(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022174581
(43)【公開日】2022-11-24
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/195 20060101AFI20221116BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20221116BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221116BHJP
【FI】
B41J2/195
B41J2/17
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080467
(22)【出願日】2021-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】醍醐 宏典
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 宏行
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EA14
2C056EB06
2C056EB07
2C056EB30
2C056EC06
2C056EC07
2C056EC26
2C056EC29
2C056EC67
2C056FA04
2C056FA13
2C056HA15
2C056HA47
(57)【要約】
【課題】温度に起因する色ずれなどの不具合を低減できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、筐体内を加温する機内ヒーター53と、前記筐体に収容されて、インクの色毎に設けられる記録ヘッドと、前記記録ヘッドのそれぞれに設けられて、該記録ヘッドに収容されているインクを加温するヘッドヒーター85と、前記記録ヘッドのそれぞれの温度を検知する温度センサー83と、前記温度センサー83の検知結果に基づいた前記インクの温度が印字許可温度に達するまでは前記機内ヒーター53を駆動し、前記印字許可温度に達した後は、前記印字許可温度を維持するように前記ヘッドヒーター85の駆動を制御する制御部101と、を備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内を加温する機内ヒーターと、
前記筐体に収容されて、インクの色毎に設けられる記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのそれぞれに設けられて、該記録ヘッドに収容されているインクを加温するヘッドヒーターと、
前記記録ヘッドのそれぞれの温度を検知する温度センサーと、
前記温度センサーの検知結果に基づいた前記インクの温度が印字許可温度に達するまでは前記機内ヒーターを駆動し、前記印字許可温度に達した後は、前記印字許可温度を維持するように前記ヘッドヒーターの駆動を制御する制御部と、を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記インクのそれぞれが前記印字許可温度に達した後、印字動作を開始することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記インクが前記印字許可温度に達していない場合でも印字を許可する印字優先モードをユーザーが選択可能な操作部を更に備え、
前記操作部には、前記印字優先モードが選択された場合には印字品質を保証しないことを示すメッセージが表示されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクの色毎に設けられる記録ヘッドを備えるインクジェット式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式の画像形成装置では、機内の温度に依存して色ずれ(印字位置ずれ)やインクの吐出不良等の様々な問題が発生する。
【0003】
例えば、色ずれは以下のようにして発生する。記録ヘッドは、一般に、搬送ベルトによって搬送されるシートの搬送方向に沿って配置されている。各記録ヘッドからのインクの吐出タイミングは、所定の温度範囲内におけるシートの走行速度に基づいて設定されている。ところが、機内の温度が所定の温度範囲よりも低い場合は、記録ヘッドを保持しているヘッドベースが収縮して搬送方向における記録ヘッドの位置が所定の位置からずれたり、搬送ベルトが巻き掛けられている駆動ローラーや従動ローラーの径が収縮してシートの走行位置が変化したりして、搬送方向における記録ヘッドとシートとの相対的な位置関係が、所定の位置関係に対して変化する。すると、前述のように一定の吐出タイミングで吐出されるインクの位置が所定の位置から搬送方向にずれて、色ずれ(印字位置ずれ)が発生する。また、インクが低温の場合には、粘度が高いので、吐出不良が発生する。
