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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174580
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】医療器具用保持補助具
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20221116BHJP
   A61B 50/28 20160101ALI20221116BHJP
【FI】
A61B1/00 654
A61B50/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080466
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】519353617
【氏名又は名称】日逓テクノ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】山村 哲
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161CC06
4C161FF11
4C161GG13
4C161LL02
(57)【要約】
【課題】手術中において医療器具の保持を補助し、より施術者の負担を軽減させるとともに、省スペースで対応可能な医療器具用保持補助具を提供する。
【解決手段】 本初系の一観点に係る医療器具保持補助具は、フレームと、フレームに対し移動可能な錘を備え、支持基材に固定可能な固定部材と、固定部材から延びるアームと、アームの先端に配置される先端滑車と、アームに沿って延伸する部分を有するとともに、一方端が固定部材に接続され、他方端が滑車を通って垂れ下がり、他方端に保持対象を保持させるための保持部が形成されているワイヤを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、前記フレームに対し移動可能な錘を備え、支持基材に固定可能な固定部材と、
前記固定部材から延びるアームと、
前記アームの先端に配置される先端滑車と、
前記アームに沿って延伸する部分を有するとともに、一方端が前記固定部材に接続され、他方端が前記滑車を通って垂れ下がり、かつ、前記他方端に保持対象を保持させるための保持部が形成されているワイヤと、を備える医療器具保持補助具。
【請求項2】
前記アームは、前記固定部材から略鉛直方向に沿って伸びる略鉛直部分と、前記略鉛直部分から折れ曲がって略水平方向に伸びる延伸部分と、を備える請求項1記載の医療器具保持補助具。
【請求項3】
前記アームの前記略鉛直部分は、前記略鉛直方向を軸に回転可能となっている請求項2記載の医療器具保持補助具。
【請求項4】
前記固定部材は、動滑車を備えており、
前記ワイヤの前記一方端は、前記固定部材の前記フレームに固定されており、
前記動滑車は、前記ワイヤに吊り下げられるとともに、前記錘に接続され、前記ワイヤの移動によって前記動滑車とともに前記錘を移動させる請求項1記載の医療器具用保持補助具。
【請求項5】
前記フレームは、前記錘の移動方向を規制するためのガイドを備える請求項1記載の医療器具保持補助具。
【請求項6】
前記錘は、重量が調整可能となるよう重量調整部材を備える請求項1記載の医療器具用保持補助具。
【請求項7】
前記ワイヤには、前記ワイヤの前記他方端が前記アームの前記空洞内に入ってしまわないようにするためのストッパが設けられてなる請求項1記載の医療器具用保持補助具。
【請求項8】
前記医療器具用保持補助具が前記支持基材に固定された状態において、前記医療器具用保持補助具と前記支持基材の重心が、前記支持基材の支持基底面内にある請求項1記載の医療器具用保持補助具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具保持補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の外科手術においては、装置によって手術対象となる患者の体内の状態を確認し、内視鏡先端部に取り付けされている鉗子等で施術をすることが非常に多くなってきている。
【0003】
内視鏡とは、体内内部を観察する又は必要な処置を行うための医療器具であり、一般には、細長い柔軟な管部分と、この管部分の先端に付されたカメラと、後端部分に付された操作部と、を備えている。内視鏡を用いて手術を行う者(以下「施術者」という。)は、口又は肛門に細筒を挿入し、更にこの細筒内に上記内視鏡の先端を含めて管部分を挿入し、患者体内の状態をカメラで撮影し、別途室内にあるディスプレイにこの撮影した画像を映し出すことで体内の状態を確認することができる。
【0004】
