベースプレート12のレベルを調整することができる。
【0059】
また、ナット28を緩め、ナット328を回転させてベースプレート12を持ち上げることで、ナット328を用いて鋼管柱100をジャッキアップさせることができる。
【0060】
なお、本発明を特定の第1、第2、第3実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、鋼管柱100を用いて説明したが、鉄骨柱でもよく、鉄筋コンクリート柱でもよく、鉄骨鉄筋コンクリート柱でもよく、木柱等であってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、断面矩形筒状の鋼管柱100を用いて説明したが、柱の断面形状については、断面円筒状の鋼管柱でもよく、H形鋼等でもよく、他の形状であってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、建築物は、鉄骨造でもよく、コンクリート充填鋼管構造でもよく、鉄骨鉄筋コンクリート造でもよく、鉄筋コンクリート造でもよく、木造等でもよく、他の構造であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ベースプレート12及び支持プレート16は、平面視で矩形状とされたが、平面視で円形でもよく、多角形等でもよく、他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 柱脚構造
12 ベースプレート
12b 貫通孔
16 支持プレート
20 アンカーボルト
26 押付ボルト
28 ナット
36 調整板
40 貫通孔
100 鋼管柱(一の柱の一例)
110 鋼管柱(他の柱の一例)
120 梁
140 建築物
150 基礎躯体
200 鋼管柱(一の柱の一例)
220 滑り支承
310 柱脚構造
340 建築物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7