【0004】
色ずれの問題に対して、特許文献1には、回転体(駆動ローラーに相当)の角速度の変動量を検知して、搬送方向における色ずれを低下させる画像形成装置が開示されている。また、特許文献2には、プリントしたテストパターンをプリントと比較して色ずれを補正するプリント装置(画像形成装置に相当)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-301768号公報
【特許文献2】特開2016-182759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1と特許文献2の画像形成装置では、温度に起因する色ずれやインクの吐出不良に関しては考慮されていない。
【0007】
そこで、本発明は上記事情を鑑み、温度に起因する色ずれなどの不具合を低減できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、筐体内を加温する機内ヒーターと、前記筐体に収容されて、インクの色毎に設けられる記録ヘッドと、前記記録ヘッドのそれぞれに設けられて、該記録ヘッドに収容されているインクを加温するヘッドヒーターと、前記記録ヘッドのそれぞれの温度を検知する温度センサーと、前記温度センサーの検知結果に基づいた前記インクの温度が印字許可温度に達するまでは前記機内ヒーターを駆動し、前記印字許可温度に達した後は、前記印字許可温度を維持するように前記ヘッドヒーターの駆動を制御する制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の画像形成装置において、前記制御部は、前記インクのそれぞれが前記印字許可温度に達した後、印字動作を開始することを特徴としてもよい。
【0010】
本発明の画像形成装置において、前記インクが前記印字許可温度に達していない場合でも印字を許可する印字優先モードをユーザーが選択可能な操作部を更に備え、前記操作部には、前記印字優先モードが選択された場合には印字品質を保証しないことを示すメッセージが表示されることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低温環境の場合に、機内の温度(各記録ヘッドのインクの温度を含む)が印字許可温度に均一に上昇した後で印字動作を開始するので、色ずれの発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造を模式的に示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、ヘッドユニットを模式的に示す斜視図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、記録ヘッドを示す断面図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、記録ヘッドの吐出ユニットを示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の制御部を示すブロック図である。
【
図5】色ずれ量と電源オンからの経過時間との関係の一例を示すグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、ヘッドの温度変化と電源オンからの経過時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について説明する。
【0014】
図1及び
図2を参照して、画像形成装置1について説明する。
図1は画像形成装置1の内部構成を模式的に示す正面図であり、
図2はヘッドユニット25を示す斜視図である。各図のFr、Rr、L、Rは、画像形成装置1の前側、後側、左側、右側を示す。
【0015】
画像形成装置1は箱状の筐体3を備える。筐体3の下部には、シートが収容される給紙トレイ5と、給紙トレイ5からシートを給紙して第1搬送路9に搬送する給紙装置7と、が収容されている。第1搬送経路9は、筐体3の内部の右端部に、給紙装置7から上方に向けて形成されている。
【0016】
給紙トレイ5の上方には、第1搬送部11と第2搬送部13とが、左右に並んで配置されている。第1搬送部11は、駆動ローラーと従動ローラーとの間に巻き掛けられた無端状の第1搬送ベルト15と、第1搬送ベルト15の中空部に配置された吸引ユニット17と、を備える。第1搬送ベルト15は、
図1の反時計回り方向に循環して走行する。第2搬送部13は、駆動ローラーと従動ローラーとの間に巻き掛けられた無端状の第2搬送ベルト19と、第2搬送ベルト19の中空部に配置された吸引ユニット21と、を備える。第2搬送ベルト19は、