ところで、上記の通り内視鏡には操作部が備えられており、この操作部の重量は内視鏡を操作する場合に保持しておかなければならず、手術が長時間にわたる場合、施術者にとって大きな負担となる。特に、手の小さい医師にとってこの操作部を長時間保持することは負担が大きいだけでなく、先端に付されたカメラを操作するためのダイヤル等の操作が容易ではない。
【0005】
上記に関連し、施術者の負担を軽減すべく、内視鏡を把持させることができる内視鏡把持器に関する技術が例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-114107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、内視鏡を把持することができるが位置決めのための固定機構があるのみである。内視鏡を用いた手術(以下「内視鏡手術」という。)の際に、施術者は、内視鏡の操作部を前後上下左右と様々な方向に動かすことが必要となるものの、上記特許文献に記載の技術はこのような動きに対応させるのが困難である。また、内視鏡把持器自身が別の部材として配置する必要があり、より広い施術スペースを必要とする手術において課題が残る。これは、内視鏡では特に重要であるものの、内視鏡等の手術器具その他の医療器具において同様であるといえる。
【0008】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、手術中において医療器具の保持を補助し、より施術者の負担を軽減させるとともに、省スペースで対応可能な医療器具用保持補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る医療器具用保持補助具は、フレームと、フレームに対し移動可能な錘を備え、支持基材に固定可能な固定部材と、固定部材から延びるアームと、アームの先端に配置される先端滑車と、アームに沿って延伸する部分を有するとともに、一方端が固定部材に接続され、他方端が滑車を通って垂れ下がり、かつ、他方端に保持対象を保持させるための保持部が形成されているワイヤと、を備えるものである。
【0010】
また、本観点において、限定されるわけではないが、アームは、固定部材から鉛直方向に沿って伸びる略鉛直部分と、略鉛直部分から折れ曲がって水平方向に伸びる延伸部分と、を備えることが好ましい。
【0011】
また、本観点において、限定されるわけではないが、アームの略鉛直部分は、鉛直方向を軸に回転可能となっていることが好ましい。
【0012】
また、本観点において、限定されるわけではないが、固定部材は、動滑車を備えており、ワイヤの一方端は、固定部材のフレームに固定されており、動滑車は、ワイヤに吊り下げられるとともに、錘に接続され、ワイヤの移動によって動滑車とともに錘を移動させることが好ましい。
【0013】
また、本観点において、限定されるわけではないが、フレームは、錘の移動方向を規制するためのガイドを備えることが好ましい
【0014】
また、本観点において、限定されるわけではないが、錘は、重量が調整可能となるよう重量調整部材を備えることが好ましい。
【0015】
また、本観点において、限定されるわけではないが、ワイヤには、ワイヤの他方端がアームの空洞内に入ってしまわないようにするためのストッパが設けられてなることが好ましい。
【0016】
また、本観点において、限定されるわけではないが、医療器具用保持補助具が支持基材に固定された状態において、医療器具用保持補助具と支持基材の重心が、支持基材の支持基底面内にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上、本発明によって、手術中において医療器具の保持を補助し、より施術者の負担を軽減させるとともに、省スペースで対応可能な医療器具用保持補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る医療器具用保持補助具の概略を示す図である。
図2】本実施形態に係る医療器具用保持補助具を固定する先の支持基材の概略を示す図である。
図3】本実施形態に係る医療器具用保持補助具を固定する先の支持基材のスリットの概略を示す図である。
図4】本補助具1における固定部材2の概略図である。
図5】実施形態に係る医療器具用保持補助具の固定部材における重量調節部材を示す図である。
図6】実施形態に係る医療器具用保持補助具の固定部材のフレームのガイドの例を示す図である。
図7】実施形態に係る医療器具用保持補助具のアームの回転について説明する図である。
図8】実施形態に係る医療器具用保持補助具の保持部材について示す図である。
図9】実際に作製した医療器具用保持補助具の写真図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例に記載される具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る医療器具用保持補助具(以下「本補助具」という。)1の概略を示す図である。本図で示すように、本補助具1は、フレーム21と、フレーム21に対し移動可能な錘22を備え、支持基材Sに固定可能な固定部材2と、固定部材2から延びるアーム3と、アーム3の先端に配置される先端滑車4と、アーム3に沿って延伸する部分を有するとともに、一方端が固定部材2に接続され、他方端が滑車を通って垂れ下がり、かつ、他方端に保持対象を保持させるための保持部51が形成されているワイヤ5と、を備えるものである。
【0021】
本補助具1の機能は、上記の構成からも明らかであるが、手術中において内視鏡等の医療器具の保持を補助し、より施術者の負担を軽減させるとともに、省スペースで対応可能なものとなっている。より具体的には、内視鏡装置等における支持基材に固定部材2を設け、これから伸びるアーム3によってワイヤ5を保持して保持部51を吊り下げ、この吊り下げられたワイヤ5の保持部51に内視鏡の操作部を保持させることで、施術者の負担を軽減させることが可能となる。この詳細については下記のとおりである。
【0022】
本補助具1は、上記の通り、支持基材Sに固定されるものである。すなわち、支持基材Sは、本補助具1とは異なる装置の部品となっている。支持基材Sは、手術者の付近、より具体的には手術台の付近に固定設置される所定の重さを備えたものであって、本補助具1の固定部材2を固定することができる程度の安定性を備えたものである限りにおいて限定されるわけではないが、手術用のベッドや、内視鏡装置における情報処理装置等を収容する架台などが好適な典型例であるがこれに限定されるわけではない。
【0023】
なお、本補助具1では、支持基材Sに固定されるものであるが、場合によっては、支持基材Sに接続するのではなく、固定部材2は自身で自立できる構造となっていてもよい。例えば、床に安定的に自立するための底部材を備え、フレームなどがこれに固定されている構成となっており、いわゆるスタンドとして機能させることとしてもよい。
【0024】
この支持基材Sが内視鏡の架台である場合の一例について図2に示しておく。本図で示すのは上記の通り内視鏡の架台であって、下部にはキャスターWが付されている。この架台の構造としては限定されるわけではないが、複数の架台Tと、この複数の架台Tを固定するための固定柱部材を有して構成されている。そしてこの架台Tによって形成される空間には情報処理装置や電源装置等が収容されており、この情報処理装置に、内視鏡の操作部及び先端のカメラが接続され、体内の画像情報を処理し、別途設けられる表示装置にこの画像を表示させることができるようになっている。この架台は、手術中において手術者の付近(より具体的には手術台の付近)に設置される。なおこの架台には下部に車輪Wが付されており、移動可能ではあるが、手術の際には固定された状態となる。
【0025】
また、本補助具1において、固定部材2を支持基材Sに固定する方法としては特に限定されず、支持基材Sに対して接着剤等で接続してもよく、支持基材Sと一体に形成してもよいが、市販の支持基材Sにも十分対応できるよう、架台等の固定柱部材P等に付されるスリットを利用してこのスリットに螺子等の部材で着脱可能に構成されていることが汎用性及び利便性向上の観点から好ましい。より具体的には、一般的な架台の側面部分には、固定柱部材Pに縦スリットSLが形成されていることが多く、この縦スリットSLを利用して固定することが好ましい。図3に、架台Tの側面及びこの架台Tの固定柱部材Pの縦スリットSLの一例を示しておく。本図の例の縦スリットSLを備える架台Tに対しては、縦スリットSLに螺子やボルトやナット等の接続部材を挿入し、本補助具1のフレーム21を挟んで締め上げることで、架台(支持基材S)に対して固定部材2、全体として本補助具1を固定することが可能となる。
【0026】
図4は、本補助具1における固定部材2の概略図である。本図で示すように、本補助具1の固定部材2は、フレーム21を備える。フレーム21は、固定部材2の各要素を安定的に保持するための筐体として機能するものである。このフレーム21の材質は上記の通り各要素を安定的に保持することができる限りにおいて限定されず、金属で構成されていることが好ましいが、樹脂等を用いてもよい。
【0027】
また、本補助具1は、フレーム21に対し移動可能な錘22を備える。錘22を設ける意味及びその具体的な機能については後述するが、保持部で保持する対象物(例えば内視鏡の操作部)を適切な位置に保持するためのカウンターウエイトとして機能する。
【0028】
この錘22の重量としては、保持部で保持する対象物の重さに寄り適宜調節可能であり、限定されるわけではないが、例えば1kg以上10kg以下の範囲にあることが好ましい。
【0029】