図1の反時計回り方向に循環して走行する。第1搬送経路9に沿って搬送されたシートは、第1搬送ベルト15の上側の走行面と第2搬送ベルト19の上側の走行面とに、それぞれの吸引ユニット17、21よって吸引されて、走行方向に沿って搬送される。以下の説明において、上流側及び下流側は、シートの搬送方向における上流側及び下流側を示す。また、シートの搬送方向と直交する方向を幅方向とする。
【0017】
第1搬送部11の上方には、ヘッドユニット25が備えられている。ヘッドユニット25は、
図2に示されるように、4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のインクに対応する4つのラインヘッド27と、4つのラインヘッド27が支持されるベース板29と、を備えている。4つのラインヘッド27は、シートの搬送方向X(左右方向)に沿って並列して配置されて、ベース板29に支持されている。
【0018】
各ラインヘッド27は、3つの記録ヘッド31を備えている。各記録ヘッド31は、幅方向Y(前後方向)に長い直方体形状を有し、幅方向Yに沿って千鳥状に配置されている。各記録ヘッド31は、搬送方向X及び幅方向Yに配列された多数個のノズルを備えている。記録ヘッド31については後述する。各記録ヘッド31は、ノズルから下方にインクを吐出して、第1搬送ベルト15によって搬送されるシートに画像を形成する。
【0019】
再度
図1を参照して、第2搬送部13の下流側と筐体3の左側面に形成された排出口35との間には、第2搬送経路37が設けられている。筐体3の左側面には、排出口35の下方に、排出トレイ39が支持されている。第2搬送路37に沿って搬送されたシートは、排出口35から排出されて、排出トレイ39に積載される。
【0020】
第2搬送経路37は、排出口35よりも上流側で第3搬送経路41に分岐している。第3搬送経路41はスイッチバック路を備えている。第3搬送路41は、第1搬送部11の上流側で第1搬送路9に合流している。また、第1搬送経路9と第3搬送経路41との合流部と、筐体3の右側面に形成された手差し給紙口45との間には、手差し搬送路47が形成されている。筐体3の右側面には、手差し給紙口45の下方に手差しトレイ49が支持されている。
【0021】
さらに、筐体3には、4色のインクが収容されるインクコンテナ51が配置されている。各インクコンテナ51は、それぞれサブインクタンク(図示省略)を介して、対応するラインヘッド27に接続されている。インクコンテナ51の近傍には、機内ヒーター53が備えられている。機内ヒーター53は、セラミックヒーター55とファン57とを備え、筐体3の内部に向かう温風を発生させて、機内を加温する。また、筐体3内には、機内温度センサー59が備えられている。
【0022】
次に、印字動作について簡単に説明する。給紙カセット5から給紙装置7によって給紙されて第1搬送路9に沿って搬送されたシート、又は、手差しトレイ49から給紙されて手差し給紙口45から手差し搬送路47に沿って搬送されたシートは、第1搬送部11に搬送される。第1搬送部11において、シートが吸引ユニット17によって第1搬送ベルト15の上側の走行面に吸引されて、第1搬送ベルト15の走行に伴って搬送される。この際、ヘッドユニット25の各ラインヘッド27の記録ヘッド31のノズルからインクが吐出されて、シートに画像が形成される。画像が形成されたシートは、第2搬送部13に搬送される。第2搬送部13において、シートが吸引ユニット21によって第2搬送ベルト19の上側の走行面に吸引されて、第2搬送ベルト19の走行に伴って搬送される。シートは、第2搬送部13から第2搬送路37に沿って搬送され、排出口35から排出されて、排出トレイ39に積載される。
【0023】
両面印刷の場合は、シートの一面に画像が形成されたシートは、第2搬送路37から第3搬送路41に搬送される。シートは第3搬送路41を搬送される間に表裏が反転された後、第1搬送部11に搬送され、ヘッドユニット25の各ラインヘッド27の記録ヘッド31のノズルからインクが吐出されて、シートの他の面に画像が形成される。画像が形成されたシートは、第2搬送部13から第2搬送路37に沿って搬送され、排出口35から排出されて、排出トレイ39に積載される。
【0024】
次に、記録ヘッド31について、
図3A及び
図3Bを参照して説明する。
図3Aは記録ヘッド31の断面図、
図3Bは記録ヘッド31の断面図である。
【0025】
図3Aに示されるように、記録ヘッド31は、幅方向Yに沿って形成されたインク収容部31aと、インク収容部31aの下方に設けられたインク吐出部31bとを有している。
【0026】