また、本補助具1の固定部材2において、限定されるわけではないが、錘22は、重量が調整可能となるよう重量調整部材221を備えることが好ましい。重量調整部材221を設けることで、上記の保持部で保持する対象物(以下「保持対象物」という。)の重さに応じてその軽重を調整することが適宜調整可能であり、その保持対象物の位置調節の利便性を高めることができる。
【0030】
重量調節部材221としては、特に限定されるわけではないが、複数の追加錘2211と、この追加錘2211を保持するための追加錘保持部2212を設けておくことが好ましい。より具体的には、複数の追加錘2211それぞれには孔をあけておく一方、追加錘保持部2212は棒状部材として錘22に固定しておくことで、棒状の追加錘保持部2212に追加錘2211の孔を挿入して保持させることで安定的に錘の重量を調整することが可能となる。この場合のイメージ図を図5に示しておく。
【0031】
また、本補助具1の固定部材2におけるフレーム21には、錘22の移動方向を規制するためのガイド212を備えることが好ましい。これは、例えば錘22の形状を平板状とする一方、この平板を摺動可能な程度に挟み込むスリットを備えたものであることが好ましい一例である。この場合のイメージを図6に示しておく。ガイド212にスリットを設けることで、錘22を上下動させることが可能となる。
【0032】
また、本補助具1の固定部材2には、滑車23が設けられていることが好ましく、より好ましくは動滑車である。この効果については改めて後述するが、滑車を設けることでアーム先端の操作距離と錘の移動距離を調節する、より具体的にはアーム先端の操作距離よりも錘の移動距離を短くして固定部材2の大きさを抑えることが可能となり、動滑車の場合はこれが特に顕著となる。
【0033】
また、本補助具1の固定部材2においては、滑車23が設けられている場合であって、この滑車23が動滑車である場合、上記錘22(重量調整部材221がある場合はこの重量調節部材221も含めて)がこの動滑車23に接続されていることが好ましい。このようにすることで、動滑車に錘22の重量を載せることが可能となり、その保持対象物の位置調節の利便性を高めることができる。
【0034】
また、本補助具1は、上記の通り、固定部材2から延びるアーム3を備える。アーム3を備えることで、手術者の手元に保持対象物を近づけることが容易に可能となる。より具体的に、本補助具1のアーム3は、ワイヤ5を安定的に保持するために用いられるものである。
【0035】
アーム3は、限定されるわけではないが中空構造となっていることが好ましい。この中空部分にワイヤ5を通すことで安定的に保持対象物を保持することができる。ただし、アーム3を中空でない構成として、アーム3に滑車等を配置し、この滑車等にワイヤをひっかけてワイヤがアーム3に沿って張られる構成としてもよい。
【0036】
また、本実施形態において、アーム3は、固定部材2から略鉛直方向に沿って伸びる略鉛直部分31と、略鉛直部分31から折れ曲がって略水平方向に伸びる延伸部分32と、を備えることが好ましい。略鉛直部分31を設けることで、ワイヤを略鉛直方向上部に引き延ばすことが可能となり、手術者及びその補助者にとって邪魔になることなく、延伸部分32により手術者の手元上部に保持対象物を保持させることが可能となる。ここで「略鉛直部分」とは、完全な鉛直方向に沿ったアームの部分を含む概念ではあるが、多少の傾斜を許容するという意味で「略」が用いられている。この角度としては、例えば鉛直方向に対し、プラスマイナス20度程度の傾きは許容するものである。また、水平方向に伸びる延伸部分32においても同様であり、完全に水平方向で儲けてもよいが、この水平方向に対してプラスマイナス20度程度は傾けてもよい。
【0037】
また、アーム3において、略鉛直部分31と延伸部分32は、滑らかに折れ曲がるようにカーブを設けて構成されていてもよいが、本図で示すように、直線的な略垂直部分31と直線的な延伸部分32の接続点に滑車34を設けて構成していてもよい。滑車34を設けて接続することで、折れ曲がりにおけるワイヤ5の抵抗を減らし滑らかなワイヤ摺動動作を実現することができる。なお、滑車34を設けない場合、滑らかなカーブで形成することによりこの内部が適度な抵抗となり、急激な摺動を防止することができるようになる。
【0038】
また、本観点において、限定されるわけではないが、アーム3の略鉛直部分31は、鉛直方向を軸に回転可能となっていることが好ましい。この場合のイメージ図を図7に示しておく。このようにしておくことで、手術中に操作者が立ち位置を変えたとしてもその位置に合わせて保持対象物を移動させることが容易になるといった利点がある。一方で、自由に回転しすぎないようにするため、回転角度を調節するためのストッパ311を設けてもよい。この回転可能な場合の角度としては、限定されるわけではないが、好ましくは30度以上90度以下である。
【0039】
また、本補助具1は、アーム3の先端33に配置される先端滑車4を備える。先端滑車4を備えることで、アーム3の先端33を手術者の手元上部に配置した後、この先端33の下までワイヤ5を垂らし保持部及び保持対象物を下げることが可能となる。なお、この場合において、先端滑車4には、この滑車の回転を調節する調節部材41が配置されていることも好ましい。調節部材は、滑車の回転しやすさを調節するための部材であり、調節部材41を設けることで、滑車の回転しやすさを制御し、滑車とワイヤの間に生ずる摩擦を調節し、ワイヤ5の移動量及びそれに必要な力を調節することが可能となる。この調節部材の具体的な構成としては、滑車の軸を押圧する弾性部材と、この弾性部材に対する負荷を調整するつまみ部材と、を有するものであることが好ましい。
【0040】
また、本補助具1は、アーム3内の空洞を通り、一方端52が固定部材2に接続され、他方端53が滑車を通って垂れ下がり、かつ、他方端に保持対象物を保持させるための保持部51が形成されているワイヤ5を備える。なお上記の通りワイヤ5はアーム3が中空でない場合はアーム3に沿って張られていてもよい。
【0041】
上記の通り、ワイヤ5の一方端52(フレーム側端)は、固定部材2に接続および固定されている。より具体的には、固定部材2のフレーム2に滑車23(動滑車)を介して固定されている。これにより、ワイヤ5の一方端52を固定部材2側において固定することができるとともに、滑車23の位置を変動させることで他方端(先端側)53の先端位置を調節することが可能となる。また、錘22は上記の通り、滑車23に接続されており、この滑車23の移動により錘22は上下することになる。つまり錘22及び滑車23により、ワイヤの他方端53に保持対象物を保持させた場合につり合わせることが可能となる。
【0042】
また、ワイヤの他方端(先端)側53には、保持部材51が接続されている。この保持部材51の形状について図8に示しておく。本補助具1が保持する保持対象物の典型は内視鏡、特にその操作部であって、その操作部は先端に行くに従い細くなる形状となっており、この細くなる部分を保持するための形状であることが好ましく、より具体的には切れ目のある中空の筒状物であることが好ましい。このようにすることで、安定的に保持対象物を保持することが可能となる。ただし、切れ目を設けている場合、この切れ目が大きく広がることにより保持対象物が脱落してしまうことを防止すべく、留め具を設けておくことも好ましい。
【0043】
また、本補助具1におけるワイヤ5には、ワイヤの他方端がアームの空洞内に入ってしまわないようにするためのストッパ54が設けられてなることも好ましい。このようにすることで、保持対象物を保持せず軽くなっている場合でも、ワイヤ5の他方端がアームの空洞内に入ってしまうことを防ぐことができる。
【0044】
また、本観点において、限定されるわけではないが、医療器具用保持補助具が支持基材Sに固定された状態において、医療器具用保持補助具と支持基材の重心が、支持基材の支持基底面内にあることが好ましい。このようにすることで、本補助具1が倒れてしまうことを防止することが可能となる。
【0045】
以上、本実施形態によって、手術中において医療器具の保持を補助し、より施術者の負担を軽減させるとともに、省スペースで対応可能な医療器具用保持補助具を提供することができる。より具体的に本補助具の操作方法について説明すると下記のとおりである。
【0046】
まず、施術者又はその補助者は、手術台近傍に支持基材Sを配置する。そして、支持基材Sに固定部材2を固定することで本補助具1を固定配置する。
【0047】
そして、ワイヤ5の他方端53において接続される保持部材51に、保持対象物である内視鏡の操作部を挿入し固定する。これにより、操作部は施術者の手元近傍に配置できる。なおこの場合において、その水平位置はアームを回転させることで調節可能であり、鉛直方向の位置(垂直位置)は、錘の重さを調節することで調節可能である。
【0048】
そして施術者は手術を行う際、この操作部をさまざまに操作することで好適に手術を行うことが可能となる。特にこれは、手の小さな医師にとって操作部の先端のカメラの動きを伝えるダイヤル操作が非常にしやすくなるといった効果がある。また、本補助具1は、他の手術器具(内視鏡装置)等の既存の装置の指示部材に固定するものであるため、省スペースにて対応できるといった利点がある。
【0049】
なお、本補助具1について実際に試作を行いその効果を確認した。図9にこの実際に試作した装置の写真図を示しておく。本図で示されるように、実際に作製することにより本発明の効果を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、医療器具用保持補助具として産業上の利用可能性がある。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9