インク収容部31aには、インク溜め71が設けられている。インク溜め71は、フィルター73によって上下の区画に分割されている。インク収容部31aの上壁には、幅方向Yの一端に入側チューブ77が接続され、他端に出側チューブ79が接続されている。両チューブ77、79はインク溜め71の上方の区画に連通している。入側チューブ77を通ってインク溜め71の上方の区画に供給されたインクは、フィルター73を通過して下方の区画に供給される。一方で、フィルター73を通過しなかったインクは、出側チューブ79を通って排出される。
【0027】
また、インク収容部31aの上壁には、ヘッド温度センサー83が備えられている。ヘッド温度センサー83は、側壁の温度を検出する。さらに、インク収容部31aの側壁には、ヘッドヒーター85と、が備えられている。ヘッドヒーター85は、例えば、チップヒーターであり、側壁を加温してインク溜め71内のインクを加温する。
【0028】
インク吐出部31bは、インク収容部31aのインク溜め71の下方の区画に連通する共通流路75を有している。共通流路に75は、複数の吐出ユニット81が、幅方向Y及び搬送方向Xに並んで設けられている。
【0029】
図3Bに示されるように、各吐出ユニット81は、共通流路75に連通する加圧室91と、加圧室91から下方に開口するノズル93と、を有している。加圧室91には、アクチュエータ95が設けられている。アクチュエータ95は、例えば、圧電素子である。圧電素子に電圧を加えると、逆圧電効果により圧電素子が変形する。圧電素子の変形は加圧室91に伝えられ、加圧室91が圧縮される。これにより、共通流路75から加圧室91に送られたインクが加圧されて、ノズル93から吐出される。
【0030】
次に、
図4のブロック図を参照して、制御部101について説明する。制御部101には、機内温度センサー59(
図1参照)とヘッド温度センサー83(
図3A参照)とからそれぞれ検知結果が送信される。制御部101は両温度センサー59、83から送信された検知結果に基づいて、機内温度とラインヘッド27内のインクの温度とを推定する。また、制御部101は、機内ヒーター53とヘッドヒーター85とに電気的に接続し、推定された機内温度とインクの温度とに基づいて、機内ヒーター53とヘッドヒーター85とを点灯又は消灯(駆動)する。
【0031】
上記構成を有する画像形成装置1の温度制御の一例について、
図1、
図3A等を参照して説明する。画像形成装置1の電源が切られた状態から、電源が入れられると、まず、制御部101は機内ヒーター53を点灯する。機内ヒーター53が駆動されると、筐体3内の温度が上昇し、筐体3自体や、上記説明したヘッドユニット25、第1、第2搬送部11、13の第1、第2搬送ベルト15、19の駆動ローラーや従動ローラー等の各部品の温度が上昇する。
【0032】
制御部101は、全ての記録ヘッド31において、ヘッド温度センサー83の検知結果に基づいて推定されたインクの温度が印字許可温度(例えば、26℃)に達した後、印字動作の開始を許可する。印字動作が開始された後、制御部101は、ヘッド温度センサー83の検知結果に基づいて、ヘッドヒーター85を点灯又は消灯して、インクの温度を印字許可温度に維持する。また、制御部101は、機内温度センサー59で検知された温度に基づいて、機内温度を一定に維持するように機内ヒーター53を点灯又は消灯する。
【0033】
図1に示されるように、ヘッドユニット25は、機内ヒーター53から比較的離れており、さらに、印字に使用されるインクが貯留される記録ヘッド31のインク溜め71(
図3A参照)は記録ヘッド31の内部に設けられているため、インク溜め71内のインク、すなわち、印字に使用されるインクの温度は、他の部分に比べて上昇しにくい。このため、前述のように、機内の温度が所定の温度よりも低い場合は、色ずれ(印字位置ずれ)が発生しやすい。
【0034】
図5のグラフを参照して、色ずれの一例について説明する。グラフの縦軸は色ずれ量(ドット)を示し、横軸は電源オン(機内ヒーター53オン)からの経過時間(分)を示す。この例では、環境温度が、基準温度(20~23℃)よりも低い低温(15℃)の場合について説明する。
【0035】
グラフに示されるように、電源がオンされた直後は、色ずれ量は1ドット程度であり、色ずれ量が大きい。色ずれ量は、経過時間が長くなるほど徐々に小さくなり、約150分経過後にほぼゼロとなる。
【0036】
すなわち、機内ヒーター53が点灯されると、機内の温度が上昇して、上述の筐体3自体や、ヘッドユニット25、第1、第2搬送部11、13の第1、第2搬送ベルト15、19の駆動ローラーや従動ローラー等の各部品の温度が徐々に上昇するが、色ずれがゼロとなる、すなわち、インクの温度が適正な印字許可温度に達するまでには、所定の時間(この例では150分)が必要であることがわかる。色ずれを防止するには、画像形成装置1の全体(上記各部品やインクを含む)が均一な印字許可温度に達した後で、印字動作を開始する必要がある。
【0037】
次に、
図6のグラフを参照して、画像形成装置1の各部の温度上昇傾向について説明する。グラフの縦軸は温度変化(℃)を示し、横軸は経過時間(分)を示す。グラフの二点鎖線は、電源オンと同時に機内ヒーター53とヘッドヒーター85とを点灯した場合のヘッド温度センサー83の検知結果を示し、鎖線は電源オンと同時に機内ヒーター53を点灯した場合の記録ヘッド31の周辺に配置された温度センサー(図示省略)の検知結果を示し、実線は電源オンと同時に機内ヒーター53を点灯した場合のヘッド温度センサー83の検知結果を示す。環境温度は14℃とする。
【0038】
グラフの二点鎖線に示されるように、電源オンと同時に機内ヒーター53とヘッドヒーター85とを点灯させると、ヘッド温度センサー83で検知される温度は急上昇し、約3分後に12℃上昇してほぼ印字許可温度に達する。このようにヘッドヒーター85を点灯させると記録ヘッド31の温度は急激に上昇して印字許可温度に達するが、
図5のグラフを参照して説明したように、筐体3内の各部品は十分に加温されておらず、印字許可温度には達していない。このため、この状況下で印字動作を行うと色ずれが発生する虞がある。
【0039】
また、グラフの鎖線で示されるように、電源オンと同時に機内ヒーター53を点灯した場合、記録ヘッド31の周辺の温度は上昇するが、上昇度合いは均一ではなく、変動量が大きい。このため、例えば、記録ヘッド31の周辺の温度を基にして印字動作の開始を判断すると、必ずしも画像形成装置1の全体(上記各部品やインクを含む)が均一な印字許可温度に達していないままで、印字動作が実行されてしまうことがあり得る。
【0040】
一方で、グラフの実線で示されるように、電源オンと同時に機内ヒーター53を点灯した場合の、ヘッド温度センサー83で検知された温度はほぼ均一な度合いで徐々に上昇し、変動量も小さい。つまり、記録ヘッド31のインク溜め71の辺りは、周辺部に比べて温度上昇の開始は遅い、言い換えると、温まりにくいが、外部環境の影響を受けにくく、機内ヒーター53による温度上昇に比例して温度が上昇する。また、このように温まりにくい箇所が印字許可温度に上昇することで、機内の全体がほぼ印字許可温度に達したと推定できる。そこで、ヘッド温度センサー83の検知結果を基にすることで、画像形成装置1の全体(上記各部品やインクを含む)が均一な印字許可温度に達したことを判断して、印字動作を実行することが好ましい。
【0041】
印字動作が開始された後は、制御部101は、機内温度センサー59の検知結果に基づいて機内ヒーター53を点灯又は消灯して、機内の温度を所定の温度に維持する。一方で、制御部101は、ヘッド温度センサー83の検知結果に基づいてヘッドヒーター85を点灯又は消灯して、インクの温度を所定の温度に維持する。
図6のグラフの二点鎖線で示されるように、インクはヘッドヒーター85に対して高い感度を有しているので、インクの温度を感度良く調整できる。
【0042】
上記説明したように、本発明によれば、低温環境の場合に、機内の温度(各記録ヘッド31のインクの温度を含む)が印字許可温度に均一に上昇した後で印字動作を開始するので、色ずれの発生を低減できる。また、印字許可温度に上昇した後は、各記録ヘッド31の温度をヘッドヒーター85の点灯と消灯とによって調整するので、インクの温度を高感度で調整できる。
【0043】
なお、
図5のグラフを参照して説明したように、色ずれが発生しなくなるまで機内の温度を上昇させるには、所定の時間(上記の例では150分)が必要になる。しかし、所定の時間が経過するまでに印字動作を開始したいとユーザーが所望する場合もあり得る。そこで、制御部101は、インクの温度に関わらず印字動作を許可してもよい。この場合、画像形成装置1の操作部1a(
図1参照)に、インクの温度に関わらず印字動作を許可する印字優先モードを設け、印字優先モードを選択した場合には品質を保証しない旨を示すメッセージを操作部1aに表示する。ユーザーが印字優先モードを選択すると、制御部101は、ヘッド温度センサー83の検知結果に関わらず、印字動作を許可する。
【0044】
本発明は特定の実施形態について記載されてきたが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の範囲及び主旨を逸脱しない限りにおいて、当業者は上記実施形態を改変可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 画像形成装置
1a 操作部
3 筐体
31 記録ヘッド
53 機内ヒーター
83 ヘッド温度センサー(温度センサー)
85 ヘッドヒーター
101 制御部